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特許7411381ダイシングテープ、及び半導体部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ダイシングテープ、及び半導体部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231228BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20231228BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20231228BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J7/35
C09J201/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019195485
(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公開番号】P2021068877
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑奈
(72)【発明者】
【氏名】千嶋 憲治
(72)【発明者】
【氏名】野村 直宏
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113356(JP,A)
【文献】特開2018-170427(JP,A)
【文献】特開昭59-188940(JP,A)
【文献】特開平04-147623(JP,A)
【文献】特開2018-081954(JP,A)
【文献】特開2013-155295(JP,A)
【文献】特開2006-339652(JP,A)
【文献】特開2012-156511(JP,A)
【文献】国際公開第2018/083982(WO,A1)
【文献】特開2019-9324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 7/35
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイシングテープ本体と、前記ダイシングテープ本体を保護する保護層とを有するダイシングテープであって、
前記ダイシングテープ本体は、粘着剤層と、前記粘着剤層を支持する第1基材フィルムとを有し、
前記保護層は、第2基材フィルムと、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムに接合する接着剤層とを有し、
前記ダイシングテープがリフロー工程に適用されるダイシングテープであると共に、前記ダイシングテープがリフロー工程に耐える耐熱性を有することを特徴とするダイシングテープ。
【請求項2】
前記粘着剤層がエネルギー線の照射により硬化して、粘着力を低下させることができ、前記第1基材フィルム、前記第2基材フィルム及び前記接着剤層が前記エネルギー線を透過することができ、前記エネルギー線の照射後においても、前記接着剤層が、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムに接合することを特徴とする請求項1に記載のダイシングテープ。
【請求項3】
前記ダイシングテープの伸び率が80%以上であり、前記接着剤層の伸び率が、前記第1基材フィルム及び前記第2基材フィルムの伸び率より大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のダイシングテープ。
【請求項4】
前記第1基材フィルム及び前記第2基材フィルムが、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素樹脂から選択される樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のダイシングテープ。
【請求項5】
前記粘着剤層の、前記第1基材フィルムとは反対側の粘着面に、剥離フィルムを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のダイシングテープ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のダイシングテープを貼り付けた半導体ウエハを半導体チップに切断する工程、
前記リフロー工程、及び
前記ダイシングテープから前記半導体チップを剥離する工程
を少なくとも有することを特徴とする、半導体部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングテープ、及び半導体部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイシングテープは、半導体部品の製造工程に用いられるものである。具体的には、特許文献1~3に記載されているように、ダイシングテープ上に貼り付けた半導体ウエハを半導体チップに切断(ダイシング)した後に、ダイシングテープから半導体チップを剥離(ピックアップ)する。特許文献4に記載のダイシングダイボンディングシートの場合は、シート上で半導体ウエハをダイシングした後、半導体チップをフィルム状接着剤とともに基材上の粘着剤層から剥離(ピックアップ)する。
