特許 7411181 医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システム

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2023-12-27

(45)【発行日】2024-01-11

(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システム

(51)【国際特許分類】

   A61B 6/00 20240101AFI20231228BHJP

【ＦＩ】

A61B6/00 320Z

【請求項の数】 9

(21)【出願番号】P 2022551111

(86)(22)【出願日】2020-09-28

(86)【国際出願番号】 JP2020036704

(87)【国際公開番号】W WO2022064711

(87)【国際公開日】2022-03-31

【審査請求日】2023-03-28

【国等の委託研究の成果に係る記載事項】（出願人による申告）令和２年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「先進的医療機器・システム等技術開発事業術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」「術前と術中をつなぐスマート手術ガイドソフトウェアの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第１７条の適用を受けるもの

(73)【特許権者】

【識別番号】517056952

【氏名又は名称】株式会社Ｋｏｍｐａｔｈ

(73)【特許権者】

【識別番号】504137912

【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】道家 健仁

(72)【発明者】

【氏名】▲高▼橋 玄顕

(72)【発明者】

【氏名】斎藤 季

(72)【発明者】

【氏名】金 太一

(72)【発明者】

【氏名】小山 博史

(72)【発明者】

【氏名】齊藤 延人

【審査官】井上 香緒梨

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１６－１２３５８４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開平８－１０６５４６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－１２０８２８（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２０－９３０９５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－２０２３１９（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ６１Ｂ ６／００－６／１４

Ｇ０６Ｔ １９／２０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理装置であって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得する取得部と、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定する特定部と、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与する付与部と、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する表示制御部と、
を含み、
前記取得部は、前記ユーザの操作に応じて初期に指定される箇所を表す第１指定箇所を取得した後に、前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す第２指定箇所を取得し、
前記特定部は、取得した前記第１指定箇所と、臓器に付与されている前記識別ラベルとに基づいて、前記３次元医用画像から、取得された前記第１指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として特定し、
前記付与部は、特定された前記対象の臓器のうちの前記第２指定箇所の系列に相当する箇所に対して所定の情報を付与し、
前記表示制御部は、前記所定の情報が付与された前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
医用画像処理装置。

【請求項8】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理装置であって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得する取得部と、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定する特定部と、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与する付与部と、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する表示制御部と、
を含み、
前記取得部は、前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記特定部は、前記３次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として、特定し、
前記付与部は、前記特定された前記臓器のうちの前記指定箇所の予め定められた範囲に対して、特定された前記対象の臓器の識別ラベルとは異なる識別ラベルを付与することにより、前記臓器を分割し、
前記表示制御部は、分割された前記臓器が写る前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
医用画像処理装置。

【請求項9】

前記所定の情報は、色情報、文字情報、及び模様情報の少なくとも１つである、
請求項１、請求項５、及び請求項８の何れか１項に記載の医用画像処理装置。

【請求項11】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理方法であって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得し、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて初期に指定される箇所を表す第１指定箇所を取得した後に、前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す第２指定箇所を取得し、
取得した前記第１指定箇所と、臓器に付与されている前記識別ラベルとに基づいて、前記３次元医用画像から、取得された前記第１指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として特定し、
特定された前記対象の臓器のうちの前記第２指定箇所の系列に相当する箇所に対して所定の情報を付与し、
前記所定の情報が付与された前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
処理をコンピュータが実行する医用画像処理方法。

【請求項12】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理プログラムであって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得し、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて初期に指定される箇所を表す第１指定箇所を取得した後に、前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す第２指定箇所を取得し、
取得した前記第１指定箇所と、臓器に付与されている前記識別ラベルとに基づいて、前記３次元医用画像から、取得された前記第１指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として特定し、
特定された前記対象の臓器のうちの前記第２指定箇所の系列に相当する箇所に対して所定の情報を付与し、
前記所定の情報が付与された前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。

【請求項13】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理方法であって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得し、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記３次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として特定し、
前記特定された前記臓器のうちの前記指定箇所の予め定められた範囲に対して、特定された前記対象の臓器の識別ラベルとは異なる識別ラベルを付与することにより、前記臓器を分割し、
分割された前記臓器が写る前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
処理をコンピュータが実行する医用画像処理方法。

