(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】二次電池用電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240105BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20240105BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240105BHJP
C01B 32/174 20170101ALI20240105BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20240105BHJP
C01B 32/159 20170101ALI20240105BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20240105BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240105BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/02 Z
H01M4/62 Z
C01B32/174
C01B32/168
C01B32/159
C01B32/21
H01M4/139
H01M4/04 A
(21)【出願番号】P 2020011974
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500039865
【氏名又は名称】株式会社 美粒
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹下 誠
(72)【発明者】
【氏名】上島 貢
(72)【発明者】
【氏名】中野 満
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-238944(JP,A)
【文献】特開平7-057725(JP,A)
【文献】特開2019-192537(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/02
H01M 4/62
H01M 4/134
C01B 32/174
C01B 32/168
C01B 32/159
C01B 32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブ含有シートを備える二次電池用電極であり、
前記カーボンナノチューブ含有シートは、分散媒と、前記分散媒に非溶解性である乳化分散材料と、電極活物質と、平均長さが100μm以上であるカーボンナノチューブと、薄膜グラファイトとを含む乳化分散液から形成され、
前記乳化分散材料は、前記薄膜グラファイトに囲まれた状態で前記分散媒中に分散し、前記薄膜グラファイトの表面に前記カーボンナノチューブが付着している、二次電池用電極。
【請求項2】
カーボンナノチューブ含有シートを備える二次電池用電極であり、
前記カーボンナノチューブ含有シートは、分散媒と、前記分散媒に非溶解性である乳化分散材料と、電極活物質と、平均長さが100μm以上であるカーボンナノチューブとを含む乳化分散液から形成され、
前記乳化分散材料は、前記カーボンナノチューブに囲まれた状態で前記分散媒中に分散している、二次電池用電極。
【請求項3】
前記電極活物質がシリコン系負極活物質である、請求項1又は2に記載の二次電池用電極。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含む、請求項1~3の何れかに記載の二次電池用電極。
【請求項5】
前記乳化分散液が更に増粘剤を含む、請求項1~4の何れかに記載の二次電池用電極。
【請求項6】
前記分散媒が水を含み、そして前記増粘剤が水溶性高分子である、請求項5に記載の二次電池用電極。
【請求項7】
前記乳化分散材料が油である、請求項1~6の何れかに記載の二次電池用電極。
【請求項8】
前記油が鉱物油と流動パラフィンの少なくとも一方である、請求項7に記載の二次電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの二次電池は、小型で軽量、且つ、エネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。
【0003】
そして、リチウムイオン二次電池の電極を作成する材料として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)が注目されている。しかし、CNTは直径がナノメートルサイズの微細な構造体であるため、単体では取り扱い性や加工性が必ずしも良くない。そこで、例えば、複数本のCNTを集めることによりシート状に成形し、得られたカーボンナノチューブ含有シートを二次電池の電極に用いることが従来から行われている。
【0004】
