(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】ウェーハの研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 7/04 20060101AFI20240105BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240105BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20240105BHJP
B24D 3/18 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
B24B7/04 Z
H01L21/304 622H
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
B24B41/06 L
B24D3/18
(21)【出願番号】P 2020046292
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-71032(JP,A)
【文献】特開2010-137338(JP,A)
【文献】特開2014-237210(JP,A)
【文献】特開2019-136806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04
H01L 21/304
B24B 41/06
B24D 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心を頂点とする円錐斜面の保持面でウェーハを保持し該保持面の中心を軸に回転可能な保持手段と、環状の研削砥石の中心を軸に該研削砥石を回転可能に装着し該保持面に保持されたウェーハを該研削砥石で研削する研削手段と、該研削砥石の下面に平行な水平方向に該保持手段と該研削手段とを相対的に移動させる水平移動手段と、該保持手段と該研削手段とを該保持面に垂直な方向に相対的に移動させる研削送り手段と、を備えた研削装置を用いて該研削砥石の下面と平行な該保持面の半径領域でウェーハを研削するウェーハの研削方法であって、
該保持面の中心とウェーハの中心とを合致させて該保持面にウェーハを保持させる保持工程と、
該水平移動手段を用いて該研削砥石の径方向の刃幅からなる該研削砥石の回転軌跡が該保持面の中心を通るように該研削砥石に対してウェーハを位置づける第1位置づけ工程と、
該第1位置づけ工程後、該研削送り手段で該研削砥石を該保持面に接近する方向に移動させウェーハを予め設定した仕上げ厚みより予め設定された値(1μm~3μm)厚い厚みに研削する第1研削工程と、
該第1研削工程後、該水平移動手段を用いて、該研削砥石の回転軌跡の内周と該第1研削工程においてウェーハの中央に形成された円柱凹部の外周とが接する位置、又は、該回転軌跡の外周と該円柱凹部の外周とが接する位置のいずれかに該研削砥石に対してウェーハを位置づける第2位置づけ工程と、
該第2位置づけ工程の後、該研削送り手段で該研削砥石を該保持面に接近する方向に移動させ予め設定した該仕上げ厚みまでウェーハを研削する第2研削工程と、を備えるウェーハの研削方法。
【請求項2】
前記第1研削工程、前記第2位置づけ工程、及び前記第2研削工程を実施する際に前記保持面に保持させたウェーハの被研削面から前記研削砥石を離間させないように前記研削送り手段を制御する請求項1記載のウェーハの研削方法。
【請求項3】
前記研削砥石は、気孔を有するビトリファイドボンド砥石をコンティニアス配列した請求項1、又は請求項2記載のウェーハの研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等を研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを研削する研削装置は、保持面にウェーハを保持させ保持面の中心を軸に回転するチャックテーブルと、環状の砥石の中心を軸に砥石を回転させ保持面に保持されたウェーハを研削する研削手段と、を備える。保持面は、その中心を頂点とする肉眼では目視できない程度の極めてなだらかな円錐状の斜面に形成されている。そして、きわめてなだらかな円錐斜面である保持面を傾き調整手段によって研削砥石の下面と平行になるように傾き調整した状態で、研削中の砥石は保持面の中心を通り、砥石の回転軌跡において保持面の外周から中心に至る範囲でウェーハを研削している。
【0003】
