IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図1
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図2
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図3
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図4
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図5
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図6
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図7
  • 特許-ベルト装置、定着装置及び画像形成装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ベルト装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019213198
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021085930
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一平
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉永 洋
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015943(JP,A)
【文献】特開2008-225256(JP,A)
【文献】特開2011-070070(JP,A)
【文献】特開2011-128278(JP,A)
【文献】特開2005-331574(JP,A)
【文献】特開2019-008241(JP,A)
【文献】特開2010-032625(JP,A)
【文献】特開2014-048487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状のベルト部材と、
前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、
前記ベルト部材の外周面に対向して配置される対向部材と、
前記ベルト部材の内周面に直接接触し、前記対向部材との間に前記ベルト部材を挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、
前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、
前記ニップ形成部材と前記支持部材との間に配置される中間部材と、
前記ニップ形成部材と前記中間部材との間に配置される樹脂製のシート部材と、
を備え、
前記ニップ形成部材は、前記シート部材よりも熱伝導率の高い材料で構成され
前記中間部材は、前記ニップ部を形成する前記ニップ形成部材のベース部以外の部分に直接接触し、
前記シート部材は、前記ニップ形成部材の前記ベース部と当該ベース部に対向する前記中間部材のベース部に直接接触するベルト装置。
【請求項2】
前記シート部材は、発泡樹脂で構成されている請求項1に記載のベルト装置。
【請求項3】
前記中間部材は、前記ニップ形成部材を前記支持部材に対して位置決めする位置決め部材である請求項1又は2に記載のベルト装置。
【請求項4】
前記シート部材の厚さは、0.1mm以上2.0mm以下である請求項1から3のいずれかに記載のベルト装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のベルト装置を用いて記録媒体上の画像を前記記録媒体に定着する定着装置
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のベルト装置、又は請求項5に記載の定着装置を備える画像形成装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機やプリンタなどの画像形成装置に搭載されるベルト装置として、無端状のベルト部材を用いて用紙などの記録媒体に未定着画像を定着するベルト式の定着装置が知られている。
【0003】
一般的に、ベルト式の定着装置は、定着ベルトと、定着ベルトの外周面に対向して配置される対向部材と、対向部材との間に定着ベルトを挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、ニップ形成部材を支持する支持部材と、定着ベルトを加熱する加熱部材などを備えている。
【0004】
特許文献1には、ベルト式の定着装置として、ニップ形成部材と支持部材との間に断熱材を介在させたものが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ニップ形成部材と支持部材との間に断熱材を介在させる場合、ニップ形成部材と断熱材と支持部材の相互間に部分的な隙間を介在させることなく、各部材を均一に接触させたいといった要望がある。しかしながら、実際は、断熱材とニップ形成部材との接触面、及び、断熱材と支持部材との接触面を、完全に一致する形状に形成することは困難である。