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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】粒子分離装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20240105BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C12M1/26
C12M1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020504058
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2019009373
(87)【国際公開番号】W WO2019172428
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2018042205
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高田 耕児
(72)【発明者】
【氏名】橋岡 真義
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136273(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/049196(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0244714(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00 - 1/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的粒子と、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
排出口を有するバレルおよびピストンを備え、該ピストンを押圧することにより、該バレル内の気体を該排出口から押し出すシリンジと、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記バレルの排出口に接続された第1管路、該第1管路から二股に分岐した一方であって前記サンプル液収容部材の注入口に接続される第2管路、および該第1管路から二股に分岐した他方であって前記バッファ液収容部材の注入口に接続される第3管路を備える分岐管と、
前記第1管路の途中に介装され、前記シリンジ側が陽圧時に開放し陰圧時に閉塞する逆流防止用の第1一方向弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記ピストンを押圧することにより、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、を有する粒子分離装置。
【請求項2】
前記標的粒子は、細胞である請求項1に記載の粒子分離装置。
【請求項3】
前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含む請求項2に記載の粒子分離装置。
【請求項4】
前記第2管路は前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能であり、前記第3管路は前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能である請求項1~3のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項5】
前記第1管路の前記第1一方向弁よりも前記シリンジ側の壁部に内外に貫通するように設けられ、前記シリンジ側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放する第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口をさらに有する請求項1~4のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項6】
標的粒子と、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
排出口を有するチャンバーおよび可動部を備え、該可動部を一定量動かすことにより、該チャンバー内の気体を該排出口から一定量押し出す圧力発生装置と、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記チャンバーの排出口に接続された第1管路、該第1管路から二股に分岐した一方であって前記サンプル液収容部材の注入口に接続される第2管路、および該第1管路から二股に分岐した他方であって前記バッファ液収容部材の注入口に接続される第3管路を備える分岐管と、
前記第1管路の途中または前記チャンバーの排出口に介装され、前記圧力発生装置側が陽圧時に開放し陰圧時に閉塞する逆流防止用の第1一方向弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記圧力発生装置が前記サンプル液収容部材の内部および前記バッファ液収容部材の内部を昇圧することにより、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、を有する粒子分離装置。
【請求項7】
前記標的粒子は、細胞である請求項6に記載の粒子分離装置。
【請求項8】
前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含む請求項7に記載の粒子分離装置。
【請求項9】
前記第2管路は前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能であり、前記第3管路は前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能である請求項6~8のいずれかに記載の粒子分離装置。
【請求項10】
前記第1管路の前記第1一方向弁よりも前記圧力発生装置側の壁部または前記チャンバーの壁部に内外に貫通するように設けられ、前記圧力発生装置側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放する第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口をさらに有する請求項6~9のいずれかに記載の粒子分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的粒子を含む液体中から該標的粒子を分離する粒子分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんの原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から、腫瘍細胞が遊離し、血液中へ浸潤することが知られている。このような腫瘍細胞は、血中循環腫瘍細胞(CTC:Circulating Tumor Cells)と呼ばれ、末梢血中の血中循環腫瘍細胞の数を測定することにより、がんの進行状態や治療効果(予後)の把握、あるいは再発・転移の早期発見等を診断する情報となり得るものと期待されている。
【0003】
末梢血中の血中循環腫瘍細胞の数を測定する方法としては、たとえば特許文献1に記載されるような、細胞試料液中の細胞を蛍光標識抗体で染色したうえで、細胞試料液をセルソーターチップの流路に流し、画像処理型セルソーターを用いて回収すべき血中循環腫瘍細胞とそれ以外の細胞とを分離して、その分離された血中循環腫瘍細胞をカウントする手法が知られている。しかしながら、画像処理型セルソーターは、セルソーターチップ内の流れを観察するためのカメラ、カメラで撮影された画像中の細胞の種類を区別して認識するための画像認識システム、および区別された細胞を分別して異なる流路に移すために細胞に外力(電圧等)を与える装置などを必須の構成要素とするものであるため、高価で大型な装置であり、簡便に使用できるものではないという問題があった。
【0004】
このようなセルソーター等の複雑な構造の機構を備える装置等を用いることなく、血中循環腫瘍細胞の数を測定するためにより簡便に使用できる方法としては、血中循環腫瘍細胞が血球細胞よりもサイズが大きい傾向があることを利用した、水力学的層流分離の一つである決定論的横置換(DLD:Deterministic Lateral Displacement)法を用いた方法が知られている(たとえば特許文献2、非特許文献1参照)。この分離技術を利用した分離装置として、非特許文献2の図2には、DLD法の基本的な構造に基づいて設計されたマイクロ流路チップ(基板)にサンプル液を注入するシリンジおよびチューブを有するサンプル液注入系と、バッファ液を注入するシリンジおよびチューブを有するバッファ液注入系とを備えたものが実験用として図示されている。
【0005】
しかしながら、非特許文献2に記載の分離装置では、サンプル液注入系とバッファ液注入系とは互いに独立しており、それぞれについてシリンジおよびチューブを設けているため、サンプル液が注入されたシリンジとバッファ液が注入されたシリンジとを同時に同量だけ操作(ピストンを押圧)する必要があり、一人で行う場合には両手で操作する必要がある等、操作が煩雑であるとともに、両者を注意深く均等に操作しないと、サンプル液とバッファ液とで流量が大きく相違してしまう場合があり、適切な分離を行えないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開2011/105507号
【文献】米国特許第7,735,652号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Huang et al.,“Continuous Particle Separation Through Deterministic Lateral Displacement”,Science 304,p.987-990,2004.
