IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】半導体水溶性組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/32 20060101AFI20231228BHJP
   C11D 1/65 20060101ALI20231228BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20231228BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20231228BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G03F7/32 501
C11D1/65
C11D3/48
C11D3/20
H01L21/304 647A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022036518
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2021520600の分割
【原出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2022082579
(43)【公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018199941
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】山本 和磨
(72)【発明者】
【氏名】石井 牧
(72)【発明者】
【氏名】長原 達郎
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/220479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/32
C11D 1/65
C11D 3/48
C11D 3/20
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下から選択される1価のアニオン部と、
【化1】
式(Ib)で表される1価のカチオン部と
NH 4-p (Ib)
(式中、
は、それぞれ独立に、C1~3直鎖アルキルであり、前記C1~3直鎖アルキルの1以上の水素がヒドロキシで置換されていてもよく、
pは、0、1、2、3、または4である)
を有する、1または複数の界面活性剤、
ヒドロキシを1~3有し、フッ素置換されていてもよい、C3~30のアルコール化合物、および

を含んでなるレジストパターン洗浄組成物。
【請求項2】
前記アルコール化合物が、式(III):
【化2】
(式中、
31、R32、R33、およびR34は、それぞれ独立に、水素、フッ素、またはC1~5のアルキルであり、
31およびL32は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンであり、これらの基はフッ素、C1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよく、
hは、0、1、または2である)
で表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルコール化合物が、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノール、およびそれらの組み合わせである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物の総質量に対して、前記界面活性剤の含有率が、0.005~2.0質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の総質量に対して、前記アルコール化合物の含有率が、0.005~2.0質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の総質量に対して、前記水の含有率が、90~99.995質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、前記界面活性剤以外の界面活性剤、酸、塩基、有機溶媒、またはこれらの混合物をさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
抗菌剤、防腐剤、殺菌剤、抗真菌剤またはこれらの混合物をさらに含んでなり、前記組成物の総質量に対して、前記抗菌剤、防腐剤、殺菌剤、抗真菌剤またはこれらの混合物の含有率が0.0001~1質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のレジストパターン洗浄組成物を使用するレジストパターンの製造方法。
【請求項10】
(1)1以上の中間層を介し又は中間層を介さずに、感光性樹脂組成物を基板に積層し、感光性樹脂層を形成し、
(2)前記感光性樹脂層を放射線に露光し、
(3)露光された感光性樹脂層を現像し、
(4)請求項1~8のいずれか一項に記載のレジストパターン洗浄組成物で、現像された層を洗浄する
ことを含んでなるレジストパターンの製造方法。
【請求項11】
前記感光性樹脂組成物が化学増幅型感光性樹脂組成物である、請求項10に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項12】
1つの回路単位におけるレジストパターンの最小スペースサイズが10~30nmである、請求項9~11のいずれか一項に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載のレジストパターンの製造方法を含んでなる、半導体の製造方法。
【請求項14】
請求項9~11のいずれか一項に記載の方法で製造したレジストパターンをマスクとしてエッチングし、基板を加工することを含んでなる、半導体の製造方法。
【請求項15】
加工された基板に配線を形成することを含んでなる、請求項13または14に記載の半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一価の特定のアニオン部と一価のカチオン部とを有する界面活性剤、および水を含んでなる半導体水溶性組成物に関するものである。また、本発明は、その半導体水溶性組成物を用いたレジストパターンや半導体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化のニーズが高まっており、パターンの微細化が求められている。このようなニーズに対応するために、短波長の、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、極端紫外線(EUV;13nm)、X線、電子線等を用いるリソグラフィープロセスが実用化されつつある。このようなレジストパターンの微細化に対応するべく、微細加工の際にレジストとして用いられる感光性樹脂組成物にも高解像性のものが要求されている。しかしながら上記のように微細化が進むと、レジストのパターン倒れが起こる傾向にある。