【0003】
特許文献1には、基材フィルムの片面に、光架橋型帯電防止粘着剤層を有するダイシングテープが記載されている。
特許文献2には、ループスティフネスが所定の範囲内である基材フィルム上に粘着剤層を有するダイシングテープが記載されている。
特許文献3には、紫外線透過性の基材フィルム上に、ポリチオールを含む紫外線硬化型粘着剤層を有するダイシングテープが記載されている。
特許文献4には、基材上に粘着剤層とフィルム状接着剤を備えるダイシングダイボンディングシートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-105292号公報
【文献】特開2010-225753号公報
【文献】特開2010-251722号公報
【文献】国際公開第2017/154619号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイシングテープ上で半導体ウエハをダイシングした後、半導体チップをピックアップする際には、紫外線照射等により粘着剤層の粘着力を低下させる工程、ダイシングテープに対して長手方向に引き延ばす工程(エキスパンド)、及びダイシングテープの裏面(基材側)からピンを用いて突き上げる工程等が行われる。ダイシングした後の半導体チップは、上記所定の工程を経てピックアップするまで、ダイシングテープ上に保持される必要がある。しかし、ダイシングの際にダイシングテープが劣化すると、ダイシングテープがエキスパンドの張力に耐久できずに切れたり、意図せずに半導体チップがダイシングテープから脱落したりする場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ダイシングした後のダイシングテープの強度を維持することが可能なダイシングテープ、及び半導体部品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、ダイシングテープ本体と、前記ダイシングテープ本体を保護する保護層とを有し、前記ダイシングテープ本体は、粘着剤層と、前記粘着剤層を支持する第1基材フィルムとを有し、前記保護層は、第2基材フィルムと、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムに接合する接着剤層とを有することを特徴とするダイシングテープを提供する。
【0008】
前記粘着剤層がエネルギー線の照射により硬化して、粘着力を低下させることができ、前記第1基材フィルム、前記第2基材フィルム及び前記接着剤層が前記エネルギー線を透過することができ、前記エネルギー線の照射後においても、前記接着剤層が、前記第2基材フィルムを前記第1基材フィルムに接合する構成でもよい。
【0009】
前記ダイシングテープの伸び率が80%以上であり、前記接着剤層の伸び率が、前記第1基材フィルム及び前記第2基材フィルムの伸び率より大きい構成でもよい。
前記第1基材フィルム及び前記第2基材フィルムが、ポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素樹脂から選択される樹脂フィルムからなる構成でもよい。
前記粘着剤層の、前記第1基材フィルムとは反対側の粘着面に、剥離フィルムを有する構成でもよい。
【0010】
また、本発明は、上記のダイシングテープを貼り付けた半導体ウエハを半導体チップに切断する工程、及び前記ダイシングテープから前記半導体チップを剥離する工程を少なくとも有することを特徴とする、半導体部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ダイシングテープ本体がダイシングの際に劣化しても、保護層により、ダイシングした後のダイシングテープの強度を維持することができる。このため、半導体部品の製造方法においても、ダイシングテープから半導体チップが脱落することを抑制して、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ダイシングテープの一例を示す断面図である。
図2】ダイシングした後のダイシングテープの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0014】
本実施形態のダイシングテープ10は、半導体ウエハ等の被着体(図示せず)のダイシングに使用されるダイシングテープ本体15と、ダイシングテープ本体15を保護する保護層16とを有する。ダイシングテープ本体15は、粘着剤層11と、粘着剤層11を支持する第1基材フィルム12とを有する。保護層16は、第2基材フィルム14と、第2基材フィルム14を第1基材フィルム12に接合する接着剤層13とを有する。
