(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】原料シリコンの充填方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20240104BHJP
C30B 15/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C30B29/06 502A
C30B15/02
(21)【出願番号】P 2020092971
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】312007423
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】安部 吉亮
(72)【発明者】
【氏名】加藤 玲
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-240492(JP,A)
【文献】特開2007-277069(JP,A)
【文献】特開2017-122014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/06
C30B 15/02ー15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料シリコンを供給するためのリチャージ機構と、昇降可能な輻射シールドとを具備するシリコン単結晶引き上げ装置において、
前記リチャージ機構を通じて原料シリコンを供給する前に、
輻射シールドを上昇させた後、石英ルツボを下降させ、その間、石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配を14.0℃/min以下とすることを特徴とする原料シリコンの充填方法。
【請求項2】
前記輻射シールドを上昇させる際に、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離を70mm以下とする、請求項1に記載の原料シリコンの充填方法。
【請求項3】
前記輻射シールドは、石英ルツボがその最高温度に到達するまで、一度も停止させることなく一気に上昇させる、請求項1または2に記載の原料シリコンの充填方法。
【請求項4】
前記石英ルツボの上端と、前記石英ルツボを保持するカーボンルツボの外側に設置された主ヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたとき、
石英ルツボの上端が、前記位置から+50~-150mmの範囲に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の原料シリコンの充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法を用いたシリコン単結晶引き上げ用の原料シリコンの充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶の製造方法として、チョクラルスキー法(CZ法)が知られている。CZ法では、原料となる粒塊状の多結晶シリコンをルツボ内に投入し、ルツボを囲繞するヒーターにより、多結晶シリコンを加熱して溶融させる。ルツボ内にシリコン融液が形成されると、ルツボを一定方向に回転させながら、ルツボ上に保持した種結晶を下降させて、ルツボ内のシリコン融液の表面に接触させる。種結晶を所定の方向に回転させながら上昇させることにより、種結晶下方に円柱状のシリコン単結晶を成長させる。
【0003】
このようなCZ法によるシリコン単結晶の育成では、シリコン単結晶を引き上げに伴って、ルツボ内のシリコン融液量が減少する。一般にCZ法による結晶育成時に使用されるルツボは使い捨てであり、従来は一回の操業で一本のシリコン単結晶を引き上げる一本引き操業が行われていた。しかしながら、シリコン融液の減少分を補充して、複数本のシリコン単結晶を引き上げれば、コスト削減に繋がることから、近年では、いわゆるマルチ引き操業も行われている。また、マルチ引き操業を連続的に行えば、生産性の向上にも繋がる。
【0004】
シリコン融液の減少分を補充して必要な融液量を確保する、いわゆるリチャージ法では、引き上げ装置内のルツボ中心上に、原料となる粒塊状の多結晶シリコンを投入する原料供給装置を配置し、ルツボ内のシリコン融液の円周方向に均等に多結晶シリコンを投下することが重要となる。これは、多結晶シリコンを補充する際に、ルツボに損傷を与えたり、シリコン融液の液跳ねにより、引き上げ装置内にある輻射シールドなどの部品に飛沫が付着して部品を劣化させたり、シリコン単結晶の育成に悪影響を及ぼすといった問題を回避するためである。
【0005】