【0003】
レジストパターン倒れは、現像後に純水でパターンを洗浄する際に、純水の表面張力によってパターン間に負圧が生じることによっても起こると考えられている。このような観点から、レジストパターン倒れを改良するために、従来の純水に代えて特定の成分を含むリンス液によって洗浄することが提案されている。
【0004】
半導体は、実際の製品では、単純に線が等間隔で併走するような回路とは異なり、複雑な回路を有している。このような複雑な回路の製造する際、レジストパターンの壁と壁の間隔が最も狭い箇所で、ブリッジ欠陥が生じやすい傾向にある。このようなブリッジ欠陥を防止することも不良品の発生頻度を下げるために、重要である。
例えば特許文献1ではパーフルオロ界面活性剤をリソグラフィー用途に用いることで欠陥を減少させることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/095885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明者らはいまだ改良が求められる1または複数の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる;微細なレジストパーンにおいて欠陥を減少させる(例えばブリッジ発生を抑制);微細なレジストパターンにおいてレジストパターン倒れを防ぐ;半導体水溶性組成物に占める界面活性剤の量を減少させる;レジストパターンの形状が半導体水溶性組成物によって崩れることを防ぐ(例えば溶解されることによる);レジストパターンの形状のばらつきを抑える;半導体水溶性組成物を除去した後、残渣を少なくする;半導体水溶性組成物の表面張力を下げる;保存安定性(例えば長期保存)に優れた半導体水溶性組成物を提供する。
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、半導体水溶性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により半導体水溶性組成物は、
式(I):
Chain1-X-N-X-Chain2 (I)
(式中、
は、-C(=O)-または-S(=O)-であり、
は、-C(=O)-または-S(=O)-であり、
Chain1は、直鎖または分岐の、C1-20アルキルであり、前記C1-20アルキルに存在する1以上のHがFに置換されており、Chain1に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されていてもよく、
Chain2は、直鎖または分岐の、C1-20アルキルであり、前記C1-20アルキルに存在する1以上のHがFに置換されており、Chain1に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されていてもよく、
ただし、Chain1とChain2とが結合されて、環構造が形成されていてもよい)で表される1価のアニオン部と、水素イオンを除く1価のカチオン部とを有する、1または複数の界面活性剤、および

を含んでなる。
【0008】
また、本発明によるレジストパターンの製造方法は、本発明による半導体水溶性組成物を使用するものである。
【0009】
また、本発明による半導体の製造方法は、本発明によるレジストパターンの製造方法を含んでなる。
【発明の効果】
【0010】
微細なレジストパーンにおいて欠陥を減少させることが可能である。微細なレジストパターンにおいてレジストパターン倒れを防ぐことが可能である。半導体水溶性組成物に占める界面活性剤の量を減少させることが可能である。レジストパターンの形状が半導体水溶性組成物によって崩れることを防ぐことが可能である。レジストパターンの形状のばらつきを抑えることが可能である。半導体水溶性組成物を除去した後、残渣を少なくすることが可能である。半導体水溶性組成物の表面張力を下げることが可能である。半導体水溶性組成物の保存安定性を優れたものにすることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の概略および下記の詳細は本願発明を説明するためのものであり、請求された発明を制限するためのものではない。
【0012】
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。本明細書において、特に言及されない限り、ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
本明細書において、「~」または「―」を用いて数値範囲を示した場合、特に限定されて言及されない限り、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
本明細書において、「Cx~y」、「C~C」および「C」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1~6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
本明細書において、ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。特に限定されて言及されない限り、これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
【0013】
<半導体水溶性組成物>
本発明による半導体水溶性組成物(以下、組成物ということがある)は、(1)特定の界面活性剤および(2)水を含んでなるものである。
ここで、本発明における半導体水溶性組成物とは、半導体製造工程において使用される水溶性組成物を意味し、より好ましくはリソグラフィー工程で使用される。また、本発明において、「界面活性剤」とは、界面活性作用を有する化合物そのものをいう。界面活性作用を有する化合物が溶媒に溶解または分散されて、組成物に含有される場合もあるが、このような溶媒は「水またはその他の溶媒」として本半導体水溶性組成物に含有される。以降、詳述する。
【0014】
本発明による半導体水溶性組成物は、半導体製造工程で用いられる。好ましくは、半導体製造工程における洗浄工程で用いられる。すなわち、本発明による半導体水溶性組成物は半導体水溶性洗浄組成物であることが好ましい。具体的には、レジスト膜を露光・現像(リソグラフィー手法)して製造するレジストパターンの洗浄に用いられることが、本発明の一態様である。すなわち、本発明による半導体水溶性組成物はレジストパターン洗浄組成物であることがより好ましい。本発明の半導体水溶性組成物は、半導体製造工程で除去され、最終的な半導体に残らないものであっても良い。
