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特許7412854テープ、被加工物の分割方法、及び、判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】テープ、被加工物の分割方法、及び、判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H01L21/78 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019220190
(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公開番号】P2021089995
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】添島 義勝
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄一
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-049121(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016063(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/131616(WO,A1)
【文献】特開平06-069335(JP,A)
【文献】特開2003-221564(JP,A)
【文献】特開2008-244007(JP,A)
【文献】特許第5813905(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を分割するときに該被加工物に貼り付けられるテープであって、
基材と、
該基材の上に設けられた無着色粘着層と、
該無着色粘着層の上に設けられた着色粘着層と、を備え
該着色粘着層は、該無着色粘着層よりも薄いことを特徴とするテープ。
【請求項2】
該着色粘着層の厚さは、該無着色粘着層の厚さの半分以下であることを特徴とする請求項1に記載のテープ。
【請求項3】
裏面側にDAFテープが貼着された被加工物の該裏面側に該DAFテープを介して貼着されて使用されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のテープ。
【請求項4】
裏面側にDAFテープが貼着された被加工物の該裏面側にテープを貼着し、該DAFテープごと該被加工物を分割する被加工物の分割方法であって、
基材と、該基材の上に形成された粘着層と、を備え、該粘着層の上面側に着色領域が露出している該テープを該DAFテープを介して該被加工物の該裏面側に貼着するテープ貼着ステップと、
該被加工物を表面側から加工して該被加工物を分割する分割ステップと、
該分割ステップにより該被加工物に形成された加工痕を該表面側から観察し、該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定ステップと、を備え、
該着色領域は、該粘着層よりも薄く、
該判定ステップでは、該加工痕の底部に該着色領域を視認できる場合に該DAFテープが分割されていないと判定され、該加工痕の底部に該着色領域を視認できない場合に該被加工物が該DAFテープごと分割されていると判定されることを特徴とする被加工物の分割方法。
【請求項5】
裏面側にDAFテープが貼着され分割された被加工物を観察して該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定方法であって、
露出した着色領域を上面に有する粘着層を備えるテープが該DAFテープを介して該裏面側に貼着され、表面側から加工されて加工痕が形成されて分割された該被加工物を準備する被加工物準備ステップと、
該被加工物の表面側から該加工痕を観察して該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定ステップと、を備え、
該着色領域は、該粘着層よりも薄く、
該判定ステップでは、該加工痕の底部に該着色領域を視認できる場合に該DAFテープが分割されていないと判定され、該加工痕の底部に該着色領域を視認できない場合に該被加工物が該DAFテープごと分割されていると判定されることを特徴とする判定方法。
【請求項6】
該着色領域の厚さは、該粘着層の厚さの半分以下であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を分割する際に該被加工物に貼着されて使用されるテープと、該テープを被加工物に貼着して該被加工物を分割する分割方法と、被加工物が分割されているか否かを判定する判定方法と、切削ブレードの高さを確認する切削ブレードの高さ確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパソコン等の電子機器に使用されるデバイスチップの製造工程では、まず、半導体等の材料からなるウェーハの表面に複数の交差する分割予定ライン(ストリート)を設定する。そして、該分割予定ラインで区画される各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated circuit)等のデバイスを形成する。
【0003】
その後、開口を有する環状のフレームに該開口を塞ぐように貼られたダイシングテープと呼ばれるテープを該ウェーハの裏面に貼着し、ウェーハと、テープと、環状のフレームと、が一体となったフレームユニットを形成する。そして、フレームユニットに含まれるウェーハを該分割予定ラインに沿って加工して分割すると、個々のデバイスチップが形成される。
【0004】
ウェーハの分割には、例えば、切削装置が使用される。切削装置は、テープを介してウェーハを保持するチャックテーブルと、ウェーハを切削する切削ユニットと、を備える。切削ユニットは、円環状の砥石部を備える切削ブレードと、該切削ブレードの中央の貫通孔に突き通され切削ブレードを回転させるスピンドルと、を備える。
【0005】
ウェーハを切削する際には、チャックテーブルの上にフレームユニットを載せ、テープを介してチャックテーブルにウェーハを保持させ、スピンドルを回転させることで切削ブレードを回転させ、切削ユニットを所定の高さ位置に下降させる。そして、チャックテーブルと、切削ユニットと、をチャックテーブルの上面に平行な方向に沿って相対移動させ分割予定ラインに沿って切削ブレードにウェーハを切削させる。このとき、被加工物を確実に分割するために、切削ブレードをテープにまで切り込ませる。
