(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】フェノキシ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240105BHJP
C08L 71/10 20060101ALI20240105BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240105BHJP
C08G 59/62 20060101ALN20240105BHJP
C08G 59/68 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C08G65/40
C08L71/10
C08G18/48 079
C08G59/62
C08G59/68
(21)【出願番号】P 2019172994
(22)【出願日】2019-09-24
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 圭太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-045918(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157132(WO,A1)
【文献】特開2017-119779(JP,A)
【文献】特開2002-348358(JP,A)
【文献】特開2008-208315(JP,A)
【文献】特開2015-178592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00- 65/48
C08L 1/10-101/14
C08K 3/00- 13/08
C08G 59/00- 59/72
C08G 18/00- 18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを触媒の存在下で反応させるフェノキシ樹脂の製造方法であって、
2官能エポキシ樹脂1.0モルに対して、2官能フェノール化合物を0.9~1.1モル使用し、触媒が下記一般式(1)で表されるホスホニウムボレート化合物であることを特徴とするフェノキシ樹脂の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、Pはリン原子、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、又は水素原子である。また、Bはホウ素原子、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、水素原子、又はハロゲン原子である。)
【請求項2】
上記ホスホニウムボレート化合物の使用量が、上記2官能エポキシ樹脂100質量部に対して、0.005~5.0質量部である請求項1に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項3】
上記2官能エポキシ樹脂及び/又は上記2官能フェノール化合物の一部又は全部が、フロオレン環含有化合物である請求項1
又は2に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項4】
上記2官能エポキシ樹脂及び/又は上記2官能フェノール化合物の一部又は全部が、リン含有化合物である請求項1~
3のいずれか1項に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項5】
得られるフェノキシ樹脂のリン含有率が1~6質量%である請求項
4に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項6】
得られるフェノキシ樹脂のエポキシ当量が、4000~200000g/eq.である請求項1~
5のいずれか1項に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項7】
得られるフェノキシ樹脂の重量平均分子量が、10000~150000である請求項1~
6のいずれか1項に記載のフェノキシ樹脂の製造方法。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のフェノキシ樹脂の製造方法によって
フェノキシ樹脂を製造し、得られるフェノキシ樹脂にイソシアネート系硬化剤又は酸無水物系硬化剤を配合することを特徴とするフェノキシ樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応活性に優れ、得られるフェノキシ樹脂が他の成分、特に硬化剤と混合した際の貯蔵安定性に優れるフェノキシ樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、塗料、土木、接着、電気材料用途等の分野で広く使用されている。そして種々の方法で高分子量化することで製膜性が付与される。その高分子量化されたエポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂と称される。特にビスフェノールA型のフェノキシ樹脂は、主に塗料用ワニスのベース樹脂、フィルム成形用のベース樹脂として使用され、或いはエポキシ樹脂ワニスに添加して流動性の調整や硬化物としたときの靭性改良、接着性改良の目的に使用される。また、リン原子や臭素原子を骨格中に有するものは、エポキシ樹脂組成物や熱可塑性樹脂に配合される難燃剤として使用されている。
【0003】
フェノキシ樹脂の製造方法としては、一般的に、2官能フェノール化合物にアルカリの存在下、エピハロヒドリンを反応させる「一段法」や、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物を触媒の存在下で反応させる「二段法」等が知られている。二段法は一段法に比べて食塩等の副生成物がほとんど生じないため、合成後に精製することが困難なフェノキシ樹脂の製造に適した方法であることが知られている。非特許文献1には二段法によりフェノキシ樹脂を製造する際の触媒として、アンモニウム塩類化合物、アルカリ性化合物類等が一般的に使用されることが記載されている。
【0004】
フェノキシ樹脂を前述したような塗料、土木、接着、電気材料等の分野で用いる場合、主にベース樹脂として使用されるため、エポキシ樹脂や硬化剤を始めとする他材料との混合物として使用することが一般的である。本発明者らの詳細な検討によれば、二段法で製造する際に、上記非特許文献1に記載されているようなアンモニウム塩類化合物、アルカリ性化合物類を触媒として使用したフェノキシ樹脂は、他材料と混合した際の貯蔵安定性が不十分となる場合がある。また、リン系化合物としてトリフェニルホスフィンが触媒として使用されることも非特許文献1に記載されているが、ホスフィン類化合物は二段法の触媒としては活性が不十分であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】総説エポキシ樹脂 第1巻 基礎編I エポキシ樹脂技術協会(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを二段法で反応させる際に、反応が十分に進行し、かつ得られたフェノキシ樹脂が他材料との配合した際の貯蔵安定性に優れるフェノキシ樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物を原料として用いてフェノキシ樹脂を得る際に、特定のホスホニウムボレート化合物の存在下で反応させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物とを触媒の存在下で反応させるフェノキシ樹脂の製造方法であって、該触媒が下記一般式(1)で表されるホスホニウムボレート化合物であることを特徴とするフェノキシ樹脂の製造方法である。
