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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】コンクリートの配合導出システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20231228BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20231228BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G01N33/38
B28C7/04
G06N3/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020165231
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057130
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】宮薗 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】中西 縁
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-077660(JP,A)
【文献】特開2019-188718(JP,A)
【文献】特開2018-069487(JP,A)
【文献】特開2011-169602(JP,A)
【文献】特開2004-284918(JP,A)
【文献】第3編 コンクリートの配(調)合と製造,コンクリート便覧(第二版) ,第2版,日本,長 祥隆 技報堂出版株式会社,1996年02月15日,147
【文献】5節 調合,建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事2009 ,日本,日本建築学会,2009年02月20日,223-241
【文献】阿部 道彦,5.骨材,コンクリート総覧 THE CONCRETE ,第1版,日本,飯田 眞理 技術書院,1998年06月10日,208-209
【文献】6章 鉄筋コンクリート系工事,建築施工教科書 ,彰国社,1991年07月20日,58-88
【文献】森濱和正,外4名,各種骨材を用いた舗装コンクリートの配合試験,土木学会論文集E1(舗装工学),日本,2013年,Vol.69,No.3,I_81-I_86
【文献】Le Quang Nhut,外3名,細骨材の粒度がモルタルの流動性・強度に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,日本,2005年,Vol.27,No.1,61-66
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/38
B28C 7/04
G06N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力層と出力層を有するニューラルネットワークであって、コンクリートの構成材料の物性に関する情報である物性情報と、コンクリートの性状を示す情報である性状情報と、前記構成材料の配合を示す配合情報と、を用いて学習したニューラルネットワークを備え、
前記ニューラルネットワークの前記入力層には、前記物性情報として粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率が入力されるとともに、前記性状情報として水セメント比、スランプ値、空気量が入力され、
前記ニューラルネットワークの前記出力層には、前記構成材料の配合に関する配合情報が出力され、
前記ニューラルネットワークの前記出力層に出力される前記配合情報には、単位水量と、細骨材率及び粗骨材のかさ容積のうちの少なくとも何れか一方とが含まれる、
コンクリートの配合導出システム。
【請求項2】
前記入力層には、前記物性情報としての混和剤の種類の区分が入力される、
請求項1に記載のコンクリートの配合導出システム。
【請求項3】
前記入力層には、前記物性情報としての粗骨材の種類の区分が入力される、
請求項1又は請求項に記載のコンクリートの配合導出システム。
【請求項4】
前記入力層には、前記物性情報としての細骨材の微粒分量が入力される、
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載のコンクリートの配合導出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望する性状のコンクリートが得られる配合を導出するコンクリートの配合導出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されているような、ニューラルネットワークを用いてコンクリートの配合を導出するシステム(配合設定装置)が知られており、かかる配合設定装置では、ニューラルネットワークがコンクリートの構成材料の特性値、コンシステンシーに加えて、外気温や湿度も考慮して構成材料の配合を出力するように構成されている。
【0003】