リチャージに際して、引き上げ装置内の部品に損傷等の劣化が生じると、引き上げ中のシリコン単結晶に転位が発生しやすくなる。特許文献1には、多結晶シリコンをルツボ内のシリコン融液にリチャージまたは追加チャージするための原料供給装置における円筒状のリチャージ管の発明が記載されている。特許文献1のリチャージ管は、固形原料を充填する際に軸方向に分割された複数の分割管と、固形原料をルツボに充填する際に分割管を上下に連結する連結部とを有し、該分割管において、下側となる分割管上端の内径を、上側となる分割管下端の内径に対して等しいか、または、上側となる分割管下端の内径よりも大きく設計されている。これにより、原料充填時、多結晶シリコンが下側となる分割管上端に直接あたることなく投入され、下側となる分割管上端付近に傷、割れ、または欠けが発生することがない。つまり、特許文献1では、原料の充填時のリチャージ管の損傷に起因する不純物の発生を防止できるため、シリコン単結晶の有転位化等の特性悪化を防止することができるとともに、リチャージにより、ルツボ1個当たりの単結晶引き上げ本数を多くすることができると記載されている。
【0006】
一方、CZ法によるシリコン単結晶引き上げ装置内で、単結晶冷却用クーラーや単結晶を囲繞する熱遮蔽体を、装置内で移動可能なように設置することによって、原料のリチャージまたは追加チャージを円滑に行う方法も報告されている(特許文献2)。特許文献2には、固形原料のリチャージまたは追加チャージの際には、装置内の部材、とりわけクーラーや熱遮蔽体が障害となること、また、クーラーがルツボの近くにあると、チャージの際にクーラーの冷却効果を凌ぐほどにルツボを加熱する必要があることから、シリコン融液の液面からクーラーや熱遮蔽体を遠ざけるように、迅速に、好ましくは300mm/minの高速で上昇させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-112238号公報
【文献】特開2001-240492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リチャージ作業中の熱環境の急激な変化による石英ルツボの破損リスクに関しては十分に回避されていなかった。
【0009】
リチャージ管を通じて固形原料を投入する前に、輻射シールドの位置を上昇させて、原料を投入すれば、投入時に視野が確保されるだけでなく、投入した原料の接触や、シリコン融液の液跳ねによる飛沫の付着を防ぐことができると考えられる。一方、輻射シールドは原料溶融時には蓋の役割も果たしており、上昇させすぎると装置内の温度が下がることがわかっている。また、最近の石英ルツボは、天然石英および合成石英でできた二層以上の構造を有するのが一般的であり、ルツボの強度を上げるため三層や四層にすることもある。このように多層の石英ルツボを用いた場合、ヒーター近くで高温状態にある石英ルツボ上端の温度が、輻射シールドを上昇させることで急激に低下すると、各層の弾性率の違いから、石英ルツボの外層からクラックが発生することがある。クラックが発生してしまうと、その場所を起点にシリコン融液が漏れ、その後の結晶育成が困難となり生産能力の低下に繋がる。さらに発見が遅れて十分な量の原料融液が満たされた状態で原料が漏れ出した場合は、引き上げ部材および装置にも被害が及び、多額の費用もかかってしまう。そのため、そのようなクラックが発生しない原料の供給方法が求められている。
【0010】
本発明は、リチャージ作業中の熱環境の急激な変化によって、石英ルツボにクラックが発生するなどの悪影響を及ぼすことがなく、原料シリコンの充填方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の事項からなる。
本発明の原料シリコンの充填方法は、原料シリコンを供給するためのリチャージ機構と、昇降可能な輻射シールドとを具備するシリコン単結晶引き上げ装置において、前記リチャージ機構を通じて原料シリコンを供給する前に、輻射シールドを上昇させた後、石英ルツボを下降させ、その後の原料を供給するサイクルの中で、輻射シールドを上昇および石英ルツボを下降させる間、石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配を14.0℃/min以下とすることを特徴とする。
【0012】
前記輻射シールドを上昇させる際に、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離を70mm以下とすることが好ましい。
前記輻射シールドは、石英ルツボがその最高温度に到達するまで、一度も停止させることなく一気に上昇させることが好ましい。
前記石英ルツボの上端と、前記石英ルツボを保持するカーボンルツボの外側に設置された主ヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたとき、石英ルツボの上端は、前記位置から+50~-150mmの範囲に位置することが好ましい。ここで石英ルツボ上端が主ヒーター上端よりも上に位置する状態を「+」とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法に従って、原料である粒塊状の多結晶シリコンを補充すれば、石英ルツボの外層にクラックが発生することがない。よって、本発明によれば、複数本のシリコン単結晶を安定して引き上げることができ、コスト削減や生産性の向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、リチャージに使用されるシリコン単結晶引き上げ装置の概略断面図を表す。
【
図2】
