(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20231228BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/03 360J
A61B6/03 360G
A61B6/03 377
(21)【出願番号】P 2022551112
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(86)【国際出願番号】 JP2020036705
(87)【国際公開番号】W WO2022064712
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度 国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「先進的医療機器・システム等技術開発事業術中の迅速な判断・決定を支援するための診断支援機器・システム開発」「術前と術中をつなぐスマート手術ガイドソフトウェアの開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受けるもの
(73)【特許権者】
【識別番号】517056952
【氏名又は名称】株式会社Kompath
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道家 健仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 玄顕
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 季
(72)【発明者】
【氏名】金 太一
(72)【発明者】
【氏名】小山 博史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 延人
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-106546(JP,A)
【文献】特開2016-123584(JP,A)
【文献】特公平7-120437(JP,B2)
【文献】特開2008-134373(JP,A)
【文献】特表2010-534500(JP,A)
【文献】特開2014-54358(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G06T 19/20
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理装置であって、
ユーザの操作を取得する取得部と、
1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定する特定部と、
前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させる変形部と、
前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する表示制御部と、
を含み、
前記取得部は、前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記特定部は、前記3次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記変形対象の臓器として特定し、
前記変形部は、前記変形対象の臓器を変形させる際に、特定された前記変形対象の臓器のうちの、前記指定箇所の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成し、前記変位マップの変位の度合いに応じて、前記ユーザの操作に応じた前記指定箇所の移動に応答して、前記変形対象の臓器の各部位を変形させる、
医用画像処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記ユーザの操作に応じて初期に指定される前記指定箇所を表す第1指定箇所を取得した後に、前記ユーザの操作に応じて指定される前記指定箇所を表す第2指定箇所を取得し、
前記特定部は、前記3次元医用画像から、取得された前記第1指定箇所に位置する臓器を、前記変形対象の臓器として特定し、
前記変形部は、特定された前記変形対象の臓器のうちの前記第2指定箇所の移動に応笞して、特定された前記変形対象の臓器を変形させる、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記3次元医用画像に写る1以上の臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されており、
前記特定部は、取得した前記指定箇所と、臓器に付与されている前記識別ラベルとに基づいて、前記3次元医用画像から、取得した前記指定箇所に位置する臓器を、前記変形対象の臓器として特定する、
請求項3に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記特定部は、前記変形対象の臓器として複数の臓器を特定し、
前記変形部は、前記ユーザの操作に応じて、特定された前記変形対象の複数の臓器を変形させる、
請求項1、請求項3、及び請求項4の何れか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記ユーザの操作に応じて指定される、前記臓器の一部分又は全部の削除箇所を更に取得し、
前記変形部は、前記変形対象の臓器のうちの前記削除箇所に対応する箇所を削除する、
