(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240104BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
(21)【出願番号】P 2019205236
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 敏行
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-177430(JP,A)
【文献】特開平11-260771(JP,A)
【文献】特開平11-302878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0054274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にデバイスが形成されたウェーハの加工方法であって、
表面側に保護部材が貼着された第1のウェーハの裏面全面を平坦に研削した後、第1のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第1のウェーハの裏面全面をエッチングし、研削で形成された研削歪みを除去する第1エッチングステップと、
該第1エッチングステップのエッチングレートの面内ばらつきで発生する、外周縁に向かって第1のウェーハが薄くなる第1のウェーハの裏面側の傾斜面の、幅と高低差とを測定する傾斜面測定ステップと、
第1のウェーハで測定した該傾斜面の該幅と該高低差とに対応して、
該第1のウェーハとは別でかつ製品として用いられるチップに分割される第2のウェーハについて、エッチング前の第2のウェーハの裏面に形成する、外周縁に向かって第2のウェーハが厚くなる逆傾斜面の幅と高低差とを設定する逆傾斜面設定ステップと、
表面側に保護部材が貼着された第2のウェーハの裏面を研削し、第2のウェーハの裏面の外周縁に沿って該逆傾斜面を形成するとともに該逆傾斜面に囲まれた領域を所定の厚さに薄くする変則研削ステップと、
該変則研削ステップ実施後、第2のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第2のウェーハの裏面全面をエッチングし、該変則研削ステップで形成された研削歪みを除去しつつ裏面全面を平坦にする第2エッチングステップと、
を備えるウェーハの加工方法。
【請求項2】
前記第1エッチングステップでは、表面側に保護部材が貼着された第1のウェーハの表面側を保持面で保持する保持テーブルと、下面に研削砥石が装着され該保持面に直交する回転軸で回転する研削ホイールと、を該保持面に沿う水平方向に相対的に移動させることによって、第1のウェーハの裏面全面を該研削砥石で平坦に研削した後、第1のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第1のウェーハの裏面全面をエッチングし、研削で形成された研削歪みを除去し、
前記変則研削ステップでは、表面側に保護部材が貼着された第2のウェーハの表面側を保持面で保持する保持テーブルと、下面に研削砥石が装着され該保持面に直交する回転軸で回転する研削ホイールと、を該逆傾斜面に沿って相対的に移動させることによって、第2のウェーハの裏面を該研削砥石で研削して外周縁に沿う該逆傾斜面を形成するとともに、該保持テーブルと該研削ホイールとを該保持面に沿う水平方向に相対的に移動させることによって、該逆傾斜面に囲まれた領域を所定の厚さに薄く研削する、
請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該第2エッチングステップ実施後に、第2のウェーハの裏面全面にプラズマ化した不活性ガスのイオンを供給して歪み層を形成する歪み層形成ステップを備える
請求項1
または2に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の軽薄短小化に伴って、より薄く形成されることが求められている半導体デバイスチップは、従来では、半導体デバイスが形成されたウェーハを研削砥石で研削することで薄化形成されていた。ウェーハの研削加工では、ウェーハが薄くなると研削による破砕層の割合が増加して、チップの抗折強度が下がってしまう。これに対し、破砕層をプラズマエッチングで除去し抗折強度を向上させる技術が考案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-257186号公報