図2(a)はリチャージ作業開始時、(b)リチャージ作業開始後、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離が115mm(R115)であるとき、(c)リチャージ作業開始後、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離が70mm(R70)であるときのシリコン単結晶引き上げ炉の半概略断面図である。
【
図3】
図3は、輻射シールドを上昇させた際の従来例および実施例1の石英ルツボの温度変化を表す。
【
図4】
図4は、実施例1および従来例の石英ルツボの温度変化と、輻射シールドを上昇させている途中で停止した比較例5の石英ルツボの温度変化とを対比させて表している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。
図1に示すシリコン単結晶製造装置100は、本発明で用いられるシリコン単結晶製造装置の一形態の模式的縦断面図であり、原料シリコン22が充填されるルツボ、主ヒーター13、下部ヒーター18、原料シリコン22を供給するためのリチャージ機構、昇降可能な輻射シールド11、および輻射シールドを載せる部材12などを備える。シリコン単結晶製造装置100は、ゲートバルブ(図示せず)を介して、チャンバ10およびサブチャンバ1の2つの部分に分かれている。
【0016】
なお、シリコン単結晶製造装置100内において、ルツボは、原料シリコン22およびシリコン融液26を直接収容する石英ルツボ16と、石英ルツボ16を外側で支持するためのカーボンルツボ17とからなる。石英ルツボ16およびカーボンルツボ17は、シリコン単結晶製造装置100の下部に取り付けられ回転駆動機構(図示せず)によって、回転昇降自在なルツボシャフト15によって支持されている。
【0017】
リチャージ機構は、原料シリコン22を充填するストレート型のリチャージ管21、底蓋25、リング27からなる原料容器20と、原料容器20を吊り下げるワイヤ23と、ワイヤ23を巻き上げる引き上げモーター24とで構成されている。そして、ワイヤ23は原料容器20の中心を通り、原料容器20の底蓋25の中心で固定されている。底蓋25がリチャージ管21の下端を支えることによって、原料容器20全体を保持している。そして、原料シリコン22を充填した原料容器20が石英ルツボ16に向かって下降する。原料容器20に付いたリング27が、サブチャンバ1の内壁に設けられた周縁部に掛け止めされると、底蓋25のみが下降し始め、隙間が生ずることによって、石英ルツボ16のシリコン融液26へと原料シリコン22が供給される。本発明の特徴は、原料シリコン22を供給する前に、輻射シールド11を上昇させ、その後、石英ルツボ16をカーボンルツボ17とともに下降させる間、石英ルツボ16上端の最高到達温度からの冷却温度勾配を14.0℃/min以下とすることにある。
【0018】
ここで、シリコン単結晶製造装置100内には、石英ルツボ16およびカーボンルツボ17を取り囲むように主ヒーター13および、下部ヒーター18が配置されており、主ヒーター13の外側には、主ヒーター13からの熱がチャンバ10に直接輻射されるのを防止するための保温部材14およびそのカバー19が設けられている。そして、シリコン融液26や、石英ルツボ16およびカーボンルツボ17からの熱が引き上げたシリコン単結晶が冷却するのを阻害しないように、輻射シールド11が、シリコン融液26およびルツボと、シリコン単結晶との間に設けられている。
【0019】
なお、輻射シールド11は、例えば、モリブデン、タングステンおよびタンタルなどの金属、カーボン、カーボンの表面を炭化ケイ素で被覆したもの、ならびにこれらの内側に成形断熱材を設けたものなど、輻射熱を調節する役目を果たす材料で形成される。保温部材14は、例えば、成形断熱材など、保温性に優れた材料で形成される。
【0020】
次に、シリコン単結晶の引き上げ後のリチャージによる原料供給について説明する。
まず、所定の直径および長さを有するシリコン単結晶インゴットを育成し、サブチャンバ1の蓋を開き、結晶を取り出す。
【0021】
次に、あらかじめシリコン単結晶製造装置100の外で、原料である粒塊状の多結晶シリコン(原料シリコン22)を充填した原料容器20をワイヤ23に吊り下げた後、再び蓋を閉めて密閉する。その後、サブチャンバ1内を減圧し、不活性ガスで置換し、ゲートバルブを開いてチャンバ10とサブチャンバ1を連通させる。その後、輻射シールド11を上昇させる。輻射シールド11を上昇させることで、原料シリコン22を供給している間の視界が確保されるだけでなく、原料シリコン22と輻射シールド11との干渉、すなわち、原料シリコン22が輻射シールド11に衝突したり、輻射シールド11表面の傾斜を滑って、石英ルツボ16内に落下するのを回避することができ、落下によるシリコン融液26の飛沫がシリコン単結晶製造装置100の内壁に付着するのを防止することができる。輻射シールド11は、概ね50~150mm/min、例えば100mm/minの速度で上昇させる。
【0022】