【0006】
被加工物を切削する際に、スピンドルを回転させるモータやスピンドル、切削ブレードの温度が変化すると、それぞれが伸縮して切削ブレードの被加工物に対する切り込み深さが変化する場合がある。そして、例えば、切削ブレードの切り込みが浅くなり、被加工物が底部まで切削されずに、被加工物を完全には分割できなくなる場合がある。そこで、被加工物の切削を開始する際、事前にアイドリングが実施される(特許文献1参照)。
【0007】
さらに、切削後の被加工物が観察されて被加工物が分割できているか否かが確認される。透明でない被加工物を加工したとき、被加工物が適切に分割されている場合、被加工物に形成された加工痕を観察すると該加工痕の底でテープを視認できる。その一方で、透明でない被加工物を加工したとき、被加工物が適切に分割されていない場合、加工痕の底には被加工物が残るため、加工痕を通してテープを視認できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-158760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、被加工物の裏面には、DAF(ダイアタッチフィルム)テープと呼ばれる接着層が形成される場合がある。被加工物をDAFテープごと切断してDAF付きのチップを形成すると、該DAFを介して該チップを所定の実装対象に接着できる。しかしながら、DAFテープが形成された被加工物を分割する際、被加工物の裏面と、該裏面側に貼着されたテープと、の間のDAFテープに切削ブレードの下端が位置し、DAFテープが完全に分割されない場合がある。
【0010】
そして、被加工物に形成される加工痕を観察したとき、加工痕が被加工物の裏面を突き抜けている場合において、DAFテープが適切に分割できているか否かを判別するのは容易ではない。これは、DAFテープと、被加工物の裏面側に貼着されたテープと、の見分けが困難であるためである。そこで、被加工物を切削して分割する際に、切削ブレードが該テープにまで切り込み加工痕がテープに達しているか否か、または、切削ブレードが該テープにまで切り込む高さに設定されているか否かを容易に確認したいとの需要がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、テープに加工痕が形成されているか否かを容易に判別できるテープ、被加工物の分割方法、判定方法及び切削ブレードの高さ確認方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の他の一態様によれば、被加工物を分割するときに該被加工物に貼り付けられるテープであって、基材と、該基材の上に設けられた無着色粘着層と、該無着色粘着層の上に設けられた着色粘着層と、を備え、該着色粘着層は、該無着色粘着層よりも薄いことを特徴とするテープが提供される。好ましくは、該着色粘着層の厚さは、該無着色粘着層の厚さの半分以下である。より好ましくは、裏面側にDAFテープが貼着された被加工物の該裏面側に該DAFテープを介して貼着されて使用される。
【0015】
本発明のさらに他の一態様によれば、裏面側にDAFテープが貼着された被加工物の該裏面側にテープを貼着し、該DAFテープごと該被加工物を分割する被加工物の分割方法であって、基材と、該基材の上に形成された粘着層と、を備え、該粘着層の上面側に着色領域が露出している該テープを該DAFテープを介して該被加工物の該裏面側に貼着するテープ貼着ステップと、該被加工物を表面側から加工して該被加工物を分割する分割ステップと、該分割ステップにより該被加工物に形成された加工痕を該表面側から観察し、該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定ステップと、を備え、該着色領域は、該粘着層よりも薄く、該判定ステップでは、該加工痕の底部に該着色領域を視認できる場合に該DAFテープが分割されていないと判定され、該加工痕の底部に該着色領域を視認できない場合に該被加工物が該DAFテープごと分割されていると判定されることを特徴とする被加工物の分割方法が提供される。
【0016】
本発明のさらに他の一態様によれば、裏面側にDAFテープが貼着され分割された被加工物を観察して該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定方法であって、露出した着色領域を上面に有する粘着層を備えるテープが該DAFテープを介して該裏面側に貼着され、表面側から加工されて加工痕が形成されて分割された該被加工物を準備する被加工物準備ステップと、該被加工物の表面側から該加工痕を観察して該被加工物が該DAFテープごと分割されているか否かを判定する判定ステップと、を備え、該着色領域は、該粘着層よりも薄く、該判定ステップでは、該加工痕の底部に該着色領域を視認できる場合に該DAFテープが分割されていないと判定され、該加工痕の底部に該着色領域を視認できない場合に該被加工物が該DAFテープごと分割されていると判定されることを特徴とする判定方法が提供される。
【0017】
好ましくは、該着色領域の厚さは、該粘着層の厚さの半分以下である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係るテープ、被加工物の分割方法、判定方法及び切削ブレードの高さ確認方法では、被加工物の裏面側に貼着されて使用されるテープの上面が着色されている。この場合、テープが加工され加工痕が形成されると、テープの着色されていない領域が加工痕の底部に露出される。そのため、テープに加工痕が形成されているか否かを極めて容易に判定できる。
【0019】
例えば、裏面にDAFテープが貼着された被加工物の裏面側に該テープを貼着して被加工物を分割すると、被加工物に形成された加工痕の底部にテープの着色されていない領域が確認される場合に該加工痕が該テープに達していることを確認できる。すなわち、被加工物がDAFテープごと分割されていることが確認される。
【0020】
また、被加工物を切削ブレードで切削する前に該テープだけを切削ブレードで切削すると、該テープに加工痕が形成されて着色されていない領域が確認される場合に切削ブレードが所定の高さ位置に位置付けられていることが確認される。この状態で、例えば、裏面側に該テープが貼着された被加工物を切削すると被加工物を適切に分割できる。
