(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】クレーンおよび高潮対策方法
(51)【国際特許分類】
B66C 9/18 20060101AFI20231228BHJP
B66C 9/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B66C9/18
B66C9/08
(21)【出願番号】P 2021044490
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 慎一
(72)【発明者】
【氏名】乾 龍馬
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104627824(CN,A)
【文献】特開2014-210623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 9/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンにおいて、
地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、
少なくとも高潮発生時には非浸水領域
であり、且つ前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材の上面または側面に配置されている構成を前記油圧ポンプが備えることを特徴とするクレーン。
【請求項2】
非浸水領域に固定される構成を前記油圧ポンプが備える請求項1に記載のクレーン。
【請求項3】
レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンにおいて、
前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材と、この水平部材から下方に向かって延設される柱状部材とを有していて、前記柱状部材の内部に構成される水密区画が非浸水領域として予め設定されていて、
前記柱状部材の内部の非浸水領域に固定される構成を前記油圧ポンプが備えることを特徴とするクレーン。
【請求項4】
レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンにおいて、
地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、
少なくとも高潮発生時には非浸水領域に配置されている構成を前記油圧ポンプが備えていて、
前記油圧ポンプを吊り上げて非浸水領域の外側から内側に移動させる懸吊機構と、前記クランプおよび前記油圧シリンダおよび前記油圧ポンプを有するレールクランプユニットと、前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材と、この水平部材から下方に向かって延設されて下端の近傍に前記レールクランプユニットが設置される柱状部材とを有していて、
前記懸吊機構が前記レールクランプユニットを上方に吊り上げる構成を有する
ことを特徴とするクレーン。
【請求項5】
前記油圧ホースが、予備用油圧ポンプを連結可能に構成される分岐部分を有する請求項1~4のいずれかに記載のクレーン。
【請求項6】
レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンの高潮対策方法において、
地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、
少なくとも高潮発生時には前記油圧ポンプが非浸水領域
であり、且つ前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材の上面または側面に配置されている状態とすることを特徴とする高潮対策方法。
【請求項7】
少なくとも前記油圧ポンプが非浸水領域の外側から内側に移動させられる請求項6に記載の高潮対策方法。
【請求項8】
レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンの高潮対策方法において、
地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、
少なくとも高潮発生時には前記油圧ポンプが非浸水領域に配置されている状態として、
少なくとも前記油圧ポンプが非浸水領域の外側から内側に移動させて、
前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材から下方に向かって柱状部材が延設されていて、前記クランプおよび前記油圧シリンダおよび前記油圧ポンプを有するレールクランプユニットが前記柱状部材の下端の近傍に設置されていて、
前記レールクランプユニットが非浸水領域の外側から内側に移動させられる
ことを特徴とする高潮対策方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高潮の際にレールクランプユニットが保護されるクレーンおよび高潮対策方法に関するものであり、詳しくはレールクランプユニットに含まれる油圧ポンプの水没を回避できるクレーンおよび高潮対策方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高潮対策を施したクレーンが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のクレーンは走行用のモータを防水モータとする構成を備えていた。走行用のモータが水没した場合であっても、クレーンを走行させるために防水モータを設置している。