ここで、レジストパターンは、レジスト膜を露光・現像したものだけではなく、他の層や膜をさらに被せることでレジストパターンを太らせたもの(例えば、スペース幅が更に微細化したもの)を含む。他の層や膜をさらに被せることで壁を太らせる技術としては公知のものを使用可能であり、例えば特許第5069494号では樹脂組成物によってレジストパターンを更に微細化している。
【0015】
(1)界面活性剤
本発明に用いられる界面活性剤は、アニオン部とカチオン部との組み合わせから構成される化合物であって
式(I):
Chain1-X-N-X-Chain2 (I)
(式中、
は、-C(=O)-または-S(=O)-であり、
は、-C(=O)-または-S(=O)-であり、
Chain1は、直鎖または分岐の、C1-20アルキルであり、前記C1-20アルキルに存在する1以上のHがFに置換されており、Chain1に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されていてもよく、
Chain2は、直鎖または分岐の、C1-20アルキルであり、前記C1-20アルキルに存在する1以上のHがFに置換されており、Chain2に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されていてもよく、
ただし、Chain1とChain2とが結合されて、環構造が形成されていてもよい)で表される1価のアニオン部と、水素イオンを除く1価のカチオン部とを有するものである。
ここで、本発明において、Chain1またはChain2のアルキル末端のメチルは-O-で置換されない。つまりChain1またはChain2は末端にヒドロキシを有さない。
【0016】
およびXは、少なくとも一方が-S(=O)-であることが好ましく、どちらも-S(=O)-であることがより好ましい。Xは-C(=O)-であり、Xは-S(=O)-であることも、好適な一態様である。一態様として、Chain1の有するアルキルの炭素数がChain2の有するアルキルの炭素数よりも、多いまたは同一であることが好ましく、多いことがより好ましい。
Chain1は、好適には直鎖または分岐のC1-15アルキル、より好適にはC1-10アルキル、さらに好適にはC2-10アルキルである。好適には、Chain1のC1-20アルキルに存在するHは全てFに置換される。Chain1に存在するメチレンの中で、-O-で置換されるメチレンの数は、好適には0~5つであり、より好適には0~3つであり、さらに好適には0~2つである。Chain1に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されない(置換されるメチレンの数が0)ことも、好適な一態様である。
Chain2は、好適には直鎖または分岐のC1-8アルキル、より好適にはC1-6アルキル、さらに好適にはC1-4アルキルである。好適には、Chain2は直鎖のC1-8アルキルである。好適には、Chain2のC1-20アルキルに存在するHは全てFに置換される。Chain2に存在するメチレンの中で、-O-で置換されるメチレンの数は、好適には0~5つであり、より好適には0~3つであり、さらに好適には0~2つである。Chain2に存在する1以上のメチレンは-O-で置換されない(置換されるメチレンの数が0)ことも、好適な一態様である。
【0017】
Chain1は、式(I)に定義されるもののうち、式(Ia)-1:
【化1】
(式中、
は、Chain2に結合する単結合を示し、
a1は0、1、2、3、4、または5であり、b1は1以上の整数であり、c1は0以上の整数であり、d1は0または1であり、かつb1+c1+d1=2(a1)+1を満たすものであり、
は、それぞれ独立に、-F、-CF、-CFH、-CFH、または-CHであり、e1≧2の場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく
e1は、0、1、2、または3であり、
f1は、0、1、2、または3である)
で表されるものであることが好ましい。
Chain2は、式(I)に定義されるもののうち、式(Ia)-2:
【化2】
(式中、
は、Chain1に結合する単結合を示し、
a2は0~5の整数であり、b2は1以上の整数であり、c2は0以上の整数であり、d2は0または1であり、かつb2+c2+d2=2(a2)+1を満たすものであり、
は、それぞれ独立に、-F、-CF、-CFH、-CFH、または-CHであり、e2≧2の場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよく
e2は、0、1、2、または3であり、
f2は、0、1、2、または3である)
で表されるものであることが好ましい。
なお、Chain1が式(Ia)-1で表され、かつd1が1のときは、Chain2は式(Ia)-2で表され、d2も1である。逆も同様である。この際、Chain1のLとChain2のLがひとつの単結合を構成し、Chain1とChain2とが結合されて、-X-N-X-含む環構造を形成する。d1=d2=1のとき、LはChain1の末端に、LはChain2の末端に位置することが好ましい。
例えば、下記1価のアニオン部は式(I)で表され、Chain1は式(Ia)-1、Chain2は式(Ia)-2で表すことができる。a1=2、b1=4、c1=0、d1=1、f1=0であり、a2=1、b2=2、c2=0、d2=1、f2=0である。Chain1のLとChain2のLがひとつの単結合を構成し、Chain1とChain2を連結して環構造を形成する。
【化3】
d1=d2=0のとき、Chain1とChain2が結合して環構造を構成しない。
【0018】
式(Ia)-1における態様を以下に説明する。a1は、好ましくは1、2、3、4または5であり、より好ましくは2、3または4であり、さらに好ましくは3または4である。{b1/(b1+c1)}は、好ましくは0.5~1.0であり、より好ましくは0.80~1.0であり、さらに好ましくは1.0である。d1は0であることが好ましい。また、1価のアニオン部の嵩高さを小さくするために、d1=1であることも一態様である。
e1は、好ましくは0、1または2であり、より好ましくは1または2である。e1≧2の場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。f1は、好ましくは0、1または2であり、より好ましくは1または2である。f1=0も好ましい一態様である。f1≧2の場合、-O-(CFRe1-はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくはRは、それぞれ独立に-Fまたは-CFである。
例えば下記1価のアニオン部の-C(=O)-から左の構造は、Chain1で表すことができ、さらに式(Ia)-1で表すことができる。その際、a1=3、b1=7、c1=0、d1=0、f1=2である。[ ]で囲まれた-O-(CFRe1-において、e1=2であり、-(CFRe1-は左からそれぞれ―CF(-CF)-であり、-CF-である。つまり、左からRはそれぞれ―CF、―Fに該当する。また、( )で囲まれた-O-(CFRe1-において、e1=1であり、-(CFRe1-は―CF(-CF)-である。つまり、Rは―CFに該当する。