【化1】
一般式(1)中、Pはリン原子、R
1、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、又は水素原子である。また、Bはホウ素原子、X
1、X
2、X
3及びX
4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、水素原子、又はハロゲン原子である。
【0009】
上記ホスホニウムボレート化合物の配合量は、2官能エポキシ樹脂100質量部に対して0.005~5.0質量部であることが好ましく、上記2官能エポキシ樹脂1.0モルに対し、上記2官能フェノール化合物を0.9~1.0モル使用することが好ましい。
【0010】
上記2官能エポキシ樹脂の一部又は全部、及び/又は上記2官能フェノール化合物の一部又は全部は、フロオレン環含有化合物であることが好ましい。
【0011】
上記2官能エポキシ樹脂の一部又は全部、及び/又は上記2官能フェノール化合物の一部又は全部は、リン含有化合物であることが好ましく、得られるフェノキシ樹脂のリン含有率が1~6質量%であることが好ましい。
【0012】
得られるフェノキシ樹脂のエポキシ当量は、4000~200000g/eq.であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)は、10000~150000であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のフェノキシ樹脂の製造方法は、十分な反応速度を有する。また、本発明の製造方法により得られるフェノキシ樹脂は、他の成分、特に硬化剤を配合した際の貯蔵安定性に優れる。このことから、本発明の製造方法により得られるフェノキシ樹脂、及びそれを配合した樹脂組成物は、塗料、電気・電子材料、接着剤、炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の分野において好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のフェノキシ樹脂の製造方法は、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物を特定のホスホニウムボレート化合物の存在下で反応させる。なお、本明細書において、本発明のフェノキシ樹脂の製造方法を「本発明の製造方法」と、本発明の製造方法で得られるフェノキシ樹脂を「本発明のフェノキシ樹脂」と称することがある。
【0015】
本発明のフェノキシ樹脂は、他の成分、特に硬化剤と配合したときに、貯蔵安定性に顕著に優れるという効果を奏する。また、本発明において使用するホスホニウムボレート化合物は、ホスフィン化合物と比較して二段法での活性が高いため、反応時間が短くなる。
【0016】
本発明の製造方法で使用する2官能エポキシ樹脂は、分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよい。これらの2官能エポキシ樹脂は1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールEジグリシジルエーテル、ビスフェノールZジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールアセトフェノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル(例えば、ZX-1201(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)等)、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールFジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールSジグリシジルエーテル、ジヒドロキシジフェニルエーテルジグリシジルエーテル、チオジフェノールジグリシジルエーテル、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、等のビスフェノール型エポキシ樹脂や、ビフェノールジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル、ジメチルビフェノールジグリシジルエーテル、テトラ-t-ブチルビフェノールジグリシジルエーテル等のビフェノール型エポキシ樹脂や、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、メチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジブチルハイドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、メチルレゾルシンジグリシジルエーテル等のベンゼンジオール型エポキシ樹脂や、ジヒドロキシアントラセンジグリシジルエーテル、ヒドロアントラハイドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテル、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0018】
2官能エポキシ樹脂としては、更に、上記2官能エポキシ樹脂の芳香環に水素を添加した2官能水素化エポキシ樹脂や、アジピン酸、コハク酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸等の種々のジカルボン酸類と、エピハロヒドリンとから製造されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂や、アニリン等のアミン化合物と、エピハロヒドリンとから製造されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂や、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,5-ペンタンジオールジグリシジルエーテル、ポリペンタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘキサメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,7-ヘプタンジオールジグリシジルエーテル、ポリヘプタメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,8-オクタンジオールジグリシジルエーテル、1,10-デカンジオールジグリシジルエーテル、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル等の鎖状構造のみからなる(ポリ)アルキレングリコール型エポキシ樹脂や、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等の環状構造を有するアルキレングリコール型エポキシ樹脂や、脂肪族環状エポキシ樹脂や、リン含有2官能エポキシ樹脂(例えば、FX-305(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンジグリシジルエーテル等)等も挙げられる。