【0003】
一般的にクレーンはレールクランプユニットを備えている(例えば特許文献2参照)。レールクランプユニットは油圧ポンプの動力により、クランプがレールを把持している状態を解除してクレーンを走行可能な状態とする構成であった。油圧ポンプは電力により動作するため、水没すると故障する可能性が高い。油圧ポンプが水没して故障すると、クランプの解除が不可能となりクレーンが走行できない不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2016-60602号公報
【文献】日本国実開平06-061883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的はレールクランプユニットに含まれる油圧ポンプの水没を回避できるクレーンおよび高潮対策方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためのクレーンは、レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンにおいて、地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、少なくとも高潮発生時には非浸水領域であり、且つ前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材の上面または側面に配置されている構成を前記油圧ポンプが備えることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成するための高潮対策方法は、レールの近傍に配置されていて前記レールを把持するクランプと、このクランプの近傍に配置されていて前記クランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに油圧ホースを介して連結される油圧ポンプとを備えるクレーンの高潮対策方法において、地面から3m以上となる範囲が非浸水領域として予め設定されていて、少なくとも高潮発生時には前記油圧ポンプが非浸水領域であり、且つ前記クレーンの脚構造体を構成する水平部材の上面または側面に配置されている状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、油圧ポンプが水没することを回避できるため、高潮発生後にクランプを解除してクレーンを走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のクレーンのレールクランプユニットを拡大して例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、クレーンおよび高潮対策方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中ではクレーンの走行方向を矢印y、この走行方向を直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0011】
図1に例示するようにクレーン1は、走行方向yに延設される水平部材2aと、この水平部材2aの両端から上方に向かって延設される脚部材2bからなる脚構造体2を備えている。図示しないレールの上を走行する走行装置3が、脚構造体2の下端に配置されている。走行方向yにおいて水平部材2aの両端の近傍に走行装置3は配置されている。
【0012】
クレーン1は例えば岸壁クレーンで構成される。クレーン1はこれに限らずレールの上を走行するクレーンであればよい。クレーン1は例えば門型クレーンやアンローダで構成されてもよい。クレーン1は例えば四つの走行装置3を備えている。
【0013】
走行装置3は水平部材2aの下方に配置される主イコライザ3aと、この主イコライザ3aの下方に配置される中間イコライザ3bと、中間イコライザ3bのさらに下方に配置されるボギー3cおよび複数の車輪3dを備えている。
【0014】
走行方向yにおいて水平部材2aの中央部から下方に向かって柱状部材4が延設されている。柱状部材4の下端の近傍にはレールクランプユニット5が設置されている。また柱状部材4の下端には図示しないアンカーが設置されることもある。従来のレールクランプユニットは、レールを把持するクランプと、このクランプの開閉を制御する油圧シリンダと、この油圧シリンダに連結される油圧ポンプとで構成されていた。クランプ等は箱体の中に配置されていた。
【0015】
図2および
図3に例示するようにこの実施形態のレールクランプユニット5は、箱体6と、この箱体6の中に配置されるクランプ7および油圧シリンダ8とを有している。箱体6は直方体形状に形成されていて下面が開放されている。クランプ7はレールRの近傍に配置されていてレールRの側面を横行方向xの両側から把持可能に構成されている。油圧シリンダ8はクランプ7の近傍に配置されていてクランプ7の開閉を制御する構成を有している。
【0016】
油圧ポンプ9は柱状部材4の側面に固定されている。つまり油圧ポンプ9は箱体6の外側に配置されている。油圧ポンプ9と油圧シリンダ8とは油圧ホース10で連結されている。油圧ポンプ9には図示しない電源ケーブル等が接続されている。図では説明のため箱体6の内部に設置される機器を実線で示している。また
図3では説明のためレールRの一部を破線で示している。
【0017】
