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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
H01L21/78 Q
H01L21/78 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020004365
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021111749
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩平
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-228565(JP,A)
【文献】特開2019-212839(JP,A)
【文献】特開2010-093005(JP,A)
【文献】特開2007-067394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/304
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス層の領域と、該デバイス層の領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハの外周余剰領域を支持するリング状凸部を外周に有するサブストレートを準備するサブストレート準備工程と、
ウエーハの外周余剰領域と該サブストレートのリング状凸部とを接着剤を介して一体にしてウエーハの裏面を露出させる一体工程と、
該サブストレート側をチャックテーブルに保持する保持工程と、
ウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出する検出工程と、
ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応する領域に切削ブレードを位置付けてデバイスを形成するデバイス層を残して切削溝を形成する切削溝形成工程と、
ウエーハの裏面側にダイシングテープを配設し、該サブストレートを取り外すサブストレート取り外し工程と、
該ダイシングテープを拡張してデバイス層を分割予定ラインに沿って分割して個々のデバイスチップを生成する分割工程と、
を含み構成され
ウエーハの裏面が梨地面となっており、該検出工程においてウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出することが困難である場合、
ウエーハの裏面を研磨して鏡面に加工する裏面鏡面加工工程が含まれ、
該裏面鏡面加工工程は、ウエーハの外周余剰領域に対応する裏面の外周領域を研磨する外周余剰領域鏡面加工工程であり、
該検出工程において、研磨された該外周領域からウエーハの分割予定ラインを検出するウエーハの加工方法。
【請求項2】
該分割工程は、ウエーハの表面を下にして実施される請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該一体工程において使用される該接着剤はワックスである請求項1又は2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該サブストレートは、サブストレート準備工程において、該リング状凸部に加え、ウエーハの中央を支持する中央凸部が形成される請求項1乃至3のいずれかに記載されたウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割されて携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
CCD、CMOS、MEMS等のデバイスは、切削屑の付着を嫌うため、ウエーハの表面に粘着テープを配設してダイシング加工が施される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-134390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術によれば、ウエーハの表面に切削屑が付着することは回避できるものの、粘着テープに使用される糊剤がウエーハの表面に付着して、粘着テープを剥離する際にデバイスに残留し、個々に分割されたデバイスチップの品質を低下させるという問題がある。