【文献】特開2018-074775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のプラズマエッチングでは、ウェーハの外周に電荷が集中しやすいため、外周に沿った領域、例えば外周20~30mmの幅で、外周縁に向かって徐々に薄くなる傾斜面が形成されてしまう。これにより、外周に厚さが5~15μm程薄い領域を有するチップが形成されてしまう問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プラズマエッチングで破砕層を除去した際の厚さばらつきを抑制することができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、表面にデバイスが形成されたウェーハの加工方法であって、表面側に保護部材が貼着された第1のウェーハの裏面全面を平坦に研削した後、第1のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第1のウェーハの裏面全面をエッチングし、研削で形成された研削歪みを除去する第1エッチングステップと、該第1エッチングステップのエッチングレートの面内ばらつきで発生する、外周縁に向かって第1のウェーハが薄くなる第1のウェーハの裏面側の傾斜面の、幅と高低差とを測定する傾斜面測定ステップと、第1のウェーハで測定した該傾斜面の該幅と該高低差とに対応して、該第1のウェーハとは別でかつ製品として用いられるチップに分割される第2のウェーハについて、エッチング前の第2のウェーハの裏面に形成する、外周縁に向かって第2のウェーハが厚くなる逆傾斜面の幅と高低差とを設定する逆傾斜面設定ステップと、表面側に保護部材が貼着された第2のウェーハの裏面を研削し、第2のウェーハの裏面の外周縁に沿って該逆傾斜面を形成するとともに該逆傾斜面に囲まれた領域を所定の厚さに薄くする変則研削ステップと、該変則研削ステップ実施後、第2のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第2のウェーハの裏面全面をエッチングし、該変則研削ステップで形成された研削歪みを除去しつつ裏面全面を平坦にする第2エッチングステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のウェーハの加工方法において、前記第1エッチングステップでは、表面側に保護部材が貼着された第1のウェーハの表面側を保持面で保持する保持テーブルと、下面に研削砥石が装着され該保持面に直交する回転軸で回転する研削ホイールと、を該保持面に沿う水平方向に相対的に移動させることによって、第1のウェーハの裏面全面を該研削砥石で平坦に研削した後、第1のウェーハの裏面にプラズマ状態のガスを供給して第1のウェーハの裏面全面をエッチングし、研削で形成された研削歪みを除去し、前記変則研削ステップでは、表面側に保護部材が貼着された第2のウェーハの表面側を保持面で保持する保持テーブルと、下面に研削砥石が装着され該保持面に直交する回転軸で回転する研削ホイールと、を該逆傾斜面に沿って相対的に移動させることによって、第2のウェーハの裏面を該研削砥石で研削して外周縁に沿う該逆傾斜面を形成するとともに、該保持テーブルと該研削ホイールとを該保持面に沿う水平方向に相対的に移動させることによって、該逆傾斜面に囲まれた領域を所定の厚さに薄く研削することが好ましい。また、該第2エッチングステップ実施後に、第2のウェーハの裏面全面にプラズマ化した不活性ガスのイオンを供給して歪み層を形成する歪み層形成ステップを備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、プラズマエッチングで破砕層を除去した際の厚さばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示された研削ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図3の研削ステップ後の一状態を示す第1のウェーハの要部の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示された第1エッチングステップの一例を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の第1エッチングステップ後の一状態を示す第1のウェーハの要部の断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示された変則研削ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