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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】画像歪補正回路及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20240105BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240105BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G09G5/00 510B
G09G5/37
G09G5/00 550X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020061149
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021164002
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今任 祐基
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-197718(JP,A)
【文献】特開2006-340225(JP,A)
【文献】特開2019-161346(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0158172(US,A1)
【文献】国際公開第2017/179272(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0146313(US,A1)
【文献】特開2008-108251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0222386(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0307346(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013008496(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
G09G 5/00-5/42
G09F 9/00
B60K 35/00
G03B 21/00
G03B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して投影画像を生成させる表示装置の画像歪補正回路であって、
前記投射面において生じる前記投影画像の歪を解消すべく、前記表示画像におけるN(Nは2以上の整数)個の座標位置に夫々対応した前記入力画像信号における表示データ片の前記座標位置を、第1~第Nの歪補正座標位置に補正する歪補正データに基づき、前記入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号を生成する歪補正回路と、
前記歪補正データにて示される前記第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔を夫々算出し、前記間隔の各々に基づき、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する異常判定部と、
前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、前記歪補正データにおける前記異常座標位置に対応した部分を補正するデータ補正部と、を含むことを特徴とする画像歪補正回路。
【請求項2】
前記異常判定部は、前記間隔の各々のうちで所定間隔よりも大きな間隔が存在する場合に、前記所定間隔よりも大きな前記間隔の算出に関与した少なくとも2つの前記歪補正座標位置の間に存在する1の前記座標位置に対応した歪補正座標位置に異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の画像歪補正回路。
【請求項3】
前記異常判定部は、前記間隔の各々のうちで所定間隔よりも大きな間隔が存在する場合に、異常が生じていることを示す異常検知信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像歪補正回路。
【請求項4】
前記データ補正部は、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く前記歪補正座標位置の各々のうちで、前記1の前記座標位置を挟む2つの歪補正座標位置同士による補間演算により、前記異常座標位置に対する補正後の歪補正座標位置を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像歪補正回路。
【請求項5】
前記データ補正部は、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く前記歪補正座標位置の各々のうちで前記1の前記座標位置の周囲に隣接する8つの歪補正座標位置の平均により、前記異常座標位置に対する補正後の歪補正座標位置を算出することを特徴とする請求項2又は3に記載の画像歪補正回路。