【0015】
粘着剤層11は、粘着力により半導体ウエハ等の被着体を固定する。被着体は、粘着剤層11の粘着面11aに固定される。粘着剤層11を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。粘着剤層11に被着体が固定されないうちは、粘着剤層11の粘着面11aに、剥離フィルム17を有してもよい。第1基材フィルム12は、粘着剤層11の粘着面11aとは反対側の面に積層されている。粘着剤層11と第1基材フィルム12との接合力を向上するため、第1基材フィルム12は、粘着剤層11との間にアンカー剤層を有してもよい。
【0016】
第1基材フィルム12としては、特に限定されないが、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。また、上記第1基材フィルム12を構成する樹脂の光学特性は特に限定されず、透明、半透明、不透明を問わず用いることができる。第1基材フィルム12の厚さは、特に限定されないが、例えば5~500μmが挙げられる。
【0017】
粘着剤層11を固定した半導体ウエハ等の被着体21を半導体チップ等の個片状に切断するダイシング工程においては、被着体21を切断するダイシング溝22が、粘着剤層11の厚さ方向の少なくとも一部まで達してもよい。さらに図2に示すように、ダイシング溝22が、第1基材フィルム12の厚さ方向の少なくとも一部まで達してもよい。従来技術のダイシングテープでは、ダイシング溝による傷が基材に達すると、場合によっては、ダイシングテープがエキスパンドの張力に耐久できなくなる等の問題があった。
【0018】
本実施形態のダイシングテープ10では、保護層16として、接着剤層13を介して、第2基材フィルム14が第1基材フィルム12に接合されている。第2基材フィルム14は、第1基材フィルム12と同様に、エキスパンドの張力等に耐久できる強度を有する。これにより、ダイシングテープ本体15の第1基材フィルム12が傷等により劣化しても、保護層16によりダイシングテープ10の強度を維持することができる。
【0019】
第2基材フィルム14としては、特に限定されないが、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル樹脂;ナイロン等のポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。また、上記第2基材フィルム14を構成する樹脂の光学特性は特に限定されず、透明、半透明、不透明を問わず用いることができる。第2基材フィルム14の厚さは、特に限定されないが、例えば5~500μmが挙げられる。
【0020】
接着剤層13を構成する接着剤としては、特に限定されないが、粘着剤(感圧型接着剤)、硬化型接着剤、反応型接着剤、溶剤型接着剤等が挙げられる。接着剤の具体例としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、オレフィン系ヒートシール剤等の少なくとも1種が挙げられる。接着剤層13の厚さは、特に限定されないが、例えば10~500μmが挙げられる。
【0021】
粘着剤層11は、上述したピックアップ工程において、被着体に対する粘着力を低下させることができることが好ましい。例えば粘着剤層11に光硬化性樹脂や光重合開始剤等の感光性材料を添加することにより、粘着剤層11が紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けたときに硬化して、粘着力を低下させることができる。この場合、第1基材フィルム12、接着剤層13及び第2基材フィルム14は、粘着剤層11を硬化させるためのエネルギー線を透過させることが好ましい。例えば、第1基材フィルム12及び第2基材フィルム14の透過率が365nm、405nm又はこれらの間の波長において15%以上であり、接着剤層13の透過率が第1基材フィルム12及び第2基材フィルム14の透過率と同じ波長において80%以上であることが好ましい。また、接着剤層13は、エネルギー線の照射後においても、接着力が実質的に変化せず、第2基材フィルム14を第1基材フィルム12に接合していることが好ましい。このためには、接着剤層13が光硬化性樹脂や光重合開始剤等の感光性材料を含有しないことが好ましい。
【0022】
ダイシング後の被着体をダイシングテープ10の粘着剤層11から剥離するピックアップ工程において、エキスパンド工程を行う場合は、ダイシングテープ10の伸び率が80%以上であることが好ましい。また、接着剤層13の伸び率が、第1基材フィルム12及び第2基材フィルム14の伸び率より大きいことが好ましい。ここで、伸び率は、例えばフィルムが定速の引張りにより破断した時点の伸びを%で表した値である。具体的には、引張試験前の試料の長さをLoとし、破断時の試料の長さをLとしたとき、伸び率は(L-Lo)/Lo×100(%)で表される。伸び率が大きいほど、引張力に対して柔軟なフィルムである。
