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特許7412337安定剤組成物、その使用方法及び当該安定剤組成物を含むプラスチック組成物。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-28
(45)【発行日】2024-01-12
(54)【発明の名称】安定剤組成物、その使用方法及び当該安定剤組成物を含むプラスチック組成物。
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240104BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240104BHJP
   C08K 5/5377 20060101ALI20240104BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240104BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20240104BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08
C08K3/16
C08K3/013
C08K5/5377
C08L77/00
H01L33/60
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020534330
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018084336
(87)【国際公開番号】W WO2019121160
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/117218
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リン
(72)【発明者】
【氏名】パラップヴェーティル サランガダラン,スレシュ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515656(JP,A)
【文献】特開昭63-308065(JP,A)
【文献】特開2003-055549(JP,A)
【文献】国際公開第2006/112300(WO,A1)
【文献】特表2002-527558(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221539(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ホスフィン酸塩、及び有機銅錯体を含む混合物を含
前記混合物が、ハロゲン含有化合物をさらに含み、
前記混合物が、当該混合物の総質量に基づき、それぞれ、50質量%~75質量%のハロゲン含有化合物、及び、25質量%~50質量%の有機銅錯体を含み、
前記有機銅錯体を含む混合物に対する前記有機ホスフィン酸塩の質量比が、0.1~10である、
安定剤組成物
【請求項2】
前記ハロゲン含有化合物が、金属ハロゲン化物である、請求項に記載の安定剤組成物。
【請求項3】
前記有機銅錯体が、配位中心としての銅原子又は銅イオン及び有機配位子としての有機部分を有する配位化合物である、請求項1~の何れか1項に記載の安定剤組成物。
【請求項4】
前記有機部分が、トリフェニルホスフィン、メルカプトベンズイミダゾール、エチレンジアミン四酢酸、アセチルアセトネート、エチレンジアミン、オキサレート、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピリジン、ジホスホン及びジピリジルから成る群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載の安定剤組成物
【請求項5】
前記混合物が、当該混合物の総質量に基づき、それぞれ、50質量%~75質量%のヨウ化カリウム、及び、25質量%~50質量%の有機銅錯体を含む、請求項に記載の安定剤組成物。
【請求項6】
前記有機ホスフィン酸塩が、下記式
【化1】
(式中、Arは、C~C18アリール基を表し、及び、Xは、Na、Ca,Mg、Al又はZnから選択される金属カチオンを表す。)で表される、請求項1~の何れか1項に記載の安定剤組成物。
【請求項7】
前記C~C18アリール基が、非置換であるか、又は、C~C10アルキル基、C~C10シクロアルキル基、C~C10アルコキシル基、C~C10シクロアルコキシル基、C~C10アルキルチオ基、C~C10シクロアルキルチオ基、C~C10アルキルアミノ基、C~C10シクロアルキルアミン基、C~C18アリール基、C~C18アリールオキシ基、C~C18アリールチオ基、C~C18アリールアミノ基、ハロゲン原子及びこれらの組み合わせからなる群より選択される置換基により置換された基であり得る、請求項に記載の安定剤組成物。
【請求項8】
前記C~C18アリール基が、C~C16アリール基であり得る、請求項に記載の安定剤組成物
