(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20231228BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20231228BHJP
C08F 8/28 20060101ALI20231228BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20231228BHJP
C08F 216/38 20060101ALI20231228BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231228BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B17/10
C08F8/28
C08F210/02
C08F216/38
C08J5/18 CEX
C08L29/14
(21)【出願番号】P 2021509267
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020012096
(87)【国際公開番号】W WO2020196186
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019064672
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019130250
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】新村 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】高杉 晃央
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 芳聡
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-68013(JP,A)
【文献】特開2014-189681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
C08F8/28
C08F210/02
C08F216/38
C08L29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を構成する全単量体単位を基準にして25~60モル%のエチレン単位、及び24~71モル%のビニルアルコール単位を含み、
エチレン単位以外の構造単位のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合として定義されるアセタール化度が5モル%以上40モル%未満
である、合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
80質量%以上の量で請求項1に記載の変性ビニルアセタール樹脂を含有する、合わせガラスの中間膜用樹脂組成物。
【請求項3】
可塑剤の含有量が1質量%以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の変性ビニルアセタール樹脂、請求項2に記載の樹脂組成物、又は請求項3に記載の樹脂組成物から実質的になる板状成形体。
【請求項5】
厚みが0.10~3mmである、請求項4に記載の板状成形体。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の板状成形体を用いてなる合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された請求項6に記載の合わせガラス用中間膜とを有する、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂に関し、より詳細には、優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性及び成形性を有する合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。
【0003】
近年、合わせガラスの性能向上に対する要求は益々高くなっている。特に、合わせガラスが建築物の構造用途(ファサード)に用いられる場合には、例えば、高温条件下においてガラスが破損した状態になったとしても貫通しない、垂れないこと(自立性)が求められている。該要求性能を満たすためには、合わせガラス用中間膜単味が高温条件下においてもある一定基準以上の弾性率を保持する、言い換えると耐熱性を有する必要がある。
【0004】
合わせガラスに用いられる合わせガラス用中間膜としては、ビニルブチラール樹脂を多く用い、液状可塑剤や接着力調整剤を配合して、成形加工性、耐貫通性やガラスに対する接着性を調整するものが一般的である。液状可塑剤の配合により、ビニルブチラール樹脂は軟化し、耐熱性が著しく低下する。また、液状可塑剤の配合量を減らして、又は配合しないで用いた場合には、耐熱性は向上するものの、成形加工性が低下するため成形温度を上げる必要がある。その結果、得られた板状成形体は着色が著しく進行してしまう。
【0005】
特許文献1及び2には、α-オレフィンにより変性されたビニルアセタール系重合体を合わせガラスの中間膜に使用することが記載されている。しかしながら、これらの発明においては、可塑剤を多量に使用する必要があるなど、先に指摘した問題点が考慮されておらず、改善するに至っていない。
【0006】
特許文献3には、エチレン含有量が0.5~40モル%、アセタール化度が30モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂からなるシートが記載されている(請求項1)。なお、アセタール化度には、2種類の定義が慣用されているが、特許文献3にはアセタール化度の定義が記載されていない。それゆえ、特許文献3のアセタール化度の意味は実測しなければ確認することができない。このシートは透明性、強度、柔軟性が高く、合わせガラスに利用できることが説明されている(段落0058)。
【0007】
ところが、特許文献3の実施例では、シートを成形する際に、上記ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して30質量部という多量のトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、即ち、可塑剤が配合されている。可塑剤を多量に使用すると先に指摘したように耐熱性が著しく低下する。また、アセタール化度が30モル%以上であることから耐熱性において問題がある。
【0008】
特許文献4には、エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで結合させたアイオノマー樹脂に有機過酸化物及びシランカップリング剤を配合した熱硬化性樹脂をガラス板間に介在させて一体化し、この樹脂層を熱硬化してなる合わせガラスが記載されている(請求項1)。この合わせガラスは、中間層としてポリビニルブチラール系樹脂を使用した従来の合わせガラスの耐衝撃性、耐貫通性を改良したものであり、耐衝撃性、耐貫通性、加工性及び透明性に優れると説明されている(段落0015)。