【文献】岡野弘聖、外6名、「血中循環腫瘍細胞捕捉のための寸法によるファーストスクリーニング-細胞の硬さの影響-」、2014年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集、精密工学会、p.453-454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、操作が簡易で、適切に粒子を分離し得る粒子分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る粒子分離装置は、
標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
排出口を有するバレルおよびピストンを備え、該ピストンを押圧することにより、該バレル内の気体を該排出口から押し出すシリンジと、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記バレルの排出口に接続された第1管路、該第1管路から二股に分岐した一方であって前記サンプル液収容部材の注入口に接続される第2管路、および該第1管路から二股に分岐した他方であって前記バッファ液収容部材の注入口に接続される第3管路を備える分岐管と、
前記第1管路の途中に介装され、前記シリンジ側が陽圧時に開放し陰圧時に閉塞する逆流防止用の第1一方向弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記ピストンを押圧することにより、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、を有する。
【0010】
本発明の第1の観点に係る粒子分離装置を用いて粒子の分離を行う際には、シリンジのピストンを押圧することにより、シリンジのバレル内の気体が押し出されて分岐管の内圧が高められ、その圧力が、サンプル液が収容されたサンプル液収容部材およびバッファ液が収容されたバッファ液収容部材に同時に作用し、サンプル液およびバッファ液がDLDマイクロ流路チップの対応する導入口に供給される。したがって、単一のシリンジを操作するだけでよいので、片手で操作し得るため、操作が簡易であるとともに、特に注意深く操作しなくても、サンプル液とバッファ液との両者を適切な流量で流すことができ、適切な分離を実現することが可能となる。また、本発明の第1の観点に係る粒子分離装置は、第1管路の途中に逆流防止用の第1一方向弁を有するので、シリンジのピストンを手で押圧して、第1管路の第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を高めた後に、ピストンから手を離してもシリンジが押し戻されることがない。
【0011】
本発明の第1の観点に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含むことができる。本発明の第1の観点に係る粒子分離装置は、サンプル液が標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含む場合にも、該標的粒子を分離することができる。
【0012】
本発明の第1の観点に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子として、細胞を含む液体とすることができる。この場合において、前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含むものとすることができる。本発明の第1の観点に係る粒子分離装置は、血中循環腫瘍細胞等の細胞の分離に好適に用いることができる。
【0013】
本発明の第1の観点に係る粒子分離装置において、前記第2管路を前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能とし、前記第3管路を前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能とすることができる。このように構成することにより、サンプル液収容部材の注入口から第2管路を取り外した状態で、サンプル液をサンプル液収容部材に注入した後にサンプル液収容部材の注入口に第2管路を装着し、バッファ液収容部材の注入口から第3管路を取り外した状態で、バッファ液をバッファ液収容部材に注入した後にバッファ液収容部材の注入口に第3管路を装着することができる。
【0014】