得られるフェノキシ樹脂の耐熱性の向上のためには、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテル等のフルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂がより好ましい。難燃性付与のためには、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテル、リン含有2官能エポキシ樹脂が好ましく、リン含有2官能エポキシ樹脂がより好ましい。
【0019】
本発明の製造方法で使用する2官能フェノール化合物としては、芳香環に結合した水酸基を2個以上有する化合物であればよい。これらの2官能フェノール化合物は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールZ、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラ-t-ブチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールS、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、チオジフェノール、ジヒドロキシスチルベン等のビスフェノール類や、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジメチルビフェノール、テトラ-t-ブチルビフェノール等のビフェノール類や、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン等のベンゼンジオール類や、ジヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロアントラハイドロキノン類等が挙げられる。
得られるフェノキシ樹脂の耐熱性向上のためには、ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレンが好ましく、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレンがより好ましい。
【0021】
2官能フェノール化合物の使用量は、2官能エポキシ樹脂1.00モルに対して、0.9~1.1モルが好ましく、0.95~1.05モルがより好ましく、0.96~1.00モルが更に好ましく、0.97~0.99モルが特に好ましい。2官能フェノール化合物の配合量がこの範囲内であれば、得られるフェノキシ樹脂の分子量が十分伸長するので好ましい。また、反応性の点では末端基にエポキシ基を多く存在することが望ましいため、2官能フェノール化合物の配合量は1.00モル未満が好ましい。
【0022】
また、耐熱性を付与するためには、上記2官エポキシ樹脂の一部又は全部として、フルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂や、上記2官能フェノール化合物の一部又は全部として、フルオレン環構造を有する2官能フェノール化合物を用いることが好ましい。
フルオレン環構造を有する2官能フェノール化合物としては、具体的には、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2ーメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(2-ヒドロキシ-4ーメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒド口キシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-シク口ヘキシルフェニル)フルオレン。9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン等の9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類や、9,9-ビス(2-ヒドロキシ-6-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(1-ヒドロキシ-5-ナフチル)フルオレン等の9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類等が挙げられる。これらのフルオレン環構造含有フェノール化合物を1種類又は2種類以上併用してもよい。
フルオレン環構造を有する2官能エポキシ樹脂としては、上記フルオレン環構造を有する2官能フェノール化合物と、5~20倍モルのエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリンとを、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ触媒を用いて反応することで得られるジグリシジル化合物が挙げられる。具体的には、2官能エポキシ樹脂として例示したビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスナフトールフルオレンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
また、難燃性を付与するために、上記2官能フェノール化合物の一部又は全部として、ハロゲンが付加した2官能のハロゲン化フェノール化合物(例えば、テトラブロムビスフェノールA等)や、2官能のリン含有フェノール化合物を用いてもよく、ハロゲンフリーの環境面からすると、2官能のリン含有フェノール化合物が好ましい。
【0024】
また、難燃性を付与するために、上記2官能エポキシ樹脂の一部又は全部として、リン含有化合物を使用することが好ましい。
【0025】
2官能のリン含有フェノール化合物としては、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル)-8-ベンジル-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、ジフェニルホスフェニル-1,4-ジオキシナフタリン、1,4-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール、1,5-シクロオクチレンホスフィニル-1,4-フェニルジオール等が挙げられる。これらのリン含有フェノール化合物を1種類又は2種類以上併用してもよい。
2官能エポキシ樹脂としてのリン含有化合物としては、上記リン含有フェノール化合物と、5~20倍モルのエピハロヒドリンとを、アルカリ触媒を用いて反応することで得られるジグリシジル化合物が挙げられる。具体的にはリン含有2官能エポキシ樹脂として上述したFX-305(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