図7の変則研削ステップ後の一状態を示す第2のウェーハの要部の断面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示された第2エッチングステップの一例を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図9の第2エッチングステップ後の一状態を示す第2のウェーハの要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係るウェーハ10の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態の加工対象のウェーハ10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係るウェーハ10の加工方法の加工対象のウェーハ10の一例を示す斜視図である。
【0012】
図1に示すように、ウェーハ10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。ウェーハ10は、基板11の表面12に形成される複数のストリート13(分割予定ライン)と、格子状に交差する複数のストリート13によって区画された各領域に形成されるデバイス14とを有する。デバイス14が形成された表面12と反対側に位置する基板11の面を裏面15とする。ウェーハ10は、ストリート13に沿って分割されることによって、チップ16になる。
【0013】
保護部材30は、ガラス基板、ウェーハ10を構成するデバイス14が形成されない基板11等の円板体、または保護テープである。保護部材30は、ウェーハ10と同径の円板状に形成される。保護部材30は、一方の面を貼着面31として、ウェーハ10の表面12に貼着される。保護部材30は、後述の研削ユニット40によってウェーハ10の裏面15側を研削する際等に、後述のチャックテーブル45等に保持されるウェーハ10の表面12側のデバイス14を異物の付着や接触による損傷から保護する。
【0014】
次に、実施形態に係るウェーハ10の加工方法を説明する。
図2は、実施形態に係るウェーハ10の加工方法の流れを示すフローチャートである。ウェーハ10の加工方法は、研削ステップST1と、第1エッチングステップST2と、傾斜面測定ステップST3と、逆傾斜面設定ステップST4と、変則研削ステップST5と、第2エッチングステップST6と、歪み層形成ステップST7と、を含む。
【0015】
なお、以下、第1エッチングステップST2においてエッチングするウェーハ10を第1のウェーハ10-1とし、第2エッチングステップST6においてエッチングするウェーハ10を第2のウェーハ10-2として記載する。第1のウェーハ10-1は、第2のウェーハ10-2の特に変則研削ステップST5の加工条件を求めるために加工されるものであって、製品として用いられるチップ16として製造されるためのものではない。第2のウェーハ10-2は、第1のウェーハ10-1の加工結果から得られた加工条件により加工されるものであって、量産される製品として用いられるチップ16に分割されるものである。
【0016】
(研削ステップST1)
図3は、
図2に示された研削ステップST1の一例を一部断面で示す側面図である。
図4は、
図3の研削ステップST1後の一状態を示す第1のウェーハ10-1の要部の断面図である。
図3および
図4に示すように、研削ステップST1は、表面12側に保護部材30が貼着された第1のウェーハ10-1の裏面15全面を平坦に研削するステップである。
【0017】
研削ステップST1では、研削ユニット40によって、回転自在な保持テーブル50に保持された第1のウェーハ10-1の裏面15全面を研削する。研削ユニット40は、回転軸となるスピンドルの下端に取り付けられた研削ホイール41と、研削ホイール41の下面に円周状に配置されて装着される研削砥石42と、を備える。研削ホイール41は、保持テーブル50の保持面51に対して直交する(または保持テーブル50の軸心と平行な)回転軸で回転する。
【0018】
研削ステップST1では、まず、
図3に示すように、保持テーブル50の保持面51に、保護部材30を介して第1のウェーハ10-1の表面12側を吸引保持する。研削ステップST1では、次に、保持テーブル50を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール41を軸心回りに回転させる。研削ステップST1では、次に、加工液供給ユニット43から、第1のウェーハ10-1の裏面15および研削砥石42への加工液44の供給を開始する。