例えば、気孔を有するビトリファイドボンド砥石を保持面に接近する方向に所定の研削送り速度で移動させることによって、保持面に保持されたウェーハに砥石を押し付けて例えば60Nの荷重を加えながらウェーハの被研削面である上面を研削している。そのため、研削中の保持面に保持されたウェーハの中心を通過する砥石は、中心の手前では研削荷重に抗するウェーハからの抗力により圧縮され、中心を通過した後は研削荷重が無くなる事によりウェーハからの抗力が無くなり膨張する。これにより砥石の回転軌跡エリアにおけるウェーハの中心は砥石が接触する割合が多くなりその他の部分よりも研削され、直径2mm~4mmの円柱状の空間である凹みができる場合がある。
【0004】
そのため、例えば特許文献1に開示にされているようなチャックテーブルの上面を研削して、円柱状の凹みをウェーハに形成させないような適切な保持面を形成する(セルフグラインドする)発明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようにチャックテーブルの上面をセルフグラインドして適切な保持面を形成するには、形成したい保持面の形状が複雑であることから、時間が掛かるという問題が有る。
よって、保持面に保持されたウェーハを砥石で研削するウェーハの研削方法においては、保持面をセルフグラインドにより形成する工程に時間をとられること無く、また、保持面で保持した状態で研削した研削後のウェーハの中心に円柱状の凹みを形成させないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、中心を頂点とする円錐斜面の保持面でウェーハを保持し該保持面の中心を軸に回転可能な保持手段と、環状の研削砥石の中心を軸に該研削砥石を回転可能に装着し該保持面に保持されたウェーハを該研削砥石で研削する研削手段と、該研削砥石の下面に平行な水平方向に該保持手段と該研削手段とを相対的に移動させる水平移動手段と、該保持手段と該研削手段とを該保持面に垂直な方向に相対的に移動させる研削送り手段と、を備えた研削装置を用いて該研削砥石の下面と平行な該保持面の半径領域でウェーハを研削するウェーハの研削方法であって、該保持面の中心とウェーハの中心とを合致させて該保持面にウェーハを保持させる保持工程と、該水平移動手段を用いて該研削砥石の径方向の刃幅からなる該研削砥石の回転軌跡が該保持面の中心を通るように該研削砥石に対してウェーハを位置づける第1位置づけ工程と、該第1位置づけ工程後、該研削送り手段で該研削砥石を該保持面に接近する方向に移動させウェーハを予め設定した仕上げ厚みより予め設定された値(1μm~3μm)だけ厚い厚みに研削する第1研削工程と、該第1研削工程後、該水平移動手段を用いて該研削砥石の該回転軌跡の内周と該第1研削工程においてウェーハの中央に形成された円柱凹部の外周とが接する位置、又は、該回転軌跡の外周と該円柱凹部の外周とが接する位置のいずれかに該研削砥石に対してウェーハを位置づける第2位置づけ工程と、該第2位置づけ工程の後、該研削送り手段で該研削砥石を該保持面に接近する方向に移動させ予め設定した該仕上げ厚みまでウェーハを研削する第2研削工程と、を備えるウェーハの研削方法である。
【0008】
前記第1研削工程、前記第2位置づけ工程、及び前記第2研削工程を実施する際に前記保持面に保持させたウェーハの被研削面から前記研削砥石を離間させないように前記研削送り手段を制御すると好ましい。
【0009】
例えば、本発明に係るウェーハの研削方法において、研削砥石は、気孔を有するビトリファイドボンド砥石をコンティニアス配列した研削砥石である。
【発明の効果】
【0010】
研削装置を用いて研削砥石の下面と平行な保持面の半径領域でウェーハを研削する本発明に係るウェーハの研削方法は、保持面の中心とウェーハの中心とを合致させて保持面にウェーハを保持させる保持工程と、水平移動手段を用いて研削砥石の径方向の刃幅からなる研削砥石の回転軌跡が保持面の中心を通るように研削砥石に対してウェーハを位置づける第1位置づけ工程と、第1位置づけ工程後、研削送り手段で研削砥石を保持面に接近する方向に移動させウェーハを予め設定した仕上げ厚みより予め設定された値(1μm~3μm)だけ厚い厚みに研削する第1研削工程と、を実施することで、ウェーハの中心では圧縮から解放され膨張した研削砥石の接触する割合が多くなり、第1研削工程後のウェーハには中心に円柱状の空間である円柱凹部が形成される。