IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクサイエンスの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】荷電粒子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20240105BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240105BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20240105BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
H01J37/317 D
H01J37/20 D
H01J37/20 Z
H01J37/22 502H
G01N1/28 F
G01N1/28 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020047650
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021057332
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019173888
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村木 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】上本 敦
(72)【発明者】
【氏名】麻畑 達也
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-505899(JP,A)
【文献】特開2016-157671(JP,A)
【文献】特開2018-116860(JP,A)
【文献】特開2018-133552(JP,A)
【文献】特開2018-133553(JP,A)
【文献】特表2019-508678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0330511(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/317
H01J 37/20
H01J 37/22
G01N 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、
荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、
前記試料を載置して移動する試料ステージと、
前記試料から分離および摘出する前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、
前記試料片が移設される試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、
第1対象物の第1画像を含む第1情報が学習された機械学習のモデルと、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した第2画像を含む第2情報とに基づいて第2対象物に関する位置の制御を行うコンピュータと、
を備え
前記第2対象物には、前記試料片が含まれ、
前記第1画像には、前記試料片が分離および摘出される前の前記試料片の形状が示された画像が含まれる
荷電粒子ビーム装置。
【請求項2】
前記第2対象物には、前記試料片ホルダに備えらえる試料台の部分が含まれる
請求項1に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項3】
前記第2対象物には、前記試料片移設手段に用いられるニードルが含まれる
請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項4】
記第1画像は、前記試料片を摘出する試料摘出工程において前記試料片に向けて前記試料片移設手段を接近させる位置が示された画像である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項5】
記第1画像は、前記試料から前記試料片を分離および摘出する位置が示された画像である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項6】
前記第1画像は、前記第2対象物の種類に応じて生成された疑似画像である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項7】
前記第1対象物の種類と、前記第2対象物の種類とは同じである
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビーム装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に電子またはイオンから成る荷電粒子ビームを照射することによって作製した試料片を摘出して、透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscpe)などによる観察、分析、及び計測などの各種工程に適した形状に試料片を加工する装置が知られている(特許文献1)。特許文献1に記載の装置では、透過電子顕微鏡によって観察を行う場合には、観察対象物である試料から微細な薄膜試料片を取り出した後、該薄膜試料片を試料ホルダに固定してTEM試料を作成する、いわゆるマイクロサンプリング(MS:Micro-sampling)が行われる。
【0003】
TEM観察用の薄片試料の作製において、マイクロプローブ先端、薄片試料のピックアップ位置、メッシュホルダ上のピラー端などの対象物をテンプレートマッチングにより検出する荷電粒子ビーム装置が知られている(特許文献2)。特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、荷電粒子ビームの照射によって取得した対象物の画像に基づいて作成したテンプレートと、対象物の画像から得られる位置情報とに基づいて、対象物に関する位置制御を行う。これによって特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、自動でMS(自動MS)を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-102138号公報