前記配合設定装置によれば、天候の影響を受けずに所望するコンステンシー(性状)を有するコンクリートが得られる配合を簡単に導出できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-77660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コンクリートの性状は、コンクリートの構成材料の物性によっても変化するため、構成材料の物性を考慮して所望する性状のコンクリートを生成するための配合を見出す作業には依然として多大な時間と手間がかかっていた。
【0006】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、構成材料の物性に合わせて所望する性状のコンクリートが得られる配合を簡単に得られるコンクリートの配合導出システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコンクリートの配合導出システムは、
入力層と出力層を有するニューラルネットワークであって、コンクリートの構成材料の物性に関する情報である物性情報と、コンクリートの性状を示す情報である性状情報とを用いて学習したニューラルネットワークを備え、
前記ニューラルネットワークの前記入力層には、前記物性情報として粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率が入力されるとともに、前記性状情報として水セメント比、スランプ値、空気量が入力され、
前記ニューラルネットワークの前記出力層には、前記構成材料の配合に関する配合情報が出力される。
【0008】
上記構成のコンクリートの配合導出システムによれば、コンクリートの性状のうちワーカビリティーを決める水セメント比、スランプ値、空気量とともに、コンクリートの生成に用いる構成材料の物性であり且つコンクリートのワーカビリティーに影響を与える物性である粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率が学習済みのニューラルネットワークの入力層に入力され、ニューラルネットワークの出力層には、使用する構成材料の物性に合わせてユーザーが所望するワーカビリティーに適した配合情報が出力される。
【0009】
従って、上記構成のコンクリートの配合導出システムを用いることにより、ユーザーは、所望するワーカビリティーのコンクリートを生成するための配合を簡単に得ることができるようになる。
【0010】
本発明のコンクリートの配合導出システムにおいて、
前記ニューラルネットワークの前記出力層に出力される前記配合情報には、単位水量と、細骨材率及び粗骨材のかさ容積のうちの少なくとも何れか一方とが含まれる、ようにしてもよい。
【0011】
所望するワーカビリティに合わせて配合を決めるには、まず、単位水量と、細骨材率や粗骨材のかさ容積を調整する必要であるが、上記構成のコンクリートの配合導出システムを用いれば、ユーザーは、試験練りを行うことなく、所望するワーカビリティに合わせて調整された単位水量と、細骨材率や粗骨材のかさ容積とを得ることができる。
【0012】
また、本発明のコンクリートの配合導出システムにおいて、
前記入力層には、前記物性情報としての混和剤の種類の区分が入力される、ようにしてもよい。
【0013】
上記構成のコンクリートの配合導出システムでは、ニューラルネットワークが、コンクリートの生成に使用する混和剤が属する種類の区分に基づいて混和剤がコンクリートのワーカビリティーに与える影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、混和剤を用いる場合も、ユーザーは、所望するワーカビリティーのコンクリートを生成するための配合を簡単に得ることができるようになる。
【0014】
また、本発明のコンクリートの配合導出システムにおいて、
前記入力層には、前記物性情報としての粗骨材の種類の区分が入力される、ようにしてもよい。
【0015】
上記構成のコンクリートの配合導出システムでは、ニューラルネットワークが、コンクリートの生成に使用する粗骨材が属する種類の区分に基づいて粗骨材がコンクリートのワーカビリティーに与える影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、配合情報の適正さが高まる。
【0016】
本発明のコンクリートの配合導出システムにおいて、
前記入力層には、前記物性情報としての細骨材の微粒分量が入力される、ようにしてもよい。
【0017】
上記構成のコンクリートの配合導出システムでは、ニューラルネットワークが、細骨材の微粒分量に基づいて細骨材に付着している微細な粉がコンクリートのワーカビリティーに与える影響、具体的には、細骨材に付着している微細な粉が水を吸収してしまうことによるコンクリートのワーカビリティーへの影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、ユーザーは、所望するワーカビリティーのコンクリートを生成するためのより適切な配合を簡単に得ることができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のコンクリートの配合導出システムは、構成材料の物性に合わせて所望する性状のコンクリートが得られる配合を簡単に得られるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリートの配合導出システムのブロック図である。
図2図2は、試験3の試験結果を示す図であり、(a)、(b)は何れも実施例1の試験結果を示す図である。