【請求項6】
前記歪補正データを記憶するメモリを含み、
前記データ補正部は、前記メモリに記憶されている前記歪補正データにて示される前記異常座標位置を前記補正後の前記歪補正座標位置に書き換えることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像歪補正回路。
【請求項7】
入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して投影画像を生成させる表示装置であって、
前記投射面において生じる前記投影画像の歪を解消すべく、前記表示画像におけるN(Nは2以上の整数)個の座標位置に夫々対応した前記入力画像信号における表示データ片の前記座標位置を第1~第Nの歪補正座標位置に補正する歪補正データに基づき、前記入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号を生成する歪補正回路と、
前記歪補正画像信号に基づく前記投影画像を前記投射面に投影させるための表示光を照射する画像照射部と、
前記歪補正データにて示される前記第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔を夫々算出し、前記間隔の各々に基づき、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する異常判定部と、
前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、前記歪補正データにおける前記異常座標位置に対応した部分を補正するデータ補正部と、を含むことを特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の歪を補正する画像歪補正回路、及びこの画像歪補正回路を含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両に搭載するディスプレイとして、ナビゲーション情報や車両の状態等の各種の運転支援情報をフロントガラスに投影するヘッドアップディスプレイ(HUDとも称する)が製品化されている。
【0003】
投影スクリーンとなる車両のフロントガラスは一般的に傾斜しており、且つ非平面形状を有している。そこで、HUD装置では、このようなフロントガラスに画像を投影した際に歪の無い画像を運転者側に提供するために、フロントガラスの傾斜及び非平面形状に起因して生じる投影画像の歪を補正する画像歪補正を、運転支援情報を表す画像信号に施すようにしている。
【0004】
また、近年、画像歪補正として、車両のフロントガラス等の被投影体の形状及び傾斜に対応させて、画像信号に基づく画像内での各画素の座標位置を移動させるマッピング処理を行う回路装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
かかる回路装置では、不揮発性メモリに格納されているマップデータに従って、車両のフロントガラスに投影する画像を表す画像信号にマッピング処理を施す。マップデータとは、被投影体の表面形状に対応した各画素の座標変換を示すデータであり、マッピング処理前の画像の各画素位置とマッピング処理後の画像の各画素位置との間を対応付けるデーブルデータである。
【0006】
尚、このような回路装置では、経年劣化等により、マッピング処理を行う回路がノイズに対して脆弱となって誤動作したり、或いは不揮発性メモリに格納されているマップデータ自体が破損する等の異常が生じる可能性がある。
【0007】
そこで、当該回路装置には、かかるマップデータや、そのマップデータを用いたマッピング処理を行う回路が正常であるか否かを検知する、いわゆる異常検知機能が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-161346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、歪補正を行うためのマップデータ自体が破損すると、車両のフロントガラスには運転支援情報を表す文字や図形等が歪んだ状態で投影されてしまい、その歪が大きい場合には視認不可となる虞がある。
【0010】
この際、上記した回路装置によると、このような異常が生じたことを検知できるものの、その異常個所が修理されるまでの間は、フロントガラスに投影された運転支援情報を視認できない状態となる。
【0011】