本発明の第1の観点に係る粒子分離装置において、前記第1管路の前記第1一方向弁よりも前記シリンジ側の壁部に内外に貫通するように設けられ、前記シリンジ側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放する第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口をさらに有することができる。このように構成することにより、シリンジを粒子分離装置から取り外すことなく、押圧したピストンを引き戻してから再び押圧することが可能となるので、ピストンをポンピング(押し引き)することにより、第1管路の第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を逐次的に高めることができる。したがって、シリンジとして、バレル断面積が小さい小容量のものを用いても多量のサンプル液およびバッファ液を円滑にDLDマイクロ流路チップに供給することができ、バレル断面積が大きい大容量シリンジの使用に伴う装置の大型化やシリンジ操作性低下を適切に防止することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る粒子分離装置は、
標的粒子を含むサンプル液から該標的粒子を分離する粒子分離装置であって、
排出口を有するチャンバーおよび可動部を備え、該可動部を一定量動かすことにより、該チャンバー内の気体を該排出口から一定量押し出す圧力発生装置と、
注入口および排出口を有し、前記サンプル液が注入されるサンプル液収容部材と、
注入口および排出口を有し、バッファ液が注入されるバッファ液収容部材と、
前記チャンバーの排出口に接続された第1管路、該第1管路から二股に分岐した一方であって前記サンプル液収容部材の注入口に接続される第2管路、および該第1管路から二股に分岐した他方であって前記バッファ液収容部材の注入口に接続される第3管路を備える分岐管と、
前記第1管路の途中または前記チャンバーの排出口に介装され、前記圧力発生装置側が陽圧時に開放し陰圧時に閉塞する逆流防止用の第1一方向弁と、
前記サンプル液収容部材の排出口に接続されるサンプル液導入口、前記バッファ液収容部材の排出口に接続されるバッファ液導入口、前記圧力発生装置が前記サンプル液収容部の内部および前記バッファ液収容部の内部を昇圧することにより、該サンプル液導入口を介して導入されたサンプル液と該バッファ液導入口を介して導入されたバッファ液とが接しながら並行して流れる複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えるDLD流路部、該DLD流路部でサンプル液からバッファ液に移動した標的粒子を含むバッファ液を排出するバッファ液排出口、および該DLD流路部で標的粒子がバッファ液に移動した後のサンプル液を排出するサンプル液排出口を備えるDLDマイクロ流路チップと、を有する。
【0016】
本発明の第2の観点に係る粒子分離装置を用いて粒子の分離を行う際には、圧力発生装置の可動部を一定量動かすことにより、圧力発生装置のチャンバー内の気体が一定量押し出されて分岐管の内圧が高められ、その圧力が、サンプル液が収容されたサンプル液収容部材およびバッファ液が収容されたバッファ液収容部材に同時に作用し、サンプル液およびバッファ液がDLDマイクロ流路チップの対応する導入口に供給される。したがって、単一の圧力発生装置を備えるだけでよいので、電力等の人力以外の動力によって駆動する場合には装置を簡素化できるとともに、特段の配慮をしなくても、サンプル液とバッファ液との両者を適切な流量で流すことができ、適切な分離を実現することが可能となる。また、本発明の第2の観点に係る粒子分離装置は、第1管路の途中またはチャンバーの排出口に逆流防止用の第1一方向弁を有するので、圧力発生装置の可動部を一定量動かして、第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を高めた後に、可動部を止めても第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を保持しやすくなるので、圧力保持のための圧縮空気タンク等を設ける必要が無く、装置を簡素化できる。
【0017】
本発明の第2の観点に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含むことができる。本発明の第2の観点に係る粒子分離装置は、サンプル液が標的粒子とサイズの異なる非標的粒子を含む場合にも、該標的粒子を分離することができる。
【0018】
本発明の第2の観点に係る粒子分離装置において、前記サンプル液は、前記標的粒子として、細胞を含む液体とすることができる。この場合において、前記サンプル液は、血中循環腫瘍細胞を前記標的粒子として含むものとすることができる。本発明の第2の観点に係る粒子分離装置は、血中循環腫瘍細胞等の細胞の分離に好適に用いることができる。
【0019】