図3図3は、試験4の試験結果を示す図であり、(a)は実施例1の試験結果を示す図、(b)は実施例2の試験結果を示す図である。
図4図4は、試験5の試験結果を示す図であり、(a)は実施例1の試験結果を示す図、(b)は実施例3の試験結果を示す図である。
図5図5は、試験6の試験結果を示す図であり、(a)は実施例1の試験結果を示す図、(b)は実施例4の試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかるコンクリートの配合導出システム(以下、配合導出システムと称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0021】
配合導出システムは、構成材料の物性に合わせて所望する性状のコンクリートを生成するための配合、特に所望するワーカビリティを有するコンクリートを生成するための配合を導出するように構成されたシステムである。
【0022】
より具体的に説明すると、配合導出システムは、コンクリートを生成するために使用する構成材料の物性に関する物性情報と、生成したコンクリートの性状を示す性状情報(生成したコンクリートの性状の指標とする情報であり、本実施形態ではワーカビリティの指標とする情報)とに基づいて、性状情報によって示される性状を満たすコンクリートを生成するための構成材料の配合を導出するように構成されている。
【0023】
なお、配合を構成する要素(以下、配合要素と称する)には、コンクリートを生成する際に必須となる基準要素と、ワーカビリティに合わせて調整される主調整要素と、主調整要素に合わせて調整される副調整要素と、が含まれる。
【0024】
基準要素は、性状情報に該当する情報であり、本実施形態では、水セメント比、スランプ値、空気量が含まれる。
【0025】
また、主調整要素には、単位水量、細骨材率、粗骨材のかさ容積が含まれ、副調整要素には、例えば、セメント、細骨材、粗骨材ごとの絶対容積や、単位量が含まれる。
【0026】
また、物性情報とは、構成材料の固有の性質を示す情報であり、本実施形態では、例えば、粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、種類の区分、細骨材の粗粒率、微粒分量、混和剤の種類の区分が含まれる。
【0027】
本実施形態の配合導出システム1は、図1に示すように、物性情報と性状情報とを入力する入力手段2と、ニューラルネットワークにより構成され、且つ入力手段2に入力された物性情報と性状情報とに基づいて主調整要素を導出する主要素導出手段3と、副調整要素を導出する副要素導出手段4と、コンクリートの配合である配合情報を出力する配合出力手段5と、を備えている。
【0028】
入力手段2には、物性情報として、粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、種類の区分、細骨材の粗粒率、微粒分量、混和剤の種類の区分を入力可能であるが、粗骨材の区分と混和剤の種類の区分については、どちらも入力しないように構成したり、粗骨材の区分と混和剤の種類の区分のうちの何れか一方のみを入力するように構成することも可能である。
【0029】
混和剤の種類とは、例えば、AE減水剤や、高性能AE減水剤であり、粗骨材の種類とは、砂利や、砕石である。
【0030】
主要素導出手段3は、上述のように、ニューラルネットワークにより構成されているため、入力層、中間層、出力層を有している。以下、主要素導出手段3をニューラルネットワーク3と称する。
【0031】
入力層には、物性情報として入力手段2に入力された情報(本実施形態では粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、種類の区分、細骨材の粗粒率、微粒分量、混和剤の種類の区分)が入力され、出力層には、主調整要素に該当する情報(本実施形態では単位水量、細骨材率、粗骨材のかさ容積)が出力される。
【0032】
なお、主要素導出手段3は、細骨材率、及び粗骨材のかさ容積のうちの何れか一方のみを導出するように構成することも可能である。
【0033】
なお、入力層に入力される情報(入力手段2に入力される情報)は、例えば、表1のように入力可能な数値範囲を設定することも可能である。
【0034】
【表1】
【0035】
また、出力層に出力する情報も、例えば、表2のように出力する数値範囲を設定することも可能である。
【0036】
【表2】
【0037】
なお、ニューラルネットワーク3を学習させるには、物性情報と、性状情報と、配合情報をワンセットにした学習データを用いればよい。なお、学習データの性状情報に細骨材の微粒分量や、混和剤の種類、粗骨材の種類を加えれば、より高い精度で配合情報を導出することが可能となる。
【0038】
副要素導出手段4は、基準要素や、主調整要素に基づいて副調整要素を導出するように構成されている。
【0039】
配合導出手段は、入力手段2に入力された性状情報と、主調整要素、副調整要素を取得し、性状情報を基準要素としたうえで、該基準要素と、主調整要素と、副調整要素を配合情報として出力する。なお、配合導出手段による配合情報の出力先は、例えば、記憶装置や表示装置であればよい。
【0040】