【0023】
第1基材フィルム12及び第2基材フィルム14は、耐熱性の高い樹脂として、例えば加熱温度200℃~260℃での加熱処理に対する耐熱性を有することが好ましい。耐熱性樹脂の具体例としては、例えばポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。
【0024】
第1基材フィルム12又は第2基材フィルム14の少なくとも一方において、耐熱性と柔軟性を兼ね備える樹脂として、例えば炭素数が3個以上の脂肪族ユニットを、芳香族ユニット間に有する、高延伸性のポリイミド樹脂を用いることが好ましい。さらに脂肪族ユニットは、炭素数が1~10程度のアルキレン基を有するポリアルキレンオキシ基を含むことが好ましい。ポリイミド樹脂層を形成するための材料として、溶剤可溶型のポリイミドワニスを用いてもよい。
【0025】
剥離フィルム17としては、ダイシングテープ10の未使用時には粘着剤層11を被覆して粘着剤層11を保護し、被着体を固定する前に剥離除去できるフィルムであれば特に限定されない。剥離フィルム17は、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤等からなる剥離剤層を表面に有する樹脂フィルムであってもよく、あるいは表面に剥離剤層を有しない樹脂フィルムであってもよい。剥離フィルム17は、ダイシング工程及びピックアップ工程に先立って除去されるため、耐熱性、高延伸性、エネルギー線の透過性等が優れている必要はないが、粘着剤層11の目視検査を容易にするため、透明性を有してもよい。
【0026】
ダイシングテープ10の製造方法は特に限定されないが、第1基材フィルム12と第2基材フィルム14とを接着剤層13を介して接合した後、粘着剤層11を形成してもよい。剥離フィルム17上に粘着剤層11を形成した後、第1基材フィルム12と第2基材フィルム14とを接着剤層13を介して接合した積層体と複合させてもよい。剥離フィルム17上に、粘着剤層11、第1基材フィルム12、接着剤層13、第2基材フィルム14を、塗布等により順に形成してもよい。
【0027】
ダイシングテープ10をロール状に巻回する場合には、ダイシングテープ本体15、保護層16及び剥離フィルム17を有する積層体をロール状にしてもよい。また、剥離フィルム17を省略して、ダイシングテープ本体15の粘着剤層11が、保護層16の第2基材フィルム14と重なり合うように巻回してもよい。剥離フィルム17を省略する場合は、第2基材フィルム14が剥離フィルム17の機能を兼ねてもよく、第2基材フィルム14の背面14aに剥離剤層を設けてもよい。
【0028】
ダイシングテープ10を用いた半導体部品の製造方法としては、特に限定されないが、ダイシングテープ10の粘着剤層11に半導体ウエハを固定する固定工程、ダイシングテープ10を貼り付けた半導体ウエハを切断して粘着剤層11上に半導体チップを得るダイシング工程、ダイシングテープ10から半導体チップを剥離するピックアップ工程を有する製造方法が挙げられる。ダイシング工程、ピックアップ工程は、主体や場所等が固定工程とは異なる状況で実施されてもよい。ピックアップ工程としては、特に限定されないが、粘着剤層11上に半導体チップを固定したダイシングテープ10を延伸して半導体チップの間隔を拡大するエキスパンド工程の後、粘着剤層11にエネルギー線を照射して、粘着剤層11の粘着力を低下させてもよい。ダイシング工程後の半導体チップを粘着剤層11上に固定したままの状態で、半導体チップをリードフレーム等の他の部品と半田付けするリフロー工程を実施してもよい。ダイシングテープ10がリフロー工程に適用される場合には、ダイシングテープ10がリフロー工程に耐える耐熱性を有することが好ましい。この場合は、ピックアップ工程をリフロー工程後に行うこともできる。
【0029】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
被着体としては、シリコン(Si)等の半導体ウエハ及び半導体チップに限定されず、ガラス基板、金属基板、樹脂基板、これらの1種以上を含む積層体、電子機器等が挙げられる。これらの被着体においても、上述の半導体部品の製造方法と同様にして、ダイシングテープを貼り付けた被着体をチップ状に切断する工程を行った後、ダイシングテープからチップ状の切断片を剥離する工程を行うことができる。
【実施例
【0030】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0031】
実施例1~3のダイシングテープは、紫外線硬化性粘着剤からなる粘着剤層、アンカー剤層、第1基材フィルム、接着剤層、第2基材フィルムの順で積層された構成として作製した。また、比較例1~4のダイシングテープは、紫外線硬化性粘着剤からなる粘着剤層、アンカー剤層、基材フィルムの順で積層された構成として作製した。
【0032】