また、粘着テープが、ウエーハの表面に形成されたデバイス、例えばMEMSを構成する要素に付着して、粘着テープを剥離する際に、MEMSを損傷させるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ウエーハの表面に形成されたデバイスに保護テープの糊剤が付着して品質を低下させたり、粘着テープの剥離によってデバイスが損傷したりすることが回避されるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス層の領域と、該デバイス層の領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの外周余剰領域を支持するリング状凸部を外周に有するサブストレートを準備するサブストレート準備工程と、ウエーハの外周余剰領域と該サブストレートのリング状凸部とを接着剤を介して一体にしてウエーハの裏面を露出させる一体工程と、該サブストレート側をチャックテーブルに保持する保持工程と、ウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出する検出工程と、ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応する領域に切削ブレードを位置付けてデバイスを形成するデバイス層を残して切削溝を形成する切削溝形成工程と、ウエーハの裏面側にダイシングテープを配設し、該サブストレートを取り外すサブストレート取り外し工程と、該ダイシングテープを拡張してデバイス層を分割予定ラインに沿って分割して個々のデバイスチップを生成する分割工程と、を含み構成され、ウエーハの裏面が梨地面となっており、該検出工程においてウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出することが困難である場合、ウエーハの裏面を研磨して鏡面に加工する裏面鏡面加工工程が含まれ、該裏面鏡面加工工程は、ウエーハの外周余剰領域に対応する裏面の外周領域を研磨する外周余剰領域鏡面加工工程であり、該検出工程において、研磨された該外周領域からウエーハの分割予定ラインを検出するウエーハの加工方法が提供される。
【0008】
該分割工程は、ウエーハの表面を下にして実施されることが好ましい。また、該一体工程において使用される該接着剤はワックスであることが好ましい。
【0010】
該サブストレートは、サブストレート準備工程において、該リング状凸部に加え、ウエーハの中央を支持する中央凸部が形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウエーハの加工方法は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画されたデバイス層の領域と、該デバイス層の領域を囲繞する外周余剰領域とが表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハの外周余剰領域を支持するリング状凸部を外周に有するサブストレートを準備するサブストレート準備工程と、ウエーハの外周余剰領域と該サブストレートのリング状凸部とを接着剤を介して一体にしてウエーハの裏面を露出させる一体工程と、該サブストレート側をチャックテーブルに保持する保持工程と、ウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出する検出工程と、ウエーハの裏面から分割予定ラインに対応する領域に切削ブレードを位置付けてデバイスを形成するデバイス層を残して切削溝を形成する切削溝形成工程と、ウエーハの裏面側にダイシングテープを配設し、該サブストレートを取り外すサブストレート取り外し工程と、該ダイシングテープを拡張してデバイス層を分割予定ラインに沿って分割して個々のデバイスチップを生成する分割工程と、を含み構成され、ウエーハの裏面が梨地面となっており、該検出工程においてウエーハの裏面から赤外線カメラによって分割予定ラインを検出することが困難である場合、ウエーハの裏面を研磨して鏡面に加工する裏面鏡面加工工程が含まれ、該裏面鏡面加工工程は、ウエーハの外周余剰領域に対応する裏面の外周領域を研磨する外周余剰領域鏡面加工工程であり、該検出工程において、研磨された該外周領域からウエーハの分割予定ラインを検出することから、サブストレートとデバイス層の領域とは非接触となる。これにより、デバイスに糊剤が付着して汚染したり、デバイスを破損したりすることがない。また、切削溝形成工程においては、デバイス層の領域においてデバイスを形成するデバイス層を残して切削溝を形成することから、切削加工を実施する際に切削屑を含む切削水がウエーハの表面と、サブストレートとの間に進入することが阻止され、ウエーハのデバイスが形成された表面側が汚染されることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の被加工物としてのウエーハを示す斜視図である。
