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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20231228BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20231228BHJP
   H01Q 21/30 20060101ALI20231228BHJP
   H01Q 5/10 20150101ALI20231228BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20231228BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
H01Q1/32 Z
H01Q21/30
H01Q5/10
H01Q5/371
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020067829
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021164140
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2020064830
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】船津 聡史
(72)【発明者】
【氏名】徳永 諭
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 晋路
(72)【発明者】
【氏名】森 大輝
(72)【発明者】
【氏名】島谷 信行
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 雄平
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007223(JP,A)
【文献】特開2008-092244(JP,A)
【文献】特開2004-350216(JP,A)
【文献】特開2006-005401(JP,A)
【文献】国際公開第01/033668(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/012537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
H01Q 1/32
H01Q 21/30
H01Q 5/10
H01Q 5/371
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられる車両部材に備えられ、第1周波数帯の電波、第2周波数帯の電波及び第3周波数帯の電波を受信するアンテナ装置であって、
給電部と、
前記給電部に電気的に接続される第1アンテナ部と、前記給電部に電気的に接続される第2アンテナ部とを有するアンテナと、
前記給電部に電気的に接続されるアンプと、を備え、
前記第1アンテナ部は、第1方向に延伸する部分を含む第1エレメントと、前記第1エレメントの前記給電部とは反対側の端部に接続される、外縁がループ状の第1ループエレメントとを有し、
前記第2アンテナ部は、前記第1方向に延伸する部分を含む第2エレメントと、前記第2エレメントの前記給電部とは反対側の端部に接続される、外縁がループ状の第2ループエレメントとを有し、
前記第1ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分と前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する部分とを含み、
前記第2ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分と前記第2方向とは反対向きの第3方向に延伸する部分とを含み、
前記第1ループエレメントと前記第2ループエレメントは、互いに離れて位置する、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1方向は、前記車体の金属部分から離れる方向であり、
前記車両部材が前記車体に取り付けられた状態で水平面の法線方向から見て、前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、前記金属部分の端辺と交差する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記金属部分の表面に形成されたアンテナ取り出し口を通り前記第1方向に直交する仮想平面を定義するとき、
前記仮想平面から、前記第1アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
前記仮想平面から、前記第2アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
前記第1ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH[mm]、
前記第1ループエレメントの前記第2方向の最大幅をL[mm]、
前記第2ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH[mm]、
前記第2ループエレメントの前記第3方向の最大幅をL[mm]、
前記第1ループエレメントと前記第2ループエレメントとの間隔をA[mm]、
+A/2をW[mm]、
+A/2をW[mm]、
前記第1アンテナ部のアンテナ容量をCa1[pF]、
前記第2アンテナ部のアンテナ容量をCa2[pF]、
前記アンテナのアンテナ容量をC[pF]、
前記第1アンテナ部の受信電圧をVa1[dBμVemf]、
前記第2アンテナ部の受信電圧をVa2[dBμVemf]、
前記アンテナの受信電圧をV[dBμVemf]、
=1.02×10-4、k=7.97×10-5、k=2.61×10-2
=1.77×10-2、k=9.83×10-4、k=2.87×10-1
=3.29×10-2、l=6.99×10-2、l=2.76×10
とするとき、
【数1】
であり、
前記アンプの入力端の電圧をV[dBμVemf]、
前記給電部から前記アンプまでの負荷容量をC[pF]とするとき、
【数2】
であり、
前記電圧V[dBμVemf]は、
【数3】
を満たす、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記電圧V[dBμVemf]は、
【数4】
