(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-27
(45)【発行日】2024-01-11
(54)【発明の名称】抗TGFベータ抗体およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20231228BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231228BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231228BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20231228BHJP
C07K 16/22 20060101ALI20231228BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231228BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231228BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231228BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20231228BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231228BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231228BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/22
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61P1/04
A61P1/16
A61P13/02
A61P13/12
A61P25/00
A61P37/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003484
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2019539214の分割
【原出願日】2018-01-19
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・シャピロ
(72)【発明者】
【氏名】ケビン・ブローワー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・フィン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・シー・グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ラオ・コドゥリ
(72)【発明者】
【氏名】フェン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア・マリコフ
(72)【発明者】
【氏名】パーミンンダー・マンクゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・アール・ポラード
(72)【発明者】
【氏名】ファーウェイ・チウ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・タイルハーバー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ウィンター
(72)【発明者】
【氏名】マルセラ・ユー
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519093(JP,A)
【文献】国際公開第2016/141245(WO,A1)
【文献】特表2014-514287(JP,A)
【文献】特表2010-528993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289315(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0203579(US,A1)
【文献】CLINICAL IMMUNOLOGY,2001年02月,VOL:98, No:2,PAGE(S):164 - 174
【文献】Molecular Immunology,1993年,Vol.30, No.1,pp.105-108
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/22
C07K 16/28
C12P 21/08
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1における重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号2における軽鎖CDR1~3を含む、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的に結合するモノクローナル抗体をコードする単離された核酸分子であって、前記抗体は、228位(EUナンバリング)にプロリンを有するヒトIgG
4定常領域を含む、前記単離された核酸分子。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号1の1~120残基に相当する重鎖可変ドメイン(V
H)アミノ酸配列および配列番号2の1~108残基に相当する軽鎖可変ドメイン(V
L)アミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
前記抗体は、以下の:
a)CD4
+T細胞の誘導性制御性T細胞(iTreg)への分化を阻害する;
b)CD8
+T細胞増殖を増加させる;
c)ナチュラルキラー(NK)細胞のクラスタリングを増加させる;
d)MIP-2のレベルを増加させる;および
e)KC/GROのレベルを増加させる
特性の1つまたはそれ以上を有する、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項5】
請求項1に記載の抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードするヌクレオチド配列を含む、哺乳動物宿主細胞。
【請求項6】
ヌクレオチド配列の発現を可能にする条件下で請求項5に記載の哺乳動物宿主細胞を培養する工程と、
培養から抗体を単離する工程と
を含む、抗体を産生する方法。
【請求項7】
モノクローナル抗体をコードする単離された核酸分子であって、重鎖と軽鎖のアミノ酸
配列は、それぞれ、配列番号1および2を含む、前記単離された核酸分子。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードするヌクレオチド配列を含む、哺乳動物宿主細胞。
【請求項10】
ヌクレオチド配列の発現を可能にする条件下で請求項9に記載の哺乳動物宿主細胞を培養する工程と、
培養から抗体を単離する工程と
を含む、抗体を産生する方法。
【請求項11】
医薬組成物を産生する方法であって、
配列番号1における重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号2における軽鎖CDR1~3を含む、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、228位(EUナンバリング)にプロリンを有するヒトIgG
4定常領域を含む前記抗体を提供する工程と、
抗体を薬学的に許容される担体と混合する工程と
を含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、両方とも2017年1月20日に出願した米国仮出願第62/448,800号および欧州出願第17305061.8号の優先権を主張するものである。2つの優先権出願の開示は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に出願され、その全体を参照によって本明細書に組み入れる、配列表を含む。2018年1月11日に作成された前記ASCIIコピーは、022548_WO011_SL.txtと名付けられ、サイズは30,458
バイトである。
【背景技術】
【0003】
トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)は、増殖、分化、生存、遊走、および上皮間葉転換を含む多くの重要な細胞の機能を制御するサイトカインである。それは、細胞外マトリックス形成、創傷治癒、胚発生、骨発生、造血、免疫および炎症応答、および悪性形質転換のような種々の生物学的プロセスを調節する。TGF-βの調節解除は、病的状態、例えば先天性欠損、がん、慢性炎症、ならびに自己免疫および線維性疾患をもたらす。
【0004】
TGF-βは、公知の3つのアイソフォーム-TGF-β1、2、および3がある。3つのアイソフォーム全てが、最初に前駆ペプチドとして転写される。切断後、成熟C末端はN末端と結合したままであり(潜在関連ペプチドまたはLAPと呼ばれる)、細胞から分泌される小さい潜在型複合体(SLC)を形成する。SLCがTGF-β受容体II(TGFβRII)に結合できないために、受容体エンゲージメントが妨げられる。N-およびC-末端の解離による活性化は、タンパク質切断、酸性pH、またはインテグリン構造変化(非特許文献1)を含む、いくつかのメカニズムの1つによって生じる。
【0005】
TGF-β1、2および3は、その機能が多面的であり、細胞および組織型にわたって異なるパターンで発現される。それらは、in vitroでの活性が類似しているが、特定の細胞型における個々のノックアウトは、それらが同じ受容体に結合する能力を共有するにもかかわらず、in vivoでの同一ではない役割を示唆する(非特許文献2)。TGF-βがTGFβRIIに結合すると、受容体の構成的なキナーゼ活性は、TGF-βRIをリン酸化および活性化し、SMAD2/3をリン酸化し、SMAD4への結合、核への局在、およびTGF-β応答遺伝子の転写を可能にする。同文献。この古典的シグナル伝達カスケードに加えて、非古典的な経路は、p38 MAPK、PI3K、AKT、JUN、JNK、およびNF-κBを含む他の因子を介してシグナルを伝達する。TGF-βシグナル伝達もまた、WNT、ヘッジホッグ、ノッチ、INF、TNF、およびRASを含む他の経路によって調節される。したがって、TGF-βシグナル伝達の最終結果は、細胞の状態および環境を統合するこれらのシグナル伝達経路の全てのクロストークである。同文献。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Connolly et al., Int J Biol Sci (2012) 8(7):964-78
【文献】Akhurst et al., Nat Rev Drug Discov (2012) 11(10):790-811
【文献】Bedinger et al., mAbs. (2016) 8(2):389-404
【文献】Larkin et al., N Engl J Med (2015) 373:23-34
【文献】Redman et al., BMC Med (2016) 14:20-30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
TGF-βの多様な機能を考慮すると、ヒト患者に安全な汎TGF-β特異的治療抗体の必要性がある(非特許文献3)。しかしながら、TGF-βは種間で高度に保存されている。結果として、マウスのような動物におけるヒトTGF-βに対する抗体の産生は困難な仕事である。
【0008】
現在有効な処置がない患者の医学的必要性もある。例えば、抗PD1抗体ニボルマブ単独治療によって処置される第III相Checkmate-067研究において、進行性メラノーマ患者の50%より多くが治療への完全または部分的な応答を示さなかった(非特許文献4;非特許文献5)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的(すなわち、汎TGF-β特異的)に結合する改善したモノクローナル抗体を提供する。これらの抗体は、製造中にハーフ抗体(すなわち、重鎖1つおよび軽鎖1つを有する二量体複合体)を形成しにくい。それらはまた、半減期の延長のような優れた薬物動態プロファイルを示し、したがって患者に改善した臨床的有用性を与えることができる。本発明者らはまた、本発明の抗体および抗原結合断片によって引き起こされるようなTGF-β阻害が、腫瘍において免疫抑制微小環境を緩和し、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、PD-1リガンド1(PD-L1)および2(PD-L2)を標的化する治療のような免疫治療の効能を増強することを発見した。
【0010】
一態様では、本発明は、配列番号1における重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号2における軽鎖CDR1~3を含み、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体を提供し、ここで該抗体は228位(EUナンバリング)に変異を有するヒトIgG4定常領域を含む。いくつかの実施形態では、変異は、セリンからプロリンへの変異(S228P)である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1の1~120残基に相当する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列および配列番号2の1~108残基に相当する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、抗体は、配列番号1に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号2に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む。本発明はまた、上記抗体のF(ab’)2抗原結合断片を特徴とする。
【0011】
好ましい実施形態では、本発明の抗体または断片は、フレソリムマブと比較すると、半減期の延長、暴露の増加、または両方を示す。例えば、増加は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%またはそれ以上の増加である。本発明の抗体または断片のような薬物の暴露は、時間に対する体内薬物の濃度の関数である。体内の薬物の濃度は、血液、血漿、または血清中の薬物のレベルによって示されることが多い。薬物の半減期およびエクスポージャー(バイオエクスポージャー(bio-exposure))は、以下の実施例7に示したように、周知の方法によって測定される。
【0012】
本発明は、本発明の抗体を含む組成物をさらに提供し、ここで該組成物は、1%より少ないハーフ抗体を含む。ハーフ抗体形成は、例えば、非還元条件下でのSDS-キャピラリー電気泳動または非還元SDS-PAGE分析、続いてデンシトメトリー、またはRP-HPLCを使用することによる、モノクローナル抗体調製物の純度分析によって決定さ
れる(Angal et al., Mol Immunol (1993) 30(1):105-8; Bloom et al., Protein Science (1997) 6:407-415; Schuurman et al., (2001) 38(1):1-8; and Solanos et al., Anal Chem (2006) 78:6583-94)。いくつかの実施形態では、この組成物は、薬学的に許容される賦形剤も含む医薬組成物である。
【0013】
別の態様では、本発明は、治療量の本発明の抗体または断片を患者に投与する工程を含む、それを必要としている患者(ヒト)においてTGF-βシグナル伝達を阻害する方法を提供する。いくつかの実施形態では、患者は、免疫介在性疾患(例えば、強皮症)、線維性状態(例えば、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)のような腎臓の線維性状態、または突発性肺線維症のような肺の線維性状態)または先天性もしくは骨欠損(例えば、骨形成不全症)を有する。いくつかの実施形態では、患者はがんを有する。いくつかの実施形態では、本方法で使用した抗体または断片は、CD4+T細胞の誘導性制御性T細胞(iTreg)への分化を阻害する。抗体または断片は、免疫抑制腫瘍微小環境を緩和し得る。抗体または断片のこの作用は、免疫システムの活性化および免疫治療の効能の増強を助ける。本明細書に記載の処置方法の効能は、例えば、患者において(例えば、患者の腫瘍組織において)以下の1つまたはそれ以上によって示される:(1)MIP2および/またはKC/GROレベルの増加、(2)INF-γ-陽性CD8+T細胞のようなCD8+T細胞の活性化または腫瘍組織への浸潤、および(3)ナチュラルキラー(NK)細胞のクラスタリングにおける増加。
【0014】
本発明は、(1)治療有効量の本発明の抗体または断片、および(2)治療有効量の免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤を患者に投与する工程を含む、患者(ヒト)においてがんを処置する方法をさらに提供する。これら2つの薬剤は、同時に(例えば、単一組成物中または別々の組成物中で)、またはいずれかの順序で順に投与される。2つの薬剤は、例えば、同じ日に投与される。いくつかの実施形態では、治療剤(1)は治療剤(2)の前(例えば1日または数日前)に患者に投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1、PD-L1、またはPD-L2である。さらなる実施形態では、免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤は、抗PD-1抗体である。さらなる実施形態では、抗PD-1抗体は、(1)配列番号5における重鎖CDR1~3および配列番号6における軽鎖CDR1~3、(2)配列番号5の1~117残基に相当するVHアミノ酸配列および配列番号6の1~107残基に相当するVLアミノ酸配列、または(3)配列番号5に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号6に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む。特定の一実施形態では、本方法は、配列番号1に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号2に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む抗TGF-β抗体、ならびに配列番号5に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号6に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む抗PD-1抗体をがん患者に投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、患者は、抗PD-1抗体単独治療に難治性である。患者は進行性もしくは転移性のメラノーマ、または有棘細胞癌を有し得る。
