(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】岸壁クレーンおよび荷役方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/08 20060101AFI20231228BHJP
B66C 1/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B66C13/08 H
B66C1/10 A
B66C1/10 H
(21)【出願番号】P 2021045670
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 啓佑
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-166909(JP,A)
【文献】特開平08-231176(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0002137(US,A1)
【文献】実開平04-088495(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
B66F 1/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロリから懸吊された荷役具
としてコンテナ荷役用のスプレッダを有する岸壁クレーンにおいて、
前記スプレッダの下側に、前記岸壁クレーンの横行方向を長手方向とする横行方向荷役用天秤が接続されており、前記横行方向荷役用天秤に、長手方向を前記横行方向に向けた状態の長尺部材を保持可能な保持手段が設けられていることを特徴とする岸壁クレーン。
【請求項2】
前記スプレッダと前記横行方向荷役用天秤との間に、前記岸壁クレーンの走行方向を長手方向とする走行方向荷役用天秤が装着されている請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項3】
前記スプレッダのツイストロックピンに係合可能な係合部が前記横行方向荷役用天秤の上部に設けられている請求項1に記載の岸壁クレーン。
【請求項4】
前記保持手段として、前記横行方向荷役用天秤の下部に索状体を接続可能な吊金具が設けられている
請求項1~3のいずれか1項に記載の岸壁クレーン。
【請求項5】
前記横行方向荷役用天秤に、前記吊金具の下端よりも下方に突出した支持脚が設けられている
請求項4に記載の岸壁クレーン。
【請求項6】
岸壁クレーンのトロリから懸吊された荷役具
であるコンテナ荷役用のスプレッダの下側に、前記岸壁クレーンの横行方向を長手方向とする横行方向荷役用天秤を接続し、前記横行方向荷役用天秤に設けられている保持手段により、長手方向を前記横行方向に向けた長尺部材を保持した状態で、前記長尺部材の荷役を行うことを特徴とする荷役方法。
【請求項7】
前記スプレッダの下側に、前記岸壁クレーンの走行方向を長手方向とする走行方向荷役用天秤を装着した状態で、前記走行方向荷役用天秤の下側に前記横行方向荷役用天秤を接続する請求項6に記載の荷役方法。
【請求項8】
前記横行方向荷役用天秤の上部に設けられている係合部を前記スプレッダのツイストロックピンに係合して、前記スプレッダの下側に前記横行方向荷役用天秤を接続する請求項6に記載の荷役方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岸壁クレーンおよび荷役方法に関し、より詳細には、岸壁クレーンを構成する走行方向に隣り合う脚どうしの離間距離よりも長い長尺部材を荷役することが可能な岸壁クレーンおよび荷役方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接岸した船舶と陸上との間におけるコンテナ等の荷役を行う岸壁クレーンは、岸壁クレーンの走行方向(以下、走行方向という)を長手方向とするヘッドブロックやスプレッダなどの荷役具を備えている。従来、岸壁クレーンによりコンテナ以外の形鋼や木材などの長尺部材の荷役を行う場合には、荷役具の下側に、走行方向を長手方向とする吊天秤や、吊治具(例えば、パレット装置)を接続し、長尺部材の長手方向を走行方向に向けた状態で長尺部材の荷役を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、従来の荷役方法では、長尺部材の長さが、岸壁クレーンを構成する走行方向に隣り合う脚どうしの離間距離よりも長い場合には、長尺部材が岸壁クレーンの脚に引っ掛かってしまう。