【0019】
研削ステップST1では、第1のウェーハ10-1の裏面15および研削砥石42への加工液44を供給しつつ、研削ホイール41を下降させて、回転する研削砥石42を、保持テーブル50上で回転する第1のウェーハ10-1の裏面15に接触させる。この際、研削ユニット40の制御装置またはオペレータは、研削ホイール41の研削砥石42で、ウェーハ10の裏面15の全域に接触させ研削するように、研削砥石42または保持テーブル50の位置を制御する。研削ステップST1では、保持テーブル50と研削ホイール41との水平方向の相対的な位置を変化させない。すなわち、保持テーブル50と研削ホイール41とは、水平方向の相対的な位置が維持される。これにより、第1のウェーハ10-1は、裏面15全面が所定の厚さに研削され、裏面15が平坦に形成される。研削された第1のウェーハ10-1は、
図4に示すように、研削面である裏面15側に、凹凸やクラック等の研削歪みの層である破砕層18が形成される。
【0020】
(第1エッチングステップST2)
図5は、
図2に示された第1エッチングステップST2の一例を模式的に示す断面図である。
図6は、
図5の第1エッチングステップST2後の一状態を示す第1のウェーハ10-1の要部の断面図である。
図5および
図6に示すように、第1エッチングステップST2は、第1のウェーハ10-1の裏面15にプラズマ状態のガス60を供給して第1のウェーハ10-1の裏面15全面をエッチングし、研削ステップST1で形成された研削歪みの層である破砕層18を除去するステップである。
【0021】
実施形態の第1エッチングステップST2では、プラズマ状態のガス60を供給するプラズマ装置によって、第1のウェーハ10-1の裏面15側の破砕層18を除去する。ガス60は、反応性の高い気体である。ガス60は、基板11がシリコンで構成される場合、例えば、六フッ化硫黄(SF6)、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)または四フッ化炭素(CF4)等であるが、本発明では、これらに限定されない。プラズマ装置は、例えば、静電チャック(Electrostatic chuck:ESC)と、静電チャックを内設するチャンバと、チャンバ内を減圧する排気装置と、チャンバ内にプラズマ状態のガス60を供給するガス供給装置と、を備える。チャンバは、ガス供給装置から供給されるプラズマ状態のガス60をチャンバ内に噴射するガス供給部を、静電チャックの上方に備える。
【0022】
第1エッチングステップST2では、まず、保護部材30を介して第1のウェーハ10-1の表面12側を静電チャックに静電保持する。第1エッチングステップST2では、次に、チャンバ内を減圧させると共に、チャンバ内にプラズマ状態のガス60を供給する。この際、プラズマ状態のガス60は、第1のウェーハ10-1の裏面15側に供給されて、第1のウェーハ10-1の裏面15全面をエッチングする。プラズマ状態のガス60は、第1のウェーハ10-1の裏面15全面を表面12側に向かってエッチングし、破砕層18を除去する。第1エッチングステップST2では、
図6に示すように、エッチングレートの面内ばらつきによって、第1のウェーハ10-1の裏面15側に、外周縁17に向かって薄くなる傾斜面19が形成される。
【0023】
(傾斜面測定ステップST3)
傾斜面測定ステップST3は、第1エッチングステップST2のエッチングレートの面内ばらつきで発生した、第1のウェーハ10-1の裏面15側の傾斜面19の、
図6に示す幅Wと高低差Hとを測定するステップである。傾斜面19の幅W(例えば約20mm)は、第1のウェーハ10-1の径方向における中心側端部と外周縁17との水平方向の距離である。傾斜面19の高低差H(例えば約10μm)は、第1のウェーハ10-1の裏面15の傾斜面19に囲まれた領域と外周縁17との厚み方向の距離である。傾斜面測定ステップST3での傾斜面19の幅Wおよび高低差Hの測定方法は特に限定されない。
【0024】
(逆傾斜面設定ステップST4)
逆傾斜面設定ステップST4は、傾斜面測定ステップST3で測定した傾斜面19の幅Wと高低差Hとに対応して、エッチング前の第2のウェーハ10-2の裏面15に形成する、外周縁17に向かって厚くなる逆傾斜面20の幅Wと高低差Hとを設定するステップである(