【請求項9】
黄変防止が必要とされる部分に使用されるプラスチックの黄変防止を改良するための請求項1~のいずれか1項に記載の安定剤組成物の使用方法。
【請求項10】
請求項1~の何れか1項に記載の安定剤組成物を含む、プラスチック組成物。
【請求項11】
前記プラスチックが、熱可塑性樹脂である、請求項10に記載のプラスチック組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリアミド及び/又は半芳香族ポリアミド及び/又はこれらのコポリマーのようなポリアミドであって、前記ポリアミドの量が、プラスチック組成物の総質量に基づき、30%~97%である、請求項11に記載のプラスチック組成物。
【請求項13】
前記有機銅錯体を含む混合物の量が、プラスチック組成物の総質量に基づき、0.1%~2%である、請求項1012の何れか1項に記載のプラスチック組成物。
【請求項14】
前記有機ホスフィン酸塩の量が、プラスチック組成物の総質量に基づき、0.05%~2%である、請求項1013の何れか1項に記載のプラスチック組成物。
【請求項15】
前記プラスチック組成物が、白色顔料をさらに含む、請求項1014の何れか1項に記載のプラスチック組成物。
【請求項16】
前記白色顔料が、TiO、ZnO、BaSO、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項15に記載のプラスチック組成物。
【請求項17】
前記白色顔料の量が、プラスチック組成物の総質量に基づき、2%~50%である、請求項15に記載のプラスチック組成物。
【請求項18】
A).30%~97%の半芳香族ポリアミド、
B).2%~50%の白色顔料
C).0.1%~2%の有機銅錯体を含む混合物、
D).0.05%~2%の有機ホスフィン酸塩、
E).0~50%の充填材
を含む、請求項10に記載のプラスチック組成物。
【請求項19】
請求項1018の何れか1項に記載のプラスチック組成物から得られる物品。
【請求項20】
前記物品が、ハウジング、反射物又は反射板のような発光ダイオードのコンポーネントである、請求項19に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定剤組成物に、及びプラスチックの黄変防止を改良するためのその使用方法に関する。さらに、本発明は、当該安定剤組成物を含むプラスチック組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は、消費者向けの屋外用ハウジング部品、自動車外装部品、又は高反射用途、より特に、発光ダイオード(LED)コンポーネントの製造におけるような、黄変防止が必要とされる部分に広く使用されている。これらのなかでも、ポリアミド、特に半芳香族ポリアミドは、優れた耐熱性及び高い光反射率が望まれるハウジング、反射材及び反射板のようなLEDコンポーネント用のセラミックに代わって、低コスト及び処理が容易な材料として広く使用されている。ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)のような他の耐熱樹脂と比較して、ポリアミド、特に半芳香族ポリアミドは、より良好な加工可能性及び機械特性を有するが、LED用途に使用されるポリアミド組成物において絶えず悩まされる1つの問題は、それらが、製造中又は最終使用の間に熱に長期間曝露される場合に黄変する傾向にあり、このことが重大な反射率低下を引き起こすことである。
【0003】
これまでの間、この問題を解決するために、多くの配合技術が開発されてきており、そして、実際に幾つかの進展がある。
【0004】
例えば、特許文献1は、良好に制御された粒径を有する白色顔料の二酸化チタンを含む、高反射性熱可塑性ポリフタルアミド(PPA)成形組成物を記載しており;特許文献2は、酸化マグネシウムの添加剤を使用することにより熱エイジング後の反射性が改良されたポリアミド組成物について記載しており;特許文献3は、酸化マグネシウムを有機亜リン酸塩と組み合わせることによりこの安定剤をさらに最適化している。
【0005】
さらに、特許文献4は、少なくとも1種の半芳香族ポリアミド、白色顔料、少なくとも1種の金属水酸化物及び/又は少なくとも1種の遷移金属酸化物以外の金属酸化物及び有機亜リン酸塩を含む、良好な耐熱性及び非常に良好なLED抵抗性を有する組成物を記載している。
【0006】
さらに、特許文献5は、ポリアミド組成物及びその適用について記載している。当該ポリアミド組成物は、A)30~90質量部の半芳香族ポリアミド樹脂及びB)10~50質量部の白色顔料及び/又は強化充填材を含み、ポリアミド組成物中の元素マグネシウムと元素リンとの質量比は、0.1~100:1である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7009029号公報
【文献】中国特許第103890040号公報
【文献】欧州特許第2723807号公報
【文献】中国特許公開第103619934号公報