例えば特許文献1では、CNTを含有し、且つ、空隙率が5%以上90%以下であるシートと、当該シートに担持されたスズ粒子とを有するスズ粒子担持シートをリチウムイオン二次電池の負極に用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、二次電池の電極用途に使用されるカーボンナノチューブ含有シートには、取り扱いを容易としつつ二次電池に良好な電池特性を発揮させる等の観点から、十分な機械的強度を有することが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、十分な機械的強度を有する、カーボンナノチューブを用いた二次電池用電極を作製し得る新たな技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、平均長さが所定の値以上のCNTを含んでなる所定の乳化分散液を用いることで、CNT含有シートから構成され、十分な機械的強度を有する二次電池用電極を作製できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明の第一態様は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明における第一態様の二次電池用電極は、カーボンナノチューブ含有シートを備える二次電池用電極であり、前記カーボンナノチューブ含有シートは、分散媒と、前記分散媒に非溶解性である乳化分散材料と、電極活物質と、平均長さが100μm以上であるカーボンナノチューブと、薄膜グラファイトとを含む乳化分散液から形成され、前記乳化分散材料は、前記薄膜グラファイトに囲まれた状態で前記分散媒中に分散し、前記薄膜グラファイトの表面に前記カーボンナノチューブが付着していることを特徴とする。上述した所定の乳化分散液を用いて得られるCNT含有シートを備える二次電池用電極は、二次電池用電極として十分な機械的強度を有する。
なお、本発明において、「乳化分散液」は、乳化させるべき材料及び/又は分散させるべき材料(乳化分散材料)が分散媒中に乳化及び/又は分散している液体(例えば、エマルジョン、サスペンション等)を意味する。
また、本発明において、ある物質が水等の「分散媒」に対して「非溶解性」であるとは、25℃において当該物質0.5gを100gの当該分散媒に溶解した際に、不溶分が90質量%以上となることをいう。
【0010】
また、この発明の第二態様は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明における第二態様の二次電池用電極は、カーボンナノチューブ含有シートを備える二次電池用電極であり、前記カーボンナノチューブ含有シートは、分散媒と、前記分散媒に非溶解性である乳化分散材料と、電極活物質と、平均長さが100μm以上であるカーボンナノチューブとを含む乳化分散液から形成され、前記乳化分散材料は、前記カーボンナノチューブに囲まれた状態で前記分散媒中に分散していることを特徴とする。上述した所定の乳化分散液を用いて得られるCNT含有シートを備える二次電池用電極は、二次電池用電極として十分な機械的強度を有する。
【0011】
ここで、本発明の二次電池用電極において、前記電極活物質がシリコン系負極活物質であることが好ましい。電極活物質としてシリコン系負極活物質を含む乳化分散液を用いれば、得られる二次電池用電極(二次電池用負極)を備える二次電池を高容量化することができる。
【0012】
また、本発明の二次電池用電極において、前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。CNTとして単層CNTを含む乳化分散液を用いれば、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させることができる。
【0013】
そして、本発明の二次電池用電極において、前記乳化分散液が更に増粘剤を含むことが好ましい。増粘剤を含む乳化分散液を用いれば、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
【0014】
ここで、本発明の二次電池用電極おいて、前記分散媒が水を含み、そして前記増粘剤が水溶性高分子であることが好ましい。分散媒として水を含み、そして増粘剤として水溶性高分子を含む乳化分散液を用いれば、得られる二次電池用電極の機械的強度をより一層向上させつつ、二次電池の電池特性を更に向上させることができる。
なお、本発明において、高分子や有機溶媒が「水溶性」であるとは、25℃において当該高分子又は有機溶媒0.5gを100gの水に溶解した際に、不溶分が5質量%未満となることをいう。
【0015】
また、本発明の二次電池用電極おいて、前記乳化分散材料が油であることが好ましい。乳化分散材料として油を含む乳化分散液を用いれば、乳化分散液の安定性を確保すると共に、得られる二次電池用電極の導電性を向上させて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
【0016】
そして、本発明の二次電池用電極において、前記油は水と相溶しない油であれば特に制限がないが、鉱物油と流動パラフィンの少なくとも一方であることが好ましい。油として鉱物油および/または流動パラフィンを用いれば、乳化分散液の安定性を高めると共に、二次電池用電極の導電性及び二次電池の電池特性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カーボンナノチューブを用いた十分な機械的強度を有する二次電池用電極を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の二次電池用電極の構成部材であるカーボンナノチューブ含有シートの形成に用いる乳化分散液の、乳化分散状態の一例を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の二次電池用電極は、所定の乳化分散液を用いて形成されるCNT含有シートを備える。そして、所定の乳化分散液を用いて形成されるCNT含有シートは、膜としての形状保持性や靭性に優れ、ピンホールが発生しにくいため、外部から物理的刺激を受けても破損しにくい膜となる。そのため、当該CNT含有シートを備える本発明の二次電池用電極は、十分な機械的強度を発揮することができる。