【0016】
いくつかのレジメンでは、抗TGF-β抗体および抗PD-1抗体は、患者に2週間毎または3週間毎に投与される。いくつかのレジメンでは、2つの薬剤はそれぞれ、用量0.01~40(例えば、0.02~20、0.05~15、または0.05~20)mg/kg体重で投与される。
【0017】
本発明はまた、免疫チェックポイント阻害剤および本発明の抗体または断片を患者に投与する工程を含む、それを必要としている患者において免疫応答を増大する方法も提供す
る。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、(1)配列番号5におけるHCDR1~3および配列番号6におけるLCDR1~3;(2)それぞれ、配列番号5の1~117残基および配列番号6の1~107残基に相当するVHおよびVL;または(3)配列番号5のアミノ酸配列を有する重鎖(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖を含むもののような、抗PD-1抗体である。
【0018】
本発明の方法は、限定はされないが、メラノーマ(例えば、転移性または進行性)、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、有棘細胞癌、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮がん、頭頚部がん(例えば、頭頚部扁平上皮癌)、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、尿路上皮がん、および腎臓がん(例えば、腎細胞癌)を含む、様々ながんの処置に使用される。いくつかの実施形態では、患者は、間葉系腫瘍または固形腫瘍の間葉系サブタイプを有する。そのような固形腫瘍の例としては、大腸(例えば、結腸直腸がん)、卵巣、頭頚部(例えば、頭頚部扁平上皮癌)、肝臓(例えば、肝細胞癌)、および尿路上皮システムにおけるものが挙げられる。
【0019】
いくつかの実施形態では、間葉系腫瘍を含むがんは、ACTA2(平滑筋α2アクチン)、VIM(ビメンチン)、MGP(マトリックスGlaタンパク質)、ZWINT(ZW10相互作用動原体タンパク質)、およびZEB2(ジンクフィンガーE-box結合ホメオボックス2)の1つまたはそれ以上の過剰発現により特徴づけられる。そのようなバイオマーカーの発現レベルは、例えば、腫瘍生検または循環腫瘍細胞のような患者からの生体サンプルにおけるmRNAレベルまたはタンパク質レベルで決定される。
【0020】
本発明はまた、本明細書に記載の状態の処置における使用のための上述の抗体、断片、または組成物ならびに、本明細書に記載の状態の処置のための薬剤の製造における上述の抗体、断片、または組成物の使用も提供する。
【0021】
本発明の抗体の重もしくは軽鎖、または両方をコードする核酸発現ベクター;抗体の重鎖および軽鎖コード配列を含む宿主細胞:ならびに適切な培養培地中で宿主細胞を培養し、抗体遺伝子を発現し、次いで抗体を回収する工程を含む宿主細胞を使用する抗体を作製する方法も本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】ヒトTGF-β1(A)、ヒトTGF-β2(B)、ヒトTGF-β3(C)、マウスTGF-β1(D)、またはマウスTGF-β2(E)1ng/mlによって処置されたミンク肺(Mv 1Lu)細胞の増殖におけるAb1、フレソリムマブ、および1D11の効果を示すグラフである。抗体濃度はμg/mlである。
【
図1B】ヒトTGF-β1(A)、ヒトTGF-β2(B)、ヒトTGF-β3(C)、マウスTGF-β1(D)、またはマウスTGF-β2(E)1ng/mlによって処置されたミンク肺(Mv 1Lu)細胞の増殖におけるAb1、フレソリムマブ、および1D11の効果を示すグラフである。抗体濃度はμg/mlである。
【
図1C】ヒトTGF-β1(A)、ヒトTGF-β2(B)、ヒトTGF-β3(C)、マウスTGF-β1(D)、またはマウスTGF-β2(E)1ng/mlによって処置されたミンク肺(Mv 1Lu)細胞の増殖におけるAb1、フレソリムマブ、および1D11の効果を示すグラフである。抗体濃度はμg/mlである。
【
図1D】ヒトTGF-β1(A)、ヒトTGF-β2(B)、ヒトTGF-β3(C)、マウスTGF-β1(D)、またはマウスTGF-β2(E)1ng/mlによって処置されたミンク肺(Mv 1Lu)細胞の増殖におけるAb1、フレソリムマブ、および1D11の効果を示すグラフである。抗体濃度はμg/mlである。
【
図1E】ヒトTGF-β1(A)、ヒトTGF-β2(B)、ヒトTGF-β3(C)、マウスTGF-β1(D)、またはマウスTGF-β2(E)1ng/mlによって処置されたミンク肺(Mv 1Lu)細胞の増殖におけるAb1、フレソリムマブ、および1D11の効果を示すグラフである。抗体濃度はμg/mlである。
【
図2】ヒト誘導性制御性T細胞(iTreg)分化へのAb1 50μg/mlの効果を示す棒グラフである。T細胞に提供された刺激は、抗CD3および抗CD28抗体プラスIL-2であった。
【
図3】ヒトTGF-β1 2ng/mlによって処置されたヒトCD4+T細胞培養におけるヒト誘導性制御性T細胞(iTreg)分化へのAb1の効果を示す棒グラフである。T細胞に提供された刺激は、抗CD3および抗CD28抗体プラスIL-2であった。
【
図4】T細胞刺激および抗PD-1処置後のJurkat T細胞におけるNFATc駆動ルシフェラーゼ発現へのAb1(30μg/ml)およびヒトTGF-β1(18ng/ml)の効果を示す棒グラフである。
【
図5】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する示した処置群における中央絶対偏差(MAD)による値腫瘍体積中央値を示すグラフである。ビヒクル:PBS。「抗PD-1」:x-抗mPD-1 Mab(以下の発明を実施するための形態を参照)。「Ab1のアイソタイプコントロール」:抗HEL hlgG4。
【
図6】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する示した処置の27日目のベースラインからの腫瘍体積変化を示す散布図である。コントロール:PBS。「抗PD-1 RPM114mlgG1」:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7A】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7B】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7C】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7D】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7E】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図7F】C57BL/6 MC38大腸マウスモデルを使用する各示した処置群の経時的な腫瘍体積を示すグラフである。グラフ中の各線は、1匹の動物を表す。「mpk」:mg/kg。「Ab1アイソタイプCtrl」:抗HEL hlgG4。αPD1:x-抗mPD-1 Mab。
【
図8】LoVo腫瘍ライセートにおける活性なTGF-β1濃度へのAb1の効果を示すグラフである。
【
図9A】単回用量で5mg/kgのいずれかの抗体を与えられたラットの5つの群における経時的なAb1およびフレソリムマブの血清中濃度を示すグラフである。群(Gr.)1~3は、フレソリムマブの3つの異なるバッチ(B1、B2、およびB3)を与えられた。群4および5は、Ab1の2つの異なるバッチ(B1およびB2)を与えられた。
【
図9B】単回用量で1mg/kgのいずれかの抗体を与えられたサルにおける経時的なAb1およびフレソリムマブの血清中濃度を示すグラフである。
【
図9C】用量あたり1mg/kgのAb1の5回の毎週用量または示した研究期間、投与あたり1mg/kgのフレソリムマブの隔週投与を与えられたサルにおける経時的なAb1およびフレソリムマブの血清中濃度を示すグラフである。
【
図9D】単回用量で10mg/kgのいずれかの抗体を与えられたサルにおける経時的なAb1およびフレソリムマブの血清中濃度を示すグラフである。
【
図9E】用量あたり10mg/kgのAb1の5回の毎週用量または示した研究期間、投与あたり10mg/kgのフレソリムマブの隔週投与を与えられたサルにおける経時的なAb1およびフレソリムマブの血清中濃度を示すグラフである。
【
図10A】Ab1(+/-抗PD1)による処置後のMC38腫瘍におけるTGF-β1のレベルの変化を示すグラフである。
【
図10B】Ab1(+/-抗PD1)による処置後のMC38腫瘍におけるMIP-2のレベルの変化を示すグラフである。
【
図10C】Ab1(+/-抗PD1)による処置後のMC38腫瘍におけるKC/GROのレベルの変化を示すグラフである。
【
図11A】CD8
pos細胞のCellTrace Violet染色およびIFN-γ染色を定量するグラフである。
【
図11B】Ab1がTGFβ処置したCD8
+T細胞において増殖とIFN-γ産生の両方を回復したことを示すグラフである。
【
図12A】大腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、乳がん、メラノーマ、中皮腫、および腎がんの同系マウス腫瘍モデルの一覧にわたるCD8
+T細胞の相対的存在量(log2変換)を示すグラフである。
【
図12B】大腸がん、白血病、肺がん、リンパ腫、乳がん、メラノーマ、中皮腫、および腎がんの同系マウス腫瘍モデルの一覧にわたるTGFβ経路の活性化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、先の公知の抗体よりもハーフ抗体を形成しにくく、体内でのより高い暴露のような優れた薬物動態プロファイルも有する、改善した汎TGF-β特異的モノクローナル抗体を特徴とする。本抗体は、まとめて「Ab1および関連抗体」と呼ばれ、これらは配列番号1における重鎖CDR(HCDR)1~3および配列番号2における軽鎖CDR(LCDR)1~3を有し、ヒンジ領域の228残基(EUナンバリング)がセリンからプロリンに変異しているヒトIgG4定常領域を有する、共通の構造特徴を共有する。P228は、以下に示した配列番号1の配列において四角内およびボールド体である。
【0024】
抗体Ab1は、非グリコシル化の場合、推定分子量144KDである。その重および軽鎖アミノ酸配列はそれぞれ配列番号1および2である。これら2つの配列を以下に示す。可変ドメインはイタリック体である。CDRは四角内に示す。重鎖の定常ドメイン内のグリコシル化部位はボールド体である(N297)。
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態では、抗TGF-β抗体のような本発明の抗体は、重鎖にC末端リジンを持たない。C末端リジンは、製造中に、または組換え技術により取り除かれる(すなわち、重鎖のコード配列はC末端リジンのコドンを含まない)。したがって、C末端リジンのない配列番号1の重鎖アミノ酸配列を含む抗体も本発明内で考慮する。
【0027】
Ab1および関連抗体は、ヒトTGF-β1、-β2、および-β3に特異的に結合する。「特異的に」により、本発明者らは、結合が、例えば、表面プラズモン共鳴(例えば、以下の実施例1を参照)またはBio-Layerインターフェロメトリーによって決定される、10-8M(例えば、1~5nM)より小さいような、10-7Mより小さいKDを有することを意味する。Ab1および関連抗体はまた、ミンク肺上皮細胞アッセイ(例えば、以下の実施例2を参照)でアッセイした場合に強いTGF-β中和能、またはA549細胞IL-11誘導アッセイにおいて決定される約0.05から1μg/mlのEC50を有し得る(例えば、その開示がその全体を参照によって本明細書に組み入れる、PCT国際公開第2006/086469号の実施例6を参照)。
【0028】
Ab1および関連抗体のこれらの抗原結合および中和特性は、先の抗TGF-β抗体フレソリムマブ(国際公開第2006/086469号に記載の生殖系IgG4 PET1073G12抗体)に匹敵する。リーダー配列を含むフレソリムマブの重および軽鎖配列は、それぞれ配列番号3および4に示される。配列番号3に示されるように、フレソリムマブは、228位(EUナンバリング、配列番号3において実際の247位に相当する)にプロリンを持たない。Ab1および関連抗体は、フレソリムマブよりもいくつかの改善された特性を有する。
【0029】
製造中に、フレソリムマブは、非還元変性条件下で、多くて6~18%のハーフ抗体を形成できる(すなわち、2つの軽鎖と複合体を形成した2つの重鎖を有する4量体よりも、1つの重鎖および1つの軽鎖を有する2量体)。対照的に、Ab1は実質的に少ないハーフ抗体(<1%)を産生する。したがって、Ab1および関連抗体は、製造中により純粋な薬物製品を生じる。
【0030】
さらに、Ab1および関連抗体は、フレソリムマブよりも改善した薬物動態(PK)プロファイルを有することができる。それらは、フレソリムマブよりもずっと長い半減期および低い排出速度による線形PK挙動を有することができ、フレソリムマブよりもin vivoで約1.7倍高い暴露をもたらす。例えば、ラットにおいて、Ab1は、フレソリムマブの4.3日と比較して平均7.1日の半減期、およびフレソリムマブの0.51ml/hr/kgと比較して0.30ml/hr/kgの排出速度(CL)を有することが示されている(実施例7、以下)。カニクイザルにおいて、Ab1は、フレソリムマブ
の4.5日と比較して平均13日の半減期、およびフレソリムマブの0.66ml/hr/kgと比較して0.40ml/hr/kgの排出速度(CL)を有することが示されている。同文献。これらの改善したPK特性は、Ab1および関連抗体が、フレソリムマブより少ない投与量および/または低頻度で患者に与えられ、同じまたはより良い臨床的効能を達成し、より少ない有害副作用および少ない抗薬物抗体反応を起こし、したがって、必要であればより長い期間の処置を可能にすることが示される。
【0031】
さらに、非ヒト霊長類におけるフレソリムマブの毒性研究中に、薬物暴露と貧血症のような有害事象との間の相関が観察された。しかしながら、等しいまたはより高い暴露でさえも、Ab1により行われた同様の研究ではそのような事象は観察されなかった。
【0032】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、Ab1および関連抗体の重鎖における228残基の変異は安定性の増加ならびに改善したPKおよび毒性プロファイルをもたらすと仮定する。
【0033】
Ab1および関連抗体の定常ドメインは、例えばKabat残基L248において(例えば、L248E変異を導入することにより)、必要に応じてさらに改変され、分子の何らかの望ましくないエフェクター機能を減らす。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」(Ab)または「免疫グロブリン」(Ig)は、ジスルフィド結合によって相互接続した2つの重(H)鎖(約50~70kDa)および2つの軽(L)鎖(約25kDa)を含む4量体タンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変ドメイン(VH)および重鎖定常領域(CH)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(VL)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。VHおよびVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれる、より保存される領域が散在する、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分される。各VHまたはVLは、3つのCDRおよび4つのFRからなり、以下の順にアミノ末端からカルボキシル末端に配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4。各領域へのアミノ酸の割り当ては、IMGT(登録商標)の定義(Lefranc et al., Dev Comp Immunol 27(1):55-77 (2003));またはKabatの定義、Sequences of Proteins of
Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, MD (1987 and 1991));Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987);またはChothia et al., Nature 342:878-883 (1989)に従う。
【0035】
用語「ヒト抗体」は、可変ドメインおよび定常領域配列がヒト配列由来である抗体を指す。用語はヒト遺伝子由来の配列を有する抗体を包含するが、それらの配列は改変され、例えば免疫原性を減少、親和性を増加、および安定性を増加させる。用語は非ヒト細胞において組換えによって産生された抗体を包含し、ヒト細胞では典型的ではないグリコシル化を付与し得る。
【0036】
用語「キメラ抗体」は、2つの異なる動物種からの配列を含む抗体を指す。例えば、キメラ抗体は、別の種(例えばヒト、ウサギ、またはラット)由来の抗体の定常領域に結合するマウス抗体(すなわち、ハイブリドーマ技術を使用して免疫したマウスから得た抗体のように、マウス抗体遺伝子によってコードされる抗体)のVHおよびVLを含むことができる。
【0037】
用語、抗体の「抗原結合断片」は、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を指す。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片はF(ab’)2断片であり、ヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されている2つのFab断片を含む二価の断片である(Fabは、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価の抗体断片で
ある)。いくつかの実施形態では、本発明の抗原結合断片はまた、CH2またはCH3ドメインも含み得る。
【0038】
本明細書に記載の抗体および抗原結合断片は単離される。用語「単離されたタンパク質」、「単離されたポリペプチド」または「単離された抗体」は、その起源または派生の源によって、(1)その自然の状態でそれを伴う自然に関連する成分と関連しない、(2)同じ種由来の他のタンパク質を実質的に含まない、(3)異なる種由来の細胞によって発現される、または(4)自然には生じない、タンパク質、ポリペプチドまたは抗体を指す。したがって、化学的に合成されたまたはそれが自然に生じる細胞とは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、その自然に関連する成分から「単離される」であろう。タンパク質は、当技術分野で周知のタンパク質精製技術を使用して、単離によって自然に関連する成分を実質的に含まないようにもされる。