【文献】特開2016-157671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、対象物の位置制御を行う度にテンプレート画像を取得する必要があり、画像を取得する時間の分だけ自動MSの速度の低下につながっていた。例えば、マイクロプローブの先端形状はクリーニングや試料の付着などにより変化するため、対象物の位置制御を行う度にテンプレート画像を取得する。また、薄片試料のピックアップ位置のテンプレート画像についても、コントラストやフォーカスなどの違いによりマッチング精度が低下してしまうため、位置制御の開始前にテンプレート画像を取得する。また、ピラーの角については個体差があるため、ユーザーがマウス操作により画像上のピラーの位置を毎回登録していた。
一方、特許文献2に記載の荷電粒子ビーム装置では、テンプレートマッチングの成功率を向上させるため、スキャン速度を落として高精細な画像を取得していた。
このように従来、自動MSの速度は十分ではなく、自動MSを高速化し、スループットを向上させることが求められていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、自動MSを高速化できる荷電粒子ビーム装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様は、試料から試料片を自動的に作製する荷電粒子ビーム装置であって、荷電粒子ビームを照射する荷電粒子ビーム照射光学系と、前記試料を載置して移動する試料ステージと、前記試料から分離および摘出する前記試料片を保持して搬送する試料片移設手段と、前記試料片が移設される試料片ホルダを保持するホルダ固定台と、第1対象物の第1画像を含む第1情報が学習された機械学習のモデルと、前記荷電粒子ビームの照射によって取得した第2画像を含む第2情報とに基づいて第2対象物に関する位置の制御を行うコンピュータと、を備え、前記第2対象物には、前記試料片が含まれ、前記第1画像には、前記試料片が分離および摘出される前の前記試料片の形状が示された画像が含まれる荷電粒子ビーム装置である。
【0008】
上記(1)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、機械学習に基づいて対象物の位置を検出することができるため、自動MSを高速化できる。荷電粒子ビーム装置10では、機械学習に基づいて対象物の位置を検出するため、テンプレートマッチングを用いる場合のようにテンプレート画像を毎回取得する時間を削減でき、自動MSが高速化しスループットが向上する。
荷電粒子ビーム装置では、従来はテンプレートマッチングの成功率を向上させるため、スキャン速度を落として高精細な画像を取得していたが、機械学習では高精細な画像でなくても位置検出が可能であるため、画像取得時のスキャン速度を上げることができ、自動MSが高速化しスループットが向上する。
荷電粒子ビーム装置では、従来は、加工のレシピ作成時にユーザーがマニュアル操作で行っていた作業を自動化することができ、レシピ作成が簡便になる。また、荷電粒子ビーム装置では、サンプルごとにレシピを用意しなくてよいため、形状変化に強いシステム構成になる。
【0009】
(2)上記(1)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第2対象物には、前記試料片ホルダに備えらえる試料台の部分が含まれる。
上記(2)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、機械学習に基づいて試料台の部分の位置を検出することができるため、自動MSにおいて試料片を試料台の部分に接続する工程を高速化できる。
【0010】
(3)上記(1)または(2)に記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第2対象物には、前記試料片移設手段に用いられるニードルが含まれる。
上記(3)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、機械学習に基づいてニードルの先端の位置を検出することができるため、自動MSにおいてニードルを移動させる工程を高速化できる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第1画像は、前記試料片を摘出する試料摘出工程において前記試料片に向けて前記試料片移設手段を接近させる位置が示された画像である。
上記(4)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、機械学習に基づいて、前記試料片を摘出する試料摘出工程において前記試料片に向けて前記試料片移設手段を接近させる位置を検出することができるため、自動MSにおいてニードルを試料片に接近させる工程を高速化できる。
【0012】
(5)上記(1)から(4)のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第1画像は、前記試料から前記試料片を分離および摘出する位置が示された画像である。
上記(5)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、機械学習に基づいて試料から試料片を分離および摘出する位置を検出することができるため、自動MSにおいて試料片をニードルに接続する工程を高速化できる。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第1画像は、前記第2対象物の種類に応じて生成された疑似画像である。
上記(6)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、第1画像として実際の荷電粒子ビームの照射によって得られる画像が十分な数だけ用意できない場合であっても疑似画像をそれらの画像の代わり用いることができるため、第1情報が学習された機械学習の精度を向上できる。
【0014】