図2】(a)サブストレート準備工程を実施する研削装置のチャックテーブルにサブストレートを載置する態様を示す斜視図、(b)研削手段によってサブストレートの外周にリング状凸部を形成する態様を示す斜視図、(c)研削手段によってサブストレートの外周にリング状凸部を、サブストレートの中央に中央凸部を形成する態様を示す斜視図である。
図3】(a)サブストレートとウエーハを一体とする一体工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す一体工程のその他の実施態様を示す斜視図、(c)(a)に示す一体工程によって一体とされたウエーハ及びサブストレートを示す斜視図、(d)(c)に示すウエーハ及びサブストレートの一部拡大断面図である。
図4】研磨装置にウエーハを保持する態様を示す斜視図である。
図5】(a)裏面鏡面加工工程の実施態様を示す斜視図、(b)外周余剰領域鏡面加工工程の実施態様を示す斜視図である。
図6】検出工程の実施態様を示す斜視図である。
図7】(a)切削溝形成工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示す切削溝形成工程によって加工されるウエーハ及びサブストレートの一部拡大断面図である。
図8図6に示す検出工程の別の実施態様を示す斜視図である。
図9図7に示す切削溝形成工程の別の実施態様を示す斜視図である。
図10】サブストレート取り外し工程の実施態様を示す斜視図である。
図11】分割工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成されるウエーハの加工方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、本実施形態において分割される被加工物の一例であるウエーハ10が示されている。ウエーハ10には、ウエーハ10の結晶方位を示すノッチNが形成されており、ウエーハ10の表面10aには、複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され形成されている。ノッチNの位置と、分割予定ライン14が形成される方向には、一定の関係があり、ノッチNの位置が特定されることで、分割予定ライン14が形成されている方向が特定される。
【0015】
ウエーハ10は、半導体の基板により構成され、該基板は、例えば、Si、SiC、サファイア、GaN等から構成される。ウエーハ10の表面10aに形成されるデバイス12は、例えばMEMSである。複数のデバイス12が形成されたウエーハ10の中央側の領域S1には、例えばソース、ドレイン、ゲート酸化膜、ゲート酸化膜上に配置されたゲート、該ゲート上に形成される酸化膜等(いずれも図示は省略)の所謂電界効果トランジスタを含むデバイス層16が形成されている。ウエーハ10の表面10aは、前記したデバイス層16が形成された中央側の領域S1と、デバイス層16の領域S1を囲繞する外周余剰領域S2とで構成される。なお、図1に記載されたウエーハ10には、デバイス層16の領域S1と、外周余剰領域S2とを区分する円形状の境界Lが点線で示されているが、該境界Lは、説明の都合上便宜的に示したものであり、実際にウエーハ10に付与されているものではない。
【0016】
上記したウエーハ10を個々のデバイスチップに分割する本実施形態のウエーハの加工方法について、図2図11を参照しながら、より具体的に説明する。
【0017】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、まず、上記したウエーハ10を支持するためのサブストレートを準備するサブストレート準備工程を実施する。図2(a)に示すサブストレート20は、サブストレート準備工程によって加工される前の基材であり、表面20a及び裏面20bには加工が施されておらず、平坦面である。サブストレート20は、所定の厚み(例えば300μm)で形成されたSi、ガラス等からなる円形の板状部材であり、上記したウエーハ10と同一の径で形成されている。
【0018】