【0021】
したがって、本発明の一態様によると、テープに加工痕が形成されているか否かを容易に判別できるテープ、被加工物の分割方法、判定方法及び切削ブレードの高さ確認方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】被加工物及び該被加工物に貼着されたDAFテープを模式的に示す斜視図である。
図2図2(A)は、環状のフレームに貼着されたテープを模式的に示す斜視図であり、図2(B)は、テープを模式的に示す断面図である。
図3図3(A)は、フレームユニットの一例を模式的に示す斜視図であり、図3(B)は、フレームユニットの他の一例を模式的に示す斜視図である。
図4】分割ステップを模式的に示す斜視図である。
図5】分割ステップを模式的に示す断面図である。
図6図6(A)は、加工痕の底部に着色領域が露出する被加工物を拡大して模式的に示す平面図であり、図6(B)は、加工痕の底部に着色領域が露出しない被加工物を拡大して模式的に示す平面図である。
図7】加工痕形成ステップを模式的に示す斜視図である。
図8図8(A)は、実施形態に係る被加工物の分割方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートであり、図8(B)は、実施形態に係る判定方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る切削ブレードの高さ確認方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートである、
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態として、被加工物を分割する際に該被加工物に貼着されて使用されるテープについて説明する。まず、本実施形態に係るテープが貼着される被加工物について説明する。図1は、裏面1b側にDAFテープ7が貼着された被加工物1を模式的に示す斜視図である。
【0024】
被加工物1は、例えば、Si(シリコン)、SiC(シリコンカーバイド)、GaN(窒化ガリウム)、GaAs(ヒ化ガリウム)、若しくは、その他の半導体等の材料からなる円板状のウェーハ、または、サファイア、ガラス、石英等の材料からなる基板等である。被加工物1の表面1aは、互いに交差する複数の分割予定ライン3で区画される。また、被加工物1の表面1aの分割予定ライン3で区画された各領域には、IC(Integrated Circuit)やLED(Light Emitting Diode)等のデバイス5が形成される。
【0025】
ただし、被加工物1の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる基板等を被加工物1として用いることもできる。同様に、デバイス5の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。被加工物1には、デバイス5が形成されていなくてもよい。
【0026】
複数のデバイス5が表面に設けられたウェーハ等の被加工物1を分割予定ライン3に沿って分割すると、それぞれデバイス5を備える複数のデバイスチップが得られる。得られたデバイスチップは、所定の実装対象に実装されて使用される。デバイスチップを実装する際、接着層として機能するDAFと呼ばれる膜がデバイスチップに設けられ、DAFを介してデバイスチップが所定の実装対象に接着される。
【0027】
ただし、ウェーハ等の被加工物1を分割して得られた個々のデバイスチップのそれぞれにDAFを設ける作業を実施するのは非効率的である。そこで、分割される被加工物1の裏面1b側に予めDAFテープ7を貼着し、被加工物1を分割予定ライン3に沿って分割する際に被加工物1の表面1aからDAFテープ7の底面に至る加工痕を形成し、被加工物1をDAFテープ7ごと分割する。この場合、裏面側にDAFを備える個々のデバイスチップを効率的に形成できる。
【0028】
被加工物1の分割は、例えば、円環状の切削ブレードを備える切削装置等の加工装置で実施される。DAFテープ7が貼着された被加工物1は、加工装置に搬入される前に環状のフレームと、テープと、と一体化され、フレームユニットが形成される。図2は、被加工物1と一体化されるフレーム9及びテープ11を模式的に示す斜視図である。
【0029】
環状のフレーム9は、例えば、金属等の材料で形成され、被加工物1の径よりも大きい径の開口9aを備える。フレームユニットを形成する際、被加工物1はフレーム9の開口9a内に位置付けられ、開口9aに収容される。フレーム9の開口9aの周辺部には、予め開口9aを塞ぐようにテープ11が貼着されており、開口9aにはテープ11の貼着面が露出している。そして、フレーム9に貼着されたテープ11の開口9a中に露出した貼着面に被加工物1を貼着すると、フレームユニット13(図3等参照)を形成できる。
【0030】
被加工物1は、フレームユニット13の状態で切削装置等の加工装置に搬入され、加工されて分割される。形成された個々のデバイスチップは、テープ11に支持される。その後、テープ11をフレーム9の開口9aの内部で径方向外側に拡張することで各デバイスチップ間の間隔を広げ、デバイスチップをピックアップする。このように、フレームユニット13を形成すると、被加工物1の取り扱いが容易となる。なお、テープ11は、ダイシングテープと呼ばれることもある。
【0031】
図2(B)は、テープ11を拡大して模式的に示す断面図である。テープ11は、柔軟性を有するシート状の基材15と、基材15の上に設けられた粘着層17と、を備える。基材15には、例えば、PO(ポリオレフィン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等が用いられる。
【0032】
また、粘着層17には、例えば、シリコーンゴム、アクリル系材料、エポキシ系材料等が用いられる。粘着層17は、被加工物1等に対して強力な貼着力を発揮する。また、例えば、粘着層17は紫外線硬化樹脂であり、被加工物1から形成されたデバイスチップをテープ11から剥離する際にテープ11に紫外線を照射して粘着層17を硬化させると剥離が容易となる。
【0033】