そこで、本発明は、歪補正を行うためのデータに異常が生じていても、視認可能な情報表示を行うことが可能な画像歪補正回路及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る画像歪補正回路は、入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して投影画像を生成させる表示装置の画像歪補正回路であって、前記投射面において生じる前記投影画像の歪を解消すべく、前記表示画像におけるN(Nは2以上の整数)個の座標位置に夫々対応した前記入力画像信号における表示データ片の前記座標位置を、第1~第Nの歪補正座標位置に補正する歪補正データに基づき、前記入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号を生成する歪補正回路と、前記歪補正データにて示される前記第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔を夫々算出し、前記間隔の各々に基づき、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する異常判定部と、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、前記歪補正データにおける前記異常座標位置に対応した部分を補正するデータ補正部と、を含む。
【0013】
本発明に係る表示装置は、入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して投影画像を生成させる表示装置であって、前記投射面において生じる前記投影画像の歪を解消すべく、前記表示画像におけるN(Nは2以上の整数)個の座標位置に夫々対応した前記入力画像信号における表示データ片の前記座標位置を第1~第Nの歪補正座標位置に補正する歪補正データに基づき、前記入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号を生成する歪補正回路と、前記歪補正画像信号に基づく前記投影画像を前記投射面に投影させるための表示光を照射する画像照射部と、前記歪補正データにて示される前記第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔を夫々算出し、前記間隔の各々に基づき、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する異常判定部と、前記第1~第Nの歪補正座標位置のうちから前記異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、前記歪補正データにおける前記異常座標位置に対応した部分を補正するデータ補正部と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像歪補正回路では、先ず、入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影した際に投射面に生じる投影画像の歪を解消すべく表示画像におけるN個の座標位置に夫々対応した表示データ片の座標位置を、第1~第Nの歪補正座標位置に補正する歪補正データに基づき、入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号を生成する。この際、歪補正データにて示される第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔の各々に基づき、第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する。そして、第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、歪補正データにおける異常座標位置に対応した部分を補正する。
【0015】
これにより、歪補正データに異常が生じていても、入力画像信号に基づく画像として、歪を抑えた視認可能な情報表示を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る画像歪補正回路を含む表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置100の構成を示すブロック図である。
図2】歪補正データによって表される基点画素r1~r16と、各基点画素に夫々対応したマッピング後の歪補正座標位置A1~A16との位置関係の一例を表す図である。
図3】テーブルメモリ13のメモリマップの一部を示す図である。
図4】異常判定・データ補正ルーチンの手順を示すフローチャートである。
図5】異常が生じていない場合における歪補正座標位置A1~A16における隣接する歪補正座標位置A同士の間隔を表す図である。
図6】歪補正座標位置A1~A16のうちで歪補正座標位置A10に異常が生じている場合の配置形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る画像歪補正回路を含む表示装置としてのヘッドアップディスプレイ装置100(以降、HUD装置100と称する)の構成を示すブロック図である。HUD装置100は、入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して投影画像を生成させるものであり、図1に示すように、歪補正データメモリ10、コントローラ11、歪補正回路12、テーブルメモリ13、異常処理部14、及び画像照射部15を含む。
【0018】