このため、ニップ形成部材と断熱材との間、及び断熱材と支持部材との間には、部分的に隙間が生じる傾向にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、ベルト装置が、無端状のベルト部材と、前記ベルト部材を加熱する加熱部材と、前記ベルト部材の外周面に対向して配置される対向部材と、前記ベルト部材の内周面に直接接触し、前記対向部材との間に前記ベルト部材を挟んでニップ部を形成するニップ形成部材と、前記ニップ形成部材を支持する支持部材と、前記ニップ形成部材と前記支持部材との間に配置される中間部材と、前記ニップ形成部材と前記中間部材との間に配置される樹脂製のシート部材と、を備え、前記ニップ形成部材は、前記シート部材よりも熱伝導率の高い材料で構成され、前記中間部材は、前記ニップ部を形成する前記ニップ形成部材のベース部以外の部分に直接接触し、前記シート部材は、前記ニップ形成部材の前記ベース部と当該ベース部に対向する前記中間部材のベース部に直接接触する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、二部材間に隙間が生じるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】定着装置の概略構成図である。
図3】定着装置のニップ部の周辺部分を拡大して示す図である。
図4】位置決め部材とニップ形成部材とが分離した状態を示す斜視図である。
図5】位置決め部材とニップ形成部材とが組み付けられた状態を示す斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る構成を示す図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る構成を示す図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0011】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部である4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体103に対して着脱可能に構成され、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。具体的には、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電する帯電装置3と、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング装置5と、を備える。
【0012】
また、画像形成装置100は、各感光体2の表面を露光し静電潜像を形成する露光装置6と、記録媒体としての用紙Pを供給する給紙装置7と、各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙Pに転写されたトナー画像を定着する定着装置9と、用紙Pを装置外に排出する排紙装置10と、を備える。
【0013】
転写装置8は、複数のローラによって張架された中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する二次転写部材としての二次転写ローラ13と、を有する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0014】
また、画像形成装置100内には、給紙装置7から送り出された用紙Pが搬送される用紙搬送路14が形成されている。この用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0015】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0016】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光することで、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0017】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0018】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0019】
続いて、定着装置9の構成について説明する。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト21と、加圧ローラ22と、ハロゲンヒータ23と、ニップ形成部材24と、ステー25と、位置決め部材26と、反射部材27と、ベルト支持部材28と、シート部材29と、を備えている。
【0021】
定着ベルト21は、用紙Pの未定着画像担持面側に配置され、未定着画像Tを用紙Pに定着する定着部材である。定着ベルト21は、無端状のベルト部材(フィルムも含む)で構成されている。定着ベルト21を構成するベルト部材は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド製の筒状基体を有している。また、定着ベルト21の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト21の基体はポリイミドに限らず、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト21の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0022】