【請求項14】

３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理プログラムであって、
前記３次元医用画像に写る１以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
ユーザの操作を取得し、
１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、
前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記３次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記対象の臓器として特定し、
前記特定された前記臓器のうちの前記指定箇所の予め定められた範囲に対して、特定された前記対象の臓器の識別ラベルとは異なる識別ラベルを付与することにより、前記臓器を分割し、
分割された前記臓器が写る前記３次元医用画像を前記表示装置に表示させるように制御する、
処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

開示の技術は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システムに関する。

【背景技術】

【0002】

特開２０１８－７７６号公報には、Ｘ線画像の血管領域を当該血管領域以外の血管領域と異なる表示態様で表した表示画像を表示させる技術が開示されている。この画像処理装置は、複数のＸ線画像の血管領域における一又は複数の画素からなる単位領域ごとの造影剤の信号強度の経時的な遷移に基づいて、血管領域における所定の位置から血流方向の血管領域を特定する。そして、この画像処理装置は、特定した血管領域を当該血管領域以外の血管領域と異なる色などの表示態様で表した表示画像を表示させる。

【0003】

また、特開２００５－１２４６１４号公報には、切除領域を決定するのに必要な血管の特定をする画像表示装置が開示されている。この画像表示装置は、臓器の任意断面画像や三次元画像などを利用して臓器構成画素を指定し、その臓器位置を支配すると決定された動脈もしくはそれに順ずる血管を特定する処理とその臓器位置を支配すると決定された静脈を特定する。特定された血管の情報は抽出された脈管の三次元画像や積み上げ三次元画像における任意断面画像中に色づけなどにより表示される（例えば、段落［００１３］）。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、手術前、手術中、及び手術後においては、何らかの医用情報に対して所定の情報を付与し、複数の医療従事者によってその医用情報を共有する場面が多い。例えば、手術前においては、複数の医療従事者によって術前シミュレーションが実施される。この場合、例えば、手術が行われる患者の医用画像に対して切開箇所を表す情報を付与するなどして、複数の医療従事者によって切開箇所の情報が共有されることが好ましい。また、手術中においても、患者の医用画像に対して切開箇所を表す情報を適宜付与するなどして、複数の医療従事者によってその情報が共有され手術が行われることが好ましい。

【0005】

上記特開２０１８－７７６号公報に開示されている装置は、特定した血管領域を当該血管領域以外の血管領域と異なる色などの表示態様で表した表示画像を表示させる。しかし、この装置は、造影剤の信号強度の経時的な遷移に基づき特定された血管領域を、他の血管領域とは異なる色などで表示させるものであり、医療従事者であるユーザが医用画像に対して簡易に色付けすることはできない。

【0006】

また、特開２００５－１２４６１４号公報に開示されている装置は、任意の臓器位置（画素）を指定し、その臓器画素を支配すると定義された脈管（もしくは脈管位置）を、既に抽出されている脈管三次元画像上や任意断面画像中に示す。しかし、この装置は、指定された画素が支配すると定義された脈管を色付けするものであり、医療従事者であるユーザは医用画像の所望の箇所に対して情報を付与することができない。

【0007】

このため、従来技術では、医用画像の所望の箇所に対して簡易に情報を付与することができない、という課題がある。

【0008】

開示の技術は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、医用画像の所望の箇所に対して簡易に情報を付与することができる、医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システムを提供する。

【課題を解決するための手段】

【0009】

上記の目的を達成するために本開示の第１態様は、３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理装置であって、ユーザの操作を取得する取得部と、１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定する特定部と、前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与する付与部と、前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する表示制御部と、を含む医用画像処理装置である。

【0010】

本開示の第２態様は、３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理方法であって、ユーザの操作を取得し、１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する、処理をコンピュータが実行する医用画像処理方法である。

【0011】

本開示の第３態様は、３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する医用画像処理プログラムであって、ユーザの操作を取得し、１以上の臓器が写る前記３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定し、前記ユーザの操作に応じて、前記３次元医用画像のうちの、特定された前記対象の臓器に対して所定の情報を付与し、前記３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する、処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムである。

【発明の効果】

【0012】

開示の技術によれば、医用画像に対して簡易に情報を付与することができる、という効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】実施形態の手術支援システムの概略構成の一例を示す図である。

【図2】実施形態の手術支援システムの利用形態の一例を模式的に示す図である。

【図3】実施形態の手術支援システムの利用形態の一例を模式的に示す図である。

【図4】臓器に対する所定の情報の付与方法を説明するための図である。

【図5】臓器に対する所定の情報の付与方法を説明するための図である。

【図6】医用画像処理装置を構成するコンピュータの一例を示す図である。

【図7】第１実施形態の医用画像処理装置が実行する処理の一例を示す図である。

【図8】臓器に対する所定の情報の付与方法を説明するための図である。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、図面を参照して開示の技術の実施形態を詳細に説明する。