本発明の第2の観点に係る粒子分離装置において、前記第2管路を前記サンプル液収容部材の注入口に着脱可能とし、前記第3管路を前記バッファ液収容部材の注入口に着脱可能とすることができる。このように構成することにより、サンプル液収容部材の注入口から第2管路を取り外した状態で、サンプル液をサンプル液収容部材に注入した後にサンプル液収容部材の注入口に第2管路を装着し、バッファ液収容部材の注入口から第3管路を取り外した状態で、バッファ液をバッファ液収容部材に注入した後にバッファ液収容部材の注入口に第3管路を装着することができる。
【0020】
本発明の第2の観点に係る粒子分離装置において、前記第1管路の前記第1一方向弁よりも前記圧力発生装置側の壁部または前記チャンバーの壁部に内外に貫通するように設けられ、前記圧力発生装置側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放する第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口をさらに有することができる。このように構成することにより、圧力発生装置を粒子分離装置から取り外すことなく、チャンバー内の可動部に陽圧発生のための動作と反対の動作(すなわち陰圧を発生させる動作)をさせてから、再び可動部に陽圧発生の動作をさせることが可能となるので、陽圧発生のための動作を繰り返すことにより、第1管路の第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を逐次的に高めることができる。したがって、圧力発生装置として、チャンバーが小容量のものを用いても多量のサンプル液およびバッファ液を円滑にDLDマイクロ流路チップに供給することができ、大容量のチャンバーを備えた圧力発生装置の使用に伴う装置の大型化や高コスト化を適切に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態に係るCTC分離装置の全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
図2図2は、図1のCTC分離装置のDLDマイクロ流路チップの概略構成を示す平面図である。
図3図3は、図2に示すDLDマイクロ流路チップの粒子分離の原理を示す図である。
図4図4は、本発明の別の実施形態に係るCTC分離装置の全体構成の概略を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、標的粒子および該標的粒子と異なるサイズの非標的粒子が分散したサンプル液から該標的粒子を分離(分画)するための、本発明が適用された粒子分離装置の実施形態として、血球を非標的粒子として、血中循環腫瘍細胞(CTC)を標的粒子として含む血液由来の液をサンプル液とし、該サンプル液から血中循環腫瘍細胞を分離するCTC分離装置について、図面を参照して説明する。
【0023】
ただし、本発明は、血中循環腫瘍細胞を分離するものに限定されず、血中循環腫瘍細胞以外の細胞を標的粒子として、該標的粒子とサイズの異なる細胞を非標的粒子として含む体液(血液、リンパ液、唾液、尿、涙等を含む)から標的粒子に係る細胞を分離するものに適用可能である。また、標的粒子および非標的粒子としては、細胞にも限定されず、サイズの異なる2種以上の粒子が分散した液体中から標的粒子に係る粒子を分離するものに広く適用可能である。なお、ここでいう「分散」とは、粒子(細胞)が液体中に粒子単体で浮遊している場合のみならず、その一部または全部がクラスターとして浮遊している場合が含まれ、また、液体中に散らばって浮遊している場合のみならず、ある程度沈降している場合も含まれる。対象とする標的粒子および非標的粒子の粒径は、0.1~1000μm程度である。
【0024】
さらに、本発明において、サンプル液は分離対象である標的粒子を含むものであればよく、該標的粒子とサイズの異なる非標的粒子は、必ずしも含んでいる必要はない。たとえば、単一サイズの粒子または所定のサイズ以上の粒径を有する複数種の粒子を含むバッファ液の交換(粒子を含むバッファ液をサンプル液として、該サンプル液と成分の異なるまたは同一の他のバッファ液に該粒子を移す)を行う場合や粒子の濃度の濃縮を行う場合にも、本発明は適用可能である。また、「標的粒子」とは分離の対象の粒子という意味であり、何らかの利用(たとえば検査)に供するために分離回収したい粒子という意味のみならず、不要なために分離除去したい(取り除きたい)粒子という意味も含まれる。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係るCTC分離装置1は、圧力発生装置としてのシリンジ2、圧力分配部(分岐管)3、サンプル液収容部(サンプル液収容部材)4、バッファ液収容部(バッファ液収容部材)5、分離部(DLDマイクロ流路チップ)6、サンプル液回収部7,およびバッファ液回収部8を概略備えて構成されている。