【0039】
I.Ab1および関連抗体の使用
TGF-β受容体は免疫細胞上に広く発現され、自然および獲得免疫系の両方においてTGF-βの広範な効果をもたらす。TGF-βは、多くの疾患状態、例えば、先天性欠損症、がん、慢性炎症、自己免疫、および線維性疾患と関連する。治療量のAb1または関連抗体はこれらの状態の処置に使用される。「治療有効」量は、処置した状態の1つまたはそれ以上の兆候を緩和する本明細書に言及したAb1、関連抗体、または別の治療剤の量を指す。この量は、処置される状態または患者に基づいて変わり、十分に確立された原理を使用して医療専門家によって決定される。
【0040】
いくつかの実施形態では、Ab1または関連抗体は、40、20、または15mg/kgまたはそれ以下(14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mg/kgのような)で投与される。いくつかのさらなる実施形態では、用量は0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mg/kgであってよい。投与頻度は、例えば、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎、毎週、隔週、または3週間毎、毎月、または2月毎であってよい。抗体は、状態および製剤に適した、静脈内(例えば、0.5~8時間にわたる静脈点滴)、皮下、局所、または任意の他の投与経路によって投与される。
【0041】
Ab1および関連抗体は、ヒト抗体遺伝子に由来し、したがってヒトにおいて低い免疫原性を有する。Ab1の毒性研究は、以下の実施例8に詳述する。ラットにおいて、特定の心臓および肺への副作用が観察された。したがって、患者をAb1または関連抗体によって処置する場合、患者は有害事象をモニターされる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体の効能は、患者において(例えば、患者の腫瘍組織のような患部組織において)、以下の1つまたはそれ以上によって示される:(1)TGF-βのレベルまたは活性の減少、(2)MIP2および/またはKC/GROレベルの増加、(3)INF-γ-陽性CD8+T細胞のようなCD8+T細胞の活性化または腫瘍組織への浸潤、および(4)ナチュラルキラー(NK)細胞のクラスタリングの増加。
【0043】
A.非腫瘍学的な疾患状態
Ab1および関連抗体によって処置される状態としては、限定はされないが、骨欠損(例えば骨形成不全症)、糸球体腎炎、神経または皮膚の傷、肺または肺線維症(例えば、突発性肺線維症)、放射線誘発線維症、肝線維症、骨髄線維症、強皮症、免疫介在性疾患(関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、ベルガー病、および移植拒絶)、ならびにデュピュイトラン拘縮が挙げられる。
【0044】
それらはまた、限定はされないが、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、糖尿病性(I型およびII型)腎症、放射線腎症、閉塞性腎症、びまん性全身性硬化症、先天性腎疾患(例えば、多発性嚢胞腎疾患、海綿腎、馬蹄腎)、糸球体腎炎、腎硬化症、腎石灰化症、全身性または糸球体高血圧、尿細管間質性腎症、尿細管性アシドーシス、腎結核、および腎梗塞を含む、腎不全の発生のリスクを処置、予防および減少させるためにも有用である。特に、限定はされないが:レニン阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、AngII受容体アンタゴニスト(「AngII受容体遮断薬」としても公知)、およびアルドステロンアンタゴニストを含む、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系のアンタゴニストと組み合わせた場合に有用である。例えば、その開示がその全体を参照によって本明細書に組み入れる、国際公開第2004/098637号を参照。
【0045】
Ab1および関連抗体は、全身性硬化症、術後癒着、ケロイドおよび肥厚性瘢痕、増殖性硝子体網膜症、緑内障手術、角膜損傷、白内障、ペイロニー病、成人呼吸促拍症候群、肝硬変、心筋梗塞後瘢痕、血管形成術後の再狭窄、くも膜下出血後の瘢痕、椎弓切除後の線維症、腱および他の修復後の線維症、胆汁性肝硬変(硬化性胆管炎を含む)、心膜炎、肋膜炎、気管切開術、穿通性CNS損傷、好酸球性筋肉痛症候群、血管再狭窄、静脈閉塞症、膵炎および乾癬性関節症のような、ECMの沈着に関連する疾患および状態の処置に有用である。
【0046】
Ab1および関連抗体は、再上皮化の促進が有益である状態においてさらに有用である。そのような状態としては、限定はされないが、静脈性潰瘍、虚血性潰瘍(褥瘡)、糖尿病性潰瘍、移植部位、移植ドナー部位、擦過傷および熱傷のような皮膚の疾患、喘息、ARDSのような気管支上皮の疾患、細胞傷害性処置に関連する粘膜炎、食道潰瘍(反射性疾患)、胃食道逆流症、胃潰瘍、小腸および大腸病変(炎症性腸疾患)のような腸管上皮の疾患が挙げられる。
【0047】
Ab1および関連抗体のさらなる使用は、内皮細胞増殖が望ましい状態においてであり、例えば、アテローム性動脈硬化症の安定化、血管吻合の治癒の促進、または動脈疾患、再狭窄および喘息のような平滑筋細胞増殖の阻害が望ましい状態においてである。
【0048】
Ab1および関連抗体はまた、リーシュマニア菌種、クルーズトリパノソーマ、結核菌およびらい菌、ならびにトキソプラズマ原虫、ヒストプラズマ・カプスラーツム菌、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・パラプロ-シス、およびクリプトコッカス・ネオフォルマンスによって引き起こされるもののような、マクロファージ媒介感染への免疫応答の増強にも有用である。それらは、例えば、腫瘍、AIDSまたは肉芽腫症によって引き起こされる免疫抑制を減らすのにも有用である。
【0049】
Ab1および関連抗体はまた、緑内障および線維性帯切除術後の瘢痕のような眼科的な状態の予防および/または処置にも有用である。
【0050】
B.腫瘍学的な疾患状態
TGF-βは、細胞増殖、上皮間葉転換(EMT)、マトリックスリモデリング、血管新生、および免疫機能を含む、いくつかの生物学的プロセスを調節する。これらのプロセスのそれぞれが腫瘍進行に貢献する。適応症にわたるがん患者におけるTGF-βの広範な有害な役割も、腫瘍微小環境内でのならびに全身的なその上昇によって示唆されている。例えば、Kadam et al., Mol. Biomark. Diagn. (2013) 4(3)参照。研究は、悪性の状態で、TGF-βがEMTを誘導することができ、生じる間葉系の表現型は細胞の遊走および侵入の増加をもたらすことを示した。
【0051】
Ab1および関連抗体は、限定はされないが、皮膚がん(例えば、切除不能なまたは転
移性のメラノーマを含むメラノーマ、有棘細胞癌および角化棘細胞腫)、肺がん(例えば非小細胞肺がん)、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、膵臓がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、原発性腹膜がん、膀胱がん、腎がんまたは腎臓がん(例えば腎細胞癌)、尿路上皮癌、乳がん、卵巣がん、卵管がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、精巣がん、頭頚部がん(例えば、頭頚部扁平上皮癌)、脳がん、神経膠芽腫、神経膠腫、中皮腫、白血病およびリンパ腫を含むがんのような、過剰増殖疾患の処置に有用である。
【0052】
いくつかの実施形態では、Ab1および関連抗体は、抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2治療剤に基づく先の治療が失敗した、または失敗すると予想される患者、すなわち、抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2治療に非応答者であるまたは非応答者であると予想される患者におけるがんの処置に有用である。いくつかの実施形態では、Ab1および関連抗体は、先の抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2治療から再発した患者におけるがんの処置に有用である。本明細書で使用する場合、用語「予想される」は、医学分野の当業者が、彼/彼女の一般的な医学知識および患者の特定の状態に基づき、治療を施すことなく、患者が応答者であるか非応答者であるか、および治療が失敗するかまたは有効でないかについて、予期できることを意味する。
【0053】
いくつかの実施形態では、がんは、限定はされないが、間葉系結腸直腸がん、間葉系卵巣がん、間葉系肺がん、間葉系頭部がんおよび間葉系頸部がんを含む、固形腫瘍の間葉系サブタイプである。上皮間葉転換(EMT)は、上皮細胞遺伝子を下方調節し、間葉系遺伝子発現を増強することによって細胞の遊走および侵入特性を促進する。EMTは、腫瘍進行および侵入のホールマークである。結腸直腸および卵巣がんの4分の1までが間葉系である。したがって、TGF-βの阻害およびEMTのその誘導により、Ab1または関連抗体は、間葉系固形腫瘍を処置するために使用される。いくつかの遺伝子マーカーおよび病理試験によって固形腫瘍の間葉系サブタイプが同定される。マーカーはACAT2、VIM、MGP、ZEB2、およびZWINTを含み、これはqRT-PCRまたは免疫組織化学によって検出される。そのようなマーカーは、抗TGF-β単独治療または本発明の組み合わせ治療のための患者を選択するために使用される。
【0054】
いくつかの実施形態では、Ab1および関連抗体は、進行した固形腫瘍を有する患者の処置に有用である。
【0055】
Ab1および関連抗体は、造血障害または多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および白血病、ならびにカポジ肉腫のような様々な肉腫のような悪性腫瘍の処置でも使用される。
【0056】
Ab1および関連抗体は、シクロスポリン媒介悪性腫瘍またはがん進行(例えば、転移)の阻害にも有用である。
【0057】
がん治療の文脈では、「処置」は、がん増殖の減速、がん進行もしくは再発の遅延、またはがん転移の減少、ならびに患者の平均余命を延長するためのがんの部分緩解をもたらす任意の医療行為を含むことが、当然理解される。
【0058】
C.腫瘍学における組み合わせ治療
がんにおける細胞傷害性T細胞浸潤のレベルは、良好な臨床結果と関連付けられることが観察された(Fridman et al., Nat Rev Cancer (2012) 12(4):298-306; and Galon et al., Immunity (2013) 39(1):11-26)。さらに、細胞傷害性T細胞(CD4+TH1)を補助するヘルパーT細胞およびそれらが産生するサイトカイン(例えば、IFN-γ)は、同様に患者のポジティブな結果と関連付けられることが多い。これに対して、Treg細胞の存在は、患者の予後不良と関連付けられることが示された(Fridman、上記)。
【0059】
TGF-βは、抗腫瘍免疫応答のほぼ全ての態様を抑制する。サイトカインは、iTreg分化を促進し、細胞傷害性(CD8+)細胞増殖および浸潤を減少させる。Ab1または関連抗体によるTGF-βの阻害は、上記のように免疫抑制腫瘍微小環境を緩和し、がん患者にポジティブな結果をもたらす。
【0060】
さらに、本発明者らは、免疫抑制腫瘍微小環境を緩和することによって、Ab1および関連抗体は、抗PD-1抗体のような、チェックポイント修飾薬が免疫応答をより誘導することを可能にすることができることを発見した。結果として、より多くの患者が、抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2処置のような免疫治療から恩恵を受ける。
【0061】
免疫チェックポイント分子を標的化する治療剤有りまたは無しで、Ab1および関連抗体はまた、化学治療(例えば、プラチナまたはタキソイドベースの治療)、放射線治療、およびがん抗原または発がん性駆動体を標的化する治療のような他のがん治療と併せても使用される。
【0062】
Ab1または関連抗体、および抗PD-1抗体のような免疫チェックポイント阻害剤を含む組み合わせによって処置されるがんは、上記の小節に列挙されるがんを含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、進行性または転移性のメラノーマ、非小細胞肺がん、腎細胞癌、頭頚部扁平上皮癌、およびホジキンリンパ腫のように、がんは、先の抗PD-1、抗PD-L1、または抗PD-L2治療に難治性である。難治性患者は、応答のいかなる証拠もない、処置開始の12週間以内に例えば放射線学的に確認される、疾患が進行する患者である。
【0064】
いくつかの実施形態では、Ab1または関連抗体は、抗PD-1治療のような別のがん治療と併せて使用され、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、膀胱がん、頭頚部扁平上皮癌、腎細胞癌、肝細胞癌、および有棘細胞癌のような間葉系のがんを処置する。上記の考察も参照。
【0065】
抗PD-1抗体の例は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、MEDI0608(以前はAMP-514;例えば、国際公開第2012/145493号および米国特許第9,205,148号参照)、PDR001(例えば、国際公開第2015/112900号参照)、PF-06801591(例えば、国際公開第2016/092419号参照)およびBGB-A317(例えば、国際公開第2015/035606号参照)である。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体は、国際公開第2015/112800号に開示されるものを含む(PCT公開の表1のH1M7789N、H1M7799N、H1M7800N、H2M7780N、H2M7788N、H2M7790N、H2M7791N、H2M7794N、H2M7795N、H2M7796N、H2M7798N、H4H9019P、H4xH9034P2、H4xH9035P2、H4xH9037P2、H4xH9045P2、H4xH9048P2、H4H9057P2、H4H9068P2、H4xH9119P2、H4xH9120P2、H4xH9128P2、H4xH9135P2、H4xH9145P2、H4xH8992P、H4xH8999PおよびH4xH9008Pと呼ばれるもの、およびPCT公開の表3のH4H7798N、H4H7795N2、H4H9008PおよびH4H9048P2と呼ばれるものなど)。国際公開第2015/112800号の開示は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0066】
例えば、PCT公開に開示されるCDR、VHおよびVL配列、または重および軽鎖配列、ならびにPCT公開に開示される抗体と同じPD-1エピトープに結合する抗体およ
び抗原結合断片を有する抗体および抗原結合断片を含む国際公開第2015/112800号に開示の抗体および関連抗体は、本発明のAb1または関連抗体と併せて使用され、がんを処置する。関連する実施形態では、有用な抗PD-1抗体は、それぞれ配列番号5および6として以下に示した重および軽鎖アミノ酸配列;配列番号5および6のVHおよびVL配列(イタリック体で示す);または配列番号5および6の1つまたはそれ以上の(例えば、6個全て)CDR(四角で示す)を含み得る。
【0067】
【0068】
いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体のような本発明の抗体は、重鎖にC末端リジンを持たない。C末端リジンは、製造中に、または組換え技術により取り除かれる(すなわち、重鎖のコード配列は、C末端リジンのコドンを含まない)。したがって、C末端リジンのない配列番号5の重鎖アミノ酸配列を含む抗体も本発明内で考慮される。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の抗TGF-β抗体または断片も、PD-L1およびCTLA-4のような免疫調節抗原に対する抗体と併せて使用される。例示的な抗PD-L1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、LY3300054およびBMS-936559である。例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブである。
【0070】
D.処置の効能のバイオマーカー
Ab1および関連抗体の効能は、バイオマーカーまたは標的占有率によって決定される。例えば、腫瘍組織において、標的占有率は、Meso Scale Discovery(MSD)アッセイを使用して、生検における活性なTGF-βのレベルを評価することによってアッセイされる。血液中で、ターゲットエンゲージメントは、リンパ球(T細胞、B細胞、NK細胞)および単球のような末梢血単核細胞上の循環TGF-βの減少の効果を評価することによってアッセイされる。例えば、循環CD8+T細胞の増殖の増加は、フローサイトメトリーのマーカーとしてCD45+RO+CCR7+CD28+Ki67+を使用して評価される。循環NK細胞の活性化は、フローサイトメトリーのマーカーとしてCD3-CD56high/dimCD16+またはCD137+を使用して評価される。さらに、Ki-67、PD-1、およびICOSは、T細胞活性化に関連するPDマーカーとして使用される。
【0071】
Ab1または関連抗体による処置時の免疫調節は、例えば、NeoGenomicsプラットフォームを使用するマルチプレックス免疫組織化学染色(IHC)アッセイによる浸潤する免疫細胞および免疫マーカーの変化を評価することによってアッセイされる。特に、免疫マーカーのパネルのNeoGenomic’s MultiOmyx TIL Panel染色により、様々な免疫細胞の密度および局在の定量的な決定が可能になる。
免疫マーカーは、iTregの分化;CD8+T細胞の浸潤および増殖;ならびにCD8+T細胞によるIFNγの生成を示すことができる。Ab1は、CD4+T細胞のiTregへの分化を阻害し(例えば、下記の実施例3参照)、およびCD8+T細胞増殖およびそれらのIFNγの生成を増加させる(混合リンパ球反応アッセイに示すように;データは示さず)ことが示された。したがって、Ab1または関連抗体による処置の効能は、iTregの阻害、CD8+T細胞の増殖および腫瘍もしくは他の疾患組織への浸潤の誘導、IFNγ産生の増加、ならびに/またはCD8+T細胞のTreg細胞に対する比の増加によって示される。Ab1または関連抗体による処置時の免疫調節もまた、CD8+T細胞、Treg細胞、NK細胞、および他の免疫細胞のメチル化PCRベース定量的免疫細胞カウントによって末梢血においてアッセイされる。処置の効能は、腫瘍進行のような疾患進行における遅延または回復として臨床的に証明することができる。
【0072】
II.抗体作製方法