【化4】
【0019】
式(Ia)-2における態様を以下に説明する。a2は、好ましくは1、2、3、4または5であり、より好ましくは1、3または4であり、さらに好ましくは3または4である。{b2/(b2+c2)}は、好ましくは0.5~1.0であり、より好ましくは0.80~1.0であり、さらに好ましくは1.0である。d2は0であることが好ましい。また、1価のアニオン部の嵩高さを小さくするために、d2=1であることも一態様である。
e2は、好ましくは0、1または2であり、より好ましくは1または2である。e2≧2の場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。f2は、好ましくは0、1または2であり、より好ましくは1または2である。f2=0はさらに好ましい一態様である。f2≧2の場合、-O-(CFRe2-はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくはRは、それぞれ独立に-Fまたは-CFである。
【0020】
式(I)で表される1価のアニオン部の具体的な例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【化5】
【0021】
本発明に用いられる1価のカチオン部は、特に限定されないが、金属カチオン、無機アンモニウムカチオン、および有機アンモニウムカチオンの少なくともいずれか1つを含んでなることが好ましい。例えば、複数のカチオンを含んでいてもよい。
より好ましくは、本発明に用いられる1価のカチオン部は、金属カチオン、無機アンモニウムカチオン、または有機アンモニウムカチオンであり、さらに好ましくは、無機アンモニウムイオンおよび有機アンモニウムイオンである。
さらに好ましくは、1価のカチオン部が、式(Ib):
NH 4-p (Ib)
(式中、
は、それぞれ独立に、C1~3直鎖アルキルであり、前記C1~3直鎖アルキルの1以上の水素がヒドロキシで置換されていてもよく、
pは、0、1、2、3、または4である)
で表されるものである。
【0022】
好ましくは、pは0または1である。また、p=4も好ましい一態様である。好ましくは、Rは、それぞれ独立にC1~2直鎖アルキルである。p≦2のときRは、同一でも異なっていてもよく、好ましくは同一である。
前記C1~3直鎖アルキルの1以上の水素がヒドロキシで置換される場合、末端メチルの水素がヒドロキシで置換されていることが好ましい。本発明の一態様として、1~2の末端メチルがヒドロキシで置換されることが好ましい。
本発明の別の態様として、前記C1~3直鎖アルキルの1以下の水素がヒドロキシ置換されていることが好ましく、より好ましくは非置換である。
【0023】
1価のカチオン部の具体例としては、アンモニウム(NH )、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、エチルアンモニウムなどのアンモニウムに由来するカチオンが挙げられる。好ましくは、1価のカチオン部はアンモニウムまたはトリエチルアンモニウムである。
また、ホスホニウム(PH )、トロピリウム(C )なども用いることができる。
【0024】
上記アニオン部とカチオン部の組み合わせは、特に限定されないが、上述の好ましいアニオン部と好ましいカチオン部とを有する界面活性剤であることがより好ましい。これら1価のアニオン部と1価のカチオン部とから構成される化合物を水に溶解させて、本発明による組成物を調製することが好ましい。
【0025】
半導体水溶性組成物の総質量に対する、この界面活性剤の含有量は、0.005~2.0質量%であることが好ましく、0.005~1.0質量%であることがより好ましく、0.005~0.5質量%であることがさらに好ましく、0.01~0.4質量%であることがよりさらに好ましい。これらの含有量は水またはその他の溶媒は含まない。
例えば、界面活性作用を有する化合物を水またはその他の溶媒に溶解または分散して、組成物に添加した場合、これら水またはその他の溶媒の量は、上述の界面活性剤の含有量に含まれない。これらの量は、水またはその他の溶媒の含有量に含まれる。
【0026】
(2)水
水は、本発明による組成物全体に対して、最も多くの質量比を占める物質である。水の占める量は組成物全体と比して90~99.995質量%が好適であり、95~99.995質量%がより好適であり、98~99.99質量%がさらに好適である。水は好適には純水、DW、脱イオン水が挙げられる。
本発明による組成物は水以外の溶媒を含むことも可能である。水以外の溶媒については後述する。
【0027】
本発明による組成物は、前記した(1)界面活性剤および(2)水を必須とするものであるが、必要に応じて更なる化合物を含むことができる。以降、詳述する。なお、組成物全体にしめる(1)および(2)以外の成分(複数の場合、その和)は、全体の質量に対して、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0028】
(3)アルコール化合物
本発明による組成物は、ヒドロキシを1~3有し、フッ素置換されていてもよい、C3~30のアルコール化合物をさらに含んでなることが好ましい。このアルコール化合物を含む組成物を用いることで、倒れない限界サイズ(後に詳述)をさらに小さくすることができる。フッ素置換は、前記アルコール化合物のHをFで置換するが、この置換はヒドロキシ(OH)中のHを置換しない。
【0029】
このアルコール化合物は、式(III):
【化6】
で表される化合物であることが好ましい。
式中、
それぞれ独立にR31、R32、R33、およびR34は、水素、フッ素、またはC1~5のアルキルであり、好ましくは水素、フッ素、メチル、エチル、t-ブチル、またはイソプロピルであり、より好ましくは水素、メチル、またはエチルである。
31およびL32は、それぞれ独立に、C1~20のアルキレン、C1~20のシクロアルキレン、C2~4のアルケニレン、C2~4のアルキニレン、またはC6~20のアリーレンである。これらの基はフッ素、C1~5アルキルまたはヒドロキシで置換されていてもよい。ここで、アルケニレンとは、1以上の二重結合を有する二価の炭化水素を意味し、アルキニレンとは、1以上の三重結合を有する二価の炭化水素基を意味するものとする。好ましくはL31およびL32はそれぞれ独立に、フッ素置換されていてもよい、C1~5のアルキレン、C2~4のアルキニレン、またはフェニレン(Cのアリーレン)である。L31およびL32はそれぞれ独立に、より好ましくはフッ素置換されたC2~4のアルキレン、アセチレン(Cのアルキニレン)またはフェニレンであり、よりさらに好ましくはフッ素置換されたC2~4のアルキレン、アセチレンである。