そのため、岸壁クレーンを構成する走行方向に隣り合う脚どうしの離間距離よりも長い長尺部材を荷役することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、岸壁クレーンを構成する走行方向に隣り合う脚どうしの離間距離よりも長い長尺部材を荷役することが可能な岸壁クレーンおよび荷役方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような目的を達成するための本発明の岸壁クレーンは、トロリから懸吊された荷役具としてコンテナ荷役用のスプレッダを有する岸壁クレーンにおいて、前記スプレッダの下側に、前記岸壁クレーンの横行方向を長手方向とする横行方向荷役用天秤が接続されており、前記横行方向荷役用天秤に、長手方向を前記横行方向に向けた状態の長尺部材を保持可能な保持手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記のような目的を達成するための本発明の荷役方法は、岸壁クレーンのトロリから懸吊された荷役具であるコンテナ荷役用のスプレッダの下側に、前記岸壁クレーンの横行方向を長手方向とする横行方向荷役用天秤を接続し、前記横行方向荷役用天秤に設けられている保持手段により、長手方向を前記横行方向に向けた長尺部材を保持した状態で、前記長尺部材の荷役を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、岸壁クレーンのトロリから懸吊された荷役具の下側に、岸壁クレーンの横行方向を長手方向とする横行方向荷役用天秤が接続され、横行方向荷役用天秤に長手方向を前記横行方向に向けた状態の長尺部材を保持可能な保持手段が設けられていることで、前記横行方向に延在する横行方向荷役用天秤により、長尺部材を前記横行方向に延在させた状態で荷役できる。これにより、長尺部材の長さが岸壁クレーンを構成する走行方向に隣り合う脚どうしの離間距離よりも長い場合にも、長尺部材を岸壁クレーンの脚に引っ掛けることなく荷役することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の岸壁クレーンにより長尺部材を荷役している状況を正面視で例示する説明図である。
【
図2】
図1の状況を側面視で例示する説明図である。
【
図3】
図1の荷役具および横行方向荷役用天秤を拡大して例示する説明図である。
【
図4】
図2の荷役具および横行方向荷役用天秤を拡大して例示する説明図である。
【
図5】
図1の横行方向荷役用天秤を走行方向荷役用天秤に接続する前の状況を側面視で例示する説明図である。
【
図6】
図5の状況を正面視で例示する説明図である。
【
図7】本発明に係る別の実施形態の岸壁クレーンにより長尺部材を荷役している状況を側面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の岸壁クレーンおよび荷役方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1~
図6に例示する本発明に係る実施形態の岸壁クレーン1は、接岸した船舶Sと陸地Gとの間におけるコンテナや長尺部材30などの荷積作業や荷卸作業を行うコンテナクレーンである。図中のX軸は岸壁クレーン1の横行方向Xを示し、Y軸は平面視において横行方向Xと直交する岸壁クレーン1の走行方向Yを示し、Z軸は上下方向Zを示している。横行方向X、走行方向Yはそれぞれ、接岸した船舶Sの船幅方向、船長方向に対応する。
【0012】
図1および
図2に示すように、岸壁クレーン1は、脚構造体2と、脚構造体2の上部に支持された主桁3と、主桁3に支持されたトロリ4と、トロリ4から懸吊された荷役具5とを有する。岸壁クレーン1は主に荷役具5としてコンテナ荷役用のスプレッダ7を使用してコンテナの荷役を行うが、コンテナに収容せずに荷役される長尺部材30の荷役を行うときには、荷役具5の下側に横行方向Xを長手方向とする横行方向荷役用天秤10が接続される。長尺部材30としては、長尺の金属部材(例えば、形鋼や鋼管等)や木材などが例示できる。
【0013】
この実施形態の岸壁クレーン1は、荷役具5として、ヘッドブロック6、スプレッダ7および走行方向荷役用天秤20を有していて、それらの荷役具5の下側に横行方向荷役用天秤10が接続されている。荷役具5はコンテナやその他の荷役対象物の荷役を行う際に使用されるものであり他にも例えば、吊ビーム等が例示できる。
【0014】