を満たす、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記給電部と前記アンプとを接続するケーブルを備え、
負荷容量C[pF]は、前記アンプの入力インピーダンスCAMP[pF]と前記ケーブルのインピーダンスCcbとの和である、請求項3又は4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記金属部分の表面に形成されたアンテナ取り出し口を通り前記第1方向に直交する仮想平面を定義するとき、
前記仮想平面から、前記第1アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
前記仮想平面から、前記第2アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
前記第1ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH[mm]、
前記第1ループエレメントの前記第2方向の最大幅をL[mm]、
前記第2ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH[mm]、
前記第2ループエレメントの前記第3方向の最大幅をL[mm]、
前記第1ループエレメントと前記第2ループエレメントとの間隔をA[mm]、
+L+AをW[mm]、
とするとき、
50[mm]≦W≦1500[mm]であり、
10[mm]≦H≦300[mm]であり、
10[mm]≦H≦300[mm]であり、
15[mm]≦D≦300[mm]であり、
15[mm]≦D≦300[mm]である、請求項2から5のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記金属部分の表面に形成されたアンテナ取り出し口を通り前記第1方向に直交する仮想平面を定義するとき、
前記仮想平面から、前記第1アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD
前記仮想平面から、前記第2アンテナ部の前記第1方向の側の端部までの距離をD
とするとき、
前記Dと前記Dは同じである、請求項2から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH
前記第2ループエレメントの前記第1方向の最大幅をH
とするとき、
前記Hと前記Hは同じである、請求項1から7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第1ループエレメントの前記第2方向の最大幅Lは、前記第1ループエレメントの前記第1方向の最大幅Hの3.18倍以上50倍以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記第2ループエレメントの前記第3方向の最大幅Lは、前記第2ループエレメントの前記第1方向の最大幅Hの0.91倍以上25倍以下である、請求項1から9のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1ループエレメントの前記第2方向の最大幅をL
前記第2ループエレメントの前記第2方向の最大幅をLとするとき、
250[mm]≦L≦550[mm]であり、
100[mm]≦L≦250[mm]である、請求項1から10のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
前記第1ループエレメントと前記第2ループエレメントとの間隔をAとするとき、
0[mm]<A≦240[mm]である、請求項1から11のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、前記給電部における異なる接続点に接続される、請求項1から12のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
前記第1エレメント及び前記第2エレメントは、共有する接続エレメントを介して、前記給電部の共通の接続点に接続される、請求項1から12のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
前記第1方向は、前記第2方向及び前記第3方向と略直交する、請求項1から14のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項16】
前記第1ループエレメント及び前記第2ループエレメントは、外縁が略長方形である、請求項1から15のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項17】
前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間隔をAとするとき、
0[mm]<A≦240[mm]である、請求項1から16のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項18】
前記第1エレメントと前記第1ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分を前記第1方向に平行な一直線上に有し、
前記第2エレメントと前記第2ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分を前記第1方向に平行な一直線上に有する、請求項1から17のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項19】
前記第1周波数帯は、AM放送波の帯域であり、
前記第2周波数帯は、FM放送波の帯域であり、
前記第3周波数帯は、DABのバンドIIIの帯域である、請求項1から18のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項20】
第4周波数帯の電波を受信し、前記第4周波数帯は、地上デジタルテレビ放送波の帯域である、請求項19に記載のアンテナ装置。
【請求項21】
前記給電部、前記第1アンテナ部及び前記第2アンテナ部は、誘電体基板に形成される導体である、請求項1から20のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項22】
前記車両部材は、樹脂製である、請求項1から21のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項23】
