(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】粘着剤層及び粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231228BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20231228BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20231228BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
C09J11/06
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021209728
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2020126784の分割
【原出願日】2014-08-06
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 良
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276451(JP,A)
【文献】特開2009-173772(JP,A)
【文献】特開2012-001647(JP,A)
【文献】特開2007-111970(JP,A)
【文献】特開2010-145682(JP,A)
【文献】特許第6644971(JP,B2)
【文献】特許第6620325(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、架橋剤とを含有する粘着剤組成物を、架橋させてなる粘着剤層であり、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上の合計100重量部と、
(B)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部と、をカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマー及びアミノ基含有(メタ)アクリレートを含まないで共重合させた、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体であるアクリル系ポリマーであり、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上の合計100重量部のうち、ブチルアクリレートを少なくとも30重量部以上の割合で含有し、且つ、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含まずに、メチルアクリレートを20重量部以上の割合で含有してなるか、又は、メチルアクリレートを含まずに、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマー
として、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上の化合物を5~30重量部の割合で含有してなり、
前記(B)水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上の化合物であり、
前記粘着剤組成物が、さらに、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも2種以上の合計100重量部に対して、前記架橋剤としてイソシアネート化合物を0.01~0.8重量部と、シランカップリング剤を0.01~0.5重量部との割合で含有してなり、
前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基からなる群から選択された少なくとも1種類の有機官能基を有してなり、
前記粘着剤層の厚さが、1~25μmであり、
下記のゲル分率の測定方法で測定した前記粘着剤層のゲル分率が、40~75%であることを特徴とする粘着剤層。
・ゲル分率の測定方法:エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、下記の式(1)から粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤質量(g)×100・・・・式(1)
【請求項2】
基材の片面上に、請求項1に記載の粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルム。
【請求項3】
粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として用いられた請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項4】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1に記載の粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板などの光学部材の貼り合わせに用いられる粘着剤組成物及び粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤層を介して偏光板、位相差板などの光学部材を液晶セルなどの被着体に貼合するため、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献1~2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基含有モノマー、及び窒素含有ビニルモノマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
また、粘着剤層の屈折率を高めるために、種々の工夫をした粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献3~8参照)。
特許文献3には、芳香族環を有し、屈折率1.51~1.75のタッキファイヤーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献4には、芳香族環を含有するアクリル酸変性モノマーの共重合性ポリマーを含む粘着剤組成物を含有する粘着シートが記載されている。
特許文献5には、芳香族環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献6には、アクリル系樹脂と、エチレン性不飽和基を1つ含有する芳香族化合物を含有する粘着剤組成物が硬化されてなる粘着剤が記載されている。
特許文献7には、芳香族モノマーを含有するアクリル系の粘着剤を介して、位相差フィルム及び複屈折板を互いに固着してなる光学部品が記載されている。
特許文献8には、芳香族ジイソシアネートと、芳香族ポリエステルジオールを反応させてなるウレタン樹脂を含む粘着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-177022号公報
【文献】特開2012-201734号公報
【文献】特開2007-084762号公報
【文献】特開2011-153169号公報
【文献】特開2012-167188号公報
【文献】特開2012-021148号公報
【文献】特開2006-293281号公報
【文献】特開2009-091522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年において、光学部材の層間を貼合するのに用いる粘着フィルムに対して要求されている事項は、光学部材の薄膜化を図るために、粘着剤層の厚さを薄くした粘着フィルムとすることである。
一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例していることから、粘着剤層の厚さを薄くすると、それに伴って粘着力が低下してしまう。
【0005】
しかし、近年求められている粘着フィルムは、粘着剤層の厚さを薄くしても、従来の粘着フィルム(粘着剤層の厚さが約30μmと厚い)と同等の粘着力を有しており、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長時間放置した後の耐久性についても、従来の粘着フィルムと同等以上の性能を有することが求められている。
また、粘着剤層の厚さを薄くできること、及び、エージング処理(恒温で養生を行うこと)を施す必要がない粘着剤層を形成できることから、粘着フィルムの基材を省いた粘着剤層のみからなる、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の部材構成をした、NCF(Non Carrier Film)の形態とすることが求められている。
【0006】
また、従来の粘着フィルムでは、被着体に粘着フィルムを貼り合せた後に、エージング処理が施されるために、被着体と粘着剤層との密着性の向上を図ることができた。