hは、0、1、または2であり、好ましくは0または1、より好ましくは0である。
式(III)で示される化合物は、より好ましくはジオール化合物である。
【0030】
アルコール化合物の具体例としては、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、1,4-ブチンジオール、2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオール、1,4-ブタンジオール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、シス-1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、1,4-ベンゼンジメタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
上記のアルコール化合物の含有率は、本発明による半導体水溶性組成物の総質量に対して、0.005~2.0質量%であることが好ましく、0.005~1.0質量%であることがより好ましく、0.005~0.5質量%であることがさらに好ましく、0.01~0.2質量%であることがよりさらに好ましい。
【0032】
(4)その他の添加剤
本発明による、半導体水溶性組成物は、抗菌剤、殺菌剤、防腐剤、抗真菌剤、前記界面活性剤以外の界面活性剤、酸、塩基、有機溶媒、またはこれらの混合物をさらに含んでなることもできる。
【0033】
抗菌剤、防腐剤、殺菌剤、抗真菌剤またはこれらの混合物(以下、抗菌剤等とする)は、バクテリアまたは菌類が経時した水溶性組成物中で繁殖するのを防ぐために用いられる。抗菌剤等の例には、フェノキシエタノール、イソチアゾロン等のアルコールが包含される。市販されている抗菌剤等として、日本曹達株式会社のベストサイド(商品名)が挙げられる。本発明による半導体水溶性組成物の好適な一態様として、1種の抗菌剤を含んだ組成物が挙げられる。
抗菌剤等(複数の場合はその和)の含有量は、本発明による組成物の総質量に対して、好ましくは0.0001~1質量%であり、より好ましくは0.0001~0.01質量%である。
【0034】
上記(1)の界面活性剤以外の界面活性剤(以下、他の界面活性剤とする)は、塗布性や溶解性を向上させるために有用である。
他の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物、ポリオキシエチレンオクチルフエノールエーテル及びポリオキシエチレンノニルフエノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル化合物、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロツクコポリマー化合物、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート及びソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物が挙げられる。また、商品名エフトップEF301,EF303、EF352((株)トーケムプロダクツ製)、商品名メガファックF171、F173、R-08、R-30、R-2011(大日本インキ(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、商品名アサヒガードAG710,サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤及びオルガノシロキサンポリマ-KP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
他の界面活性剤の含有量は、本発明による組成物の総質量に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.05~3質量%であることがより好ましく、0.005~0.5質量%であることがさらに好ましく、0.01~0.4質量%であることがよりさらに好ましい。
【0035】
本発明において、式(I)で表される界面活性剤は、1価のアニオン部(酸)と1価のカチオン部(塩基)から構成される塩であるが、それ以外の酸または塩基を、処理液のpHを調整したり、添加成分の溶解性を改良するために用いることができる。用いられる酸または塩基は本発明の効果を損なわない範囲で任意に選択できるが、例えばカルボン酸、アミン類、アンモニウム化合物が挙げられる。これらには、脂肪酸、芳香族カルボン酸、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アンモニウム化合物が包含され、これらは任意の置換基により置換されていても、置換されていなくてもよい。より具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
酸の含有量は、本発明による組成物の総質量に対して、0.005~0.1質量%であることが好ましい。また塩基の量は、本発明による組成物の総質量に対して、0.01~0.3質量%であることが好ましい。
【0036】
有機溶媒は本発明による組成物が含む溶質を溶解させるために有用である。有機溶媒としては公知のものを使用できる。
例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、またはこれらの混合液が好適である。これらは溶液の保存安定性の点で好ましい。
有機溶媒(複数の場合はその和)の含有量は、本発明による半導体水溶性組成物の総質量に対して、0~9.995質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましく、0~1質量%であることがよりさらに好ましい。有機溶媒は含有しない(0.0質量%)ことも、本発明の好ましい一態様である。
【0037】
本発明に用いられる(1)の界面活性剤の合成方法は特に限定されないが、具体例は後述の合成例に記載される。合成例に公知の合成方法を組み合わせることも可能である。
【0038】
<レジストパターンの製造方法>
本発明によるレジストパターンの製造方法は、本発明による半導体水溶性組成物を使用するものである。同方法におけるリソグラフィー工程は、ポジ型またはネガ型の感光性樹脂組成物(レジスト組成物)を用いてレジストパターンを製造する方法の何れのものであってもよい。本発明の半導体水溶性組成物が適用される代表的なレジストパターン製造方法は、
(1)1以上の中間層を介し又は中間層を介さずに、感光性樹脂組成物を基板に積層し、感光性樹脂層を形成し、
(2)前記感光性樹脂層を放射線に露光し、
(3)露光された感光性樹脂層を現像し、
(4)本発明による半導体水溶性組成物で、現像された層を洗浄する
ことを含んでなるものである。
【0039】
以下、詳細について説明する。