前記車両部材は、スポイラーである、請求項1から22のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載されるアンテナ装置として、AM放送波、FM放送波、地上デジタルテレビ放送波、DAB(Digital Audio Broadcasting)等の複数の周波数帯の信号を受信可能な複合的なアンテナ素子が集約されたアンテナ装置が実用化されている。例えば、アウタパネルが合成樹脂であるエアスポイラの内側に複数のアンテナ素子を備え、周波数帯の異なる複数の電波(FM放送波、AM放送波、テレビ放送波など)を受信するアンテナ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-128696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアンテナ装置は、これらの複数の周波数帯の電波の受信性能が必ずしも十分とは言えなかった。
【0005】
本開示は、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を簡易な構成で高感度に受信可能なアンテナ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
車体に取り付けられる車両部材に備えられ、第1周波数帯の電波、第2周波数帯の電波及び第3周波数帯の電波を受信するアンテナ装置であって、
給電部と、
前記給電部に電気的に接続される第1アンテナ部と、前記給電部に電気的に接続される第2アンテナ部とを有するアンテナと、
前記給電部に電気的に接続されるアンプと、を備え、
前記第1アンテナ部は、第1方向に延伸する部分を含む第1エレメントと、前記第1エレメントの前記給電部とは反対側の端部に接続される、外縁がループ状の第1ループエレメントとを有し、
前記第2アンテナ部は、前記第1方向に延伸する部分を含む第2エレメントと、前記第2エレメントの前記給電部とは反対側の端部に接続される、外縁がループ状の第2ループエレメントとを有し、
前記第1ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分と前記第1方向とは異なる第2方向に延伸する部分とを含み、
前記第2ループエレメントは、前記第1方向に延伸する部分と前記第2方向とは反対向きの第3方向に延伸する部分とを含み、
前記第1ループエレメントと前記第2ループエレメントは、互いに離れて位置する、アンテナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を簡易な構成で高感度に受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する分解斜視図である。
図2】一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する断面図である。
図3】一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する平面図である。
図4】一実施形態におけるアンテナの第1構成例を示す平面図である。
図5】一実施形態におけるアンテナの第2構成例を示す平面図である。
図6】一実施形態におけるアンテナの第3~第7構成例を示す平面図である。
図7】最大幅H,Hがいずれも10mmの場合と110mmの場合について、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナのアンテナ容量Cとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。
図8】距離D,Dがいずれも35mmの場合と135mmの場合について、最大幅H,Hを10mmに固定したときの、アンテナのアンテナ容量Cとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。
図9】距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナのアンテナ容量Cと最大幅H,Hとの関係を例示するグラフである。
図10】最大幅H,Hがいずれも10mmの場合と110mmの場合について、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。
図11】距離D,Dがいずれも35mmの場合と135mmの場合について、最大幅H,Hを10mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。
図12】距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vと最大幅H,Hとの関係を例示するグラフである。
図13】一実施形態におけるアンテナのうちVHF帯の電波の受信に寄与するアンテナ部分を示す平面図である。
図14図13のアンテナ部分を含むアンテナの縦幅HFMと横幅WFMを変化させたときの、FM放送波帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図15図13のアンテナ部分を含むアンテナの縦幅HFMと横幅WFMを変化させたときの、DABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図16図14の測定結果を示すグラフである。
図17図15の測定結果を示すグラフである。
図18図13のアンテナ部分を含むアンテナの縦横比を変化させたときの、FM放送波帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図19】一実施形態におけるアンテナのうちDABのバンドIII帯の電波の受信に寄与するアンテナ部分を示す平面図である。
図20図19のアンテナ部分を含むアンテナの縦幅HDABと横幅WDABを変化させたときの、FM放送波帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図21図19のアンテナ部分を含むアンテナの縦幅HDABと横幅WDABを変化させたときの、DABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図22図20の測定結果を示すグラフである。
図23図21の測定結果を示すグラフである。