しかしながら、NCFの形態をした粘着フィルムは、すでに粘着剤層のエージングを終了させていることから、被着体と粘着剤層との密着力が不足する。そのため、被着体の表面に対して、コロナ処理などの表面処理をする必要があるという問題があった。
これらの要求事項および問題を克服した粘着フィルムが、必要とされている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄膜にも拘わらず、優れたリワーク性と高い密着性の性能を有する粘着剤層を形成することが可能な粘着剤組成物及びそれを用いた粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係わる粘着剤組成物は、ブチルアクリレートを必須モノマーとし、官能基含有モノマーとしてはカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを用いず、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを用いた、重量平均分子量100万以上の共重合体に対して、架橋剤としてイソシアネート化合物を用いること、さらに好ましくは、シランカップリング剤を併用することを特徴とする。
【0009】
また、上記の課題を解決するため、本発明は、(1)主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも1種以上を含有し、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、ブチルアクリレートを少なくとも30重量部以上と、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部と、を含有し、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体であるアクリル系ポリマーと、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(3)架橋剤としてイソシアネート化合物を0.01~0.8重量部と、を含有してなる粘着剤組成物を提供する。
【0010】
さらに、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(4)シランカップリング剤を0.01~0.5重量部含有することが好ましい。
【0011】
また、前記イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体であることが好ましい。
【0012】
また、前記(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも一種以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層であり、架橋後のゲル分率が40~75%であり、厚さ25μmの粘着剤層の粘着力が1.5~6.0N/25mmであることを特徴とする粘着剤層を提供する。
【0014】
また、前記粘着剤層を被着体に貼り合わせ後、70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmであることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、基材の片面上に、前記粘着剤層が積層されたことを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記粘着フィルムが用いられた、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合せに用いられる粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として用いられた前記粘着剤層を提供する。
【0018】
また、本発明は、偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられた粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として用いられた前記粘着剤層を提供する。
【0019】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の粘着剤層よりも、架橋剤量および官能基量を減らしつつ、架橋後のゲル分率の高い粘着剤層になることが特徴であり、柔軟性、堅剛性、耐久性、及びリワーク性を兼ね備えた粘着剤層、及びそれを用いた粘着フィルムが得られる。
本発明の粘着フィルムは、薄膜にも関わらず、優れたリワーク性と高い密着性の性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の粘着剤組成物は、(1)主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも1種以上を含有し、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、ブチルアクリレートを少なくとも30重量部以上と、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部と、を含有し、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体であるアクリル系ポリマーと、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(3)架橋剤としてイソシアネート化合物を0.01~0.8重量部と、を含有してなることを特徴とする。
【0022】
本発明に係わる粘着剤組成物において、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの合計は、70重量部以上が好ましく、100重量部でもよい。アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、粘着剤組成物のアクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対する割合が、50~99.9重量部であることが好ましい。本発明では、ブチルアクリレートを必須のモノマーとする。主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、ブチルアクリレートを少なくとも30重量部以上含むことが好ましい。
また、本発明においては、粘着剤組成物が、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの1種以上からなる主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、メチルアクリレートのモノマーを20重量部以上の割合で含有することにより、粘着剤層の屈折率を、1.47以上に高めることができる。
【0023】
本発明に係わる粘着剤組成物には、さらに、主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの1種以上を含有させることができる。芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。屈折率が高い粘着剤層を得るためには、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。
【0024】
これらの芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを、主成分のモノマーであるアルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと混合することにより、得られる粘着剤層の屈折率を上昇させて調整でき、光学部材間の屈折率差を少なくして、全反射を低減させることにより全光線透過率を向上させることができる。本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有させる場合は、主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、5~30重量部の割合で含有させるのが好ましい。
また、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを共重合させることにより、上記の主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、メチルアクリレートのモノマーを20重量部以上の割合で含有させて粘着剤層の屈折率を高める効果よりも、さらに粘着剤層の屈折率を高めることができる。
また、上記のとおり、粘着剤層の屈折率を高める方法として、主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、メチルアクリレートのモノマーを20重量部以上の割合で含有させる方法と、芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーを共重合させる方法との2つの方法があり、それぞれの方法を単独で採用できるが、その2つの方法を併用することがより好ましい。