請求項1、請求項3、請求項4、及び請求項6の何れか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
実際の臓器に対する器具の位置を検知するセンサを更に備え、
前記変形部は、前記センサによって検知された前記器具の位置に応じて、前記3次元医用画像に写る前記変形対象の臓器を変形させる、
請求項8に記載の手術支援システム。
【請求項10】
3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理方法であって、
ユーザの操作を取得し、
1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させ、
前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記3次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記変形対象の臓器として特定し、
前記変形対象の臓器を変形させる際に、特定された前記変形対象の臓器のうちの、前記指定箇所の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成し、前記変位マップの変位の度合いに応じて、前記ユーザの操作に応じた前記指定箇所の移動に応答して、前記変形対象の臓器の各部位を変形させる、
処理をコンピュータが実行する医用画像処理方法。
【請求項11】
3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理プログラムであって、
ユーザの操作を取得し、
1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定し、
前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させ、
前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御し、
前記ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得し、
前記3次元医用画像から、取得された前記指定箇所に位置する臓器を、前記変形対象の臓器として特定し、
前記変形対象の臓器を変形させる際に、特定された前記変形対象の臓器のうちの、前記指定箇所の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成し、前記変位マップの変位の度合いに応じて、前記ユーザの操作に応じた前記指定箇所の移動に応答して、前記変形対象の臓器の各部位を変形させる、
処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-113578号公報には、対象血管部位の血流をシミュレーションにより分析するシステムが開示されている。このシステムは、対象血管部位の三次元形状データに対して外科治療法をシミュレーションすることにより修正し、修正後の三次元形状データを出力し、修正後の三次元形状データに基づいて流体解析による状態量の演算を再実行させ、形状データ修正後の演算結果を修正前の演算結果と比較可能に表示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、手術前、手術中、及び手術後においては、何らかの医用情報に対して所定の情報を付与し、複数の医療従事者によってその医用情報を共有する場面が多い。例えば、手術前においては、複数の医療従事者によって術前シミュレーションが実施される。この場合、例えば、手術が行われる患者の医用画像に写る臓器を変形するなどして、複数の医療従事者によって切開箇所の情報が共有されることが好ましい。また、手術中においても、患者の医用画像に写る臓器を適宜変形するなどして、複数の医療従事者によってその情報が共有され手術が行われることが好ましい。
【0004】
しかし、上記特開2017-113578号公報に開示されているシステムは、対象血管部位の血流をシミュレーションするのみであって、医療従事者であるユーザは医用画像の所望の箇所を簡易に変形させることはできない。
【0005】
このため、従来技術では、ユーザは医用画像の所望の箇所を簡易に変形させることができない、という課題がある。
【0006】
開示の技術は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、医用画像の所望の箇所を簡易に変形させることができる、医用画像処理装置、医用画像処理方法、医用画像処理プログラム、及び手術支援システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本開示の第1態様は、3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理装置であって、ユーザの操作を取得する取得部と、1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定する特定部と、前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させる変形部と、前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する表示制御部と、を含む医用画像処理装置である。
【0008】