(7)上記(1)から(6)のいずれかに記載の荷電粒子ビーム装置において、前記第1対象物の種類と、前記第2対象物の種類とは同じである。
上記(7)に記載の態様に係る複合荷電粒子ビーム装置では、第2対象物の種類と同じ種類の第1対象物の第1画像を含む第1情報が学習された機械学習に基づいて対象物の位置を検出することができるため、第1対象物の種類と第2対象物の種類とが異なる場合に比べて機械学習を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、自動マイクロサンプリングを高速化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置と画像処理用コンピュータとの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置の構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る試料片を示す平面図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る試料片ホルダの平面図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る試料片ホルダの側面図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る画像処理用コンピュータの構成の一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る初期設定工程の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の上面図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の側面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る柱状部の学習画像の一例を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部の一例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部の学習画像の一例を示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る試料片ピックアップ工程の一例を示す図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係るニードルの移動処理の一例を示す図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端が含まれるSEM画像データの一例を示す図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
図17】本発明の第1の実施形態に係るニードルの先端の一例を示す図である。
図18】本発明の第1の実施形態に係るニードルの学習画像の一例を示す図である。
図19】本発明の第1の実施形態に係る試料片が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
図20】本発明の第1の実施形態に係る試料片の学習画像の一例を示す図である。
図21】本発明の第1の実施形態に係るSIM画像データにおける試料および試料片の支持部の切断加工位置を示す図である。
図22】本発明の第1の実施形態に係る試料片マウント工程の一例を示す図である。
図23】本発明の第2の実施形態に係る画像処理用コンピュータの構成の一例を示す図である。
図24】本発明の第2の実施形態に係るベアウェアの一例を示す図である。
図25】本発明の第2の実施形態に係るパターン画像の一例を示す図である。
図26】本発明の第2の実施形態に係る疑似画像の一例を示す図である。
図27】本発明の第2の実施形態に係るピックアップ位置の検出処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10と画像処理用コンピュータ30との構成の一例を示す図である。荷電粒子ビーム装置10に備えらえる制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射によって取得した画像データを取得する。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30とデータの送受信を行う。画像処理用コンピュータ30は、制御用コンピュータ22から受信した画像データに含まれる対象物を機械学習モデルMに基づいて判定する。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30の判定結果に基づいて、対象物に関する位置の制御を行う。
制御用コンピュータ22は、第1対象物の第1画像を含む第1情報が学習された機械学習のモデルと、荷電粒子ビームの照射によって取得した第2画像を含む第2情報とに基づいて第2対象物に関する位置の制御を行うコンピュータの一例である。
なお、画像処理用コンピュータ30は、荷電粒子ビーム装置10に備えられてもよい。
【0018】
ここで図2を参照し、荷電粒子ビーム装置10の構成について説明する。
(荷電粒子ビーム装置)
図2は、実施形態の荷電粒子ビーム装置10の構成の一例を示す図である。荷電粒子ビーム装置10は、試料室11と、試料ステージ12と、ステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、検出器16と、ガス供給部17と、ニードル18と、ニードル駆動機構19と、吸収電流検出器20と、表示装置21と、制御用コンピュータ22と、入力デバイス23とを備える。
【0019】
試料室11は、内部を真空状態に維持する。試料ステージ12は、試料室11の内部において試料Sおよび試料片ホルダPを固定する。ここで試料ステージ12は、試料片ホルダPを保持するホルダ固定台12aを備える。このホルダ固定台12aは複数の試料片ホルダPを搭載できる構造であってもよい。
【0020】