そして、第1研削工程後、水平移動手段を用いて研削砥石の回転軌跡の内周と第1研削工程においてウェーハの中央に形成された円柱凹部の外周とが接する位置、又は、回転軌跡の外周と円柱凹部の外周とが接する位置のいずれかの位置、即ち、円柱凹部全体に研削砥石が当たらない位置に研削砥石に対してウェーハを位置づける第2位置づけ工程と、第2位置づけ工程の後、研削送り手段で研削砥石を保持面に接近する方向に移動させ予め設定した仕上げ厚みまでウェーハを研削する第2研削工程と、を実施することで、第2研削工程後のウェーハを中心に凹部が形成されていない均一な厚みのウェーハにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】保持工程、第1位置づけ工程、及び第1研削工程を説明するための断面図である。
【
図3】保持工程、第1位置づけ工程、及び第1研削工程を説明するための平面図である。
【
図4】本発明に係るウェーハの研削方法における研削時間と研削手段の高さとの関係を示すグラフである。
【
図5】第2位置づけ工程、及び第2研削工程を説明するための断面図である。
【
図6】第2位置づけ工程、及び第2研削工程を説明するための平面図である。
【
図7】第2位置づけ工程において、回転軌跡の外周と円柱凹部の外周とが接する位置に研削砥石に対してウェーハを位置づけた場合を説明する断面図である。
【
図8】第2位置づけ工程において、回転軌跡の外周と円柱凹部の外周とが接する位置に研削砥石に対してウェーハを位置づけた場合を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す研削装置1は、チャックテーブル等の保持手段30上に吸引保持されたウェーハ80を研削手段16によって研削加工する装置であり、研削装置1の装置ベース10上の前方(-Y方向側)は、保持手段30に対してウェーハ80の着脱が行われる着脱領域であり、装置ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削手段16によって保持手段30上に保持されたウェーハ80の研削加工が行われる加工領域である。
なお、本発明に係る研削装置は、研削装置1のような研削手段16が1軸の研削装置に限定されるものではなく、粗研削手段と仕上げ研削手段とを備え、回転するターンテーブルでウェーハ80を粗研削手段又は仕上げ研削手段の下方に位置づけ可能な2軸の研削装置等であってもよい。
【0013】
図1に示すウェーハ80は、例えば、円柱状のシリコンインゴットをワイヤーソー等で薄く切断して形成された円形のアズスライスウェーハである。ウェーハ80の
図1において下側を向いている面を表面801とし、表面801に対してZ軸方向(鉛直方向)において反対側の面を被研削面802とする。例えば、表面801は、図示しない保護部材が貼着されて保護されていてもよい。
なお、ウェーハ80はアズスライスウェーハに限定されるものではない。
【0014】
外形が平面視円形状の保持手段30は、例えば、ポーラス部材等からなりウェーハ80を吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。保持手段30の吸着部300は、エジェクター機構又は真空発生装置等の吸引源37(
図2参照)に連通し、吸引源37が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部300の露出面と枠体301の上面とで構成される保持面302に伝達されることで、保持手段30は保持面302上でウェーハ80を吸引保持することができる。
保持面302は、保持手段30の回転中心3022を頂点とし肉眼では判断できない程度の極めてなだらかな円錐斜面となっている。
【0015】
保持手段30は、カバー39によって周囲から囲まれつつ、軸方向がZ軸方向(鉛直方向)であり保持面302の中心3022を通る回転軸を軸に回転可能であり、カバー39及びカバー39に連結されY軸方向に伸縮する蛇腹カバー390の下方に配設された水平移動手段13によって、装置ベース10上をY軸方向に往復移動可能である。
【0016】
研削手段16の研削砥石1644の下面に平行な水平方向(Y軸方向)に保持手段30と研削手段16とを相対的に移動させる水平移動手段13は、Y軸方向の軸心を有するボールネジ130と、ボールネジ130と平行に配設された一対のガイドレール131と、ボールネジ130の一端に連結しボールネジ130を回動させるモータ132と、内部のナットがボールネジ130に螺合し底部がガイドレール131に摺接する可動板133とを備えており、モータ132がボールネジ130を回動させると、これに伴い可動板133がガイドレール131にガイドされてY軸方向に直動し、可動板133上にテーブルベース35を介して配設された保持手段30をY軸方向に移動させることができる。