【0015】

＜第１実施形態の手術支援システム＞

【0016】

図１に、第１実施形態に係る手術支援システム１０を示す。図１に示されるように、第１実施形態の手術支援システム１０は、入力装置１２と、医用画像処理装置１４と、表示装置１６とを備えている。

【0017】

手術支援システム１０は、ユーザからの操作情報を取得し、操作情報に応じて医用画像に対して所定の情報を付与する。そして、手術支援システム１０は、情報が付与された医用画像を表示する。

【0018】

第１実施形態の手術支援システム１０は、例えば、図２及び図３に示されるような状況下においての利用が想定される。

【0019】

図２の例は、術前シミュレーションの様子を表す図である。図２に示されるように、医師等の医療従事者Ｈは、手術支援システム１０を利用して術前シミュレーションを実施する。この場合、ある医療従事者によって手術支援システム１０の入力装置１２が操作され、患者の医用画像に対して情報が付与される。そして、手術支援システム１０の表示装置１６から、医療従事者によって情報が付与された医用画像が表示される。なお、医用画像に対して付与される情報は、例えば、色情報、文字情報、及び模様情報等の少なくとも１つである。例えば、患者の医用画像のうちの切開箇所に対して色情報が付与された場合には、その箇所が切開されることが複数の他の医療従事者によって共有され、術前シミュレーションを円滑に行うことができる。

【0020】

図３の例は、術中の様子を表す図である。図３に示されるように、医師等の医療従事者は、手術支援システム１０を利用して手術を進行する。この場合、ある医療従事者によって手術支援システム１０の入力装置１２（図示省略）が操作され、患者の医用画像に対して情報が付与される。そして、手術支援システム１０の表示装置１６から、医療従事者によって情報が付与された医用画像が表示される。これにより、切開箇所が複数の医療従事者によって共有され、手術を円滑に行うことができる。

【0021】

以下、具体的に説明する。

【0022】

入力装置１２は、手術支援システム１０を操作するユーザからの操作情報を受け付ける。入力装置１２は、例えば、マウス又はキーボード等によって実現される。操作情報は、ユーザの入力装置１２の操作に応じて生成される情報である。

【0023】

医用画像処理装置１４は、入力装置１２により受け付けた操作情報に基づいて、３次元医用画像に写る臓器に対して情報を付与する。なお、３次元医用画像には、１以上の臓器が写っている。

【0024】

表示装置１６は、医用画像処理装置１４から出力された情報を表示する。表示装置１６は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。

【0025】

図１に示されるように、医用画像処理装置１４は、機能的には、医用画像記憶部１８と、表示制御部２０と、取得部２２と、特定部２４と、付与部２６とを備えている。医用画像処理装置１４は、後述するようなコンピュータにより実現される。

【0026】

医用画像記憶部１８には、３次元医用画像が格納されている。なお、３次元医用画像に写る各臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されている。ここで、臓器とは、例えば血管等である。なお、複数の臓器の各々に対して同一の識別ラベルが付与されていてもよい。本実施形態では、臓器が血管である場合を例に説明するがこれに限定されるものではなく、臓器はどのようなものであってもよい。

【0027】

表示制御部２０は、医用画像記憶部１８に格納されている３次元医用画像を読み出す。そして、表示制御部２０は、読み出した３次元医用画像を表示装置１６に表示させるように制御する。

【0028】

表示装置１６に３次元医用画像が表示されると、ユーザは入力装置１２であるマウスを操作し、３次元医用画像に写る所望の箇所にカーソルを合わせる。そして、例えば、ユーザはマウスをクリックするなどして、３次元医用画像に写る臓器に対して初期に指定される指定箇所を表す第１指定箇所を設定する。

【0029】

取得部２２は、入力装置１２により受け付けたユーザの操作情報を取得する。具体的には、取得部２２は、ユーザの操作に応じて３次元医用画像に対し指定される箇所を表す指定箇所を取得する。まず、取得部２２は、ユーザにより入力された３次元医用画像中の第１指定箇所を取得する。

