(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20240105BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240105BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G02F1/1335 520
G02F1/13357
G09F9/00 336B
(21)【出願番号】P 2020559117
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 JP2019046575
(87)【国際公開番号】W WO2020116310
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2018227304
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「外場応答性トポロジカル欠陥ネットワークの構築と多安定性デバイスへの応用」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】趙 成龍
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 雅則
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-147494(JP,A)
【文献】特開2011-119210(JP,A)
【文献】特開2002-311410(JP,A)
【文献】特表平7-509072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02F 1/13357
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を導波させる光導波層と、
前記光導波層を前記光が導波するように、前記光を前記光導波層に向けて出射する光源部と、
駆動電圧の印加に応答して屈折率が変化する屈折率可変層と、
光学層と
を備え、
前記光源部が出射する前記光は、可視光を含み、
前記屈折率可変層は、前記光導波層と前記光学層との間に配置され、
前記屈折率可変層は、
前記光導波層を導波する前記
可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記光導波層の内部に向けて反射して、前記光導波層を導波させ、
前記光導波層を導波する前記
可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の内部に導入して、前記屈折率可変層の外部に出射し、
前記光学層は、
前記光導波層から導入されて前記屈折率可変層が出射した前記
可視光を反射
し、
前記光導波層は、前記光導波層を導波不可能な角度で入射した環境光を透過し、
前記屈折率可変層は、前記光導波層が透過した前記環境光を透過し、
前記光学層は、前記屈折率可変層が透過した前記環境光に含まれる可視光を透過する、表示装置。
【請求項2】
前記光学層は、前記屈折率可変層が出射した前記光を拡散反射する、請求項
1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光学層は、複数の螺旋状構造体、又は、積層構造体を含み、
前記複数の螺旋状構造体の各々は、前記屈折率可変層に交差する方向に沿って延びており、
前記複数の螺旋状構造体のうちの2以上の螺旋状構造体の空間位相が互いに異なり、
前記積層構造体は、凸凹形状の表面を有する基板と、前記基板の前記表面に積層された誘電体多層膜とを含む、請求項1
又は請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記光源部は、互いに波長の異なる複数の可視光をそれぞれ出射する複数の光源を含み、
前記複数の光源は、前記複数の可視光を、互いに異なるタイミングで前記光導波層に向けて出射する、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光源部は、白色光を出射する白色光源を含み、
前記白色光源は、前記白色光を前記光導波層に向けて出射し、
前記屈折率可変層は、前記白色光に含まれる互いに異なる波長の複数の可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の異なる位置から異なる角度で導入して、前記屈折率可変層の異なる位置から外部に出射する、請求項
1から請求項3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記光導波層、前記屈折率可変層、及び、前記光学層は、表示部を構成し、
前記光導波層、前記屈折率可変層、及び、前記光学層は、前記表示部の表面側と裏面側とのうち、前記表面側から入射する前記環境光に含まれる前記可視光を透過するとともに、前記裏面側から入射する環境光に含まれる可視光を透過する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
光を導波させる光導波層と、
前記光導波層を前記光が導波するように、前記光を前記光導波層に向けて出射する光源部と、
駆動電圧の印加に応答して屈折率が変化する屈折率可変層と、
光学層と
を備え、
前記屈折率可変層は、前記光導波層と前記光学層との間に配置され、
前記屈折率可変層は、
前記光導波層を導波する前記光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記光導波層の内部に向けて反射して、前記光導波層を導波させ、
前記光導波層を導波する前記光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の内部に導入して、前記屈折率可変層の外部に出射し、
前記光学層は、
前記光導波層から導入されて前記屈折率可変層が出射した前記光を吸収して着色
し、
前記光導波層は、前記光導波層を導波不可能な角度で入射した環境光を透過し、
前記屈折率可変層は、前記光導波層が透過した前記環境光を透過し、
前記光学層において、前記光導波層から導入されて前記屈折率可変層が出射した前記光が入射しない部分は、着色せず透き通っている、表示装置。
【請求項8】
前記屈折率可変層は、液晶を含む液晶層である、請求項1
から請求項7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記屈折率可変層に前記駆動電圧を印加する電極ユニットと、
前記光導波層の屈折率よりも小さい屈折率を有するクラッド層と
をさらに備え、
前記光導波層は、前記クラッド層と前記屈折率可変層との間に配置される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
光を透過する状態と光を吸収する状態とが、印加される制御電圧に応じて切り替わる吸収率可変層をさらに備え、
前記吸収率可変層は、前記光学層に対して、前記屈折率可変層の反対側に配置される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波路型液晶デバイスが記載されている。導波路型液晶デバイスは、2枚のガラス基板と、複数のスペーサーと、液晶とを備える。複数のスペーサーが、2枚のガラス基板の間に配置される。そして、2枚のガラス基板の間に液晶が注入されている。
【0003】
複数のスペーサーの各々が、導波路のコア部を構成する。液晶が、導波路のクラッド部を構成する。液晶への電圧印加により液晶の分子配向を制御して、クラッド部としての液晶の屈折率を変化させる。その結果、コア部としてのスペーサーを伝播する導波光の伝播状態を制御できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】佐藤銀河、塩沢啓、飯村靖文、「液晶を用いた導波路伝播光制御とその表示素子への応用」(液晶ディスプレイ、ポスター発表、2015年 日本液晶学会討論会)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載されている導波路型液晶デバイスでは、コア部における光の透過率が、液晶への電圧印加時と電圧無印加時とで2.5%しか変化しない。つまり、導波路型液晶デバイスでは、コントラストが不十分である。
【0006】
本発明の目的は、コントラストを向上できる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面によれば、表示装置は、光導波層と、屈折率可変層と、光学層とを備える。光導波層は、光を導波させる。屈折率可変層では、駆動電圧の印加に応答して屈折率が変化する。光学層は、光を反射又は吸収する。前記屈折率可変層は、前記光導波層と前記光学層との間に配置される。前記屈折率可変層は、前記光導波層を導波する前記光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記光導波層の内部に向けて反射して、前記光導波層を導波させる。屈折率可変層は、前記光導波層を導波する前記光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の内部に導入して、前記屈折率可変層の外部に出射する。前記光学層は、前記屈折率可変層が出射した前記光を反射又は吸収する。
【0008】
本発明の表示装置において、前記屈折率可変層は、液晶を含む液晶層であることが好ましい。
【0009】
本発明の表示装置において、前記光学層は、前記屈折率可変層が出射した前記光を拡散反射することが好ましい。
【0010】