【0009】
しかしながら、アイオノマー樹脂は成形時の温度条件を厳格に調節しなければ白化又は接着不良が生じ易く、特に、溶融成形後に冷却する速度が低下した場合に白化し易い問題を有する。例えば、アイオノマー樹脂の板状成形体を挟んだ合わせガラスを冷却した場合、冷却速度が遅い中央部において白化が生じ、透明性が低下する。このように、アイオノマー樹脂を使用した合わせガラスは、製造条件の管理が厳密であり、製造コストが高く、工業的に量産することが困難なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭63-79741号公報
【文献】特開2004-68013号公報
【文献】特開2011-57737号公報
【文献】特開平9-30846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、優れた透明性、耐衝撃性、耐熱性及び成形性を有する合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、樹脂を構成する全単量体単位を基準にして25~60モル%のエチレン単位、及び24~71モル%のビニルアルコール単位を含み、5モル%以上40モル%未満のアセタール化度を有する、合わせガラスの中間膜用変性ビニルアセタール樹脂を提供する。
【0013】
また、本発明は、80質量%以上の量で上記変性ビニルアセタール樹脂を含有する、合わせガラスの中間膜用樹脂組成物を提供する。
【0014】
ある一形態においては、上記樹脂組成物は、可塑剤の含有量が1質量%以下である。
【0015】
また、本発明は、上記変性ビニルアセタール樹脂、又は樹脂組成物から実質的になる板状成形体を提供する。
【0016】
ある一形態においては、上記板状成形体は、厚みが0.10~3mmである。
【0017】
また、本発明は、上記板状成形体を用いてなる合わせガラス用中間膜を提供する。
【0018】
また、本発明は、2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された上記合わせガラス用中間膜とを有する、合わせガラスを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、合わせガラス用中間膜に要求される透明性、耐衝撃強度、耐熱性、成形性をバランスよく兼ね備えている。本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、特に、耐衝撃強度及び耐熱性に優れる。それゆえ、本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、耐貫通性及び高温環境下自立性が要求される、構造用途合わせガラス用中間膜として、特に好適に用いられるものである。尚、樹脂の耐衝撃強度はその板状成形体の耐貫通性と相関する。樹脂の耐熱性はその板状成形体の高温環境下自立性と相関する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明におけるアセタール化度(DA1)と特許文献3におけるアセタール化度(DA2)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲を狭く解釈されることはない。
【0022】
(変性ビニルアセタール樹脂)
本発明における変性ビニルアセタール樹脂は、酸性触媒の存在下において、エチレンを共重合させたビニルアルコール樹脂(以下、エチレンビニルアルコール共重合体という)とアルデヒドをアセタール化反応させて得られるものである。
【0023】
エチレンビニルアルコール共重合体としては、例えば、エチレンとビニルエステル系単量体とを共重合し、得られた共重合体をケン化することによって得たものを挙げることができる。エチレンとビニルエステル系単量体を共重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などが適宜選ばれる。ケン化反応は、従来公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いる加アルコール分解、加水分解などが適用でき、この中でもメタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるケン化反応が簡便である。
【0024】
エチレンビニルアルコール共重合体のケン化度に特に制限はないが、95モル%以上が好ましく、98モル%以上であることがより好ましく、99モル%以上であることがさらに好ましく、99.9モル%以上であることが最も好ましい。
【0025】
エチレンビニルアルコール共重合体の原料となるビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどが挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
【0026】
エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位は、25~60モル%であることが好ましく、30~55モル%であることがより好ましく、35~50モル%であることがさらに好ましい。この範囲を満たすことで後述の変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位を好適な範囲に調整することができる。
【0027】
エチレンビニルアルコール共重合体の190℃、2.16kg荷重でのMFRは、1~30g/10minが好ましく、2~20g/10minがより好ましく、3~10g/10minがさらに好ましい。この範囲を満たすことで後述の変性ビニルアセタール樹脂のMFRを好適な範囲に調整することができる。
【0028】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂の製造方法としては特に制限はないが、公知の製造法により製造することができる。例えば、エチレンビニルアルコール共重合体溶液中にアルデヒドを酸性条件下で添加しアセタール化反応する方法、又はエチレンビニルアルコール共重合体分散液中にアルデヒドを酸性条件下で添加しアセタール化反応する方法などが挙げられる。
【0029】
アセタール化反応後に得られる反応生成物をアルカリで中和した後、水洗、溶媒除去することにより、目的とする変性ビニルアセタール樹脂が得られる。
変性ビニルアセタール樹脂を製造するための溶媒には、特に制限はないが、例えば、水、アルコール類、ジメチルスルホキシド、水とアルコール類の混合溶媒などが挙げられる。
【0030】
変性ビニルアセタール樹脂を製造するための分散媒には、特に制限はないが、例えば、水やアルコールなどが挙げられる。
【0031】
アセタール化反応させるための触媒としては、特に限定されず、有機酸及び無機酸のいずれを使用したものであっても良い。例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸、炭酸、等が挙げられる。特に塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が、反応後の洗浄が容易であることから好ましく用いられている。