本開示の第2態様は、3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理方法であって、ユーザの操作を取得し、1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定し、前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させ、前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する、処理をコンピュータが実行する医用画像処理方法である。
【0009】
本開示の第3態様は、3次元医用画像に写る臓器を変形させる医用画像処理プログラムであって、ユーザの操作を取得し、1以上の臓器が写る3次元医用画像から、変形対象の臓器を特定し、前記ユーザの操作に応じて、前記3次元医用画像のうちの、特定された前記変形対象の臓器を変形させ、前記3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する、処理をコンピュータに実行させるための医用画像処理プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、医用画像の所望の箇所を簡易に変形させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の手術支援システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】実施形態の手術支援システムの利用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図3】実施形態の手術支援システムの利用形態の一例を模式的に示す図である。
【
図6】医用画像処理装置を構成するコンピュータの一例を示す図である。
【
図7】第1実施形態の医用画像処理装置が実行する処理の一例を示す図である。
【
図8】第2実施形態の手術支援システムの概略構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して開示の技術の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
<第1実施形態の手術支援システム>
【0014】
図1に、第1実施形態に係る手術支援システム10を示す。
図1に示されるように、第1実施形態の手術支援システム10は、入力装置12と、医用画像処理装置14と、表示装置16とを備えている。
【0015】
手術支援システム10は、ユーザからの操作情報を取得し、操作情報に応じて医用画像に写る臓器を変形させる。そして、手術支援システム10は、変形された臓器が写った医用画像を表示する。
【0016】
第1実施形態の手術支援システム10は、例えば、
図2及び
図3に示されるような状況下においての利用が想定される。
【0017】
図2の例は、術前シミュレーションの様子を表す図である。
図2に示されるように、医師等の医療従事者Hは、手術支援システム10を利用して術前シミュレーションを実施する。この場合、ある医療従事者によって手術支援システム10の入力装置12が操作され、表示装置16に表示された、患者の医用画像内の臓器が変形される。そして、手術支援システム10の表示装置16から、医療従事者によって臓器が変形された医用画像が表示される。このような医用画像が複数の他の医療従事者によって共有され、術前シミュレーションを円滑に行うことができる。
【0018】
図3の例は、術中の様子を表す図である。
図3に示されるように、医師等の医療従事者は、手術支援システム10を利用して手術を進行する。この場合、ある医療従事者によって手術支援システム10の入力装置12(図示省略)が操作され、患者の医用画像に写る臓器が変形される。そして、手術支援システム10の表示装置16から、医療従事者によって変形された臓器が写る医用画像が表示される。このような医用画像が複数の医療従事者によって共有され、手術を円滑に行うことができる。
【0019】
以下、具体的に説明する。
【0020】
入力装置12は、手術支援システム10を操作するユーザからの操作情報を受け付ける。入力装置12は、例えば、マウス又はキーボード等によって実現される。操作情報は、ユーザの入力装置12の操作に応じて生成される情報である。
【0021】
医用画像処理装置14は、入力装置12により受け付けた操作情報に基づいて、3次元医用画像に写る臓器を変形させる。なお、3次元医用画像には、1以上の臓器が写っている。
【0022】
表示装置16は、医用画像処理装置14から出力された情報を表示する。表示装置16は、例えば、ディスプレイ等によって実現される。
【0023】
図1に示されるように、医用画像処理装置14は、機能的には、医用画像記憶部18と、表示制御部20と、取得部22と、特定部24と、変形部26とを備えている。医用画像処理装置14は、後述するようなコンピュータにより実現される。
【0024】
医用画像記憶部18には、3次元医用画像が格納されている。なお、3次元医用画像に写る各臓器に対しては、臓器を識別するための識別ラベルが予め付与されている。ここで、臓器とは、例えば血管等である。なお、複数の臓器の各々に対して同一の識別ラベルが付与されていてもよい。本実施形態では、臓器が血管である場合を例に説明するがこれに限定されるものではなく、臓器はどのようなものであってもよい。
【0025】
表示制御部20は、医用画像記憶部18に格納されている3次元医用画像を読み出す。そして、表示制御部20は、読み出した3次元医用画像を表示装置16に表示させるように制御する。
【0026】
表示装置16に3次元医用画像が表示されると、ユーザは入力装置12であるマウスを操作し、3次元医用画像に写る所望の箇所にカーソルを合わせる。そして、例えば、ユーザはマウスをクリックするなどして、3次元医用画像に写る臓器に対して初期に指定される指定箇所を表す第1指定箇所を設定する。