【0020】
なお、本発明の二次電池用電極に用いるCNT含有シートは、上述した通り膜としての優れた形状保持性及び靭性を有するのみならず、CNTの寄与により高い導電性を発揮しうる。そのため、CNT含有シートは、単独で本発明の二次電池用電極として用いることができる。即ち、本発明の二次電池用電極は、CNT含有シートのみからなるものであってもよい。しかしながら、本発明の二次電池用電極は、CNT含有シート以外の構成部材を備えていてもよい。例えば、本発明の二次電池用電極は、CNT含有シートと集電体が積層してなる積層体であってもよい。また例えば、本発明の二次電池用電極は、耐熱層、接着層などの二次電池用電極が備え得る既知の層を備えていてもよい。
【0021】
(乳化分散液)
本発明の二次電池用電極の構成部材であるCNT含有シートの形成に用いられる乳化分散液は、分散媒と、乳化分散材料と、電極活物質と、平均長さが100μm以上であるカーボンナノチューブとを少なくとも含み、任意に、薄膜グラファイト及び/又はその他の成分を更に含む。
【0022】
<分散媒>
分散媒としては、極性の高い分散媒であれば特に限定されないが、水、水溶性有機溶媒を好ましく用いることができる。ここで、水溶性有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、1-メチル-2-ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、エチレングリコール、及びブチルアルコールを挙げることができる。
分散媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして分散媒としては、各成分が良好に溶解又は分散した乳化分散液を調製して、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点からは、水、エタノール、メタノールが好ましく、水がより好ましい。
【0023】
<乳化分散材料>
乳化分散材料としては、例えば、樹脂、ゴム、油を用いることができる。
ここで、ゴムとしては、天然ゴム;フッ化ビニリデン系ゴム(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム(FEPM)などのフッ素ゴム;ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水素化スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、水素化スチレン-イソプレンゴム、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(H-NBR)などのジエンゴム;シリコーンゴム;等が挙げられる。
また、油としては、鉱物油、流動パラフィン等が挙げられる。
なお、乳化分散材料としては、トルエンなどの、水溶性ではない有機溶媒(非水溶性有機溶媒)を用いることもできる。
【0024】
上述した乳化分散材料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、上述した乳化分散材料の中でも、乳化分散液の安定性と、CNT含有シートを備える二次電池用電極の導電性を両立させる観点から、油が好ましく、鉱物油、流動パラフィンが更に好ましい。
【0025】
<カーボンナノチューブ>
乳化分散液、及び当該乳化分散液を用いて形成されるCNT含有シートは、CNTを含む。以下、CNTの性状について説明するが、かかる性状は、少なくとも乳化分散液中のCNTについて当てはまることが好ましく、少なくとも乳化分散液中のCNT及びCNT含有シートに含まれるCNTについて当てはまることがより好ましく、乳化分散液を調製する際に用いる材料としてのCNT、乳化分散液中のCNT、及びCNT含有シートに含まれるCNTの全てについて当てはまることが更に好ましい。
【0026】
ここで、少なくとも乳化分散液中に含まれるCNTは、平均長さが、100μm以上であることが必要であり、600μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましく、400μm以下であることが更に好ましい。平均長さが100μm未満であると、CNT含有シートに膜としての形状保持性及び/又は靭性を十分に付与することができず、得られる二次電池用電極の機械的強度が損なわれる。一方、平均長さが600μm以下であるCNTは、乳化分散液中において絡み合い難く、分散液の粘度上昇を抑制することができる。そのため、均質であり且つ二次電池用電極に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用電極を得ることができる。