【0030】

特定部２４は、３次元医用画像から、情報を付与する対象の臓器を特定する。具体的には、特定部２４は、３次元医用画像から、取得部２２により取得された第１指定箇所に位置する臓器を対象の臓器として特定する。より詳細には、特定部２４は、第１指定箇所の座標と、３次元医用画像に写る臓器に付与されている識別ラベルとに基づいて、取得した第１指定箇所に位置する臓器を３次元医用画像中から特定する。

【0031】

ユーザは、入力装置１２であるマウスを操作し、特定された対象の臓器に対して情報を付与する操作を行う。

【0032】

図４に、特定された対象の臓器に対する情報の付与方法を説明するための図を示す。図４は、脳内の血管を表す３次元医用画像の模式図である。例えば、図４に示されるように、ユーザはカーソルの位置をＰ_１からＰ_２へ動かし、特定された対象の臓器である血管Ｂに対して色塗りをするような操作を行う。なお、図４におけるＰ_１は第１指定箇所であり、Ｐ_２は後述する第２指定箇所である。

【0033】

取得部２２は、第１指定箇所が指定された後のユーザの操作に応じて指定される指定箇所を表す第２指定箇所を取得する。例えば、図４に示されるように、ユーザがカーソルを第１指定箇所Ｐ_１から移動させ、血管Ｂに対して色塗りをするように操作した場合、そのカーソルが位置する各箇所が第２指定箇所Ｐ_２の系列となる。

【0034】

付与部２６は、特定部２４により特定された対象の臓器のうちの第２指定箇所に対して所定の情報を付与する。例えば、図４に示されるように、ユーザがカーソルを動かし血管Ｂに対して色塗りをするようにマウスを操作した場合には、その第２指定箇所の系列に対応する血管Ｂの各箇所に、他の血管とは異なる色が付与される。この結果、第２指定箇所に対応する血管Ｂの各箇所は、他の血管とは異なる色で表示される、３次元医用画像ＩＭ１は３次元医用画像ＩＭ２のようになる。

【0035】

なお、この場合、ユーザによるマウスの操作によって血管Ｂとは異なる他の血管に色が塗られるような操作がなされたとしても、他の血管に対して色は付与されない。血管Ｂとは異なる他の血管は、第１指定箇所によって特定された対象の臓器ではないためである。このため、第２指定箇所に対応する血管Ｂの各箇所のみに色が付与され、他の血管とは異なる色で表示される。この結果、例えば、複数の血管に色付けをした場合には、図５に示されるように、複数の血管の各々が異なる色で表示される。

【0036】

表示制御部２０は、付与部２６により所定の情報（例えば、色）が付与された３次元医用画像を表示装置１６に表示させるように制御する。

【0037】

表示装置１６は、表示制御部２０による制御に従い、付与部２６によって所定の情報（例えば、色）が付与された３次元医用画像を表示する。

【0038】

手術支援システム１０を操作するユーザ等は、表示装置１６から表示された３次元医用画像を確認し、手術等に活用する。

【0039】

医用画像処理装置１４は、例えば、図６に示すコンピュータ５０で実現することができる。コンピュータ５０はＣＰＵ５１、一時記憶領域としてのメモリ５２、及び不揮発性の記憶部５３を備える。また、コンピュータ５０は、外部装置及び出力装置等が接続される入出力interface（Ｉ／Ｆ）５４、及び記録媒体に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write（Ｒ／Ｗ）部５５を備える。また、コンピュータ５０は、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークＩ／Ｆ５６を備える。ＣＰＵ５１、メモリ５２、記憶部５３、入出力Ｉ／Ｆ５４、Ｒ／Ｗ部５５、及びネットワークＩ／Ｆ５６は、バス５７を介して互いに接続される。

【0040】

記憶部５３は、Hard Disk Drive（ＨＤＤ）、Solid State Drive（ＳＳＤ）、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部５３には、コンピュータ５０を機能させるためのプログラムが記憶されている。ＣＰＵ５１は、プログラムを記憶部５３から読み出してメモリ５２に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。

【0041】

［手術支援システムの動作］

【0042】

次に、第１実施形態の手術支援システム１０の具体的な動作について説明する。

【0043】

まず、手術支援システム１０の医用画像処理装置１４の表示制御部２０は、医用画像記憶部１８に格納されている３次元医用画像を読み出し、読み出した３次元医用画像を表示装置１６に表示させるように制御する。これにより、３次元医用画像がユーザに対して提示される。

【0044】

ユーザは入力装置１２であるマウスを操作し、３次元医用画像に写る所望の箇所にカーソルを合わせ、マウスをクリックするなどして３次元医用画像に写る対象の臓器に対して第１指定箇所を設定する。