Ab1および関連抗体、ならびにPD-1、PD-L1またはPD-L2のような他の共標的を標的化する抗体が、当技術分野で十分に確立された方法によって作製される。抗体の重および軽鎖をコードするDNA配列は、遺伝子が転写および翻訳制御配列のような必要な発現制御配列に操作可能に連結されるように発現ベクターに挿入される。発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、カリフラワーモザイクウイルス、タバコモザイクウイルスのような植物ウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。抗体軽鎖コード配列および抗体重鎖コード配列は、別々のベクターに挿入され、同じまたは異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に操作可能に連結される。一実施形態では、両方のコード配列は同じ発現ベクターに挿入され、同じ発現制御配列(例えば、共通のプロモーター)に、別々の同じ発現制御配列(例えば、プロモーター)に、または異なる発現制御配列(例えば、プロモーター)に操作可能に連結される。抗体コード配列は、標準的な方法(例えば、抗体遺伝子断片およびベクターの相補的な制限部位のライゲーション、または制限部位が存在しない場合平滑末端ライゲーション)によって発現ベクターに挿入される。
【0073】
抗体鎖遺伝子に加えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞において抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有していてよい。哺乳動物宿主細胞発現の調節配列の例は、レトロウイルスLTR、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーのような)、サルウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーのような)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマおよび天然免疫グロブリンおよびアクチンプロモーターのような強力な哺乳動物プロモーター由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーのような哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルスエレメントを含む。
【0074】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択可能マーカー遺伝子のようなさらなる配列を有し得る。例えば、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートのような薬物に対する耐性を与える。選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅によるdhfr宿主細胞における使用のための)、neo遺伝子(G418選択のため)、およびグルタミン酸合成遺伝子を含み得る。
【0075】
本発明の抗体をコードする発現ベクターは、発現のため、宿主細胞に導入される。宿主細胞は、抗体の発現に好適な条件下で培養され、次いで回収および単離される。宿主細胞は、哺乳動物、植物、細菌または酵母宿主細胞を含む。発現の宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当技術分野で周知であり、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系を含む。これらは、特に、チャイニーズハムスター卵巣(
CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK-293T細胞、293 Freestyle細胞(Invitrogen社)、NIH3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、A549細胞、および多くの他の細胞系を含む。細胞系は、それらの発現レベルに基づいて選択される。使用される他の細胞系は、Sf9またはSf21細胞のような昆虫細胞系である。
【0076】
さらに、抗体の発現は、多くの公知の技術を使用して増強される。例えば、グルタミン合成酵素遺伝子発現システム(GSシステム)は、特定の条件下で発現を増強する一般的な手法である。
【0077】
宿主細胞の組織培養培地は、ウシ血清アルブミンのような動物由来成分(ADC)を含むまたは含まない。いくつかの実施形態では、無ADC培養培地が、ヒトの安全性のために好ましい。組織培養は、フェドバッチ法、連続的灌流法、または宿主細胞および所望の収率に適した任意の他の方法を使用して実施される。
【0078】
III.医薬組成物
本発明の抗体は、好適な保存安定性のために製剤化される。例えば、抗体は、薬学的に許容される賦形剤を使用する使用のために、凍結乾燥または保存または復元される。組み合わせ治療のため、2つまたはそれ以上の抗体のような治療剤は同時に処方され、例えば混合および単一組成物で提供される。
【0079】
用語「賦形剤」または「担体」は、本発明の化合物以外の任意の成分を記載するために本明細書で使用される。賦形剤の選択は、特定の投与の様式、可溶性および安定性への賦形剤の効果、ならびに投与剤形の性質のような因子に大きく依存する。「薬学的に許容される賦形剤」は、生理学的に適合性の、あらゆる溶媒、分散培地、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される賦形剤のいくつかの例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、デキストロース、グリセリン、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせである。いくつかの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムのようなポリアルコールは組成物に含まれる。薬学的に許容される物質のさらなる例は、抗体の貯蔵寿命または有効性を増強する、湿潤剤または少量の湿潤剤または乳化剤のような補助剤、保存剤または緩衝材である。
【0080】
本発明の医薬組成物は、単一単位用量として、または複数の単一単位用量として調製され、パッケージされ、またはバルクで販売される。本明細書で使用する場合、「単位用量」は、前もって決めた量の活性成分を含む医薬組成物の個々の量である。活性成分の量は、通常、対象に投与される活性成分の投与量または例えば、そのような投与量の2分の1または3分の1のような、このような投与量の便利な画分と等しい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、典型的には非経口投与に好適である。本明細書で使用する場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理漂白および組織の漂白を介する医薬組成物の投与によって特徴づけられる任意の投与の経路を含み、したがって、通常血流への、筋肉への、または内蔵への直接投与をもたらす。したがって、非経口投与は、限定はされないが、組成物の注射による、外科的切開による組成物の適用による、組織浸透非外科的創傷による組成物の適用による等、医薬組成物の投与を含む。特に、非経口投与は、限定はされないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、くも膜下腔、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、および関節滑液嚢内注射または注入;ならびに腎臓透析点滴技術を含むと考えられる。局所灌流も考えられる。好ましい実施形態は、静脈内および皮下経路を含む。
【0082】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、典型的には、滅菌水または滅菌等張生理食塩水のような薬学的に許容される担体と組み合わせて活性成分を含む。そのような製剤は、ボーラス投与または連続投与に適した形態で、調製され、パッケージされ、または販売される。注射可能製剤は、アンプルまたは保存剤を含む複数用量容器のような、単位投与剤形で調製され、パッケージされ、または販売される。非経口投与の製剤は、限定はされないが、懸濁液、液剤、乳状液、油性または水性ビヒクル、ペースト等を含む。そのような製剤は、限定はされないが、懸濁、安定、または分散剤を含む1つまたはそれ以上の追加の成分をさらに含み得る。非経口投与のための製剤の一実施形態では、活性成分は、復元した組成物の非経口投与の前に好適なビヒクル(例えば、滅菌パイロゲンフリー水)によって復元するための乾燥(すなわち粉末または顆粒)形態で提供される。非経口製剤はまた、塩、炭水化物および緩衝剤(例えば、pH3から9)のような賦形剤を含有し得る水溶液も含むが、いくつかの適用では、それらは、滅菌、パイロゲンフリー水のような好適なビヒクルと併せて使用される滅菌非水溶液としてまたは乾燥形態としてより好適に製剤化される。例示的な非経口投与形態は、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコールまたはデキストロース水溶液中の液剤または懸濁液を含む。そのような剤形は、所望であれば好適に緩衝される。有用な他の経口投与可能な製剤は、微結晶形態、またはリポソーム製剤中の活性成分を含むものを含む。非経口投与の製剤は、即時および/または調節放出されるように製剤化される。調節放出製剤は、遅延-、維持-、パルス-、制御-、標的化-、およびプログラム放出を含む。
【0083】
IV.例示的な実施形態
本発明のさらに特定の実施形態は以下のように記載される:
1.配列番号1における重鎖相補性決定領域(CDR)1~3および配列番号2における軽鎖CDR1~3を含む、ヒトTGF-β1、TGF-β2、およびTGF-β3に特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体であって、228位(EUナンバリング)にプロリンを有するヒトIgG4定常領域を含む前記抗体。
2.配列番号1の1~120残基に相当する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列および配列番号2の1~108残基に相当する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含む、実施形態1に記載の抗体。
3.配列番号1に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端のリジン有りまたは無し)および配列番号2に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む、実施形態2に記載の抗体。
4.F(ab’)2である、実施形態3に記載の抗体の抗原結合断片。
5.フレソリムマブと比較すると、半減期の延長、または暴露の増加を示す、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体または断片。
6.以下の:
a)CD4+T細胞の誘導性制御性T細胞(iTreg)への分化を阻害する
b)CD8+T細胞増殖を増加させる;
c)ナチュラルキラー(NK)細胞のクラスタリングを増加させる;
d)MIP-2のレベルを増加させる;および
e)KC/GROのレベルを増加させる
特性の1つまたはそれ以上を有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の抗体または断片。
7.1%より少ないハーフ抗体を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片を含む組成物。
8.薬剤としての実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片。
9.それを必要としている患者においてTGF-βシグナル伝達を阻害する方法であって、治療量の実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片を患者に投与する工程を含む前記方法。
10.患者はがんを有する、実施形態9に記載の方法。
11.がんは、メラノーマ、肺がん、有棘細胞癌、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、
頭頚部がん、肝細胞癌、尿路上皮がん、および腎細胞癌からなる群から選択される、実施形態10に記載の方法。
12.がんは、ACTA2、VIM、MGPおよびZWINTの1つまたはそれ以上の過剰発現によって特徴づけられる、実施形態10または11に記載の方法。
13.がんは間葉系腫瘍である、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法。
14.抗体または断片は免疫抑制腫瘍微小環境を緩和する、実施形態10~13のいずれか1つに記載の方法。
15.患者のがんを処置する方法であって、
(1)実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片、および
(2)免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤
を患者に投与する工程を含む前記方法。
16.免疫チェックポイントタンパク質は、PD-1、PD-L1、またはPD-L2である、実施形態15に記載の方法。
17.免疫チェックポイントタンパク質の阻害剤は、抗PD-1抗体である、実施形態16に記載の方法。
18.抗PD-1抗体は、配列番号5における重鎖CDR1~3および配列番号6における軽鎖CDR1~3を含む、実施形態17に記載の方法。
19.抗PD-1抗体は、配列番号5の1~117残基に相当するVHアミノ酸配列および配列番号6の1~107残基に相当するVLアミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法。
20.抗PD-1抗体は、配列番号5に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号6に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む、実施形態17に記載の方法。
21.抗TGF-β抗体は、配列番号1に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号2に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む、実施形態15~20のいずれか1つに記載の方法。
22.がんは抗PD-1抗体処置に難治性である、実施形態15~21のいずれか1つに記載の方法。
23.がんは、進行性もしくは転移性のメラノーマ、または有棘細胞癌である、実施形態15~22のいずれか1つに記載の方法。
24.がんは、固形腫瘍の間葉系サブタイプである、実施形態15~23のいずれか1つに記載の方法。
25.がんは、ACTA2、VIM、MGP、およびZWINTの1つまたはそれ以上の過剰発現によって特徴づけられる、実施形態15~24のいずれか1つに記載の方法。
26.がんは、メラノーマ、肺がん、有棘細胞癌、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、頭頚部がん、肝細胞癌、尿路上皮がん、および腎細胞癌からなる群から選択される、実施形態15~25のいずれか1つに記載の方法。
27.抗体または断片は免疫抑制腫瘍微小環境を緩和する、実施形態15~26のいずれか1つに記載の方法。
28.抗TGF-β抗体および抗PD-1抗体は患者に同じ日に投与される、実施形態15~27のいずれか1つに記載の方法。
29.抗TGF-β抗体および抗PD-1抗体は患者に隔週で投与される、実施形態15~28のいずれか1つに記載の方法。
30.抗TGF-β抗体および抗PD-1抗体はそれぞれ0.05~20mg/kg体重の用量で投与される、実施形態15~29のいずれか1つに記載の方法。
31.それを必要としている患者において免疫応答を増加させる方法であって、実施形態1~6のいずれか1つに記載の免疫チェックポイント阻害剤および抗体または断片を患者に投与する工程を含む前記方法。
32.チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体である、実施形態31に記載の方法。
33.抗PD-1抗体は:
a)配列番号5のHCDR1~3および配列番号6のLCDR1~3;
b)それぞれ、配列番号5の1~117残基および配列番号6の1~107残基に相当するVHおよびVL;または
c)配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する重鎖(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号6に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖
を含む、実施形態32に記載の方法。
34.抗TGF-β抗体は配列番号1に記載の重鎖アミノ酸配列(C末端リジン有りまたは無し)および配列番号2に記載の軽鎖アミノ酸配列を含む、実施形態31~33のいずれか1つに記載の方法。
35.患者はがんを有する、実施形態31~34のいずれか1つに記載の方法。
36.患者は、免疫チェックポイント阻害剤による前の処置に難治性である、および/または固体腫瘍の間葉系サブタイプを有する、実施形態35に記載の方法。
37.がんは、メラノーマ、肺がん、有棘細胞癌、結腸直腸がん、乳がん、卵巣がん、頭頚部がん、肝細胞癌、尿路上皮がん、および腎細胞癌からなる群から選択される、実施形態35または36に記載の方法。
38.がんは、ACTA2、VIM、MGPおよびZWINTの1つまたはそれ以上の過剰発現によって特徴づけられる、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
39.抗体または断片は免疫抑制腫瘍微小環境を緩和する、実施形態35~38のいずれか1つに記載の方法。
40.上記の方法のいずれかで患者を処置する上での使用のための実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片。
41.上記の方法のいずれかで患者を処置する薬剤の製造のための、実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または断片の使用。
42.実施形態1~6のいずれか1つの抗体または断片の重鎖、軽鎖、または両方をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
43.実施形態42の単離された核酸分子を含む発現ベクター。
44.実施形態43の発現ベクターを含む宿主細胞。
45.抗体または抗原結合断片の重鎖および軽鎖をそれぞれコードする第1および第2のヌクレオチド配列を含む宿主細胞を提供する工程と、
抗体または抗原結合断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を増殖する工程と、
抗体または抗原結合断片を回収する工程と
を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片を産生する方法。
46.