図2に例示するように油圧ポンプ9の動作により油圧シリンダ8は伸縮する。クランプ7は油圧シリンダ8の伸長または収縮のいずれかによりレールRの把持を解除する構成を有している。クランプ7の近傍にはバネ等の付勢力を発生させる部材が設置されている。油圧ポンプ9が動作していないときは、バネ等の付勢力によりクランプ7は閉じてレールRを把持する。このときクレーン1は、レールクランプユニット5によるブレーキがかかった状態となる。
【0018】
この実施形態では油圧ポンプ9は非浸水領域Pに配置されている。非浸水領域Pとは予め想定される高潮が発生したときに浸水しない領域をいう。非浸水領域Pは例えば高潮発生時に想定される水位よりも上方となる領域をいう。
図2では説明のため非浸水領域Pの内側と外側との境界を一点鎖線で示している。一点鎖線の上方側が非浸水領域Pの内側であり、一点鎖線の下方側が非浸水領域Pの外側となる。非浸水領域Pは例えば地面から3m以上となる範囲に設定される。非浸水領域Pはクレーン1が設置される港湾の地形や周囲の河川の状況等により適宜設定することができる。非浸水領域Pを例えば地面から5m以上となる範囲に設定してもよい。
【0019】
油圧ポンプ9が設置される場所は上記に限らない。油圧ポンプ9は非浸水領域Pに配置されていればよく、例えば水平部材2aの上面または側面に設置されてもよい。この実施形態では水平部材2aの上面および側面も非浸水領域Pの内側となる。
【0020】
非浸水領域Pは上下方向zにおいて比較的高い位置となる場所に限らない。非浸水領域Pは水が侵入しない領域であればよく、例えば比較的低い位置であっても水密に構成される空間も非浸水領域Pとなりうる。
【0021】
具体的には柱状部材4の内部に水が侵入しない水密区画を形成して、この空間を非浸水領域Pに設定してもよい。柱状部材4の内部の非浸水領域Pに油圧ポンプ9を固定することができる。
図2では説明のため柱状部材4の内部に配置される油圧ポンプ9を破線で示している。この油圧ポンプ9は図示しない油圧ホース10で油圧シリンダ8に連結される。
【0022】
柱状部材4の内部に構成される水密区画に油圧ポンプ9が固定されているため、高潮により水位が上昇したとしても油圧ポンプ9が水没することを回避できる。柱状部材4の側面に開閉部11を形成して、油圧ポンプ9のメンテナンスを行える構成としてもよい。
【0023】
非浸水領域Pに油圧ポンプ9が固定される構成であるため、水位が上昇しても油圧ポンプ9は水没しない。油圧ポンプ9の故障を回避できるので、水位が下がった後に速やかにクランプ7によるレールの把持を解除してクレーン1を走行させることができる。
【0024】
レールクランプユニット5を構成する箱体6の外側に油圧ポンプ9を設置する構成であるため、箱体6を小型化することができる。箱体6の小型化により、例えば走行装置3の車輪数を増加させることが可能となる。
【0025】
レールRの近傍にクランプ7が配置されている状態を維持できる。そのためクレーン1はクランプ7によるブレーキがかかった状態を高潮発生時にも維持できる。
【0026】
箱体6は柱状部材4ではなく走行装置3に連結される構成としてもよい。このとき油圧ポンプ9は走行装置3に設置してもよい。具体的には比較的上方に位置する主イコライザ3aや中間イコライザ3b等に油圧ポンプ9を設置できる。
【0027】
図4に例示するように油圧ホース10が分岐部分12を有する構成にしてもよい。分岐部分12は油圧ホース10の途中に配置されていて予備用油圧ポンプ13の連結を可能に構成されている。分岐部分12は油が流れる方向を変更するための切換弁を有している。分岐部分12は通常時は油圧シリンダ8と油圧ポンプ9とを連通する状態であり、予備用油圧ポンプ13が連結される部分に油が流れることはない。予備用油圧ポンプ13が連結されるときは、分岐部分12は油圧シリンダ8と予備用油圧ポンプ13を連通する状態であり、油圧ポンプ9が連結される部分に油が流れることを阻止する。
【0028】
高潮発生時に想定を超えて水位が上昇して油圧ポンプ9が水没したり、漂流物との接触により油圧ポンプ9が故障したりした場合、分岐部分12に予備用油圧ポンプ13を連結してクランプ7によるレールRの把持を解除させる。水位が下がった後に速やかにクレーン1を走行させることが可能となる。
【0029】
予備用油圧ポンプ13が台車14に設置される構成にしてもよい。クレーン1の走行に予備用油圧ポンプ13を追従させることができる。
【0030】
または分岐部分12が油圧シリンダ8側を閉止する切換弁を有する構成としてもよい。まず分岐部分12に予備用油圧ポンプ13が連結される。予備用油圧ポンプ13により油圧シリンダ8を加圧してクランプ7が開いた状態とした後に、切換弁により油圧シリンダ8側を閉止する。分岐部分12から予備用油圧ポンプ13を分離させた後であっても、クランプ7が開いた状態を維持できる。
【0031】
複数のクレーン1のクランプ7を順次開いた状態とする復旧作業を、一台または少数の予備用油圧ポンプ13で行うことが可能となる。
【0032】
分岐部分12を備える構成により、想定を超えて水位が上昇した場合であっても、クレーン1を走行可能な状態とする復旧作業を速やかに行うことができる。
【0033】
図5に例示するように通常時は非浸水領域Pの外側に配置されている油圧ポンプ9を、高潮対策を行う際に非浸水領域Pの内側に移動させる構成にしてもよい。この実施形態では箱体6の中にクランプ7と油圧シリンダ8に加えて油圧ポンプ9も設置されている。つまりレールクランプユニット5が一体的に構成されている。箱体6はリンク機構15を介して柱状部材4に連結されている。リンク機構15は横行方向xを軸方向とする支持軸15aを有している。レールクランプユニット5は、上方に移動可能な状態でリンク機構15により柱状部材4に連結される。