2官能のリン含有フェノール化合物を使用して得られたフェノキシ樹脂のリン含有率は、使用目的に応じて適宜調整すればよいが、1~6質量%が好ましく、2~5質量%がより好ましく、3~4.5質量%が更に好ましい。
【0027】
本発明の製造方法で使用する上記ホスホニウムボレート化合物は、2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール化合物との反応の触媒として作用する。
【0028】
本発明の製造方法において触媒として使用するホスホニウムボレート化合物は、上記一般式(1)で表される。
【0029】
上記一般式(1)において、Pはリン原子であり、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、又は水素原子である。また、Bはホウ素原子であり、X1、X2、X3及びX4は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアリール基、アルキル基、アラルキル基、水素原子、又はハロゲン原子である。
【0030】
上記一般式(1)中のR1~R4及び上記X1~X4のアリール基としては、置換されていても無置換でもよく、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられる。
アリール基の炭素数(置換基の炭素数は含まない)は、好ましくは6~12である。
【0031】
上記一般式(1)中のR1~R4及び上記X1~X4のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のいずれでもよく、更に不飽和基でもよく、また、アリール基を置換基として有するアラルキル基でもよい。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、secブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基や、ビニル基、アリル基、メタリル基や、ベンジル基(フェニルメチル基)、о-メチルベンジル基(о-メチルフェニルメチル基)、m-メチルベンジル基(m-メチルフェニルメチル基)、p-メチルベンジル基(p-メチルフェニルメチル基)、フェニルエチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。
アルキル基の炭素数(置換基の炭素数は含まない)は、好ましくは1~6である。
【0032】
上記一般式(1)中のX1~X4のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。中でも、フッ素原子が好ましい。
【0033】
上記一般式(1)で表されるホスホニウムボレート化合物としては、例えば、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。特に、テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート及びテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートが好ましい。これらのホスホニウムボレート化合物は、1種のみでも複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
上記ホスホニウムボレート化合物の配合量は、2官能エポキシ樹脂100質量部に対して、0.005~5.0質量部が好ましく、0.006~1.0質量部がより好ましく、0.007~0.15質量部が更に好ましく、0.01~0.1質量部が特に好ましい。ホスホニウムボレート化合物の配合量が少ないとフェノキシ樹脂の分子量が十分大きくならない恐れがある。また、配合量が多いと貯蔵安定性が悪化しやすく、反応後に除去する必要性がある。ホスホニウムボレート化合物は、反応開始時に一括して仕込んでもよいし、反応の経時に従って適時分割して仕込んでもよい。
【0035】
上記ホスホニウムボレート化合物は、有機溶媒又は水で希釈してから用いることができる。有機溶媒としては、ホスホニウムボレート化合物などの原料を溶解するものであれば、どのようなものでもよい。具体的には、後述する本発明のフェノキシ樹脂の反応時に使用できる有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0036】
本発明の上記2官能エポキシ樹脂と上記2官能フェノール化合物との反応は、常圧、加圧、減圧いずれの条件で行うこともできる。また、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。
反応温度が高すぎると生成するフェノキシ樹脂が劣化する恐れがあり、低すぎると反応が進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、80~240℃が好ましく、100~220℃がより好ましく、120~200℃が更に好ましく、140~180℃が特に好ましい。
反応時間は特に限定されないが、0.5~24時間が好ましく、1~20時間がより好ましく、2~12時間が更に好ましく、3~10時間が特に好ましい。反応時間が好ましい範囲内であれば、生産効率向上の点でも、未反応成分を削減できる点でも好ましい。
また、アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで、反応温度を確保することができる。なお、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0037】
本発明の製造方法において溶媒を用いてもよい。溶媒としては、原料や反応生成物(フェノキシ樹脂)を溶解し、反応に悪影響のないものであれば、どのようなものでもよいが、通常は有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、2種以上を混合して使用してもよい。使用する溶媒の量は、反応条件に応じて適宜選択することができるが、固形分濃度として35~95質量%が好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じた場合は反応途中で溶媒を更に加えて反応を継続してもよい。
【0038】
芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等が挙げられる。エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等が挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0039】
反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、更に追加して固形分濃度を調整してもよい。その溶媒としては、フェノキシ樹脂を溶解するものであれば、どのようなものでもよいが、通常は有機溶媒である。有機溶媒としては、上記有機溶媒と同様のものが挙げられる。
【0040】