【0032】
アセタール化反応に用いるアルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、2-メチルブチルアルデヒド、トリメチルアセトアルデヒド、2-メチルペンチルアルデヒド、2,2-ジメチルブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、3,5,5-トリメチルへキシルアルデヒドなどが使用され、耐熱性や光学特性の点で、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、イソブチルアルデヒドが好ましい。また、これらアルデヒドは単一のものが使用されていても良いし、2種以上が併用されていても良い。
【0033】
反応生成物の中和に用いるアルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0034】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位は、樹脂を構成する全単量体単位を基準にして25~60モル%であり、30~55モル%であることが好ましく、35~50モル%であることがより好ましい。エチレン単位の上記割合が25モル%未満であると、本発明の変性ビニルアセタール樹脂の耐衝撃性が低下し易く、60モル%を超えると耐熱性が損なわれ易い。
【0035】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、5モル%以上40モル%未満である。アセタール化度の下限値は、6モル%以上、7モル%以上、8モル%以上、9モル%以上の順でより好ましく、10モル%以上が最も好ましい。アセタール化度が5モル%未満であると本発明の変性ビニルアセタール樹脂は結晶性が高くなるため透明性が悪化し易い。また、アセタール化度の上限値は、38モル%以下、36モル%以下、34モル%以下、32モル%以下の順でより好ましく、30モル%未満であることが最も好ましい。なお、アセタール化度の上限値は、29モル%以下、28モル%以下、27モル%以下、26モル%以下、25モル%未満であってもよい。アセタール化度が40モル%以上であると耐熱性、ガラス接着性が損なわれ易い。
【0036】
変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、2種類の定義が使用されている。ひとつは、エチレン単位以外の構造単位のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合で定義される。言い換えると、例えば、アセタール化されたビニルアルコール単位、アセタール化されていないビニルアルコール単位、及び酢酸ビニル単位の総和のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合のことを指す。かかるアセタール化度は、アセタール化されていないビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)とした際の、アセタール化度(モル%)={k/(k+l+m)}×100によって求められる。
【0037】
もうひとつは、エチレン単位も含む全単量体単位のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合で定義される。言い換えると、例えば、エチレン単位、アセタール化されたビニルアルコール単位、アセタール化されていないビニルアルコール単位、及び酢酸ビニル単位の総和のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合のことを指す。かかるアセタール化度は、アセタール化されていないビニルアルコール単位のモル割合(l)及び酢酸ビニル単位のモル割合(m)アセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)、エチレン単位のモル割合(n)とした際の、アセタール化度(モル%)={k/(k+l+m+n)}×100によって求められる。
【0038】
本発明では、アセタール化度は、前者DA1を採用する。即ち、エチレン単位以外の構造単位のうちアセタール化されたビニルアルコール単位の占める割合をアセタール化度と定義する。
【0039】
なお、前者のアセタール化度(DA1)と後者のアセタール化度(DA2)との関係は、式
【0040】
【0041】
[式中、nは全単量体単位に対するエチレン単位のモル割合を示す。]
で表される。
【0042】
図1は、例えば、n=15、25、32、38、44、48、60のときのアセタール化度(DA1)とアセタール化度(DA2)との関係を示すグラフである。
【0043】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は以下の手順にて求めることができる。まず、変性ビニルアセタール樹脂をエタノールに溶解させ、2N塩酸ヒドロキシルアミン溶液と塩酸を加え、冷却器をつけて水浴中で4時間撹拌し、冷却後にアンモニア水を加えて中和し、次いでメタノールを加えて沈殿させ、洗浄、乾燥を行うことでエチレンビニルアルコール共重合体を得る。次いで得られたエチレンビニルアルコール共重合体をDMSO(ジメチルスルホキシド)中に120℃下で溶解させ、室温下に冷却させた後にN,N-ジメチル-4-アミノピリジン及び無水酢酸を添加し1時間撹拌反応させ、その後イオン交換水及びアセトンで沈殿させ、洗浄、乾燥を行うことでエチレン酢酸ビニル共重合体を得る。
【0044】
得られたエチレン酢酸ビニル共重合体をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位及び酢酸ビニル単位に由来するメチンプロトン(1.1~1.9ppmのピーク)、並びに酢酸ビニル単位に由来する末端メチルプロトン(2.0ppmのピーク)の強度比から、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を算出できる。
【0045】
変性ビニルアセタール樹脂を構成する全単量体単位に対する、ビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)は、該変性ビニルアセタール樹脂をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位に由来するメチンプロトン(1.0~1.8ppmのピーク)、並びにアセタール単位に由来する末端メチルプロトン(0.8~1.0ppmのピーク)の強度比と、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を用いて算出される。
【0046】
変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、求めたビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を用いて、アセタール化度(モル%)={k/(k+l+m)}×100によって求められる。
【0047】