本発明の表示装置において、前記光学層は、複数の螺旋状構造体、又は、積層構造体を含むことが好ましい。前記複数の螺旋状構造体の各々は、前記屈折率可変層に交差する方向に沿って延びていることが好ましい。前記複数の螺旋状構造体のうちの2以上の螺旋状構造体の空間位相が互いに異なることが好ましい。前記積層構造体は、凸凹形状の表面を有する基板と、前記基板の前記表面に積層された誘電体多層膜とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明の表示装置は、光源部をさらに備えることが好ましい。光源部は、前記光導波層を前記光が導波するように、前記光を前記光導波層に向けて出射することが好ましい。前記光源部が出射する前記光は、可視光を含むことが好ましい。前記屈折率可変層は、前記光導波層を導波する前記可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記光導波層の内部に向けて反射して、前記光導波層を導波させることが好ましい。前記屈折率可変層は、前記光導波層を導波する前記可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の内部に導入して、前記屈折率可変層の外部に出射することが好ましい。前記光学層は、前記光導波層から導入されて前記屈折率可変層から出射された前記可視光を反射することが好ましい。前記光導波層は、前記光導波層を導波不可能な角度で入射した環境光を透過することが好ましい。前記屈折率可変層は、前記光導波層が透過した前記環境光を透過することが好ましい。前記光学層は、前記屈折率可変層が透過した前記環境光に含まれる可視光を透過することが好ましい。
【0012】
本発明の表示装置において、前記光源部は、互いに波長の異なる複数の可視光をそれぞれ出射する複数の光源を含むことが好ましい。前記複数の光源は、前記複数の可視光を、互いに異なるタイミングで前記光導波層に向けて出射することが好ましい。
【0013】
本発明の表示装置において、前記光源部は、白色光を出射する白色光源を含むことが好ましい。前記白色光源は、前記白色光を前記光導波層に向けて出射することが好ましい。前記屈折率可変層は、前記白色光に含まれる互いに異なる波長の複数の可視光を、前記屈折率可変層の前記屈折率に応じて前記屈折率可変層の異なる位置から異なる角度で導入して、前記屈折率可変層の異なる位置から外部に出射することが好ましい。
【0014】
本発明の表示装置において、前記光学層は、前記屈折率可変層が出射した前記光を吸収して着色することが好ましい。
【0015】
本発明の表示装置は、電極ユニットと、クラッド層とをさらに備えることが好ましい。電極ユニットは、前記屈折率可変層に前記駆動電圧を印加することが好ましい。クラッド層は、前記光導波層の屈折率よりも小さい屈折率を有することが好ましい。前記光導波層は、前記クラッド層と前記屈折率可変層との間に配置されることが好ましい。
【0016】
本発明の表示装置は、吸収率可変層をさらに備えることが好ましい。吸収率可変層では、光を透過する状態と光を吸収する状態とが、印加される制御電圧に応じて切り替わることが好ましい。前記吸収率可変層は、前記光学層に対して、前記屈折率可変層の反対側に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コントラストを向上できる表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態1に係る表示装置を示す断面図である。
【
図2】実施形態1に係る光学層を示す断面図である。
【
図3】実施形態1に係る光学層を示す平面図である。
【
図4】実施形態1に係る光学層の複数の螺旋状構造体の空間位相分布を示す平面図である。
【
図5】(a)は、実施形態1に係る光学層に垂直入射した光の反射率を示すグラフである。(b)は、実施形態1に係る光学層に垂直入射した光の透過率を示すグラフである。
【
図6】実施形態1に係る光源部からの光に対する光学層の反射率を測定するための実験系を示す断面図である。
【
図7】実施形態1に係る光導波層の導波角を示すグラフである。
【
図8】(a)は、実施形態1に係る光導波層における導波角が59度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。(b)は、実施形態1に係る光導波層における導波角が67度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。(c)は、実施形態1に係る光導波層における導波角が70度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。
【
図9】実施形態1の変形例に係る光学層を示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態2に係る表示装置を示す断面図である。
【
図11】(a)は、実施形態2に係る光学層に垂直入射した光の反射率を示すグラフである。(b)は、実施形態2に係る光学層に垂直入射した光の透過率を示すグラフである。
【
図12】(a)実施形態2に係る光導波層における導波角が70.2度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。(b)は、実施形態2に係る光導波層における導波角が73.3度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。(c)は、実施形態2に係る光導波層における導波角が75.2度であるときの光学層の反射率を示すグラフである。
【
図13】実施形態2の第1変形例に係る表示装置を示す断面図である。
【
図14】実施形態2の第2変形例に係る表示装置を示す断面図である。
【
図15】本発明の実施形態3に係る表示装置を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態4に係る表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面において、互いに直交するX軸とY軸とZ軸とを含む三次元直交座標系を用いて説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。また、図面の簡略化のため、断面を示す斜線を適宜省略する。
【0020】
(実施形態1)
図1~
図8(c)を参照して、本発明の実施形態1に係る表示装置100を説明する。まず、
図1を参照して表示装置100を説明する。
図1は、実施形態1に係る表示装置100を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、表示装置100は、表示部1と、光源部3と、駆動部5と、制御部7とを備える。制御部7は光源部3及び駆動部5を制御する。制御部7は、例えば、コントローラーを含む。コントローラーは、例えば、プロセッサー及び記憶装置を含む。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。記憶装置は、例えば、主記憶装置及び補助記憶装置を含む。主記憶装置は、例えば、半導体メモリーを含む。補助記憶装置は、例えば、ハードディスクドライブを含む。
【0022】
光源部3は光LTを出射する。光LTは可視光VLを含む。光源部3は、例えば、発光ダイオードを含む。駆動部5は、表示部1に駆動電圧Vdを印加して、表示部1を駆動する。駆動部5は、例えば、ドライバー及び電源回路を含む。駆動部5は、例えば、アクティブマトリクス駆動方式又はパッシブマトリクス駆動方式によって、表示部1を駆動する。
【0023】
表示部1は、光源部3が出射する光LTを導入して反射することによって画像を表示する。具体的には、表示部1は、光源部3が出射する可視光VLを導入して反射することによって画像を表示する。一方、表示部1は、環境光NLに含まれる可視光VLAを透過する。つまり、表示部1は、透き通っており、透明である。従って、表示部1は、透明ディスプレイを構成する。本明細書において、「透明」は、無色透明、半透明、又は有色透明である。つまり、「透明」は、表示部1の表面側と裏面側とのうち表面側から、表示部1の裏面側に位置する物体を視認可能なことを示す。なお、表示部1は、表示部1の表面側から入射する可視光VLと裏面側から入射する可視光VLとの双方を透過する。
【0024】
環境光NLは、光源部3が出射する光LT以外の光である。つまり、環境光NLは、表示装置100の周囲環境の光である。従って、環境光NLは、例えば、自然光、及び/又は、光源部3以外の発光装置が出射する光を含む。光源部3以外の発光装置は、例えば、照明器具である。環境光NLは、表示部1による画像の表示に寄与しない。
【0025】
具体的には、表示部1は、光導波層11と、屈折率可変層13と、光学層17とを含む。屈折率可変層13は、光導波層11と光学層17との間に配置される。表示部1は基板15を含んでいてもよい。この場合、屈折率可変層13は、光導波層11と基板15との間に配置される。そして、光学層17は、基板15に対して、屈折率可変層13の反対側に配置される。なお、光学層17は、屈折率可変層13と基板15との間に配置されていてもよい。
【0026】
光導波層11は、光源部3が出射した光LTを導波させる。従って、光LTは、光導波層11の内部を、反射を繰り返しながら伝搬する。具体的には、光LTは、光導波層11の内部を、全反射を繰り返しながら伝搬する。本明細書では、光導波層11の内部において、光LTが導波することと、光LTが伝搬することとは、同義である。
【0027】
光源部3が出射する光LTは、光導波層11において特定の角度を持つように光導波層11に結合されることが好ましい。このために、光導波層11の端部に特定の屈折構造を設けてもよいし、光導波層11の端部にグレーティングからなる結合器を取り付けて光の結合を促してもよい。
【0028】