【0045】

医用画像処理装置１４は、入力装置１２からの第１指定箇所の入力を受け付けると、図７に示される各処理を実行する。なお、医用画像処理装置１４は、第１指定箇所の入力を受け付ける毎に図７に示される各処理を実行する。

【0046】

ステップＳ１００において、取得部２２は、ユーザにより入力された３次元医用画像中の第１指定箇所を取得する。

【0047】

次に、ステップＳ１０２において、特定部２４は、上記ステップＳ１００で取得された第１指定箇所の座標と、３次元医用画像に写る臓器に付与されている識別ラベルとに基づいて、第１指定箇所に位置する臓器を３次元医用画像中から特定する。第１指定箇所に位置する臓器は、情報を付与する対象の臓器として特定される。

【0048】

ステップＳ１０４において、取得部２２は、上記ステップＳ１００で取得された第１指定箇所が指定された後の、ユーザの操作に応じて指定される第２指定箇所を取得する。

【0049】

ステップＳ１０６において、付与部２６は、上記ステップＳ１０２で特定された対象の臓器のうちの第２指定箇所に対して所定の情報を付与する。

【0050】

ステップＳ１０８において、表示制御部２０は、付与部２６により所定の情報（例えば、色）が付与された３次元医用画像を表示装置１６に表示させるように制御する。

【0051】

ステップＳ１０４～ステップＳ１０８の各処理は、繰り返し実行される。これにより、例えば、３次元医用画像において特定された対象の臓器のうちの第２指定箇所に対して色が付与され、その３次元医用画像が表示装置１６に表示される。

【0052】

医用画像処理装置１４を操作するユーザは、表示装置１６から出力された３次元医用画像を確認し、手術等に活用する。

【0053】

以上説明したように、第１実施形態の手術支援システム１０は、ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得する。手術支援システム１０は、１以上の臓器が写る３次元医用画像から、取得された指定箇所に位置する臓器を対象の臓器として特定する。手術支援システム１０は、特定された対象の臓器に対して所定の情報を付与する。手術支援システム１０は、所定の情報が付与された３次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する。これにより、医用画像の所望の箇所に対して簡易に情報を付与することができる。

【0054】

また、第１実施形態の手術支援システム１０は、ユーザの操作に応じて初期に指定される指定箇所を表す第１指定箇所を取得した後に、ユーザの操作に応じて指定される指定箇所を表す第２指定箇所を取得する。手術支援システム１０は、３次元医用画像から、取得された第１指定箇所に位置する臓器を対象の臓器として特定し、特定された対象の臓器のうちの第２指定箇所に対して所定の情報を付与する。これにより、特定された対象の臓器とは異なる臓器に対しては、所定の情報を付与することなく、医用画像の所望の箇所に対して簡易に情報を付与することができる。

【0055】

＜第２実施形態の手術支援システム＞

【0056】

次に、第２実施形態について説明する。なお、第２実施形態の手術支援システムの構成は、第１実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。

【0057】

第２実施形態の手術支援システムは、３次元医用画像中の、ユーザにより指定された指定箇所の予め定められた範囲に対して所定の情報を付与する点が第１実施形態と異なる。

【0058】

第２実施形態の付与部２６は、特定部２４により特定された対象の臓器のうちの指定箇所の予め定められた範囲に対して、所定の情報を付与する。

【0059】

図８に、第２実施形態の付与部２６の動作を説明するための図を示す。図８に示されるように、第２実施形態の付与部２６は、マウスのカーソルＭが表す指定箇所の予め定められた範囲である円内の領域に対して、所定の情報として色を付与する。

【0060】

このとき、第２実施形態の付与部２６は、図８に示されるように、対象の臓器のうちの第１指定箇所の予め定められた範囲に対して、特定された対象の臓器の識別ラベルとは異なる識別ラベルを付与する。そして、第２実施形態の付与部２６は、特定された対象の臓器を分割可能な状態とし、例えば、図８に示されるように臓器Ｏを、第１臓器Ｏ_１と第２臓器Ｏ_２へ分割する。これにより、例えば、術前及び術中において、手術の内容を適切に可視化することができる。また、複数の医療従事者に対して適切に情報を共有することができる。