また、別の方法としては、アセタール化反応前のエチレンビニルアルコール共重合体をDMSO中に120℃下で溶解させ、室温下に冷却させた後にN,N-ジメチル-4-アミノピリジン及び無水酢酸を添加し1時間撹拌反応させ、その後イオン交換水及びアセトンで沈殿させ、洗浄、乾燥を行うことでエチレン酢酸ビニル共重合体を得る。
【0048】
得られたエチレン酢酸ビニル共重合体をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位及び酢酸ビニル単位に由来するメチンプロトン(1.1~1.9ppmのピーク)、並びに酢酸ビニル単位に由来する末端メチルプロトン(2.0ppmのピーク)の強度比から、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を算出できる。なお、アセタール化反応によりエチレン単位は影響を受けないことから、アセタール化反応前のエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)は、アセタール化反応後に得られる変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位のモル割合(n)と等しい。
【0049】
変性ビニルアセタール樹脂を構成する全単量体単位に対する、ビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)は、該変性ビニルアセタール樹脂をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位に由来するメチンプロトン(1.0~1.8ppmのピーク)、並びにアセタール単位に由来する末端メチルプロトン(0.8~1.0ppmのピーク)の強度比と、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を用いて算出される。
【0050】
変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、求めたビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を用いて、アセタール化度(モル%)={k/(k+l+m)}×100によって求めてもよい。
【0051】
さらに別の方法としては、JIS K6728:1977に記載の方法に則って、アセタール化されていないビニルアルコール単位の質量割合(l0)、酢酸ビニル単位の質量割合(m0)及びアセタール化されたビニルアルコール単位の質量割合(k0)を滴定によってそれぞれ求め、エチレン単位の質量割合(n0)をn0=1-l0-m0-k0によって求め、これからアセタール化されていないビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)アセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を計算し、アセタール化度(モル%)={k/(l+m+k)}×100によって求めてもよい。
【0052】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位は、樹脂を構成する全単量体単位を基準にして24~71モル%である。ビニルアルコール単位のモル割合の下限値は、24.8モル%以上、25.6モル%以上、26.4モル%以上、27.2モル%以上の順でより好ましく、28モル%以上であることが最も好ましい。なお、ビニルアルコール単位のモル割合の下限値は、26モル%以上、32モル%以上、38モル%以上であってもよい。ビニルアルコール単位の割合が24モル%未満であると本発明の変性ビニルアセタール樹脂はガラス接着性が損なわれ易い。また、ビニルアルコー単位のモル割合の上限値は、70.5モル%以下、69.8モル%以下、69モル%以下、68.3以下の順でより好ましく、67.5%以下が最も好ましい。なお、ビニルアルコー単位のモル割合の上限値は、65モル%以下、59モル%以下であってもよい。ビニルアルコール単位の割合が71モル%を超えるとガラス接着性は高くなるが透明性が悪化し易い。
【0053】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂を構成する全単量体単位を基準にしたモル%は、アセタール単位1モルはビニルアルコール単位2モルに換算し計算される。例えば、エチレン単位44.0モル、ビニルアルコール単位44.8モル及びアセタール単位5.6モルから成る変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位は44.0モル%、ビニルアルコール単位は44.8モル%、アセタール化度は20.0モル%となる。
【0054】
本発明の変性ビニルアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重でのMFRは、0.1~100g/10min、1~50g/10min、2~30g/10min、3~20g/10minの順に好ましい。190℃、2.16kg荷重でのMFRが0.1g/10min未満であると、成形加工時に適切な成形温度範囲において十分な加工性(流動性)が得られず、成形温度を上げる必要があり、結果として得られる成形体は着色し易い傾向にある。190℃、2.16kg荷重でのMFRが100g/10minを超えると、成形加工時に適切な成形温度範囲において十分な溶融張力が得られず、製膜安定性や成形体の面状が悪化するなどの問題が生じ易い傾向にある。
【0055】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、変性ビニルアセタール樹脂を好ましくは80質量%以上(100%を含む)、より好ましくは90質量%以上(100%を含む)、さらに好ましくは95質量%以上(100%を含む)含有する。
【0056】
本発明の樹脂組成物は、変性ビニルアセタール樹脂に加えて、その他の熱可塑性樹脂を任意に含有してよい。前記その他の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アイオノマー系樹脂などが挙げられる。
【0057】
樹脂組成物が前記その他の熱可塑性樹脂を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物におけるその他の熱可塑性樹脂の含有量が20質量%を超えると、透明性や耐衝撃性、ガラス等の基材への接着性が低下し易い傾向にある。
【0058】
本発明の樹脂組成物は、さらに、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、ブロッキング防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、機能性無機化合物等の添加剤を、必要に応じて含有しても良い。また、必要に応じて、可塑剤や各種添加剤を抽出し、又は、洗浄することで、一旦、これらの可塑剤や添加剤の含有量を低減させてから、可塑剤や各種添加剤等を、再度、添加しても良い。
【0059】
樹脂組成物が前記添加剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。各種添加剤の含有量が20質量%を超えると、高温条件下における自立性(耐熱性)が十分に得られないこと、合わせガラス用中間膜として長期使用した際にブリードしてくるなどの問題が生じ易い傾向にある。