表1において、「第1基材フィルムの材料」は、実施例1~3の第1基材フィルム、比較例1~4の基材フィルムを構成する材料を示す。「第2基材フィルムの材料」は、実施例1~3の第2基材フィルムを構成する材料を示す。「PI1」は、三井化学株式会社製の溶剤可溶型ポリイミドワニス(商品名MP17A)である。「PI2」は、東レ・デュポン株式会社のポリイミドフィルム(商品名カプトン(登録商標)200H)である。「PEEK」は、信越ポリマー株式会社製のポリエーテルエーテルケトンフィルム(商品名Shin-Etsu Sepla Film PEEK(登録商標))である。「PVC」は、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムである。比較例1~4では、基材フィルムの厚さを「第1基材フィルム」の欄に記載し、「第2基材フィルム」及び「接着剤層」の欄を「なし」とした。
【0033】
【表1】
【0034】
全光線透過率は、株式会社村上色彩技術研究所製の測定器を使用して測定した。
ヘイズは、国際照明委員会(CIE)標準イルミナントD65光源を用いて、繰り返し3回測定し、平均値を採用した。
分光透過率は、日本分光株式会社製の分光光度計V-670を使用して、365nm、405nm、435nmの波長ごとに繰り返し3回測定し、平均値を採用した。
【0035】
引張特性(ヤング率、引張強度、引張伸度)は、株式会社島津製作所製の試験機AGS-X500Nを使用し、試料のサイズを幅15mm×長さ120mmとし、温度23℃(室温)、引張速度50mm/min、試料の両端をチャックで10mmつかみ、チャック間距離を100mmとする条件で、繰り返し3回測定し、平均値を採用した。
ヤング率は、チャートの初期傾きから求めた。
引張強度は、試料が破断したときの強度を測定した。
引張伸度は、試料が破断したときの伸び率を測定した。
【0036】
耐熱性は、上記の引張特性と同じ形式の試料をオーブンに入れて260℃で10分間加熱し、オーブンから取り出した後の試料について、外観変化、ヤング率、引張強度、引張伸度を測定した。外観変化は、目視にてシワ等の有無を観察して「なし」又は「あり」と評価した。耐熱性におけるヤング率、引張強度、引張伸度は、試料がオーブン加熱を経たか否か以外は、上述の引張特性と同様に測定した。
【0037】
粘着力は、株式会社島津製作所製のEZ Graphを使用し、試料のサイズを幅10mm×長さ100mmとし、温度23℃(室温)、被着体はSUS板、貼合方法は2kgローラ、貼合領域は幅10mm×長さ90mmとし、引っ張り速度300mm/min、剥離角度180°とする条件で、繰り返し3回測定し、平均値を採用した。
紫外線(UV)照射は、アイグラフィックス株式会社製の紫外線照射装置を用いて、メタルハライドランプで積算光量4000mJとした。表1では、紫外線照射前の粘着力を「初期」、紫外線照射後の粘着力を「UV照射後」とした。
【0038】
<ハーフカット実験>
幅15mm×長さ120mmに切り出した試料に対し、カッターを用いて中心部に一直線にハーフカットを行った。ハーフカットを行った試料に対して、表1のハーフカットを行っていない試料の引張特性と同様に引張特性(ヤング率、引張強度、引張伸度)の測定を行った。結果を表2に示す。なお、ハーフカット実験は、実施例2、3、比較例1、3についてのみ行った。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例1~3のダイシングテープによれば、リフロー工程に耐え得る耐熱性と、ピックアップ工程に適する引張特性及び粘着特性を有していた。また、実施例2、3のダイシングテープによれば、ハーフカットを行った試料の引張伸度が十分に大きいことが判明した。このことから、第1基材フィルムの裏側に第2基材フィルムを積層したダイシングテープであれば、ハーフカット後にダイシング溝による傷が第1基材フィルムに達した場合であっても、引張りによって破断しにくいことがわかる。
【0041】
比較例1、3のダイシングテープによれば、ハーフカットを行った試料の引張伸度が著しく低下した。このことから、基材フィルムが単層である、即ち第2基材フィルムの存在しないダイシングテープは、ハーフカット後にダイシング溝による傷が基材フィルムに達すると、引張りによって容易に破断することがわかる。
【0042】
さらに、比較例1~3のダイシングテープは、基材フィルムの紫外線透過性が低いため、UV照射後の粘着力が低下せず、ピックアップ工程に適する粘着特性を有しなかった。
比較例4のダイシングテープは、オーブン加熱をしなければピックアップ工程に適する引張特性を有しているが、基材フィルムの耐熱性が低いため、オーブン加熱後に引張伸度が低下し、エキスパンド工程で破断しやすくなり、ピックアップ工程に適する引張特性を有しなくなった。
【符号の説明】
【0043】
10…ダイシングテープ、11…粘着剤層、11a…粘着面、12…第1基材フィルム、13…接着剤層、14…第2基材フィルム、14a…背面、15…ダイシングテープ本体、16…保護層、17…剥離フィルム、21…被着体、22…ダイシング溝。
図1
図2