ステージ駆動機構13は、試料ステージ12を駆動する。ここでステージ駆動機構13は、試料ステージ12に接続された状態で試料室11の内部に収容されており、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて試料ステージ12を所定軸に対して変位させる。ステージ駆動機構13は、少なくとも水平面に平行かつ互いに直交するX軸およびY軸と、X軸およびY軸に直交する鉛直方向のZ軸とに沿って平行に試料ステージ12を移動させる移動機構13aを備えている。ステージ駆動機構13は、試料ステージ12をX軸またはY軸周りに傾斜させる傾斜機構13bと、試料ステージ12をZ軸周りに回転させる回転機構13cと、を備えている。
【0021】
集束イオンビーム照射光学系14は、試料室11の内部における所定の照射領域(つまり走査範囲)内の照射対象に集束イオンビーム(FIB)を照射する。ここで、集束イオンビーム照射光学系14は、試料ステージ12に載置された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に鉛直方向上方から下方に向かい集束イオンビームを照射する。
【0022】
集束イオンビーム照射光学系14は、イオンを発生させるイオン源14aと、イオン源14aから引き出されたイオンを集束および偏向させるイオン光学系14bと、を備えている。イオン源14aおよびイオン光学系14bは、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、集束イオンビームの照射位置および照射条件などが制御用コンピュータ22によって制御される。
【0023】
電子ビーム照射光学系15は、試料室11の内部における所定の照射領域内の照射対象に電子ビーム(EB)を照射する。ここで電子ビーム照射光学系15は、試料ステージ12に固定された試料S、試料片Q、および照射領域内に存在するニードル18などの照射対象に、鉛直方向に対して所定角度(例えば60°)傾斜した傾斜方向の上方から下方に向かい電子ビームを照射可能である。
【0024】
電子ビーム照射光学系15は、電子を発生させる電子源15aと、電子源15aから射出された電子を集束および偏向させる電子光学系15bと、を備えている。電子源15aおよび電子光学系15bは、制御用コンピュータ22から出力される制御信号に応じて制御され、電子ビームの照射位置および照射条件などが制御用コンピュータ22によって制御される。
【0025】
なお、電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14の配置を入れ替えて、電子ビーム照射光学系15を鉛直方向に、集束イオンビーム照射光学系14を鉛直方向に所定角度傾斜した傾斜方向に配置してもよい。
【0026】
検出器16は、集束イオンビームまたは電子ビームの照射によって照射対象から発生する二次荷電粒子(二次電子、二次イオン)Rを検出する。ガス供給部17は、照射対象の表面にガスGを供給する。ニードル18は、試料ステージ12に固定された試料Sから微小な試料片Qを取り出し、試料片Qを保持して試料片ホルダPに移設する。ニードル駆動機構19は、ニードル18を駆動して試料片Qを搬送する。以下では、ニードル18とニードル駆動機構19を合わせて試料片移設手段と呼ぶこともある。
【0027】
吸収電流検出器20は、ニードル18に流入する荷電粒子ビームの流入電流(吸収電流とも言う)を検出し、検出した結果を流入電流信号として制御用コンピュータ22に出力する。
【0028】
制御用コンピュータ22は、少なくともステージ駆動機構13と、集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15と、ガス供給部17と、ニードル駆動機構19を制御する。制御用コンピュータ22は、試料室11の外部に配置され、表示装置21と、操作者の入力操作に応じた信号を出力するマウスやキーボードなどの入力デバイス23とが接続されている。制御用コンピュータ22は、入力デバイス23から出力される信号または予め設定された自動運転制御処理によって生成される信号などによって、荷電粒子ビーム装置10の動作を統合的に制御する。
【0029】
ここで上述したように、制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30の判定結果に基づいて、対象物に関する位置の制御を行う。制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30と通信を行うための通信インターフェースを備える。
【0030】
また、制御用コンピュータ22は、吸収電流検出器20から出力される流入電流信号を吸収電流画像データとして画像化する。ここで、制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながら検出器16によって検出される二次荷電粒子Rの検出量を、照射位置に対応付けた輝度信号に変換して、二次荷電粒子Rの検出量の2次元位置分布によって照射対象の形状を示す吸収電流画像データを生成する。吸収電流画像モードでは、制御用コンピュータ22は、荷電粒子ビームの照射位置を走査しながらニードル18に流れる吸収電流を検出することによって、吸収電流の2次元位置分布(吸収電流画像)によってニードル18の形状を示す吸収電流画像データを生成する。制御用コンピュータ22は、生成した画像データを表示装置21に表示させる。
表示装置21は、検出器16によって検出された二次荷電粒子Rに基づく画像データなどを表示する。
【0031】
荷電粒子ビーム装置10は、照射対象の表面に集束イオンビームを走査しながら照射することによって、照射対象の画像化やスパッタリングによる各種の加工(掘削、トリミング加工など)と、デポジション膜の形成などが実行可能である。
【0032】
図3は、本発明の実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10において、集束イオンビームを試料Sの表面(斜線部)に照射して形成された、試料Sから摘出される前の試料片Qを示す平面図である。符号Fは集束イオンビームによる加工枠、つまり、集束イオンビームの走査範囲を示し、その内側(白色部)が集束イオンビーム照射によってスパッタ加工されて掘削された加工領域Hを示している。レファレンスマークRefは、試料片Qを形成する(掘削しないで残す)位置を示す基準点である。試料片Qの概略の位置に知るにはデポジション膜を利用し、精密な位置合わせには微細穴を利用する。試料Sにおいて試料片Qは、試料Sに接続される支持部Qaを残して側部側および底部側の周辺部が削り込まれて除去されるようにエッチング加工されており、支持部Qaによって試料Sに片持ち支持されている。