【0026】
シリンジ2は、排出口21aを有するバレル(外筒)21およびピストン22からなるピストンシリンジであり、ピストン22を押圧(押し込む方向にスライド)することにより、バレル21内の気体(空気)を排出口21aから押し出し(排出し)、引き出す方向にスライドすることにより、排出口21aから気体を吸引する。
【0027】
圧力分配部3は、シリンジ2により発生された圧力を分配するものであり、シリンジ2のバレル21の排出口21aに接続された第1管路31、第1管路31から二股に分岐した一方であって後述するサンプル液収容部4のバレル41の注入口41aに接続される第2管路32、および第1管路31から二股に分岐した他方であって後述するバッファ液収容部5のバレル51の注入口51aに接続される第3管路33を備えている。
【0028】
第1管路31は、一方向弁(第1一方向弁)31a、一方向弁(第2一方向弁)31b、T型チューブコネクタ31c、三方活栓31d、およびチューブ31eを備えて構成されている。
【0029】
第1管路31の途中には、一方向弁31aが介装されており、一方向弁31aは、上流側(シリンジ2側)が下流側(第2管路32側、第3管路33側)に比して、陽圧時に開放し陰圧時に閉塞するように設けられた逆流防止用の弁である。一方向弁31aとしては、ダイヤフラム式チェックバルブを用いることができる。
【0030】
第1管路31の一方向弁31aよりもシリンジ2側には、外気吸入用の通気口が設けられている。通気口は、第1管路31の壁部に内外に貫通するように設けられ、シリンジ2側が陽圧時に閉塞し陰圧時に開放するように設けられた一方向弁(第2一方向弁)31bを備えている。一方向弁31bとしては、一方向弁31aと同様に、ダイヤフラム式チェックバルブを用いることができる。通気口は、本実施形態では、第1~第3接続口を有するT型チューブコネクタ31cを第1管路31の途中に介装する、すなわち、T型チューブコネクタ31cの第1接続口をシリンジ2のバレル21の排気口21aに接続し、第2接続口を一方向弁31aの一方の接続口に接続し、第3接続口を一方向弁31bの一方の接続口に接続し、一方向弁31bの他方の接続口を外部に開放することにより実現している。
【0031】
第1管路31の一方向弁31aよりも下流側(サンプル液収容部4側、バッファ液収容部5側)には、第1~第3接続口および流路変更用のレバーを備える三方活栓31dが介装されている。より具体的には、三方活栓31dの第1接続口が一方向弁31aの下流側の接続口に接続され、第2接続口にチューブ31eが接続され、第3接続口は外部に開放されている。三方活栓31dは、そのレバーを所定の向きに回動させることにより、第1接続口から第2接続口に至る経路のみを開放し、第1接続口から第3接続口に至る経路のみを開放し、または第2接続口から第3接続口に至る経路のみを開放することができる。
【0032】
第2管路32は、チューブ32aおよびチューブ32aの一端に取り付けられたアダプタ32bから構成されている。第2管路32のアダプタ32bは、後述するサンプル液収容部4のバレル41の注入口41aに着脱可能に装着される。第3管路33は、チューブ33aおよびチューブ33aの一端に取り付けられたアダプタ33bから構成されている。第3管路33のアダプタ33bは、後述するバッファ液収容部5のバレル51の注入口51aに着脱可能に装着される。
【0033】
第1管路31のチューブ31eの下流側(三方活栓31dと反対側)の端部は、第1~第3接続口を有するY型チューブコネクタ34の第1接続口に接続されている。第2管路32のチューブ32aの上流側(アダプタ32bと反対側)の端部は、Y型チューブコネクタ34の第2接続口に接続されており、第3管路33のチューブ33aの上流側(アダプタ33bと反対側)の端部は、Y型チューブコネクタ34の第3接続口に接続されている。
【0034】
サンプル液収容部4は、バレル(シリンジの外筒に相当する部材)41を備え、バレル41は、注入口41aおよび排出口41bを有している。バレル41には、標的粒子(血中循環腫瘍細胞)および該標的粒子と異なるサイズの非標的粒子(血球)を含むサンプル液(血液)Sが収容される。なお、サンプル液Sとしては、血液を希釈したもの(たとえば、血液を濃度4mMのEDTAを含有するPBSで2倍希釈したもの)を用いることができる。
【0035】