加圧ローラ22は、定着ベルト21の外周面に対向して配置される対向部材である。加圧ローラ22は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金と、この芯金の表面に形成された弾性層と、弾性層の外側に形成された離型層とで構成されている。弾性層はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層にスポンジゴムを用いて加圧ローラ22の断熱性を高めることが望ましい。その場合、定着ベルト21の熱が加圧ローラ22に奪われにくくなり、定着ベルト21の熱効率が向上する。また、弾性層は、ソリッドゴムでもよい。離型性を高めるため、弾性層の表面に、例えば厚みが40μm程度のフッ素樹脂層による離型層が形成されているのが望ましい。
【0023】
加圧ローラ22は、バネなどの加圧手段によって定着ベルト21に圧接されることで、定着ベルト21と加圧ローラ22との間にニップ部Nが形成される。また、加圧ローラ22は、画像形成装置本体に設けられた駆動源によって回転駆動するように構成されている。本実施形態では、加圧ローラ22として、中空のローラが用いられている。ただし、加圧ローラ22は、中実のローラであってもよい。加圧ローラ22が中空ローラの場合は、加圧ローラ22の内部にハロゲンヒータなどの加熱部材を配置することも可能である。
【0024】
ハロゲンヒータ23は、熱及び光(例えば、赤外線光)を放射することで、定着ベルト21を輻射熱により加熱する加熱部材である。ハロゲンヒータ23は、定着ベルト21の内側で、定着ベルト21の内周面に直接対向するように配置されている。また、加熱部材として、ハロゲンヒータ23以外に、カーボンヒータやIHコイル、抵抗発熱体などの他のヒータを用いてもよい。定着ベルト21がハロゲンヒータ23によって加熱され、回転駆動する加圧ローラ22とこれに伴って従動回転する定着ベルト21との間(ニップ部N)に未定着画像Tを担持する用紙Pが搬送されると、ニップ部Nにおいて用紙Pが加圧及び加熱され、未定着画像Tが用紙Pに定着される。
【0025】
ニップ形成部材24は、加圧ローラ22との間で定着ベルト21を挟んでニップ部Nを形成する部材である。ニップ形成部材24は、定着ベルト21の内側に、定着ベルト21の回転軸方向に向かって長手状に設けられている。加圧ローラ22がバネなどの加圧手段によってニップ形成部材24側に加圧されると、加圧ローラ22が定着ベルト21を介してニップ形成部材24に接触(圧接)する。これにより、加圧ローラ22と定着ベルト21との間にニップ部Nが形成される。
【0026】
ニップ形成部材24は、温度ムラの発生を抑制するため、ステー25やシート部材29よりも熱伝導率が高い材料で構成されている。すなわち、ニップ形成部材24が熱伝導率の高い材料で構成されることで、ニップ形成部材24内での熱の移動が行われやすくなり、温度の均一化を図れるようになる。ニップ形成部材24の材料としては、アルミニウムや銅、鉄、金、銀などの金属材料、又はこれらの合金、あるいはグラファイトを用いることができる。
【0027】
また、ニップ形成部材24は、例えば厚みが0.4~1mmの板材を曲げ加工するなどして構成されている。図3に示すように、本実施形態では、ニップ形成部材24が、ベース部24aと、2つの立ち上がり部24b,24cと、を有する。ベース部24aは、定着ベルト21の内周面に接触し、ニップ部Nを形成するニップ形成面24dを有する部分である。2つの立ち上がり部のうち、一方は、用紙搬送方向(記録媒体搬送方向)Yにおけるベース部24aの上流側端部に設けられた上流側立ち上がり部24bである。他方は、用紙搬送方向Yにおけるベース部24aの下流側端部に設けられた下流側立ち上がり部24cである。いずれの立ち上がり部24b,24cも、ベース部24aから加圧ローラ22側とは反対側に向かって立ち上がるように設けられている。
【0028】
また、ニップ形成部材24に対する定着ベルト21の摺動抵抗を低減するため、ニップ形成部材24の定着ベルト21側の面(ニップ形成面24d)に摺動性に優れる被覆層を形成してもよい。被覆層の材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、又は飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。また、このような樹脂に、ガラス繊維、カーボン、グラファイト、フッ化グラファイト、炭素繊維、二硫化モリブデンなどを混合してもよい。また、被覆層の材料として、二硫化モリブデン、ニッケル、ニッケルとフッ素樹脂の複合めっき、アルマイト、アルマイトに樹脂や金属を含浸したものを用いることも可能である。さらに、被覆層の材料として、炭化ケイ素セラミック、窒化ケイ素セラミック、アルミナセラミック、又はこれらと二硫化モリブデン、フッ素樹脂を混合したものを用いてもよい。
【0029】
ステー25は、定着ベルト21の内側に配置され、加圧ローラ22の加圧力に抗してニップ形成部材24を支持する支持部材である。ここで、ニップ形成部材24を「支持する」とは、ニップ形成部材24に対して加圧ローラ22側とは反対側で接触し、加圧ローラ22からの圧力によるニップ形成部材24の撓み、特にニップ形成部材24の長手方向に渡る加圧方向への撓みを抑制することをいう。
【0030】
ステー25は、定着ベルト21に接触するニップ形成部材24の面とは反対側の面に、位置決め部材26やシート部材29を介して接触する。また、ステー25は、定着ベルト21の回転軸方向又はニップ形成部材24の長手方向に沿って連続して設けられている。このように、ステー25がニップ形成部材24の長手方向に渡ってニップ形成部材24に対して接触していることで、加圧方向へのニップ形成部材24の撓みが抑制され、均一な幅のニップ部Nが得られる。ステー25は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0031】