コントローラ11は、車両の挙動、瞬間燃費、バッテリの状態、走行速度等の運転支援情報を文字又は図形等で表す画像信号を生成する。尚、コントローラ11は、異常が生じたことを示す異常検知信号ERを受けた場合には、異常発生を知らせる文字又は図形を上記した運転支援情報に含ませた表示画像を表す画像信号を生成する。コントローラ11は、生成した画像信号、つまり、上記した表示画像の画素毎に輝度レベルを表す表示データ片の系列からなる画像信号を入力画像信号VSとして歪補正回路12に供給する。
【0019】
また、コントローラ11は、電源投入に応じて、歪補正データメモリ10に格納されている歪補正データを読み出す。尚、コントローラ11は、電源投入後、所定期間が経過する度に、歪補正データメモリ10から歪補正データの読み出しを行うようにしても良い。
【0020】
ここで、歪補正データとは、1フレーム分の画像における全画素のうちから選出した複数の画素を基点画素とし、各基点画素における表示データ片の1フレーム画像内での座標位置を、被投影体に投影された画像に生じる歪を補正するように、他の座標位置にマッピング(変換)するためのデータである。
【0021】
図2は、歪補正データによって表される複数の基点画素の一例としての基点画素r1~r16と、基点画素に夫々対応したマッピング処理後の歪補正座標位置A1~A16の一例を示す図である。図2に示す一例では、入力画像信号VSに基づく1フレームの表示画像FRA内で予め設定した16個の基点画素r1~r16を白丸にて示し、投影画像における表示データ片各々に対応した歪補正座標位置A1~A16を黒丸にて示している。尚、これら歪補正座標位置A1~A16は、夫々が図2に示すように1フレーム画像FRAにおける水平方向X及び垂直方向Yでの座標位置(X,Y)を表すものである。また、図2に示す一例では、基準画素r1~r16の各々は、破線にて示されるメッシュの交叉部の座標位置に配置されており、互いに、入力画像信号VSに基づく1フレームの画像FRAの水平方向X及び垂直方向Yの各々において等間隔に離間して配置されているものとする。
【0022】
コントローラ11は、歪補正データメモリ10から読み出した上記歪補正データを、歪補正データDCとしてテーブルメモリ13に記憶させると共に異常処理部14に供給する。テーブルメモリ13には、図3に示すように、上記した基点画素r1~r16の各々に対応付けして、歪補正データDCにて示される上記歪補正座標位置A1~A16がと、基点画素r1~r16各々の座標位置(X、Y)とが、対応づけして格納される。
【0023】
歪補正回路12は、テーブルメモリ13から歪補正データを読み出し、当該歪補正データに基づき、入力画像信号VSに対して、投影画像に生じる歪を解消するように、各画素に対応した表示データ片の座標位置(X、Y)を変更するマッピングを施す。すなわち、歪補正回路12は、先ず、例えば歪補正座標位置A1~A16に基づく補間演算により、1フレーム画像の全ての画素に夫々対応した表示データ片における変更後の座標位置を算出する。そして、歪補正回路12は、入力画像信号VSにて示される各画素の内容、つまり各座標位置での輝度レベルを表す表示データ片の各座標位置を、その変更後の座標位置にマッピングしたものを、歪補正が施された歪補正画像信号CVとして生成し、画像照射部15に供給する。
【0024】
画像照射部15は、歪補正画像信号CVにて示される画像を車両のフロントガラス等の被投影体に投影させる為の表示光を照射する。尚、画像照射部15としては、当該画像が投影された際の歪を光学的に補正する光学系を含んでいても良い。
【0025】
異常処理部14は、異常判定部141及びデータ補正部142を含む。
【0026】
異常判定部141は、歪補正データDCに基づき当該歪補正データDCに異常が生じているか否かを判定する。すなわち、異常処理部14は、歪補正データメモリ10に格納されている歪補正データ自体の破損や、歪補正データDC中のビット誤り等の異常が生じているか否かを判定する。ここで、異常処理部14は、歪補正データに上記したような異常が生じていると判定した場合にはその旨を示す信号を上記した異常検知信号ERとしてコントローラ11に供給する。
【0027】
データ補正部142は、歪補正データDCに異常が生じている場合に、歪補正データDC中から異常が生じている箇所を特定し、その異常箇所に補正を施す。そして、異常判定部141は、テーブルメモリ13の異常個所の記憶内容を、上記した補正後の内容に書き換える。
【0028】
以下に、異常判定部141及びデータ補正部142の動作の詳細について説明する。
【0029】
尚、歪補正データDCは、図2に示すような基点画素r1~r16に夫々対応した歪補正座標位置A1~A16を表すものとする。ここで、基点画素r1~r16に対する歪補正座標位置A1~A16は被投影体の湾曲形状及び取付角度によって決定されるものである。よって、歪補正座標位置A1~A16の各々から、夫々に対応した基点画素rまでの間の距離は、被投影体の湾曲形状及び取付角度によって定まる最大の距離(以下、所定距離)以下となる。
【0030】
異常判定部141は、コントローラ11から新たな歪補正データDCを受ける度に、図4に示す動作フローに沿った動作を行う。
【0031】