【0033】
次に図4及び図5を参照し、試料片ホルダPについて説明する。
図4は試料片ホルダPの平面図であり、図5は側面図である。試料片ホルダPは、切欠き部41を有する略半円形板状の基部42と、切欠き部41に固定される試料台43とを備えている。基部42は、一例として円形板状の金属で形成されている。試料台43は櫛歯形状であり、離間配置されて突出する複数で、試料片Qが移設される柱状部(以下、ピラーとも言う)44を備えている。
【0034】
(画像処理用コンピュータ)
次に図6を参照し、画像処理用コンピュータ30について説明する。図6は、本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30の構成の一例を示す図である。画像処理用コンピュータ30は、制御部300と、記憶部305とを備える。
制御部300は、学習データ取得部301と、学習部302と、判定画像取得部303と、判定部304とを備える。
【0035】
学習データ取得部301は、学習データを取得する。学習データは、機械学習の学習に用いられる情報である。学習データは、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置を示す情報との組である。学習画像内の対象物には、一例として、試料片、ニードルや試料片ホルダに備えらえる柱状部などが含まれる。ここで学習画像内の対象物の種類と、判定画像内の対象物の種類とは同じである。例えば、学習画像内の対象物の種類が試料片、ニードル、または柱状部である場合、判定画像内の対象物の種類はそれぞれ試料片、ニードル、または柱状部である。
【0036】
ここで本実施形態では、学習画像として、対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像やSEM画像が用いられる。荷電粒子ビームは所定の方向から対象物へ照射される。荷電粒子ビーム装置10において、荷電粒子ビーム照射系の鏡筒の方向は固定されているため、荷電粒子ビームが対象物に照射される方向は予め決められている。
【0037】
学習画像内の対象物の位置を示す情報とは、一例として、この対象物の学習画像内の位置を示す座標である。この学習画像内の位置を示す座標は、例えば、2次元の直交座標や極座標などである。
【0038】
学習画像は、対象物のSIM画像とSEM画像との両方を含む。学習画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との両方である。つまり、学習画像は、試料ステージ12を基準とする第1方向から対象物をみた場合の画像と、この対象物を第2方向からみた場合の画像とを含む。第2方向は、試料ステージ12を基準とする第1方向とは異なる方向である。
【0039】
学習部302は、学習データ取得部301が取得した学習データに基づいて、機械学習を実行する。学習部302は、学習した結果を機械学習モデルMとして記憶部305に記憶させる。学習部302は、学習データに含まれる学習画像の対象物の種類毎に機械学習を実行する。したがって、機械学習モデルMは、学習データに含まれる学習画像の対象物の種類毎に生成される。機械学習モデルMは、第1対象物の第1画像を含む第1情報が学習された機械学習のモデルの一例である。
なお、以下の説明において画像に撮像されている、または描画されている対象物を、この画像の対象物という場合がある。
【0040】
ここで学習部302が実行する機械学習とは、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)などを用いた深層学習である。この場合、機械学習モデルMとは、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置との対応に応じてノード間の重みが変更された多層ニューラルネットワークである。この多層ニューラルネットワークは、画像の各画素に対応するノードをもつ入力層と、この画像内の各位置に対応するノードをもつ出力層を備え、入力層にSIM画像やSEM画像の各画素の輝度値が入力されると、この画像における位置を示す値の組が出力層から出力される。
【0041】
判定画像取得部303は、判定画像を取得する。判定画像とは、制御用コンピュータ22から出力されるSIM画像やSEM画像である。判定画像には、上述した対象物の画像が含まれる。判定画像の対象物には、試料片Qや使用後のニードル18など荷電粒子ビームの照射に関する物体が含まれる。
【0042】
判定画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との両方である。つまり、判定画像は、対象物を第1方向からみた場合の画像と、この対象物を第2方向からみた場合の画像とを含む。ここで第1方向とは、試料ステージ12を基準とする方向であり、第2方向とは、試料ステージ12を基準とする第1方向とは異なる方向である。
【0043】
判定部304は、学習部302によって学習が実行された機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる対象物の位置を判定する。ここで判定画像に含まれる対象物の位置とは、例えば、SIM画像やSEM画像内の試料片のピックアップ位置や、SIM画像やSEM画像内のニードルの先端の位置や、SIM画像やSEM画像内の柱状部44の位置が含まれる。判定部304は、判定画像に含まれる対象物の位置として、一例として、判定画像内の対象物の座標を判定する。
【0044】
なお、画像処理用コンピュータ30は、学習済みの機械学習モデルを、例えば外部のデータベースから取得してもよい。その場合、制御部300は、学習データ取得部301と学習部302とを備えていなくてもよい。
【0045】
以下、制御用コンピュータ22が実行する自動マイクロサンプリング(MS:Micro-sampling)の動作、つまり荷電粒子ビーム(集束イオンビーム)による試料Sの加工によって形成された試料片Qを自動的に試料片ホルダPに移設させる動作について、初期設定工程、試料片ピックアップ工程、試料片マウント工程に大別して、順次説明する。