輻射シールド11を上昇させた後、石英ルツボ16を下降させる。石英ルツボ16を下降させて、下方のヒーター(主ヒータ13および下部ヒータ18)に近づけることで、輻射シールド11がヒーターから離れたために起こる温度低下を抑えることができる。石英ルツボ16は、通常50~180mm/minの速度で下降させる。
【0023】
そして、輻射シールド11を上昇および石英ルツボ16を下降させる間、石英ルツボ16上端の最高到達温度からの冷却温度勾配を14.0℃/min以下、好適には12℃/min以下とする。石英ルツボ16上端の最高到達温度からの冷却温度勾配を14.0℃/min以下と、石英ルツボ16上端の温度低下を小さくすることで、石英ルツボ16、特にその外層にクラックが発生するのを抑えることができる。その後に、原料容器20を下降させる。リング27が、周縁部に掛け止めされると、底蓋25のみがさらに下降する。そうすると、リチャージ管21と底蓋25との間に隙間を生じ、この隙間から原料シリコン22が自重により石英ルツボ16内に供給される。これらを所望のチャージ量になるまで数回繰り返す。
【0024】
前記輻射シールド11を上昇させる際に、輻射シールド11と輻射シールドを載せる部材12との最も近い距離を70mm以下とすることが好ましい。輻射シールド11を上げ過ぎると、石英ルツボ16をヒーター付近まで下降させても温度の低下は防げないためである。輻射シールド11と輻射シールドを載せる部材12との最も近い距離は、より好適には60mm以下である。なお、輻射シールド11と輻射シールドを載せる部材12との最も近い距離とは、輻射シールドを載せる部材12の輻射シールド11に最も近い先端部を中心とし、輻射シールド11に接触するように円を描いた場合の半径(R)を指す。
【0025】
輻射シールド11は、石英ルツボ16がその最高温度に到達するまで、一度も停止させることなく一気に上昇させることが好ましい。その理由として、輻射シールド11はシリコン融液26の直上に位置するため、もともとその下部は高温である。そのような高温の状態で輻射シールド11を上昇させると、
図3のように石英ルツボ16の温度が上昇することになるが、最高温度に到達する前に上昇を停止してしまうと、
図4のように石英ルツボ16の温度がさらに上がるため、その後の輻射シールド11の上昇により急激な温度差を経験することとなり、クラック発生に繋がる虞があるためである。
【0026】
前記石英ルツボ16の上端と、前記石英ルツボ16を保持するカーボンルツボ17の外側に設置された主ヒーター13の上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたとき、石英ルツボ16の上端は、前記位置から+50~-200mmの範囲に位置することが好ましい。石英ルツボ16の位置がヒーターに近いほど、輻射シールド11の上昇による温度低下の影響を受けにくいためである。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
石英ルツボの外径がφ810mmであるシリコン単結晶引き上げ装置において、シリコン融液が50kg残存した状態で、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離Rが70mmとなるように、輻射シールドを途中で停止することなく一気に上昇させた。次いで、石英ルツボと該石英ルツボを保持するカーボンルツボとを下降させた。輻射シールドを上昇および石英ルツボを下降させる間、石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は11.3℃/minであった。また、シールド上昇時のルツボ位置は石英ルツボの上端と、前記カーボンルツボの外側に設置されたヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたとき、石英ルツボの上端の位置が0mmとなるようにした。
その後、原料容器20を下降させ原料を供給した。原料がある程度溶けた後に石英ルツボにクラックが発生しているかどうかを目視で観察した。実施例1で得られた石英ルツボ外層にはクラックの発生が全く認められず、クラック発生率は0.0%であった。
【0028】
[実施例2]
実施例1において、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離Rを60mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は10.9℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、実施例2におけるクラック発生率は0.0%であった。
【0029】
[実施例3]
実施例1において、石英ルツボの上端とヒーターの上端とが同じ高さになる位置から石英ルツボの上端までの距離を+50mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は13.5℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、実施例3におけるクラック発生率は0.0%であった。
【0030】
[実施例4]