なお、水平移動手段13は、ターンテーブルであってもよい。
【0017】
保持手段30は、テーブルベース35を介して可動板133上に配設されている。また、テーブルベース35は、保持手段30の周方向に等間隔を空けて複数配設された傾き調整手段34によって傾きが調整可能となっており、テーブルベース35の傾きが調整されることで、研削手段16の研削砥石1644の下面に対する保持手段30の保持面302の傾きを調整できる。
傾き調整手段34は、本実施形態においては、例えば保持手段30の周方向に120度間隔空けて配設された2つの昇降部340と、昇降部340から周方向に120度空けて配設された固定柱部341とを備えている。2つの昇降部340は、例えば、Z軸方向に上下動可能な電動シリンダやエアシリンダ等である。
【0018】
加工領域には、コラム11が立設されており、コラム11の-Y方向側の前面には保持手段30と研削手段16とを保持面302に垂直な方向(Z軸方向)に相対的に移動させる研削送り手段17が配設されている。研削送り手段17は、軸方向がZ軸方向であるボールネジ170と、ボールネジ170と平行に配設された一対のガイドレール171と、ボールネジ170の上端に連結しボールネジ170を回動させる昇降モータ172と、内部のナットがボールネジ170に螺合し側部がガイドレール171に摺接する昇降板173とを備えており、昇降モータ172がボールネジ170を回動させると、これに伴い昇降板173がガイドレール171にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板173に固定された研削手段16がZ軸方向に研削送りされる。
【0019】
例えば、研削装置1は、研削送り手段17により上下動する研削手段16の高さ位置を検出する高さ位置検出手段12を備えている。高さ位置検出手段12は、一対のガイドレール171に沿ってZ軸方向に延在するスケール120と、昇降板173に固定されスケール120に沿って昇降板173と共に移動しスケール120の目盛りを光学式にて読み取る読み取り部123とを備える。
【0020】
保持手段30の保持面302に保持されたウェーハ80を研削加工する研削手段16は、軸方向がZ軸方向である回転軸160と、回転軸160を回転可能に支持するハウジング161と、回転軸160を回転駆動するモータ162と、回転軸160の下端に接続された円環状のマウント163と、マウント163の下面に着脱可能に装着された研削ホイール164と、ハウジング161を支持し研削送り手段17の昇降板173に固定されたホルダ165とを備える。
【0021】
研削ホイール164は、ホイール基台1643と、ホイール基台1643の底面に環状に配置された研削砥石1644とを備える。本実施形態において、研削砥石1644は、例えば、気孔を有するビトリファイドボンドでダイヤモンド砥粒等が固着されて、1本の環状の輪に成形されたコンテニュアス配列のビトリファイドボンド砥石である。環状の研削砥石1644の刃幅は、例えば、3mmに設定されている。なお、研削砥石は、ホイール基台1643の下面に、略直方体形状の複数の研削砥石チップを研削砥石チップ間に所定の間隔を空けて環状に配列したセグメント砥石であってもよいし、砥粒を固定するボンドもビトリファイドボンドに限定されるものではなく、レジンボンドであってもよい。
【0022】
回転軸160の内部には、研削水供給源に連通し研削水の通り道となる図示しない流路が、回転軸160の軸方向(Z軸方向)に貫通して設けられており、該図示しない流路は、さらにマウント163を通り、ホイール基台1643の底面において研削砥石1644に向かって研削水を噴出できるように開口している。
【0023】
研削位置まで降下した状態の研削手段16に隣接する位置には、例えば、ウェーハ80の厚みを接触式にて測定する厚み測定手段38が配設されている。なお、厚み測定手段38は、非接触式のタイプであってもよいし、研削装置1に配設されていなくてもよい。
【0024】
研削装置1は、上記のように説明した研削装置1の各構成要素を制御可能な制御手段9を備えている。CPU及びメモリ等の記憶素子等で構成される制御手段9は、例えば、研削送り手段17、研削手段16、及び水平移動手段13等に電気的に接続されており、制御手段9の制御の下で、研削送り手段17による研削手段16の研削送り動作、研削手段16における研削ホイール164の回転動作、及び水平移動手段13による保持手段30の研削ホイール164に対する位置付け動作等が制御される。