(初期設定工程)
図7は、本実施形態に係る初期設定工程の一例を示す図である。
ステップS10:制御用コンピュータ22は、モード及び加工条件の設定を行う。モードの設定とは、自動シーケンスの開始時に操作者の入力に応じて後述する姿勢制御モードの有無等の設定である。加工条件の設定は、加工位置、寸法、試料片Qの個数等の設定である。
【0046】
ステップS20:制御用コンピュータ22は、柱状部44の位置を登録する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物として柱状部44が含まれるSIM画像やSEM画像を画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0047】
本実施形態において、対象物が含まれる吸収電流画像データは、対象物のSIM画像と、対象物のSEM画像との組である。つまり、対象物が含まれるSIM画像やSEM画像は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像と、対象物を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像との組である。
【0048】
判定画像取得部303は、画像処理用コンピュータ30からSIM画像やSEM画像を判定画像として取得する。判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる柱状部44の位置を判定する。判定部304は、判定した柱状部44の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力する。
【0049】
ここで判定部304は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSIM画像から、対象物の位置の試料ステージ12における2次元座標を判定する。一方、判定部304は、対象物を試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のSEM画像とから、対象物の位置の当該傾斜方向に垂直な平面における2次元座標を判定する。判定部304は、判定した試料ステージ12における2次元座標と、傾斜方向に垂直な平面における2次元座標とに基づいて、対象物の位置を3次元座標の値として判定する。
【0050】
なお、判定部304は、荷電粒子ビーム装置10において電子ビーム照射光学系15と集束イオンビーム照射光学系14とが配置される方向や両者の間の角度の情報である方向情報を3次元座標の値の算出に用いる。判定部304は、方向情報を予め記憶部305に記憶させ読み出すか、制御用コンピュータ22から取得する。
ここでステップS20においては、対象物とは、柱状部44である。以下の工程においても、判定部304が対象物の位置を判定する処理は同様である。
【0051】
ここで図8から図12を参照し、柱状部44や、機械学習モデルMの生成に用いられる柱状部44の学習画像について説明する。
図8及び図9は、本実施形態に係る柱状部44の一例を示す図である。図8及び図9に示す柱状部A0は、柱状部44の設計上の構造の一例である。ここで図8は、柱状部A0の上面図であり、図9は、柱状部A0の側面図である。柱状部A0は、基部A02に段上の構造のピラーA01が接着された構造を有する。
【0052】
図10は、本実施形態に係る柱状部44の学習画像の一例を示す図である。学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、柱状部44の位置の学習に用いられる。学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、柱状部の位置を示す情報が円として示されている。
学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、ピラーA11、ピラーA21、ピラー31の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13では、基部A12、基部A22、基部A32の形状は同一である。
【0053】
なお、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、一例として、柱状部44を試料ステージ12の水平方向からみた場合のSIM画像やSEM画像に含まれる柱状部44の位置を判定するための学習画像である。図2では、集束イオンビーム照射光学系14や電子ビーム照射光学系15は試料ステージ12の水平方向から試料ステージ12に臨んでいないが、集束イオンビーム照射光学系14や電子ビーム照射光学系15のいずれか一方は水平方向から試料ステージ12に臨んでもよく、学習画像X11、学習画像X12、学習画像X13は、その場合の柱状部44の位置を判定するための学習画像である。
【0054】
図11は、本実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部44の一例を示す図である。図11に示す柱状部A4は、ピラーが段上構造になっていない柱状部44の設計上の構造の一例の側面図である。
【0055】
図12は、本実施形態に係るピラーが段上構造になっていない柱状部44の学習画像の一例を示す図である。学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23は、一例として、柱状部44を試料ステージ12の鉛直方向からみた場合のSEM画像に含まれる柱状部44の位置を判定するための学習画像である。
学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23では、ピラーA51、ピラーA61、ピラー71の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像X21、学習画像X22、学習画像X23では、基部A52、基部A62、基部A72の形状は同一である。
【0056】