本実施形態に係る配合導出システム1の構成は、以上の通りである。本実施形態の配合導出システム1によれば、コンクリートの性状のうちワーカビリティーを決める水セメント比、スランプ値、空気量とともに、コンクリートの生成に用いる構成材料の物性であり且つコンクリートのワーカビリティーに影響を与える物性である粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率が学習済みのニューラルネットワーク3の入力層に入力され、ニューラルネットワーク3の出力層には、使用する構成材料の物性に合わせてユーザーが所望するワーカビリティーに適した配合情報が出力される。
【0041】
従って、従来では試し練りを繰り返しながら時間と手間をかけて主調整要素を見出していたが、本実施形態の配合導出システム1では、時間と手間をかけずに、構成材料の物性に合わせて所望する性状(ワーカビリティ)を有するコンクリートを生成できる配合を簡単に得ることができるという優れた効果を奏し得る。
【0042】
また、所望するワーカビリティに合わせて配合を決めるには、まず、単位水量と、細骨材率や粗骨材のかさ容積を調整する必要があるが、本実施形態の配合導出システム1を用いれば、ユーザーは、試験練りを行うことなく、所望するワーカビリティに合わせて調整された単位水量と、細骨材率や粗骨材のかさ容積とを得ることができる。
【0043】
さらに、配合導出システム1では、ニューラルネットワーク3が、コンクリートの生成に使用する混和剤が属する種類の区分に基づいて混和剤がコンクリートのワーカビリティーに与える影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、混和剤を用いる場合も、ユーザーは、所望するワーカビリティーのコンクリートを生成するための配合を簡単に得ることができるようになる。
【0044】
また、ニューラルネットワーク3が、コンクリートの生成に使用する粗骨材が属する種類の区分に基づいて粗骨材がコンクリートのワーカビリティーに与える影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、配合情報の適正さが高まる。
【0045】
そして、本実施形態の配合導出システム1では、ニューラルネットワーク3が、細骨材の微粒分量に基づいて細骨材に付着している微細な粉がコンクリートのワーカビリティーに与える影響、具体的には、細骨材に付着している微細な粉が水を吸収してしまうことによるコンクリートのワーカビリティーへの影響を考慮して配合情報を出力層に出力するため、ユーザーは、所望するワーカビリティーのコンクリートを生成するためのより適切な配合を簡単に得ることもできる。
【実施例
【0046】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0047】
上記実施形態の配合導出システム1において、主要素導出手段3を構成する学習済みのニューラルネットワーク3の入力層に入力する物性情報を粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率としたものを実施例1、学習済みのニューラルネットワーク3の入力層に入力する物性情報を粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率、微粒分量としたものを実施例2、学習済みのニューラルネットワーク3の入力層に入力する物性情報を粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率、混和剤の種類の区分としたものを実施例3、学習済みのニューラルネットワーク3の入力層に入力する物性情報を粗骨材の最大寸法、粗骨材の実積率、細骨材の粗粒率、粗骨材の種類の区分としたものを実施例4とする。
【0048】
(試験1)
試験1では、試験練りを行うことによって決定した配合(従来の方法により決定した配合)と、実施例1を用いて求めた配合情報との比較を行った。以下、従来の配合の決定方法を従来方法と称する。なお、実施例1では、試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0049】
従来方法では、単位水量を決定する作業、粗骨材のかさ容積を決定する作業が順番に行われる。
【0050】
単位水量を決定する作業では、目標とするコンクリートのスランプ値(例えば、SL=5、8、12、15、18、21cm)を満足するための単位水量の値を確認するために、単位水量の異なるコンクリートを用意し、各コンクリートのスランプ値を測定する。
【0051】
目標スランプに対してスランプが小さい場合には単位水量を増やし、目標スランプに対してスランプが大きい場合には単位水量を減らして調整を行う。このような作業を繰り返し行い、目標とするコンクリートのスランプ値を満足する単位水量を決定する。
【0052】
次に、粗骨材のかさ容積を決定する作業では、上記の作業で決定した単位水量で練り混ぜたコンクリートの性状を目視によって、例えば、「良好」、「細骨材が多い」、「粗骨材が多い」というような評価をする。
【0053】
細骨材が多いと所定のスランプ値を得るための単位水量が増加し、粗骨材が多いと材料分離しやすいコンクリートとなるため、目視による評価で良好なコンクリートであることを確認する必要がある。細骨材が多いと評価した場合は粗骨材のかさ容積を増やし、粗骨材が多いと評価した場合は粗骨材のかさ容積を減らす。
【0054】
このようにして粗骨材のかさ容積を増減させることで、コンクリートの性状が良好な単位粗骨材かさ容積を決定する。なお、粗骨材のかさ容積を変化させることによって、目標とするスランプ値がずれた場合は単位水量の微調整を行う。