光導波層11は環境光NLを透過する。従って、光導波層11は、透き通っており、透明である。光導波層11は、例えば、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板によって構成される。光導波層11は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂によって構成されることが好ましい。光導波層11の屈折率は、空気の屈折率よりも大きい。
【0029】
屈折率可変層13の屈折率は、屈折率可変層13に対する駆動電圧Vdの印加に応答して変化する。屈折率可変層13は環境光NLを透過する。従って、屈折率可変層13は、透き通っており、透明である。屈折率可変層13は可撓性を有することが好ましい。屈折率可変層13の詳細は後述する。
【0030】
基板15は光LTを透過する。基板15は環境光NLを透過する。従って、基板15は、透き通っており、透明である。基板15は、例えば、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板によって構成される。基板15は、例えば、可撓性を有する透明な合成樹脂によって構成されることが好ましい。
【0031】
光学層17は光LTを反射する。具体的には、光学層17は、光LTに含まれる可視光VLを反射する。光学層17は、光LTに含まれる不可視光NVLを透過してもよいし、反射してもよい。不可視光NVLは、可視光領域以外の波長を有する光である。光学層17は環境光NLを透過する。従って、光学層17は、透き通っており、透明である。光学層17は可撓性を有することが好ましい。光学層17の詳細は後述する。
【0032】
引き続き
図1を参照して、屈折率可変層13及び光学層17による光源部3からの光LTの制御について説明する。
【0033】
屈折率可変層13は、光導波層11を導波する光LTを、屈折率可変層13の屈折率に応じて光導波層11の内部に向けて反射して、光導波層11を導波させる。例えば、屈折率可変層13の屈折率が光導波層11の屈折率よりも小さい場合に、光導波層11を導波する光LTを、光導波層11の内部に向けて反射して、光導波層11を導波させる。従って、光導波層11を導波する光LTは、屈折率可変層13に反射される限りは、光導波層11を導波して、光導波層11の出射端部から出射する。その結果、光LTは、光導波層11の主面11aの側から表示部1を見ている人間の目に入射しない。
【0034】
なお、光導波層11の出射端部は、光導波層11の入射端部に対して反対側の端部を示す。光導波層11の入射端部は、光導波層11に光LTが入射する側の端部を示す。また、屈折率可変層13の屈折率が光導波層11の屈折率よりも小さい場合は、光導波層11が光導波路のコア部として機能し、屈折率可変層13が光導波路のクラッド部として機能する。
【0035】
一方、屈折率可変層13は、光導波層11を導波する光LTを、屈折率可変層13の屈折率に応じて屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の外部に出射する。例えば、屈折率可変層13の屈折率が光導波層11の屈折率よりも大きい場合に、光導波層11を導波する光LTを、屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の外部に出射する。そして、光LTは、基板15を通って光学層17に入射する。
【0036】
光学層17は、屈折率可変層13が出射した光LTを屈折率可変層13に向けて反射する。光学層17によって反射された光LTは、基板15、屈折率可変層13、及び光導波層11を通って、光導波層11の主面11aから出射する。従って、光LTは、光導波層11の主面11aの側から表示部1を見ている人間の目に入射する。その結果、人間は、光LTによって表される画像を見ることができる。
【0037】
特に、実施形態1では、光学層17が光LTを反射することで、光LTを光導波層11の主面11aから出射している。従って、光学層17が光LTを反射する部分と光LTを反射しない部分との間で明暗の差を大きくできる。その結果、表示装置100では、コントラストを向上できて、高い品質の画像を表示できる。光LTを反射しない部分は、人間には、透き通って見える。
【0038】
引き続き
図1を参照して表示装置100を詳細に説明する。光導波層11は、光導波層11を導波不可能な角度で入射した環境光NLを透過する。屈折率可変層13は、光導波層11が透過した環境光NLを透過する。そして、環境光NLは、基板15を通って光学層17に入射する。光学層17は、屈折率可変層13が透過した環境光NLに含まれる可視光VLAを透過する。従って、実施形態1では、光導波層11の主面11aの側から表示部1を見ている人間にとって、表示部1は透き通って見える。
【0039】
加えて、実施形態1では、光源部3は、光導波層11を光LTが導波するように、光LTを光導波層11に向けて出射する。光LTは可視光VLを含む。
【0040】
そして、屈折率可変層13は、光導波層11を導波する可視光VLを、屈折率可変層13の屈折率に応じて光導波層11の内部に向けて反射して、光導波層11を導波させる。従って、光導波層11を導波する可視光VLは、屈折率可変層13に反射される限りは、光導波層11を導波して、光導波層11の出射端部から出射する。その結果、可視光VLは、光導波層11の主面11aの側から表示部1を見ている人間の目に入射しない。
【0041】
一方、屈折率可変層13は、光導波層11を導波する可視光VLを、屈折率可変層13の屈折率に応じて屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の外部に出射する。そして、可視光VLは、基板15を通って光学層17に入射する。
【0042】
光学層17は、光導波層11から導入されて屈折率可変層13から出射された可視光VLを、屈折率可変層13に向けて反射する。光学層17によって反射された可視光VLは、基板15、屈折率可変層13、及び光導波層11を通って、光導波層11の主面11aから出射する。従って、可視光VLは、光導波層11の主面11aの側から表示部1を見ている人間の目に入射する。その結果、人間は、可視光VLによって表される画像を見ることができる。
【0043】
以上、
図1を参照して説明したように、実施形態1によれば、光導波層11を導波した可視光VLによって表される画像を、透き通っている表示部1に表示できる。つまり、光学層17は、環境光NLに含まれる可視光VLAを透過しつつ、光導波層11を導波する可視光VLだけを反射する。従って、表示部1を透明ディスプレイとして効果的に機能させることができる。
【0044】
また、実施形態1では、光学層17は、光導波層11を導波して屈折率可変層13が出射した光LTを拡散反射することが好ましい。具体的には、光学層17は、光導波層11を導波して屈折率可変層13が出射した可視光VLを拡散反射することが好ましい。従って、この好ましい例では、光LT、具体的には可視光VLは、特定方向に反射されるのではなく、様々な方向に反射される。その結果、表示部1の視野角を大きくできる。なお、拡散反射は乱反射と同義である。
【0045】
さらに、実施形態1では、屈折率可変層13は、液晶LQを含む液晶層である。従って、駆動電圧Vdを屈折率可変層13に印加して、液晶LQの配向を制御することで、屈折率可変層13の屈折率を容易に変化させることができる。液晶LQは、透き通っており、透明である。液晶LQは可撓性を有することが好ましい。液晶LQは複数の液晶分子LCを含む。
【0046】
引き続き
図1を参照して、屈折率可変層13が液晶LQを含む液晶層である場合において、屈折率可変層13の駆動による屈折率の制御を説明する。表示部1は、複数の画素PXを含む。複数の画素PXは、平面視において、格子状に配列されている。平面視とは、方向A1から表示部1を見ることを示す。方向A1は、屈折率可変層13に交差する。実施形態1では、方向A1は、屈折率可変層13に略直交する。
【0047】
図1には、2つの画素PXが示されている。画素PXは、液晶LQの最小単位部分(以下、「最小単位部分MU1」と記載する。)と、光学層17の最小単位部分(以下、「最小単位部分MU2」と記載する。)とを含む。最小単位部分MU1は、液晶LQのうち駆動電圧Vdによって配向を個別に制御可能な最小単位の領域を示す。最小単位部分MU2は、光学層17のうち、最小単位部分MU1と方向A1において対向する領域を示す。
【0048】
駆動部5は、画素PXに印加する駆動電圧Vdを画素PXごとに制御して、画素PXごとに液晶LQの配向を制御する。つまり、駆動部5は、画素PXに印加する駆動電圧Vdを画素PXごとに制御して、画素PXごとに屈折率可変層13の屈折率(液晶LQの屈折率)を制御する。従って、画素PXごとに、光導波モードと光導入モードとを切り替えることができる。
【0049】
光導波モードは、光導波層11を導波する光LTを屈折率可変層13に導入することなく、光LTが光導波層11を導波するモードを示す。駆動部5は、屈折率可変層13が光LTを光導波層11の内部に向けて反射するように、液晶LQの配向を制御する。その結果、画素PXの状態が光導波モードに設定される。例えば、駆動部5は、屈折率可変層13の屈折率が光導波層11の屈折率よりも小さくなるように液晶LQの配向を制御することで、画素PXの状態を光導波モードに設定できる。
【0050】
光導波モードに設定された画素PXでは、光LTが光学層17の最小単位部分MU2に入射しないため、光学層17の最小単位部分MU2は光LTを反射しない。つまり、画素PXは光を出射しないため、人間にとって画素PXは透き通って見える。
図1の例では、複数の画素PXのうちの画素PX1の状態が光導波モードに設定されている。
【0051】