図24図19のアンテナ部分を含むアンテナの縦横比を変化させたときの、DABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図25図4のアンテナのループ縦幅を変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図26図4のアンテナのループエレメント間の距離を変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図27】仮想平面12cからの距離D,Dを変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
図28図4のアンテナのUHF帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示に係る実施形態について説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
図1は、一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する分解斜視図である。図1に示すアンテナ装置101は、車体に取り付けられる車両部材に備えられるアンテナ装置の一例である。図1は、車体の一部であるリフトゲート10に取り付けられるスポイラー18にアンテナ装置101が搭載される例を示している。リフトゲート10は、車体の後部に開閉可能に取り付けられるドアであり、窓ガラス11が取り付けられている。スポイラー18は、車両部材の一例であり、リフトゲート10の上部に固定される樹脂製の部品である。スポイラー18は、内カバー14と外カバー13とを有する。アンテナ装置101は、防水コネクタ16、アンテナ30及びアンプ60を備える。
【0011】
防水コネクタ16は、アンテナ30に給電するための給電部の一例であり、アンテナ30に電気的に接続される。防水コネクタ16は、ケーブル61(配線)を介して、アンプ60の入力端子に接続される。防水コネクタ16は、例えば、車体の金属部分12に形成されたアンテナ取り出し口12bに取り付けられる。アンテナ取り出し口12bは、金属部分12の車外側の表面に形成される開口である。
【0012】
アンテナ30は、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を受信する導体であり、この例では、アンテナ30の一部は、内カバー14と外カバー13とに挟まれた状態でスポイラー18の内部に配置される。アンテナ30は、スポイラー18に内蔵されてもよいし、スポイラー18の外表面に設けられてもよい。アンテナ30は、線状に形成された導電性部材であり、例えば、導線、導電性塗料、金属棒、金属板などによって形成されてもよい。
【0013】
アンプ60は、防水コネクタ16に電気的に接続される入力端子を有し、アンテナ30で受信した信号を増幅する。アンプ60により増幅された信号は、車体に搭載される不図示の受信装置などに供給される。この例では、アンプ60は、リフトゲート10の上部に取り付けられる。
【0014】
図2は、一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する断面図である。スポイラー18には、ハイマウントストップランプ17が搭載されてもよい。ハイマウントストップランプ17がスポイラー18に搭載される場合、アンテナ30をハイマウントストップランプ17の上部に配置することで、アンテナ30の電波の受信感度の低下を抑制できる。また、アンテナ30の電波の受信感度の低下を抑制する点で、アンテナ30は、ハイマウントストップランプ17に接続される配線をまたがないように配置されることが好ましい。図2では、外カバー13の図示が省略されている。
【0015】
アンテナ30が形成される又は取り付けられる部位は、誘電体である内カバー14又は(不図示の)外カバー13でもよいし、内カバー14又は外カバー13に固定された不図示の誘電体基板でもよい。アンテナ30が誘電体基板に形成されることで、スポイラー18へのアンテナ30の取り付けが容易になる。誘電体基板には、プリント基板、フレキシブル基板などがある。
【0016】
アンテナ30のエレメントは、内カバー14に形成された孔20を通って、車体の金属部分12のアンテナ取り出し口12bに取り付けられた防水コネクタ16に接続される。また、アンテナ取り出し口12bを通りY軸方向と直交するZX平面を仮想平面12cとする。仮想平面12cについては、図4に示すアンテナ30において詳述する。
【0017】
図3は、一実施形態におけるアンテナ装置が設置される車両部材及びその車両部材が取り付けられる車体を例示する平面図であり、具体的には、車両の上方からの視点で示す図である。この例では、スポイラー18が車体に取り付けられた状態で水平面(この例では、XY平面)の法線方向(この例では、Z軸方向)から見ると、アンテナ30は、車体の金属部分12の端辺12aと交差する。金属部分12は、例えば、リフトゲート10の上部である。図2,3に示す例では、金属部分12は、窓ガラス11が取り付けられるフランジであり、端辺12aは、そのフランジ縁である。
【0018】
Z軸方向から見てアンテナ30と端辺12aとがこのように交差することで、Z軸方向から見たときに、アンテナ30の一部が金属部分12にZ軸方向で重複しない。これにより、アンテナ30の一部が金属部分12にZ軸方向で重複しない部分(幅Sの部分)を形成でき、アンテナ30の受信感度の低減を抑制できる。幅Sは、端辺12aからスポイラー18の端までのY軸方向の距離である。幅Sは、スポイラー18の車幅方向の幅である。なお、Z軸方向から見て、アンテナ30は、端辺12aと交差しなくてもよい。アンテナ30が端辺12aと交差しない形態として、アンテナ30の全体が金属部分12とZ軸方向で重複する形態と、アンテナ30の全体が金属部分12とZ軸方向で重複しない形態とがある。
【0019】
図4は、一実施形態におけるアンテナの第1構成例を示す平面図である。図4に示すアンテナ30は、第1周波数帯の電波、第2周波数帯の電波及び第3周波数帯の電波を受信可能に形成されており、少なくともVHF帯以上の各周波数帯における周波数で共振する。
【0020】
例えば、第1周波数帯は、周波数が300kHz~3MHzのMF(Medium Frequency)帯であり、第2周波数帯及び第3周波数帯は、周波数が30MHz~300MHzのVHF(Very High Frequency)帯である。この場合、第1周波数帯は、MF帯に含まれるAM放送波の帯域に設定され、第2周波数帯は、VHF帯に含まれるFM放送波の帯域に設定され、第3周波数帯は、VHF帯に含まれるDABのバンドIIIの帯域に設定されてもよい。
【0021】