従来のテンプレートマッチングでは、ピラーの形状が異なっている場合に、柱状部の位置を判定できないことがあった。一方、機械学習モデルMは、柱状部44の基部が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、基部の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、ピラーの形状が異なっている場合であっても、柱状部の判定の精度が向上する。
学習画像の対象物体は、複数の学習画像の対象物体相互間において同じ形状の部位が含まれていることが好ましい。
【0057】
図7に戻って初期設定工程の説明を続ける。
制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30によって判定された柱状部44の位置を示す位置情報に基づいて、柱状部44の位置を登録する。
なお、柱状部44の学習画像では、柱状部44のうち試料台43の両端に位置する柱状部の画像が含まれることが好ましい。この学習画像を含む学習データを用いて生成された機械学習モデルMに基づいて、画像処理用コンピュータ30は、柱状部44のうち試料台43の両端の柱状部を、両端以外の柱状部と区別して検出する。制御用コンピュータ22は、検出した両端の柱状部の位置から試料片ホルダPの傾きを算出してもよい。制御用コンピュータ22は、算出した傾きに基づいて対象物の位置の座標の値を補正してもよい。
【0058】
ステップS30:制御用コンピュータ22は、集束イオンビーム照射光学系14を制御して、試料Sを加工する。
【0059】
(試料片ピックアップ工程)
図13は、本実施形態に係る試料片ピックアップ工程の一例を示す図である。ここで、ピックアップとは、集束イオンビームによる加工やニードルによって、試料片Qを試料Sから分離、摘出することを言う。
【0060】
ステップS40:制御用コンピュータ22は、試料の位置を調整する。ここで制御用コンピュータ22は、対象とする試料片Qを荷電粒子ビームの視野に入れるためにステージ駆動機構13によって試料ステージ12を移動させる。ここで、制御用コンピュータ22は、レファレンスマークRefと試料片Qとの相対位置関係を用いる。制御用コンピュータ22は、試料ステージ12の移動後、試料片Qの位置合わせを行なう。
【0061】
ステップS50:制御用コンピュータ22は、ニードル18の移動を実行する。
ここで図14を参照し、制御用コンピュータ22が実行するニードル18の移動のための処理について説明する。図14は、本実施形態に係るニードル18の移動処理の一例を示す図である。図14のステップS510からステップ540は、図13のステップS50に対応する。
【0062】
ステップS510:制御用コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(粗調整)を実行する。
ステップS520:制御用コンピュータ22は、ニードル18の先端を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物としてニードル18が含まれる吸収電流画像データを画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0063】
判定画像取得部303は、画像処理用コンピュータ30からSIM画像とSEM画像とを判定画像として取得する。判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれるニードル18の位置を、対象物の位置として判定する。判定部304は、判定したニードル18の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力する。
【0064】
次に、制御用コンピュータ22は、画像処理用コンピュータ30によって判定されたニードル18の位置を示す位置情報に基づいて、ニードル駆動機構19によってニードル18を移動させるニードル移動(微調整)を実行する。
【0065】
ここで図15から図18を参照し、ニードル18や、機械学習モデルMの生成に用いられるニードル18の学習画像について説明する。
図15は、本実施形態に係るニードル18の先端が含まれるSEM画像データの一例を示す図である。図16は、本実施形態に係るニードル18先端が含まれるSIM画像データの一例を示す図である。
【0066】
図17は、本実施形態に係るニードル18の先端の一例を示す図である。図17では、ニードル18の一例として、試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向からみた場合のニードルB1が示されている。
【0067】
図18は、本実施形態に係るニードル18の学習画像の一例を示す図である。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33は、ニードル18の先端の位置の学習に用いられる。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードル18の先端の位置を示す情報が円として示されている。学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードルの先端の太さはそれぞれ異なっている。一方、学習画像Y31、学習画像Y32、学習画像Y33では、ニードルの先端の形状は同一である。
【0068】
実際のニードル18の先端の太さは、クリーニングによって太さが変化する。従来のテンプレートマッチングでは、ニードルの先端の太さが異なっている場合に、ニードルの先端の位置を判定できないことがあった。一方、機械学習モデルMは、ニードル18の先端が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、ニードルの先端の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、ニードルの先端の太さが異なっている場合であっても、ニードルの先端の判定の精度が向上する。
【0069】
図14に戻ってニードル18の移動処理の説明を続ける。
ステップS530:制御用コンピュータ22は、試料片Qのピックアップ位置を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、対象物として試料片Qが含まれるSIM画像やSEM画像を画像処理用コンピュータ30に送信する。