上記したように加工前のサブストレート20(基材)を用意したならば、図2(a)に示す研削装置30(一部のみ示している)に搬入し、チャックテーブル32の保持面32a上に載置し、図示しない吸引手段を作動して吸引保持する。研削装置30には、図2(b)に示す研削ユニット34が配設されている。研削ユニット34は、鉛直方向の軸心回りであって矢印Aで示す方向に回転されるスピンドル34Aと、スピンドル34Aの下端に装着された研削ホイール34Bと、研削ホイール34Bの下面に環状に配設された複数の研削砥石34Cとで構成されている。チャックテーブル32に保持されたサブストレート20は、研削ユニット34の下方の所定の研削位置に位置づけられる。
【0019】
上記した所定の研削位置とは、図2(b)に示すように、研削ユニット34の研削砥石34Cの外周縁が、サブストレート20の中心と、サブストレート20の内側の領域において上記したウエーハ10のデバイス層16の領域S1に相当する大きさの領域の外周端に位置付けられる位置である。このように位置付けられたサブストレート20に対して、スピンドル34Aを矢印Aで示す方向に、例えば6000rpmの回転速度で回転させ、チャックテーブル32を矢印Bで示す方向に、例えば300rpmの回転速度で回転させ、研削ユニット34を矢印Cで示す方向に下降させて、図示しない供給手段によって研削水を供給しながら研削砥石34Cをサブストレート20に押し当てる。研削砥石34Cをサブストレート20に押し当て、所定の速度(例えば1μm/秒)で研削送りして、所定の深さ(例えば30μm~100μm)だけ研削する。このように加工することで、ウエーハ10の外周余剰領域S2に相当する幅のリング状凸部22が外周に形成され、ウエーハ10のデバイス層16の領域S1に相当する底部24が形成されたサブストレート20となる。以上によりサブストレート準備構成が完了する。
【0020】
なお、サブストレート準備工程によって形成されるサブストレート20は、上記した形態に限定されず、例えば、図2(c)に示す別の研削ユニット36を使用してサブストレート20を加工するサブストレート準備工程を実施してもよい。より具体的には、図2(c)に示された研削ユニット36には、上記した研削ユニット34に採用された研削ホイール34Bよりも径の小さい研削ホイール36Bが採用されている。そして、研削ホイール36Bを所定の研削位置に位置付けてサブストレート20を研削する際には、研削ユニット36の研削砥石36Cの外周縁は、サブストレート20の内側の領域において上記したウエーハ10のデバイス層16の領域S1に相当する大きさの領域の外周端と、サブストレート20の中心よりも該外周端側の位置とに位置付けられる。このような研削位置において、研削ホイール36Bとチャックテーブル32とを回転させてサブストレート20の表面20aを研削することにより、図2(b)に基づいて説明したのと同一のリング状凸部22が形成されると共に、リング状凸部22の内側の底部24の中心に中央凸部26が形成される。中央凸部26の大きさは、研削ユニット36の研削ホイール36Bの大きさを調整することにより任意に設定することが可能である。
【0021】
上記したサブストレート準備工程を実施したならば、ウエーハ10の表面10aの外周余剰領域S2とサブストレート20のリング状凸部22とを一体にしてウエーハ10の裏面10bを露出させる一体工程を実施する。
【0022】
該一体工程を、例えば図2(b)に示した研削ユニット34を使用して準備されたサブストレート20を使用して実施する場合は、図3(a)に示すように、サブストレート20のリング状凸部22の表面(ハッチングで示す)に接着剤、例えば温めて溶融したワックスWを塗布し、ウエーハ10の裏面10b側を上方に、表面10a側をサブストレート20側に向けて、図3(c)に示すように貼着して一体とする。これにより、ウエーハ10の表面10aは外部に露出せず、裏面10bが外部に露出した状態となる。上記したように、リング状凸部22は、ウエーハ10の外周余剰領域S2に対応するように形成されていることから、ウエーハ10の表面10a側の外周余剰領域S2がリング状凸部22に貼着されて支持され、デバイス層16が形成された領域S1は、図3(d)に示す一部拡大断面図から理解されるように、ウエーハ10の底部24との間で隙間Pを形成する状態となる。なお、サブストレート20を研削ユニット36を使用して準備した場合も、図3(b)に示すように、リング状凸部22に接着剤(ワックスW)を塗布して、ウエーハ10の裏面10b側を上方に、表面10a側をサブストレート20側に向けて、貼着して一体とする。この際、中央凸部26には、接着剤を塗布しないようにする。また、上記した一体工程を実施する場合は、真空環境下で実施してもよい。以上により一体工程が完了する。