【0027】
取得部22は、入力装置12により受け付けたユーザの操作情報を取得する。具体的には、取得部22は、ユーザの操作に応じて3次元医用画像に対し指定される箇所を表す指定箇所を取得する。まず、取得部22は、ユーザにより入力された3次元医用画像中の第1指定箇所を取得する。
【0028】
特定部24は、3次元医用画像から変形対象の臓器を特定する。具体的には、特定部24は、3次元医用画像から、取得部22により取得された第1指定箇所に位置する臓器を変形対象の臓器として特定する。より詳細には、特定部24は、第1指定箇所の座標と、3次元医用画像に写る臓器に付与されている識別ラベルとに基づいて、取得した第1指定箇所に位置する臓器を3次元医用画像中から特定する。
【0029】
次に、ユーザは、入力装置12であるマウスを操作し、特定された臓器を変形させる操作を行う。
【0030】
図4に、特定された臓器の変形方法を説明するための図を示す。
図4は、脳内の血管を表す3次元医用画像の模式図である。例えば、
図4に示されるように、ユーザがマウスを操作し3次元医用画像IM1内のカーソルを動かすと、3次元医用画像IM1内に写る仮想の脳へらNが移動する。そして、
図4に示されるように、ユーザは更にカーソルを動かすことにより仮想的な脳へらNを移動させ、3次元医用画像IM2内に写る臓器である血管Bを変形させるような操作を行う。
【0031】
この場合、取得部22は、第1指定箇所が指定された後のユーザの操作に応じて指定される指定箇所を表す第2指定箇所を取得する。例えば、
図4に示されるように、ユーザがカーソルを動かし血管Bを変形させるように仮想的な脳へらNを移動させた場合、そのカーソルが位置する各箇所が第2指定箇所の系列となる。
【0032】
変形部26は、ユーザの操作に応じて、3次元医用画像のうちの変形対象の臓器を変形させる。具体的には、変形部26は、特定部24により特定された変形対象の臓器のうちの第2指定箇所の移動に応答して、特定部24により特定された変形対象の臓器を変形させる。なお、臓器の変形には、臓器の各部位の削除も含まれる。
【0033】
より詳細には、変形部26は、変形対象の臓器を変形させる際に、特定部24により特定された変形対象の臓器のうちの、第1指定箇所の周辺(例えば、予め定められた範囲内)の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成する。
【0034】
図5に変位マップを説明するための図を示す。
図5に示されるように、3次元医用画像IM1に写る血管Bに対して第1指定箇所P
1が設定された場合を考える。この場合、変形部26は、
図5に示されるように、第1指定箇所P
1の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップM1,M2を生成する。変位マップM1,M2を構成する複数の四角の中の数字は、3次元医用画像内の第1指定箇所P
1の周辺の各部位の変位度合いを表す。変位マップの変位度合いは、数字が小さいほど変位の度合いが大きく、数字が大きいほど変位の度合いが小さい。
図5に示されるように、第1指定箇所P
1と近い箇所ほど変位の度合いは大きく、第1指定箇所P
1から遠い箇所ほど変位の度合いは小さい。このように、変位マップは実際の臓器の変形度合いが考慮されている。
【0035】
変形部26は、特定部24により特定された変形対象の臓器のうちの第2指定箇所と、変位マップの変位の度合いに応じて、特定部24により特定された変形対象の臓器の各部位を変形させる。例えば、ユーザがカーソルを動かし血管Bを変形させるようにマウスを操作し、
図5の3次元医用画像IM2に示されるように第2指定箇所P
2が移動した場合には、その第2指定箇所P
2の移動に応答して血管Bが変形する。これにより、医用画像に写る臓器を簡易に変形させることができる。
【0036】
表示制御部20は、変形部26により変形された臓器が写る3次元医用画像を表示装置16に表示させるように制御する。
【0037】
表示装置16は、表示制御部20による制御に従い3次元医用画像を表示する。
【0038】
手術支援システム10を操作するユーザ等は、表示装置16から表示された3次元医用画像を確認し、手術等に活用する。
【0039】
医用画像処理装置14は、例えば、
図6に示すコンピュータ50で実現することができる。コンピュータ50はCPU51、一時記憶領域としてのメモリ52、及び不揮発性の記憶部53を備える。また、コンピュータ50は、外部装置及び出力装置等が接続される入出力interface(I/F)54、及び記録媒体に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部55を備える。また、コンピュータ50は、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークI/F56を備える。CPU51、メモリ52、記憶部53、入出力I/F54、R/W部55、及びネットワークI/F56は、バス57を介して互いに接続される。
【0040】
記憶部53は、Hard Disk Drive(HDD)、Solid State Drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部53には、コンピュータ50を機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU51は、プログラムを記憶部53から読み出してメモリ52に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0041】