位置決め部材26は、ニップ形成部材24とステー25との間に配置されて、ニップ形成部材24をステー25に対して位置決めする部材である。位置決め部材26は、板状の部材を曲げ加工するなどして形成されている。位置決め部材26の詳しい構成や位置決め構造については後で述べる。
【0032】
反射部材27は、ハロゲンヒータ23から放射される熱及び光の少なくとも一方を反射する部材である。反射部材27は、定着ベルト21の内側で、ハロゲンヒータ23とステー25との間に配置されている。このような位置に反射部材27が配置されていることで、ハロゲンヒータ23から放射された熱又は光は、反射部材27によって定着ベルト21へ反射される。これにより、定着ベルト21を効率良く加熱することができる。また、反射部材27が、ステー25に付与される熱又は光を遮蔽することで、無駄な熱エネルギーの消費を抑え、省エネ性が向上する。
【0033】
ベルト支持部材28は、定着ベルト21の回転軸方向の両端側に配置され、定着ベルト21を回転可能に支持する部材である。ベルト支持部材28は、定着ベルト21の内側に挿入されるC字状又は筒状の支持部28aを有している。この支持部28aが定着ベルト21の内側に挿入されることで、定着ベルト21は、非回転時において基本的に周方向の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0034】
シート部材29は、ニップ形成部材24と位置決め部材26との間に配置されている。シート部材29は、樹脂製であり、可撓性及び弾力性を有する発泡樹脂シートで構成されている。シート部材29の材料としては、PI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PEK(ポリエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、あるいはこれらの材料にフィラーを含んだものが挙げられる。これらの中でも、特に耐熱性に優れるPIが好ましい。
【0035】
図4は、位置決め部材26とニップ形成部材24とが分離した状態を示す斜視図、図5は、位置決め部材26とニップ形成部材24とが組み付けられた状態を示す斜視図である。なお、図4及び図5において、位置決め部材26とニップ形成部材24との間に介在するシート部材29は省略している。
【0036】
図4及び図5に示すように、位置決め部材26は、ベース部26aと、突片部26bと、上流側立ち上がり部26cと、下流側立ち上がり部26dと、を有している。突片部26bは、用紙搬送方向Yにおけるベース部26aの下流端部側で加圧ローラ22側とは反対側(図4における左方向)に立ち上がると共に、先端側が折り返されるように屈曲している。下流側立ち上がり部26dは、突片部26bよりも用紙搬送方向Yの下流側でベース部26aから加圧ローラ22側とは反対側に立ち上がるように設けられている。上流側立ち上がり部26cは、用紙搬送方向Yにおけるベース部26aの上流端部側でベース部26aから加圧ローラ22側とは反対側に立ち上がるように設けられている。また、上流側立ち上がり部26cの先端側には、用紙搬送方向Yの上流側に向かって屈曲するように形成された屈曲部26fが設けられている。
【0037】
図3に示すように、位置決め部材26とニップ形成部材24とが組み付けられた状態では、位置決め部材26の下流側立ち上がり部26dがニップ形成部材24の下流側立ち上がり部24cに接触すると共に、位置決め部材26の屈曲部26fの先端がニップ形成部材24の上流側立ち上がり部24bに接触する。これらの接触により、位置決め部材26に対するニップ形成部材24の用紙搬送方向Yの移動が規制される。さらに、この状態で、位置決め部材26の屈曲部26fの一部に設けられた係合突起26g(図5参照)が、ニップ形成部材24の上流側立ち上がり部24bに設けられた係合凹部24eに係合することで、位置決め部材26に対するニップ形成部材24の長手方向(ベルト回転軸方向)の移動が規制される。
【0038】
また、図3に示すように、位置決め部材26とステー25とが組み付けられた状態では、位置決め部材26の下流側立ち上がり部26b及び上流側立ち上がり部26cが、ステー25を挟むようにしてその両端面に接触することで、ステー25に対する位置決め部材26の用紙搬送方向Yの移動が規制される。また、この状態で、位置決め部材26のベース部26aに設けられた突起26h(図5参照)が、ステー25に係合することで、ステー25に対する位置決め部材26の長手方向(ベルト回転軸方向)の移動が規制される。
【0039】
以上のように、位置決め部材26とニップ形成部材24とステー25の相互間の各方向の移動が規制されることで、位置決め部材26を介してニップ形成部材24とステー25が位置決めされる。
【0040】
ところで、上述の実施形態に係る定着装置とは別のベルト式定着装置として、ニップ形成部材が樹脂材料で構成されたものがある。このニップ形成部材は、加圧ローラからの圧力を受けてニップ部を形成する役割のほかに、ステーへの熱伝達を抑制する断熱効果の役割も兼ねる。すなわち、定着ベルトとステーの間に、熱伝達率の低いニップ形成部材があることで、定着ベルトからステーへの熱の移動が抑制される。これにより、定着ベルトを効果的に加熱することができ、ファーストプリントタイムの短縮や省エネ効果の向上を実現できる。
【0041】