【0061】

第２実施形態の手術支援システムの他の構成及び作用については、第１実施形態と同様であるため、説明を省略する。

【0062】

以上説明したように、第２実施形態の手術支援システムは、特定された対象の臓器のうちの指定箇所の予め定められた範囲に対して所定の情報を付与する。また、第２実施形態の手術支援システムは、特定された対象の臓器のうちの指定箇所の予め定められた範囲に対して、特定された臓器の識別ラベルとは異なる識別ラベルを付与することにより、対象の臓器を分割する。これにより、医用画像の所望の箇所に対して簡易に情報を付与することができる。

【0063】

なお、本開示の技術は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。

【0064】

例えば、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。

【0065】

なお、上記実施形態でＣＰＵがソフトウェア（プログラム）を読み込んで実行した処理を、ＣＰＵ以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、ＦＰＧＡ（Ｆｉｅｌｄ－Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｇａｔｅ Ａｒｒａｙ）等の製造後に回路構成を変更可能なＰＬＤ（Ｐｒｏｇｒａｍｍａｂｌｅ Ｌｏｇｉｃ Ｄｅｖｉｃｅ）、及びＡＳＩＣ（Ａｐｐｌｉｃａｔｉｏｎ Ｓｐｅｃｉｆｉｃ Ｉｎｔｅｇｒａｔｅｄ Ｃｉｒｃｕｉｔ）等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。または、プロセッサとしては、ＧＰＧＰＵ（Ｇｅｎｅｒａｌ－ｐｕｒｐｏｓｅ ｇｒａｐｈｉｃｓ ｐｒｏｃｅｓｓｉｎｇ ｕｎｉｔ）を用いてもよい。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの１つで実行してもよいし、同種又は異種の２つ以上のプロセッサの組み合わせ（例えば、複数のＦＰＧＡ、及びＣＰＵとＦＰＧＡとの組み合わせ等）で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。

【0066】

また、上記各実施形態では、プログラムがストレージに予め記憶（インストール）されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、ＣＤ－ＲＯＭ（Ｃｏｍｐａｃｔ Ｄｉｓｋ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、ＤＶＤ－ＲＯＭ（Ｄｉｇｉｔａｌ Ｖｅｒｓａｔｉｌｅ Ｄｉｓｋ Ｒｅａｄ Ｏｎｌｙ Ｍｅｍｏｒｙ）、及びＵＳＢ（Ｕｎｉｖｅｒｓａｌ Ｓｅｒｉａｌ Ｂｕｓ）メモリ等の非一時的（ｎｏｎ－ｔｒａｎｓｉｔｏｒｙ）記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。

【0067】

また、本実施形態の各処理を、汎用演算処理装置及び記憶装置等を備えたコンピュータ又はサーバ等により構成して、各処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。もちろん、その他いかなる構成要素についても、単一のコンピュータやサーバによって実現しなければならないものではなく、ネットワークによって接続された複数のコンピュータに分散して実現してもよい。

【0068】

また、上記実施形態では、所定の情報が色情報である場合を主として説明したが、これに限定されるものではない。例えば、臓器に付与する所定の情報は、色情報、文字情報、及び模様情報の少なくとも１つであるようにしてもよい。

【0069】

また、上記実施形態の医用画像処理装置は、情報を付与する対象の臓器を特定する際に、ユーザの操作に応じて３次元医用画像に対し指定される指定箇所を取得し、取得された指定箇所に位置する臓器を対象の臓器として特定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、情報を付与する対象の臓器の候補一覧が表示装置１６に表示され、ユーザが、候補一覧から対象の臓器を選択するようにしてもよい。この場合、医用画像処理装置は、ユーザにより選択された臓器を対象の臓器として特定する。または、例えば、情報を付与する対象の臓器は予め設定されており、医用画像処理装置は、その設定情報に従って対象の臓器を特定するようにしてもよい。そして、医用画像処理装置は、ユーザの操作に応じて、３次元医用画像のうちの特定された対象の臓器に対して所定の情報を付与する。

【0070】

また、上記各実施形態では、１つの臓器が情報を付与する対象の臓器として特定される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。情報を付与する対象の臓器として特定される臓器は複数あってもよい。この場合には、例えば、ユーザは、３次元医用画像に対して複数の指定箇所を指定してもよいし、上述したように表示装置１６に表示された候補一覧から対象の臓器を複数選択するようにしてもよい。

【0071】

また、上記各実施形態では、第２指定箇所に所定の情報が付与される場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。第１指定箇所に対しても所定の情報が付与されても良い。

【0072】

本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】