【0025】
昇降モータ172は、例えば、サーボモータであり、昇降モータ172の図示しないエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段9に接続されており、制御手段9の出力インターフェイスから昇降モータ172に対して動作信号が供給されることによって回転軸160が回転し、図示しないエンコーダが検知した回転数をエンコーダ信号として制御手段9の入力インターフェイスに対して出力する。そして、エンコーダ信号を受け取った制御手段9は、研削送り手段17により研削送りされる研削手段16の高さを遂次認識できるとともに、研削手段16の研削送り速度をフィードバック制御できる。
なお、制御手段9は、高さ位置検出手段12が検出した研削手段16の高さ位置情報を受け取り、該情報を基に研削手段16の高さを遂次認識可能であってもよい。
【0026】
水平移動手段13のモータ132は、例えば、サーボモータであり、モータ132の図示しないエンコーダは、サーボアンプとしての機能も有する制御手段9に接続されており、制御手段9からモータ132に対して動作信号が供給されることによってボールネジ130が回転し、図示しないエンコーダが検知した回転数をエンコーダ信号として制御手段9に対して出力する。そして、エンコーダ信号を受け取った制御手段9は、水平移動手段13によりY軸方向に水平移動される保持手段30のY軸方向における位置を遂次認識し、所定の位置に位置づける制御が可能となる。
【0027】
以下に、
図1に示す研削装置1を用いて、本発明に係るウェーハ80の研削方法を実施する場合の各工程について説明する。
【0028】
(1)保持工程
まず、着脱領域に位置づけられた保持手段30の保持面302の中心3022とウェーハ80の中心808とが合致するように、ウェーハ80が被研削面802を上に向けた状態で保持面302上に載置される。そして、吸引源37(
図2参照)が作動して生み出された吸引力が、保持面302に伝達されることで、保持手段30によりウェーハ80が保持される。また、緩やかな円錐斜面である保持面302が
図1に示す研削手段16の研削砥石1644の研削面(下面)に対して平行になるように、
図1に示す傾き調整手段34によってテーブルベース35及び保持手段30の傾きが調整されることで、円錐斜面である保持面302にならって吸引保持されているウェーハ80の被研削面802が、研削砥石1644の下面に対して略平行になる。
【0029】
(2)第1位置づけ工程
次いで、水平移動手段13を用いて研削砥石1644の回転軌跡が保持面302の中心3022を通るように研削砥石1644に対してウェーハ80を位置づける。具体的には、
図2、3に示すように、ウェーハ80を吸引保持した保持手段30が、水平移動手段13によって+Y方向に送られて、研削砥石1644の回転中心が保持手段30の保持面302の中心3022(即ち、ウェーハ80の中心808)に対して所定の距離だけ水平方向(+Y方向)にずれ、研削砥石1644の径方向の刃幅(例えば、3mm)からなる回転軌跡がウェーハ80の回転中心808を通るように行われる。例えば、研削砥石1644のY軸方向の刃幅の中点の位置に保持面302に保持されているウェーハ80の中心808が合致せしめられる。なお、
図2、
図3においては、研削装置1の各構成を簡略化して示している。
【0030】
(3)第1研削工程
次いで、
図2に示す研削送り手段17によって、研削砥石1644が保持面302に接近する-Z方向に所定の研削送り速度で研削手段16が研削送りされていく。具体的には、
図4のグラフGに示すように、例えば原点高さ位置に位置している研削手段16が高速で下降していく。また、原点高さ位置から下降し始めた研削手段16の高さ位置は、
図1に示す制御手段9によって常に把握されている。
そして、
図4のグラフGに示すように、研削手段16がエアカット開始位置Z1に到達する。なお、
図4のグラフGにおいて、横軸は研削時間Tを示し、縦軸は研削手段16の高さ位置Hを示している。
【0031】
研削手段16がエアカット開始位置Z1に到達すると、研削送り手段17が、エアカット開始位置Z1から研削手段16の研削面がウェーハ80の被研削面802に接触するまでのエアカット(