医薬組成物を産生する方法であって、
実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片を提供する工程と、
抗体または抗原結合断片を薬学的に許容される賦形剤と混合する工程と
を含む前記方法。
47.実施形態1~6のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合断片および別の治療剤を含む製品またはキット。
48.他の治療剤は本明細書に記載の免疫チェックポイント阻害剤である、実施形態47に記載の製品またはキット。
【0084】
本発明を、以下の実施例でさらに記載するが、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲を制限しない。
【0085】
〔実施例〕
この発明がよりよく理解されるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は例示のためだけであり、いかなる方法でも本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0086】
Ab1のTGF-β結合特性
全てのヒトおよびマウスTGF-βアイソフォームへのAb1の親和性は、カルボキシメチル化(CM5)デキストランでコーティングしたSシリーズチップを使用するBiacore T200 Biosensor装置(GE Healthcare)での表面プラズモン共鳴によって決定した。一連の濃度のAb1(1.11、3.33、10、および30nM)を、固定化した組換えTGF-βに注射し、リアルタイムで結合相互作用を測定した。TGF-βホモダイマーを低密度で固定化し、結合活性効果を減らした。注射は3回実施し、結合アッセイを3回反復した。運動実験からのデータは、Biacore T200 Biaevaluation v2.0ソフトウェアを使用して処理した。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用するカーブフィッティング分析のため、ゼロ化、アライン、ダブルリファレンス、およびクロップし、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、および平衡解離定数(KD)を決定した。
【0087】
組換えタンパク質は、内部で製造されるか(ヒトTGF-β1、2および3)またはR&D System社から得られた(マウスTGF-β1および2)。以下の表1は、アカゲザル、マウス、またはラットおよびヒトの間の3つの活性なTGF-βアイソフォームのアミノ酸配列相同性を示した(相同性は、全アミノ酸のうち保存されたアミノ酸のパーセンテージとして報告される)。
【0088】
【0089】
ヒトTGF-β3およびマウスTGF-β3はアミノ酸配列が同一であるため、これら2つのタンパク質に関して異なる親和性の測定は算出されなかった。同様に、マウスおよびラットTGF-β1および2はアミノ酸配列が同一であり、異なる親和性測定も算出されなかった。
【0090】
上記の方法によって決定された、Ab1のka、kd、およびKD値を以下の表2に示した。ヒトTGF-β1、2、および3へのAb1のKD値は、それぞれ1.48、3.00、および1.65nMと決定された。マウス/ラットTGF-β1および2へのAb1のKD値は、それぞれ2.80および1.88nMであると決定された。これらの結合特性は、フレソリムマブのものと類似していた。
【0091】
【0092】
上記のデータは、Ab1が強力なおよび選択的な汎TGF-β阻害剤であることを実証した。表面プラズモン共鳴を使用する測定は、Ab1が全てのヒトおよびマウスTGF-βアイソフォームに関して1から5nMの間の親和性を有することを実証した。高レベルの特異性が、正常ラット、カニクイザルおよびヒト組織を使用してGLP免疫組織化学(IHC)組織交差反応性試験によって確認された。
【実施例2】
【0093】
Ab1のTGF-β中和能力
TGF-β活性の中和におけるAb1のin vitroでの能力は、細胞ベースのアッセイで測定された。このアッセイは、非形質転換のミンク肺上皮細胞(Mv 1Lu細胞)の増殖を阻害するTGF-βの能力を測定した。例えば、国際公開第2006/086469号およびMazzieri, et al., Eds, “Methods in Molecular Biology,” Vol. 142, “Transforming Growth Factor-β Protocols”参照。Ab1、フレソリムマブ、および1D11(マウス抗TGF-β抗体、その重および軽鎖配列は配列番号9および10として本明細書に開示される)のヒトTGF-β1、2、3およびマウスTGF-β1および2を中和する能力を評価した。組換えTGF-βタンパク質は、内部で製造されるか(ヒトTGF-β1、2および3)またはR&D System社から得られた(マウスTGF-β1および2)。
【0094】
全てのヒトおよびマウスTGF-βアイソフォームは、0.02pg/mlから10ng/mlの範囲で用量依存的な方法でミンク肺細胞の増殖を阻害した。Ab1、フレソリムマブ、および1D11の能力を定量するため、示したTGF-βおよび段階希釈した抗体1ng/mlをミンク肺細胞とインキュベートした。インキュベーションの3日後、細胞の増殖をDNAへの結合時に蛍光を発するCyQUANT色素によって定量した(
図1A~E)。データは、Ab1、フレソリムマブ、およびそれらのマウス代用1D11が、全てのヒトおよびマウスTGF-βアイソフォームを同程度まで阻害したことを示した。
【実施例3】
【0095】
Ab1による誘導性制御性T細胞分化の阻害
制御性T細胞(Treg)は免疫抑制性であり、がん患者においてネガティブな結果と関連付けられている。以下に記載した研究において、本発明者らは、Ab1が、ヒトCD4+T細胞の誘導性制御性T細胞(iTreg)へのTGF-β誘導性分化を阻害できたかどうか調べた。原発性ヒトCD4+T細胞は、健常ドナーから単離した。ヒトTGF-β1はR&D Systems社から購入した。
【0096】
培養細胞によって内在性で生成されたTGF-βへのAb1のアンタゴニスト活性を調べるため、外因性のTGF-βを添加しない全CD4
+T細胞を、50μg/mlのアイソタイプコントロール(ヒトIgG4、カッパ抗鶏卵リゾチーム(HEL)抗体、Crown Biosience社)、Ab1またはフレソリムマブによって、刺激(抗CD-3、抗CD-28、およびIL-2)の存在下または非存在下で6日間処置後フローサイトメトリー分析を行った。CD25
+FOXP3
+集団の平均パーセントおよび標準偏差を親集団(リンパ球/肝臓/単一細胞/CD4
+CD127
-)から3回算出した。抗CD3、抗CD28、およびIL-2による全ヒトCD4
+T細胞の刺激は、培養中のFOXP3
+CD25
+(iTreg)のパーセンテージを0%から15%に増加した。Ab1 50μg/mlまたはフレソリムマブ50μg/mlによる処置は、同程度までiTregのパーセンテージを減少させた(それぞれ8%および7%;
図2)。対照的に、ヒトIgG
4(hIgG
4)アイソタイプコントロールによる処置は、iTreg分化に最小の効果を示した(20% iTreg)(
図2)。第2の健常ボランティアから単離されたCD4
+T細胞は、同様の結果を生じた。
【0097】
外因性TGF-βへのAb1のアンタゴニスト活性を調べるため、ヒトTGF-β1 2ng/mlとインキュベートした全CD4
+T細胞を、刺激(抗CD3、抗CD28、およびIL-2)の存在下または非存在下で様々な抗体濃度のアイソタイプコントロール、Ab1、またはフレソリムマブによって6日間処置後、フローサイトメトリー分析した。CD25
+FOXP3
+集団の平均パーセントおよび標準偏差を親集団(リンパ球/肝臓/単一細胞/CD4
+CD127
-)から、注意書きした場合以外3回算出した。外因性TGF-β1(2ng/ml)の刺激した全ヒトCD4
+T細胞への添加は、培養中のiTregのパーセンテージを15%から55%に増加した。漸増濃度のAb1による処置は、追従様式でiTregのパーセンテージを200μg/mlで55%から15%に、6.25μg/mlで43%減少させた。フレソリムマブによる処置は、Ab1と同程度までiTregのパーセンテージを減少させた(200μg/mlで55%から16%および6.25μg/mlで32%)。様々な濃度のアイソタイプコントロール抗体による処置は、200μg/mlおよび6.25μg/mlで60%のiTregのパーセンテージに効果を示さなかった。
図3参照。第2の健常ボランティアから単離されたCD4
+T細胞は、同様の結果を生じた。
【0098】
この研究は、Ab1がTGF-βによって誘導されるiTreg分化を阻害し、したがって免疫抑制腫瘍微小環境を緩和することにより臨床的な利点をもたらし得ることを実証した。
【実施例4】
【0099】
in vitroでのAb1および抗PD-1抗体組み合わせの効果
本研究では、本発明者らは、TGF-βが抗PD-1処置後のin vitroでのT細胞の最大刺激を防ぐかどうか、そうであれば、Ab1はこの防止を打ち消すことができるかどうか調べた。NFATc(活性化T細胞核内因子、細胞質1)調節配列の転写制御下での発現構築物からのルシフェラーゼ発現を使用して、T細胞活性化のレベルを測定した。
【0100】
本発明者らは、本研究のためPromega社から購入した細胞アッセイシステムを使用した。このシステムは2つの細胞型:1)ヒトPD-1およびNFAT応答エレメントによって駆動されるルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat T細胞、ならびに2)ヒトPD-L1および抗原非依存的な方法で同種のT細胞受容体を活性化するように設計した工学的に作製した細胞表面タンパク質を発現するCHO-K1細胞を含む。共培養すると、Jurkat T細胞がCHO-K1細胞と相互作用し、T細胞受容体刺激およびルシフェラーゼ発現を駆動する核へのNFATcの移行を生じた。しかしながら、
PD-1/PD-L1のエンゲージメントは、非受容体11型タンパク質チロシンフォスファターゼ(SHP2)をT細胞受容体複合体へ動員し、NFATc核移行およびその後のルシフェラーゼ発現を阻害した。PD-1シグナル伝達の遮断は、SHP2依存的な抑制を軽減し、したがって最大のルシフェラーゼ発現を可能にした。したがって、システムは、T細胞シグナル伝達へのTGF-βの効果およびT細胞の抗PD-1処置へのAb1の影響を決定する機能的な方法を提供した。
【0101】
TGF-β依存的な効果に関連する遅い動力学のため、T細胞受容体刺激の前にJurkat T細胞をTGF-βによって前処置した。ヒトTGF-β1はR&D Systems社から購入した。Ab1のアイソタイプコントロール抗体(抗HEL hlgG4)は、Crown Bioscience社(Cat#C0004-5)から購入した。マウス抗hPD-1 IgGおよびそのアイソタイプコントロール抗体はBioLegend社(Cat#329912)から購入した。各サンプルにつき14個の複製物を分析した。
【0102】
結果は、CHO-K1細胞と24時間共培養したJurkat T細胞への抗hPD-1抗体を添加すると、アイソタイプコントロールの添加の場合(234963RLU、倍数変化=3.685、p値<0.0001)または単に抗体を加えなかった場合(206043RLU、倍数変化=4.202、p値<0.0001)よりも大きくルシフェラーゼ活性(865794相対発光単位[RLU])が誘導されたことを示した。TGF-β1 18ng/mlによる12日間のJurkat T細胞の前処置は、TGF-β1で処置しなかったJurkat T細胞と比較して(865794RLU、倍数変化=-1.355、p値<0.0001)、抗hPD-1抗体の存在下でのCHO-K1細胞共培養において低いルシフェラーゼ活性(638866 RLU)を誘導した(
図4)。
【0103】
Ab1のアンタゴニスト能力を評価するため、12日間Ab1、アイソタイプコントロールAbの存在下で、またはAb無しでJurkat T細胞をTGF-β1 18ng/mlで前処置し、次いで24時間抗PD-1の存在下でCHO-K1細胞と共培養した。Ab1(924186 RLU)の存在は、アイソタイプコントロールAb(639440RLU、倍数変化=1.445、p値<0.0001)およびAbコントロール無し(638866RLU、倍数変化=1.447、p値<0.0001)と比較して、ルシフェラーゼ活性のTGF-β依存的な抑制を軽減した。TGF-β1による前処置をせず、抗PD-1 Abの存在下でCHO-K1細胞共培養と共培養したJurkat T細胞にAb1(975654RLU)またはアイソタイプコントロール(955717 RLU)を添加したコントロール群は、Ab無しコントロールと比較してルシフェラーゼ活性が統計的に増加したが、最小の倍数変化であった(865794RLU、それぞれ倍数変化=1.127および1.104、p値=0.0023および0.001284)(
図4)。RLU値も、下記の表3に示した。
【0104】
【0105】
Jurkat T細胞のTGF-β1前処置が増殖または生存力の低下をもたらし、したがってCHO-K1細胞との24時間共培養中にルシフェラーゼ活性の低下をもたらす可能性を除外するため、本発明者らは、Ab1、抗HEL hlgG4の存在下、または抗体無し(ビヒクル)で7日間、Jurkat T細胞をTGF-β1 18ng/mlまたはPBSとインキュベートした。2~3日毎に、等量の各群を使用して新しいフラスコに播種し、その時TGF-β1および抗体の両方が新しくされた(全部で2つの再播種イベントが起こった)。最終培養のアセスメントにより、全ての処置群の生存力が変更されたことを実証した(94%から96%の範囲)。さらに、各処置群の最終培養のJurkat T細胞の総数は、非常に類似していた(2500万から2900万の範囲)。
【0106】
上記の研究は、抗PD-1処置後のT細胞受容体の下流のシグナル伝達の増加がTGF-βによって抑制され、最適以下のT細胞刺激をもたらすことを実証した。本発明者らのデータは、TGF-βの阻害が免疫抑制腫瘍微小環境を緩和し、抗PD-1剤のようなチェックポイント調節剤がよりよい免疫応答を誘導し、したがって、免疫腫瘍学的処置から恩恵を受ける患者の割合を増加させることが可能になることを示唆した。
【実施例5】
【0107】
in vivoでのAb1および抗PD1抗体組み合わせの効果
本発明者らは、次に、C57BL/6マウスがんモデルにおける抗TGF-βおよび抗PD-1を組み合わせた処置の効果を研究した。
【0108】
忍容性/予備的安全性
材料および方法
単一薬剤としておよび組み合わせでAb1および抗マウスPD-1(mPD-1)モノクローナル抗体(mAb)の忍容性を、雌のC57BL/6マウスで評価した。Ab1(10、20、および50mg/kg)またはアイソタイプコントロールAb(抗HEL hlgG4はCrown Bioscience社から購入した;10および20mg/kgで使用した)を単剤として3日毎にIV投与(Q3D)または抗PD1 Mab 5mg/kgと組み合わせて週2回IV投与した。この研究で使用した抗PD-1 Abは、「抗mPD1_hyb_RMP114_mIgG1LCfullrat」(またはx-抗mPD-1 Mab)と示される。それは、ラットIgG2aクローンRMP1-14(BioXcell、Cat.#BE0146)のラットFc領域をマウスIgG1Fc領域と置き換えることによって生成されたキメララット抗mPD-1抗体であった。このキメラ抗体の重および軽鎖アミノ酸配列は配列番号7および8に示される。忍容性は、動物の体重の測定および臨床的な観察によって評価された。3週間の処置の最後に、最後の処置の4時間後、最終のサンプル採取を実施し、組織(心臓、腎臓、肝臓、肺、および脾臓)をホルムアルデヒドで固定し、病理組織学的分析に送った。
【0109】
投与量は、体重減少をもたらす腫瘍誘導性悪液質がコントロールビヒクル処置群で観察されない限り、個々のマウスにおいて3連続日で15%体重減少、1日で20%体重減少、または10%もしくはそれ以上の薬物関連死がある場合、非常に毒性であると考えられた。動物体重は腫瘍重量を含んだ。
【0110】
毒性/安全性結果
C57BL/6マウスにおける忍容性試験は、Ab1およびx-抗mPD-1 Mabの単一薬剤および組み合わせの試験した全ての投与レベルが十分に忍容性であったことを示した。任意の処置群において試験した全ての用量で体重の大きな変化は観察されなかった。重篤なまたは大きな臨床的な観察は研究中観察されなかった。病理組織学的な分析は、どんな組み合わせでも、用量関係性なく、アイソタイプコントロール抗体処置群を含む全ての処置群の脾臓(白色髄)におけるリンパ球の数の増加を同定した。他の顕著な顕微鏡による所見は観察されなかった。アイソタイプコントロールAb(10mg/kg)および抗PD-1Mab(5mg/kg)の組み合わせ群の2匹のマウスは、試験の最終日の最終投与後に死亡が確認された。病理組織学的な分析は、死因と関連する任意の薬物を見出さなかった。
【0111】
効能試験