図4において、異常判定部141は、先ず、歪補正データDCによって示される歪補正座標位置A1~A16のうちの少なくとも1つの歪補正座標位置Aをターゲット座標位置として指定する(ステップS11)。
【0032】
次に、異常判定部141は、ターゲット座標位置の基点となる基点画素rと、このターゲット座標位置との間の距離を、夫々の座標位置(X、Y)に基づいて算出する(ステップS12)。そして、異常判定部141は、この算出した距離が上記した所定距離以下であるか否かを判定する(ステップS13)。
【0033】
かかるステップS13において所定距離以下であると判定した場合、異常判定部141は、図5に示すように、互いに上、下、左又は右方向に隣接する歪補正座標位置A同士の間隔d1~d24を算出する(ステップS14)。この際、歪補正座標位置A1~A16に異常が生じていなければ、互いに隣接する歪補正座標位置A同士の間隔d1~d24の各々は、図2に示すメッシュの間隔に所定のマージンを加えた長さを有する所定間隔以下となる。
【0034】
次に、異常判定部141は、互いに隣接する歪補正座標位置A同士の間隔d1~d24のなかに、上記した所定間隔よりも大きな間隔dが存在するか否かを判定する(ステップS15)。
【0035】
ステップS15において、所定間隔よりも大きな間隔dが存在しないと判定した場合、異常判定部141は異常無と判断し、図4に示す動作フローを抜けて、新たな歪補正データDCの待ち受け状態となる。
【0036】
一方、ステップS15において所定間隔よりも大きな間隔dが存在すると判定した場合、又は上記ステップS13でターゲット座標位置の基点となる基点画素r及びターゲット座標位置間の距離が所定距離よりも大きいと判定した場合、異常判定部14は、異常有と判断して、異常検知信号ERをコントローラ11に供給する(ステップS16)。
【0037】
上記した異常有の判断が為された場合、データ補正部142は、歪補正座標位置A1~A16のうちで所定間隔よりも大きな間隔dの算出に関与した座標位置同士の間に存在する基点画素rに対応した歪補正座標位置Aを、異常座標位置として特定する(ステップS17)。
【0038】
次に、データ補正部142は、異常座標位置に対応した基点画素rの周囲に隣接する少なくとも2つの座標位置を用いた例えば直線補間演算により、異常座標位置に対する補正後の座標位置を算出する(ステップS18)。
【0039】
次に、データ補正部142は、テーブルメモリ13に記憶されている当該異常座標位置を、ステップS18で算出した補正後の座標位置に書き換えることで、異常座標位置を補正する(ステップS19)。
【0040】
ステップS19の実行後、異常処理部14は、図4に示す動作フローを抜けて、新たな歪補正データDCの待ち受け状態となる。
【0041】
このように、先ず、異常判定部141が、歪補正データDCによって示される歪補正座標位置A1~A16が全て同一の固定値(ゼロを含む)となるような異常が生じているか否かを判定する(S11~S13)。例えば、歪補正座標位置A1~A16が全て座標位置(0、0)を示す場合、歪補正座標位置A1~A16のうちの少なくとも1つのターゲット座標位置と、その基点となる基点画素rとの間の距離は、所定距離よりも大きくなる。よって、この際、異常判定部141は、上記した判定結果として、ターゲット座標位置及び基点画素r間の距離が所定距離より大であると判定し、引き続き異常が生じている旨を示す異常検知信号ERをコントローラ11に供給する(S16)。
【0042】
ここで、歪補正座標位置A1~A16が全て同一の固定値となるような異常が生じていない場合、引き続き異常判定部141は、歪補正座標位置A1~A16のうちで、歪補正回路12のマッピング処理の段階で画像の欠落を生じさせるような異常な歪補正座標位置Aが存在するか否かを判定する。
【0043】
具体的には、異常判定部141は、互いに上下方向、及び左右方向に隣接する歪補正座標位置A同士の各間隔dのうちで、所定間隔よりも大きな間隔dが存在するか否かを判定する(S15)。この際、所定間隔よりも大きな間隔が存在すると判定された場合には、異常座標位置が存在すると判断して、異常判定部141は、異常が生じている旨を示す異常検知信号ERをコントローラ11に供給する(S16)。
【0044】
また、互いに上下方向、及び左右方向に隣接する歪補正座標位置A同士の間隔dの中に所定間隔よりも大きな間隔dが存在する場合、データ補正部142は、歪補正座標位置A1~A16のうちから異常座標位置を特定する。
【0045】
以下に、歪補正座標位置A1~A16のうちで基点画素r10に対応した歪補正座標位置A10が、図6に示すように、歪補正座標位置A14及びA15よりも下方の位置となるような異常が生じている場合を想定して、データ補正部142の異常座標位置を特定する動作を説明する。この際、例えば図6に示す歪補正座標位置A5とA6との間の間隔d8、歪補正座標位置A6とA7との間の間隔d9、歪補正座標位置A5とA9との間の間隔d11、歪補正座標位置A7とA11との間の間隔d13は、いずれも所定間隔以下である。
【0046】