図4のグラフGに示す時間T1から時間T2までのエアカット)におけるエアカット送り速度を、エアカット開始位置Z1に到達する前の下降速度よりも低速で、例えば研削加工時の研削送り速度と同速度とする制御が制御手段9の下で行われる。エアカットを行うことで、ウェーハ80に対して研削砥石1644がウェーハ80を破損させる速度で突っ込むことが無いようになる。
【0032】
その後、研削手段16が高さ位置Z2まで下降すると、例えば
図2、3に示すように+Z方向側から見て反時計回り方向に回転される研削砥石1644の研削面がウェーハ80の被研削面802に接触して、被研削面802の研削が開始される。また、保持手段30が所定の回転速度で例えば+Z方向側から見て反時計回り方向に回転するのに伴い保持面302上に保持されたウェーハ80も回転するので、研削砥石1644がウェーハ80の被研削面802全面の研削加工を行う。ウェーハ80は保持手段30の緩やかな円錐斜面である保持面302にならって吸引保持されているため、
図3に示すように、研削砥石1644の回転軌跡中の矢印Rで示す範囲内、即ち、保持面302側から見ると研削砥石1644の下面と平行な保持面302の半径領域内において、研削砥石1644はウェーハ80に当接し、例えば60Nの押し付け荷重をウェーハ80に加えつつ研削を行う。研削加工中には、研削水が研削砥石1644とウェーハ80の被研削面802との接触部位に供給されて、接触部位が冷却・洗浄される。
【0033】
例えば、
図1に示す高さ位置検出手段12を用いた研削手段16の高さ位置の検出が行われ、制御手段9が研削送り手段17による研削手段16の研削送り量を制御しつつ研削手段16を
図4のグラフGに示す高さ位置Z3まで降下させることで、制御手段9に予め設定された仕上げ厚みよりも1μm~3μmだけ厚い厚みまでウェーハ80が研削(
図4のグラフGに示す時間T2から時間T3までの第1研削)された状態になる。その後、所謂スパークアウトと呼ばれる加工が実施される。また、仕上げ厚みよりも1μm~3μmだけ厚い厚みまで研削されたウェーハ80の中心808には、背景技術の欄で説明したような現象によって、
図5、
図6に示す円柱状の凹部807が形成された状態になる。例えば、円柱凹部807の直径は約2.6mmとなる。
【0034】
図4のグラフGに示す時間T3から時間T4までのスパークアウトでは、研削送り手段17による研削手段16の下降が停止され、研削手段16の高さ位置が、所定時間例えば高さ位置Z3で保持された状態で、回転する研削砥石1644により、回転するウェーハ80の被研削面802の削り残しが除去されて、被研削面802が整えられる。
なお、第1研削工程において、
図1に示す厚み測定手段38によるウェーハ80の厚み測定が行われてもよい。
【0035】
本実施形態においては、第1研削工程、第2位置づけ工程、及び第2研削工程を実施する際に保持面302に保持させたウェーハ80の被研削面802から研削砥石1644を離間させないように、制御手段9が研削送り手段17を制御する。即ち、スパークアウト実施後に、研削送り手段17により研削手段16がエスケープカット(
図4のグラフGに示す時間T4から時間T5までのエスケープカット)される。エスケープカットにおいては、研削手段16がウェーハ80の被研削面802への悪影響を抑えるためにゆっくりと上昇する。ここで、研削加工中において、
図1に示す研削手段16からウェーハ80、ウェーハ80を保持する保持手段30、テーブルベース35、及び傾き調整手段34等に-Z方向への例えば60Nの押し付け荷重が掛かっており、研削手段16がゆっくり上昇すると、押し付け荷重から上記ウェーハ80等が解放される。その結果、いわゆるスプリングバック現象が生じて、ウェーハ80の被研削面802も上昇するため、ウェーハ80の被研削面802が研削砥石1644の下面に接した状態が継続される。そして、例えば、ウェーハ80の被研削面802が上昇する研削砥石1644の下面に追従するように接触しながら、研削手段16が所定の高さ位置Z4まで上昇して停止する。これによって、再び研削手段16を第2研削工程において下降させた際における、研削砥石1644の下面のウェーハ80の被研削面802に対する滑りがより抑制される。
【0036】
(4)第2位置づけ工程
第1研削工程後、
図5に示す水平移動手段13によって保持手段30が+Y方向に少しだけ移動されて、研削砥石1644の回転軌跡の内周(研削砥石1644の内周側の内刃)と第1研削工程においてウェーハ80の中央に形成された円柱凹部807の外周とが接する位置に研削砥石1644に対してウェーハ80を位置づける。例えば、研削砥石1644のY軸方向の刃幅3mmの中点からウェーハ80の中心808までの水平距離は2.8mmとなる。この際に、本実施形態においては、例えば、