一方、光導入モードは、光導波層11を導波する光LTを屈折率可変層13の内部に導入するモードを示す。駆動部5は、屈折率可変層13が光LTを光導波層11から屈折率可変層13の内部に導入するように、液晶LQの配向を制御する。その結果、画素PXの状態が光導波モードに設定される。例えば、駆動部5は、屈折率可変層13の屈折率が光導波層11の屈折率よりも大きくなるように液晶LQの配向を制御することで、画素PXの状態を光導入モードに設定できる。
【0052】
光導入モードに設定された画素PXでは、光LTが屈折率可変層13を通って光学層17の最小単位部分MU2に入射するため、光学層17の最小単位部分MU2は光LTを反射(例えば拡散反射)する。つまり、画素PXは光LTを出射するため、人間の目に、画素PXが出射した光LTが入射する。従って、人間には、画素PXが発光しているように見える。
図1の例では、複数の画素PXのうちの画素PX2の状態が光導入モードに設定されている。
【0053】
以上、
図1を参照して説明したように、実施形態1によれば、画素PXごとに液晶LQの配向を制御して、光導波モードと光導入モードとを画素PXごとに切り替えることができる。従って、画素PXごとに非発光と発光とを切り替えることができる。その結果、表示部1は、複数の画素PXによって画像を表示できる。
【0054】
引き続き
図1を参照して、屈折率可変層13の液晶LQの駆動方法を説明する。
図1の例では、液晶LQはネガ型ネマティック液晶である。従って、画素PX1において、液晶LQの最小単位部分MU1に駆動電圧Vdが印加されていない状態では、液晶分子LCは起立している。その結果、屈折率可変層13は、光LTを光導波層11の内部に向けて反射する。一方、画素PX2において、液晶LQに駆動電圧Vdが印加された状態では、液晶分子LCは電界方向に対して垂直になる。その結果、屈折率可変層13は、光LTを光導波層11から導入する。
【0055】
なお、液晶LQの種類は、特に限定されない。液晶LQは、例えば、ポジ型ネマティック液晶であってもよいし、強誘電性液晶であってもよい。強誘電性液晶は、駆動電圧Vdに対して、ネマティック液晶よりも高速に応答する。液晶LQとして高速に応答する液晶を採用することで、屈折率可変層13を高速に駆動できる。
【0056】
また、画素PXごとに屈折率可変層13の屈折率を変化させることができる限りにおいては、屈折率可変層13の液晶LQの駆動方法は、特に限定されない。例えば、液晶LQの駆動方法は、TN(twisted nematic)駆動液晶モード、IPS(in-plane switching)駆動液晶モード、FFS(fringe field switching)駆動液晶モード、VA(vertical alignment)駆動液晶モード、MVA(multidomain vertical alignment)駆動液晶モード、又は、PVA(patterned vertical alignment)駆動液晶モードである。
【0057】
さらに、光導波層11の形状は、光LTを導波できる限りにおいては特に限定されない。光導波層11は、例えば、スラブ型導波路(slab waveguide)であってもよいし、チャネル型導波路(channel waveguide)であってもよい。スラブ型導波路は、全ての画素PXを覆う平面状の導波路である。チャネル型導波路は、互いに平行に線状に延びた複数の導波路からなる。チャネル型導波路では、各導波路は、1画素に対応する幅で線状に延びている。
【0058】
次に、
図2~
図4を参照して、光学層17を説明する。
図2は、光学層17を示す断面図である。
図3は、光学層17を示す平面図である。
図4は、光学層17の複数の螺旋状構造体171の空間位相分布を示す平面図である。
【0059】
図2に示すように、光学層17は、複数の螺旋状構造体171を含む。複数の螺旋状構造体171の各々は、方向A1に沿って延びている。複数の螺旋状構造体171の各々はピッチpを有する。ピッチpは、螺旋の1周期(360度)を示す。複数の螺旋状構造体171の各々は複数の要素173を含む。複数の要素173は、方向A1に沿って螺旋状に旋回して積み重ねられている。
【0060】
複数の螺旋状構造体171の各々は、螺旋状構造体171の構造と光学的性質とに応じた帯域(以下、「選択反射帯域」と記載する場合がある。)の波長を有する光であって、螺旋状構造体171の螺旋の旋回方向に整合する偏光状態を有する光を反射する。このような光の反射を選択反射と記載し、光を選択反射する特性を選択反射性と記載する場合がある。また、螺旋状構造体171の各々は、螺旋状構造体171の螺旋の旋回方向と相反する偏光状態を有する光を透過する。
【0061】
具体的には、選択反射は次の通りである。すなわち、複数の螺旋状構造体171の各々は、螺旋状構造体171の螺旋のピッチpと屈折率とに応じた帯域の波長を有する光であって、螺旋状構造体171の螺旋の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を有する光を反射する。一方、螺旋状構造体171の各々は、螺旋状構造体171の螺旋の旋回方向と反対の旋回方向の円偏光を有する光を透過する。なお、円偏光は、厳密な円偏光であってもよいし、楕円偏光に近似した円偏光であってもよい。
【0062】
光学層17は複数の反射面175を有する。複数の反射面175の各々は凸凹形状を有する。複数の反射面175の各々では、複数の螺旋状構造体171にわたって、反射面175に位置する複数の要素173の配向方向は揃っている。
【0063】
具体的には、複数の螺旋状構造体171のうちの2以上の螺旋状構造体171の空間位相が互いに異なる。
図2及び
図3に示すように、螺旋状構造体171の空間位相は、螺旋状構造体171の端部EDに位置する要素173の配向方向を示す。
図3では、複数の螺旋状構造体171の端部EDが示されている。
【0064】
実施形態1によれば、2以上の螺旋状構造体171の空間位相を互いに異ならせることによって、光学層17に、凸凹形状を有する反射面175を形成できる。その結果、光学層17に入射する光LTの入射角θが比較的大きい場合であっても、反射面175の凸凹形状によって、光LT(具体的には可視光VL)を拡散反射できる。また、複数の螺旋状構造体171によって光学層17を構成した場合、光学層17は、静的な素子として光LTを拡散反射する。従って、ヘイズ(かすみ)を低減できる。
【0065】
具体的には、
図3に示すように、複数の螺旋状構造体171は、方向A2と方向A3とのそれぞれに沿って並んでいる。そして、方向A2に沿って並んでいる複数の螺旋状構造体171の配向方向は、不規則に変化している。つまり、方向A2に沿って並んでいる複数の螺旋状構造体171の空間位相は、不規則に変化している。加えて、方向A3に沿って並んでいる複数の螺旋状構造体171の配向方向は、不規則に変化している。つまり、方向A3に沿って並んでいる複数の螺旋状構造体171の空間位相は、不規則に変化している。従って、
図2に示すように、凸凹形状を有する反射面175が形成される。なお、方向A1(
図1)と方向A2と方向A3とは互いに直交している。
【0066】
図4は、複数の螺旋状構造体171の空間位相分布を示す平面図である。
図4では、方向A1から光学層17を見たときの空間位相分布が、要素173の回転角度で表される。
図4では、0度の位相を黒色で表し、180度の位相を白色で表す。0度と180度との間は、濃度の異なる灰色で示される。濃い灰色ほど0度に近い値を示し、淡い灰色ほど180度に近い値を示す。
図4に示すように、螺旋状構造体171の位相は不規則に分布している。例えば、螺旋状構造体171の位相はランダムに分布している。
【0067】
実施形態1では、光学層17の複数の螺旋状構造体171は、コレステリック液晶である。従って、螺旋状構造体171を構成する複数の要素173の各々は液晶分子である。
【0068】
なお、光学層17の複数の螺旋状構造体171は、コレステリック液晶に限定されない。複数の螺旋状構造体171が、コレステリック液晶以外のカイラル液晶であってもよい。コレステリック液晶以外のカイラル液晶は、例えば、カイラルスメクチックC相、ツイストグレインバウンダリー相、又はコレステリックブルー相である。また、コレステリック液晶は、例えば、ヘリコイダルコレステリック相であってもよい。
【0069】
また、光学層17の複数の螺旋状構造体171は液晶に限定されない。例えば、複数の螺旋状構造体171は、カイラルな構造体を形成してもよい。カイラルな構造体は、例えば、螺旋無機物、螺旋金属、又は螺旋結晶である。
【0070】
螺旋無機物は、例えば、Chiral Sculptured Film(以下、「CSF」と記載する。)である。CSFは、基板を回転させながら無機物を基板に蒸着した光学薄膜であり、螺旋状の微細構造を有する。その結果、CSFは、コレステリック液晶と同様の光学特性を示す。
【0071】
螺旋金属は、例えば、Helix Metamaterial(以下、「HM」と記載する。)である。HMは、金属を微細な螺旋構造体に加工した物質であり、コレステリック液晶のように円偏光を反射する。
【0072】
螺旋結晶は、例えば、Gyroid Photonic Crystal(以下、「GPC」と記載する。)である。GPCは、3次元的な螺旋構造を有する。一部の昆虫又は人工構造体はGPCを含む。GPCは、コレステリックブルー相のように円偏光を反射する。
【0073】
なお、光学層17は、光LTを拡散反射する場合に限られず、任意の反射形態で光LTを反射してもよい。換言すれば、光学層17は、複数の螺旋状構造体171の空間位相の分布に応じて、任意の反射形態で光LTを反射することができる。更に換言すれば、反射面175の形状は、凸凹形状に限られず、任意の形状をとり得る。例えば、光学層17を体積ホログラムとして構成できる。光学層17を体積ホログラムとして構成する場合、反射面175は、光LT(具体的には可視光VL)を反射し、光LTに対応する物体の像を形成する。