アンテナ30は、さらに、第4周波数帯の電波を受信可能に形成されてもよく、この場合、第4周波数帯における周波数で共振する。例えば、第4周波数帯は、300MHz~3GHzのUHF(Ultra High Frequency)帯である。この場合、UHF帯に含まれる470MHz~720MHzの地上デジタルテレビ放送波の帯域に設定されてもよい。
【0022】
アンテナ30は、第1アンテナ部40及び第2アンテナ部50を有する。第1アンテナ部40は、防水コネクタ16に電気的に接続されるアンテナ素子であり、第2アンテナ部50は、防水コネクタ16に電気的に接続されるアンテナ素子である。第1アンテナ部40は、第1エレメント41と第1ループエレメント42とを有し、第2アンテナ部50は、第2エレメント51と第2ループエレメント52とを有する。なお、「電気的に接続される」とは、図4のように、第1アンテナ部40及び第2アンテナ部50が防水コネクタ16に直接接続される構成に限らず、高周波的に接続される構成を含む。
【0023】
第1エレメント41は、第1方向に延伸する部分を含む導体部である。この例では、第1エレメント41は、防水コネクタ16に接続される端部41aと、防水コネクタ16とは反対側の端部41bとを有し、端部41aと端部41bとの間に少なくとも1か所(図4の場合、2箇所)の折れ曲がり部を有する。
【0024】
第1ループエレメント42は、第1エレメント41の防水コネクタ16とは反対側の端部41bに接続される、外縁がループ状の導体部である。第1ループエレメント42は、第1方向に延伸する部分43,45と、第1方向とは異なる第2方向に延伸する部分44,46とを含む。この例では、部分43,45は、X軸方向で対向し、部分44,46は、Y軸方向で対向する。
【0025】
第2エレメント51は、第1方向に延伸する部分を含む導体部である。この例では、第2エレメント51は、防水コネクタ16に接続される端部51aと、防水コネクタ16とは反対側の端部51bとを有し、端部51aと端部51bとの間に少なくとも1か所(図4の場合、2箇所)の折れ曲がり部を有する。なお、「折れ曲がり部」とは、図4のように、第1エレメント41及び第2エレメント51が直角に折れ曲がっている部分に限らず、延伸する方向が変化する部分であれば、例えば、曲線を含み曲率半径が極小となる部分でもよい。
【0026】
第2ループエレメント52は、第2エレメント51の防水コネクタ16とは反対側の端部51bに接続される、外縁がループ状の導体部である。第2ループエレメント52は、第1方向に延伸する部分53,55と、第2方向とは反対向きの第3方向に延伸する部分54,56とを含む。この例では、部分53,55は、X軸方向で対向し、部分54,56は、Y軸方向で対向する。
【0027】
第1ループエレメント42と第2ループエレメント52は、互いに離れて位置し、この例では、部分43と部分53との間に隙間ができるようにX軸方向に離れて配置されている。第1ループエレメント42と第2ループエレメント52とを互いに離して配置することで、アンテナ30は、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を簡易な構成で高感度に受信できる。
【0028】
図4に示す例では、第1方向は、Z軸方向から見ると、車体の金属部分12から離れる方向である。アンテナ装置101が設置される車両部材が車体に取り付けられた状態で水平面の法線方向から見ると、第1エレメント41及び第2エレメント51は、金属部分12の端辺12aと交差する。このように交差させることで、アンテナ30の一部が金属部分12にZ軸方向で重複しないので、アンテナ30の受信感度の低減を抑制できる。
【0029】
第1エレメント41及び第2エレメント51は、防水コネクタ16における異なる接続点(具体的には、端子)に接続されている。第1エレメント41は、端部41aで防水コネクタ16に接続され、第2エレメント51は、端部51aで防水コネクタ16に接続されている。第1エレメント41及び第2エレメント51を、互いに異なる接続点で共通の防水コネクタ16に接続するので、第1エレメント41と第2エレメント51をそれぞれ独立に共通の防水コネクタ16に接続できる。特に、第1エレメント41及び第2エレメント51がAV線等のワイヤから構成されている場合、第1エレメント41及び第2エレメント51を防水コネクタ16に接続する作業が容易になる。
【0030】
第1方向は、この例では、第2方向及び第3方向と略直交するので、アンテナ30の受信感度が向上しやすい。略直交には、直交する場合を含んでよい。この例では、第1方向は、正のY軸方向に平行で、第2方向は、負のX軸方向に平行で、第3方向は、正のX軸方向に平行である。
【0031】
第1ループエレメント42は、この例では、外縁が略長方形に形成されているので、アンテナ30の受信感度が向上しやすい。略長方形とは、例えば、長方形における4つの辺及び4つの角のうち、少なくとも1か所に曲線部を有する形状を含む。なお、第1ループエレメント42は、外縁が略長方形とは異なるループ形状でも、受信感度の低下を抑制できる。第2ループエレメント52も、この例では、外縁が略長方形に形成されているので、アンテナ30の受信感度が向上しやすい。第2ループエレメント52は、外縁が略長方形とは異なるループ形状でも、受信感度の低下を抑制できる。
【0032】
第1エレメント41と第1ループエレメント42は、この例では、第1方向に延伸する部分を第1方向に平行な一直線上に有するので、アンテナ30の受信感度が向上しやすい。図4に示す例では、第1エレメント41は、第1ループエレメント42の部分43の延長線上に延伸する部分を有する。同様に、第2エレメント51と第2ループエレメント52は、第1方向に延伸する部分を第1方向に平行な一直線上に有するので、アンテナ30の受信感度が向上しやすい。図4に示す例では、第2エレメント51は、第2ループエレメント52の部分53の延長線上に延伸する部分を有する。
【0033】
第1アンテナ部40及び第2アンテナ部50は、プリント基板等の不図示の誘電体基板に形成される導体であると、アンテナ30を上述のスポイラー18等の車両部材に取り付ける作業が容易になる。また、アンテナ30の第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52が略長方形に形成されている場合、各長方形の長辺の方向がX軸方向(車幅方向)に延伸すると、アンテナ30をスポイラー18に取り付けるとき、アンテナ30をスポイラー18のスペースに有効に配置でき好ましい。
【0034】