【0060】
特に、可塑剤はその性質から高温条件下における自立性(耐熱性)を下げる効果が高いため、その含有量は樹脂組成物の全質量に対して1質量%以下(0質量%を含む)であることが好ましく、0.5質量%以下(0質量%を含む)であることがより好ましく、0.1質量%以下(0質量%を含む)であることがさらに好ましい。
【0061】
使用される可塑剤は特に制限はないが、例えば、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジ-(2-ブトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEA)、ジ-(2-ブトキシエチル)-セバシン酸エステル(DBES)、ジ-(2-ブトキシエチル)-アゼライン酸エステル、ジ-(2-ブトキシエチル)-グルタル酸エステル、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-アジピン酸エステル(DBEEA)、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-セバシン酸エステル(DBEES)、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-アゼライン酸エステル、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-グルタル酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエチル)-アジピン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエチル)-セバシン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエチル)-アゼライン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエチル)-グルタル酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエトキシエチル)-アジピン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエトキシエチル)-セバシン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエトキシエチル)-アゼライン酸エステル、ジ-(2-ヘキソキシエトキシエチル)-グルタル酸エステル、ジ-(2-ブトキシエチル)-フタル酸エステル及び/又はジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、分子を構成する炭素数及び酸素数の和が28以上の可塑剤であることが好ましい。例えば、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-アジピン酸エステル、ジ-(2-ブトキシエトキシエチル)-セバシン酸エステルなどが挙げられる。上記可塑剤は単一のものが使用されていても良いし、2種以上が併用されていても良い。
【0062】
また、本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、酸化防止剤を含んでいても良い。使用される酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0063】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート又は2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどのアクリレート系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-)ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン又はトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン又は2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物などがある。
【0064】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド又は10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレンなどのモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン又はテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイトなどのジホスファイト系化合物などがある。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0065】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどがある。
【0066】
これらの酸化防止剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の配合量は、変性ビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001~5質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。これらの酸化防止剤は、本発明の変性ビニルアセタール樹脂を製造する際に添加してもよい。また別の添加方法としては、本発明の板状成形体を成形する際に変性ビニルアセタール樹脂に添加してもよい。
【0067】
また、本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、紫外線吸収剤を含んでいても良い。使用される紫外線防止剤としては、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α’ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール又は2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート又は4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート又はヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート系紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤の添加量は、変性ビニルアセタール樹脂に対して質量基準で10~50000ppmであることが好ましく、100~10000ppmの範囲であることがより好ましい。また、これら紫外線吸収剤は2種以上組み合わせて用いることもできる。これらの紫外線吸収剤は、本発明の変性ビニルアセタール樹脂を製造する際に添加してもよい。また別の添加方法としては、本発明の板状成形体を成形する際に変性ビニルアセタール樹脂に添加してもよい。