脚構造体2は、陸側に配置された2本の脚2aと、海側に配置された2本の脚2aとを有して構成されている。それぞれの脚2aは上下方向Zに延在している。
図2に示すように、陸側に配置された2本の脚2aと、海側に配置された2本の脚2aはそれぞれ走行方向Yに離間して配置されている。脚2aの下部には、陸側の脚2aどうしを連結するシルビームと海側の脚2aどうしを連結するシルビームが設けられている。シルビームは走行方向Yに延在していて、それぞれのシルビームの下側に複数の走行装置が設けられている。岸壁クレーン1は複数の走行装置により、陸地Gに敷設されたレールに沿って走行方向Yに移動できる構成になっている。
【0015】
トロリ4は走行方向Yに離間して配置されている脚2aどうしの間に配置されていて、主桁3に沿って横行方向Xに移動する。トロリ4の下方にヘッドブロック6がワイヤロープにより懸吊されている。ヘッドブロック6の下側にはコンテナ荷役用のスプレッダ7が連結されている。スプレッダ7の下部には、コンテナの上部の四隅に設けられている係合部に係合可能な少なくとも4つ以上のツイストロックピンが設けられている。スプレッダ7は走行方向Xを長手方向として配置され、コンテナの荷役を行う際にはコンテナの長手方向が走行方向Yに向いた状態で、スプレッダ7の下側にコンテナが係合されて保持される。
【0016】
この実施形態では、スプレッダ7の下側に走行方向荷役用天秤20が連結されている。走行方向荷役用天秤20はコンテナ以外の長尺部材30を、その長尺部材30の長手方向を走行方向Yに向けた状態で荷役する際に使用される荷役具5である。
図3および
図4に示すように、走行方向荷役用天秤20は、フレーム構造体21と、スプレッダ7のツイストロックピンを係合可能な係合部22と、索状体を連結可能な吊金具23と、吊金具23よりも下方に突出した支持脚24とを備えている。
【0017】
フレーム構造体21は、スプレッダ7の走行方向Yにおける一方端のツイストロックピンから他方端のツイストロックピンまで延在している。また、フレーム構造体21は、横行方向Xにおける一方端のツイストロックピンから他方端のツイストロックピンまで延在している。走行方向荷役用天秤20はスプレッダ7と同様に走行方向Xを長手方向として配置される。
【0018】
フレーム構造体21の上部に複数の係合部22が設けられていて、それぞれの係合部22にスプレッダ7のツイストロックピンを係合させることで、スプレッダ7の下側に走行方向荷役用天秤20が連結されている。走行方向荷役用天秤20は、ヘッドブロック6のツイストロックピンを係合可能なヘッドブロック用の係合部も有していて、ヘッドブロック20の下側に装着することも可能な構成になっている。また、この実施形態では、走行方向荷役用天秤20の上部に索状体を連結可能な吊金具が複数ヶ所に設けられていて、これらの吊金具と吊ビームに設けられているフックとを索状体で接続することで、吊ビームの下側に走行方向荷役用天秤20を吊り下げられることも可能な構成になっている。
【0019】
走行方向荷役用天秤20の下部に設けられている吊金具23と、長尺部材30または長尺部材30を保持する保持治具(例えば、パレットやベルト等)とを索状体で接続することで、長尺部材30を走行方向荷役用天秤20の下方に吊持した状態で荷役することが可能である。しかしながら、走行方向Yに延在する走行方向荷役用天秤20によって長尺部材30を吊持する場合には、長尺部材30の長手方向を走行方向Yに向けた状態で荷役することになる。そのため、長尺部材30の長手方向の長さLが、走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離Dよりも長い場合には、長尺部材30が岸壁クレーン1の脚2aに引っ掛かってしまう。そのため、走行方向荷役用天秤20では、走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離Dよりも長い長尺部材30を荷役することはできない。
【0020】
そこで、この岸壁クレーン1では、荷役具5の下側に、横行方向Xを長手方向とする横行方向荷役用天秤10が接続されている。この実施形態では、荷役具5の下側に走行方向Yに間隔をあけて2つの横行方向荷役用天秤10が接続されている。
図3および
図4に示すように、横行方向荷役用天秤10は、横行方向Xに延在する桁部11と、桁部11を荷役具5に接続する接続手段12と、桁部11に設けられて長手方向を横行方向Xに向けた状態の長尺部材30を保持可能な保持手段13とを備えている。
【0021】