図5は、一実施形態におけるアンテナの第2構成例を示す平面図である。上述の第1構成例と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図5に示すアンテナ30Aは、第1エレメント41及び第2エレメント51が防水コネクタ16と接続する部分の形状がアンテナ30(図4)と異なる。
【0035】
アンテナ30Aでは、第1エレメント41及び第2エレメント51、共有する接続エレメント63を介して、防水コネクタ16の共通の接続点21(具体的には、端子)に接続される。第1エレメント41及び第2エレメント51は、共通の接続点21から延伸する接続エレメント63を共有し、接続エレメント63から分岐してそれぞれ延伸する。アンテナ30Aは、第1エレメント41及び第2エレメント51の各々の一部が共通するので、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を簡易な構成で高感度に受信できる。
【0036】
図6は、一実施形態におけるアンテナの第3~第7構成例を示す平面図である。上述の第1及び第2構成例と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで、省略する。図6に示すアンテナ31~35は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52の形状がアンテナ30(図4)と異なるが、少なくとも3つの異なる周波数帯の電波を簡易な構成で高感度に受信できる。
【0037】
アンテナ31は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52の外縁の内側がソリッドな導体で満たされている。アンテナ32は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52が、各ループエレメント内をX軸方向に延伸する3本のエレメントにより4つの閉ループを有する。アンテナ33は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52が、各ループエレメント内をX軸方向に延伸する1本のエレメントにより2つの閉ループを有する。アンテナ34は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52が1つの閉ループを有する。アンテナ35は、第1ループエレメント42及び第2ループエレメント52が1つの開ループを有し、開ループの先端近傍で並走する箇所で容量結合が生じることで疑似的な閉ループが形成される。
【0038】
次に、図4に示すアンテナ30を例に挙げて、アンテナ30のアンテナ容量及び受信電圧について説明する。金属部分12の表面に形成されたアンテナ取り出し口12b(防水コネクタ16)を通り第1方向に直交する仮想平面を仮想平面12cと定義する。
【0039】
仮想平面12cから、第1アンテナ部40の第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
仮想平面12cから、第2アンテナ部50の第1方向の側の端部までの距離をD[mm]、
第1ループエレメント42の第1方向の最大幅をH[mm]、
第1ループエレメント42の第2方向の最大幅をL[mm]、
第2ループエレメント52の第1方向の最大幅をH[mm]、
第2ループエレメント52の第3方向の最大幅をL[mm]、
第1ループエレメント42と第2ループエレメント52との間隔をA[mm]、
+A/2をW[mm]、
+A/2をW[mm]、
アンテナ30のアンテナ容量をC[pF]、
第1アンテナ部40のアンテナ容量をCa1[pF]、
第2アンテナ部50のアンテナ容量をCa2[pF]、
第1アンテナ部40の受信電圧をVa1[dBμVemf]、
第2アンテナ部50の受信電圧をVa2[dBμVemf]、
アンテナ30の受信電圧をV[dBμVemf]、
=1.02×10-4、k=7.97×10-5、k=2.61×10-2
=1.77×10-2、k=9.83×10-4、k=2.87×10-1
=3.29×10-2、l=6.99×10-2、l=2.76×10
とするとき、
【0040】
【数1】
という関係が成立する。ここで、
アンプ60の入力端の電圧をV[dBμVemf]、
防水コネクタ16からアンプ60までの負荷容量をC[pF]とするとき、
【0041】
【数2】
という関係が成立する。
【0042】
このとき、アンプ60の入力端に現れる電圧V[dBμVemf]が、
【0043】
【数3】
を満たしていれば、アンテナ30がAM放送波を高感度に受信する上で問題がない。なお、AM放送波の帯域は530kHz~1720kHzの範囲である。
【0044】
より好ましくは、アンプ60の入力端に現れる電圧V[dBμVemf]が、
【0045】
【数4】
を満たしていれば、アンテナ30がAM放送波を高感度に受信する上で問題がない。
【0046】
防水コネクタ16とアンプ60とは、直接接続される形態もあるが、ケーブル61を介して接続される形態もある。アンテナ装置101が防水コネクタ16とアンプ60とを接続するケーブル61を備える場合、上記の負荷容量C[pF]は、アンプ60の入力インピーダンスCAMP[pF]とケーブル61のインピーダンスCcbとの和であってよい。
【0047】
なお、上記のアンテナ容量Ca1,a2の演算式及びその演算式の係数k~kは、図7~9のグラフから導出し、上記の受信電圧Va1,a2の演算式及びその係数l~lは、図10~12のグラフから導出している。
【0048】
図7は、最大幅H,Hがいずれも10mmの場合と110mmの場合について、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30のアンテナ容量Cとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。いずれの場合も、アンテナ幅W,Wが大きくなるほど、アンテナ容量Cは増加する。図8は、距離D,Dがいずれも35mmの場合と135mmの場合について、最大幅H,Hを10mmに固定したときの、アンテナ30のアンテナ容量Cとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。いずれの場合も、アンテナ幅W,Wが大きくなるほど、アンテナ容量Cは増加する。図9は、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30のアンテナ容量Cと最大幅H,Hとの関係を例示するグラフである。図9上の各点から導出される回帰式は、上記のアンテナ容量Ca1,a2の演算式に相当する。
【0049】