なお、CNTの平均長さ、並びに後述する平均直径及びアスペクト比は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択したCNT100本の直径及び長さを測定することにより求めることができる。
【0027】
そして、CNTは、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させる観点から、単層カーボンナノチューブ(単層CNT)を含有することが好ましい。ここで、CNTの質量全体に占める単層CNTの比率は、50質量%超であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であっても良い。なお、CNTが多層CNTを含む場合には、多層CNTの層数が5層以下であることが好ましい。
【0028】
ここで、単層CNTを含むCNTは、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、化学的気相成長法(CVD法)などの既知の単層CNTの合成方法を用いて製造することができる。具体的には、単層CNTを含むCNTは、例えば、CNT製造用の触媒層を表面に有する基材上に原料化合物及びキャリアガスを供給し、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)に準じて、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるCNTを「SGCNT」と称することがある。
【0029】
CNTは、BET比表面積が、600m2/g以上であることが好ましく、800m2/g以上であることがより好ましく、2000m2/g以下であることが好ましく、1800m2/g以下であることがより好ましく、1600m2/g以下であることが更に好ましい。BET比表面積が上記範囲内であれば、二次電池の電池特性を更に向上させ得る二次電池用電極を得ることができる。
なお、本発明において、「BET比表面積」とは、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0030】
CNTの平均直径は、1nm以上であることが好ましく、60nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。平均直径が上記範囲内であるCNTは乳化分散液中において絡み合い難く、均質であり且つ二次電池用電極に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用電極を得ることができる。
【0031】
更に、CNTは、通常、アスペクト比(長さ/直径)が10超である。
【0032】
また、CNTは、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すことが好ましい。かかるCNTとしては、CNTの開口処理が施されていないものがより好ましい。
【0033】
ここで、表面に細孔を有する物質では、窒素ガス吸着層の成長は、次の(1)~(3)の過程に分類される。そして、下記の(1)~(3)の過程によって、t-プロットの傾きに変化が生じる。
(1)全表面への窒素分子の単分子吸着層形成過程
(2)多分子吸着層形成とそれに伴う細孔内での毛管凝縮充填過程
(3)細孔が窒素によって満たされた見かけ上の非多孔性表面への多分子吸着層形成過程
【0034】
そして、上に凸な形状を示すt-プロットは、窒素ガス吸着層の平均厚みtが小さい領域では、原点を通る直線上にプロットが位置するのに対し、tが大きくなると、プロットが当該直線から下にずれた位置となる。かかるt-プロットの形状を有するCNTは、CNTの全比表面積に対する内部比表面積の割合が大きく、CNTに多数の開口が形成されていることを示している。その結果として、かかるCNTを用いて乳化分散液を調製した場合に、乳化分散液中においてCNT同士の絡み合いが抑制され、乳化分散液の粘度上昇を抑制することができる。そのため、乳化分散液の調製時及びCNT含有シート作製時の作業性を高めることができ、また、機械的強度に一層優れると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用電極を得ることができる。
【0035】
なお、CNTのt-プロットの屈曲点は、0.2≦t(nm)≦1.5を満たす範囲にあることが好ましく、0.45≦t(nm)≦1.5の範囲にあることがより好ましく、0.55≦t(nm)≦1.0の範囲にあることが更に好ましい。t-プロットの屈曲点がかかる範囲内にあるCNTは、かかるCNTを用いて乳化分散液を調製した場合に、乳化分散液中においてCNT同士の絡み合いが抑制され、乳化分散液の粘度上昇を抑制することができる。そのため、乳化分散液の調製時及びCNT含有シート作製時の作業性を高めることができ、また、機械的強度により一層優れると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用電極を得ることができる。
ここで、「屈曲点の位置」は、前述した(1)の過程の近似直線Aと、前述した(3)の過程の近似直線Bとの交点である。
【0036】