バレル41は、注入口41aが上方に、排出口41bが下方に位置するように、その長手方向(軸方向)が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。サンプル液Sは、バレル41の注入口41aから第2管路32のアダプタ32bを取り外した状態で注入され、注入後にバレル41の注入口41aに第2管路32のアダプタ32bが気密に装着される。バレル41内に収容されたサンプル液Sは、第2管路32を介して圧力が作用した場合に、排出口41bから排出される。
【0036】
バッファ液収容部5は、バレル(シリンジの外筒に相当する部材)51を備え、バレル51は、注入口51aおよび排出口51bを有している。バレル51には、バッファ液Bが収容される。バッファ液Bとしては、等張液を一種または複数種混合したものを用いることができ、たとえばPBSまたはグリセリン含有PBS等を用いることができる。
【0037】
バレル51は、バレル41と同様に、注入口51aが上方に、排出口51bが下方に位置するように、その長手方向(軸方向)が略鉛直に設定された状態で、不図示のスタンド等に支持されている。バッファ液Bは、バレル51の注入口51aから第3管路33のアダプタ33bを取り外した状態で、たとえばサンプル液Sと同量だけ注入され、注入後にバレル51の注入口51aに第3管路33のアダプタ33bが気密に装着される。バレル51内に収容されたバッファ液Bは、第3管路33を介して圧力が作用した場合に、排出口51bから排出される。
【0038】
分離部6は、DLDマイクロ流路チップ61および漏れ防止用のチップホルダ(不図示)を備えて構成されている。DLDマイクロ流路チップ61は、図2にも示されているように、サンプル液導入口61a、バッファ液導入口61b、DLD流路部61c、サンプル液排出口61d、およびバッファ液排出口61eを備えて構成されている。
【0039】
サンプル液導入口61aには、チューブ41cを介して、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bが接続される。バッファ液導入口61bには、チューブ51cを介して、バッファ液収容部5のバレル51の排出口51bが接続される。DLD流路部61cは、複数の微細なピラーが配設されたDLDマイクロ流路構造を備えている。なお、DLD流路部61cと、サンプル液収容部4のバレル41の排出口41bからDLD流路部61cまでの流路(排出口41bと、チューブ41cと、サンプル液導入口61aと、DLD流路部61cと、からなる流路)、およびバッファ液収容部5のバレル51の排出口51bからDLD流路部61cまでの流路(排出口51bと、チューブ51cと、バッファ液導入口61bと、DLD流路部61cと、からなる流路)は、予めバッファ液(PBSまたはグリセリン含有PBS等)で満たしておくことが望ましい。
【0040】
シリンジ2のピストン22を押圧することにより供給される圧力により、サンプル液収容部4のバレル41内のサンプル液Sが、排出口41b、チューブ41cおよびサンプル液導入口61aを介してDLD流路部61cに導入されるとともに、バッファ液収容部5のバレル51内のバッファ液Bが、排出口51b、チューブ51cおよびバッファ液導入口61bを介してDLD流路部61cに導入される。
【0041】
サンプル液導入口61aを介して導入されたサンプル液と、バッファ液導入口61bを介して導入されたバッファ液とは、互いに接しながらそれぞれ層流として並行して、DLD流路部61c内を流れる。DLD流路部61cは、たとえば非特許文献1に記載されているような決定論的横置換(DLD)法の原理にしたがって配設された複数の微細なピラー(マイクロピラー)を有している。
【0042】
決定論的横置換法とは、図3に示すように、所定の規則にしたがって配設された複数のピラーPからなるピラー群に粒子の分散液を流した際に、小さい粒子は流れの方向に沿って進み、大きい粒子はピラーの存在によって流れの方向に沿う進行を妨げられる結果として、流れの方向に対して斜めに進む性質を利用した分離法である。ピラーPの間隔Gと、シフト量dとで決まるしきい値を適宜に設定することにより、該しきい値未満の径の粒子と該しきい値以上の径の粒子とを分離することができる。
【0043】
DLD流路部61c内において、サンプル液に含まれる比較的に大きい径のCTC(たとえば12μm程度)は、サンプル液の流れ方向に対して斜めに進み、サンプル液に接しながら層流として並行して流れるバッファ液Bに移動し、サンプル液からバッファ液に移動したCTCを含むバッファ液がバッファ液排出口61eに至る。DLD流路部61c内において、サンプル液に含まれる比較的に小さい径の血球(たとえば8μm程度)は、サンプル液の流れ方向に沿って進み、CTCが移動した(分離された)後のサンプル液とともに、サンプル液排出口61dに至る。なお、DLD流路部61c内において、サンプル液とバッファ液とは、互いに接しながら層流として並行して流れる際に、互いに僅かに混入し合うため、サンプル液排出口61dから排出されるサンプル液にはバッファ液の一部が、バッファ液排出口61eから排出されるバッファ液にはサンプル液の一部が含まれる場合がある。
