(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】乾燥野菜を含むバッターミックス
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20231228BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
(21)【出願番号】P 2020167544
(22)【出願日】2020-10-02
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】溝口 久美子
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-262794(JP,A)
【文献】特開2018-027039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分値15質量%以下となるように乾燥した目開き10mmの篩を抜け目開き200μmの篩上に残る大きさの
ジャガイモ、かぼちゃ、ニンジン、キャベツ、ニンニク、しょうがからなる群から選択される1種又は2種以上である野菜をバッターミックス中
10質量%以上
20質量%以下含むバッターミックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥野菜を含むバッターミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
揚げ物の衣の食感を改良するために、バッターに乾燥野菜等の粉末を使用することが知られている。
例えば、油切れが良く衣の食感がソフトで歯切れ歯ざわり等が優れた衣を得るためにカボチャの乾燥粉末を衣液に使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。
また、改良された食感(中具のジューシーさ、歯切れの良いサクサクとした衣)や食味を有する揚げ物類を提供することを課題として、澱粉性原料100質量部に対してグリーンバナナパウダーを0.4~12.5質量部含む揚げ物類用ミックス粉が知られている(例えば特許文献2参照)。
なお、「グリーンバナナパウダー」とはグリーンバナナ(バナナの未熟果)を皮ごと、あるいは皮を除いた状態で粉末化したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-71849号公報
【文献】特開2020-48467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、衣の食感がサクサクして歯切れが良く、衣と具材の間の、ぬめりが少ない、経時的な食感劣化や電子レンジで再加熱した場合の食感劣化も抑えられた揚げ物を得ることが出来る付着性が良好なバッターミックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、水分値15質量%以下となるように乾燥した特定の大きさの野菜をバッターミックス中1質量%以上25質量%以下含むバッターミックスを使用することで、衣の食感がサクサクして歯切れが良く、衣と具材の間の、ぬめりが少ない、経時的な食感劣化や電子レンジで再加熱した場合の食感劣化も抑えられた揚げ物を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、水分値15質量%以下となるように乾燥した目開き10mmの篩を抜け目開き200μmの篩上に残る大きさのジャガイモ、かぼちゃ、ニンジン、キャベツ、ニンニク、しょうがからなる群から選択される1種又は2種以上である野菜をバッターミックス中10質量%以上20質量%以下含むバッターミックスである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のバッターミックスを使用することで、衣の食感がサクサクして歯切れが良く、衣と具材の間の、ぬめりが少ない、経時的な食感劣化や電子レンジで再加熱した場合の食感劣化も抑えられた揚げ物を得ることが出来る。
バッターの付着性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用できる野菜は、水分値15質量%以下となるように乾燥することが出来れば特に限定はないが、例えば、ジャガイモ、かぼちゃ、ニンジン、キャベツ、しょうが、ニンニク等を挙げることができる。
これらの野菜は、乾燥後の大きさが、目開き10mmの篩を抜け200μm上に残る大きさである。
この大きさであれば、形状には特に限定はなく、例えば、形状として短冊状、粒状、棒状等を挙げることが出来る。
乾燥後の大きさは、乾燥前の野菜の大きさを適宜調整することで調整できるので、乾燥後の篩分けによるロスを減らすために乾燥前に大きさを適宜調整しておくことが好ましい。
フリーズドライの場合は、乾燥前と後で大きさが、あまり変化しないので調整しやすい。
【0008】
本発明において、野菜の乾燥方法は、水分値15質量%以下となるように乾燥することが出来れば特に限定はないが、例えば、熱風乾燥、フリーズドライ(凍結乾燥)等を挙げることができる。