更に、CNTは、t-プロットから得られる全比表面積S1に対する内部比表面積S2の比(S2/S1)が0.05以上0.30以下であるのが好ましい。S2/S1の値がかかる範囲内であるCNTは、かかるCNTを用いて分散液を調製した場合に、乳化分散液中においてCNT同士の絡み合いが抑制され、乳化分散液の粘度上昇を抑制することができる。そのため、乳化分散液の調製時及びCNT含有シート作製時の作業性を高めることができ、また、機械的強度により一層優れると共に、二次電池に優れた電池特性を発揮させ得る二次電池用電極を得ることができる。
【0037】
ここで、CNTの全比表面積S1および内部比表面積S2は、そのt-プロットから求めることができる。具体的には、まず、(1)の過程の近似直線の傾きから全比表面積S1を、(3)の過程の近似直線の傾きから外部比表面積S3を、それぞれ求めることができる。そして、全比表面積S1から外部比表面積S3を差し引くことにより、内部比表面積S2を算出することができる。
【0038】
そして、CNTの吸着等温線の測定、t-プロットの作成、及び、t-プロットの解析に基づく全比表面積S1と内部比表面積S2との算出は、例えば、市販の測定装置である「BELSORP(登録商標)-mini」(日本ベル(株)製)を用いて行うことができる。
なお、吸着等温線から得られるt-プロットが上に凸な形状を示すCNTは、上述のスーパーグロース法において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。
【0039】
ここで、乳化分散液中のCNTの量は、特に限定されないが、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点から、乳化分散材料100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、60質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0040】
<電極活物質>
電極活物質は、二次電池の電極において電子の受け渡しをする物質である。そして、例えば二次電池がリチウムイオン二次電池の場合には、電極活物質としては、通常は、リチウムを吸蔵および放出し得る物質を用いる。
なお、以下では、本発明の二次電池用電極がリチウムイオン二次電池用電極である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0041】
そして、リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定されることなく、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO2)、Co-Ni-Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O2)、Ni-Mn-Alのリチウム含有複合酸化物、Ni-Co-Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、Li2MnO3-LiNiO2系固溶体、Li1+xMn2-xO4(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]O2、LiNi0.5Mn1.5O4等の既知の正極活物質が挙げられる。
【0042】
なお、正極活物質の量や粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている正極活物質と同様とすることができる。
【0043】
また、リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、例えば、炭素系負極活物質、金属系負極活物質、およびこれらを組み合わせた負極活物質などが挙げられる。
【0044】
ここで、炭素系負極活物質とは、リチウムを挿入(「ドープ」ともいう。)可能な、炭素を主骨格とする活物質をいい、炭素系負極活物質としては、例えば炭素質材料が挙げられる。
そして、炭素質材料としては、例えば、易黒鉛性炭素や、ガラス状炭素に代表される非晶質構造に近い構造を持つ難黒鉛性炭素などが挙げられる。
ここで、易黒鉛性炭素としては、例えば、石油または石炭から得られるタールピッチを原料とした炭素材料が挙げられる。具体例を挙げると、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチ系炭素繊維、熱分解気相成長炭素繊維などが挙げられる。
また、難黒鉛性炭素としては、例えば、フェノール樹脂焼成体、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、擬等方性炭素、フルフリルアルコール樹脂焼成体(PFA)、ハードカーボンなどが挙げられる。
【0045】
また、金属系負極活物質とは、金属を含む負極活物質であり、通常は、リチウムの挿入が可能な元素を構造に含み、リチウムが挿入された場合の単位質量当たりの理論電気容量が500mAh/g以上である活物質をいう。金属系負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金を形成し得る単体金属(例えば、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn、Tiなど)およびその合金、並びに、それらの酸化物、硫化物、窒化物、ケイ化物、炭化物、燐化物などが用いられる。これらの中でも、金属系負極活物質としては、ケイ素を含む活物質(シリコン系負極活物質)が好ましい。シリコン系負極活物質を用いることにより、リチウムイオン二次電池を高容量化することができるからである。