しかしながら、このような樹脂製のニップ形成部材を用いた構成では、断熱効果が高い反面、連続印刷時に定着ベルトの非通紙領域で温度上昇しやすいといった課題がある。これに対して、上述の実施形態のように、ニップ形成部材として熱伝導率の高いものを用いた場合は、ニップ形成部材によって定着ベルトの局部的な蓄熱を周囲に分散することができるため、定着ベルトの非通紙領域における過剰な温度上昇を抑制することができる。しかしながら、熱伝導率の高いニップ形成部材とこれを支持するステーが直接接触した状態で保持されると、定着ベルトの熱がステーに移動しやすくなるため、定着ベルトの加熱効率や省エネ性が低下する。
【0042】
そこで、上述の実施形態では、定着ベルトからステーへの熱伝達を抑制するため、図2に示すように、ニップ形成部材24と位置決め部材26との間に樹脂製のシート部材29を介在させている。シート部材29は、ニップ形成部材24や位置決め部材26、ステー25に比べて熱伝導率が低いため、シート部材29によって定着ベルト21からステー25への熱伝達を抑制できる。これにより、定着ベルト21の加熱効率と省エネ性を向上させることができる。
【0043】
また、シート部材29は、可撓性及び弾力性を有するシートであるため、シート部材29がニップ形成部材24と位置決め部材26とによって挟まれると、ニップ形成部材24や位置決め部材26の形状に倣ってシート部材29が変形する。このため、ニップ形成部材24と位置決め部材26との間に部分的な隙間が生じるのを抑制できる。
【0044】
シート部材29とこれを挟む両部材との間に部分的な隙間があると、隙間がある部分では空気層によってニップ形成部材24から位置決め部材26やステー25への熱伝達がされにくくなる。反対に、隙間の無い部分では熱伝達されやすい。このため、ニップ形成部材上で温度ムラが発生し、温度ムラが画像の定着性に影響を与えて異常画像(光沢度ムラや局部的な定着性の低下)が発生する虞がある。また、二部材間に部分的な隙間があると、部材の姿勢や位置が安定しにくくなる懸念もある。
【0045】
これに対して、上述の実施形態では、シート部材29がニップ形成部材24と位置決め部材26の形状に倣って変形することで、部分的な隙間を発生しにくくすることができる。これにより、ニップ形成部材24の温度ムラを抑制でき、良好な画像が得られるようになる。また、ニップ形成部材24の姿勢や位置も安定させることができる。
【0046】
また、上述の実施形態のように、シート部材29が発泡樹脂シートで構成されている場合は、加圧ローラ22からの加圧力が加わった際にシート材29中の気泡が押し潰されることでシート部材29が圧縮される。このため、ニップ形成部材24と位置決め部材26の互いに向かい合う面同士の平行度及び平面度が僅かに異なる場合であっても、これらの面同士の隙間を圧縮されたシート部材29によって埋めることができる。従って、シート部材29が発泡樹脂シートである場合は、部分的な隙間の発生を高度に抑制することができる。
【0047】
また、シート部材29が発泡樹脂シートである場合は、薄いながらも内部に存在する多数の気泡によって高い断熱性が得られるため、小型化に有利である。すなわち、定着ベルト21の内側にシート部材29が配置されても、シート部材29が他の部材の設置スペースを圧迫することがほとんどないので、定着装置の小型化を図れるようになる。
【0048】
また、シート部材29が適度な弾力性(圧縮性)を有しつつ良好な可撓性を有するには、シート部材29の厚さが0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。より好ましくは、シート部材29の厚さが0.3mm以上1.0mm以下であるのがよい。
【0049】
図3に示す例では、シート部材29が、ニップ形成部材24のベース部24aと位置決め部材26のベース部26aの間のみに介在している。このように、シート部材29は、ニップ形成部材24と位置決め部材26とが接触する部分(これらが直接接触する部分のほか、これらが他の部材を介して間接的に接触する部分も含む。以下同様。)の一部の領域に配置されてもよい。また、シート部材29は、ニップ形成部材24と位置決め部材26とが接触する部分全体に渡って介在してもよい。具体的に、図3に示す例で言えば、シート部材29は、ニップ形成部材24及び位置決め部材26のそれぞれのベース部24a,26aの間に加え、それぞれの下流側立ち上がり部24c,26dの間、及び、ニップ形成部材24の上流側立ち上がり部24bと位置決め部材26の屈曲部26fとの間に介在してもよい。この場合、ニップ形成部材24から位置決め部材26への熱伝達をより一層抑制できるようになる。
【0050】
以下、上述の実施形態(第1実施形態)とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の説明では、主に異なる部分について説明し、その他の部分については上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
図6に、本発明の第2実施形態の構成を示す。
【0052】
図6に示すように、第2実施形態では、樹脂製のシート部材29が、位置決め部材26とステー25との間に介在している。この場合、位置決め部材26からステー25への熱伝達を効果的に抑制でき、定着ベルト21の加熱効率及び省エネ性の向上を図れる。また、シート部材29が位置決め部材26とステー25との間で圧縮された際、シート部材29が位置決め部材26とステー25の形状に倣って変形することにより、位置決め部材26とステー25との間に部分的な隙間が生じるのを抑制できる。これにより、ニップ形成部材24の温度ムラを抑制でき、良好な画像が得られるようになる。また、ニップ形成部材24の姿勢や位置も安定させることができる。
【0053】