図10は、最大幅H,Hがいずれも10mmの場合と110mmの場合について、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。いずれの場合も、受信電圧Vは、アンテナ幅W,Wに、ほとんど依存しない。図11は、距離D,Dがいずれも35mmの場合と135mmの場合について、最大幅H,Hを10mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vとアンテナ幅W,Wとの関係を例示するグラフである。いずれの場合も、受信電圧Vは、アンテナ幅W,Wに、ほとんど依存しない。図12は、距離D,Dを135mmに固定したときの、アンテナ30の受信電圧Vと最大幅H,Hとの関係を例示するグラフである。図12上の各点から導出される回帰式は、上記の受信電圧Va1,a2の演算式に相当する。なお、図10~12におけるアンテナ30の受信電圧V[dBμVemf]はいずれも、AM放送波の帯域における平均値である。
【0050】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、
+L+AをW、
とするとき、
50[mm]≦W≦1500[mm]であり、
10[mm]≦H≦300[mm]であり、
10[mm]≦H≦300[mm]であり、
15[mm]≦D≦300[mm]であり、
15[mm]≦D≦300[mm]であると、MF帯の電波を高感度に受信できる。なお、FM放送波の帯域は88MHz~108MHzの範囲であり、DABのバンドIIIの帯域は170MHz~240MHzの範囲である。
【0051】
95[mm]≦D≦300[mm]であり、
95[mm]≦D≦300[mm]であると、FM放送波のアンテナ利得は向上するので、FM放送波をより高感度に受信できる。
【0052】
115[mm]≦D≦300[mm]であり、
115[mm]≦D≦300[mm]であると、FM放送波のアンテナ利得は向上し、DABのバンドIIIのアンテナ利得も向上するので、FM放送波及びDABのバンドIIIの電波をさらに高感度に受信できる。
【0053】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、VHF帯の電波を高感度に受信する点で、DとDは、同じであることが好ましいが、異なってもよい。
【0054】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、VHF帯の電波を高感度に受信する点で、HとHは、同じであることが好ましいが、異なってもよい。
【0055】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、FM放送波を高感度に受信する点で、最大幅Lは、最大幅Hの3.18倍以上50倍以下が好ましく、最大幅Hの4.44倍以上45倍以下がより好ましい。
【0056】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、DABのバンドIIIの電波を高感度に受信する点で、最大幅Lは、最大幅Hの0.91倍以上25倍以下が好ましく、最大幅Hの1.79倍以上20倍以下がより好ましい。
【0057】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、FM放送波を高感度に受信する点で、250[mm]≦L≦550[mm]が好ましく、250[mm]≦L≦500[mm]がより好ましい。図4等の本開示に係るアンテナにおいて、DABのバンドIIIの電波を高感度に受信する点で、100[mm]≦L≦250[mm]が好ましく、125[mm]≦L≦225[mm]がより好ましい。
【0058】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、FM放送波及びDABのバンドIIIの電波を高感度に受信する点で、0[mm]<A≦240[mm]が好ましく、2[mm]≦A≦240[mm]がより好ましい。
【0059】
図4等の本開示に係るアンテナにおいて、第1エレメント41と第2エレメント51との間隔をAとするとき、FM放送波及びDABのバンドIIIの電波を高感度に受信する点で、0[mm]<A≦240[mm]が好ましく、2[mm]≦A≦240[mm]がより好ましい。
【0060】
図13は、アンテナ30のうちVHF帯の電波の受信に寄与するアンテナ部分30Bを示す平面図である。図13における数値は、エレメントの長さ[mm]を表す。図14は、アンテナ部分30Bを含むアンテナ30の縦幅HFMと横幅WFMを変化させたときの、FM放送波帯における垂直偏波の平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。図15は、アンテナ部分30Bを含むアンテナ30の縦幅HFMと横幅WFMを変化させたときの、DABのバンドIII帯における垂直偏波の平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。図16は、図14の測定結果を示すグラフである。図17は、図15の測定結果を示すグラフである。なお、縦幅HFM=0は、図13のアンテナ部分30Bにおいてループを設けないパターンに相当する。
【0061】
図14図17によれば、アンテナ部分30Bの縦幅HFMと横幅WFMを調整した場合、FM放送波帯の平均アンテナ利得は、大きく変化したが、DABのバンドIII帯の平均アンテナ利得は、変化が少なかった。
【0062】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-11dB"以上の範囲は、
110[mm]≧ HFM≧ 10[mm]
550[mm]≧ WFM ≧ 250[mm]
となった。
【0063】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-10dB"以上の範囲は、
90[mm]≧ HFM≧ 10[mm]
500[mm]≧ WFM ≧ 250[mm]
となった。
【0064】
図18は、アンテナ部分30Bを含むアンテナ30の縦横比を変化させたときの、FM放送波帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。梨地のセルで表示した縦横比で、アンテナ利得が閾値"-11dB"以上になった。斜線のセルで表示した縦横比で、アンテナ利得が閾値"-10dB"以上になった。
【0065】