【0023】
ここで、上記した一体工程によりサブストレート20と一体にされて露出されたウエーハ10の裏面10bが、赤外線を透過して表面10a側の分割予定ライン14を検出可能である場合は、分割予定ライン14に沿った切削溝を形成すべくそのまま切削装置に搬送される。しかし、ウエーハ10の裏面10bが、裏面10b側から赤外線を照射しても赤外線が十分に透過せず、表面10a側の分割予定ライン14を正確に検出できない程度の粗面、所謂梨地面であった場合は、ウエーハ10の裏面10b側を、赤外線によって分割予定ライン14を検出できる状態とするため、以下に説明する裏面鏡面加工工程、又は外周余剰領域鏡面加工工程を実施する。
【0024】
裏面鏡面加工工程を実施する場合は、例えば、図4に示す研磨装置40(一部のみ示している)にウエーハ10を搬送し、サブストレート20側を下方に、ウエーハ10の裏面10b側を上方に向けてチャックテーブル42の保持面42aに載置して吸引保持し、図5(a)に示すように、チャックテーブル42を研磨ユニット44の下方に位置付ける。研磨ユニット44は、鉛直方向の軸心回りであって矢印Dで示す方向に回転されるスピンドル44Aと、スピンドル44Aの下端に装着された研磨ホイール44Bと、研磨ホイール44Bの下面に環状に配設された複数の研磨用の砥石44Cとで構成されている。チャックテーブル42に保持されたウエーハ10を研磨ユニット44の下方の所定の研削位置に位置づけたならば、スピンドル44Aを矢印Dで示す方向に、例えば6000rpmの回転速度で回転させ、チャックテーブル42を矢印Eで示す方向に、例えば300rpmの回転速度で回転させ、研磨ユニット44を矢印Fで示す方向に下降させて、図示しない供給手段によって研磨液を供給しながら砥石44Cをウエーハ10の裏面10bに押し当てる。砥石44Cをウエーハ10の裏面10bに押し当て、ウエーハ10の裏面10b側全体の梨地面を解消して赤外線を透過する程度の鏡面とする。以上により裏面鏡面加工工程が完了する。
【0025】
ウエーハ10の裏面10bが、裏面10b側から赤外線カメラを使用して撮像しても表面10a側の分割予定ライン14を正確に検出できない程度の粗面、所謂梨地面であった場合、上記した裏面鏡面加工工程に替えて、以下に説明する外周余剰領域鏡面加工工程を実施してもよい。
【0026】
図5(b)には、外周余剰領域鏡面加工工程を実施する研磨装置40(一部のみ示している)が示されている。この研磨装置40には、上記した研磨ユニット44に替えて、他の研磨ユニット46が備えられる。研磨ユニット46には、図示しない電動モータによって回転させられるスピンドル46Aと、スピンドル46Aの先端に保持された円盤状の研磨ホイール46Bが配設されている。研磨ホイール46Bは、例えば、上記したリング状凸部22よりも少し幅広の寸法で設定されている。研磨ホイール46Bを、チャックテーブル42に保持されたウエーハ10の裏面10bの外周余剰領域S2に対応した領域の上面に位置付け、矢印Gで示す方向に所定の回転速度で回転させて、ウエーハ10に当接させると共に、チャックテーブル42を矢印Hで示す方向にゆっくりと回転させて、ウエーハ10の裏面10bの外周領域18を研磨して赤外線が透過できる程度の鏡面とする。ここで、研磨ホイール46Bによって研磨される外周領域18は、外周余剰領域S2に対応する領域であるが、外周余剰領域S2よりも若干広い幅を研磨し、デバイス層16が形成された領域S1の外側に対応する領域を含んでいてもよい。
【0027】
上記した実施形態では、裏面鏡面加工工程、又は外周余剰領域鏡面加工工程を、ウエーハ10とサブストレート20とを一体とする一体工程を実施した後に実施したが、必ずしも、一体工程の後に実施することに限定されるわけではなく、一体工程の前のいずれかのタイミングで予め実施しておいてもよい。
【0028】
ウエーハ10の裏面10b側から赤外線を透過できる状態でサブストレート20とウエーハ10とが一体とされたならば、ウエーハ10の表面10aに形成された分割予定ライン14に沿って切削溝を形成する。なお、上記した裏面鏡面加工工程、又は外周余剰領域鏡面加工工程は、必要に応じて実施されるものであり、ウエーハ10の裏面10bが赤外線を透過する状態であれば実施する必要はない。以下に、図6図7を参照しながら、ウエーハ10に対して切削溝を形成する切削溝形成工程について説明する。