【0046】
シリコン系負極活物質としては、例えば、ケイ素(Si)、ケイ素を含む合金、SiO、SiOx、Si含有材料を導電性カーボンで被覆または複合化してなるSi含有材料と導電性カーボンとの複合化物などが挙げられる。なお、これらのシリコン系負極活物質は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
なお、負極活物質の配合量や粒子径は、特に限定されることなく、従来使用されている負極活物質と同様とすることができる。
【0048】
<薄膜グラファイト>
乳化分散液は、任意に、薄膜グラファイトを含むことができる。乳化分散液が薄膜グラファイトを含むことで、後述する所期の乳化分散状態を良好に達成することができ、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
【0049】
ここで、薄膜グラファイトは、グラフェンシートが複数積層してなるグラファイトが層間剥離し、上述した乳化分散材料の表面を囲むことができる程度に薄膜化した物質である。薄膜グラファイトを構成するグラフェンシートの層数は、例えば、1層(即ち、グラフェンシート)~数十層であり、好ましくは1層~数層である。より具体的には、薄膜グラファイトを構成するグラフェンシートの層数は4層以上30層以下であることが特に好ましい。
なお、薄膜グラファイトの平均長さは、10μm以上20μm以下であることが好ましい。薄膜グラファイトの平均長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて、無作為に選択した薄膜グラファイト100個の長さを測定することにより求めることができる。
【0050】
乳化分散液中の薄膜グラファイトの量は、特に限定されないが、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点から、乳化分散材料100質量部当たり、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、60質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0051】
<その他の成分>
乳化分散液は、更に、上述した分散媒、CNT、電極活物質、及び薄膜グラファイト以外の成分を含むことができる。このようなその他の成分としては、例えば、増粘剤が挙げられる。乳化分散液が増粘剤を含めば、乳化分散液中においてCNTが凝集しにくくなり、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
ここで、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、キサンタンガム等が挙げられる。なお増粘剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。そして、上述した増粘剤が水を含む場合、増粘剤は水溶性高分子であることが好ましい。
【0052】
なお、乳化分散液中の増粘剤の量は、特に限定されないが、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点から、乳化分散材料100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、20質量部以下であることが更に好ましい。
【0053】
<乳化分散状態>
ここで、CNT含有シートの形成に用いる乳化分散液は、乳化分散材料と、CNTと、任意に用いられる薄膜グラファイトとが、以下の第一態様、第二態様の何れかの乳化分散状態を呈することが必要である。
【0054】
<<第一態様>>
本発明の第一態様の二次電池用電極が備えるCNT含有シートの形成に用いられる乳化分散液中において、乳化分散材料は、薄膜グラファイトに囲まれた状態で分散媒中に分散し、薄膜グラファイトの表面にはCNTが付着している。このような分散状態となることで、表面に存在するCNTがスペーサーの機能を果たして乳化分散材料を囲む薄膜グラファイト同士が接触することを妨げ、薄膜グラファイト同士の凝集が抑制可能となる。
図1に、第一態様の乳化分散状態を模式的に示す。
図1では、粒子状を呈した乳化分散材料1の表面を薄膜グラファイト2が覆い、薄膜グラファイト2の表面(薄膜グラファイト2により乳化分散材料1の表面が覆われてなる粒子の外表面)に、カーボンナノチューブ3が付着している。なお、薄膜グラファイト2は、乳化分散材料1の表面の一部を覆っていても、全部を覆っていてもよい。
このような乳化分散状態の形成には、薄膜グラファイトの親油性(疎水性)が寄与しているものと推察される。即ち、薄膜グラファイトが親油性を有するため、乳化分散材料の表面に容易に付着しつつ、それと共に薄膜グラファイトがCNTとも良好に付着する。そのため、上述した乳化分散状態の形成が可能となると考えられる。換言すると、薄膜グラファイトは、所謂乳化剤として機能していると考えられる。
【0055】
<<第二態様>>
本発明の第二態様の二次電池用電極が備えるCNT含有シートの形成に用いられる乳化分散液中において、乳化分散材料は、CNTに囲まれた状態で分散媒中に分散する。CNTが乳化分散材料の回りを囲み、乳化分散材料を分散媒中に良好に分散させることができる。この態様においては、CNTがスペーサーとしての役割を果たしつつ、第一態様の薄膜グラファイトと同様に乳化剤として機能していると考えられる。