図19は、アンテナ30のうちDABのバンドIII帯の電波の受信に寄与するアンテナ部分30Cを示す平面図である。図19における数値は、エレメントの長さ[mm]を表す。図20は、アンテナ部分30Cを含むアンテナの縦幅HDABと横幅WDABを変化させたときの、FM放送波帯における垂直偏波の平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。図21は、アンテナ部分30Cを含むアンテナの縦幅HDABと横幅WDABを変化させたときの、DABのバンドIII帯における垂直偏波の平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。図22は、図20の測定結果を示すグラフである。図23は、図21の測定結果を示すグラフである。なお、縦幅HDAB=0は、図19のアンテナ部分30Cにおいてループを設けないパターンに相当する。
【0066】
図20図23によれば、アンテナ部分30Cの縦幅HDABと横幅WDABを調整した場合、DABのバンドIII帯の平均アンテナ利得は、大きく変化したが、FM放送波帯の平均アンテナ利得は、変化が少なかった。
【0067】
DABのバンドIII帯の電波を比較的高感度に受信できる閾値"-14dB"以上の範囲は、
110[mm]≧ HDAB≧ 10[mm]
250[mm]≧ WDAB ≧ 100[mm]
となった。
【0068】
DABのバンドIII帯の電波を比較的高感度に受信できる閾値"-13dB"以上の範囲は、
70[mm]≧ HDAB≧ 10[mm]
225[mm]≧ WDAB ≧ 125[mm]
となった。
【0069】
図24は、アンテナ部分30Cを含むアンテナ30の縦横比を変化させたときの、DABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。梨地のセルで表示した縦横比で、アンテナ利得が閾値"-14dB"以上になった。斜線のセルで表示した縦横比で、アンテナ利得が閾値"-13dB"以上になった。
【0070】
図25は、図4のアンテナ30のループ縦幅を変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。測定時の各エレメントの寸法は、図13,19に示す。アンテナ部分30B,30Cの縦幅をそろえて変化させた場合、縦幅は小さいほうが、感度が上がった。
【0071】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-11dB"以上で、かつ、DABのバンドIII帯の電波を比較的高感度に受信できる閾値"-14dB"以上の範囲は、
90[mm]≧ HFM≧0[mm]
20[mm]≧ HDAB ≧ 0[mm]
となった。
【0072】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-10dB"以上で、かつ、DABのバンドIII帯の電波を比較的高感度に受信できる閾値"-13dB"以上の範囲は、
60[mm]≧ HFM≧0[mm]
10[mm]≧ HDAB ≧0[mm]
となった。
【0073】
図26は、図4のアンテナ30のループエレメント間の距離を変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。測定時の各エレメントの寸法は、図13,19に示す。
【0074】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-11dB"以上の範囲は、
360[mm]≧ A≧2[mm]
となった。
【0075】
DABのバンドIII帯の電波を比較的高感度に受信できる閾値"-14dB"以上の範囲は、
240[mm]≧ A ≧ 2[mm]
となった。
【0076】
図27は、図4のアンテナ30について、仮想平面12cからの距離D,Dを変化させたときの、FM放送波帯とDABのバンドIII帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。測定時の各エレメントの寸法は、図13,19に示す。
【0077】
FM放送波帯、バンドIII帯ともに、仮想平面12cから離れるほど、平均アンテナ利得が向上した。FM放送波帯で-10dB以上の利得を得るには、90mm以上離す必要があった。バンドIII帯では、80mm以上離しても、平均アンテナ利得の変化が少なかった。スポイラー18の最大幅を300mmとすると、好ましい範囲は以下の通りと考えられる。
【0078】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-10dB"以上の範囲は、
300[mm]≧ D1,≧ 115[mm]
となった。
【0079】
FM放送波を比較的高感度に受信できる閾値"-11dB"以上の範囲は、
300[mm]≧ D1,≧ 95[mm]
となった。
【0080】
バンドIIIの電波を比較的高感度に受信できる閾値"-14dB"以上の範囲は、
300[mm]≧ D1,≧ 115[mm]
となった。
【0081】
図28は、図4のアンテナ30のUHF帯における平均アンテナ利得の測定結果の一例を示す。測定時の各エレメントの寸法は、図13,19に示す。UHF帯の受信にも、十分使用可能であることが確認できた。つまり、AM放送波、FM放送波、DABの放送波に加えて、地上デジタル放送波も十分に受信できた。なお、地上デジタル放送波の帯域は470MHz~720MHzの範囲であり、UHF帯の測定結果はいずれも、水平偏波における平均アンテナ利得である。
【0082】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0083】
例えば、本開示に係るアンテナ装置は、樹脂製の車両部材に設置される場合に限られるものではなく、例えば、電波を所望の感度で送受できれば、樹脂製以外の素材で形成された車両部材に設置されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10 リフトゲート
11 窓ガラス
12 金属部分
12a 端辺
12b アンテナ取り出し口
12c 仮想平面
13 外カバー
14 内カバー
16 防水コネクタ
17 ハイマウントストップランプ
18 スポイラー
20 孔
21 接続点
30~35 アンテナ
40 第1アンテナ部
41 第1エレメント
42 第1ループエレメント
43~46 部分
50 第2アンテナ部
51 第2エレメント
52 第2ループエレメント
53~56 部分
60 アンプ
61 ケーブル
63 接続エレメント
101 アンテナ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28