【0074】
次に、
図5(a)及び
図5(b)を参照して、環境光NLに対する光学層17の反射率及び透過率を説明する。本願発明者は、光学層17の液晶LQがコレステリック液晶であるときの光学層17の反射率及び透過率を計測した。コレステリック液晶は、
図2~
図4に示す構造を有していた。そして、光学層17に対して直交するように光を入射した。なお、光導波層11及び屈折率可変層13は設けなかった。
【0075】
図5(a)は、光学層17に入射した光の反射率を示すグラフである。
図5(a)の縦軸は光の反射率(任意単位)を示し、横軸は光の波長(nm)を示す。曲線SM1は反射率のシミュレーション結果を示し、曲線EX1は反射率の測定結果を示す。
【0076】
図5(b)は、光学層17に入射した光の透過率を示すグラフである。
図5(b)の縦軸は光の透過率(%)を示し、横軸は光の波長(nm)を示す。曲線SM2は透過率のシミュレーション結果を示し、曲線EX2は透過率の測定結果を示す。
【0077】
図5(a)に示すように、光学層17を構成するコレステリック液晶は、近赤外領域の波長を有する光を反射した。一方、
図5(a)に示すように、光学層17を構成するコレステリック液晶は、可視光領域の波長を有する光を透過した。従って、
図1に示す環境光NLに含まれる可視光VLAは、光学層17に反射されずに光学層17を透過するため、表示部1が透明ディスプレイとして機能することを推測できた。なお、光学層17が環境光NLに含まれる近赤外光を反射しても、人間には見えない。
【0078】
ここで、コレステリック液晶による反射はブラッグ反射である。そして、コレステリック液晶によるブラッグ反射波長は、コレステリック液晶に対する入射角が大きくなる程、短波長側に移動する。しかしながら、
図1に示す環境光NLに含まれる可視光VLAが取り得る範囲の入射角に対して、ブラッグ反射が発生しないように、光導波層11、屈折率可変層13、基板15、及び光学層17が設計される。従って、環境光NLに含まれる可視光VLAは、光学層17によって反射されない。また、コレステリック液晶は螺旋構造を有しているため、高次のブラッグ反射を示さない。従って、可視光VLAが高次のブラッグ反射を示すことはない。なお、入射角は、コレステリック液晶の表面に直交する垂線に対する光の入射角を示す。
【0079】
次に、
図6~
図8(c)を参照して、光源部3からの光LTに対する光学層17の反射率を説明する。本願発明者は、光学層17の液晶LQがコレステリック液晶であるときの光学層17の反射率を計測した。コレステリック液晶は、
図2~
図4に示す構造を有していた。また、光の垂直入射時に約1150nmにおいて反射を示すコレステリック液晶を使用した。また、
図6に示す実験系50を使用した。
【0080】
図6は、光源部3からの光LTに対する光学層17の反射率を測定するための実験系50を示す断面図である。
図6に示すように、実験系50は、プリズム51と、透明なオイル53と、光導波層11と、光学層17と、透明な基板55とを備える。プリズム51と光導波層11とはオイル53を介して密着していた。光導波層11と基板55との間に光学層17が配置された。
【0081】
空気の屈折率は、約1.00であった。プリズム51とオイル53と光導波層11との各々の屈折率は、約1.53であった。光学層17のコレステリック液晶の屈折率は、約1.60であった。
【0082】
プリズム51の斜面に直交する垂線に対して、プリズム51への光LTの入射角θ1を定めた。垂線に対して光導波層11に近づく側を入射角θ1の「正」とし、垂線に対して光導波層11から遠くなる側を入射角θ1の「負」とした。
【0083】
また、光導波層11の主面11aに直交する垂線に対して、光導波層11への光LTの入射角θ2を定めた。さらに、光導波層11の主面11aに直交する垂線に対して、光導波層11への光LTの実効入射角θwを定めた。実効入射角θwは光LTの屈折角を示した。光LTは、光導波層11における導波条件を満足していたため、光導波層11中を実効入射角θwで導波した。
【0084】
以下、実効入射角θwを「導波角θw」と記載する場合がある。
【0085】
ここで、光導波層11中の光LTの導波角θwは、光線の屈折に関するスネルの法則によって、入射角θ1に応じて変化する。
【0086】
図7は、実験系50における入射角θ1と導波角θwとの関係を示すグラフである。
図7において、縦軸は導波角θw(度)を示し、横軸は入射角θ1(度)を示す。曲線B1は、プリズム51を有する実験系50における導波角θwの計算結果を示す。曲線B2は、実験系50がプリズム51を有していないときの導波角θwの計算結果を示す。実験系50では、プリズム51の仕様によって、大きな導波角θwを実現できる。
【0087】
光導波層11中で全反射を示す臨界角θcは、θc=sin
-1(1/1.53)≒40.8度、であるため、
図7に示すように、入射角θ1を「-10度」よりも大きくすると、光LTは、光導波層11中を導波すると推測できた。
【0088】
再び
図6を参照して、反射率を説明する。本願発明者は、実験系50によって、導波角θwが59度であるときと、導波角θwが67度であるときと、導波角θwが70度であるときとで、光学層17の反射率を測定した。
図7に示す曲線B1によって、入射角θ1を18度に設定すると、導波角θwを59度に設定できることが確認できた。曲線B1によって、入射角θ1を30度に設定すると、導波角θwを67度に設定できることが確認できた。曲線B1によって、入射角θ1を35度に設定すると、導波角θwを70度に設定できることが確認できた。
【0089】
図8(a)は、光導波層11における導波角θwが59度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図8(b)は、光導波層11における導波角θwが67度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図8(c)は、光導波層11における導波角θwが70度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図8(a)~
図8(c)において、縦軸は光LTの反射率(%)を示し、横軸は光LTの波長(nm)を示す。
【0090】
図8(a)に示すように、導波角θwが59度の場合、光学層17における光LTの反射率は、赤色に対応する波長帯域(中心波長:約625nm)で特に大きかった(約80%)。目視によって、光学層17から赤色の拡散反射光を確認できた。
【0091】
図8(b)に示すように、導波角θwが67度の場合、光学層17における光LTの反射率は、緑色に対応する波長帯域(中心波長:約520nm)で特に大きかった(約80%)。目視によって、光学層17から緑色の拡散反射光を確認できた。
【0092】
図8(c)に示すように、導波角θwが70度の場合、光学層17における光LTの反射率は、青色に対応する波長帯域(中心波長:約475nm)で特に大きかった(約80%)。目視によって、光学層17から青色の拡散反射光を確認できた。
【0093】
図8(a)~
図8(c)に示すように、光学層17の反射波長は、導波角θwに対応して短い波長側にシフトした反射帯域を示した。特に、導波角θwが大きくなる程、反射帯域は短い波長側にシフトした。そして、導波角θwが59度で赤色の強い反射が生じ、導波角θwが67度で緑色の強い反射が生じ、導波角θwが70度で青色の強い反射が生じた。
図8(a)~
図8(c)に示す計測結果から、光源部3の光LTを光導波層11に入射させる際に、波長によって異なる角度で入射するように設計することで、カラー表示が可能になることを推測できた。
【0094】
なお、光が入射媒質からコレステリック液晶に入射する際、コレステリック液晶中では、入射媒質とコレステリック液晶との界面における光波の位相が整合するように光の屈折が起こる。
【0095】
(変形例)
次に、
図1及び
図9を参照して、実施形態1の変形例に係る光学層17を説明する。変形例に係る光学層17が積層構造体180を有する点で、変形例は
図1を参照して説明した実施形態1と主に異なる。以下、変形例が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0096】
図9は、変形例に係る光学層17を示す断面図である。
図9に示すように、光学層17は積層構造体180を含む。積層構造体180は、基板181と、誘電体多層膜183とを含む。基板181は、凸凹形状の表面181aを有する。誘電体多層膜183は、基板181の表面181aに積層されている。従って、誘電体多層膜183の表面は凸凹形状を有する。その結果、変形例によれば、光学層17に入射する光LTの入射角が比較的大きい場合であっても、誘電体多層膜183の凸凹形状によって、光LTを拡散反射できる。
【0097】
具体的には、誘電体多層膜183は、複数の第1誘電体183aと、複数の第2誘電体183bとを含む。そして、第1誘電体183aと第2誘電体183bとが交互に積層されている。第1誘電体183aは例えばTiO2であり、第2誘電体183bは例えばSiO2である。誘電体多層膜183及び基板181の各々は、透き通っており、透明である。誘電体多層膜183及び基板181の各々は、可撓性を有することが好ましい。
【0098】
(実施形態2)
図10を参照して、本発明の実施形態2に係る表示装置100Aを説明する。実施形態2に係る表示装置100Aがクラッド層23を有する点で、実施形態2は実施形態1と主に異なる。以下、実施形態2が実施形態1と異なる点を主に説明する。
【0099】
図10は、実施形態2に係る表示装置100Aを示す断面図である。