皮下のMC38同系大腸腫瘍を担持するC57BL/6マウスにおける抗TGF-βおよび抗PD-1を組み合わせる処置の効果を評価した。マウスに、Ab1 25mg/kg、x-抗mPD-1 Mab 5mg/kg、または両方を3週間Q3Dで与えた。この研究は、Ab1と抗mPD-1 Mabの組み合わせが、単一薬剤のみよりも著しく大きな抗腫瘍活性を持つことを実証した。材料および方法およびこの研究の日付は以下に詳細に記載する。
【0112】
材料および方法
動物
雌のC57BL/6マウスはCharles River Labs(Wilmington、MA、USA)から入手した。動物は、研究に加える前に少なくとも3日間順応させた。マウスは、研究の開始時に11週齢であり、体重は17.0と20.9gの間であった。それらは食事(Harlan2916げっ歯類食、Massachusetts、USA)および滅菌水に自由にアクセスできるようにし、12時間の明/暗サイクルで飼育した。
【0113】
腫瘍細胞
MC38は大腸腺癌細胞系である。細胞は、National Cancer Institute (Bethesda、MD、USA)から入手し、10%の熱失活したウシ胎仔血清(HI FBS)(Gibco、Cat#10438026)を補足したL-グルタミン入りRoswell Park Memorial Institute medium(RPMI)-1640(Gibco社、Cat#11875)を含む、完全培地(CM)中、37℃、5%CO2下で培養した。細胞を回収し、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)(Gibco、Cat#14190)中に再懸濁し、マウスあたり1×106個の細胞/200μlを、雌のC57BL/6マウスの右わき腹に皮下(SC)移植した。
【0114】
化合物
Ab1は、動物に水溶液で投与した。それは0.22μmのフィルターでPESを通し、滅菌水中2~10℃で保存した。抗体は、腹腔内(IP)に10ml/kg、25mg/kgで動物に与えた。
【0115】
抗HEL hlgG4(Crown Bioscience社)を、Ab1のアイソタイプコントロールとして使用した。この抗体は、10ml/kgでIPによって、25mg/kgでIPによってコントロール動物に与えた。
【0116】
x-抗mPD-1 Mab(上記)はDPBS(Gibco社、Cat#14190-094)中で提供し、10mg/kg、5mg/kgでIPによって動物に与えた。
【0117】
研究デザイン
0日目、60匹の動物にMC38腫瘍細胞を移植した。移植後8日目に、平均腫瘍サイズ50~75mm3を有するマウスをプールし、無作為にコントロールおよび処置群に分けた(群あたり10匹のマウス)。上記の用量でのビヒクル(PBS、pH7.2)、抗HEL hlgG4、Ab1、および抗mPD-1 Mabによる処置は、9日目に開始し、12、15、18、21、および27日目に反復した。ビヒクルおよび抗HEL hlgG4処置した動物はコントロールとして使用した。マウスは毎日チェックし、臨床的に有害な反応を記録した。個々のマウスは、実験の終了まで週に3から4回計量した。
【0118】
マウスは、≧20%疾病率または体重減少が観察された場合、安楽死させた。腫瘍は、最終的な屠殺まで週2回カリパーによって測定した。腫瘍サイズがおよそ2000mm3に達した、または動物の健康上の問題があった(腫瘍の領域の20%が潰瘍化した)場合、動物は安楽死させ、死亡日を記録した。固体腫瘍体積は2方向腫瘍測定から見積もられ、以下の式:
腫瘍体積(mm3)=[長さ(mm)×幅2(mm2)]/2
に従って算出した。
【0119】
所与の日の群の退縮パーセントの中央値は、次いでこの日の群の各動物で算出した、個々の退縮パーセントの中央値を取ることによって得られた。算出の日は、退縮パーセントの中央値が群の活性の典型ではなかった場合を除いて、ΔT/ΔC(すなわち、処置群とコントロール群との間のベースラインからの腫瘍体積変化の中央値の比)が算出された日に決定された。この場合、退縮パーセントの中央値が最大であった場合、その日は最初の日によって決定された。腫瘍体積が処置の開始時の腫瘍体積の50%まで減少した場合、部分的(PR)として定義された。完全な退縮(CR)は、腫瘍体積が14mm3よりも小さいまたは記録されない場合に達成されたと考えられた。
【0120】
効能
主要効能エンドポイントは、ΔT/ΔC、退縮パーセントの中央値、部分退縮、および完全退縮によって示されるように、ベースラインからの腫瘍体積変化であった。各処置(T)およびコントロール(C)群の腫瘍体積における変化は、特定の観察日の腫瘍体積から最初の処置の日(病期分類日)の腫瘍体積を引く事によって毎日各動物について算出した。中央値ΔTは処置群について算出し、中央値ΔCはコントロール群について算出した。ΔT/ΔC比は、算出されパーセンテージとして表された。
ΔT/ΔC=(デルタT中央値/デルタC中央値)×100
【0121】
ΔT/ΔC比≦40%が治療的に活性であると考えられた。0%のΔT/ΔC比は腫瘍停滞として考えられた。ΔT/ΔC比<0%は腫瘍退縮として考えられた
【0122】
腫瘍退縮パーセントは、研究の開始時(t0)の腫瘍体積と比較した特定の観察日に処置群で減少した腫瘍体積のパーセンテージとして定義した。特定の時点(t)で、各動物に関して、退縮パーセントは以下の式:
退縮%(t)=[(容積t0-容積t)/容積t0]×100
を使用して算出した。
【0123】
所与の日の群の退縮パーセントの中央値は、次いで、群の各動物に関して算出した個々の退縮%値の中央値を取ることによって算出した。算出の日は、退縮パーセントの中央値が群の活性の典型ではない場合を除いて、ΔT/ΔCが算出された日によって決定された。この場合、退縮パーセントの中央値が最大であった場合、その日は最初の日によって決定された。
【0124】
統計分析
処置および日(反復)を因子とする二元配置分散分析を、ベースラインからの腫瘍体積変化に実施した。相互作用または処置効果が著しい処置*日の場合、多重性のボンフェローニ-ホルム相関による比較分析に続き、8~27日の各日で全ての処置群をコントロール群と比較した。ベースラインからの腫瘍体積変化は、各動物および各日について、特定した観察日の腫瘍体積から最初の処置日(8日目)の腫瘍体積を引くことによって算出した。
【0125】
群間で分散の不均一性が観察された場合、群による対称化合物(CS)共分散構造=オプションがANOVA型モデルのために選択された(SAS Institute Inc.(2008) SAS/STAT 9.2 User’s Guide by Cary NC)。
図5および6では、各群の中央値および中央値絶対偏差(MAD)を、処置の各日について示した。以下の表4~6では、各群の中央値およびノーマライズしたMAD(nMAD=1.4826
*MAD)を各測定日について報告した。全ての統計分析は、SASバージョンv9.2ソフトウェアを使用して実施した。5%より少ない(p<0.05)可能性は、重要とみなした。
【0126】
効能結果
腫瘍担持C57BL/6マウスの、Ab1、抗PD-1 Mab、または2つの組み合わせによる処置もまた、十分に忍容性であり、動物の通常の健康および活性ならびに体重の著しい変化の欠如によって示されるように非毒性であった。単一薬剤として、Ab1 25mg/kg Q3Dおよび抗PD-1 Mab 5mg/kg Q3Dは、それぞれ、最低3.4%(9日目)および2.1%(9日目)のみの体重減少値を引き起こした。Ab1(25mg/kg Q3D)と抗PD-1 Mab(5mg/kg Q3D)の組み合わせも、十分に忍容性であり、最低1.3%(9日目)の体重減少値を示した(表4)。
【0127】
単一薬剤として、Ab1(25mg/kg Q3D)および抗PD-1 Mab(5mg/kg Q3D)は、Ab1アイソタイプコントロール(抗HEL hlgG4)によって処置した動物と比較して、腫瘍増殖に撹乱を示さなかった。処置の27日目のΔT/ΔC比は、それぞれ93%および109%であった(表4)。抗PD-1 Mabと抗HEL hlgG4の組み合わせは、処置の27日目に31%のΔT/ΔCで最小の抗腫瘍活性を実証し(コントロール群と統計的に異ならない)、10匹のマウスのうち2匹のみで完全な退縮が観察された。しかしながら、抗PD-1 MabおよびAb1の組み合わせは、処置の27日目に-1 ΔT/ΔCで15日から27日までの優れた抗腫瘍活性を実証し(コントロール群と統計的に異なる)、10匹のマウスのうち6匹で完全な退縮が観察された(表4)。
【0128】
【0129】
表5および6ならびに
図5~7は、マウスモデルの腫瘍体積への単独または組み合わせの抗体の活性を示すさらなるデータを示す。
【0130】
【0131】
【0132】
表および図のデータは、Ab1 25mg/kg Q3Dとx-抗mPD-1 Mab
5mg/kg Q3Dとの組み合わせが、それらの用量でのいずれかの抗体よりも大きな抗腫瘍効果を有したことを示す。単一薬剤としてAb1との組み合わせと比較した場合、この差は統計的に著しく、19、23、および27日目のp値はそれぞれ0.0007、<0.0001、および<0.0001であった。単一薬剤としてx-抗mPD-1 Mabとの組み合わせと比較した場合、この差も統計的に著しく、19、23、および27日目のp値は0.0276、0.0004、および0.0024であった(表6)。抗HEL hlgG4 25mg/kg Q3Dとx-抗mPD-1 Mab 5mg/kg Q3Dとの組み合わせ群について、ベースラインからの腫瘍体積変化への処置効果は、測定の任意の日のいずれかの薬剤単独の効果とは著しく異ならなかった。
【0133】
要約すると、Ab1 25mg/kg Q3Dとx-抗mPD-1 Mab 5mg/kg Q3Dとの組み合わせは、15日目から27日目に単独で使用したいずれかの薬剤よりも著しく大きな抗腫瘍効果を有した。
【0134】
別の研究では、本発明者らは1、10、または25mg/kgの用量のAb1と5mg/kgの用量のマウスPD-1抗体との組み合わせの、C57BL/6Jマウスの皮下のMC38マウス大腸がんモデルに対する抗腫瘍活性を評価した。
指数関数的に増殖するMC38大腸腺癌細胞(NCl、Frederick、MD)は、5% CO2で加湿したインキュベータ―内で、10%FBSを補足したRPMI-1640中で培養し、次いで雌のC57/Bl6Jマウス(Jackson Laboratory、Bar Harbor、ME)のわき腹に皮下移植した(1×106個の細胞)。腫瘍が平均サイズ50~75mm3に達すると、マウスはプールされ、無作為にコントロール群と処置群とに分けた(群あたり10匹のマウス)。腫瘍担持マウスは、次いで、PBS、IgG4アイソタイプコントロール抗体(25mg/kg)、またはAb1(1、10、および25mg/kg)によって、各動物が全部で6~7回用量を受けるまで週に3回腹腔内に処置した。腫瘍は、デジタルキャリパーによって週に2回測定し、腫瘍体積を算出し(mm3=L×W×H)、GraphPad Prismを使用してグラフ化した。腫瘍が>2000mm3に成長した場合、または腫瘍が腫瘍表面の>20%の潰瘍形成を示した場合、マウスは研究の終了時にCO2によって安楽死させた。
【0135】
単一薬剤として、Ab1 25mg/kg Q3Dの用量およびマウスα-PD-1抗体5mg/kgの用量は、MC38腫瘍担持マウスにおいて、それぞれ2/8および4/8の完全退縮である部分活性を実証した。Ab1 1、10、または25mg/kg Q3Dとマウスα-PD-1抗体 5mg/kg Q3Dとの組み合わせは、治療的に活性であった。移植後24日目に、ベースラインからの腫瘍体積変化を比較する場合、試験した全ての用量のAb1とマウスα-PD-1抗体 5mg/kg Q3Dの組み合わせの効果は、Ab1 1、10、および25mg/kgそれぞれで5/8、6/8、および7/8完全退縮であり、各単一薬剤の効果よりも大きかった。表6Aは、結果の要約を提供する。
【0136】
【0137】
要約すると、これらの前臨床データは、PD-1阻害のTGF-β阻害との組み合わせが、チェックポイント阻害剤遮断のみよりも高度に腫瘍増殖を阻害できることを実証した。
【実施例6】
【0138】
腫瘍内TGF-β1レベル
腫瘍内TGF-β1レベルは、LoVo結腸直腸がんの皮下への異種移植片移植BALB/cマウスモデルにおいて研究した。マウスに、Ab1またはアイソタイプコントロールMab 10、25、または50mg/kgのいずれかを、腫瘍体積が100mm3より小さいときに開始して、全部で8回のIV投与で、3日毎に静脈内に注射した。
【0139】
2.8mmセラミックボール(MoBio 13114-50)と2mlプラスチックチューブ中、-80℃で保存した腫瘍サンプルは、室温で溶かした。1×Halt(商標)プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo 78440)を補足した、1ミリリットル(ml)のコールドのMeso Scale Diagnostic(MSD)Tris溶解緩衝液(R60TX-2)を組織に添加し、次いでPrecellys(登録商標)24 Dualホモジナイザー(Bertin Instruments社)を使用して、4℃で、それぞれ6500rpm、20秒で2サイクル、ホモ
ジナイズした。ライセートは、4℃のエッペンドルフ5417C 遠心分離機で、20,000×gで10分間遠心分離によって精製した。上澄み液を、きれいな冷やしたエッペンドルフチューブに移し、上記のようにさらに20分間遠心分離によってさらに精製した。その後、上澄み液をプラスチック96ウェル保管ブロックに移し、液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存した。
【0140】
次の日、サンプルは室温で溶かし、氷上に置いた。ライセートのタンパク質濃度は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Thermo 23225)を使用して、製造業者の指示に従って測定した。ライセートは、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含むMSD Tris溶解緩衝液(上記参照)を使用して、およそ8mg/mlのタンパク質濃度にノーマライズし、プラスチックマイクロチューブに分配した。
【0141】
ノーマライズした腫瘍ライセートのTGF-β1濃度は、電気化学発光アッセイを用いるヒトTGF-β1キット(MSD、K151IUC-2)を使用して、製造業者の指示に従って測定した。MSD溶解緩衝液中で段階希釈した組換えマウスTGF-β1(R&D Systems社、Cat.#7666-MB-005)をキャリブレータ―として使用した。サンプルは、プレート上に2回ロードした。電気化学発光シグナルはMESO
SECTOR S 600プレートリーダー(MSD)を使用して測定し、サンプル中のTGF-β1濃度はMSD Discovery Workbenchソフトウェアv4.0を使用して標準曲線に基づいて定量した。
【0142】
サンプル2回の平均濃度はソフトウェアによって算出した。「適合曲線範囲以下」または「検出範囲以下」とソフトウェアによって決定された濃度値はゼロ値で置き換えた。全タンパク質のmgあたりのTGF-β1濃度を算出するために、アッセイで測定した濃度(pg/ml)を、サンプルのタンパク質濃度(mg/ml)で割った。
【0143】
結果は、アイソタイプコントロールを注射したマウスでは、腫瘍内TGF-β1レベルは全タンパク質21.4pg/mgの中央値であったことを示し、Ab1を注射したマウスでは相当するレベルは検出できなかった(
図8)。
【0144】
上記の所見のヒトでの関連性を実証するため、上記の方法を使用して、上記のようにそれらの腫瘍内TGF-β1レベルに関して、本発明者らは10人のヒト結腸直腸腫瘍サンプルおよび10人のヒトメラノーマ腫瘍サンプルを試験した。ヒトCRCサンプルでは、TGF-β1レベルは約7から25pg/mgの範囲であった。ヒトメラノーマサンプルでは、TGF-β1レベルは約1pg/mlから高くても43pg/mlの範囲であった。これらのデータは、単独でまたは抗PD-1抗体のような他の免疫チェックポイント阻害剤と併せて、処置する腫瘍におけるAb1のような抗TGF-β1治療剤の使用をさらに支持する。
【実施例7】
【0145】
Ab1の薬物動態研究
この実施例は、Ab1の薬物動態(PK)プロファイル特徴づけした、およびそれをフレソリムマブのものと比較した研究を記載する。一研究では、カニューレ処置したスプラーグドーリーラットの5つの群に、単一用量のAb1またはフレソリムマブ5mg/kgを静脈内に与えた。各群は5匹の雌と5匹の雄であった。ラットからの血液を、投与後の0.25、6、24、48、72、144、192、および240時間で回収した。Ab1およびフレソリムマブ血清の濃度はELISAによって決定した。比較可能性は、(参照に対する試験物質の)AUC比の90%信頼区間が80%から125%の範囲内である場合に決定された。
【0146】
ラットの5つの群からの経時的な抗体血清濃度は
図9Aに示す。群2、4、および5(
図9Aの凡例参照)からのPKパラメーターは以下の表7に示す。この研究は、フレソリムマブよりもずっと長い半減期(7.1日対4.3日の平均T
1/2)およびより遅い排出速度(0.30ml/hr/kg対0.51ml/hr/kgのCL)で、Ab1が線形のPK挙動を示すことを示した。データは、Ab1がラットにおいてフレソリムマブよりも1.7倍高い暴露を有したことを示した。