【0025】
本発明の粘着剤組成物において、アクリル系ポリマーは、官能基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、水酸基含有共重合性ビニルモノマーを含有する。官能基含有モノマーとして、水酸基含有共重合性ビニルモノマーのみを用いてもよい。
【0026】
水酸基含有共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類や、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。
中でも、水酸基含有共重合性ビニルモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、からなる化合物群の中から選択された少なくとも一種以上であることが好ましい。
また、本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる水酸基含有共重合性ビニルモノマーは、得られる粘着剤層が透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性に影響を与えるとされる、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーの含有量を減らすための共重合性モノマーとして使用できる。そのため、水酸基含有共重合性ビニルモノマーは、粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。本発明に係わる粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる水酸基含有共重合性ビニルモノマーは、主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、0.1~3.5重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明の粘着剤層に用いる粘着剤組成物のアクリル系ポリマーは、(1)主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、アルキル基の炭素数がC1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び芳香族基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるモノマー群の中から選択された少なくとも1種以上を含有し、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部の内、ブチルアクリレートを少なくとも30重量部以上と、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まず、前記主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、(2)水酸基含有共重合性ビニルモノマーを0.1~3.5重量部と、を含有し、酸価が0.1以下で、重量平均分子量が100万以上の共重合体である。
【0028】
共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリルアミド類などのアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。
【0029】
前記粘着剤組成物は、上記のアクリル系ポリマーに、架橋剤や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値などの特性を調整することができる。
(3)架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物の少なくとも1種以上が挙げられる。アクリル系ポリマーが、架橋剤のイソシアネート化合物と架橋反応可能な官能基として、水酸基を有することが好ましく、また、これらの官能基を側鎖に有するモノマーを含有することが好ましい。また、粘着剤組成物が、主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対してイソシアネート化合物を0.01~0.8重量部を、含有することが好ましい。(3)架橋剤として、イソシアネート化合物のみを用いてもよい。イソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネートのアダクト体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましい。
【0030】
前記粘着剤組成物は、さらに、(4)シランカップリング剤を含有することが好ましい。(4)シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。前記シランカップリング剤が、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基からなる群から選択された少なくとも一種類の、有機官能基を有することが好ましい。ここで、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基(CH2=CHCOO-)、又は、メタクリロキシ基(CH2=C(CH3)COO-)を意味する。
【0031】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、前記有機官能基を含み、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0032】
(4)シランカップリング剤の含有量は、主成分の(メタ)アクリレートモノマーの合計100重量部に対して、シランカップリング剤0.01~0.5重量部が好ましい。
【0033】
その他任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0034】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。架橋後の粘着剤層のゲル分率は、40~75%であることが好ましい。
光学部材の層間の貼合などに用いる場合、薄い粘着剤層であることが望ましく、前記粘着剤層の厚さは、1μm~25μmが好ましく、5μm~25μmがより好ましい。また、一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例しているが、厚さが25μmの粘着剤層の粘着力が1.5~6.0N/25mmであることが好ましい。さらに、粘着剤層を被着体に貼り合わせ後、70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmであることが好ましい。被着体としては、無アルカリガラス等のガラス板、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0035】
本発明に係わる粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、前記粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0036】
本発明の粘着フィルムは、本発明の粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0037】
離型フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。
【0038】
本発明の粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶表示装置の周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。
例えば、「光学フィルム/粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/粘着剤層」のように粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
本発明の粘着フィルムは、偏光板とディスプレイパネルとの貼り合せに好適に用いられる。例えば、粘着剤層付き偏光板の粘着剤層として用いられる。偏光板の構成材料として、λ/4又はλ/2の位相差を持つ位相差フィルムが用いられてもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0040】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート100重量部、8-ヒドロキシオクチルアクリレート0.2重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量が100万以上の、実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1を得た。アクリル系ポリマーの一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2~5及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の(1)群及び(2)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。なお、特に測定結果を示さないが、実施例2~5及び比較例1~3のアクリル系ポリマー溶液に含まれるアクリル系ポリマーの重量平均分子量は、100万以上である。