本発明の製造方法において、貯蔵安定性が悪化しない範囲で、上記ホスホニウムボレート化合物と共に、その他の触媒を併用してもよい。その他の触媒としては、通常、二段法の触媒として用いられるものであれば特に制限されない。例えば、アルカリ金属化合物、上記ホスホニウムボレート化合物以外の有機リン化合物、第3級アミン類、第4級アンモニウム塩、環状アミン類、イミダゾール類等が挙げられる。これらその他の触媒は、1種のみでも2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、貯蔵安定性の観点からは、樹脂組成物を保管する際等にはその他の触媒を含まないか、上記ホスホニウムボレート化合物よりも少量の配合量としておくことが好ましい。
【0041】
アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシドや、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属の水素化物や、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
上記ホスホニウムボレート化合物以外の有機リン化合物としては、例えば、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラメチルホスホニウムアイオダイド、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロライド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロマイド、トリメチルベンジルホスホニウムクロライド、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルメチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルエチルホスホニウムクロライド、トリフェニルエチルホスホニウムブロマイド、トリフェニルエチルホスホニウムアイオダイド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類や、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-キシリル)ホスフィン、トリメシチルホスフィン、トリス(4-t-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-イソプロピル-4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシ-3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン等のホスフィン類が挙げられる。
第3級アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、フェニルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
環状アミン類としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-7-ウンデセン、1,5ジアザビシクロ(4,3,0)-5-ノネン等が挙げられる。
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0042】
本発明の製造方法で得られるフェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~150000が好ましく、20000~100000がより好ましく、25000~80000が更に好ましく、30000~60000が特に好ましい。Mwが低いものではフィルム製膜性や伸び性が劣り、Mwが高すぎると樹脂の取り扱い性が著しく悪化する。ここで、MwはGPCの測定によって決定され、GPCの測定方法は、実施例に記載の条件に従う。
【0043】
このフェノキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、4000~200000が好ましく、6000~150000がより好ましく、7000~100000が更に好ましく、8000~50000が特に好ましい。エポキシ当量が好ましい範囲内であるとフェノキシ樹脂の分子量が十分大きいことであり、可撓性の観点で好ましい。
【0044】
本発明のフェノキシ樹脂は、他の成分、特に硬化成分例えばイソシアネート系硬化剤又は酸無水物系硬化剤を配合した樹脂組成物として貯蔵安定性に優れる。そのため本発明のフェノキシ樹脂は、塗料、電気・電子材料、封止材料、注型材料、炭素繊維強化樹脂や、導電ペースト、接着剤、絶縁材料等の様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。特に断りがない限り「部」は質量部を表す。
【0046】
(1)エポキシ当量:JIS K 7236規格に準拠して測定を行い、単位は「g/eq.」で表した。具体的には、電位差滴定装置を用い、溶媒としてシクロヘキサノンを使用し、臭素化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加え、0.1mol/L過塩素酸-酢酸溶液を用いた。なお、溶媒希釈品(樹脂ワニス)は、不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した。
【0047】
(2)不揮発分:JIS K 7235規格に準拠して測定した。乾燥温度は200℃で、乾燥時間は60分とした。
【0048】
(3)リン含有率:試料に硫酸、塩酸、過塩素酸を加え、加熱して湿式灰化し、全てのリン原子をオルトリン酸とした。硫酸酸性溶液中でメタバナジン酸塩及びモリブデン酸塩を反応させ、生じたリンバナドモリブデン酸錯体の420nmにおける吸光度を測定し、予め作成した検量線により求めたリン含有率を%で表した。
【0049】
(4.1)重量平均分子量(Mw):GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC8220GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgelG4000HXL、TSKgelG3000HXL、TSKgelG2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはTHFを用い、1mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を用いた。測定試料は固形分で0.05gを10mLのTHFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを50μL使用した。標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製、A-500,A-1000,A-2500,A-5000,F-1,F-2,F-4,F-10,F-20,F-40、F-80、F-128)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理は、東ソー株式会社製GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。なお、リン含有フェノキシ樹脂の場合は、(3.2)の測定方法を用いた。
