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▶ 日本製粉株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アメリカンドッグ用ミックス粉
(51)【国際特許分類】
   A21D 10/00 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A21D10/00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020141306
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037271
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】王 旭
(72)【発明者】
【氏名】糸井 伸行
(72)【発明者】
【氏名】梁田 健一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 久美子
(72)【発明者】
【氏名】安田 健一
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-051718(JP,A)
【文献】特開平04-040870(JP,A)
【文献】特開2014-005394(JP,A)
【文献】特表2004-517637(JP,A)
【文献】American Hot Dog,MINTEL[online],2006年04月,[令和5年8月10日検索],インターネット<URL:https://www.gndp.com/sinatra/recordpage/433026/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アメリカンドッグ用ミックス粉中、コーングリッツを0.5質量%以上10質量%以下、リン酸架橋澱粉を3質量%以上18質量%以下含むアメリカンドッグ用ミックス粉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アメリカンドッグ用ミックス粉に関する。
【背景技術】
【0002】
アメリカンドッグとは、串に刺したソーセージ等の具材を、穀粉、糖類、膨張剤等を含むバッターで被覆しフライして製造されるが、保存、流通等の目的でフライ後冷凍し、これを電子レンジで加熱すること(レンジアップ)が行われている。
レンジアップをすると衣のサクサクとした食感が損なわれる傾向があり好ましくない食感になるので、これを防止する方法が試みられている。
例えば、小麦蛋白質を湿ふ換算で5重量%以下含有するバッターを用いてアメリカンドッグを製造することを特徴とする電子レンジ調理により衣にクリスピー感のあるアメリカンドッグの製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-42815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フライ後冷凍したアメリカンドッグをレンジアップした場合に、サクサクとした食感が損なわれ難くなるアメリカンドッグ用ミックス粉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アメリカンドッグ用ミックス粉に特定の割合でコーングリッツ及びリン酸架橋澱粉を使用することで、フライ後冷凍したアメリカンドッグをレンジアップした場合に、サクサクとした食感が損なわれ難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、アメリカンドッグ用ミックス粉中、コーングリッツを0.5質量%以上10質量%以下、リン酸架橋澱粉を3質量%以上18質量%以下含むアメリカンドッグ用ミックス粉である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のアメリカンドッグ用ミックス粉を使用したアメリカンドッグは、フライ後冷凍してレンジアップした場合に、サクサクとした食感が損なわれ難い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアメリカンドッグ用ミックス粉は、アメリカンドッグ用ミックス粉中、コーングリッツを0.5質量%以上20質量%以下、リン酸架橋澱粉を3質量%以上30質量%以下含む以外は、従来のアメリカンドッグ用ミックス粉と同様の配合でよい。
コーングリッツやリン酸架橋澱粉は、従来のアメリカンドッグ用ミックス粉において、穀粉及び/又は澱粉を置き換えることにより配合することが出来る。
従って、膨張剤や糖類等は、従来のアメリカンドッグ用ミックス粉と同様な配合割合となる。
【0008】
本発明で使用するコーングリッツとは、穀皮と胚芽を除いたトウモロコシを粉砕し、篩目開き2000μmスルー、150μmオーバー程度の粒度に調製したものをいい、従来からイングリッシュマフィン等のベーカリー製品や醸造用として市販されている。
本発明で使用するコーングリッツは、これらの市販品を使用することができる。
アメリカンドッグ用ミックス粉中、コーングリッツの配合割合が0.5質量%未満では、十分な効果を得ることができず、20質量%を超えるとフライ時の保形性が悪くなるため好ましくない。
【0009】
本発明で使用するリン酸架橋澱粉とは、トリメタリン酸ナトリウム(またはオキシ塩化リン)でエステル化した澱粉をいい、リン酸架橋澱粉の原料となる澱粉には、特に限定はなく、タピオカ澱粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉等が使用できる。
リン酸架橋澱粉は、従来からスナック菓子、揚げ物、ベーカリー食品等の食感改良を目的とした加工澱粉として市販されているが、本発明で使用するリン酸架橋澱粉は、これらの市販品を使用することができる。
アメリカンドッグ用ミックス粉中、リン酸架橋澱粉の配合割合が3質量%未満では、十分な効果を得ることができず、30質量%を超えるとフライ時の保形性が悪くなるため好ましくない。
【0010】
本発明のアメリカンドッグ用ミックス粉の調製方法や使用方法は、従来からのアメリカンドッグ用ミックス粉と同様でよく特に制限はない。
本発明のアメリカンドッグ用ミックス粉を使用して得られたアメリカンドッグの保存、流通方法、レンジアップ等も従来からのアメリカンドッグと同様でよく特に制限はない。
【実施例
【0011】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0012】
[コーングリッツ、リン酸架橋澱粉の配合割合
大豆蛋白質3質量部、粉末油脂3質量部、ベーキングパウダー3質量部、食塩1質量部、乳化剤0.5質量部、キサンタンガム0.3質量部、グアガム0.2質量部、砂糖22質量部、及び、表1に示す割合のコーングリッツ、リン酸架橋タピオカ澱粉、コーンフラワー、薄力小麦粉をよく混ぜてアメリカンドッグ用ミックス粉を調製した。
表1中、配合量の単位は質量部である。
このアメリカンドッグ用ミックス粉100質量部に冷水75質量部を加え、キッチンエイドのビーターで1速1分間、2速2分間撹拌してバッター生地を調製した。
串刺しソーセージ30gに50gの前記バッターを付着し、180℃のサラダオイルで5分30秒間フライしてアメリカンドッグを得た。
得られたアメリカンドッグを-40℃で30分間凍結し、-20℃で7日間保存した後、600Wの電子レンジで1分間、加熱し以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
保形性が〇~△で食感の平均点が3.5点以上を合格とした。
なお、保形性の評価はフライ時に行っている。
得られた評価結果を表2に示す。
・保形性
〇:問題なく製造できる保形性がある
△:やや保形性に劣るが許容範囲内である
×:保形性が劣り許容範囲外である
・食感
5点 非常にサクサクして、非常に良い
4点 サクサクして、良い
3点 普通
2点 ややサクサクせずやや歯切れが悪く、やや悪い
1点 サクサクせず、歯切れが悪く、悪い
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
比較例4、6、7、8は、食感は優れていたが、保形性が劣り不合格となった。
【0016】
[実施例13~14]リン酸架橋澱粉の原料となる澱粉の種類
実施例7において、リン酸架橋タピオカ澱粉を表3に示すリン酸架橋澱粉に変更した以外は、実施例7と同様にして評価を行った。
得られた評価結果を表4に示す。
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
リン酸架橋澱粉の原料となる澱粉の種類が異なっていても十分な効果が得られた。
タピオカ澱粉とコーンスターチを原料とするリン酸架橋澱粉が特に優れていた。
【0020】
[比較例9~12]澱粉の加工方法による違い
実施例7において、リン酸架橋タピオカ澱粉を表5に示す澱粉に変更した以外は、実施例7と同様にして評価を行った。
得られた評価結果を表6に示す。
【0021】
【表5】
【0022】
【表6】
【0023】
リン酸架橋以外の加工方法では十分な効果を得ることが出来なかった。