【0029】
図6に示すウエーハ10は、例えば、裏面10bに、上記した裏面鏡面加工工程を施したものである。図に示すように、サブストレート20と一体とされたウエーハ10を切削装置50(一部のみ示している)に搬送し、ウエーハ10の裏面10bを上方に向けサブストレート20側をチャックテーブル52に載置する。チャックテーブル52の保持面(図示は省略)は、通気性を有する素材によって形成されており、吸引源(図示は省略)と接続されている。該吸引源を作動することにより、チャックテーブル52にサブストレート20を介してウエーハ10が吸引保持される(保持工程)。
【0030】
次いで、チャックテーブル52を図示しない移動手段を作動して移動することにより、図に示すように、赤外線CCDを備えた赤外線カメラ54の下方に位置付けて、ウエーハ10の裏面10b側から赤外線を照射し、ウエーハ10の表面10a側が撮像されて、撮像された画像は、コンピュータによって構成された制御手段(図示は省略)に送られる。赤外線カメラ54によって撮像された分割予定ライン14とノッチNの位置とにより、ウエーハ10に形成された分割予定ライン14の方向がX軸方向に沿うように調整され、さらに、該画像に基づいて分割予定ライン14の位置が検出されることで、該制御手段を構成するメモリに分割予定ライン14の位置情報が記憶される(検出工程)。
【0031】
次いで、検出工程によって検出された分割予定ライン14の位置情報に基づいて、ウエーハ10を保持したチャックテーブル52を、図7(a)に示すように、切削手段56の下方に位置付ける。切削手段56は、スピンドルハウジング56Aに支持された回転スピンドル56Cの先端部に固定され、外周に切り刃を有する切削ブレード56Dと、切削ブレード56Dを保護するブレードカバー56Bと、を備えている。ブレードカバー56Bには、切削ブレード56Dに隣接する位置に切削水供給手段56Eが配設されており、ブレードカバー56Bを介して導入される切削水を切削位置に向けて供給する。回転スピンドル56Cの他端側には図示しないモータ等の回転駆動源が配設されており、該回転駆動源よって回転スピンドル56Cを回転させることにより切削ブレード56Dが矢印Iで示す方向に回転させられる。
【0032】
切削手段56によって切削溝を形成するには、上記した検出工程で検出した分割予定ライン14の位置情報に基づいて、ウエーハ10の裏面10bにおける分割予定ライン14に対応する領域に切削手段56の切削ブレード56Dを位置付ける。次いで、切削ブレード56Dを下降させて切り込み送りし、ウエーハ10を矢印Xで示すX軸方向に加工送りして切削溝100を形成する。所定の分割予定ライン14に対応する領域に切削溝100を形成したならば、適宜矢印Yで示すY軸方向に割り出し送りし、又はチャックテーブル52を図示しない回転駆動手段によって90度回転して、すべての分割予定ライン14に対応する領域に沿って切削溝100を形成する。このとき形成される切削溝100は、図7(b)に示す一部拡大断面図から理解されるように、ウエーハ10の表面10aのデバイス層16を残すように、より好ましくはデバイス層16に至らない深さで形成される。以上により切削溝形成工程が完了する。
【0033】
なお、上記した切削溝形成工程は、裏面10bの全域に裏面鏡面加工工程を実施したウエーハ10に切削溝形成工程を実施した例を示したが、外周余剰領域鏡面加工工程を実施したウエーハ10に対して上記した切削溝形成工程を実施することもできる。図8には、外周余剰領域鏡面加工工程が施されたウエーハ10を切削装置50に搬送し、チャックテーブル52に吸引保持された状態が示されている。
【0034】
図8に示すウエーハ10は、裏面10bの外周余剰領域S2に対応した外周領域18のみを鏡面とする加工が施されており、裏面10bのデバイス層16の領域S1に対応する領域は赤外線カメラを使用しても、表面10a側の分割予定ライン14を検出することができない。よってこの場合は、チャックテーブル52を移動して、ウエーハ10の裏面10bにおいて鏡面となる加工が施された外周領域18を、赤外線カメラ54の直下に位置付ける。外周領域18に対応する表面10a側にデバイス12は形成されていないが、分割予定ライン14の端部の検出が可能であることから、ウエーハ10のノッチNの位置と、外周領域18に赤外線を照射して撮像することにより得られる分割予定ライン14の画像情報とに基づいて、分割予定ライン14の位置情報が検出される(検出工程)。このように、分割予定ライン14の位置が検出されたならば、図9に示すように、切削手段56によって、分割予定ライン14に対応する領域に沿って切削溝100を形成する。そして、図7に基づいて説明した切削溝形成工程と同様の手順により、ウエーハ10のすべての分割予定ライン14に対応する領域に沿って切削溝100を形成する。図9に示す切削溝形成工程においても、その切削溝100は、図8(b)に基づいて説明したのと同様に、ウエーハ10の表面10に形成されたデバイス層16を残すように、デバイス層16に至らない深さで形成される。