まず、必要に応じて前処理された、シリコン基板、ガラス基板等の基板の上方に、感光性樹脂組成物を積層して、感光性樹脂層を形成させる。積層は公知の手法を用いることができるが、スピンコーティング等の塗布法が好適である。基板の上に感光性樹脂組成物を直接積層することもでき、また1又は複数の中間層(例えばBARC層)を介して積層することもできる。また、感光性樹脂層の上方(基板と逆側)に反射防止膜(例えばTARC層)を積層してもよい。感光性樹脂層以外の層については、後述する。感光性樹脂膜の上方または下方に反射防止膜を形成しておくことにより、断面形状および露光マージンを改善することができる。
【0040】
本発明のレジストパターン製造方法で用いられるポジ型またはネガ型の感光性樹脂組成物の代表的なものを例示すると、例えば、キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とを含んでなるもの、化学増幅型感光性樹脂組成物などが挙げられる。高解像性の微細レジストパターンを形成する観点からは、化学増幅型感光性樹脂組成物が好ましく、例えば化学増幅型PHS-アクリレートハイブリッド系EUVレジスト組成物が挙げられる。
【0041】
上記キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性樹脂とを含んでなるポジ型感光性樹脂組成物において用いられるキノンジアジド系感光剤の例としては、1,2-ベンゾキノンジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸、これらのスルホン酸のエステル或いはアミドなどが、またアルカリ可溶性樹脂の例としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、アクリル酸或はメタクリル酸の共重合体などが挙げられる。ノボラック樹脂としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、キシレノール等のフェノール類の1種又は2種以上と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒド類の1種以上から製造されるものが好ましいものとして挙げられる。
【0042】
また、化学増幅型の感光性樹脂組成物としては、放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)と、光酸発生剤から発生された酸の作用により極性が増大し、現像液に対する溶解性が露光部と未露光部で変わる樹脂を含むポジ型の化学増幅型感光性樹脂組成物、あるいはアルカリ可溶性の樹脂と光酸発生剤と架橋剤からなり、酸の作用により架橋剤による樹脂の架橋が起こり、露光部と未露光部において現像液に対する溶解性が変わるネガ型の化学増幅型感光性樹脂組成物などが挙げられる。
【0043】
前記酸の作用により極性が増大し、露光部と未露光部において現像液に対する溶解性が変化する樹脂としては、樹脂の主鎖又は側鎖、あるいは、主鎖及び側鎖の両方に、酸の作用により分解し、アルカリ可溶性基を生じる基を有する樹脂が挙げられる。その代表的なものを例示すると、ヒドロキシスチレン系のポリマー(PHS)に保護基としてアセタ-ル基やケタ-ル基を導入したポリマー(例えば、特開平2-141636号公報、特開平2-19847号公報、特開平4-219757号公報、特開平5-281745号公報)、t-ブトキシカルボニルオキシ基やp-テトラヒドロピラニルオキシ基を酸分解基として導入した同様のポリマー(特開平2-209977号公報、特開平3-206458号公報、特開平2-19847号公報)、アクリル酸やメタクリル酸というカルボン酸部位を有する単量体や水酸基やシアノ基を分子内に有する単量体を脂環式炭化水素基を有する単量体と共重合させた樹脂、脂環式基を含む構造で保護されたアルカリ不溶性基と、そのアルカリ不溶性基が酸により脱離して、アルカリ可溶性とならしめる構造単位を含む酸感応性樹脂(特開平9-73173号公報、特開平9-90637号、特開平10-161313号公報)などが挙げられる。
【0044】
また、光酸発生剤としては放射線の照射により酸を発生する化合物であればどのようなものでもよく、例えば、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩等のオニウム塩、有機ハロゲン化合物、有機金属/有機ハロゲン化物、o-ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、イミノスルフォネ-ト等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、ジスルホン化合物、ジアゾケトスルホン、ジアゾジスルホン化合物等を挙げることができる。また、これらの光により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖または側鎖に導入した化合物も用いることができる。
【0045】
さらに、前記化学増幅型の感光性樹脂組成物には、必要に応じて更に酸分解性溶解阻止化合物、染料、可塑剤、界面活性剤、光増感剤、有機塩基性化合物、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物等が含有されていてもよい。
【0046】
上記感光性樹脂組成物は、例えば基板上にスピナー、コーター等の適当な塗布装置、塗布方法により塗布され、ホットプレート上でソフトベークされて感光性樹脂組成物中の溶剤が除去され、感光性樹脂層が形成される。ソフトベーク温度は、用いる溶剤或いはレジスト組成物により異なるが、一般に70~150℃、好ましくは90~150℃の温度で、ホットプレートによる場合には10~180秒間、好ましくは30~90秒間、クリーンオーブンによる場合には1~30分間実施することができる。
【0047】
本発明のレジストパターン製造方法において、感光性樹脂層以外の膜や層の存在も許容される。基板と感光性樹脂層が直接に接さずに、中間層が介在しても良い。中間層とは基板と感光性樹脂層の間に形成される層であり、下層膜とも言われる。下層膜として、基板改質膜、平坦化膜、下層反射防止膜(BARC層)、無機ハードマスク中間層(ケイ素酸化膜、ケイ素窒化膜およびケイ素酸化窒素膜)や密着膜が挙げられる。無機ハードマスク中間層の形成について、日本特許5336306号を参照できる。中間層は1層でも複数層で構成されていても良い。また、感光性樹脂層の上に上層反射防止膜(TARC層)が形成されても良い。
【0048】
本発明のレジストパターン製造工程において層構成は、プロセス条件に合わせて公知の手法を使用可能であるが、例えば、以下のような積層構成が挙げられる。
基板/下層膜/フォトレジスト膜
基板/平坦化膜/BARC層/フォトレジスト膜
基板/平坦化膜/BARC層/フォトレジスト膜/TARC層
基板/平坦化膜/無機ハードマスク中間層/フォトレジスト膜/TARC層
基板/平坦化膜/無機ハードマスク中間層/BARC層/フォトレジスト膜/TARC層
基板/平坦化膜/密着膜/BARC層/フォトレジスト膜/TARC層