【文献】中国特許公開第105602243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの進捗は、特に、エイジング温度が非常に高い(190℃以上)か、又は、エイジング時間が非常に長い(500時間以上)の場合の現実的な適用を、いまだ満足するものではない。また、PCTと比較して、黄変防止性能の点でいくらかの差も存在する。それ故、成形時及び熱エイジング後の反射性能がより良好なプラスチック組成物を開発することがまさに必要であり、且つ市場価値がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
黄変防止が必要とされる部分、例えば、消費者向けの屋外用ハウジング部品、自動車外装部品、又は高反射性用途等、より特に、発光ダイオードコンポーネントの製造における部分に使用されるプラスチックへ、有機銅錯体及び有機ホスフィン酸塩を含む安定剤組成物を導入することによって、非常に良好な黄変防止性能、及び、それ故に長時間の熱エイジング後においても優れた反射性が達成できたことが見出されたことは、驚くべきことである。この発見に基づき、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0010】
したがって、本発明の目的は、黄変防止が必要とされる部分、例えば、消費者向けの屋外用ハウジング部品、自動車外装部品、又は高反射率用途等、より特に、発光ダイオード(LED)コンポーネントの製造に使用される、プラスチックの黄変防止性能を改良するための、安定剤組成物を提供することにある。
【0011】
本発明のその他の目的は、黄変防止が必要とされる部分、例えば、消費者向けの屋外用ハウジング部品、自動車外装部品、又は高反射率用途等、より特に、発光ダイオード(LED)コンポーネントの製造における部分に使用されるプラスチックの黄変防止を改善するための、安定剤組成物の使用を提供することにある。
【0012】
本発明のその他の目的は、非常に良好な黄変防止性能を有しそして従って長時間の熱エイジング後でも優れた反射性を有する、安定剤組成物を含むプラスチック組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の詳細な説明
本発明の目的は、有機ホスフィン酸塩及び有機銅錯体を含む混合物を含む安定剤組成物により達成され得た。
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、有機ホスフィン酸塩及び有機銅錯体を含む混合物を含む、安定剤組成物に関する。
【0015】
有機銅錯体を含む混合物は、さらにハロゲン含有化合物を含み得る。前記ハロゲン含有化合物は、好ましくは金属ハロゲン化物、例えば、KCl、KBr及び/又はKI等であるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
好ましくは、前記混合物が、当該混合物の総質量に基づき、それぞれ、約50質量%~約75質量%のハロゲン含有化合物、及び、約25質量%~約50質量%の有機銅錯体を含む。より好ましくは、前期混合物は、混合物の総質量に基づき、それぞれ、約50質量%~約75質量%のヨウ化カリウム、及び、約25質量%~約50質量%の有機銅錯体を含むブレンドの形態であり得る。
【0017】
前記有機銅錯体は、配位中心としての銅原子(又は銅イオン)及び有機配位子としての有機質部分を有する配位化合物である。有機リガンドの典型的な例としては、トリフェニルホスフィン、メルカプトベンズイミダゾール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、アセチルアセトネート、エチレンジアミン、オキサレート、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ピリジン、ジホスホン及び/又はジピリジルである。好ましい有機配位子は、トリフェニルホスフィン及び/又はメルカプトベンズイミダゾールである。
【0018】
本発明により使用される好ましい銅錯体は、典型的には有機配位子と銅イオンの反応により製造される。
【0019】
有機ホスフィン酸塩は、下記式
【化1】
(式中、Arは、C~C18アリール基を表し、及び、Xは、Na、Ca,Mg、Al又はZnから選択される金属カチオンを表す。)で表され得る。
【0020】
前記C~C18アリール基は、非置換であるか、又は、C~C10アルキル基、C~C10シクロアルキル基、C~C10アルコキシル基、C~C10シクロアルコキシル基、C~C10アルキルチオ基、C~C10シクロアルキルチオ基、C~C10アルキルアミノ基、C~C10シクロアルキルアミン基、C~C18アリール基、C~C18アリールオキシ基、C~C18アリールチオ基、C~C18アリールアミノ基、ハロゲン原子等及びこれらの組み合わせのような置換基により置換される基であり得る。好ましくは、前記C~C18アリール基は、C~C16アリール基、好ましくはC~C14アリール基、より好ましくはC~C12アリール基、最も好ましくはフェニル基又はナフチル基あり得る。好ましくは、ホスフィン酸塩は、ベンゼンホスフィン酸ナトリウムである。