桁部11は、例えば、H形鋼や溝形鋼などの長尺な金属部材で構成される。この実施形態の桁部11は、1本のH形鋼で構成されている。桁部11の上部には接続手段12として、吊金具12aと索状体12bとが設けられている。桁部11の長手方向(横行方向X)における両端部とその間に、複数の吊金具12aが間隔をあけて配設されている。桁部11の上部に設けられている吊金具12aと、走行方向荷役用天秤20の下部に設けられている吊金具23とが、索状体12bによって接続されることで、走行方向荷役用天秤20の下側に横行方向荷役用天秤10が接続され、吊り下げられている。
【0022】
この実施形態では、桁部11の下部に保持手段13として、吊金具13aと索状体13bと保持治具13cとが設けられている。桁部11の長手方向(横行方向X)における両端部とその間に、複数の吊金具13aが間隔をあけて配設されている。この実施形態では、保持治具13cが横行方向Xを長手方向とするパレット(荷役台)で構成されていて、保持治具13cの上に長手方向を横行方向Xに向けた状態の長尺部材30が載置されている。横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている吊金具13aと、保持治具13cとが、索状体13bによって接続されることで、横行方向荷役用天秤10の下側に長手方向を横行方向Xに向けた状態の長尺部材30が保持されている。
【0023】
この実施形態の横行方向荷役用天秤10はさらに、吊金具13aの下端よりも下方に突出した支持脚14と、フォークリフトのフォークを差し込み可能な差込部15とを備えている。
図4に示すように、支持脚14の上部は桁部11の側部に接合されていて、支持脚14の下部は桁部11よりも走行方向Y外側に配置されている。桁部11の走行方向Yの両側部にそれぞれ支持脚14が設けられている。この実施形態では、一対の支持脚14が桁部11の横行方向Xに離間して2ヶ所に設けられている。差込部15は桁部11の中央の上部に設けられている。
【0024】
次に、この岸壁クレーン1により長尺部材30の荷役を行う方法を説明する。
【0025】
図5および
図6に示すように、岸壁クレーン1を操作して、トロリ4から懸吊された荷役具5(この実施形態では、ヘッドブロック6、スプレッダ7、および走行方向荷役用天秤20)を陸地Gに載置した横行方向荷役用天秤10の直上まで移動させる。そして、荷役具5の下側に、横行方向Xを長手方向とする横行方向荷役用天秤10を接続する。
図6に示すように、この実施形態では、荷役具5の下側に走行方向Yに間隔をあけて2本の横行方向荷役用天秤10を配置し、それぞれの横行方向荷役用天秤10の上部に設けられている吊金具12aと、走行方向荷役用天秤20の下部に設けられている吊金具23とを索状体12bで接続している。
【0026】
次いで、横行方向荷役用天秤10を陸地Gに載置した状態、または、横行方向荷役用天秤10を上方移動させて横行方向荷役用天秤10を宙に浮かせた状態で、
図3および
図4に示すように、横行方向荷役用天秤10に設けられている保持手段13により、長手方向を横行方向Xに向けた長尺部材30を保持した状態にする。この実施形態では、保持治具13cの上に長尺部材30を、長手方向を横行方向Xに向けた状態で載置し、横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている吊金具13aと保持治具13cとを索状体13bで接続する。
【0027】
次いで、保持手段13により、長手方向を横行方向Xに向けた長尺部材30を保持した状態で、岸壁クレーン1を操作して、荷役具5とともに横行方向荷役用天秤10および長尺部材30を横行方向Xに移動させることで、接岸した船舶と陸上Gとの間における長尺部材30の荷役を行う。
【0028】
このように、本発明によれば、岸壁クレーン1のトロリ4から懸吊された荷役具5の下側に接続した横行方向Xを長手方向とする横行方向荷役用天秤10により、長尺部材30を横行方向Xに延在させた状態で荷役できる。これにより、長尺部材30の長手方向の長さLが岸壁クレーン1を構成する走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離Dよりも長い場合にも、長尺部材30を岸壁クレーン1の脚2aに引っ掛けることなく、長尺部材30を走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの間を通過させて荷役することが可能となる。
【0029】