【0055】
試験1において、従来方法では、表3の材料を用いて試験練りを行いながら表4に記載の水セメント比とスランプ値、空気量を満たすコンクリートを生成できる配合を求め、実施例1では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)の入力層に対して、表3の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、表4の水セメント比、スランプ値、空気量を入力し、配合情報を求めた。なお、実施例1では試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
従来方法で求めた配合と、実施例1を用いて求めた配合情報との比較結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
実施例1を用いて求めた配合情報の単位水量と粗骨材のかさ容量は、従来方法で求めた適正な単位水量と粗骨材のかさ容量に対する誤差が少ないことが分かる。すなわち、配合導出システムでは、試験練りを行わずに、従来方法で求めた配合と略同等の配合情報を得られることが分かる。
【0061】
(試験2)
試験2では、従来方法で決定した配合と、実施例2を用いて求めた配合情報との比較を行った。なお、試験2の内容は、実施例1が実施例2となっている点以外は、試験1と同じ内容である。
【0062】
従来方法で求めた配合と、実施例2を用いて求めた配合情報との比較結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
表5、表6を参照すると、ニューラルネットワーク3の入力層に微粒分量も入力した場合は、従来方法で求めた適正な単位水量と粗骨材のかさ容量に対する誤差がさらに減少することが分かる。
【0065】
(試験3)
試験3では、生コン工場で実際に使用されている材料と配合の情報を用いて、従来方法で求めた配合と、実施例1を用いて求めた配合情報との比較を行った。なお、試験3において、実施例1では試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0066】
試験3において、従来方法では、表7の材料を用いて試験練りを行いながら表8に記載の水セメント比とスランプ値、空気量を満たすコンクリートを生成できる配合を求め、実施例1では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)の入力層に対して、表7の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、表8の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求めた。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】
従来方法で求めた配合と、実施例1を用いて求めた配合情報との比較結果を図2(a)、図2(b)に示す。試験3においても、実施例1を用いて求めた配合情報の単位水量と粗骨材のかさ容量は、従来方法で求めた適正な単位水量と粗骨材のかさ容量に対する誤差が少ないことが分かる。
【0070】
(試験4)
試験4では、試験3とは別の生コン工場で実際に使用されている材料と配合の情報を用いて、従来方法で求めた配合(単位水量)と、実施例1を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較し、従来方法で求めた配合(単位水量)と、実施例2を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較した。なお、試験4において、実施例1,2では、試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0071】
試験4において、従来方法では、表9の材料を用いて試験練りを行いながら表10に記載の水セメント比とスランプ値、空気量を満たすコンクリートを生成できる配合を求め、実施例1では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)の入力層に対して、表9の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、表10の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求め、実施例2では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)の入力層に対して、表9の細骨材の粗粒率、微粒分量、粗骨材の最大寸法、実積率、表10の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求めた。
【0072】
【表9】
【0073】
【表10】
【0074】
従来方法で求めた配合と実施例1を用いて求めた配合情報との比較結果と、従来方法で求めた配合と実施例2を用いて求めた配合情報との比較結果を表11、図3(a)、図3(b)に示す。
【0075】
【表11】
【0076】
表11から、従来方法で求めた単位水量と実施例1を用いて求めた単位水量の差と、従来方法で求めた単位水量と実施例2を用いて求めた単位水量の差とを比較すると、実施例2の方が従来方法で求めた単位水量との差を小さくすることができていることが分かる。すなわち、配合導出システムでは、ニューラルネットワークの入力層に細骨材の微粒分量も入力すれば、配合情報を求める精度が高まることが分かる。