【0068】
また、本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、接着性改良剤を含んでいても良い。使用される接着性改良剤としては、例えば、WO03/033583A1に開示されているものを使用することができ、有機酸のアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好ましく使用され、なかでも、酢酸カリウム及び/又は酢酸マグネシウムなどが好ましい。また、シランカップリングなどの他の添加剤を添加しても良い。接着性改良剤の最適な添加量は、使用する添加剤により異なり、また得られるモジュールや合わせガラスが使用される場所によっても異なるが、得られるシートのガラスへの接着力が、パンメル試験(Pummeltest;WO03/033583A1等に記載)において、一般には3~10になるように調整することが好ましく、特に高い耐貫通性を必要とする場合は3~6、高いガラス飛散防止性を必要とする場合は7~10に調整することが好ましい。高いガラス飛散防止性が求められる場合は、接着性改良剤を添加しないことも有用な方法である。
【0069】
また、本発明の変性ビニルアセタール樹脂は、シランカップリング剤を含んでいても良い。使用される接着性改良剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0070】
これらのシランカップリング剤は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、変性ビニルアセタール樹脂100質量部に対して0.001~5質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましい。これらのシランカップリング剤は、本発明の変性ビニルアセタール樹脂を製造する際に添加してもよい。また別の添加方法としては、本発明の板状成形体を成形する際に変性ビニルアセタール樹脂に添加してもよい。
【0071】
(板状成形体)
本発明の変性ビニルアセタール樹脂又は、それを含む樹脂組成物からなる板状成形体の測定温度50℃、周波数1Hzの条件での貯蔵弾性率(E’)は、20~1,000MPaであることが好ましく、より好ましくは30~900MPa、さらに好ましくは40~800MPaである。貯蔵弾性率(E’)が上記範囲であると、自立性がさらに良好になる。本発明において、貯蔵弾性率(E’)は実施例に記載した方法により測定した。
【0072】
板状成形体を製造する方法は特に制限はなく、公知の方法が用いられる。具体的には、押出成形やプレス成形、ブロー成形、射出成形、溶液流延法などにより樹脂組成物をシート状に成形すればよい。特に、押出機に樹脂組成物、及び添加剤を供給し、混練、溶融しダイスから出し、引取機で引取って板状に成形する方法が好ましい。押出し時の樹脂温度は170~250℃が好ましく、180~240℃がより好ましく、190~230℃がさらに好ましい。樹脂温度が高くなりすぎると変性ビニルアセタール樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。逆に温度が低すぎると、やはり揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。
【0073】
本発明の板状成形体は、成形体同士が接着することを防止するため、及びラミネート工程での脱気性を高めるため、表面に凹凸を設けることが好ましい。凹凸を設ける方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えば、押出し条件を調整することによりメルトフラクチャー構造を設ける方法、押出したシートにエンボス構造を付与する方法等が挙げられる。エンボスの深さや形状は従来公知のものを用いればよい。
【0074】
本発明の板状成形体の厚さは、特に制限はないが、0.10~3.0mmが好ましく、0.40~2.8mmがより好ましく、0.70~2.6mmがさらに好ましい。板状成形体が0.10mmより薄い場合は合わせガラスの耐貫通性能を満足する事が出来難い傾向にあり、3.0mmより厚い場合はシート自体のコストが高く、またラミネート工程のサイクルタイムも長くなる傾向にあることから好ましくない。板状成形体は、成形したものを単一のまま用いてもよく、成形したものを2枚以上重ねて用いて所望の厚みに調整することが可能である。
【0075】
本発明の板状成形体の耐貫通性は、後述の落錘式衝撃試験における貫通エネルギーが11J以上であることが好ましく、13J以上であることがより好ましく、15J以上であることがさらに好ましい。板状成形体の耐貫通性が11J未満の場合は、該板状成形体を中間膜として用いた合わせガラスの耐貫通性が十分な値を得られず使用することが困難になる傾向にある。
【0076】
(合わせガラス用中間膜)
本発明の板状成形体は、合わせガラス用中間膜として有用である。該合わせガラス用中間膜は、ガラス等の基材への接着性、透明性、自立性に優れる点から、特に、構造材料用合わせガラスの中間膜として好ましい。また、構造材料用合わせガラスの中間膜に限らず、自動車等の移動体、建築物、太陽電池、などの各種用途における合わせガラス用中間膜としても好適であるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0077】
(合わせガラス)
本発明の板状成形体を、無機ガラス又は有機ガラスからなる2枚以上のガラスの間に挿入、積層することで合わせガラスを作製することができる。本発明の合わせガラス用中間膜と積層させるガラスは、特に制限はないが、フロートガラス、強化ガラス、網入りガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラスが使用できる。ガラスの厚さは特に制限はないが、1~10mmが好ましく、2~6mmがより好ましい。
【0078】
本発明の合わせガラスに用いられる中間膜は、上記変性ビニルアセタール樹脂又は樹脂組成物を含む層(x)のみから構成されていてもよく、層(x)を少なくとも1層含む多層膜であってもよい。前記多層膜としては、特に限定されないが、例えば、層(x)とその他の層が積層した2層膜や、2つの層(x)の間にその他の層が配置されている3層膜などが挙げられる。
【0079】
前記その他の層としては、公知の樹脂を含む層が挙げられる。該樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルのうちポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリイミドなどを用いることができる。また、その他の層も、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材料(例えば、赤外線吸収能を有する、無機遮熱性材料又は有機遮熱性材料)、機能性無機化合物などの添加剤を含有してよい。
【0080】
上記の合わせガラスを得るためのラミネート方法は、公知の方法を取ることが可能であり、例えば、真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また、仮接着後に、オートクレーブ工程に投入する方法も付加的に行なうことができる。