【0044】
サンプル液排出口61dには、サンプル液回収部7のチューブ71を介してサンプル液回収容器72が接続されており、CTCが分離された後のサンプル液がサンプル液回収容器72に回収される。バッファ液排出口61eには、バッファ液回収部8のチューブ81を介してバッファ液回収容器82が接続されており、サンプル液から移動した(分離された)CTCを含むバッファ液がバッファ液回収容器82に回収される。
【0045】
被験者の血液からCTCの分離を行う際には、シリンジ2のピストン22を押圧することにより、シリンジ2のバレル21内の空気が押し出されて圧力分配部3(第1管路31、第2管路32および第3管路33)の内圧が高められ、その圧力がサンプル液Sが収容されたサンプル液収容部4のバレル41およびバッファ液Bが収容されたバッファ液収容部5のバレル51に同時に作用し、サンプル液Sおよびバッファ液Bが分離部6のDLDマイクロ流路チップ61の対応する導入口61a,61bに圧送される。したがって、シリンジ2は単一であるから、シリンジ2を片手で操作し得るため、操作が簡易であるとともに、特に注意深く操作しなくても、サンプル液Sとバッファ液Bとの両者を同じ流量で適切にDLDマイクロ流路チップ61に流すことができ、適切な分離を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1管路31の途中に、シリンジ2側が陽圧時に開放し陰圧時に閉塞する逆流防止用の一方向弁31aを介装しているため、シリンジ2のピストン22を押圧して押し出した空気が逆流することを防止することができる。したがって、シリンジ2のピストン22を手で押圧して第1管路31の一方向弁31aよりも下流側(第2管路32側、第3管路33側)の内圧を高めた後に、ピストン22から必要に応じて手を離すことができ、圧力を供給するための操作がし易い。
【0047】
さらに、本実施形態では、一方向弁31aに加えて、第1管路31の一方向弁31aよりもシリンジ2側に、T型チューブコネクタ31cおよび一方向弁31bで構成される外気吸入用の通気口を設けたので、一方向弁31aとの協働により、シリンジ2をT型チューブコネクタ31cに接続したままの状態で、一旦押圧したピストン22を引き戻して再び押圧する操作が可能となっている。したがって、シリンジ2をポンピング(ピストン22を押し引き)することで、第1管路31の一方向弁31aよりも下流側の内圧を逐次的に高めることができる。このため、シリンジ2として、バレル断面積が小さい小容量のものを用いても多量のサンプル液およびバッファ液を円滑にDLDマイクロ流路チップ61に供給することができ、バレル断面積が大きい大容量シリンジの使用に伴う装置の大型化やシリンジ操作性低下を適切に防止することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、サンプル液をサンプル液収容部4のバレル41に注入するため、第2管路32をバレル41の注入口41aに着脱可能とし、バッファ液をバッファ液収容部5のバレル51に注入するため、第3管路33をバレル51の注入口51aに着脱可能としているが、これらを着脱可能とせずに、または着脱可能とした上で、他の手段により、これらを注入し得るようにしてもよい。たとえば、第2管路32および第3管路33の途中に三方活栓をそれぞれ介装して、該三方活栓の経路を適宜に切り替えて、サンプル液またはバッファ液を対応するバレル41,51に注入するようにしてもよい。
【0049】
また、図1においては、シリンジ2のバレル21は、サンプル液収容部4のバレル41およびバッファ液収容部5のバレル51と同様に、略鉛直方向に沿って立てて設置しているように描かれているが、これに限られることはなく、第1管路31、第2管路32および第3管路33の一部または全部を柔軟な材質で構成して、その柔軟な部分が折れ曲がって、シリンジ2側が重力で垂れ下がるようにしてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、サンプル液およびバッファ液をDLDマイクロ流路チップ61に流すための圧力発生源となる圧力発生装置としてシリンジ2を用いたが、排出口を有するチャンバーおよび可動部を備え、該可動部を一定量動かすことにより、該チャンバー内の気体を該排出口から一定量押し出すものであれば、他の圧力発生装置を用いてもよく、電力等の人力以外の動力によって駆動する圧力発生装置を用いてもよい。他の圧力発生装置の具体例としては、可動部としてローターを備える電動ロータリーポンプ、可動部としてダイヤフラムを備える電動ダイヤフラムポンプ、可動部としてプランジャーを備える電動プランジャーポンプ、可動部としてピストンを備える電動ピストンポンプ、などの電動ポンプに採用されるチャンバーおよび可動部を備えた圧力発生装置を挙げることができるが、これらに限定されない。なお、上述した実施形態におけるシリンジ2は、チャンバーとしてバレル21を有し、そのチャンバー(バレル21)内部の圧力を変化させる可動部としてピストン22を有する圧力発生装置であると言い得る。