【0077】
(試験5)
試験5では、試験3、4とは別の生コン工場で実際に使用されている材料と配合の情報を用いて、従来方法で求めた配合(単位水量)と実施例1を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較し、従来方法で求めた配合(単位水量)と実施例3を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較した。なお、試験5においても、実施例1,3では、試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0078】
試験5において、従来方法では、表12の材料を用いて試験練りを行いながら表13に記載の水セメント比とスランプ値、空気量を満たすコンクリートを生成できる配合を求め、実施例1では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)3の入力層に対して、表12の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、表13の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求め、実施例3では、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)3の入力層に対して、表12の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、混和剤の種類の区分としての高性能AE減水剤、表13の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求めた。
【0079】
【表12】
【0080】
【表13】
【0081】
従来方法で求めた配合と実施例1を用いて求めた配合情報との比較結果と、従来方法で求めた配合と実施例3を用いて求めた配合情報との比較結果をそれぞれ図4(a)、図4(b)に示す。
【0082】
図4(a)、図4(b)から、従来方法で求めた単位水量と実施例1を用いて求めた単位水量の差と、従来方法で求めた単位水量と実施例3を用いて求めた単位水量の差とを比較すると、実施例3の方が従来方法で求めた単位水量との差を小さくすることができていることが分かる。すなわち、配合導出システムでは、ニューラルネットワークの入力層に混和剤の種類の区分も入力すれば、配合情報を求める精度が高まることが分かる。
【0083】
なお、混和剤である減水剤の種類の区分には、AE減水剤や、高性能AE減水剤等があり、それぞれの区分において減水性能が異なる(すなわち、コンクリートの単位水量に与える影響が異なる)ため、ニューラルネットワークの入力層に混和剤の種類の区分を入力できるようになっていれば、単位水量を求める精度をより高めることが可能となる。
【0084】
(試験6)
試験6では、試験3,4,5とはさらに別の生コン工場で実際に使用されている材料と配合の情報を用いて、従来方法で求めた配合(単位水量)と、実施例1を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較し、従来方法で求めた配合(単位水量)と、実施例4を用いて求めた配合情報(単位水量)とを比較した。なお、試験6において、実施例1,4では試験練りを行わずに配合情報を求めている。
【0085】
試験6において、従来方法では、表14の材料を用いて試験練りを行いながら表15に記載の水セメント比とスランプ値、空気量を満たすコンクリートを生成できる配合を求め、実施例1では、試験練りを行わずに、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)3の入力層に対して、表14の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、表15の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求め、実施例4では、試験練りを行わずに、主要素導出手段(ニューラルネットワーク)3の入力層に対して、表14の細骨材の粗粒率、粗骨材の最大寸法、実積率、粗骨材の種類の区分としての砂利(川砂利が属する区分)、表15の水セメント比、スランプ値、空気量を入力して配合情報を求めた。
【0086】
【表14】
【0087】
【表15】
【0088】
従来方法で求めた配合と実施例1を用いて求めた配合情報の比較結果と、従来方法で求めた配合と実施例4を用いて求めた配合情報の比較結果を表16、図5(a)、図5(b)に示す。
【0089】
【表16】
【0090】
表16から、従来方法で求めた単位水量と実施例1を用いて求めた単位水量の差と、従来方法で求めた単位水量と実施例4を用いて求めた単位水量の差とを比較すると、実施例4の方が従来方法で求めた単位水量との差を小さくすることができていることが分かる。すなわち、配合導出システムでは、ニューラルネットワークの入力層に粗骨材の種類の区分も入力すれば、配合情報を求める精度が高まることが分かる。
【符号の説明】
【0091】
1…配合導出システム、2…入力手段、3…主要素導出手段(ニューラルネットワーク)、4…副要素導出手段、5…配合出力手段
図1
図2
図3
図4
図5