従来、基材15及び粘着層17には特に意味のある色彩は付されない。例えば、基材15及び粘着層17は無色であり、透明または半透明である。また、被加工物1の裏面1bに貼着されるDAFテープ7にも特に意味のある色彩は付されない。例えば、DAFテープ7は、無色であり、透明または半透明である。そのため、テープ11と、DAFテープ7と、は外見上の差異が小さく、互いに見分けがつきにくい。
【0034】
次に、被加工物1を分割する際に使用される加工装置として、切削装置について説明する。ただし、被加工物1を加工して分割する加工装置は切削装置に限定されない。例えば、加工装置は、被加工物1に分割予定ライン3に沿ってレーザビームを照射し被加工物1をレーザ加工するレーザ加工装置でもよい。以下、加工装置が切削装置である場合を例に説明する。
【0035】
図4は、切削装置2で被加工物1を分割する様子を模式的に示す斜視図であり、図5は、切削装置2で被加工物1を分割する様子を模式的に示す断面図である。切削装置2は、テープ11を介して被加工物1を吸引保持するチャックテーブル4と、チャックテーブル4の上方に配設された切削ユニット8と、を備える。
【0036】
チャックテーブル4は、上部中央に被加工物1の径に相当する径の多孔質部材(不図示)を備え、チャックテーブル4の上面は被加工物1等を吸引保持する保持面4aとなる。チャックテーブル4は、一端が該多孔質部材に通じた排気路(不図示)を内部に有し、該排気路の他端側には吸引源(不図示)が配設される。
【0037】
チャックテーブル4は、保持面4aの周囲にテープ11を介して被加工物1を保持するフレーム9を固定するためのクランプ6(図5参照)を備える。チャックテーブル4の上面にフレームユニット13を載せ、フレーム9をクランプ6で固定し、テープ11を介して被加工物1に該吸引源により生じた負圧を作用させると、被加工物1がチャックテーブル4に吸引保持される。
【0038】
チャックテーブル4の上方に配設される切削ユニット8は、円環状の切削ブレード12と、該切削ブレード12の中央の貫通孔に先端側が突き通されたスピンドル14と、を備える。切削ブレード12は、例えば、中央に該貫通孔を備える環状基台12aと、該環状基台12aの外周部に配設された環状の砥石部12bと、を備える。砥石部12bは、ダイヤモンド砥粒と、該ダイヤモンド砥粒を分散保持するボンド材と、を含む。
【0039】
スピンドル14の基端側は、スピンドルハウジング16(図4参照)の内部に収容されたスピンドルモータ(不図示)に接続されており、スピンドルモータを作動させると切削ブレード12を回転できる。
【0040】
切削ブレード12により被加工物1を切削すると、切削ブレード12と、被加工物1と、の摩擦により熱が発生する。また、被加工物1が切削されると被加工物1から切削屑が発生する。そこで、切削により生じる熱及び切削屑を除去するため、被加工物1を切削する間、切削ブレード12及び被加工物1に純水等の切削水が供給される。切削ユニット8は、例えば、切削ブレード12等に切削水を供給する切削水供給ノズル18を切削ブレード12の側方に備える。
【0041】
チャックテーブル4は、保持面4aに垂直な方向に沿って設定されるテーブル回転軸の周りに回転できる。また、チャックテーブル4及び切削ユニット8は、保持面4aに平行な加工送り方向と、保持面4aに平行でかつ該加工送り方向に垂直な割り出し送り方向と、に沿って相対的に移動できる。
【0042】
被加工物1を分割する際には、まず、チャックテーブル4の上にフレームユニット13を載せ、チャックテーブル4でフレームユニット13を吸引保持する。その後、スピンドル14を回転させることで切削ブレード12を回転させる。そして、切削ユニット8を所定の高さ位置に下降させ、チャックテーブル4と、切削ユニット8と、を加工送り方向に沿って相対移動させる。すると、砥石部12bが被加工物1に接触し、被加工物1が切削され、加工痕3aが被加工物1に形成される。
【0043】
被加工物1の切削が完了すると、被加工物1が加工痕3aにより分割され、被加工物1は個々のデバイスチップに分割される。形成されたデバイスチップは、テープ11に支持される。被加工物1を切削する際は、被加工物1を確実に分割するために、砥石部12bの下端の高さ位置がテープ11の上面よりも低い高さ位置となるように切削ユニット8が所定の高さに位置付けられる。そのため、被加工物1を切削すると、加工痕3aの底部がテープ11に達する。
【0044】
切削後の被加工物1を観察すると、被加工物1が分割できているか否かを判定できる。例えば、被加工物1が分割されている場合、加工痕3aを上方から観察したとき、加工痕3aの底でテープ11を視認できる。その一方で、被加工物1が完全に分割されず、砥石部12bが被加工物1の裏面1bを突き抜けない場合、加工痕3aの底には被加工物1が残るためテープ11を視認できない。
【0045】
ここで、被加工物1の裏面1bにDAFテープ7が貼着される場合、切削ブレード12の砥石部12bは、被加工物1の裏面1bを突き抜ける一方で、DAFテープ7の下端を突き抜けずにテープ11に達しない場合がある。すなわち、DAFテープ7が完全に分割されない場合がある。
【0046】
この場合、形成される加工痕3aを被加工物1の表面1a側から観察したとき、被加工物1がDAFテープ7ごと適切に分割されているか否かを判別するのは容易ではない。これは、DAFテープ7とテープ11の見分けが困難であるためである。
【0047】
DAFテープ7の分割が不十分であると、DAF付きのデバイスチップが予定された通りには製造されず、デバイスチップの製造効率は低下してしまう。そのため、被加工物1を加工して分割したときに、被加工物1とともにDAFテープ7が予定された通りに分割されているか否かを確認したいとの要望がある。そこで、本実施形態に係るテープ11では、上面側に露出する着色領域が粘着層17に設けられる。
【0048】
DAFテープ7が完全には分割されず加工痕3aがテープ11に達していない場合、被加工物1の加工痕3aを表面1a側から観察したときにテープ11の該着色領域を加工痕3aの底部に視認できる。その一方で、DAFテープ7が完全に分割され加工痕3aがテープ11に達している場合、テープ11の上面が切削されて該着色領域が除去されるため、加工痕3aの底部に該着色領域を視認できない。すなわち、被加工物1に形成された加工痕3aを観察すると、DAFテープ7が完全に分割されているか否かを判定できる。
【0049】