図8参照)。すなわち、逆傾斜面設定ステップST4では、変則研削ステップST5において形成する逆傾斜面20の幅Wと高低差Hとを設定する。逆傾斜面設定ステップST4で設定する逆傾斜面20の幅Wおよび高低差Hは、傾斜面測定ステップST3で測定した第1のウェーハ10-1の傾斜面19の幅Wおよび高低差Hに等しい。すなわち、第2のウェーハ10-2は、傾斜面測定ステップST3で測定された第1のウェーハ10-1の加工結果である傾斜面19の幅Wおよび高低差Hから得られ、かつ逆傾斜面設定ステップST4で設定された加工条件である逆傾斜面20の幅Wおよび高低差Hにより加工されるものである。
【0025】
(変則研削ステップST5)
図7は、
図2に示された変則研削ステップST5の一例を一部断面で示す側面図である。
図8は、
図7の変則研削ステップST5後の一状態を示す第2のウェーハ10-2の要部の断面図である。
図7および
図8に示すように、変則研削ステップST5は、表面12側に保護部材30が貼着された第2のウェーハ10-2の裏面15を研削し、外周縁17に沿って逆傾斜面20を形成するとともに逆傾斜面20に囲まれた領域を所定の厚さに薄くするステップである。
【0026】
変則研削ステップST5では、研削ユニット70によって、回転自在な保持テーブル80に保持された第2のウェーハ10-2の裏面15を研削する。研削ユニット70は、回転軸となるスピンドルの下端に取り付けられた研削ホイール71と、研削ホイール71の下面に装着される研削砥石72と、を備える。研削ホイール71は、保持テーブル80の保持面81に対して直交する(または保持テーブル80の軸心と平行な)回転軸で回転する。研削ユニット70のスピンドルは、研削ステップST1で用いた研削ユニット40のスピンドルと同じものでもよいし、別のものでもよい。また、保持テーブル80は、研削ステップST1で用いた保持テーブル50と同じものでもよいし、別のものでもよい。
【0027】
変則研削ステップST5では、まず、
図7に示すように、保持テーブル80の保持面81に、保護部材30を介して第2のウェーハ10-2の表面12側を吸引保持する。変則研削ステップST5では、次に、保持テーブル80を軸心回りに回転させた状態で、研削ホイール71を軸心回りに回転させる。変則研削ステップST5では、次に、加工液供給ユニット73から、第2のウェーハ10-2の裏面15および研削砥石72への加工液74の供給を開始する。
【0028】
変則研削ステップST5では、第2のウェーハ10-2の裏面15および研削砥石72への加工液74を供給しつつ、研削ホイール71を下降させて、回転する研削砥石72を、保持テーブル80上で回転する第2のウェーハ10-2の裏面15に接触させる。この際、研削ユニット70の制御装置またはオペレータは、逆傾斜面20設定ステップST4で設定した逆傾斜面20の幅Wと高低差Hとに基づいて、外周縁17から中心に向かってレートが深く逆傾斜面20に沿って研削砥石72と保持テーブル80とを相対的に移動させるように制御する。また、研削ユニット70の制御装置またはオペレータは、逆傾斜面20に囲まれた領域を所定の厚さに薄くするように、研削砥石72と保持テーブル80とを相対的に移動させる。すなわち、変則研削ステップST5では、保持テーブル80と研削ホイール71とを保持面81に沿って水平方向に相対的に移動させるとともに、保持面81に対して直交方向に相対的に移動させる。これにより、第2のウェーハ10-2は、外周縁17に沿う逆傾斜面20が裏面15に形成されるとともに逆傾斜面20に囲まれた領域が所定の厚さに薄く研削される。研削された第2のウェーハ10-2は、
図8に示すように、研削面である裏面15側に、逆傾斜面20と、凹凸やクラック等の研削歪みの層である破砕層18とが形成される。
【0029】
(第2エッチングステップST6)
図9は、
図2に示された第2エッチングステップST6の一例を模式的に示す断面図である。
図10は、
図9の第2エッチングステップST6後の一状態を示す第2のウェーハ10-2の要部の断面図である。
図9および
図10に示すように、第2エッチングステップST6は、変則研削ステップST5の実施後に、第2のウェーハ10-2の裏面15にプラズマ状態のガス60を供給して第2のウェーハ10-2の裏面15全面をエッチングし、変則研削ステップST5で形成された研削歪みの層である破砕層18を除去するステップである。
【0030】
実施形態の第2エッチングステップST6では、プラズマ状態のガス60を供給するプラズマ装置によって、第1のウェーハ10-1の裏面15側の破砕層18を除去する。ガス60およびプラズマ装置は、第1エッチングステップST2で用いたガス60およびプラズマ装置と同じまたは同等のものである。
【0031】