基板/基板改質層/平坦化膜/BARC層/フォトレジスト膜/TARC層
基板/基板改質層/平坦化膜/密着膜/BARC層/フォトレジスト膜/TARC層
これらの層は、塗布後に加熱および/または露光することで硬化したり、CVD法等の公知の手法を用いて成膜することができる。これらの層は公知の手法(エッチング等)で除去可能であり、それぞれ上方の層をマスクとしてパターン化することができる。
【0049】
所定のマスクを通して感光樹脂層の露光が行なわれる。他層も含む場合(TARC層等)は共に露光されてよい。露光に用いられる放射線(光)の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極端紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、極端紫外線がより好ましい。これらの波長は±5%の範囲を許容し、好ましくは±1%の範囲を許容する。露光後、必要に応じて露光後加熱(PEB;post exposure bake)を行なうこともできる。露光後加熱の温度は70~150℃、好ましくは80~120℃、加熱時間は0.3~5分間、好ましくは0.5~2分間、の中から適宜、選択される。
【0050】
次いで、現像液によって現像が行なわれる。本発明のレジストパターン製造方法の現像には、好ましくは2.38質量%(±1%が許容される)のTMAH水溶液が使用される。さらに、これらの現像液に界面活性剤等を加えることもできる。現像液の温度は一般に5~50℃、好ましくは25~40℃、現像時間は一般に10~300秒、好ましくは20~60秒から適宜選択される。現像方法はパドル現像等の公知の手法を使用できる。
先述の通り、本発明のレジストパターンは、レジスト膜を露光・現像したものだけではなく、他の層や膜をさらに被せることで壁を太らせたものを含む。
【0051】
上述の工程までで作成されたレジストパターン(現像された感光性樹脂層)は未洗浄の状態である。このレジストパターンを本発明の半導体水溶性組成物で洗浄することができる。半導体水溶性組成物を同レジストパターンに接触させる時間、すなわち処理時間は1秒以上が好ましい。また、処理温度も任意で良い。リンス液をレジストに接触させる方法も任意であり、例えばレジスト基板をリンス液に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面にリンス液を滴下することにより行うことができる。
【0052】
本発明のレジストパターン製造方法において、同半導体水溶性組成物による洗浄処理前および/または同処理後に、他の洗浄液で現像後のレジストパターンを洗浄することができる。他の洗浄液は、好適には水であり、より好適には純水(DW、脱イオン水、等)である。同処理前の洗浄は、レジストパターンに付着した現像液を洗浄するために有用である。同処理後の洗浄は同半導体水溶性組成物を洗浄するため有用である。現像後のレジストパターンに純水を注ぎ込むことで現像液と置換しつつパターンを洗浄し、さらにパターンが純水で浸された状態を維持したまま、同半導体水溶性組成物を注ぎ込むことで純水と置換しつつパターンを洗浄する方法が、本発明の製造方法の好適な一態様である。
同半導体水溶性組成物による洗浄は、公知の方法によって行われてよい。
例えばレジスト基板を同半導体水溶性組成物に浸漬したり、回転しているレジスト基板表面に同半導体水溶性組成物を滴下することにより行うことができる。これらの方法は適宜組み合わせて行われてもよい。
【0053】
本発明の方法で製造したレジストパターンは、ブリッジ等の欠陥の発生が抑制され、より良く洗浄できていた。本明細書においてブリッジとは、レジストパターンの溝に目的外の構造が存在するものであり、欠陥の一種である。レジストパターン(壁)同士がつながったり、流されるはずの異物が溝に挟まって残ることが原因として挙げられる。目的の溝がブリッジで埋まると、エッチング等の後の工程で目的の回路を設計できなくなる。本発明による組成物を用いた場合にブリッジ等の欠陥の発生が抑制されるメカニズムは解明されておらず、そのような効果が得られることは予想外のことであった。
スペース幅が狭くなると、レジストパターン間のトレンチ(溝)にブリッジが生じやすくなるため、集積度の高い半導体を製造するために問題である。
【0054】
ブリッジ等の欠陥が生じやすい条件の1つとしてレジストパターンの壁と壁の間隔が最も狭い箇所がある。レジストパターンの壁と壁が平行しているところで、厳しい条件となる。本明細書において、1つの回路単位上で同間隔が最も小さいところの間隔の距離を最小スペースサイズとする。1つの回路単位は、後の工程で1つの半導体になるものが好ましい。また、1つの半導体は、水平方向には1つの回路単位を含み、垂直方向には複数の回路単位を含む態様も好ましい。もちろん試験サンプルと異なり、壁と壁の間隔が狭い箇所の発生頻度が低ければ、欠陥が生じる頻度が下がるので、不良品の発生頻度は減る。
本発明において、1つの回路単位におけるレジストパターンの最小スペースサイズが10~30nmであることが好ましく、15~25nmであることがより好ましく、18~22nmであることがさらに好ましい。
【0055】
<半導体の製造方法>
本発明の製造方法で製造したレジストパターンをマスクにして、中間層および又は基板をパターン化することができる。パターン形成には、エッチング(ドライエッチング、ウェットエッチング)等の公知の手法を用いることができる。例えば、レジストパターンをエッチングマスクにして中間層をエッチングし、得られた中間層パターンをエッチングマスクにして基板をエッチングして基板にパターンを形成することができる。また、フォトレジストパターンをエッチングマスクにして、フォトレジスト層から下方の層(例えば中間層)をエッチングしつつ、そのまま基板をエッチングすることもできる。形成されたパターンを利用して基板に配線を形成することができる。
これらの層は好適にはO、CF、CHF、ClまたはBClでドライエッチングすることで除去でき、好適にはOまたはCFが使用できる。
【0056】
その後、必要に応じて、基板にさらに加工がされ、デバイスが形成される。これらのさらなる加工は、公知の方法を適用することができる。デバイス形成後、必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものを半導体という。
【0057】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0058】
<比較例組成物に用いる界面活性剤の合成例>
48質量%の水酸化カリウム水溶液200gとペルフルオロエタンスルホンアミド150gとをフラスコ中で混合させる。この溶液を蒸留し、水を除去し、濃縮固体を得る。この濃縮固体50gと以下の化合物a65gとをアセトニトリル200gに溶解させ、50℃で20時間撹拌する。得られた溶液をろ過および蒸留し、アセトニトリルを除去し、固体を得る。得られた固体を水200gに溶解させ、その溶液に、36質量%の塩酸水溶液100gおよびNovec(商標名)7300(3M製)を加える。Novecの液相を採取し、蒸留して、界面活性剤S-201を得る。収率は20%である。