【0051】
シリンジ2以外の圧力発生装置を用いる場合において、逆流防止用の一方向弁(第1一方向弁)は、上述したシリンジ2を用いる実施形態の一方向弁31aと同様に第1管路31の途中に設けてもよいが、チャンバーの排出口(圧力発生装置におけるチャンバーから第1管路31に至るまでの経路)に逆流防止用の一方向弁が予め介装された圧力発生装置を用いて、その一方向弁を第1一方向弁として利用してもよい。このような逆流防止用の第1一方向弁を設けることによって、圧力発生装置の可動部を一定量動かして、第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を高めた後に、可動部を止めても第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を保持しやすくなり、その結果、圧力保持のための圧縮空気タンク等を設ける必要がなくなるので、装置を簡素化することが可能となる。
【0052】
また、第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口は、上述したシリンジ2を用いる実施形態の一方向弁31bと同様に第1管路31の壁部に設けてもよいが、圧力発生装置のチャンバー自体の壁部に内外に貫通するように一方向弁を備える外気吸入用の通気口が予め備えられた圧力発生装置を用いて、その一方向弁を第2一方向弁として利用してもよい。このような第2一方向弁を備える外気吸入用の通気口を設けることによって、圧力発生装置を粒子分離装置から取り外すことなく、チャンバー内の可動部に陽圧発生のための動作と反対の動作(すなわち陰圧を発生させる動作)をさせてから、再び可動部に陽圧発生の動作をさせることが可能となるので、陽圧発生のための動作を繰り返すことにより、第1管路の第1一方向弁よりも下流側(第2管路側、第3管路側)の内圧を逐次的に高めることができる。したがって、圧力発生装置として、チャンバーが小容量のものを用いても多量のサンプル液およびバッファ液を円滑にDLDマイクロ流路チップに供給することができ、大容量のチャンバーを備えた圧力発生装置の使用に伴う装置の大型化や高コスト化を適切に防止することが可能となる。なお、電動ロータリーポンプの機構を用いる場合には、ベーン等によりチャンバー内の排出口側の空間とチャンバー内の外気吸入用の通気口側の空間とを仕切って、外気吸入用の通気口からチャンバー内の気体が排出されないようにできるので、第2一方向弁を省略した外気吸入用の通気口を設けることができる。
【0053】
図4には、本発明の別の実施形態として、圧力発生装置として電動ロータリーポンプ9を有するCTC分離装置を示す。図4に示す実施形態では、電動ロータリーポンプ9の排出口(電動ロータリーポンプ9内のチャンバーから第1管路に至るまでの経路)に逆流防止用の一方向弁(不図示)が介装されている。
【0054】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0055】
1…CTC分離装置(粒子分離装置)
2…シリンジ(圧力発生装置)
21…バレル(チャンバー)
21a…排出口
22…ピストン(可動部)
3…圧力分配部(分岐管)
31…第1管路
31a…一方向弁(第1一方向弁)
31b…一方向弁(第2一方向弁、通気口)
31c…T型チューブコネクタ(通気口)
31d…三方活栓
32…第2管路
32a…チューブ
32b…アダプタ
33…第3管路
33a…チューブ
33b…アダプタ
34…Y型チューブコネクタ
4…サンプル液収容部(サンプル液収容部材)
41…バレル
41a…注入口
41b…排出口
41c…チューブ
5…バッファ液収容部(バッファ液収容部材)
51…バレル
51a…注入口
51b…排出口
51c…チューブ
6…分離部
61…DLDマイクロ流路チップ
61a…サンプル液導入口
61b…バッファ液導入口
61c…DLD流路部
61d…サンプル液排出口
61e…バッファ液排出口
7…サンプル液回収部
71…チューブ
72…サンプル液回収容器
8…バッファ液回収部
81…チューブ
82…バッファ液回収容器
9…電動ロータリーポンプ(圧力発生装置)
B…バッファ液
P…ピラー
S…サンプル液
図1
図2
図3
図4