しかしながら、図6において、本来、歪補正座標位置A6と、その下方の歪補正座標位置A14との間に存在すべき歪補正座標位置A10が無いので、互いに上下方向に隣接する歪補正座標位置A6及びA14間の間隔d12は、所定間隔より大きくなる。また、本来、歪補正座標位置A9と、その右方の歪補正座標位置A11との間に存在すべき歪補正座標位置A10が無いので、互いに左右方向に隣接する歪補正座標位置A9及びA11間の間隔d15は、所定間隔より大きくなる。
【0047】
そこで、データ補正部142は、この間隔d12(又はd15)の算出に関与した歪補正座標位置A6(又はA9)及びA14(又はA11)間にある基点画素r10に対応した歪補正座標位置A10を、異常座標位置として特定する(S17)。次に、データ補正部142は、この異常座標位置(A10)に対応した基点画素r10の周囲に隣接する少なくとも2つの座標位置(例えばA5~A7、A9、A11、A13~A15等)に基づき補間演算等により異常座標位置に対する補正後の座標位置を算出する(S18)。そして、データ補正部142は、テーブルメモリ13に記憶されている異常座標位置の座標位置(図6に示すA10)を、この算出した補正後の座標位置に書き換えることで異常座標位置の補正を行う。これにより、例えば図6に示すように、歪補正データDC中において歪補正座標位置A10に異常が生じていても、テーブルメモリ13に記憶される歪補正データは、図5に示すような状態に補正される。
【0048】
よって、HUD装置100によれば、歪補正データメモリ10に格納されている歪補正データ自体の破損や、歪補正データ中のビット誤り等の異常が生じていても、画像信号VSに基づく投影画像として、歪の無い視認可能な情報表示を行うことが可能となる。
【0049】
また、異常処理部14では、歪補正データに異常が生じた場合には、上記したようにその異常個所の補正を行うと共に、異常が生じている旨を示す異常検知信号ERをコントローラ11に供給する。これにより、HUD装置100は、本来ユーザ側に提供すべき情報中に、歪補正データに異常が生じた旨を知らせる図形又は文字情報を重畳したものを投影画像として車両のフロントガラス等の被投影体に表示させる。
【0050】
尚、上記実施例では、異常座標位置に対する補正後の座標位置を算出するために、当該異常座標位置に対応した基点画素rの周囲の少なくとも2つの歪補正座標位置Aを用いた補間演算を行うようにしているが、これに限定されない。例えば、異常座標位置に対応した基点画素rの周囲に隣接する8個の歪補正座標位置Aの平均値に基づき、異常座標位置に対する補正後の座標位置を算出しても良い。また、異常座標位置に対応した基点画素rを上下又は左右に挟む2つの歪補正座標位置Aによる傾きの平均値に基づき、異常座標位置に対する補正後の座標位置を算出しても良い。
【0051】
また、上記実施例では、歪補正データDCにて表される歪補正座標位置A1~A16各々の隣接するもの同士の間隔に基づき異常検知を行っているが、CRC(Cyclic Redundancy Check)等の誤り検出符号を利用して異常検知を行うようにしても良い。例えば、歪補正データとしてCRCビットを付加したものを採用し、これを歪補正データメモリ10に格納しておく。この際、異常処理部14は、コントローラ11から供給された歪補正データDCに対してCRC演算を施して得られた値と、予め設定されている期待値とを比較し、両者が互いに異なる場合に、異常検知信号ERをコントローラ11に供給する。
【0052】
また、上記実施例では、歪補正データにて表される基点画素及び座標位置の数を16個としているが16個に限定されない。
【0053】
また、HUD装置100としては、コントローラ11、及び画像照射部15を含むものでなくても良い。
【0054】
要するに、HUD装置100における画像歪補正回路としては、入力画像信号に基づく表示画像を投射面に投影して得られた投影画像の歪を解消するために、以下の歪補正回路、異常判定部及びデータ補正部を含むものであれば良い。
【0055】
すなわち、歪補正回路(12)は、当該投影画像の歪を解消すべく、表示画像におけるN(Nは2以上の整数)個の座標位置に夫々対応した入力画像信号(VS)における表示データ片の座標位置を、第1~第Nの歪補正座標位置(例えばA1~A16)に補正する歪補正データ(DC)に基づき、入力画像信号に歪補正処理を施して歪補正画像信号(CV)を生成する。異常判定部(14)は、歪補正データにて示される第1~第Nの歪補正座標位置における隣接するもの同士の間隔(例えばd1~d24)を夫々算出し、各間隔に基づき、第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常が生じている歪補正座標位置を異常座標位置として判定する。データ補正部(14)は、第1~第Nの歪補正座標位置のうちから異常座標位置を除く少なくとも2つの歪補正座標位置に基づき、歪補正データにおける異常座標位置に対応した部分を補正する。
【符号の説明】
【0056】
10 歪補正データメモリ
11 コントローラ
12 歪補正回路
13 テーブルメモリ
14 異常処理部
100 HUD装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6