【0081】
ニップロールを用いる場合、例えば、変性ビニルアセタール樹脂の流動開始温度以下の温度で1回目の仮接着した後、さらに流動開始温度に近い条件で仮接着する方法が挙げられる。具体的には、例えば、赤外線ヒーターなどで30~70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50~120℃に加熱した後ロールで圧着して接着又は仮接着させる方法が挙げられる。
【0082】
仮接着後に付加的に行なわれるオートクレーブ工程は、モジュールや合わせガラスの厚さや構成にもよるが、例えば、約1~1.5MPaの圧力下、130~145℃の温度で約2時間実施される。
【0083】
本発明の合わせガラスは透明性に優れるものであることが好ましい。例えば、後述の条件で合わせガラスを徐冷した際のヘイズは2%以下であることが好ましく、1.6%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましい。
【0084】
本発明の合わせガラスはガラスとの接着力に優れるものであることが好ましい。例えば、後述の方法で実施した圧縮せん断強度試験における剥離応力が20~40MPaであることが好ましく、22~38MPaであることがより好ましく、24~36MPaであることがさらに好ましい。剥離応力が20MPa未満の場合は、ガラスとの接着力が不十分でありガラス破損時にガラスが飛散する傾向にあり、40MPaを超えるとガラスとの接着力が強すぎてガラス破損時に耐貫通性が低下するおそれがある。
【0085】
本発明の合わせガラスは、優れた透明性、耐衝撃性及び耐熱性を有するため、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス、ファサード、外壁及び屋根のためのラミネート、パネル、ドア、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、表示窓、バルコニー、手摺壁等の建材、会議室の仕切りガラス部材、ソーラーパネル等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0087】
[エチレン単位、ビニルアルコール単位、アセタール単位、アセタール化度]
アセタール化反応前のエチレンビニルアルコール共重合体をDMSO中に120℃下で溶解させ、室温下に冷却させた後にN,N-ジメチル-4-アミノピリジン及び無水酢酸を添加し1時間撹拌反応させ、その後イオン交換水及びアセトンで沈殿させ、洗浄、乾燥を行うことでエチレン酢酸ビニル共重合体を得た。得られたエチレン酢酸ビニル共重合体をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位及び酢酸ビニル単位に由来するメチンプロトン(1.1~1.9ppmのピーク)、並びに酢酸ビニル単位に由来する末端メチルプロトン(2.0ppmのピーク)の強度比から、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を算出した。ここで、アセタール化反応によりエチレン単位は影響を受けないことから、アセタール化反応前のエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)は、アセタール化反応後に得られる変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位のモル割合(n)と等しいものとして扱う。
【0088】
変性ビニルアセタール樹脂を構成する全単量体単位に対する、ビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)は、該変性ビニルアセタール樹脂をDMSO-d6に溶解し、400MHzのプロトンNMR測定装置により、積算回数256回で測定して得られたスペクトルから、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位に由来するメチンプロトン(1.0~1.8ppmのピーク)、並びにアセタール単位に由来する末端メチルプロトン(0.8~1.0ppmのピーク)の強度比と、エチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位のモル割合(n)を用いて算出した。
【0089】
変性ビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、前記で求めたビニルアルコール単位のモル割合(l)、酢酸ビニル単位のモル割合(m)及びアセタール化されたビニルアルコール単位のモル割合(k)を用いて、アセタール化度(モル%)={k/(k+l+m)}×100によって求めた。
【0090】
[MFR]
アセタール化反応前のエチレンビニルアルコール共重合体、変性ビニルアセタール樹脂、及び変性ビニルアセタール樹脂からなる樹脂組成物のメルトフローレートを、JIS K7210:2014に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。
【0091】
[高温環境下自立性]
後述する方法にて得られた樹脂組成物の溶融混練物を200℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmのシートを得た。該シートから縦40mm×横5mmの試験片を切り出し、株式会社UBM製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度50℃、周波数1Hzの条件で、貯蔵弾性率(E’)を測定し、その値を高温環境下における合わせガラス用中間膜の自立性の指標とした。
【0092】
[耐貫通性]
後述する方法にて得られた樹脂組成物の溶融混練物を200℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmのシートを得た。該シートから縦60mm×横60mmの試験片を切り出し、落錘式衝撃試験機(インストロン社製CEAST9350)を用い、ASTM D3763に準拠して、測定温度23℃、荷重2kg、衝突速度9m/secの条件にて試験を行い、試験片貫通の際の、ストライカ先端が試験片に接した(試験力を感知した)瞬間から貫通する(試験力がゼロに戻る)までのSSカーブの面積から貫通エネルギーを算出した。
【0093】
[製膜性]
後述する方法にて得られた樹脂組成物を40mm径のフルフライト1軸押出機、60cm幅のコートハンガーダイを用いて、バレル温度200℃の条件で製膜して厚さ0.8mm、幅50cmのシートを製造した。このときの製膜安定性を観察し、問題なく連続製膜が可能であり外観良好なシートが得られた場合をA、シートの破断や弛みなどの問題が生じ外観良好なシートが得られなかった場合をBと評価した。
【0094】
[ガラス接着性]