図6に示す例では、シート部材29が、位置決め部材26のベース部26aとステー25との間のみに介在している。このように、シート部材29は、位置決め部材26とステー25が接触する部分(これらが直接接触する部分のほか、これらが他の部材を介して間接的に接触する部分も含む。以下同様。)の一部の領域に配置されてもよい。また、シート部材29は、位置決め部材26とステー25とが接触する部分全体に渡って介在してもよい。具体的に、図6に示す例で言えば、シート部材29は、位置決め部材26のベース部26aとステー25との間に加え、位置決め部材26の下流側立ち上がり部26dとステー25との間、及び、位置決め部材26の上流側立ち上がり部26cとステー25との間に介在してもよい。この場合、位置決め部材26からステー25への熱伝達をより一層抑制できるようになる。
【0054】
第2実施形態では、上述の第1実施形態とは異なり、ニップ形成部材24と位置決め部材26との間にはシート部材29が介在していない。このため、ニップ形成部材24から位置決め部材26への熱伝達は、第1実施形態に比べて積極的に行われる。従って、加熱効率及び省エネ性の向上を重視する場合は、第2実施形態の構成ではなく、第1実施形態の構成を採用することが望ましい。ただし、第2実施形態における位置決め部材26は、ニップ形成部材24を介して定着ベルト21の熱を均一化する補助的な均熱部材として機能することができる。すなわち、第2実施形態では、位置決め部材26によってニップ形成部材24の熱をさらに分散して均一化することができるので、定着ベルト21の局部的な温度上昇をより効果的に抑制することが可能である。
【0055】
図7に、本発明の第3実施形態の構成を示す。
【0056】
図7に示す第3実施形態では、樹脂製のシート部材29が、ニップ形成部材24と位置決め部材26との間、及び、位置決め部材26とステー25との間の、両方に介在している。この場合、ニップ形成部材24から位置決め部材26への熱伝達と、位置決め部材26からステー25への熱伝達を効果的に抑制でき、加熱効率及び省エネ性をより一層向上させることができる。また、各シート部材29が圧縮された際、各シート部材29がこれらを挟む部材の形状に倣って変形することにより、各シート部材29を挟む部材の間に部分的な隙間が生じるのを抑制できる。これにより、ニップ形成部材24の温度ムラを抑制でき、良好な画像が得られるようになると共に、ニップ形成部材24の姿勢や位置も安定させることができる。
【0057】
また、第3実施形態においても、上述の各実施形態と同様に、シート部材29は、ニップ形成部材24と位置決め部材26との接触部分、及び、位置決め部材26とステー25との接触部分の、それぞれの一部に介在していてもよいし、全体に介在していてもよい。
【0058】
図8に、本発明の第4実施形態の構成を示す。
【0059】
図8に示す第4実施形態では、位置決め部材26が省略されている。従って、本実施形態では、ニップ形成部材24とステー25との間に、シート部材29のみが介在している。このため、シート部材29は、ニップ形成部材24とステー25のそれぞれに直接接触している。この場合、シート部材29によってニップ形成部材24からステー25への熱伝達が効果的に抑制されるので、定着ベルト21の加熱効率及び省エネ性の向上を図れる。また、シート部材29がニップ形成部材24とステー25との間で圧縮された際、シート部材29がニップ形成部材24とステー25の形状に倣って変形するため、ニップ形成部材24とステー25との間に部分的な隙間が生じるのを抑制できる。これにより、ニップ形成部材24の温度ムラを抑制でき、良好な画像が得られるようになると共に、ニップ形成部材24の姿勢や位置も安定させることができる。
【0060】
また、第4実施形態においても、シート部材29は、ニップ形成部材24とステー25との接触部分の一部に介在していてもよいし、接触部分の全体に介在していてもよい。
【0061】
上述の実施形態では、ニップ形成部材24とステー25との間にシート部材29が介在する構成を例に説明した。しかしながら、本発明は、上述の実施形態に係る構成に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。例えば、ニップ形成部材24とステー25との間に介在する中間部材は、位置決め部材26とは別の部材であってもよい。
【0062】
また、本発明は、用紙に画像を定着することなく用紙を搬送する搬送装置など、定着装置以外のベルト装置にも適用可能である。このようなベルト装置においても本発明を適用することで、ニップ形成部材とこれを支持する支持部材との間に部分的な隙間が生じるのを抑制し、ニップ形成部材の姿勢や位置の安定化を図ることが可能である。
【0063】
また、本発明が適用される画像形成装置は、図1に示すような電子写真方式の画像形成装置に限らない。本発明は、インクジェット方式の画像形成装置やその他の画像形成装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1Y,1M,1C,1Bk 作像ユニット(画像形成部)
9 定着装置
19 加熱装置
21 定着ベルト(ベルト部材)
22 加圧ローラ(対向部材)
23 ハロゲンヒータ(加熱部材)
24 ニップ形成部材
25 ステー(支持部材)
26 位置決め部材(中間部材)
29 シート部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【文献】特開2016-102894号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8