【0059】
<界面活性剤の合成例1>
界面活性剤S-201に、トリエチルアミン20gを加え、30℃で14時間撹拌する。その溶液を蒸留することにより、界面活性剤S-101を得る。収率は15%である。
【化7】
【0060】
<界面活性剤の合成例2>
合成例1において、トリエチルアミンに代えてアンモニアを用いた以外は同様にして、界面活性剤S-102を合成する。
<界面活性剤の合成例3>
フラスコ中で、テトラヒドロフラン(以下、THF)45gに5gの界面活性剤S-102を溶解させる。これに、THF90gに塩化テトラエチルアンモニウム10gを溶解させた溶液を25℃で2時間滴下する。滴下が完了した後、その溶液を25℃で16時間撹拌する。そして、その溶液をろ過し、蒸留し、界面活性剤S-103を得る。収率は65%である。
【化8】
【0061】
<半導体水溶性組成物の調製例>
濃度が1000ppmになるように、脱イオン水に界面活性剤S-101を添加し、これを撹拌して、完全に溶解させ、実施例組成物101を調製する。
表1に記載の通りのアニオン部とカチオン部を有する界面活性剤を用いて、表1に記載の濃度となるように、上記と同様にして、実施例組成物102~112を調製する。さらに、表1に記載の界面活性剤を用いて、上記と同様にして、比較例組成物201~211を調製する。ここで、表1に記載の界面活性剤は、カチオン部を水素(C1)からC2~7のものに変更することで得る。
【表1】
表中、A1~A11およびC1~C7は、以下の構造を示す。表2および3についても同じである。
【化9】
【化10】
【0062】
<評価基板の作製>
シリコン基板(SUMCO製、12インチ)の表面を1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン溶液を用いて、90℃で30秒間処理する。その上に化学増幅型PHS-アクリレートハイブリッド系EUVレジスト組成物をスピン塗布し、110℃で60秒ソフトベークして、膜厚45nmのレジスト膜を同基板上に形成する。これをEUV露光装置NXE:3300(ASML社製)にて20nm(ライン:スペース=1:1)のサイズのマスクを通して露光する。露光量は、複数設定し、それぞれの条件の基板を得る。なお、露光量が増えると、後に現像することで形成されるレジストパターンのスペース幅が大きくなる。
この基板を100℃で60秒間のPEBを行う。その後、同レジスト膜を2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、30秒間パドル現像する。パドル現像液が基板上にパドルされている状態で脱イオン水を基板上に流し始め、回転させながらパドル現像液を脱イオン水に置換し、脱イオン水でパドルさせた状態で停止する。これに、実施例組成物101~112および比較例組成物201~211の各組成物を流し入れ、基板を高速回転させスピンドライする。
【0063】
<パターン倒れ防止性能の評価>
上記の評価基板上にて、20nmのマスクに対しラインサイズ19nmで形成されているレジストパターンを、SEM装置CG5000(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、パターン倒れの有無を観察する。
実施例組成物および比較例組成物のどの組成物を用いた場合にも、パターン倒れが確認されない。
【0064】
<ブリッジ防止性能の評価>
上記の評価基板上にて、20nmのマスクに対しスペースサイズ15nmの形成されているレジストパターンを、CG5000を用いて観察し、パターンブリッジの有無を観察する。
実施例組成物を用いた場合は、それぞれパターンブリッジが確認されない。一方、比較例組成物を用いた場合は、それぞれパターンブリッジが確認される。
【0065】
<倒れない限界サイズ>
使用される組成物は以下の表2に記載する。調整は上述同様に行う。
評価基板の調整は、15~24nm(ライン:スペース=1:1)のサイズのマスクを通して露光する以外は、上述同様に行う。調整した組成物を、上記と同様に基板に流し入れ、基板を高速回転させスピンドライする。
【0066】
形成されたレジストパターンについて、CG5000を用いて観測し、露光量に対する各マスクサイズ(15~24nm ライン:スペース=1:1)のパターンサイズを測定する。マスクサイズとパターンサイズの差が±1nm内であって、倒れずにパターンが形成されている場合を「倒れていない」と判断する。パターンが倒れるマスクサイズの直前を「倒れない限界サイズ」とする。例えば、17nm1:1のマスクに対し、17.4nmでパターン倒れが確認される場合、倒れていない直前のサイズ18nmを「倒れない限界サイズ」とする。結果を表2に記載する。
【0067】
<ブリッジの発生しないスペースサイズ、およびLWRの評価>
使用される組成物は以下の表2に記載する。
評価基板の調整は、18nm(ライン:スペース=1:1)のサイズのマスクを通して露光する以外は、上述同様に行う。調整した組成物を、上記と同様に基板に流し入れ、基板を高速回転させスピンドライする。
【0068】
形成されたレジストパターンについて、CG5000を用いて、ブリッジの有無を観測し、露光量に対するパターンサイズを測定する。露光量を変動させ、スペースにブリッジが発生しないスペースサイズを「ブリッジの発生しないスペースサイズ」とする。例えば、実施例組成物113の場合、スペースサイズ13.6nmでパターンブリッジが確認される。一方で14.7nmでブリッジが確認されないため、最小のスペースサイズを14.7nmとする。
【0069】
<LWRの評価>
使用される実施例組成物は以下の表2に記載する。
評価基板の調整は、15~24nm(ライン:スペース=1:1)のサイズのマスクを通して露光する以外は、上述同様に行う。実施例組成物を、上記と同様に基板に流し入れ、基板を高速回転させスピンドライする。
【0070】
マスクサイズ20nm(ライン:スペース=1:1)のパターンサイズが20nm±1nm内で形成されているパターンについてCG5500でLWRを側定する。ITRS推奨プログラムを使用する。
【0071】
得られた結果を表2に示す。
【表2】
【0072】
<アルコール化合物をさらに含む組成物>
脱イオン水に、以下の表3に記載の界面活性剤およびアルコール化合物を、それぞれ表3に記載の濃度になるように添加し、これを撹拌して、完全に溶解させ、実施例組成物201~204を調製する。
これらについて、上記と同様にして、倒れない限界サイズを測定する。得られる結果は、表3の通りである。表2の場合の倒れない限界サイズと比較すると、さらにアルコール化合物を含む組成物の場合に、倒れない限界サイズがさらに小さくなる。
【表3】
表中、D1~D4は、以下の構造を示す。
【化11】