さらに、横行方向荷役用天秤10の長手方向が横行方向Xに向いていることで、横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている横行方向Xの一方の最も端に位置する吊金具13aと他方の最も端に位置する吊金具13aとの横行方向Xのスパン(間隔)を長く確保できる。そのため、横行方向荷役用天秤10によって横行方向Xに延在する長尺部材30を保持するときの、長尺部材30の横行方向Xにおける傾きや傾動を抑制するには有利になり、比較的長い長尺部材30であっても安定した状態で荷役できる。
【0030】
特に、横行方向荷役用天秤10の長手方向(横行方向X)の長さLが、岸壁クレーン1を構成する走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離D以上である構成にすると、横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている横行方向Xの一方の最も端に位置する吊金具13aと他方の最も端に位置する吊金具13aとの横行方向Xのスパンを非常に長く確保できるので、走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離Dよりも長い長尺部材30を荷役する場合にも、長尺部材30の横行方向Xにおける傾きや傾動を効果的に抑制することができ、長尺部材30を非常に安定した状態で荷役できる。
【0031】
さらに、横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている横行方向Xの一方の最も端に位置する吊金具13aと他方の最も端に位置する吊金具13aとの横行方向Xのスパンが、走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離D以上である構成にすると、走行方向Yに隣り合う脚2aどうしの離間距離Dよりも長い長尺部材30を荷役する場合にも、長尺部材30をより安定した状態で荷役できる。
【0032】
従来では、横行方向Xに延在して使用される横行方向荷役用天秤10がなく、荷役具5により長尺部材30を走行方向Yに延在させた状態でしか荷役できなかった。そのため、陸地Gや船舶Sの上に長尺部材30を横行方向Xに延在させた状態で配置したい場合には、一度、荷卸しの場合には陸地Gに、荷積みの場合には船舶Sの上に、長尺部材30の長手方向を走行方向Yに向けた状態で載置し、その後、岸壁クレーン1とは別のクレーン等を使用して長尺部材30の長手方向の向きを走行方向Yから横行方向Xに変えるという2段階の作業が必要であった。一方、本発明では、横行方向荷役用天秤10を用いることで、岸壁クレーン1によって長尺部材30の長手方向を横行方向Xに向けた状態で荷卸しや荷積みを行うことが可能となる。それ故、長尺部材30の荷役作業の効率化を図るには非常に有益である。
【0033】
この実施形態のように、荷役具5の下側に、走行方向Yに間隔をあけて複数の横行方向荷役用天秤10を接続した構成にすると、走行方向Yの幅が広い長尺部材30を荷役する場合にも、横行方向荷役用天秤10の吊金具13aに接続する索状体13bの上下方向Zに対する角度を小さくできる。そのため、長尺部材30の走行方向Yの傾動を抑制するには有利になり、長尺部材30を安定して荷役するにはより有利になる。なお、荷役具5の下側にひとつの横行方向荷役用天秤10を接続した構成にした場合にも長尺部材30を荷役することは可能である。
【0034】
この実施形態のように、トロリ4から懸吊されたコンテナ荷役用のスプレッダ7の下側に走行方向Yを長手方向とする走行方向荷役用天秤20を装着し、走行方向荷役用天秤20の下側に横行方向荷役用天秤10を接続した構成にすると、走行方向荷役用天秤20と横行方向荷役用天秤10との接続を解除して、横行方向荷役用天秤10を取外すだけで、走行方向荷役用天秤20により長尺部材30を、長手方向を走行方向Yに向けた状態で保持して荷役することが可能となる。つまり、長手方向を走行方向Yに向けた状態で荷役する長尺部材30の荷役作業と、長手方向を横行方向Xに向けた状態で荷役する長尺部材30の荷役作業との切り替えを、走行方向荷役用天秤20に対する横行方向荷役用天秤10の着脱を行うだけで、簡易に迅速に行える。それ故、長尺部材30の荷役作業の効率化を図るには有利になる。
【0035】