【0021】
本発明による安定剤組成物は、それぞれの成分を一緒に混合することにより製造され得る。有機銅錯体を含む混合物に対する有機ホスフィン酸塩の質量比は、例えば、約0.1~約10、好ましくは約0.2~約8、より好ましくは約0.3~約3であり得る。
【0022】
プラスチック、特にポリアミド、特に半芳香族ポリアミド中に本発明に係る安定剤組成物を用いることにより、非常に良好な黄変防止性能及びゆえに長時間の熱エイジング後においても優れた反射性が達成できたことが見出されたことは、驚くべきことである。
【0023】
したがって、第2の態様において、本発明は、黄変防止が必要とされる部分に使用される材料の黄変防止を改良するための本発明による安定剤組成物の使用に関する。
【0024】
黄変防止を必要とする部分に使用される材料の主材は、プラスチックである。前記プラスチックは、熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及び/又はポリブチレンテレフタレート等、好ましくは、ポリアミド、特に好ましくは半芳香族ポリアミド、特に、熱可塑性ポリフタルアミド(PPA)であり得る。安定剤を含む当該材料は、消費者向けの屋外用ハウジング部品、自動車外装部品、又は高反射率用途、より具体的には発光ダイオード(LED)コンポーネントの製造において、のような黄変防止が必要とされる部分に使用され得る。
【0025】
上記のように、ポリアミド、特に半芳香族ポリアミドは、ハウジング、反射材及び反射板のようなLEDコンポーネントのために使用され得る。しかしながら、これらは、製造時及び最終使用時の間に長時間熱に曝露される場合に黄変を受ける。本発明による安定剤組成物は、半芳香族ポリアミド中に用いることが非常に適切であること、そして、非常に良好な黄変防止性能及びゆえに長時間の熱エイジング後においても優れた反射性が達成できたことが見出されたことは、驚くべきことである。
【0026】
したがって、第3の目的において、本発明は、本発明の安定剤組成物を含むプラスチック組成物に関する。
【0027】
本発明において使用されるプラスチックは、通常のプラスチック、特に、熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレート等のいずれかであり得る。好ましくは、当該プラスチックは、ポリアミド、特に熱可塑性ポリアミド、例えば、芳香族ポリアミド及び/又は半芳香族ポリアミド、並びにアモルファスポリアミド及び/又は半結晶ポリアミド、及び/又はこれらのポリアミドコポリマーである。
【0028】
当該ポリアミドの繰り返し単位は、(A)ラクタム、(B)ジカルボン酸及びジアミン、及び(C)アミノカルボン酸から成る群から選択される少なくとも1種の成分から得られる。
【0029】
適したラクタムは、好ましくは、6~12個の炭素原子を含むラクタム、例えば、ブチロラクタム、2-ピロリドン(γ-ブチロラクタム)、バレロラクタム、2-ピペリドン(δ-バレロラクタム)、ε-カプロラクタム、カプリルラクタム、デカノラクタム、ウンデカノラクタム、エナントラクタム及び/又はラウリルラクタム、より好ましくは、ε-カプロラクタムである。
【0030】
当該ジカルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸、環状脂肪族ジカルボン酸及び/又は芳香族ジカルボン酸であり得る。
【0031】
適した脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、4~24個の炭素原子を含む脂肪族ジカルボン酸、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン-1,11-ジカルボン酸、ドデカン-1,12-ジカルボン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸である。
【0032】
適した環状脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキシルメタン、ジシクロヘキシルメタン、ビス(メチルシクロヘキシル)から成る群から選択される少なくとも1種の炭素骨格を含むものであり、より好ましくは、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロペンタン-1,4-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、シス-及びトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸である。
【0033】
適切な芳香族ジカルボン酸は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及び/又はジフェニルジカルボン酸である。
【0034】
ジアミンは、脂肪族ジアミン、環状脂肪族ジアミン及び/又は芳香族ジアミンであり得る。
【0035】