後述する方法にて得られた樹脂組成物の溶融混練物を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmのシートを得た。得られたシートを厚さ2.7mmのフロートガラス2枚に挟み、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス株式会社製1522N)を使用し100℃で真空ラミネーター内を1分減圧し、減圧度、温度を保持したまま30kPaで5分プレスして、仮接着体を得た。得られた仮接着体をオートクレーブに投入し140℃、1.2MPaで30分処理して、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスを25mm×25mmの大きさに切断して試験サンプルを得た。得られた試験サンプルをWO1999/058334号公報に記載の圧縮せん断強度試験(Compressionshearstrengthtest)により評価した。合わせガラスが剥離した際の最大せん断応力を、ガラス接着性の指標とした。
【0095】
[透明性]
上述の方法にて得られた合わせガラスを140℃まで加熱したのち、0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した。徐冷操作後の合わせガラスのヘイズを測定した。
【0096】
<実施例1>
(変性ビニルアセタール樹脂の合成)
特開2016-28139に記載の方法に準じて合成した、エチレン単位44モル%、ケン化度99%、MFR5.5g/10minのエチレンビニルアルコール共重合体のチップ100重量部を315重量部の1-プロパノール中に分散させ、溶液の温度を撹拌下に60℃まで昇温した後、1M塩酸を40重量部添加し、次いでn-ブチルアルデヒド16.7重量部を添加して分散させた後、60℃を保持しアセタール化反応を行った。反応が進行するにつれチップは溶解し均一な溶液となった。反応開始から36時間保持した時点で炭酸水素ナトリウム6.4重量部を添加して反応停止させた。反応液に1-プロパノールを500重量部添加して均一にした後、水2000重量部に滴下し樹脂を析出させた。その後濾過、水洗の操作を3回繰り返し、60℃にて真空乾燥を8時間実施することで変性ビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ビニルアセタール樹脂のエチレン単位は47モル%、アセタール化度は20モル%であった。
【0097】
(変性ビニルアセタール樹脂組成物の製造)
上記で得た変性ビニルアセタール樹脂をラボプラストミル(装置名「4M150」、株式会社東洋精機製作所製)を用いてチャンバー温度200℃、回転数100rpmにて3分間溶融混練し、チャンバー内容物を取り出し、冷却して溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
<実施例2~6>
用いたエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位、MFR、n-ブチルアルデヒドの添加量、反応時間を表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で各変性ビニルアセタール樹脂を得、実施例1と同様の方法で溶融混練し、溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
<実施例7>
実施例2と同様の方法で各変性ビニルアセタール樹脂を得、変性ビニルアセタール樹脂100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートを8重量部加えたこと以外は実施例1と同様の方法で溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
【0101】
<比較例1~4>
用いたエチレンビニルアルコール共重合体のエチレン単位、MFR、n-ブチルアルデヒドの添加量、反応時間を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で各変性ビニルアセタール樹脂を得、実施例1と同様の方法で溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
<比較例5>
ケン化度99%のビニルアルコール樹脂の7.5%水溶液1700重量部と、ブチルアルデヒド74.6重量部、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.13重量部を仕込み、全体を14℃に冷却した。これに、濃度20質量%の塩酸160.1重量部を添加して、アセタール化反応を開始した。塩酸の添加が終了してから10分後、90分かけて65℃まで昇温し、更に120分反応を行った。その後、室温まで冷却して析出した樹脂をろ過し、イオン交換水(樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回)で洗浄した。その後、0.3質量%水酸化ナトリウム溶液を用いて充分に中和を行い、さらに、樹脂に対して10倍量のイオン交換水で10回洗浄し、脱水したのち、乾燥させ、ビニルブチラール樹脂を得た。
【0103】
上記で得たビニルブチラール樹脂を実施例1と同様の方法で溶融混練し、溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0104】
<比較例6>
比較例5と同様の方法でビニルブチラール樹脂を得、ビニルブチラール樹脂100重量部に対して可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートを30重量部加えたこと以外は比較例7と同様の方法で溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
<比較例7>
特許文献3(特開2011-57737)の実施例1に記載の方法に従って、エチレン含有量15モル%、ケン化度98モル%、平均重合度1700のポリビニルアルコール100gを蒸留水900g中で撹拌したが、ポリビニルアルコールは溶解せず濃度10重量%のポリビニルアルコール水溶液を得ることはできず、アセタール化反応を行うことはできなかった。
【0106】
<比較例8>
特許文献3の実施例1に記載された、エチレン含有量15モル%、ケン化度98モル%、平均重合度1700のポリビニルアルコール及びn-ブチルアルデヒドの添加量を使用し、溶媒として1-プロパノールを使用すること等の反応条件については本願明細書の実施例1に準じて変更した方法により、変性ビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ビニルアセタール樹脂は73モル%のアセタール化度を有し、特許文献3に記載されているアセタール化度64.5モル%とは整合しなかった。他方、得られた変性ビニルアセタール樹脂は62モル%のアセタール単位を有し、特許文献3に記載されているアセタール化度64.5モル%に近似していた。
【0107】
このことから、特許文献3におけるアセタール化度は、上記アセタール単位、即ち、全単量体単位に対する、アセタール化されたビニルアルコール単位の割合を表したものであり、特許文献3は、本発明におけるアセタール化度とは定義が異なるアセタール化度を使用していると考えられる。
【0108】
次いで、特許文献3の実施例1と同様の方法で溶融混練物を得た。得られた溶融混練物を用いて各種物性評価を行った。結果を表2に示す。
【0109】