[手術支援システムの動作]
【0042】
次に、第1実施形態の手術支援システム10の具体的な動作について説明する。
【0043】
まず、手術支援システム10の医用画像処理装置14の表示制御部20は、医用画像記憶部18に格納されている3次元医用画像を読み出し、読み出した3次元医用画像を表示装置16に表示させるように制御する。これにより、3次元医用画像がユーザに対して提示される。
【0044】
ユーザは入力装置12であるマウスを操作し、3次元医用画像に写る所望の箇所にカーソルを合わせ、マウスをクリックするなどして3次元医用画像に写る変形対象の臓器に対して第1指定箇所を設定する。
【0045】
医用画像処理装置14は、入力装置12からの第1指定箇所の入力を受け付けると、
図7に示される各処理を実行する。なお、医用画像処理装置14は、第1指定箇所の入力を受け付ける毎に
図7に示される各処理を実行する。
【0046】
ステップS100において、取得部22は、ユーザにより入力された3次元医用画像中の第1指定箇所を取得する。
【0047】
次に、ステップS102において、特定部24は、上記ステップS100で取得された第1指定箇所の座標と、3次元医用画像に写る臓器に付与されている識別ラベルとに基づいて、第1指定箇所に位置する臓器を3次元医用画像中から特定する。第1指定箇所に位置する臓器は、変形対象の臓器として特定される。
【0048】
ステップS104において、取得部22は、上記ステップS100で取得された第1指定箇所が指定された後の、ユーザの操作に応じて指定される第2指定箇所を取得する。
【0049】
ステップS106において、変形部26は、上記ステップS102で特定された変形対象の臓器のうち、上記ステップS100で取得された第1指定箇所の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成する。
【0050】
ステップS108において、変形部26は、上記ステップS104で取得された第2指定箇所と、上記ステップS106で生成された変位マップの変位の度合いに応じて、上記ステップS102で特定された変形対象の臓器の各部位を変形させる。
【0051】
ステップS110において、表示制御部20は、上記ステップS108で変形された臓器が写る3次元医用画像を表示装置16に表示させるように制御する。
【0052】
ステップS104~ステップS110の各処理は、繰り返し実行される。これにより、例えば、3次元医用画像に写る変形対象の臓器が変形され、その3次元医用画像が表示装置16に表示される。
【0053】
なお、ユーザはマウスを操作し、3次元医用画像中の変形対象の臓器が変形された後に、当該臓器の一部を削除(いわゆるラッソー処理)するような操作をすることもできる。この場合には、取得部22は、ユーザの操作に応じて指定される、臓器の一部分又は全部の削除を表す削除箇所を更に取得する。ユーザは、予め設定された、臓器の削除を表す操作をするなどして削除箇所を指定する。そして、変形部26は、変形対象の臓器のうちの削除箇所に対応する箇所を削除する。なお、変形対象の臓器が変形された後の状態でラッソー処理をすると、臓器の変形前では不可能であった切断が可能となる。
【0054】
医用画像処理装置14を操作するユーザは、表示装置16から出力された3次元医用画像を確認し、手術等に活用する。
【0055】
以上説明したように、第1実施形態の手術支援システム10は、ユーザの操作に応じて指定される箇所を表す指定箇所を取得する。手術支援システム10は、1以上の臓器が写る3次元医用画像から、取得された指定箇所に位置する臓器を変形対象の臓器として特定する。手術支援システム10は、ユーザの操作に応じた指定箇所の移動に応答して、特定された変形対象の臓器を変形させる。手術支援システム10は、変形対象の臓器が変形された3次元医用画像を表示装置に表示させるように制御する。これにより、医用画像の所望の箇所を簡易に変形することができる。
【0056】
また、第1実施形態の手術支援システム10は、ユーザの操作に応じて初期に指定される指定箇所を表す第1指定箇所を取得した後に、ユーザの操作に応じて指定される指定箇所を表す第2指定箇所を取得する。手術支援システム10は、3次元医用画像から、取得された第1指定箇所に位置する臓器を変形対象の臓器として特定し、特定された変形対象の臓器のうちの第2指定箇所の移動に応答して、特定された変形対象の臓器を変形させる。なお、手術支援システム10は、特定された臓器のうちの、第1指定箇所の周辺の各部位の変位の度合いを表す変位マップを生成し、変位マップの変位の度合いに応じて、変形対象の臓器の各部位を変形させる。これにより、現実の臓器の変形と同様の変形がコンピュータ上で実現される。
【0057】
<第2実施形態の手術支援システム>
【0058】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の手術支援システムの構成のうち第1実施形態と同様の部分は、同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
第2実施形態の手術支援システムは、実際の臓器に対する器具の位置を検知するセンサを更に備え、センサによって検知された器具の位置に応じて、3次元医用画像に写る変形対象の臓器を変形させる点が第1実施形態と異なる。
【0060】
図8に、第2実施形態に係る手術支援システム210を示す。
図8に示されるように、第2実施形態の手術支援システム210は、センサ212と、医用画像処理装置14と、表示装置16とを備えている。