次に、テープ11の粘着層17に設けられる着色領域について説明する。図2(B)に模式的に示される粘着層17は、基材15の上に設けられた無着色粘着層17aと、無着色粘着層17aの上に設けられた着色粘着層17bと、を含む。着色粘着層17bの上面は、粘着層17の表面側に露出する着色領域17cとなる。着色粘着層17bは、例えば、粘着層17の原料となる部材に予め顔料または染料を混ぜ込むことにより形成される。
【0050】
または、着色粘着層17bは、基材15の上に設けられた粘着層17の上面に顔料または染料を含むインクを塗布し、該上面から所定の距離まで粘着層17中に該インクを染み込ませることで形成されてもよい。さらに、顔料または染料は、粘着層17上にスプレー散布されてもよく、各種の印刷法により粘着層17上に配設されてもよい。
【0051】
これらの場合、粘着層17の顔料または染料が到達しない領域が無着色粘着層17aとなる。粘着層17の上部に着色粘着層17bを形成する最も簡便な方法は、粘着層17を基材15の上に形成した後、マーカーペンで粘着層17の上面を特定の色に塗ることである。
【0052】
ここで、本明細書中において、着色粘着層17b及び着色領域17cの語の着色とは、特定の色を発現する性質のことを意味し、必ずしも特定の色を発現するための処理が実施されることを意味しない。例えば、着色粘着層17bは、無着色粘着層17aとは異なる色彩を呈する部材を原料として形成されることで実現されてもよく、特定の色を発現するための処理が実施されていなくてもよい。
【0053】
図3(A)には、テープ11の粘着層17の上面の全域に着色領域17cが形成されている場合が示されているが、着色領域17cはこれに限定されない。すなわち、テープ11の粘着層17の上面の一部の領域に着色領域17cが形成されてもよく、粘着層17の上面の他の領域には無着色領域17dが露出していてもよい。
【0054】
例えば、着色領域17cは、テープ11に貼着される被加工物1の裏面1bに対応するように粘着層17の上面に設けられる。すなわち、被加工物1に形成される加工痕3aを通して視認される可能性のない領域には着色領域17cが形成される必要はない。
【0055】
なお、粘着層17の上部に着色粘着層17bを形成して粘着層17の上面に露出する着色領域17cを形成する際、粘着層17が変質して貼着力が低下する場合がある。そのため、粘着層17の貼着力を必要以上に阻害しない態様で粘着層17の上面に着色領域17cが設けられるとよい。すなわち、着色粘着層17bは、加工痕3aが形成され分割され、形成されたデバイスチップ等がピックアップされるまでの間、被加工物1等を十分な貼着力で保持できる態様で形成される。
【0056】
例えば、着色粘着層17bは、無着色粘着層17aよりも薄いことが好ましい。さらに好ましくは、着色粘着層17bの厚さは、無着色粘着層17aの厚さの半分以下である。より好ましくは、着色粘着層17bの厚さは無着色粘着層17aの厚さに比べて無視できる程度に薄い。例えば、粘着層17の上面に微量の顔料または染料等が載るだけの状態を粘着層17の上面に着色領域17cが形成されている状態としてもよい。
【0057】
また、着色領域17cは、粘着層17の上面の被加工物1と重なる領域の全域に形成されていなくてもよい。例えば、被加工物1の分割予定ライン3と重なる領域に着色領域17cが形成されていれば、形成される加工痕3aの底部がテープ11に達しているか否かを判定できる。この場合、被加工物1をテープ11に貼着する際に、分割予定ライン3と着色領域17cが重なるように、互いの位置関係を考慮する必要がある。
【0058】
さらには、着色領域17cは、テープ11の上面の被加工物1の分割予定ライン3と重なる領域の全域に形成されていなくてもよく、分割予定ライン3と重なる該領域の一部に形成されていてもよい。被加工物1を切削ブレード12で切削して分割する際、加工痕3aを形成している間に切削ユニット8の高さが大きく変動することはない。そのため、DAFテープ7の分割不良が生じている場合、加工痕3aの底部のいずれかの領域で着色領域17cを視認できるため、分割不良の検出は十分に可能である。
【0059】
このように、テープ11の上面の被加工物1と重なる領域の一部に着色領域17cが形成される場合、被加工物1と重なる該領域の他の部分には着色領域17cが形成されない。この場合、被加工物1を十分に保持できるだけの貼着力をテープ11の上面の着色領域17cが形成されていない領域で確保することもできる。
【0060】
以上に説明する通り、本実施形態に係るテープ11は、粘着層17の上部に着色粘着層17bを備え、上面に着色領域17cが露出している。そのため、被加工物1に形成される加工痕3aを通して着色領域17cを視認できるか否かを確認することでテープ11に加工痕3aが形成されているか否かを容易に判別できる。すなわち、裏面1bにDAFテープ7が貼着された被加工物1の該裏面1b側にテープ11を貼着すると、被加工物1がDAFテープ7ごと分割されているか否かを容易に判別できる。
【0061】
(実施形態2)
次に、本発明の一態様に係る他の実施形態として、裏面1b側にDAFテープ7が貼着された被加工物1の該裏面1b側にテープ11を貼着し、DAFテープ7ごと被加工物1を分割する被加工物の分割方法について説明する。本実施形態に係る被加工物の分割方法の以下の説明では、実施形態1で説明した各要素について、重複する説明を適宜省略する。図8(A)は、該被加工物の分割方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートである。以下、該被加工物の分割方法の各ステップについて詳述する。
【0062】
本実施形態に係る被加工物の分割方法では、まず、テープ貼着ステップS10を実施する。図1に示す通り、被加工物1の裏面1bにはDAFテープ7が貼着されている。そして、図2(B)に示す通り、テープ11は基材15と、基材15の上に形成された粘着層17と、を備え、粘着層17の上面側に着色領域17cが露出している。テープ貼着ステップS10では、DAFテープ7を介して被加工物1の裏面1b側にテープ11を貼着する。
【0063】
図3(A)及び図3(B)には、テープ貼着ステップS10が実施されテープ11及びフレーム9と一体化されてフレームユニット13となった被加工物1が模式的に示されている。なお、図3(A)に示す通り、テープ11の上面の全面に着色領域17cが形成されていてもよく、図3(B)に示す通り、テープ11の上面の一部に着色領域17cが形成されていてもよい。着色領域17cは、少なくとも、被加工物1に設定された分割予定ライン3と重なる位置に設けられていればよい。