図4のグラフGに示すように、時間T5から時間T6において行われる第2位置づけ工程では、研削手段16の高さ位置Z4は固定されており、ウェーハ80の被研削面802から研削砥石1644が離間しないようになっている。
なお、第1研削工程、第2位置づけ工程、及び第2研削工程を実施する際に保持面302に保持させたウェーハ80の被研削面802から研削砥石1644を離間させてもよい。
【0037】
(5)第2研削工程
次いで、
図5に簡略化して示す研削送り手段17によって、研削砥石1644が保持面302に接近する-Z方向に所定の研削送り速度で研削手段16が研削送りされていく。回転する研削砥石1644がウェーハ80の被研削面802に接触して、被研削面802の研削が円柱凹部807を避けるようにして行われ、また、保持手段30が所定の回転速度で回転するのに伴い保持面302上に保持されたウェーハ80も回転して、研削水の供給が行われつつ研削砥石1644がウェーハ80の被研削面802全面の研削加工を行う。
【0038】
例えば、
図1に示す高さ位置検出手段12を用いた研削手段16の高さ位置の検出が行われ、制御手段9が研削送り手段17による研削手段16の研削送り量を制御しつつ、
図4のグラフGに示す時間T6から時間T7において制御手段9に予め設定された仕上げ厚みまでウェーハ80が第2研削された後、時間T7から時間T8においてスパークアウト及び時間T8から時間T9においてエスケープカットが行われ、さらに、研削手段16がウェーハ80から上昇退避して第2研削工程が終了する。第2研削工程後のウェーハ80は、第1研削工程において形成されていた円柱凹部807に対する研削が避けられつつ薄化されたため、円柱凹部807以外の被研削面802の研削が円柱凹部807よりも割合多く研削されたことで、中心に円柱凹部が形成されていない均一な厚みのウェーハ80となる。
また、保持面302を複雑な形状とするセルフグラインドを実施する必要がないため、セルフグラインドに時間を多く取られることもない。
【0039】
本発明に係るウェーハの研削方法は上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている研削装置1の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態においては、第1研削工程及び第2研削工程において、研削ホイール164と保持手段30との回転方向を同一とし、回転する研削砥石1644がウェーハ80の外周から入り中心808に向かって研削していく外内研削を行っているが、例えば、第1研削工程及び第2研削工程において、研削ホイール164と保持手段30との回転方向を反対方向とし、回転する研削砥石1644がウェーハ80の中心808から入り外周に向かって研削していく内外研削を行ってもよい。
【0041】
例えば、第2位置づけ工程においては、
図7、8に示すように、研削砥石1644の回転軌跡の外周(研削砥石1644の外周側の外刃)と円柱凹部807の外周とが接する位置に研削砥石1644に対してウェーハ80を位置づけてもよい。その後、先に説明したように第2研削工程を実施することで、第2研削工程後のウェーハ80は、第1研削工程において形成されていた円柱凹部807に対する研削が避けられつつ薄化されたため、円柱凹部807以外の被研削面802の研削が円柱凹部807よりも割合多く研削されたことで、中心に円柱凹部が形成されていない均一な厚みのウェーハ80となる。
また、保持面302を複雑な形状とするセルフグラインドを実施する必要がないため、セルフグラインドに時間を多く取られることもない。
【符号の説明】
【0042】
80:ウェーハ 802:被研削面 801:表面 807:円柱凹部
1:研削装置 10:装置ベース
30:保持手段 300:吸着部 301:枠体 302:保持面
35:テーブルベース 34:傾き調整手段 340:昇降部 341:固定柱部
38:厚み測定手段 37:吸引源
13:水平移動手段 130:ボールネジ 132:モータ 133:可動板
11:コラム 17:研削送り手段 170:ボールネジ 172:昇降モータ
16:研削手段 160:回転軸 162:モータ 164:研削ホイール
1643:ホイール基台 1644:研削砥石
9:制御手段