【0056】
なお、上述した第一態様又は第二態様の乳化分散状態を呈する乳化分散液において、電極活物質は、特に限定されず、例えば乳化分散材料の粒子内部に包含されていてもよいし、乳化分散材料等とは別個に分散していてもよい。
【0057】
<乳化分散液の調製方法>
そして、上記乳化分散状態を有する乳化分散液は、分散媒と、乳化分散材料と、CNTと、任意に用いられる(薄膜グラファイトの原料としての)グラファイト及び/又はその他の成分とを含む粗分散液を、解繊効果が得られる分散処理に供することで得ることができる。
この解繊効果が得られる分散処理では、粗分散液にせん断力を与えてCNTの凝集体を解繊・分散させ、更に粗分散液に背圧を負荷し、また必要に応じ、粗分散液を冷却することで、気泡の発生を抑制しつつ、CNT等の成分を、分散媒中に均一に分散させることができる。
なお、粗分散液に背圧を負荷する場合、粗分散液に負荷した背圧は、大気圧まで一気に降圧させてもよいが、多段階で降圧することが好ましい。
また、電極活物質は、上記粗分散液に含めることで、CNT等と共に上記分散処理に供してもよいし、上記分散処理を行った後に、当該処理後の粗分散液に添加してもよい。
【0058】
ここに、粗分散液にせん断力を与えてCNT等の成分を更に分散させるには、例えば、以下のような構造の分散器を有する分散システムを用いればよい。
すなわち、分散器は、粗分散液の流入側から流出側に向かって、内径がd1の分散器オリフィスと、内径がd2の分散空間と、内径がd3の終端部と(但し、d2>d3>d1である。)、を順次備える。
そして、この分散器では、流入する高圧(例えば10~400MPa、好ましくは50~250MPa)の粗分散液が、分散器オリフィスを通過することで、圧力の低下を伴いつつ、高流速の流体となって分散空間に流入する。その後、分散空間に流入した高流速の粗分散液は、分散空間内を高速で流動し、その際にせん断力を受ける。その結果、粗分散液の流速が低下すると共に、CNT等の成分が良好に分散する。そして、終端部から、流入した粗分散液の圧力よりも低い圧力(背圧)の流体が、乳化分散液として流出することになる。
【0059】
なお、粗分散液の背圧は、粗分散液の流れに負荷をかけることで粗分散液に負荷することができ、例えば、多段降圧器を分散器の下流側に配設することにより、粗分散液に所望の背圧を負荷することができる。
そして、粗分散液の背圧を多段降圧器により多段階で降圧することで、最終的に乳化分散液を大気圧に開放した際に、乳化分散液中に気泡が発生するのを抑制できる。
【0060】
また、この分散器は、粗分散液を冷却するための熱交換器や冷却液供給機構を備えていてもよい。というのは、分散器でせん断力を与えられて高温になった粗分散液を冷却することにより、粗分散液中で気泡が発生するのを更に抑制できるからである。
なお、熱交換器等の配設に替えて、粗分散液を予め冷却しておくことでも、乳化分散液中で気泡が発生することを抑制できる。
【0061】
以上のような構成を有する分散システムとしては、例えば、特許第5791142号、特許第59772434号、及び特許第6585250号に記載された分散システムが挙げられ、より具体的には、製品名「BERYU SYSTEM PRO」(株式会社美粒製)などが挙げられる。
そして、解繊効果が得られる分散処理は、このような分散システムを用い、分散条件を適切に制御することで、実施することができる。
【0062】
なお、上述の分散処理に供する粗分散液の調製方法は特に限定されない。
例えば、その他の成分として増粘剤を使用する場合、粗分散液は、少なくとも、分散媒と、CNTと、増粘剤とを含み、任意に電極活物質及び/又はグラファイトを含む混合液に対して予分散処理を施し、予分散処理を経て得られた予分散液に乳化分散材料を添加して調製することが好ましい。このように、乳化分散材料の添加に先んじてCNT等と増粘剤を予分散処理に供することで、得られる乳化分散液中においてCNTが凝集しにくくなり、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
なお、予分散処理の方法としては、特に限定されないが、上述した分散処理と同様、解繊効果が得られる分散処理を用いることが好ましい。
【0063】
そして、上述の方法等により得られる乳化分散液は、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させる観点から、固形分濃度が、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
(二次電池用電極)
本発明の二次電池用電極は、上述した乳化分散液から形成されるCNT含有シートを備える。具体的には、CNT含有シートは、上述した乳化分散液から少なくとも分散媒の一部を除去することで、乳化分散液中の固形分をシート化することで得られる。
ここで、分散媒を除去する方法としては、濾過、乾燥等の既知の方法が挙げられる。
【0065】
濾過の方法としては、特に限定されることなく、自然濾過、減圧濾過(吸引濾過)、加圧濾過、遠心濾過などの既知の濾過方法を用いることができる。