【0064】
ここでは、被加工物1の裏面1bに予めDAFテープ7が貼着されている場合を例に説明しているが、本実施形態に係る被加工物の分割方法はこれに限定されない。すなわち、DAFテープ7は、被加工物1の裏面1bではなくテープ11に貼着されていてもよい。そして、テープ貼着ステップS10は、テープ11に貼着されたDAFテープ7を被加工物1の裏面1bに貼着させることで実施されてもよい。
【0065】
この場合、被加工物1の径に対応した径のDAFテープ7をテープ11の上面の着色領域17cに対応する位置に貼着し、テープ11とDAFテープ7を予め一体化させておく。その後、被加工物1の裏面1b側にDAFテープ7を貼着する。この場合、テープ11とDAFテープ7を一体的に取り扱えるため、それぞれを個別に管理する必要がない。その上、被加工物1へのテープ類の貼着作業は一度で済むため、作業効率がよい。
【0066】
さらには、着色領域17cがテープ11の粘着層17の上面に設けられている場合を例に説明しているが、着色領域17cはDAFテープ7のテープ11と対面する面に形成されていてもよい。この場合、テープ11として、着色領域17cを備えない一般的なダイシングテープをそのまま使用できる。
【0067】
本実施形態に係る被加工物の分割方法では、テープ貼着ステップS10を実施した後、被加工物1を表面1a側から加工して被加工物1を分割する分割ステップS20を実施する。分割ステップS20では、被加工物1を分割予定ライン3に沿って加工して、被加工物1に加工痕3aを形成して被加工物1を分割できる加工装置が使用される。分割ステップS20は、例えば、図4等に示す切削装置2で実施される。
【0068】
ただし、本実施形態に係る被加工物の分割方法はこれに限定されず、切削装置2以外の加工装置で実施されてもよい。例えば、被加工物1に分割予定ライン3に沿ってレーザビームを照射し、被加工物1をレーザ加工して加工痕3aを形成できるレーザ加工装置を使用してもよい。以下、切削装置2が使用される場合を例に説明する。
【0069】
図4は、分割ステップS20を模式的に示す斜視図であり、図5は、分割ステップS20を模式的に示す断面図である。切削装置2の各構成要素及びその機能は既に説明した通りである。分割ステップS20では、まず、フレームユニット13の状態となった被加工物1を切削装置2のチャックテーブル4の上に搬入する。そして、DAFテープ7が貼着された被加工物1をチャックテーブル4でテープ11を介して吸引保持する。
【0070】
その後、被加工物1の表面1aを観察して分割予定ライン3を検出し、チャックテーブル4をテーブル回転軸の周りに回転させ、分割予定ライン3を加工送り方向に合わせる。また、チャックテーブル4及び切削ユニット8の位置を調整し、切削ブレード12の砥石部12bを分割予定ライン3の延長線の上方に位置付ける。
【0071】
その後、スピンドル14を回転させることで切削ブレード12を回転させる。そして、切削ユニット8を所定の高さ位置に下降させ、チャックテーブル4と、切削ユニット8と、を加工送り方向に沿って相対移動させる。すると、回転する切削ブレード12の砥石部12bが被加工物1に接触し、被加工物1が切削され、分割予定ライン3に沿った加工痕3aが被加工物1に形成される。
【0072】
一つの分割予定ライン3に沿って切削を実施した後、チャックテーブル4及び切削ユニット8を割り出し送り方向に移動させ、他の分割予定ライン3に沿って同様に被加工物1を切削する。一つの方向に沿った全ての分割予定ライン3に沿って被加工物1に加工痕3aを形成した後、チャックテーブル4を回転させ、同様に他の方向に沿った分割予定ライン3に沿って被加工物1を切削する。
【0073】
被加工物1の切削が完了すると、被加工物1が加工痕3aにより分割され、個々のデバイスチップが形成される。形成されたデバイスチップは、テープ11に支持される。被加工物1を切削する際は、被加工物1を確実に分割するために、砥石部12bの下端の高さ位置がテープ11の上面よりも低い高さ位置となるように切削ユニット8が所定の高さに位置付けられる。そのため、被加工物1を切削すると、加工痕3aの底部がテープ11に達する。
【0074】
しかしながら、切削ユニット8の温度変化による熱収縮や、切削ブレード12の砥石部12bの摩耗等の理由により切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に達せず、DAFテープ7が十分に分割されない場合がある。
【0075】
そこで、本実施形態に係る被加工物の分割方法では、次に、判定ステップS30を実施する。判定ステップS30では、分割ステップS20により被加工物1に形成された加工痕3aを被加工物1の表面1a側から観察し、被加工物1がDAFテープ7ごと分割されているか否かを判定する。
【0076】
被加工物1に形成された加工痕3aの表面1a側からの観察は、例えば、切削装置2等の加工装置が備えるカメラを使用して実施される。または、加工装置を操作する作業者が肉眼で実施してもよい。図6(A)及び図6(B)は、加工痕3aが形成された被加工物1を拡大して模式的に示す平面図であり、被加工物1を表面1a側から観察した際の視野を模式的に示す平面図である。
【0077】
図6(A)に示す平面図では、加工痕3aを通してテープ11の着色領域17cを視認できる状態が模式的に示されている。この状態は、分割ステップS20において、切削ブレード12の砥石部12bの下端がDAFテープ7の下面に到達せず、DAFテープ7が完全に切断されていない状態である。そして、テープ11の上面の着色領域17cが切削されていないため、DAFテープ7の残存部分を通して着色領域17cが視認可能な状態となる。
【0078】
また、図6(B)に示す平面図では、加工痕3aを通してテープ11の着色領域17cを視認でない状態が模式的に示されている。この場合、分割ステップS20において、切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に到達しており、テープ11の上面の着色領域17cが除去されているといえる。すなわち、DAFテープ7が完全に切断されているといえる。
【0079】
判定ステップS30では、加工痕3aの底部に着色領域17cを視認できるか否かを基準として被加工物1とともにDAFテープ7が完全に分割されているかいないかの判定を実施する(S31)。
【0080】