横行方向荷役用天秤10が支持脚14を有する構成にすると、横行方向荷役用天秤1を陸地Gに載置する際に、支持脚14により桁部11を安定して支持できる。さらに、宙に浮かせた状態の横行方向荷役用天秤10を陸地Gに着床させる際に、横行方向荷役用天秤10の下部に設けられている吊金具13aが陸地Gに接触することを回避できるので、吊金具13aが損傷するリスクを低くできる。支持脚14は例えば、桁部11の下面から下方に突出した構成にすることもできるが、この実施形態のように、桁部11の両側部に支持脚14が設けられていて、それぞれの支持脚14が桁部11の側部から側方に突出した構成にすると、一対の支持脚14により桁部11を非常に安定して支持できる。さらに、支持脚14が桁部11の側部から側方に突出した構成にすることで、走行方向Yから見て支持脚14と重なる位置に吊金具13aを配置することが可能となり、吊金具13aの配置の自由度が高くなる。
【0036】
横行方向荷役用天秤10が差込部15を有する構成にすると、フォークリフトによって横行方向荷役用天秤10を簡易に搬送することが可能となるので、横行方向荷役用天秤10の利便性がより高くなる。差込部15は例えば、横行方向荷役用天秤10(桁部11)の下部に設けることもできる。なお、支持脚14と差込部15は、横行方向荷役用天秤10において必須の構成要件ではなく、それぞれ任意に設けることができる。
【0037】
図7に本発明に係る別の実施形態の岸壁クレーン1を例示する。この実施形態では、横行方向荷役用天秤10と走行方向荷役用天秤20の構成が先に例示した実施形態と異なっている。その他の構成は先に例示した実施形態と同じである。
【0038】
この実施形態では、横行方向荷役用天秤10の桁部11が、走行方向Yに離間して配置された横行方向Xに延在する2本の主桁部11aと、走行方向Yに延在して2本の主桁部11aどうしを連結する副桁部11bとを有するフレーム構造になっている。さらに、走行方向荷役用天秤20の下部に被連結部25が設けられていて、荷役方向転換天秤10の上部に接続手段12として、被連結部25に接続可能な連結部12cが設けられている。
【0039】
また、保持手段13として桁部11の下部に、横行方向Xから見てU字形のフレーム13dが設けられている。U字形のフレーム13dは、横行方向Xに離間して複数ヶ所に配設されている。フレーム13dの上に長尺部材30を、長手方向を横行方向Xに向けた状態で載置できる構成になっている。フレーム13dの上端部は桁部11に対して着脱可能な構成になっている。この実施形態においても、先に例示した実施形態と同様の荷役方法で長尺部材30の荷役を行うことができ、同様の効果を奏することができる。
【0040】
上記で例示したそれぞれの実施形態では、走行方向荷役用天秤20の下側に横行方向荷役用天秤10を接続した場合を例示したが、例えば、ヘッドブロック6やスプレッダ7、吊ビームなどのその他の荷役具5の下側に横行方向荷役用天秤10を接続した構成にすることもできる。また、接続手段12は吊金具12aおよび索状体12bに限定されず、他にも様々な構成にすることができる。例えば、横行方向荷役用天秤10の上部にツイストロックピンが係合可能な係合部を設けて、ヘッドブロック6またはスプレッダ7の下部に設けられているツイストロックピンと、横行方向荷役用天秤10の上部に設けた係合部とを係合させることで、ヘッドブロック6またはスプレッダ7に横行方向荷役用天秤10を接続する構成にすることもできる。また、保持手段13は、長手方向を横行方向Xに向けた長尺部材30を保持した状態にできる構成であれば、上記で例示した実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0041】
なお、上記の説明で使用した「長手方向が横行方向X(走行方向Y)に向いた状態」と「横行方向X(走行方向Y)を長手方向とする」とは、長手方向が横行方向X(走行方向Y)に対して略平行な向きであることを示している。より具体的には、水平方向において長手方向と横行方向X(走行方向Y)とのなす角度が例えば、±20°以内であることを示している。
【符号の説明】
【0042】
1 岸壁クレーン
2 脚構造体
2a 脚
3 主桁
4 トロリ
5 荷役具
6 ヘッドブロック
7 スプレッダ
10 横行方向荷役用天秤
11 桁部
11a 主桁部
11b 副桁部
12 接続手段
12a (桁部の上部に設けられた)吊金具
12b 索状体
12c 連結部
13 保持手段
13a (桁部の下部に設けられた)吊金具
13b 索状体
13c 保持治具
13d フレーム
14 支持脚
15 差込部
20 走行方向荷役用天秤
21 フレーム構造体
22 係合部
23 吊金具
24 支持脚
25 被連結部
30 長尺部材
G 陸地
S 船舶