乾燥の方法としては、熱風乾燥法、真空乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等の既知の乾燥方法を用いることができる。乾燥温度は、特に限定されないが、通常、室温~200℃、乾燥時間は、特に限定されないが、通常、1時間以上48時間以内である。また、乾燥は、特に限定されないが、既知の基材上で行うことができる。また、後述のように基材として集電体を用いることもできる。
【0066】
これらの中でも、分散媒の除去には少なくとも乾燥を採用することが好ましい。即ち、CNT含有シートは、上述した乳化分散液の乾燥物であることが好ましい。
なお、上記濾過と乾燥を組み合わせて用いることができる。例えば、乳化分散液を濾過して得られた膜状の濾物(一次シート)を、更に乾燥することにより、CNT含有シートを得ることができる。
【0067】
なお、本発明の二次電池用電極が、集電体と、当該集電体上にCNT含有シートを備える積層体である場合、二次電池用電極は、例えば、集電体上に上述した乳化分散液を塗布し、集電体上の乳化分散液の塗膜を乾燥することで得ることができる。塗布及び乾燥は、何れも既知の方法及び条件により行うことができる。
【0068】
ここで、集電体としては、導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、集電体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる集電体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
そして、CNT含有シートの厚みは、5μm以上であることが好ましく、150μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。CNT含有シートの厚みが上述した範囲内であれば、得られる二次電池用電極の機械的強度を更に向上させつつ、当該二次電池用電極を用いて二次電池に優れた電池特性を発揮させることができる。
なお、CNT含有シートの「厚み」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、CNT含有シートの厚みは、ミツトヨ社製「デジマチック標準外側マイクロメータ」を用いて測定した。
【0071】
(実施例1)
<乳化分散液の調製>
99.7gの水と、0.3gのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)とを、スターラーを用いて撹拌することによりCMCを水に溶解させた。このCMC水溶液100gに、CNTとしてのSGCNT(ゼオンナノテクノロジー社製、「ZEONANO(登録商標)SG101」、開口処理なし、BET比表面積:1,050m2/g、平均直径:3.3nm、平均長さ:400μm、t-プロットは上に凸(屈曲点の位置:0.6nm)、内部比表面積S2/全比表面積S1:0.24、単層CNTを含む)0.6gと、グラファイト(伊藤黒鉛社製、製品名「Z-5F」)0.3gとを加え、分散時に背圧を負荷する多段圧力制御装置(多段降圧器)を有する高圧ホモジナイザー(株式会社美粒製、製品名「BERYU SYSTEM PRO」)に充填し、100MPaの圧力で予分散処理を行った。なお、この予分散処理を合計3回繰り返した。得られた予分散液に、180gの水と、乳化分散材料としての流動パラフィン5gとを添加し、上記と同様の高圧ホモジナイザーに充填し、100MPaの圧力で分散処理を行った。この分散処理を合計3回繰り返した。分散処理後に、電極活物質としてのシリコン系負極活物質(SiOx)1.0gを加え、得られた乳化分散液を顕微鏡で観察し、乳化分散材料が薄膜グラファイトに囲まれた状態で水中に分散し、薄膜グラファイトの表面にCNTが付着していること、及びCNTの平均長さが100μm以上であることを確認した。
<二次電池用電極の作製>
上記のようにして得られた乳化分散液を基材上に塗布した。基材上の塗膜を温度80℃で24時間にわたり真空乾燥した。その後基材から剥離して厚み80μmのCNT含有シートからなる二次電池用電極を得た。
得られた二次電池用電極は、十分な機械的強度を有しており、単独で(自立膜として)二次電池用電極として使用することができた。
【0072】
(比較例1)
SGCNTに代えて多層CNT(Nanocyl社製、製品名「NC7000」、平均長さ:1.5μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして乳化分散液を得た。得られた乳化分散液を顕微鏡で観察したところ、乳化分散材料が薄膜グラファイトに囲まれた状態で水中に分散し、薄膜グラファイトの表面にCNTが付着していることを確認した。そして、CNTの平均長さが1.5μmであることを確認した。
上記のようにして得られた乳化分散液を用いた以外は、実施例1と同様にしてCNT含有シートからなる二次電池用電極を得た。
得られた二次電池用電極は、真空乾燥後に摘まみ上げただけで崩壊してしまい、十分な機械的を有していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、カーボンナノチューブを用いて、十分な機械的強度を有する二次電池用電極を作製することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 乳化分散材料
2 薄膜グラファイト
3 カーボンナノチューブ