適した脂肪族ジアミンは、好ましくは、4~24個の炭素原子を含む脂肪族ジアミン、例えば、ブタンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、へプタンジアミン、オクタンジアミン、ノナンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、オクタデカンジアミン、オクタデセンジアミン、エイコサンジアミン、ドコサンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナン-1,9-ジアミン及び/又は2,4-ジメチルオクタンジアミンである。
【0036】
適した環状脂肪族ジアミンは、好ましくは、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)エタン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,5-ジアルキル-4-アミノシクロヘキシル)ブタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM又はMACM)、p-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、イソプロピリデンジ(シクロヘキシルアミン)(PACP)、及び/又はイソホロンジアミン(IPDA)である。
【0037】
適した芳香族ジアミンは、好ましくは、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタン、3-メチルベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、1,2-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、1,4-ジアミノベンゼン、1,2-ジアミノナフタレン、1,3-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、2,3-ジアミノトルエン、N,N′-ジメチル-4,4′-べフェニルジアミン、ビス(4-メチルアミノフェニル)メタン、及び/又は2,2′-ビス(4-メチルアミノフェニル)プロパンである。
【0038】
適したアミノカルボン酸は、好ましくは、6-アミノカプロン酸、7-アミノへプタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、及び/又は12-アミノドデカン酸である。
【0039】
好ましい態様において、当該ポリアミドは、PA5、PA6、PA8、PA9、PA10、PA11、PA12、PA13、PA14、PA4.6、PA4.8、PA4.10、PA4.12、PA5.5、PA5.10、PA5.12、PA6.6、PA6.8、PA6.9、PA6.10、PA6.12、PA6.18、PA8.8、PA8.10、PA8.12、PA9.9、PA9.10、PA9.12、PA10.10、PA10.12、PA10.14、PA10.18、PA12.12、PA12.14、PA12.18、PA4.T、PA6.T、PA9.T、PA8.T、PA10.T、PA12.T、PA4.I、PA6.I、PA8.I、PA9.I、PA10.I、PA12.I,PA MXDA.6、PA IPDA.I、PA IPDA.T、PA MACM.I、PA MACM.T、PA PACM.I、PA PACM.T、PA MXDA.I及びPA MXDA.Tから成る群の少なくとも1種である。
【0040】
好ましい態様において、コポリイミドは、PA6/6.6、PA6/12、PA6/11、PA 6.6/11、PA 6.6/12、PA 6/6.10、PA 6.6/6.10、PA 4.6/6、PA6/6.6/6.10、PA 6.T/6、PA 6.T/10、PA 6.T/12、PA 6.T/6.I、PA 6.T/8.T、PA 6.T/9.T、PA 6.T/10.T、PA 6.T/12.T、PA 6.T/6.I/6、PA 6.T/6.I/12、PA 6.T/6.I/6.10、PA 6.T/6.I/6.12、PA 6.T/6.6、PA 6.I/6.6、PA6.T/6.10、PA 6.T/6.12、PA 10T/6、PA 10.T/11、PA 10.T/12、PA 8.T/66、PA 8.T/8.I、PA 8.T/8.6、PA 8.T/6.I、PA 10.T/6.6、PA 10.T/10.I、PA 10T/10.I/6.T、PA 10.T/6.I、PA 4.T/4.I/46、PA 4.T/4.I/6.6、PA 5.T/5.I、PA 5.T/5.I/5.6、PA 5.T/5.I/6.6、PA 6.T/6.I/6.6、PA 6.T/IPDA.T、PA 6.T/MACM.T、PA 6.T/PACM.T、PA 6.T/MXDA.T、PA 6.T/6.I/8.T/8.I、PA 6.T/6.I/10.T/10.I、PA 6.T/6.I/IPDA.T/IPDA.I、PA 6.T/6.I/MXDA.T/MXDA.I、PA 6.T/6.I/MACM.T/MACM.I、PA 6.T/6.I/PACM.T/PACM.I、PA 6.T/10.T/IPDA.T、PA 6.T/12.T/IPDA.T、PA 6.T/10.T/PACM.T、PA 6.T/12.T/PACM.T、PA 10.T/IPDA.T、及び/又はPA 12.T/IPDA.Tから成る群の少なくとも1種である。