【0041】
<粘着剤組成物、粘着剤層及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液1に対して、コロネートL(トリレンジイソシアネート(TDI)化合物のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体)0.2重量部、KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.05重量部を加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋してなる厚さ25μmの粘着剤層を、離型フィルムの片面上に有する、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~5及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の(3)群及び(4)群の記載のようにする以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~5及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0042】
【0043】
表1では、(1)群の合計を100重量部として求めた、(2)群から(4)群までの添加割合として、重量部の数値を括弧で囲んで示す。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)Lは日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、D-110Nは三井化学株式会社の商品名であり、KBM-403及びKBM-803は信越化学工業株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。表1及び表2中、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーは、水酸基含有共重合性ビニルモノマーとともに(2)群に記載した。
【0044】
【0045】
<試験方法及び評価>
実施例1~5及び比較例1~3における粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、粘着剤層を表出させ、偏光板(フィルム)の片面に粘着剤層を転写した。
【0046】
<粘着力の測定方法>
厚さ180μmの偏光板(フィルム)の片面に、厚さ25μmの粘着剤層を転写して、試料となる粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。
得られた粘着フィルムを、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過させた。その後の粘着フィルムの剥離強度を、引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、粘着フィルムの粘着剤層の粘着力(N/25mm)とした。
【0047】
<酸価の測定方法>
アクリル系ポリマーの酸価は、試料を溶剤(ジエチルエーテルとエタノールを体積比2:1で混合したもの)に溶かし、電位差自動滴定装置(京都電子工業製、AT-610)を用いて、0.1上記電位差滴定装置を用い、濃度が約0.1mol/lの水酸化カリウムエタノール溶液で電位差滴定を行い、試料を中和するために必要な水酸化カリウムエタノール溶液の量を測定した。そして、下記式より、酸価を求めた。
酸価=(B×f×5.611)/S
B=滴定に用いた0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液の量(ml)
f=0.1mol/l水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S=試料の固形分の質量(g)
【0048】
<ゲル分率の測定方法>
エージング終了後、偏光板に貼り合わせる前の測定試料の質量を正確に測定し、トルエン中に24時間浸漬後、200メッシュの金網で濾過する。その後、濾過物を100℃、1時間乾燥した後、残渣の質量を正確に測定して、以下の式から粘着剤層(架橋後の粘着剤)のゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=不溶部分質量(g)/粘着剤質量(g)×100
【0049】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法で無アルカリガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、所定の雰囲気(80℃dry雰囲気、または60℃×90%RHの雰囲気)下に250時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着フィルムの状態を目視で観察して耐久性を判断した。
○・・粘着フィルムの剥がれ及び発泡が全くない。
△・・粘着フィルムの一部に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・粘着フィルムの全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0050】
<リワーク性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で作成した10cm角の粘着フィルムを、同様の方法で無アルカリガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、70℃の雰囲気下に10日間放置後、23℃の雰囲気下に取り出し、1時間放置後の粘着フィルムの粘着力を測定してリワーク性を判断した。
○・・70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmである。
△・・70℃×10日後の粘着力が10N/25mmより大きいが、20N/25mm以下である。
×・・70℃×10日後の粘着力が20N/25mmより大きい(剥がすことができない)。
【0051】
表3に、評価結果を示す。酸価については、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含まない、実施例1~5及び比較例2,3のアクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であり、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含む、比較例1のアクリル系ポリマーの酸価が0.1より大きいことを確認した。
【0052】
【0053】
実施例1~5の粘着フィルムは、厚さ25μmの粘着剤層の粘着力が1.5~6.0N/25mmの範囲であり、架橋後の粘着剤層のゲル分率が40~75%であり、密着性及び耐久性が優れていた。また、被着体に貼り合わせ後、70℃×10日後の粘着力が1.5~10N/25mmの範囲であることにより、リワーク性にも優れていた。すなわち、実施例1~5の粘着フィルムでは、要求事項および問題を克服することができた。
【0054】
比較例1の粘着フィルムは、主成分の(メタ)アクリレートモノマーとして、ブチルアクリレートを含まず、官能基含有モノマーとして、カルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーを含み、ゲル分率が高いためか、厚さ25μmの粘着剤層の粘着力が強く、60℃×90%RHの雰囲気下での耐久性、及びリワーク性に劣っていた。
比較例2の粘着フィルムは、粘着剤組成物に水酸基含有共重合性ビニルモノマーの配合量が多すぎて、ゲル分率が高いためか、60℃×90%RHの雰囲気下での耐久性に劣り、80℃dry雰囲気下での耐久性、及びリワーク性にも、やや劣っていた。
比較例3の粘着フィルムは、粘着剤組成物にカルボキシル基含有共重合性ビニルモノマーも水酸基含有共重合性ビニルモノマーも含まないため、アクリル系ポリマーが架橋せず、ゲル分率は0であり、厚さ25μmの粘着剤層の粘着力が非常に強い。その結果、耐久性、及びリワーク性に劣っていた。
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、従来の要求事項および問題を克服することができなかった。