【0050】
(4.2)重量平均分子量(Mw):GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC8320GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はDMF(20mM臭化リチウム含有品)を使用し、0.3mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのDMFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを20μL使用した。標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社製、SE-2、SE-5、SE-8、SE-15、SE-30、SE-70、SE-150)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理は東ソー株式会社製GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
【0051】
(5)ガラス転移温度(Tg): IPCTM-650 2.4.25.c規格に準拠して測定した。具体的には、示差走査熱量測定の2サイクル目に得られたDSCチャートの補外ガラス転移開始温度(Tig)で表した。示差走査熱量測定装置は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のEXSTAR6000 DSC6200を使用した。測定試料は、樹脂フィルムをパンチングし、積層、アルミニウム製カプセルにパッキングして使用した。測定は、10℃/分の昇温速度で室温から280℃までを2サイクル行った。
【0052】
(6)反応性:フェノキシ樹脂のMwから以下の基準で評価した。
○:Mwが30000~100000の範囲のもの
×:Mwが30000未満又は100000を超えたもの
【0053】
(7)貯蔵安定性:樹脂組成物ワニスについて、25℃で24時間放置した後の状態を目視で観察し、以下の基準で貯蔵安定性を評価した。
○:ゲル化せずに流動性があるもの
×:ゲル化し流動性をもたなくなったもの
【0054】
以下の実施例で使用したエポキシ樹脂、硬化剤、触媒、及び溶媒は以下の通りである。
【0055】
[2官能エポキシ樹脂]
A1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、エポトートYD-128、エポキシ当量186)
A2:3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノールのエポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX-4000、エポキシ当量196)
【0056】
[2官能フェノール化合物]
B1:ビスフェノールA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、水酸基当量114)
B2:9,9’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル株式会社製、BPF、水酸基当量175)
B3:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド(三光株式会社製、HCA-HQ、水酸基当量162、リン含有率9.5%)
【0057】
[触媒]
C1:テトラブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(日本化学工業株式会社製、ヒシコーリンPX-4PB)
C2:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(試薬)
C3:テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(試薬)
C4:トリ-t-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート(試薬)
C5:テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート(試薬)
C6:テトラエチルホスホニウムテトラフルオロボレート(試薬)
C7:トリフェニルホスフィン(試薬)
C8:トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(試薬)
C9:2-エチル-4-メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、キュアゾール2E4MZ)
【0058】
[溶媒]
S1:シクロヘキサノン
S2:メチルエチルケトン
S3:ジエチレングリコールジメチルエーテル
【0059】
[硬化剤]
D1:ポリメリックMDI(BASF INOAC ポリウレタン株式会社製、ルプラネートM5S、イソシアネート当量132)
【0060】
実施例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、A1を100部、B1を60部、S1を18部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら140℃まで昇温し、C1を0.01部添加した後、165℃まで昇温し、同温度で8時間反応を行った。希釈溶媒としてS1を62部、S2を160部使用して希釈混合して、不揮発分40%のフェノキシ樹脂ワニスを得た。
【0061】
得られたフェノキシ樹脂ワニスを離型フィルム(ポリイミドフィルム製)に溶剤乾燥後の厚みが60μmになる様にローラーコーターにて塗布し、180℃で20分間乾燥した後、離形フィルムから得られた乾燥フィルムをはがした。この乾燥フィルム2枚を重ねて、真空プレス機を使用して、真空度0.5kPa、乾燥温度200℃、プレス圧力2MPaの条件で60分間プレスして、厚さ100μmのフェノキシ樹脂フィルムを得た。なお、厚み調整のために、厚さ100μmのスペーサーを使用した。
また、得られたフェノキシ樹脂ワニス100部に対して、D1を15部配合して、樹脂組成物ワニスを得た。
【0062】
実施例2~13、比較例1~6
表1~3に示す各原料の仕込み量(部)に従い、実施例1と同様操作を行い、フェノキシ樹脂ワニス、フェノキシ樹脂フィルム、及び樹脂組成物ワニスを得た。
【0063】
得られたフェノキシ樹脂ワニスを用いて、エポキシ当量、リン含有率、及びMwを測定した。フェノキシ樹脂フィルムを用いて、Tgを測定し反応性を確認した。樹脂組成物ワニスを用いて、貯蔵安定性を確認した。その結果を表1~表3に示す。なお、表中の「モル比」は使用した2官能フェノール化合物の水酸基(OH)に対する2官能エポキシ樹脂のエポキシ基(EP)のモル比(EP/OH)を表し、「-」は未測定を表す。
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表1~表2からわかるように、上記一般式(1)で表されるホスホニウムボレート化合物を用いた実施例1~13は重合反応性が高く、また、得られたフェノキシ樹脂からなる樹脂組成物は貯蔵安定性に優れる。一方、表3から比較例1~6では重合反応性と貯蔵安定性の両方を満足するものが無かった。