【0041】
前記ポリアミドの量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、30%~97%、好ましくは40%~80%、より好ましくは45%~70%であり得る。
【0042】
前記半芳香族ポリアミドの量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、30%~97%、好ましくは40%~80%、より好ましくは45%~70%であり得る。
【0043】
前記有機銅錯体を含む混合物の量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、約0.1%~約2%、好ましくは約0.2%~約1.5%、より好ましくは約0.3%~1%であり得る。
【0044】
前記有機ホスフィン酸塩の量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、約0.05%~約2%、好ましくは約0.1%~約1%、より好ましくは約0.2%~0.8%であり得る。
【0045】
プラスチック組成物は、白色顔料を含み得る。前記白色顔料は、当業者に周知の任意の慣用の白色顔料であり得、例えば、TiO、ZnS,ZnO、BaSO、及びこれらの混合物であり得る。
【0046】
前記白色顔料の量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、約2%~約50%、好ましくは約10%~約45%、より好ましくは約20%~40%であり得る。
【0047】
本発明のプラスチック組成物は、充填剤、例えば、ガラス繊維、鉱物粉末(例えば、タルク粉末、珪石灰、マイカ等)等を含み得る。
【0048】
充填剤の量は、プラスチック組成物の総質量に基づき、0%~約50%、好ましくは0%~約30%、より好ましくは0%~約20%であり得る。
【0049】
さらに、本発明のプラスチック組成物は、その他の種々の添加剤、例えば、衝撃性改良剤、帯電防止剤、導電性付与剤、熱安定剤、光安定剤(特にUV安定剤)、潤滑油及び難燃剤等を含み得る。当該添加物は、単独又は組み合わせて使用され得る。そのような添加剤は、当業者に知られ、市販されるものであり得る。
【0050】
衝撃性改良剤の例としては、下記:オレフィンのコポリマー、オレフィン及びα、β-不飽和カルボン酸のコポリマー、及びエラストマー、例えばスチレン系エラストマーが言及されるべきである。衝撃性改良剤の添加は、組成物の衝撃強度を改良するであろう。
【0051】
帯電防止剤の例としては、下記:アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤及びノニオン性帯電防止剤が言及されるべきである。導電性付与剤の例としては、下記:カーボンブラック、炭素繊維及び金属繊維が言及されるべきである。
【0052】
熱安定剤の例としては、下記、ヒンダードフェノール性化合物、亜リン酸塩系化合物、ヒンダードアミン系化合物、トリアジン系化合物及び硫黄系化合物が言及されるべきである。
【0053】
光安定剤の例としては、下記:ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチレート系化合物、ヒンダードアミン系化合物及びヒンダードフェノール性化合物が言及されるべきである。
【0054】
潤滑油の例としては、下記:フッ素樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン;シリコン、例えば、ポリジメチルシロキサン及びフッ素変性ポリジメチルシロキサン等;及びワックス類、例えば、天然及び合成ワックス等、例えば、モンタン酸ワックス、モンタン酸エステルワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、酸化ワックス、ポリビニルエーテルワックス、エチレンビニルアセテートワックス及び前述のワックス類の混合物が言及されるべきである。
【0055】
難燃剤の例としては、下記:臭素含有難燃剤、窒素含有難燃剤、リン含有難燃剤及び窒素-リン含有難燃剤;及び金属水和物系難燃剤が言及されるべきである。
【0056】
好ましい実施態様において、プラスチック組成物は、
A).約30%~約97%の半芳香族ポリアミド、
B).約2%~約50%の白色顔料
C).約0.1%~約2%の有機銅錯体を含む混合物、
D).約0.05%~約2%の有機ホスフィン酸塩、
E).0~約50%の充填剤
を含む。
【0057】
本発明において、それぞれの成分の量は、プラスチック組成物の総質量に基づき合計が100質量%とされる。さらに、それぞれの成分の範囲及び好ましい範囲は、互いに組み合わされ得る。
【0058】