そして、図6(A)に示す通り、加工痕3aの底部に着色領域17cを視認できる場合、該DAFテープ7が完全には分割されておらず分割ステップS20で実施された分割が不十分であったと判定される(S32)。その一方で、図6(B)に示す通り、加工痕3aの底部に着色領域17cを視認できない場合、被加工物1がDAFテープ7ごと適切に分割されていると判定される(S33)。
【0081】
このように、本実施形態に係る被加工物の分割方法では、テープ11に加工痕が形成されて着色領域17cが除去されているか否かを容易に判別できる。すなわち、分割ステップS20において切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に達し被加工物1がDAFテープ7ごと完全に分割できているか否かを容易に判定できる。
【0082】
(実施形態3)
次に、本発明の一態様に係る他の実施形態として、裏面1b側にDAFテープ7が貼着され、その後に分割された被加工物1を観察して該被加工物1がDAFテープ7ごと分割されているか否かを判定する判定方法について説明する。本実施形態に係る判定方法の以下の説明では、実施形態1及び実施形態2で説明した各要素について、重複する説明を適宜省略する。図8(B)は、該判定方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートである。以下、該判定方法の各ステップについて詳述する。
【0083】
本実施形態に係る判定方法では、まず、加工痕3aが形成された被加工物1を準備する被加工物準備ステップS40を実施する。被加工物準備ステップS40では、露出した着色領域17cを上面に有する粘着層17を備えるテープ11がDAFテープ7を介して裏面1b側に貼着され、表面1a側から加工されて加工痕3aが形成されて分割された被加工物1を準備する。
【0084】
被加工物準備ステップS40は、例えば、図4及び図5に示す切削装置2で実施される。ただし、被加工物準備ステップS40はこれに限定されず、切削装置2以外の加工装置で被加工物1を加工することで、加工痕3aが形成されて分割された被加工物1が準備されてもよい。
【0085】
さらに、被加工物準備ステップS40では、被加工物1が加工されなくてもよい。すなわち、被加工物1に形成された加工痕3aが該被加工物1にどのタイミングで形成されたものであるかについて、特に限定はない。被加工物準備ステップS40には、事前に加工され加工痕3aが形成された被加工物1を準備する場合と、被加工物1に加工を実施して加工痕3aを形成することで被加工物1を準備する場合と、のいずれの場合も含まれる。
【0086】
次に、本実施形態に係る判定方法では、被加工物1の表面1a側から加工痕3aを観察して被加工物1がDAFテープ7ごと分割されているか否かを判定する判定ステップS50を実施する。判定ステップS50は、実施形態2で説明した判定ステップS30と同様に実施される。
【0087】
すなわち、判定ステップS50では、加工痕3aの底部にテープ11の粘着層17の着色領域17cを視認できる場合、DAFテープ7が完全には分割されておらず、被加工物1の分割が不十分であると判定される(S52)。その一方、判定ステップS50では、加工痕3aの底部に着色領域17cを視認できない場合、被加工物1がDAFテープ7ごと適切に分割されていると判定される(S53)。
【0088】
このように、本実施形態に係る判定方法では、テープ11に加工痕が形成されているか否かを容易に判別できる。すなわち、被加工物1がDAFテープ7ごと完全に分割できているか否かを容易に判定できる。ここで、本実施形態に係る判定方法は、被加工物1に加工痕3aを形成する加工とは独立に実施されてもよい。
【0089】
(実施形態4)
次に、本発明の一態様に係る他の実施形態として、環状の切削ブレード12が装着された切削ユニット8を備える切削装置2における切削ブレード12の高さの確認方法について説明する。切削装置2では、被加工物1を切削して分割する際、被加工物1を確実に分割できるように、切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に達するように切削ユニット8が所定の高さに位置付けられる。
【0090】
切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に達しない場合、被加工物1が完全には分離されなくなるため問題となる。そこで、被加工物1を切削ブレード12で切削する前に、切削工程において切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に切りこむように切削装置2が正しく設定されているか否かを確認したいとの要請がある。本実施形態に係る確認方法では、切削ユニット8の高さが被加工物1の切削に適した高さに設定されているか否かを確認する。
【0091】
本実施形態に係る確認方法の以下の説明では、実施形態1及び実施形態2で説明した各要素について、重複する説明を適宜省略する。図9は、該確認方法の各ステップのフローを模式的に示すフローチャートである。以下、該確認方法の各ステップについて詳述する。
【0092】
本実施形態に係る切削ブレード12の高さの確認方法では、まず、テープ配設ステップS60を実施する。テープ配設ステップS60では、基材15と、該基材15の上に形成された粘着層17と、を備え、該粘着層17の上面側に着色領域17cが露出しているテープ11を切削ユニット8の下方に配設する。図7には、切削装置2のチャックテーブル4で保持されたフレーム9及びテープ11の一体物が模式的に示されている。
【0093】
テープ11は、フレームユニット13と同様にチャックテーブル4の上方に載せられチャックテーブル4に吸引保持される。なお、着色領域17cは、フレーム9の開口9aに露出したテープ11の上面の全域または一部に形成されている。また、切削ユニット8は、チャックテーブル4の上方の退避位置20に位置付けられている。
【0094】
本実施形態に係る確認方法では、次に、切削ユニット8をチャックテーブル4に保持されたテープ11に向けて下降させ、切削ユニット8を所定の高さ位置に位置付けて切削ブレード12でテープ11に加工痕を形成する加工痕形成ステップS70を実施する。図7は、加工痕形成ステップS70を実施する様子を模式的に示す斜視図である。
【0095】