図10に示すように、表示装置100Aは、
図1に示す表示装置100の表示部1に代えて、表示部1Aを備える。表示部1Aは、
図1に示す表示部1の構成に加えて、電極ユニット21と、クラッド層23とをさらに含む。
【0100】
光導波層11は、クラッド層23と屈折率可変層13との間に配置される。そして、クラッド層23は、光導波層11の屈折率よりも小さい屈折率を有する。従って、実施形態2によれば、光導波層11は、光LTのロスを抑制しつつ、全反射によって光LTを効果的に導波させることができる。
【0101】
電極ユニット21は、屈折率可変層13に駆動電圧Vdを印加する。具体的には、駆動部5が駆動電圧Vdを電極ユニット21に供給すると、電極ユニット21は、屈折率可変層13に駆動電圧Vdを印加する。その結果、屈折率可変層13の屈折率は、駆動電圧Vdを印加に応答して変化する。
【0102】
具体的には、駆動電圧Vdの印加に応答して液晶分子LCの配向が変化する。その結果、屈折率可変層13の屈折率が変化する。電極ユニット21は、透き通っており、透明である。電極ユニット21は、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物:Indium Tin Oxide)により構成される。電極ユニット21は、可撓性を有することが好ましい。なお、
図10では、配置を分かり易くするために、電極ユニット21を黒色で図示している。
【0103】
具体的には、電極ユニット21は、対向電極211と、画素電極群213とを含む。画素電極群213は複数の画素電極2131を含む。複数の画素電極2131は、同一平面内に配置される。図面の簡略化のため図示を省略したが、表示部1Aは、複数のTFT(薄膜トランジスター:Thin Film Transistor)を含む。複数のTFTは、それぞれ、複数の画素電極2131に接続されている。従って、表示部1Aは、アクティブマトリクス駆動方式を採用する。ただし、実施形態1と同様に、表示部1Aの駆動方式は、特に限定されない。
【0104】
対向電極211は、クラッド層23と光導波層11と屈折率可変層13とを介して、画素電極群213と対向している。つまり、対向電極211と画素電極群213との間に、クラッド層23と光導波層11と屈折率可変層13とが配置される。
【0105】
表示部1は、基板19をさらに含んでいてもよい。この場合、対向電極211とクラッド層23と光導波層11と屈折率可変層13と画素電極群213とは、基板19と基板15との間に配置される。対向電極211は基板19とクラッド層23との間に配置される。画素電極群213は屈折率可変層13と基板15との間に配置される。光学層17は、基板15に対して、屈折率可変層13の反対側に配置される。屈折率可変層13は、光導波層11と光学層17との間に配置される。なお、光学層17は、画素電極群213と基板15との間に配置されていてもよい。
【0106】
引き続き
図10を参照して、屈折率可変層13が液晶LQを含む液晶層である場合において、画素PXについて説明する。表示部1Aは、複数の画素PXを含む。複数の画素PXは、平面視において、格子状に配列されている。
図10には、2つの画素PXが示されている。画素PXは、実施形態1と同様に、液晶LQの最小単位部分MU1と、光学層17の最小単位部分MU2とを含む。また、画素PXは、画素電極2131及びTFTを含む。液晶LQの最小単位部分MU1及び光学層17の最小単位部分MU2の各々は画素電極2131に対して方向A1において対向する。画素電極2131は、液晶LQの最小単位部分MU1と光学層17の最小単位部分MU2との間に配置される。
【0107】
駆動部5は、画素電極2131に印加する駆動電圧VdをTFTを介して画素電極2131ごとに制御して、画素PXごとに液晶LQの配向を制御する。つまり、駆動部5は、画素電極2131に印加する駆動電圧VdをTFTを介して画素電極2131ごとに制御して、画素PXごとに屈折率可変層13の屈折率(液晶LQの屈折率)を制御する。従って、実施形態1と同様に、画素PXごとに、光導波モードと光導入モードとを切り替えることができる。その結果、実施形態2では、実施形態1と同様に、画素PXごとに非発光と発光とを切り替えることができて、表示部1Aは、複数の画素PXによって画像を表示できる。
【0108】
また、実施形態2では、実施形態1と同様に、光学層17が光LTを反射することで、光LTを光導波層11の主面11aから出射している。従って、表示装置100Aでは、コントラストを向上できて、高い品質の画像を表示できる。その他、表示装置100Aは、実施形態1に係る表示装置100と同様の構成を有しているため、表示装置100と同様の効果を有する。
【0109】
引き続き
図10を参照して、表示部1Aの動作を説明する。光源部3は、光LTを光導波層11に向けて出射する。従って、光LTは、光導波層11の内部を導波する。
【0110】
屈折率可変層13は、光導波層11を導波する光LTを、屈折率可変層13の屈折率に応じて光導波層11の内部に向けて反射して、光導波層11を導波させる。
図10の例では、画素PX1では、光LTが屈折率可変層13に導入されていない。従って、画素PX1は、発光しておらず、透き通っている。なお、画素PX1における画素電極2131は画素電極2131aである。
【0111】
一方、屈折率可変層13は、光導波層11を導波する光LTを、屈折率可変層13の屈折率に応じて屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の外部に出射する。
図10の例では、画素PX2では、光LTが屈折率可変層13に導入されて、光LTが光学層17に入射している。そして、光LTは、画素電極2131b及び基板15を通って光学層17に入射する。
【0112】
画素PX2において、光学層17は、屈折率可変層13が出射した光LT(例えば可視光VL)を屈折率可変層13に向けて反射する。光学層17によって反射された光LTは、基板15、画素電極2131b、屈折率可変層13、光導波層11、クラッド層23、対向電極211、及び基板19を通って、基板19の主面19aから出射する。従って、光LTは、基板19の主面19aの側から画素PX2を見ている人間の目に入射する。つまり、人間には、画素PX2が発光しているように見える。
【0113】
引き続き
図10を参照して、表示部1Aの詳細を説明する。クラッド層23の屈折率を「nc」と記載し、光導波層11の屈折率を「nw」と記載する。電圧無印加時の液晶LQの異常光に対する屈折率を「ne」と記載し、電圧無印加時の液晶LQの常光に対する屈折率を「no」と記載する。また、光導波層11の厚みを「d」と記載する。また、光学層17はコレステリック液晶によって構成される。
【0114】
光源部3が出射する波長λの光LTは、式(1)、式(2)、及び式(3)を満足する導波角θwでのみ、光導波層11中を導波する。つまり、屈折率nc、屈折率nw、屈折率no、及び、光導波層11の厚みdに依存して、離散的な導波角θwのみが許容される。式(1)は、光LTが光導波層11内を導波する場合において、光導波層11とクラッド層23との界面での全反射条件を示す。式(2)は、光LTが光導波層11内を導波する場合において、光導波層11と屈折率可変層13との界面での全反射条件を示す。式(3)は、光導波層11における位相整合条件を示す。式(1)において、「θcc」は、光導波層11において光導波層11とクラッド層23との界面での全反射を示す臨界角を示す。式(2)において、「θco」は、光導波層11において光導波層11と屈折率可変層13との界面での全反射を示す臨界角を示す。また、式(3)において、「φc」は、光導波層11とクラッド層23との界面での反射に伴う位相変化を表し、「φo」は、光導波層11と屈折率可変層13との界面での反射に伴う位相変化を表し、「m」は整数を示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
光導波層11を導波する光LTが、屈折率可変層13の液晶LQの駆動によって屈折率可変層13に導入された場合には、光LTは、屈折率可変層13、画素電極2131、及び基板15を透過して、導波角θwに応じた入射角で光学層17のコレステリック液晶に入射する。従って、光学層17のコレステリック液晶による光LTの反射波長は、垂直入射時の反射帯域に対して、導波角θwに対応して短い波長側にシフトした反射帯域を示す。具体的には、光学層17のコレステリック液晶による光LTの反射波長は、導波角θwが大きくなる程、短い波長側にシフトした反射帯域を示す。
【0119】
本願発明者は、光が光学層17に対して垂直入射したときの光学層17の反射率と透過率とをシミュレーションによって算出した。この場合、光はTE波であった。また、屈折率nc=1.49、屈折率nw=1.60、屈折率ne=1.84、屈折率no=1.57、厚みd=9μm、液晶LQの螺旋のピッチp=1000nm、であった。
【0120】
図11(a)は、光が光学層17に対して垂直入射したときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図11(a)において、縦軸は光の反射率(%)を示し、横軸は光の波長(nm)を示す。
図11(b)は、光が光学層17に対して垂直入射したときの光学層17の透過率を示すグラフである。
図11(b)において、縦軸は光の透過率(%)を示し、横軸は光の波長(nm)を示す。
【0121】
図11(a)に示すように、光学層17における光の反射率は、近赤外領域において100%であった。また、
図11(b)に示すように、光学層17における光の透過率は、可視光領域において100%であった。従って、光学層17が、環境光NLに含まれる可視光VLAを反射せずに、可視光VLAを透過させることを確認できた。つまり、表示部1Aは、環境光NLに含まれる可視光VLAに対して透明であることが確認できた。