食感の面で、フリーズドライによる乾燥が好ましい。
【0009】
本発明において、野菜を乾燥する前に60~100℃でブランチング処理する。なお、バッター液中でも野菜の軟化を防ぎ形状を保ちやすくするためには、酵素の働きを抑える低温ブランチング(60~80℃)が好ましい。
【0010】
本発明は乾燥野菜をバッターミックスに使用することが特徴であり、これ以外の資材は、従来のバッターミックスと同様でよく、調製方法や使用方法も従来のバッターミックスと同様でよく特に限定はない。
例えば、穀粉、澱粉、加工澱粉、卵粉、糖類、調味料、増粘剤、膨脹剤、乳化剤、香料等を挙げることができる。
なお、バッターの粘度を調整する必要がある場合は、バッターミックスへの加水量を増減することで調整することが出来る。
【0011】
使用できる具材も従来のバッターミックスに使用できる具材が使用でき、例えば、
肉類、魚介類、野菜等を挙げることができる。
製造できる揚げ物の種類にも特に限定はなく、例えば、唐揚げ、ナゲット、フライドチキン、トンカツ、天ぷら等を挙げることができる。
【実施例】
【0012】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0013】
・試験例1 乾燥野菜の配合量
[実施例2~4、参考例1、5、比較例1~4]
ジャガイモを水洗いして汚れを落とした後、皮を剥いて、3mm×3mm×10mmの棒状にカットした後、ブランチング処理をし、真空乾燥機(共和真空技術株式会社製RLEIII-103)を使用してフリーズドライし水分値15質量%の乾燥ジャガイモを得た。
これを目開き10mmの篩で篩い、篩を抜けた乾燥ジャガイモを目開き200μmの篩で篩って乾燥ジャガイモの大きさを、目開き10mmの篩を抜け目開き200μmの篩上に残る大きさに調整した。
これを表1に示す割合で配合し、よく混ぜてバッターミックスを得た。
表中、小麦粉組成物は、小麦粉30質量部、コーンフラワー30質量部、タピオカ澱粉39質量部、ベーキングパウダー1質量部をよく混合したものである。
【0014】
比較例3として、実施例2において、乾燥ジャガイモを、すり鉢で粉砕し目開き200μmの篩でふるって乾燥ジャガイモの大きさを目開き200μmの篩を抜ける大きさの粉状の乾燥ジャガイモに変更した以外は実施例2と同様にしてバッターミックスを得た。
比較例4として、実施例2において、ブランチング処理前のジャガイモを11mm×11mm×18mmにカットし、篩方法を、目開き10mmの篩で篩い乾燥ジャガイモの大きさを目開き10mmの篩を抜けない大きさのフレーク状の乾燥ジャガイモに変更した以外は実施例2と同様にしてバッターミックスを得た。
【0015】
得られたバッターミックス100質量部に水150質量部を加えバッターを調製した。
鶏もも肉20gを前記バッター10gで被覆し、170℃のサラダ油で4分間油揚して鶏のから揚げを得た。
フライ後、放冷して、評価を行った(フライ直後の食感として評価)。
さらに、25℃で3時間放置し評価を行った(3時間後の食感として評価)。
また、25℃で3時間放置し500Wの電子レンジで1個あたり15秒間、加熱し評価を行った(レンジアップの食感として評価)。
評価は、以下の評価基準で10名のパネラーにより乾燥野菜を含まないフライ直後の食感をコントロール(3点)として行った。
・食感(ぬめり)
5点・・・ぬめりがなく、良い
4点・・・ややぬめりを感じるが、やや良い
3点・・・普通
2点・・・ぬめりを感じ、やや悪い
1点・・・ぬめりを非常に感じ、悪い
・食感(歯切れ)
5点・・・歯切れが良くサクサクしていて、良い
4点・・・やや歯切れが良くサクサクして、やや良い
3点・・・普通
2点・・・やや歯切れが悪く、噛み切りにくく、やや悪い
1点・・・歯切れが悪く、噛み切りにくく、悪い
【0016】
また、バッターの付着性による外観を以下の評価基準により評価した。
・外観
○・・・全体的にバッターの付着性が均一でムラがなく良い
△・・・一部バッターの付着性にムラがあるものの許容できる範囲
×・・・バッターの付着性にムラがあり外観が悪く許容範囲外
得られた評価結果を表2、表3に示す。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
バッターミックス中に、乾燥ジャガイモを1~25質量%配合したものはフライ直後、3時間後、レンジアップにおいて、ぬめりが少なく、歯切れも優れていた。
比較例1は、十分な効果が得られず不適となった。
比較例2は、外観が許容範囲外となり不適となった。
比較例3は、食感が劣り、比較例4は、外観が許容範囲外となり、それぞれ不適となった。
【0021】
・試験例2 乾燥野菜の種類
[実施例6~10]
実施例2において、表4に示すとおり乾燥野菜を変更した以外は、実施例2と同様にして評価を行った。
得られた評価結果を表5、表6に示す。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
ジャガイモ以外の乾燥野菜でもフライ直後、3時間後、レンジアップにおいて食感が優れ、外観も優れていた。