実施例1において、石英ルツボの上端とヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたときの石英ルツボの上端の位置を-50mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は10.8℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、実施例4におけるクラック発生率は0.0%であった。
【0031】
[実施例5]
実施例1において、石英ルツボの上端とヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたときの石英ルツボの上端の位置を-150mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は10.6℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、実施例4におけるクラック発生率は0.0%であった。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離Rを90mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は17.5℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、比較例1におけるクラック発生率は3.2%であった。
【0033】
[比較例2]
実施例1において、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離Rを80mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は15.8℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、比較例2におけるクラック発生率は0.6%であった。
比較例1および2では、Rが大きかったため、石英ルツボ上端が急激に冷やされ、クラック発生に繋がったと考えられる。
【0034】
[比較例3]
実施例1において、カーボンルツボの上端とヒーターの上端とが同じ高さになる位置を0mmとしたときの石英ルツボの上端の位置を+100mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は16.2℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、比較例3におけるクラック発生率は0.5%であった。
比較例3では、石英ルツボがヒーターから受ける熱量が十分でなかったことが、石英ルツボのクラック発生に繋がったと考えられる。
【0035】
[比較例4]
実施例3において、輻射シールドを上昇させる際に途中で2回停止したこと以外は、実施例3と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は16.2℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、比較例4におけるクラック発生率は0.9%であった。
比較例4では、輻射シールドを上昇させる際に途中で2回停止したため、石英ルツボ上端の温度がさらに上がり、その後の輻射シールドの上昇による温度低下の幅が大きくなり、クラック発生に繋がったと考えられる。
【0036】
[比較例5]
実施例3において、輻射シールドを上昇させる際に途中で1回停止したこと以外は、実施例3と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は15.1℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、比較例5におけるクラック発生率は0.4%であった。
比較例5では、輻射シールドを上昇させる際に途中で1回停止したため、2回停止した比較例4ほどではないものの、石英ルツボ上端の温度上昇とその後の低下の幅が大きくなったといえる。
【0037】
[従来例]
実施例1において、輻射シールドと該輻射シールドを載せる部材との最も近い距離Rを115mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、粒塊状の原料シリコンのリチャージを行った。石英ルツボ上端の最高到達温度からの冷却温度勾配は20.1℃/minであった。
実施例1と同様にして、石英ルツボに発生したクラックの有無を観察したところ、従来例におけるクラック発生率は4.7%であった。
【0038】
実施例1~5、比較例1~5および従来例の試験条件およびクラック発生率を表1に示す。
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1 サブチャンバ
10 チャンバ
11 輻射シールド
12 輻射シールドを載せる部材
13 主ヒーター
14 保温部材
15 ルツボシャフト
16 石英ルツボ
17 カーボンルツボ
18 下部ヒーター
19 カバー
20 原料容器
21 リチャージ管
22 原料シリコン(粒塊状の多結晶シリコン)
23 ワイヤ
24 モーター
25 底蓋
26 シリコン融液
27 リング
100 シリコン単結晶製造装置