【0122】
さらに、本願発明者は、光導波層11を導波した光LTが光学層17に入射したときの光学層17の反射率をシミュレーションによって算出した。この場合、光LTはTE波であった。また、屈折率nc=1.49、屈折率nw=1.60、屈折率ne=1.84、屈折率no=1.57、厚みd=10μm、螺旋のピッチp=1050nm、であった。
【0123】
図12(a)は、光導波層11における導波角θwが70.2度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図12(b)は、光導波層11における導波角θwが73.3度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図12(c)は、光導波層11における導波角θwが75.2度であるときの光学層17の反射率を示すグラフである。
図12(a)~
図12(c)において、縦軸は光LTの反射率(%)を示し、横軸は光LTの波長(nm)を示す。
【0124】
図12(a)に示すように、導波角θwが70.2度の場合、光学層17における光LTの反射率は、赤色に対応する波長帯域(中心波長:632nm)で特に大きかった(約100%)。
【0125】
図12(b)に示すように、導波角θwが73.3度の場合、光学層17における光LTの反射率は、緑色に対応する波長帯域(中心波長:532nm)で特に大きかった(約100%)。
【0126】
図12(c)に示すように、導波角θwが75.2度の場合、光学層17における光LTの反射率は、青色に対応する波長帯域(中心波長:470nm)で特に大きかった(約100%)。
【0127】
図12(a)~
図12(c)に示すように、光学層17の反射波長は、導波角θwに対応して短い波長側にシフトした反射帯域を示した。特に、導波角θwが大きくなる程、反射帯域は短い波長側にシフトした。そして、導波角θwが70.2度で赤色の強い反射が生じ、導波角θwが73.3度で緑色の強い反射が生じ、導波角θwが75.2度で青色の強い反射が生じた。
図12(a)~
図12(c)に示すシミュレーション結果から、光源部3の光LTを光導波層11に入射させる際に、波長によって異なる角度で入射するように設計することで、カラー表示が可能になることを推測できた。
【0128】
(第1変形例)
図13を参照して、実施形態2の第1変形例に係る表示装置100Aを説明する。第1変形例に係る表示装置100Aが時分割方式でカラー表示を実行する点で、第1変形例は
図10を参照して説明した実施形態2に係る表示装置100Aと主に異なる。以下、第1変形例が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0129】
図13は、第1変形例に係る表示装置100Aを示す断面図である。
図13に示すように、表示装置100Aの光源部3は複数の光源4を含む。光源4は例えば発光ダイオードを含む。複数の光源4は、互いに波長の異なる複数の可視光VLをそれぞれ出射する。具体的には、複数の光源4は、複数の可視光VLを、互いに異なるタイミングで光導波層11に向けて出射する。つまり、複数の光源4は、複数の可視光VLを時分割で光導波層11に向けて出射する。従って、複数の可視光VLは、光導波層11を光源部3からの出射順に導波する。また、複数の可視光VLは、互いに異なる波長を有するため、互いに異なる導波角で光導波層11を導波する。なお、光源4は、TE(Transverse Electric)偏光している可視光VLを出射することが好ましい。光学設計が容易になるためである。
【0130】
そして、屈折率可変層13は、光導波層11を導波する可視光VLを、屈折率可変層13の屈折率に応じて、光源部3からの出射順に屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の外部に出射する。具体的には、複数の可視光VLは、屈折率可変層13の同じ位置から、光源部3からの出射順に出射する。そして、複数の可視光VLは、光源部3からの出射順に画素電極2131及び基板15を通って光学層17に入射する。
【0131】
光学層17は、屈折率可変層13が出射した可視光VLを、光学層17の同じ位置から光源部3からの出射順に屈折率可変層13に向けて反射する。第1変形例では、光学層17は、屈折率可変層13が出射した可視光VLを、光学層17の同じ位置から光源部3からの出射順に屈折率可変層13に向けて拡散反射する。従って、拡散反射された互いに波長の異なる複数の可視光VLは、基板19の主面19aの側から表示部1を見ている人間の目に、光源部3からの出射順に入射する。光源部3からの複数の可視光VLの出射タイミングは、人間の目にとっては同時である。その結果、人間は、複数の可視光VLによって表されるカラー画像を見ることができる。
【0132】
具体的には、光源部3は、時分割で出射する可視光VLの波長を切り替える。そして、駆動部5が、可視光VLの波長の切り替えと同期して屈折率可変層13を駆動し、所望の画素PXで可視光VLを反射する。
【0133】
特に、第1変形例では、複数の光源4のうち、光源4Rは、赤色の可視光LBを出射し、光源4Gは緑色の可視光LGを出射し、光源4Bは青色の可視光LBを出射する。従って、光導入モードが設定された画素PXにおいて、光学層17は、時分割で出射された可視光LBと可視光LGと可視光LBとを拡散反射する。その結果、表示部1Aは、可視光LBと可視光LGと可視光LBとによってカラー表示を実行できる。つまり、表示部1Aでは、光導入モードが設定された1画素PXから、可視光LBと可視光LGと可視光LBとが拡散反射されて、カラー表示が実行される。
【0134】
(第2変形例)
図14を参照して、実施形態2の第2変形例に係る表示装置100Aを説明する。第2変形例に係る表示装置100Aが空間分割方式でカラー表示を実行する点で、第2変形例は
図10を参照して説明した実施形態2に係る表示装置100Aと主に異なる。以下、第2変形例が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0135】
図14は、第2変形例に係る表示装置100Aを示す断面図である。
図14に示すように、表示装置100Aの光源部3は白色光源3Wを含む。白色光源3Wは例えば発光ダイオードを含む。白色光源3Wは白色光WLを出射する。白色光源3Wは、白色光WLを光導波層11に向けて出射する。従って、白色光WLは光導波層11を導波する。
【0136】
屈折率可変層13は、白色光WLに含まれる互いに異なる波長の複数の可視光VLを、屈折率可変層13の屈折率に応じて屈折率可変層13の異なる位置から異なる角度で屈折率可変層13の内部に導入して、屈折率可変層13の異なる位置から屈折率可変層13の外部に出射する。そして、複数の可視光VLは、基板15を通って光学層17の異なる位置に異なる入射角で入射する。
【0137】
光学層17は、屈折率可変層13が出射した複数の可視光VLを、光学層17の異なる位置から屈折率可変層13に向けて反射する。第2変形例では、光学層17は、屈折率可変層13が出射した複数の可視光VLを、光学層17の異なる位置から屈折率可変層13に向けて拡散反射する。従って、拡散反射された互いに波長の異なる複数の可視光VLは、基板19の主面19aの側から表示部1を見ている人間の目に入射する。光学層17において複数の可視光VLが拡散反射される位置は、近接しており、人間の目にとっては同位置である。その結果、人間は、複数の可視光VLによって表されるカラー画像を見ることができる。
【0138】
特に、第2変形例では、白色光WLのうち、緑色の可視光LGと赤色の可視光LBと青色の可視光LBとが、屈折率可変層13の異なる位置から異なる角度で屈折率可変層13の内部に導入されて、屈折率可変層13の異なる位置から屈折率可変層13の外部に出射される。
【0139】
そして、光学層17は、屈折率可変層13が出射した緑色の可視光LGと赤色の可視光LBと青色の可視光LBとを、光学層17の異なる位置から屈折率可変層13に向けて拡散反射する。その結果、表示部1Aは、可視光LBと可視光LGと可視光LBとによってカラー表示を実行できる。
【0140】
具体的には、光導入モードが設定された画素PX2では、白色光WLに含まれる可視光LRは、光導波層11から屈折率可変層13に導入されて、画素電極2131b及び基板15を透過する。そして、可視光LRは、画素電極2131bに対向する光学層17の最小単位部分MU2によって拡散反射される。つまり、画素PX2は、赤色の可視光LRを発光する。
【0141】
また、光導入モードが設定された画素PX3では、白色光WLに含まれる可視光LGは、光導波層11から屈折率可変層13に導入されて、画素電極2131c及び基板15を透過する。そして、可視光LGは、画素電極2131cに対向する光学層17の最小単位部分MU2によって拡散反射される。つまり、画素PX3は、緑色の可視光LGを発光する。
【0142】
さらに、光導入モードが設定された画素PX4では、白色光WLに含まれる可視光LBは、光導波層11から屈折率可変層13に導入されて、画素電極2131d及び基板15を透過する。そして、可視光LBは、画素電極2131dに対向する光学層17の最小単位部分MU2によって拡散反射される。つまり、画素PX4は、青色の可視光LBを発光する。
【0143】
その結果、表示部1Aは、光導入モードが設定された画素PX2と画素PX3と画素PX4とによってカラー表示を実行できる。
【0144】
ここで、画素PX2と画素PX3と画素PX4とは一列に隣接して配列されている。そして、画素PX2と画素PX3と画素PX4とは、それぞれ、色の三原色に対応する可視光LRと可視光LGと可視光LBとを拡散反射する。従って、画素PX2と画素PX3と画素PX4との各々はサブ画素と捉えることができる。その結果、カラー表示においては、実質的には、画素PX2と画素PX3と画素PX4とで1画素を構成する。