【0035】
上記したように、切削溝形成工程を実施したならば、図10に示すように、ダイシングテープTと環状のフレームFを用意して、ウエーハ10の裏面10b側にダイシングテープTを配設し、ダイシングテープTを介してフレームFによってウエーハ10を保持する。ウエーハ10をダイシングテープTに配設した状態で、図に示すように、サブストレート20を取り外す(サブストレート取り外し工程)。本実施形態では、サブストレート20とウエーハ10とは、ワックスWによって接着されていることから、サブストレート取り外し工程を実施する際には、サブストレート20を加温する(例えば150℃程度)。これによりワックスWの接着力を弱め、容易にサブストレート20を取り外すことができる。
【0036】
サブストレート取り外し工程を実施したならば、図11に示すように、ダイシングテープTを矢印Jで示す外方向に拡張する。ウエーハ10は、上記した切削溝形成工程によって裏面10b側から切削溝100が形成されており、分割予定ライン14に沿って、脆弱な領域が形成されている。よって、ダイシングテープTが図に示す方向に拡張されることにより、デバイス層16に分割予定ライン14に沿う分割溝110に沿って分割され、ウエーハ10から個々のデバイスチップ12’が生成される(分割工程)。なお、図11では、説明の都合上、ウエーハ10の表面10aを上方に向けた状態を示しているが、好ましくは、フレームFを反転してウエーハ10の表面10a側を下方に向けた状態で、ダイシングテープTを拡張する。これにより、分割予定ライン14に沿って分割した際に生じる微細な屑がデバイス12の表面に付着することが回避される。そして、この分割工程が実施された後は、図示しないピックアップ工程にそのまま搬送されるか、又は図示しない収容カセットに収容されて搬送される。
【0037】
上記したように、本実施形態の一体工程においては、サブストレート20とウエーハ10とが、サブストレート20のリング状凸部22によってのみ接着されていることから、サブストレート20とデバイス層16の領域S1とは非接触となっている。これにより、ウエーハ10のデバイス12に糊剤が付着して汚染したり、デバイス12を破損したりすることがない。また、切削溝形成工程においては、デバイス層16の領域においてデバイス12を形成するデバイス層16を残して切削溝100を形成していることから、切削加工を実施する際に生じる切削屑を含む切削水が、ウエーハ10の表面10aと、サブストレート20との間に進入することがなく、ウエーハ10のデバイス12が形成された表面10a側が汚染されることが回避される。
【符号の説明】
【0038】
10:ウエーハ
10a:表面
10b:裏面
12:デバイス
12’:デバイスチップ
14:分割予定ライン
16:デバイス層
18:外周領域
20:サブストレート
20a:表面
20b:裏面
22:リング状凸部
24:底部
26:中央凸部
30:研削装置
32:チャックテーブル
34:研削ユニット
34A:スピンドル
34B:研削ホイール
34C:研削砥石
36:研削ユニット
36A:スピンドル
36B:研削ホイール
36C:研削砥石
40:研磨装置
42:チャックテーブル
44:研磨ユニット
44A:スピンドル
44B:研磨ホイール
44C:砥石
46:研磨ユニット
46A:スピンドル
46B:研磨ホイール
50:切削装置
52:チャックテーブル
52a:保持面
54:赤外線カメラ
56:切削手段
56A:スピンドルハウジング
56B:ブレードカバー
56C:回転スピンドル
56D:切削ブレード
56E:切削水供給手段
100:切削溝
110:分割溝
F:フレーム
P:隙間
S1:デバイス層の領域
S2:外周余剰領域
T:ダイシングテープ
W:ワックス(接着剤)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11