加工痕形成ステップS70では、切削ユニット8を退避位置20から加工位置22に下降させる。ここで、切削ユニット8の加工位置22とは、チャックテーブル4に吸引保持された被加工物1を切削する際に切削ユニット8が位置付けられる高さ位置である。切削ユニット8が加工位置22に位置付けられている状態で被加工物1を切削ブレード12で切削すると、被加工物1に加工痕3aが形成されるとともにテープ11の上面にも切削ブレード12が接触して加工痕が形成される。
【0096】
被加工物1が貼着されていないテープ11がチャックテーブル4に保持されていると、切削ブレード12を回転させながら切削ユニット8を加工位置22に位置付けたとき、テープ11の上面に切削ブレード12が接触して加工痕が形成される。その後、切削ユニット8を上昇させて切削ユニット8を再び退避位置20に上昇させテープ11の切削を停止させる。
【0097】
ここで、本実施形態に係る確認方法とは異なり着色領域17cが形成されていないテープ11の上面に加工痕が形成されても、加工痕が形成されている領域と、加工痕が形成されていない領域と、の見分けは困難である。そこで、本実施形態に係る確認方法では、上面に着色領域17cが形成されているテープ11が使用される。この場合、テープ11に加工痕が形成される際に着色領域17cが除去されるため、加工痕の有無を容易に判別できる。
【0098】
本実施形態に係る確認方法では、加工痕形成ステップS70の後に切削ブレードが所定の高さに位置付けられていることを確認する確認ステップS80を実施する。確認ステップS80では、加工痕形成ステップS70において切削ブレード12がテープ11に切り込み該テープ11に着色領域17cを分断する加工痕が形成されているか否かを確認する。そして、加工痕の有無により、切削ブレード12が所定の高さに位置付けられているか否かを確認する(S81)。
【0099】
テープ11に加工痕が形成されている場合、切削ブレード12が被加工物1の切削に適した所定の高さ位置に位置付けられていることが確認される。すなわち、切削ブレード12の高さが正常であると判定される(S82)。この場合、切削装置2は、被加工物1を問題なく加工できる状態であるため、被加工物1をチャックテーブル4に搬入し、被加工物1の切削を開始するとよい。
【0100】
その一方で、テープ11に加工痕が形成されていない場合、切削ブレード12がテープ11を切削しておらず、切削ブレード12の高さが被加工物1の切削に適さないことが確認される。このままの状態で、切削装置2で被加工物1を切削しても、加工痕3aが被加工物1の裏面1bに到達せず被加工物1が適切に分割されない。そこで、切削ブレード12の砥石部12bの下端がテープ11に切り込むように、切削ユニット8の加工位置22が修正されるとよい。
【0101】
なお、テープ11に形成される加工痕の長さは、切削ブレード12の砥石部12bがテープ11に切り込む深さに応じて変化する。すなわち、砥石部12bの切り込み深さと、加工痕の長さと、の間には相関関係がある。そこで、本実施形態に係る確認方法では、さらに、該加工痕の長さを測定する測定ステップと、測定された加工痕の長さから切削ブレード12の砥石部12bの下端の高さ位置を算出する算出ステップと、が実施されてもよい。そして、算出結果に基づいて切削ユニット8の高さが高精度に調整されてもよい。
【0102】
以上に説明する通り、本実施形態に係る確認方法では、上面に着色領域17cが形成されたテープ11が使用されるため、テープ11に加工痕が形成されているか否かを容易に判別できる。すなわち、切削ブレード12の高さが適切であるか否かを容易に確認できる。
【0103】
なお、本発明は上記の各実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、裏面1bにDAFテープ7が貼着された被加工物1に形成される加工痕3aがテープ11に達しているか否か、すなわち、DAFテープ7が適切に分割されているか否かを判定する場合について主に説明した。しかしながら、本発明の一態様はこれに限定されない。
【0104】
例えば、DAFテープ7ごと被加工物1を分割するために被加工物1を加工する際、被加工物1の加工が不十分であり加工痕3aが被加工物1の裏面1bに到達しない場合もある。この場合、被加工物1に形成される加工痕3aを被加工物1の表面1a側から観察すると、被加工物1の残存部分が加工痕3aの底部に確認される。そこで、加工痕3aを観察することにより、被加工物1が適切に分割されているか否かが判定されてもよい。
【0105】
また、例えば、被加工物1が透明体である場合、裏面1bにDAFテープ7が貼着されていない被加工物1を加工する場合において、本発明の一態様に係るテープ11が使用されてもよい。被加工物1が透明体である場合に、着色領域17cを備えないテープが被加工物1の裏面1bに貼着されていると、加工痕3aが形成された被加工物1を観察しても加工痕3aの底部が該テープに達しているか否か、外見上判別が困難である場合がある。これは、被加工物1と該テープとが共に透明であることに起因する。
【0106】
そこで、透明体である被加工物1を分割する際に本発明の一態様に係るテープ11を使用する。すると、被加工物1に形成された加工痕3aの底部がテープ11に達している場合、被加工物1を通して視認されるテープ11の上面側に、加工痕3aとして着色領域17cの切れ目が生じることとなる。その一方で、加工痕3aの底部がテープ11に達していない場合、着色領域17cには切れ目が生じない。すなわち、着色領域17cの切れ目が生じているか否かに基づき、被加工物1が分割されているか否かを判定できる。
【0107】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0108】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
3a 加工痕
5 デバイス
7 DAFテープ
9 フレーム
9a 開口
11 テープ
13 フレームユニット
15 基材
17 粘着層
17a 無着色粘着層
17b 着色粘着層
17c 着色領域
17d 無着色領域
2 切削装置
4 チャックテーブル
4a 保持面
6 クランプ
8 切削ユニット
12 切削ブレード
12a 環状基台
12b 砥石部
14 スピンドル
16 スピンドルハウジング
18 切削水供給ノズル
20 退避位置
22 加工位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9