【0034】
脚構造体2を構成する水平部材2aの下面には、レールクランプユニット5を上方に吊り上げる構成を有する懸吊機構16が設置されている。懸吊機構16は例えばチェーンブロックで構成することができる。この実施形態では水平部材2aの下面に設置されているアイプレート17に懸吊機構16が設置されている。
【0035】
懸吊機構16が設置される位置は上記に限定されない。レールクランプユニット5を上方に吊り上げられる位置に設置されていればよい。例えば水平部材2aの側面や上面、脚部材2bや、走行装置3などに懸吊機構16を設置してもよい。
【0036】
懸吊機構16は使用時のみ水平部材2a等に設置されて、使用しないときはクレーン1から取り外した状態となる構成を有していてもよい。つまり懸吊機構16がクレーン1に対して着脱可能に構成されていてもよい。このとき懸吊機構16は例えば管理棟などで保管される。懸吊機構16はアイプレート17を介さず直接水平部材2a等に固定される構成を有していてもよい。
【0037】
高潮対策を行う際にレールクランプユニット5を懸吊機構16で上方に吊り上げる。レールクランプユニット5に含まれる油圧ポンプ9は、非浸水領域Pの内側となる位置まで吊り上げられる。このときリンク機構15はレールクランプユニット5と柱状部材4との連結状態を維持している。
図5では説明のため高潮対策を行う前のレールクランプユニット5を破線で示している。
【0038】
少なくとも油圧ポンプ9は非浸水領域Pに配置される状態となるため、油圧ポンプ9が水没する不具合を回避するには有利である。
【0039】
レールクランプユニット5が柱状部材4から分離される構成としてもよい。高潮対策を行う際にレールクランプユニット5が柱状部材4から分離されて、その後、懸吊機構16で吊り上げられる構成としてもよい。この場合にクレーン1がリンク機構15を有さない構成としてもよい。つまりレールクランプユニット5が柱状部材4に直接連結される構成としてもよい。
【0040】
図6に例示するようにレールクランプユニット5から油圧ポンプ9を取り外して、油圧ポンプ9のみを懸吊機構16で非浸水領域Pの内側となる位置に吊り上げる構成にしてもよい。少なくとも油圧ポンプ9が非浸水領域Pの外側から内側に移動させられる構成であればよい。
図6では説明のため高潮対策を行う前の油圧ポンプ9を破線で示している。
【0041】
この実施形態では箱体6はフランジ部18を介して柱状部材4に固定されている。高潮対策の前後において箱体6は柱状部材4に固定される状態を維持し続ける。
【0042】
油圧ホース10は油圧シリンダ8および油圧ポンプ9に連結される状態を維持している。この油圧ホース10が分岐部分12を有する構成にしてもよい。油圧シリンダ8および油圧ポンプ9の油圧ホース10による連結を解除した後に、油圧ポンプ9が懸吊機構16により吊り上げられる構成にしてもよい。
【0043】
少なくとも油圧ポンプ9を非浸水領域Pに吊り上げることができるので、油圧ポンプ9の水没を回避するには有利である。
【0044】
図7に例示するように油圧ポンプ9以外の機器を懸吊機構16で非浸水領域Pの内側となる位置に吊り上げる構成にしてもよい。この実施形態ではクランプ7および油圧シリンダ8が設置される箱体6が懸吊機構16により吊り上げられる。油圧ポンプ9は箱体6の外側となる柱状部材4に固定されている。この油圧ポンプ9は
図2に例示する実施形態と同様に、常時非浸水領域Pに固定されている状態となる。水平部材2aの側面のうち走行方向yと平行となる側面にアイプレート17が設置されている。このアイプレート17に懸吊機構16が設置されている。
【0045】
高潮対策を行う際には、フランジ部18による箱体6と柱状部材4との連結が解除される。分離された後に箱体6は懸吊機構16により吊り上げられる。油圧ホース10は油圧シリンダ8および油圧ポンプ9に連結される状態を維持している。
図7では説明のため高潮対策を行う前の箱体6等を破線で示している。
【0046】
箱体6がリンク機構15により柱状部材4に連結される構成にしてもよい。箱体6はリンク機構15を介して柱状部材4に連結される状態を維持しつつ、懸吊機構16により上方に吊り上げられることができる。
【0047】
クランプ7や油圧シリンダ8を非浸水領域Pに退避させることができるので、高潮発生時に漂流物が衝突してクランプ7等が故障する不具合を回避するには有利である。水没しないのでクランプ7等が潮水で腐食する不具合を回避するには有利である。
【0048】
懸吊機構16は、油圧ポンプ9等をワイヤで吊り上げる構成に限らない。油圧ポンプ9等を非浸水領域Pに移動させることができる構成を懸吊機構16は有していれば他の構成であってもよい。例えば油圧ポンプ9等をガイドレール等に沿って非浸水領域Pに移動させる構成を懸吊機構16が備えていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 クレーン
2 脚構造体
2a 水平部材
2b 脚部材
3 走行装置
3a 主イコライザ
3b 中間イコライザ
3c ボギー
3d 車輪
4 柱状部材
5 レールクランプユニット
6 箱体
7 クランプ
8 油圧シリンダ
9 油圧ポンプ
10 油圧ホース
11 開閉部
12 分岐部分
13 予備用油圧ポンプ
14 台車
15 リンク機構
15a 支持軸
16 懸吊機構
17 アイプレート
18 フランジ部
x 横行方向
y 走行方向
z 上下方向
R レール
P 非浸水領域