本発明によるプラスチック組成物は、均一な混合物を得ることを可能とする任意の方法、例えば溶融押出し、圧縮又はロール曲げ成形等を経て製造され得る。有利なものとしては、当該組成物は、当業者に知られた方法による混合、例えば、二重押出し機、混練機又は内部ミキサー等により顆粒の形で得られ得る。
【0059】
本発明のプラスチック組成物は、非常に良好な黄変防止性能を示し、そしてしたがって、長期間の熱エイジング後であっても優れた反射性を示し、高い反射性用途、より具体的には発光ダイオード(LED)コンポーネントの製造において適したものと成す。
【0060】
したがって、第4の目的において、本発明は、該プラスチック組成物から得られた製品に関する。より詳細には、当該製品は、発光ダイオード(LED)のコンポーネント、例えば、ハウジング、反射物又は反射板等であり得る。
【0061】
本発明による製品は、射出成形、押出し成形、押出しブロー成形、共押出し等により、上記で限定されたような組成物を用いて製造され得る。
【0062】
射出成形の間、本発明によるプラスチック組成物は、射出成形のシリンダー内で熱融解され、融解状態で金型中に押出され、冷却されそして所定の形状に凝固させられ、そして金型から成形体が取り出される。射出成形の時点における樹脂の温度は、ポリアミドの溶融点かそれ以上であり、溶融点+100℃より低い温度に設定する必要がある。射出成形に使用されるプラスチック組成物は、好ましくは、十分乾燥される。水分含量が高い状態の半芳香族ポリアミドは、射出成形機のシリンダー中で発泡が起こり、そしてしばしば、適切な成形体を得にくくなる。
【0063】
本発明は、実施例によって詳細に説明される。しかしながら、本発明は、実施例の範囲に限定されるものではない。
【実施例
【0064】
実施例で使用した原料は下記の通りである。
【0065】
PA9T ベース樹脂、質量平均分子量30000のポリノナメチレンテレフタルアミド。
ブリュッゴレン(Bruggolen)H3350 有機銅塩錯体及びKIを含む混合物、ブリュッゲマン社(Brueggemann-Gruppe)(ドイツ)から入手。
ホスタノックス(Hostanox)(登録商標) P-EPQ 有機亜リン酸塩、クラリアント(Clariant)社から入手。
SBP ベンゼンホスフィン酸ナトリウム、ハンゾウケムファ(Hangzhou Chemfar)社から入手。
NaHPO 無機ホスフィン酸塩。
HIWAX 110P 潤滑油、三井化学社から入手。
NYLOSTAB S-EED UV安定剤、クラリアント社から入手。
TiO TiOクロノス(Kronos)2220、クロノス社から入手。
【0066】
実施例の処方を下記表1に示す。原料を、高速撹拌機(Turbula T50A、グレンミルズ(Glen Mills)(社製)中で混合し、二軸押出し機(Voperion ASK26MC、コペリオンヴェルナー&プライデラー(Coperion Werner &Pfleiderer)社、ドイツ)へ供給し、320℃の温度下で溶融押出しさせ、ペレット化し、ペレット形状の半芳香族ポリアミド組成物を得た。次に、このようにして得られた組成物を、オーブン中で120℃の温度で8時間乾燥させ、次に、射出成形機(KM130CX、クラウスマファイ(Krauss Maffei)社より入手、クランプ力130T)により300℃の温度において成形し、このようにして試験見本を得た。また、材料の流動長(SPF)を、320℃溶融温度及び140℃の成形温度において500バールの圧力で、らせん流工具を用いてこの機器上で測定した。溶融物を、通路に沿って番号が付され及び細分化されたセンチメートルが付された一定断面積(2mm厚さ及び5.5mm幅)のらせん状通路へ注入した。成形物を、湯口かららせんの中心まで満たし、そして流れが止まるまで圧力を維持し、成形されたらせん状チップの数で流動長を決めた。DC500分光光度計(データカラー(Datacolor)社)で460nmの波長において、成形されたプラスチックプラーク(60×60×2mm)試料を用いて、反射性試験を行った。
【0067】
【表1】
【0068】
得られた試料において、種々の試験を行い、その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示されるように、本発明の安定剤パッケージ(有機ホスフィン酸塩及び有機銅塩錯体及びKIを含む混合物)を含むポリアミド組成物、即ちE1及びE2は、高い初期の反射率(>90%)並びに、高温(190℃)及び中程度の温度(120℃)の両方における熱エイジング後の反射率の減衰の低さを示した。さらにまた、本発明の成形組成物は、良好な流動性及び機械特性を有していた。明らかに、2種の安定剤の1種のみが使用された場合には、最初及び劣化後の反射性はCE1及びCE4において示されるように損なわれるであろうから、そのような優れた性能は達成し得ない。より明白なところでは、CE3のコンポーネントは、E1がホスフィン酸塩を使用しているのに対し、CE3は亜リン酸塩を使用する以外はE1と同様であるが、CE3の反射性はどの場合でもE1のものよりも低いものであった。