【0147】
【0148】
Ab1(試験2)でのさらなるPK研究を、カニクイザルの群で実施した。各群は5匹の雌と5匹の雄であり、Ab1 1mg/kg(
図9B)または10mg/kg(
図9D)の単回用量、または投与あたりAb1 1mg/kg(
図9C)または10mg/kg(
図9E)の5回の毎週用量を静脈内注入によって与えた。サルにおけるAb1の経時的な血清濃度は、
図9B~Eに示す。先の研究で、単回または反復Q2W(隔週)用量でサルに与えたフレソリムマブの経時的な血清濃度も比較のため図に示した。これらのデータは、Ab1もサルで線形のPK挙動を示し、用量あたり1mg/kgおよび10mg/kg両方でのフレソリムマブよりも、単回または反復投与後に高い暴露を示すことを示した。10mg/kgの単回投与では、Ab1は13日の半減期を有し、一方フレソリムマブは4.5日の半減期を有した;Ab1は約0.40ml/hr/kgのCLを有し、一方フレソリムマブは0.66ml/hr/kgのCLを有した。ラットの研究と同様に、サルの研究も、Ab1はフレソリムマブよりも約1.7倍高い暴露を有することを示した。
【0149】
上記の研究は、Ab1が、フレソリムマブよりも統計的に著しく長い半減期、より長いクリアランス時間、およびin vivoでのより高い生物学的暴露を示すことを実証した。
【0150】
さらに、Ab12腫瘍担持Balb/Cマウスにおける研究は、Ab1が、静脈内または腹腔内のどちらで投与されても、類似のPKプロファイルを有したことを示した。
【0151】
2-コンパートメントモデルにおけるアロメトリックスケーリングを使用して、本発明者らは、サルのデータに基づいて70kgの男性で以下のPKパラメーターを予測した(表8):
【0152】
【0153】
Ab1の予測したPKパラメーターはまた、ヒトでのフレソリムマブのものよりもより好ましかった。例えば、ヒトで12.3ml/hr/kgのCLであるフレソリムマブは、Ab1よりも早いクリアランス速度を示した。
【実施例8】
【0154】
Ab1の毒性研究
Ab1の毒性研究をラットおよびカニクイザルで実施した。医薬品の安全性保証エンドポイントは、5週間毎週の反復用量のGLP(医薬品安全性試験判断基準)で評価した。サルでは最大10mg/kg/用量(濃度2mg/ml)およびラットでは最大30mg/kg/用量(濃度6mg/ml)の用量で、Ab1関連の病理組織学的所見は注射部位で見られなかった。神経学的な調査で試験した任意の用量レベルでのこの試験において、体温、呼吸数、血圧、およびECGパラメーターへのAb1関連の効果は記録されなかった。
【0155】
ラットのNOAEL(有害効果が観察されないレベル)は、5週間毎週の反復投与で3mg/kg/用量であると見出され、STD10(動物の10%に死または不可逆的な重篤な毒性を引き起こす重篤な毒性の用量)は、ラットで3から10mg/kg/投与の間であると見出された。毒性は、多発性肥厚小瘤によって特徴づけられる心臓弁拡大;ならびに混合細胞肺胞浸出液、混合細胞血管周囲浸潤、筋性動脈の肥大、出血、および/または肺重量増加のような異常な肺の状態を含んだ。
【0156】
NOAELおよびHNSTD(すなわち、それを超えると死亡、致死性の毒性または非可逆的な毒性が生じる最高非重篤毒性用量)用量は、サルでは5週間の毎週の反復投与は10mg/kg/投与であると見出された(比較すると、フレソリムマブのサルでのNOAELは、隔週で7もしくは13回投与、または4週間Q3Dで投与した場合、1mg/kgであると示された)。以下の表9に示したデータも参照。
【0157】
【0158】
上記の毒性データに基づき、Ab1は、毎週約0.05mg/kgから0.5mg/kg、または例えば隔週などより少ない頻度の投与量レベルでヒト患者に安全に投与されることが予期される。
【実施例9】
【0159】
抗TGF-β単独治療のin vivoでの効能
この研究では、本発明者らは、ヒトおよびマウスTGF-β1、2および3と交差反応する、1D11、マウスIgG1抗ウシTGF-β抗体の転移性同系腫瘍モデルへの効果を調べた。このモデルでは、B16-F10マウスメラノーマ細胞をIVによってC57BL/6マウスの足蹠に導入し、マウスの流入領域リンパ節に転移を形成した。コントロール抗体、13C4による処置は効果を示さないが、腫瘍接種の1日後に開始する週3回の1D11 50mg/kgによる処置は完全に転移を抑制した。
【0160】
免疫応答の役割を調査するため、β2ミクログロブリン遺伝子欠損であり、したがって、CD8+細胞傷害性T細胞応答を欠くマウスは、足蹠にB16-F10を移植され、上記のように処置された。免疫能のあるマウスで見られた結果と対照的に、1D11はこれらのマウスの流入領域リンパ節における転移の数に影響はなかった。これらの結果は、TGF-β阻害作用の機構は適応細胞性免疫によることを示唆している。
【実施例10】
【0161】
がんでのTGF-β特徴
先の研究は、抗PD-1治療に応答しないメラノーマ患者は、転写特徴IPRES(Hugo et al., Cell (2016) 165:35-44)を有することを示した。抗PD-1単独治療への自然抵抗性の機構を調べるため、本発明者らは、非応答者対応答者の転写特徴を研究した。本発明者らは、1Mプロファイルを超えるデータベースにGene Set Enrichment Analysesを使用するこれらのプロファイルの比較が、腫瘍において抗PD-1応答とTGF-βシグナル伝達の活性化との間の強い相関を明らかにしたことを見出した。これらのデータは、メラノーマのベースラインで、TGF-βが抗PD-1単独治療への自然耐性に関連することを示唆した。
【0162】
さらに、本発明者らは、抗PD-1応答とTGF-βシグナル伝達の活性化との間に相関があるだけでなく、その相関が強いことも見出した(R=0.59、t検定によるp値<9E-4)。したがって、本発明者らは、以下の、本発明者らのゲートウェイインディ
ケーション1に到達した:メラノーマ(例えば、転移性メラノーマ)におけるTGF-β媒介免疫抑制が自然耐性に寄与できる。さらに、本発明者らは、TGF-β誘導性の遺伝子発現変化は、1D11処置によってクエンチ可能であることを見出し、TGF-β活性化の特徴の特異性を確認した。これらの結果は、抗TGF-βと抗PD-1治療剤を組み合わせて使用し、抗PD-1単独治療に応答しないがん患者を処置する利点を支持した。
【0163】
メラノーマ以外にも、他の腫瘍型にわたるこの相関の分析は、間葉腫(例えば、CRC、HCC、頭頚部扁平上皮癌、および卵巣がん)も、TGF-β活性化および予測される抗PD-1耐性の両方がエンリッチされていたことを明らかにした。この所見は、EMTにおけるTGF-βシグナル伝達の役割と一致した。したがって、本発明者らは、以下の、本発明者らのゲートウェイインディケーション2に到達した:間葉腫、特に免疫浸潤を伴うものは、抗TGF-βおよび抗PD-1組み合わせ治療から恩恵を受ける。機械学習手法を使用して、30を超えるEMTマーカー遺伝子から間葉腫を選択するために使用される少数の遺伝子;例えば、ACTA2、VIM、MGP、ZEB2、およびZWINTを同定した。ACTA2およびVIMは、例えば腫瘍型にわたってトランスポータブルであることが見出された。したがって、TGF-β活性化の転写特徴および特徴内の遺伝子は、抗TGF-βおよび抗PD-1抗体組み合わせ治療のベースラインでがん患者選択の有用なバイオマーカーとして寄与し得る。
【0164】
腫瘍微小環境におけるバイオマーカーを研究するため、患者腫瘍の免疫構造を、CRCおよびメラノーマにおいて、MultiOmyx、マルチプレックスIHCアッセイを使用して評価した。多重化は、各腫瘍サンプルからの1つのFFPE切片において12個のバイオマーカーによって実施した(22個の免疫細胞型を合わせて説明する)。研究は、炎症の範囲を含み、分析がどの程度各腫瘍型を評価し、可能な処置効果に相関させるか評価した。統計的な方法が、細胞集団レベルでの違いを評価するために開発され、複製一致、分散の分析のための火山型序列、および相関行列を含む。MultiOmyxアッセイは、優れた技術的な再現性および正確さ、好適なダイナミックレンジ、選択免疫細胞および対象の領域における炎症状態の違いを実証し、細胞集団の間の陽性および陰性相関の両方を含んだ。
【実施例11】
【0165】
抗PD-1有りまたは無しでのAb1による処置後のMC38腫瘍におけるTGF-β1、MIP-2、およびKC/GROの変化
TGF-βの中和を実証するため、Ab1(抗PD-1有りまたは無し)の腫瘍におけるサイトカインの発現に影響を及ぼす能力を評価した。
【0166】
MC38腫瘍担持マウスは、腫瘍の容積が61から110mm3であった場合、PBSまたは抗PD-1(5mg/kg)いずれかのみの単回用量、または抗PD-1(5mg/kg)と組み合わせた漸増用量のAb1(10、25、または50mg/kg、i.p.)によって処置した。腫瘍は、処置後1時間、6時間、10時間、24時間、72時間、および168時間で回収し、2.8mmセラミックボール(Precyllys KT3961-1007.2)を含む2mlプラスチックチューブ内で急速冷凍し、-80℃で保存した。ライセートを調製するため、腫瘍は室温で溶かした。1×Halt(商標)プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤カクテル(Thermo78440)を補足したコールドのMeso Scale Diagnostics (MSD) Tris溶解緩衝液(R60TX-2) 1mLを組織に添加し、次いでPrecelly(登録商標)24Dualホモジナイザー(Bertin Instruments社)を使用して、4℃で、それぞれ6500rpm、20秒で2サイクル、ホモジナイズした。ライセートは、4℃のエッペンドルフ5417C遠心分離機で、20,000×gで10分間遠心分離によって精製した。上澄み液を、きれいな冷やしたエッペンドルフチューブに移し
、上記のようにさらに30分間遠心分離によってさらに精製した。上澄み液をプラスチック96ウェル保存ブロックに移し、氷上に置いた。ライセートのタンパク質濃度は、ビシンコニン酸(BCA)タンパク質アッセイキット(Thermo 23225)を使用して、製造業者の指示に従って測定した。ライセートは、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤を含むMSD Tris溶解緩衝液(上記参照)を使用して、およそ5mg/mlのタンパク質濃度にノーマライズし、プラスチックマイクロチューブに分配し、液体窒素で急速冷凍し、-80℃で保存した。
【0167】
腫瘍ライセートの活性化TGF-β1の濃度は、電気化学発光アッセイを用いるヒトTGF-β1キット(MSD、K151IUC-2)を使用して測定した。MSD溶解緩衝液中で段階希釈した組換えマウスTGF-β1(R&D Systems社、7666-MB-005)をキャリブレータ―として使用した。上記のように調製したノーマライズした腫瘍ライセートを溶かし、アッセイは製造業者の指示に従って実施した。潜在関連ペプチドと複合体を形成したTGFβ-1を含む全TGFβ-1よりも腫瘍に存在するTGFβ-1の活性型のみを定量するために、サンプルの酸処置は行わなかった。サンプルは、プレート上に2回ロードした。電気化学発光シグナルはMESO SECTOR S 600プレートリーダー(MSD)を使用して測定し、サンプル中のTGFβ-1濃度はMSD Discovery Workbenchソフトウェアv.4.0を使用して標準曲線に基づいて定量した。
【0168】
PBSまたは抗PD-1いずれかのみで処置した動物と比較して、抗PD-1(5mg/kg)と一緒に全ての投与レベル(10、25または50mg/kg)でAb1によって処置した動物は、腫瘍の活性化TGF-βレベルの減少を示し、in vivoでその標的とのAb1のエンゲージメントを実証した(
図10A)。活性TGF-β1の低下レベルは1時間以内に観察され、少なくとも168時間持続した。
【0169】
MIP-2(CXCL2)およびKC/GRO(CXCL1)は、好中球を含む顆粒球の走化性ケモカインである。MIP-2およびKC/GROのレベルは、これらの同じサンプルでも評価した。抗PD-1と一緒にAb1により処置した後、MIP-2の腫瘍内レベルは、PBSまたは抗PD-1いずれかのみで処置した動物のものと比較して抗PD-1と一緒にAb-1によって処置した動物において少なくとも4倍の増加を示し;MIP-2レベルの増加は少なくも168時間続くことが示された(
図10B)。同様に、KC/GROのレベルも増加することが示されたが、MIP-2のものと比較して72および168時間の遅い時点であった(
図10C)。したがって、Ab1と抗PD-1mAbの組み合わせは、MIP-2およびKC/GROのレベルの増加より早い活性TGF-β1のレベルの減少を誘導した。これらの結果は、Ab1が、腫瘍微小環境内でTGF-βのレベルを減少および阻害できることを実証した。さらに、MIP-2およびKC/GROレベルの観察された増加は、それらがTGF-βの中和によって影響されるサイトカインであり、したがってAb1によって処置した患者における利用可能性のあるバイオマーカーとして寄与できることを示した。
【実施例12】
【0170】
Ab1処置によるNK細胞クラスタリングの修復
TGF-βは、異なる免疫細胞型の活性を阻害することによって免疫システムに影響することが公知である。TGF-βは、ナチュラルキラー(NK)細胞活性およびNK細胞媒介ADCCを阻害することが報告されている(Trotta et al., Journal of immunology
(2008) 181:3784-3792)。NK細胞は、それらの活性を増強する機構として密なクラス
ターを形成し、これらの密に詰め込まれたクラスター内のIL-2の局在を介して活性化することが近年報告されている(Kim et al., Scientific Reports (2017) 7:40623)。
IL-2の存在下でin vitroでクラスター化した精製ヒトNK細胞は、これらの
密に詰め込まれたクラスターを形成することが示された。
【0171】
本研究では、本発明者らは、Ab1の非存在下または存在下でのNK細胞「クラスタリング」へのTGF-βの効果を評価した。NK細胞は、製造業者のプロトコールに従ってNK細胞RosetteSep試薬(Stem Cell Technologies社)によるネガティブセレクションによって健康なドナーの血液から新しく単離した。NK細胞は、丸底アッセイプレート(Costar社)で、Myelocult(Stem Cell Technologies社)を補足したIL-2(100IU/mL)中1.2×105個の細胞/ウェルで培養した。TGF-β1は、示した通り、無関係のIgG4またはAb1 100μg/mLのいずれかの存在下で、最終濃度0.1、1または10ng/mLで添加した。細胞は72時間培養し、NK細胞クラスタリングは、Nikon顕微鏡で画像を捕らえることによって可視化した。
【0172】
漸増用量のTGF-β1の添加は、NK細胞クラスタリングを阻害することを示した。IgG4コントロール抗体ではなくAb1を、NK細胞培養に添加した場合、NK細胞クラスターが発生することが示された。この結果は、TGF-β中和がNK細胞活性化に影響し、活性化の増加およびNK細胞の増殖をもたらし、免疫システムの抗腫瘍応答を支持することを実証した。
【実施例13】
【0173】
Ab1処置による増殖性CD8+T細胞におけるIFN-γ産生のTGF-β媒介抑制の復帰
自然免疫システムに加えて、TGF-βはCD8+T細胞の活性を阻害することが報告されている(Flavell et al., Nature Reviews Immunology (2010) 10:554-567)。CD
8+T細胞活性へのTGF-βおよびAb1の役割を探索するため、精製したヒトCD3+細胞がBLCL細胞と混合されたMLR(混合リンパ球反応)アッセイシステムが確立された。CD8+細胞増殖およびIFN-γ産生をまず、TGF-βの存在下で評価した。特に、CD3+細胞は、Ficoll勾配単離後に健常なドナーから分画したPBMCから、EasySep T Cell enrichment kit(StemCell Technologies社)を使用して単離した。CD3+細胞は、次いで、製造業者のプロトコールに従ってCellTrace Violet(ThermoFisher社)によって標識した。MLRアッセイは、10%FBSを補足したRPMI中で、標識したCD3+細胞(2×105個の細胞)を照射したBLCL細胞(Astarte
Bio)(2×104個の細胞;2分)と混合することによって実施した。示したように、TGF-β1、IgG4コントロール抗体および/またはAb1を培養物に添加し、培養物は4日間5%CO2、37℃でインキュベートした。細胞は、次いで、PMA細胞刺激カクテル(eBioscience社)およびタンパク質トランスポーター阻害剤カクテル(eBioscience社)の存在下で4時間刺激した。生細胞を、氷上でZombie NIR生存能色素(BioLegend)で染色することによって識別し、FACs緩衝液で洗浄した。細胞はTrue-Nuclear緩衝液(BioLegend社)で固定し、洗浄し、ペレット化し、FACs緩衝液中に再懸濁した。細胞は、BV650抗-huCD4、PERCP/Cy5.5 抗-huCD8、FITC抗-huCD3、およびPE抗-huIFNγ(BioLegend社)で染色することによってフローサイトメトリーのために調製した。フローサイトメトリーは、BD Cantoで実行し、結果はFlowJoソフトウェアで分析し、生細胞、単一、およびCD3+細胞をゲートした。IFNγ+CD8+T細胞のパーセンテージは、減少したCellTrace