第2エッチングステップST6では、まず、保護部材30を介して第2のウェーハ10-2の表面12側を静電チャックに静電保持する。第2エッチングステップST6では、次に、チャンバ内を減圧させると共に、チャンバ内にプラズマ状態のガス60を供給する。この際、プラズマ状態のガス60は、第2のウェーハ10-2の裏面15側に供給されて、第2のウェーハ10-2の裏面15全面をエッチングする。プラズマ状態のガス60は、第2のウェーハ10-2の裏面15全面を表面12側に向かってエッチングし、破砕層18を除去する。第2エッチングステップST6では、
図10に示すように、エッチングレートの面内ばらつきによって、第1エッチングステップST2と同様に、外周縁17に向かってエッチングレートが大きくなる。すなわち、第1エッチングステップST2で形成される傾斜面19と同じ幅Wおよび高低差Hであって、第2のウェーハ10-2の裏面15側の外周縁17に向かって厚くなる逆傾斜面20が除去される。これにより、第2のウェーハ10-2の裏面15全面が平坦になる。
【0032】
(歪み層形成ステップST7)
歪み層形成ステップST7は、第2エッチングステップST6の実施後に、第2のウェーハ10-2の裏面15全面にプラズマ化した不活性ガスのイオンを供給して歪み層を形成するステップである。歪み層形成ステップST7では、プラズマ化した不活性ガスのイオンを供給するプラズマ装置によって、第2のウェーハ10-2の裏面15全面に微細な凹凸やクラック等の歪み層を形成する。プラズマ装置は、第1エッチングステップST2および第2エッチングステップST6で用いたプラズマ装置と同じものでもよいし、別のものでもよい。同じプラズマ装置を用いる場合、プラズマ装置は、反応性の高いガス60および不活性ガスのいずれも選択的に供給可能な装置である。すなわち、歪み層形成ステップST7の手順は、第2エッチングステップST6と比較して、第2のウェーハ10-2の裏面15全面を、プラズマ状態のガス60によってエッチングする代わりに、プラズマ化した不活性ガスのイオンでプラズマ加工する点を除いて類似する。
【0033】
歪み層形成ステップST7で形成される凹凸やクラック等は、研削ステップST1または変則研削ステップST5において形成される破砕層18の凹凸やクラック等に比べて微細なものである。すなわち、歪み層の厚さは、破砕層18の厚さに比べて、例えば1/10以下等、著しく小さい。歪み層は、ウェーハ10の内部に含有される金属元素がウェーハ10の裏面15側に捕獲されるゲッタリング効果が得られる。
【0034】
歪み層形成ステップST7では、例えば、まず、保護部材30を介して第2のウェーハ10-2の表面12側を静電チャックに静電保持する。第2エッチングステップST6で用いたプラズマ装置と同じプラズマ装置を用いる場合は、第2エッチングステップST6から継続して静電保持したままでもよい。歪み層形成ステップST7では、次に、チャンバ内を減圧させると共に、チャンバ内にプラズマ化した不活性ガスのイオンを供給する。この際、プラズマ化した不活性ガスのイオンは、第2のウェーハ10-2の裏面15側に供給されて、第2のウェーハ10-2の裏面15全面をプラズマ加工する。プラズマ化した不活性ガスのイオンは、第2のウェーハ10-2の裏面15全面に微細な歪み層を形成する。なお、本発明において、歪み層形成ステップST7は、省略されてもよい。
【0035】
以上説明したように、実施形態に係るウェーハ10の加工方法は、プラズマ状態のガス60によるエッチングでウェーハ10の外周縁17に向かって薄くなる傾斜面19が形成されてしまう傾向に沿って、外周縁17に向かって厚くなる逆傾斜面20を予め形成する。これにより、プラズマ状態のガス60によるエッチングで破砕層18を除去した後に、ウェーハ10の研削面側の全面を平坦にすることができるので、ウェーハ10の厚さばらつきを抑制することができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、本発明のウェーハ10の加工方法は、変則研削ステップST5、第2エッチングステップST6、および歪み層形成ステップST7を所定回数繰り返し実行することによって、同一の加工条件で第2のウェーハ10-2を複数加工してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 ウェーハ
10-1 第1のウェーハ
10-2 第2のウェーハ
12 表面
14 デバイス
15 裏面
17 外周縁
18 破砕層
19 傾斜面
20 逆傾斜面
30 保護部材
40、70 研削ユニット
50、80 保持テーブル
60 ガス
W 幅
H 高低差