【0145】
なお、屈折率可変層13において、液晶LQの配向を変えることで、波長の異なる可視光VLを、光導波層11の異なる位置から屈折率可変層13に導入できる。例えば、屈折率可変層13において、画素PX2における液晶LQの配向と、画素PX3における液晶LQの配向と、画素PX3における液晶LQの配向とは、互いに異なる。つまり、屈折率可変層13に導入する可視光VLの波長に応じて液晶LQの配向を制御することで、各画素PXに対応して、白色光WLから波長の異なる可視光VLを取り出すことができる。
【0146】
(実施形態3)
図15を参照して、本発明の実施形態3に係る表示装置100Bを説明する。実施形態3に係る表示装置100Bが光LTXを吸収する光学層31を有する点で、実施形態3は
図10を参照して説明した実施形態2に係る表示装置100Aと主に異なる。以下、実施形態3が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0147】
図15は、実施形態3に係る表示装置100Bを示す断面図である。
図15に示すように、表示装置100Bは、
図10に示す表示装置100Aの表示部1Aに代えて、表示部1Bを備える。表示部1Bは、
図10に示す表示部1Aの光学層17に代えて、光学層31を含む。なお、屈折率可変層13は、光導波層11と光学層31との間に配置される。
【0148】
実施形態3では、光源部3は、光LTXを光導波層11に向けて出射する。従って、光LTXは光導波層11を導波する。光LTXは、光学層31を着色できる限りにおいては、可視光であってもよいし、不可視光であってもよい。その他、光LTXは、
図10を参照して説明した光LTと同様に、屈折率可変層13の屈折率に応じて、光導波層11を導波して出射端部から出射するか、又は、屈折率可変層13に導入されてから光学層31に入射する。つまり、画素PXにおける液晶LQの最小単位部分MU1の屈折率に応じて、画素PXの状態が、光導波モード又は光導入モードに設定される。
【0149】
光学層31は、屈折率可変層13が出射した光LTXを吸収して着色する。従って、光学層17が着色していない部分と着色している部分との間で明暗の差を大きくできる。その結果、表示装置100Bでは、コントラストを向上できて、高い品質の画像を表示できる。また、基板19の主面19aの側から表示部1を見ている人間は、光学層31の着色部分を見ることができる。
【0150】
光学層17が着色していない部分は、光LTXが入射していない部分であり、透き通っている。
【0151】
具体的には、光導入モードに設定された画素PX2では、光学層31の最小単位部分MU2は、屈折率可変層13が出射した光LTXを吸収して着色する。一方、光導波モードに設定された画素PX1では、光学層31の最小単位部分MU2に光LTXが入射しないため、光学層31の最小単位部分MU2は着色しない。従って、画素PX1は透き通っている。その結果、着色していない画素PX1と着色している画素PX2との間で明暗の差を大きくできて、コントラストを向上できる。
【0152】
光学層31は、例えば、フォトクロミック材料によって構成される。フォトクロミック材料とは、光の照射によって着色する材料のことである。フォトクロミック材料は、例えば、紫外線の照射によって着色する。この場合は、光源部3は、光LTXとしての紫外線を出射する。フォトクロミック材料は、例えば、スピロ系化合物又はジアリールエテン化合物を含む。
【0153】
なお、光学層31は、例えば、エレクトロクロミック材料によって構成されてもよい。エレクトロクロミック材料とは、電流を流したり、電圧を印加したりすると、色が可逆的に変化する材料のことである。この場合は、表示装置100Bは、エレクトロクロミック材料に、電流を流したり、電圧を印加したりする電源部(不図示)をさらに備える。電源部は、例えば、電源回路を含む。
【0154】
また、光学層31は、画素電極群213と基板15との間に配置されてもよい。さらに、
図1に示す表示装置100(変形例を含む)の光学層17に代えて、
図15に示す光学層31が設けられてもよい。この場合、光学層31は、屈折率可変層13と基板15との間に配置されてもよい。
【0155】
(実施形態4)
図16を参照して、本発明の実施形態4に係る表示装置100Cを説明する。実施形態4に係る表示装置100Cが吸収率可変層79を有している点で、実施形態4は実施形態2と主に異なる。以下、実施形態4が実施形態2と異なる点を主に説明する。
【0156】
図16は、実施形態4に係る表示装置100Cを示す断面図である。
図16に示すように、表示装置100Cは、
図10に示す表示装置100Aの構成に加えて、駆動部80をさらに備える。そして、制御部7は駆動部80を制御する。また、表示装置100Cの表示部1Cは、
図10に示す表示装置100Aの表示部1Aに代えて、表示部1Cを含む。表示部1Cは、
図10に示す表示部1Aの構成に加えて、第1基板71と、第2基板73と、第1電極75と、第2電極77と、吸収率可変層79とをさらに含む。
【0157】
吸収率可変層79は、光学層17に対して、屈折率可変層13の反対側に配置される。具体的には、第1基板71と光学層17とは対向している。そして、第1基板71と第2基板73との間に、第1電極75と、吸収率可変層79と、第2電極77とが配置される。吸収率可変層79は、第1電極75と第2電極77との間に配置される。なお、第1基板71、第2基板73、第1電極75、第2電極77、及び吸収率可変層79の各々は、透き通っており、透明である。第1基板71、第2基板73、第1電極75、第2電極77、及び吸収率可変層79の各々は、可撓性を有することが好ましい。第1電極75及び第2電極77の各々は、例えば、ITOにより構成される。なお、
図16では、配置を分かり易くするために、第1電極75及び第2電極77を黒色で図示している。
【0158】
駆動部80は、吸収率可変層79に制御電圧Vtを印加して、吸収率可変層79を駆動する。駆動部5は、例えば、電源回路を含む。具体的には、駆動部80は、第1電極75及び第2電極77を介して吸収率可変層79に制御電圧Vtを印加する。
【0159】
吸収率可変層79では、光を透過する状態と光を吸収する状態とが、印加される制御電圧Vtに応じて切り替わる。従って、実施形態4によれば、吸収率可変層79の状態が光を透過する状態である場合、基板19側から入射する環境光NLも、第2基板73側から入射する環境光NLも、吸収率可変層79を透過する。その結果、表示部1Cを透明ディスプレイとして効果的に機能させることができる。一方、吸収率可変層79の状態が光を吸収する状態である場合、基板19側から入射する環境光NLも、第2基板73側から入射する環境光NLも、吸収率可変層79に吸収される。従って、基板19の主面19aの側から表示部1を見ている人間にとって、表示部1Cの背景が暗く見える。その結果、光学層17が光LTを反射する部分(例えば画素PX2)と光LTを反射しない部分(例えば画素PX1)との間で明暗の差を更に大きくできる。換言すれば、表示装置100Cでは、コントラストを更に向上できて、更に高い品質の画像を表示できる。
【0160】
具体的には、吸収率可変層79は、液晶LQAと、二色性色素DPとを含む。二色性色素DPとは、分子の長軸方向における吸光度と、分子の短軸方向における吸光度とが異なる色素のことである。例えば、二色性色素DPにおいて、分子の長軸方向における吸光度が、分子の短軸方向における吸光度よりも大きい。
【0161】
更に具体的には、液晶LQAに二色性色素DPが添加されている。液晶LQAは複数の液晶分子LCAを含む。二色性色素DPは複数の二色性色素分子DPAを含む。そして、複数の二色性色素分子DPAが複数の液晶分子LCAの間に添加されている。
【0162】
二色性色素DPは、例えば、DCM、又は、BTBPである。DCMは、[2-[2-[4-(Dimethylamino)phenyl]ethenyl]-6-methyl-4H-pyran-4-ylidene]propanedinitrile、である。BTBPは、N,N’-bis(2,5-di-tert-butylphenyl)-3,4,9,10-perylenedicarboimide、である。ただし、二色性色素DPの種類は、特に限定されない。例えば、二色性色素DPは、Aleksandr V. Ivashchenko 著、「Dichroic Dyes for Liquid Crystal Displays」(CRC Press、1994)、に記載された二色性色素であってもよい。
【0163】
なお、
図1に示す表示装置100(変形例を含む)、
図10に示す表示装置100A(第1変形例及び第2変形例を含む)、及び、
図15に示す表示装置100Bの各々は、
図16に示す駆動部80、第1基板71、第2基板73、第1電極75、第2電極77、及び、吸収率可変層79をさらに備えていてもよい。
【0164】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0165】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、表示装置を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0167】
1、1A、1B、1C 表示部
3 光源部
3W 白色光源
4、4R、4G、4B 光源
11 光導波層
17、31 光学層
21 電極ユニット
23 クラッド層
79 吸収率可変層
171 螺旋状構造体
180 積層構造体
181 基板
183 誘電体多層膜
LQ 液晶