Violet染色に基づくと増殖を経ており、INF-γ染色に陽性であるCD8+細胞をゲートすることによって定量した。FMOは、全ての抗体染色のコントロールとして実行した。
【0174】
MLRアッセイへのTGF-βの包含は、およそ4倍までIFN-γに陽性なCD8
+T細胞のパーセンテージを減少させることが示された(
図11A)。AbまたはコントロールAbの包含は、TGFβの非存在下で、これらのINFγ
+増殖CD8+細胞の発生に効果を示さなかった(
図11B)。しかしながら、コントロール抗体ではなくAb1の含有は、用量依存的な方法でIFNγ
+CD8
+細胞の増殖を回復することができる。これらの結果は、TGF-β中和が、INF-γを発現するエフェクターCD8
+細胞の増殖へのTGF-βの免疫抑制効果を遮断することによって、獲得免疫システムに影響することができることを実証した。これらのINFγ
+CD8
+T細胞が、抗腫瘍免疫に重要な役割を果たすことが示唆された(Ikeda et al., Cytokine Growth Factor Rev (2002) 13:95-109)。
【実施例14】
【0175】
抗TGF-β治療への同系マウスモデルの応答
この研究では、本発明者らは、どの同系マウスモデルが、抗TGF-β抗体Ab1および抗PD-1による処置への応答を予測するために使用できるかを調べた。マウスモデルを階級化するため、本発明者らは、マウスでの腫瘍へのCD8
+T細胞浸潤およびTGF-β経路活性化を評価した。CD8
+T細胞浸潤は、RNASeqから得たデータからCD8
+T細胞特徴に基づきアッセイした。いくつかの適応症(
図12Aおよび12BのX軸の下に示した)から生じる腫瘍細胞を有する17の異なるマウス同系モデルは、全トランスクリプトームRNAseqを使用して転写的にプロファイルした。この同系モデルの「一覧」は、モデルあたり使用した5から7の生物学的複製物により、共通のバックグラウンド株C57/BL6で構築された。Illumina2000シーケンス後、100万リードあたりの転写物(TPM)で発現される遺伝子発現プロファイルをSTARアライナーおよびCufflinks転写物推定量を使用して、生シーケンスリードの標準的な処理によって生成した。生じる複数サンプルデータマトリックスは、最終的にクオンタイル正規化した。
【0176】
図12Aは、一覧にわたるCD8
+T細胞の相対的存在量を示す(log2変換)。相対的なCD8
+T細胞存在量は、CD8T細胞の存在の高度に特異的なインジケーターであることが示されている、特有のマーカー遺伝子CD8Bを使用して推定した(Becht et
al., Curr Opin Immunol (2016) 39:7-13; and Becht et al., Genome Biol (2016) 17:218)。各箱ひげ図は、生物学的複製物にわたる値の範囲を要約する。MC38モデルは
、EMT6モデルよりも約2倍多いCD8
+T細胞浸潤を示した(それぞれ左および右の箱)。A20およびEL4リンパ腫モデルは、それぞれ全体で最高および最低レベルのCD8
+T細胞浸潤を示し、EL4でのCD8
+T細胞は無視できる。
【0177】
MC38、MC38.ova、CT26、およびL1210マウス細胞系は、最高レベ
ルのCD8遺伝子特徴を示した。さらに、EMT-6乳がん細胞系は、ベースラインに近いT細胞浸潤を示すことが示され、これは、EMT6腫瘍が免疫排除表現型を有するという近年の報告と一致している(S. Mariathasan et al. 2017, ESMO Immuno-Oncology Congress, Geneva, Geneva Switzerland)。
【0178】
図12Bは、一覧にわたるTGF-β経路活性化を示す。TGFβによるMCF7細胞のin vitro刺激に由来し、いくつかの他のTGF-β特徴での比較によって確認された、TGF-β経路活性化の170個の遺伝子の転写の特徴を使用して、一覧の各プロファイルに経路活性化スコアを割り当てた。スコアは、「制御遺伝子セットエンリッチメント分析」(rGSEA, Theilhaber et al. 2014)を使用して計算し、遺伝子バックグラ
ウンドに対する特徴遺伝子のエンリッチメントをlog2として表した。MC38モデルは平均の活性化を示したが、EMT6モデルは非常に高いTGF-β経路活性化を示した(それぞれ、左および右の箱)。
【実施例15】
【0179】
マウス乳がんモデルへのAb1および抗PD1抗体組み合わせの効果
この研究では、本発明者らは、抗PD-1有りまたは無しでのAb1の治療効果を調べた。指数関数的に増殖するEMT-6乳房細胞(CRL-2755、ATCC)を、5%CO2で加湿したインキュベータ内で、10%FBSを補足したRPMI-1640中で培養し、次いで雌のBALB/cマウス(Shanghai Lingchang Bio-Technology Co. Ltd、Shanghai、China)のわき腹に皮下移植した(0.5×106個の細胞/マウス)。腫瘍が平均サイズ68~116mm3に達すると、マウスはプールされ、無作為にコントロールと処置群に分けた(群あたり10匹のマウス)。腫瘍担持マウスは、次いで、PBS、Ab1(10および25mg/kg)によって、各動物に、全部で6回用量のため週に3回腹腔内に処置した。腫瘍は、デジタルキャリパーによって週に2回測定し、腫瘍体積を算出し(mm3=L×W×H)、Graph Pad Prismを使用してグラフ化した。腫瘍が>3000mm3に成長した場合、または腫瘍が腫瘍表面の>20%の潰瘍形成を示した場合、マウスは研究の終了時にCO2によって安楽死させた。
【0180】
単一薬剤として、10または25mg/kg Q3Dの用量のAb1および5mg/kgの用量のマウスα-PD-1抗体は、EMT-6腫瘍担持マウスにおいて、それぞれ1/10、2/10および2/10の完全退縮である部分活性を実証した。10または25mg/kg Q3Dの用量のAb1と5mg/kg Q3Dのマウスα-PD-1抗体の組み合わせは、治療的に活性であった。移植後31日目に、ベースラインからの腫瘍体積変化を比較する場合、試験した全ての用量のAb1と5mg/kg Q3Dのマウスα-PD-1抗体の組み合わせの効果は、Ab1 10および25mg/kgそれぞれで7/10および4/10の完全退縮であり、各単一薬剤の効果よりも大きかった。表10は、結果の要約である。
【0181】
【0182】
本明細書で他に記載しない限り、本発明に関係して使用した科学および技術用語は当業者に共通に理解される意味を有する。例示的な方法および材料は以下に記載したが、本明
細書に記載のものと類似のまたは等しい方法および材料も本発明の実施または試験に使用される。本明細書に記載の全ての文献および他の参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。抵触する場合には、定義を含む本明細書が制御する。多くの文章が本明細書に引用されるが、この引用は、これらの文章のいずれかが当技術分野の共通の一般的知識の一部を形成することを認めない。さらに、文脈によって他に要求されない限り、単数形は複数形を含み、複数形用語は単数も含む。一般に、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、有機合成化学、医薬品および薬学的化学、ならびにタンパク質および核酸化学、ならびにハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法およびその技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように、製造業者の指示に従って実施した。この明細書および実施形態を通して、単語「有する(have)」および「含む(comprise)」、または「has」、「having」、「comprises」または「comprising」のような変化形は、言及した整数または整数の群の包含を意味するが、任意の他の整数または整数の群を除外しないと理解される。
【0183】
本明細書に記載の配列を以下に列挙する。
【0184】
〔配列表〕
配列番号1(Ab1重鎖)
QVQLVQSGAE VKKPGSSVKV SCKASGYTFS SNVISWVRQA PGQGLEWMGG VIPIVDIANY
AQRFKGRVTI TADESTSTTY MELSSLRSED TAVYYCASTL GLVLDAMDYW GQGTLVTVSS
ASTKGPSVFP LAPCSRSTSE STAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS
GLYSLSSVVT VPSSSLGTKT YTCNVDHKPS NTKVDKRVES KYGPPCPPCP APEFLGGPSV
FLFPPKPKDT LMISRTPEVT CVVVDVSQED PEVQFNWYVD GVEVHNAKTK PREEQFNSTY
RVVSVLTVLH QDWLNGKEYK CKVSNKGLPS SIEKTISKAK GQPREPQVYT LPPSQEEMTK
NQVSLTCLVK GFYPSDIAVE WESNGQPENN YKTTPPVLDS DGSFFLYSRL TVDKSRWQEG
NVFSCSVMHE ALHNHYTQKS LSLSLGK
配列番号2(Ab1軽鎖)
ETVLTQSPGT LSLSPGERAT LSCRASQSLG SSYLAWYQQK PGQAPRLLIY GASSRAPGIP
DRFSGSGSGT DFTLTISRLE PEDFAVYYCQ QYADSPITFG QGTRLEIKRT VAAPSVFIFP
PSDEQLKSGT ASVVCLLNNF YPREAKVQWK VDNALQSGNS QESVTEQDSK DSTYSLSSTL
TLSKADYEKH KVYACEVTHQ GLSSPVTKSF NRGEC
配列番号3(リーダー配列-1~19残基を含む、フレソリムマブ重鎖)
MGWSCIILFL VATATGVHSQ VQLVQSGAEV KKPGSSVKVS CKASGYTFSS NVISWVRQAP
GQGLEWMGGV IPIVDIANYA QRFKGRVTIT ADESTSTTYM ELSSLRSEDT AVYYCASTLG
LVLDAMDYWG QGTLVTVSSA STKGPSVFPL APCSRSTSES TAALGCLVKD YFPEPVTVSW
NSGALTSGVH TFPAVLQSSG LYSLSSVVTV PSSSLGTKTY TCNVDHKPSN TKVDKRVESK
YGPPCPSCPA PEFLGGPSVF LFPPKPKDTL MISRTPEVTC VVVDVSQEDP EVQFNWYVDG
VEVHNAKTKP REEQFNSTYR VVSVLTVLHQ DWLNGKEYKC KVSNKGLPSS IEKTISKAKG
QPREPQVYTL PPSQEEMTKN QVSLTCLVKG FYPSDIAVEW ESNGQPENNY KTTPPVLDSD
GSFFLYSRLT VDKSRWQEGN VFSCSVMHEA LHNHYTQKSL SLSLGK
配列番号4(リーダー配列-1~19残基を含む、フレソリムマブ軽鎖)
MGWSCIILFL VATATGVHSE TVLTQSPGTL SLSPGERATL SCRASQSLGS SYLAWYQQKP
GQAPRLLIYG ASSRAPGIPD RFSGSGSGTD FTLTISRLEP EDFAVYYCQQ YADSPITFGQ
GTRLEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ
ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
配列番号5(抗PD-1Mab重鎖)
EVQLLESGGV LVQPGGSLRL SCAASGFTFS NFGMTWVRQA PGKGLEWVSG ISGGGRDTYF
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLKGED TAVYYCVKWG NIYFDYWGQG TLVTVSSAST
KGPSVFPLAP CSRSTSESTA ALGCLVKDYF PEPVTVSWNS GALTSGVHTF PAVLQSSGLY
SLSSVVTVPS SSLGTKTYTC NVDHKPSNTK VDKRVESKYG PPCPPCPAPE FLGGPSVFLF
PPKPKDTLMI SRTPEVTCVV VDVSQEDPEV QFNWYVDGVE VHNAKTKPRE EQFNSTYRVV
SVLTVLHQDW LNGKEYKCKV SNKGLPSSIE KTISKAKGQP REPQVYTLPP SQEEMTKNQV
SLTCLVKGFY PSDIAVEWES NGQPENNYKT TPPVLDSDGS FFLYSRLTVD KSRWQEGNVF
SCSVMHEALH NHYTQKSLSL SLGK
配列番号6(抗PD-1Mab軽鎖)
DIQMTQSPSS LSASVGDSIT ITCRASLSIN TFLNWYQQKP GKAPNLLIYA ASSLHGGVPS
RFSGSGSGTD FTLTIRTLQP EDFATYYCQQ SSNTPFTFGP GTVVDFRRTV AAPSVFIFPP
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
配列番号7(x-抗mPD-1Mab重鎖)
EVQLQESGPG LVKPSQSLSL TCSVTGYSIT SSYRWNWIRK FPGNRLEWMG YINSAGISNY
NPSLKRRISI TRDTSKNQFF LQVNSVTTED AATYYCARSD NMGTTPFTYW GQGTLVTVSS
AKTTPPSVYP LAPGSAAQTN SMVTLGCLVK GYFPEPVTVT WNSGSLSSGV HTFPAVLQSD
LYTLSSSVTV PSSTWPSETV TCNVAHPASS TKVDKKIVPR DCGCKPCICT VPEVSSVFIF
PPKPKDVLTI TLTPKVTCVV VDISKDDPEV QFSWFVDDVE VHTAQTQPRE EQFNSTFRSV
SELPIMHQDW LNGKEFKCRV NSAAFPAPIE KTISKTKGRP KAPQVYTIPP PKEQMAKDKV
SLTCMITDFF PEDITVEWQW NGQPAENYKN TQPIMDTDGS YFVYSKLNVQ KSNWEAGNTF
TCSVLHEGLH NHHTEKSLSH SPG
配列番号8(x-抗mPD-1Mab軽鎖)
DIVMTQGTLP NPVPSGESVS ITCRSSKSLL YSDGKTYLNW YLQRPGQSPQ LLIYWMSTRA
SGVSDRFSGS GSGTDFTLKI SGVEAEDVGI YYCQQGLEFP TFGGGTKLEL KRADAAPTVS
IFPPSTEQLA TGGASVVCLM NNFYPRDISV KWKIDGTERR DGVLDSVTDQ DSKDSTYSMS
STLSLTKADY ESHNLYTCEV VHKTSSSPVV KSFNRNEC
配列番号9(1D11重鎖)
HVQLQQSGPE LVRPGASVKL SCKASGYIFI TYWMNWVKQR PGQGLEWIGQ IFPASGSTNY
NEMFEGKATL TVDTSSSTAY MQLSSLTSED SAVYYCARGD GNYALDAMDY WGQGTSVTVS
SAKTTPPSVY PLAPGSAAQT NSMVTLGCLV KGYFPEPVTV TWNSGSLSSG VHTFPAVLQS
DLYTLSSSVT VPSSTWPSQT VTCNVAHPAS STKVDKKIVP RDCGCKPCIC TVPEVSSVFI
FPPKPKDVLT ITLTPKVTCV VVDISKDDPE VQFSWFVDDV EVHTAQTKPR EEQFNSTFRS
VSELPIMHQD WLNGKEFKCR VNSAAFPAPI EKTISKTKGR PKAPQVYTIP PPKEQMAKDK
VSLTCMITDF FPEDITVEWQ WNGQPAENYK NTQPIMDTDG SYFVYSKLNV QKSNWEAGNT
FTCSVLHEGL HNHHTEKSLS HSPGK
配列番号10(1D11軽鎖)
NIVLTQSPAS LAVSLGQRAT ISCRASESVD SYGNSFMHWY QQKSGQPPKL LIYLASNLES
GVPARFSGSG SRTDFTLTID PVEADDAATY YCQQNNEDPL TFGAGTKLEL KRADAAPTVS
IFPPSSEQLT SGGASVVCFL NNFYPKDINV KWKIDGSERQ NGVLNSWTDQ DSKDSTYSMS
STLTLTKDEY ERHNSYTCEA THKTSTSPIV KSFNRNEC
【配列表】