【0061】
センサ212は、実際の臓器に対する器具の位置を検知する。
【0062】
第2実施形態の変形部226は、センサ212によって検知された器具の位置に応じて、第1実施形態と同様に、3次元医用画像に写る変形対象の臓器を変形させる。これにより、例えば、術中において、手術の内容を適切に可視化することができる。また、複数の医療従事者に対して適切に情報を共有することができる。
【0063】
第2実施形態の手術支援システム210は上記
図3のような手術中において利用することが可能である。上記
図3のような手術中において第2実施形態の手術支援システム210を利用する場合には、医師が保持する術具にセンサ212が設置されており、センサ212によって検知された実際の臓器に対する術具の位置に応じて、3次元医用画像に写る変形対象の臓器を変形させ、その3次元医用画像が表示装置16に表示される。これにより、例えば、どの程度術具を動かせば良いのかといったことが適切に可視化され、円滑に手術を行うことができる。また、センサ212によって検知された実際の臓器に対する術具の位置を3次元医用画像内の仮想の術具の位置へ反映させ、例えば、3次元医用画像内の仮想の術具の付近の臓器を半透明にすることにより、医師が術具によって変形させようとしている臓器の奥には何が存在しているのか、といった情報を適切に可視化することができる。これにより、円滑に手術を行うことができる。
【0064】
第2実施形態の手術支援システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
以上説明したように、第2実施形態の手術支援システムは、実際の臓器に対する器具の位置を検知するセンサを更に備え、センサによって検知された器具の位置に応じて、3次元医用画像に写る変形対象の臓器を変形させる。これにより、例えば、どの程度器具を動かせば良いのかといったことが適切に可視化され、円滑に手術を行うことができる。また、センサ212によって検知された実際の臓器に対する術具の位置を3次元医用画像内の仮想の術具の位置へ反映させ、例えば、3次元医用画像内の仮想の術具の付近の臓器を半透明にすることにより、医師が術具によって変形させようとしている臓器の奥には何が存在しているのか、といった情報を適切に可視化することができる。
【0066】
なお、本開示の技術は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0067】
例えば、上記各実施形態の医用画像処理装置は、変形対象の臓器を特定する際に、ユーザの操作に応じて3次元医用画像に対し指定される指定箇所を取得し、取得された指定箇所に位置する臓器を変形対象の臓器として特定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、変形対象の臓器の候補一覧が表示装置16に表示され、ユーザが、候補一覧から変形対象の臓器を選択するようにしてもよい。この場合、医用画像処理装置は、ユーザにより選択された臓器を変形対象の臓器として特定する。または、例えば、変形対象の臓器は予め設定されており、医用画像処理装置は、その設定情報に従って変形対象の臓器を特定するようにしてもよい。そして、医用画像処理装置は、ユーザの操作に応じて、3次元医用画像のうちの特定された変形対象の臓器を変形させる。
【0068】
また、上記各実施形態では、1つの臓器が変形対象の臓器として特定される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。変形対象の臓器として特定される臓器は複数あってもよい。この場合には、例えば、ユーザは、3次元医用画像に対して複数の指定箇所を指定してもよいし、上述したように表示装置16に表示された候補一覧から変形対象の臓器を複数選択するようにしてもよい。
【0069】
また、医用画像処理装置は、変形対象の臓器として臓器Aが特定された場合、その臓器Aと直接的又は間接的に繋がっている臓器Bも変形対象の臓器として特定するようにしてもよい。この場合には、医用画像処理装置は、臓器Aの変形に応じて臓器Bも変形させる。なお、この場合、医用画像処理装置は、例えば、上記変位マップの変位の度合いに応じて臓器A及び臓器Bを変形させる。
【0070】
また、例えば、本願明細書中において、プログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0071】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。または、プロセッサとしては、GPGPU(General-purpose graphics processing unit)を用いてもよい。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0072】
また、上記各実施形態では、プログラムがストレージに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0073】
また、本実施形態の各処理を、汎用演算処理装置及び記憶装置等を備えたコンピュータ又はサーバ等により構成して、各処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。もちろん、その他いかなる構成要素についても、単一のコンピュータやサーバによって実現しなければならないものではなく、ネットワークによって接続された複数のコンピュータに分散して実現してもよい。
【0074】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。