【0070】
ここで図19及び図20を参照し、試料片Qや、機械学習モデルMの生成に用いられる試料片Qの学習画像について説明する。
図19は、本実施形態に係る試料片Qが含まれるSIM画像データの一例を示す図である。図19では、試料片Qの一例として、試料片Q71が、ピックアップ位置を示す円とともに示されている。
【0071】
図20は、本実施形態に係る試料片Qの学習画像の一例を示す図である。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13は、試料片Qの先端の位置の学習に用いられる。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片Qのピックアップ位置を示す情報が円として示されている。学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片のサイズや表面の形状はそれぞれ異なっている。一方、学習画像Z11、学習画像Z12、学習画像Z13では、試料片のピックアップ位置における形状は同一である。
【0072】
実際の試料片の表面の形状は、個体毎に異なる。従来のテンプレートマッチングでは、試料片の表面の形状が異なっている場合に、試料片のピックアップ位置を判定できないことがあった。また、従来のテンプレートマッチングでは、コントラストやフォーカスが、試料片の画像とテンプレートとの間で異なっている場合にテンプレートマッチングに失敗し、試料片のピックアップ位置を判定できないことがあった。
一方、機械学習モデルMは、試料片Qのピックアップ位置が含まれた学習画像を用いた機械学習に基づいて生成されるため、機械学習モデルMでは、例えば、試料片Qのピックアップ位置の形状が特徴量として学習されている。そのため、荷電粒子ビーム装置10では、試料片の表面の形状が異なっている場合であっても、試料片Qのピックアップ位置の判定の精度が向上する。
【0073】
図14に戻ってニードル18の移動処理の説明を続ける。
ステップS540:制御用コンピュータ22は、検出したピックアップ位置までニードル18を移動させる。
以上で、制御用コンピュータ22は、ニードル18の移動処理を終了する。
【0074】
図13に戻って試料片ピックアップ工程の説明を続ける。
ステップS60:制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接続する。ここで制御用コンピュータ22は、デポジション膜を用いて接続を行う。
ステップS70:制御用コンピュータ22は、試料Sと試料片Qとを加工分離する。ここで図21は、加工分離の様子を示しており、本発明の実施形態に係るSIM画像データにおける試料Sおよび試料片Qの支持部Qaの切断加工位置T1を示す図である。
【0075】
なお、本実施形態において別途予め作製加工済みの試料片Q0に対しても試料片ピックアップ工程および試料片マウント工程を行ってもよい。この場合、試料片Q0のピックアップ位置を制御用コンピュータ22に指定入力することによって、試料片移設手段(ニードル18)及び試料片Q0の位置調整が行われた後、図21の切断加工位置T1が機械学習によって決定されてもよい。この場合の機械学習では、第1画像として、試料片を摘出する試料摘出工程において試料片に向けて試料片移設手段を接近させる位置(切断加工位置)が示された画像が用いられる。
この場合、試料片Q0の加工サイズや形状を示す加工サイズ形状情報が制御用コンピュータ22に入力されていなくても、試料片Q0の摘出及び分離を行うことができる。また、試料片Q0を摘出後、以降の試料片マウント工程は同様に行われてよい。
【0076】
ステップS80:制御用コンピュータ22は、ニードル18を退避させる。ここで制御用コンピュータ22は、ステップS50のニードル18の移動処理と同様にしてニードル18の先端の位置を検出してニードル18を移動させて退避を行う。
【0077】
ステップS90:制御用コンピュータ22は、試料ステージ12を移動させる。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS20において登録した特定の柱状部44が、荷電粒子ビームによる観察視野領域内に入るようにステージ駆動機構13によって試料ステージ12を移動させる。
【0078】
(試料片マウント工程)
図22は、本実施形態に係る試料片マウント工程の一例を示す図である。ここで試料片マウント工程とは、摘出した試料片Qを試料片ホルダPに移設する工程のことである。ステップS100:制御用コンピュータ22は、試料片Qの移設位置を判定する。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS20において登録した特定の柱状部44を、移設位置として判定する。
【0079】
ステップS110:制御用コンピュータ22は、ニードル18の位置を検出する。ここで制御用コンピュータ22は、上述のステップS520と同様にしてニードル18の先端の位置を検出する。
ステップS120:制御用コンピュータ22は、ニードル18を移動させる。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル18をステップS100で判定した試料片Qの移設位置までニードル駆動機構19によってニードル18を移動させる。制御用コンピュータ22は、柱状部44と試料片Qとの間に予め定めた空隙を空けてニードル18を停止させる。
【0080】
ステップS130:制御用コンピュータ22は、ニードル18に接続された試料片Qを柱状部44に接続する。
ステップS140:制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを分離する。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル18と試料片Qとを接続するデポジション膜DM2を切断することによって分離を行う。
ステップS150:制御用コンピュータ22は、ニードル18を退避させる。ここで制御用コンピュータ22は、ニードル駆動機構19によってニードル18を試料片Qから所定距離だけ遠ざける。
【0081】
ステップS160:制御用コンピュータ22は、次のサンプリングを実行するか否かを判定する。ここで次のサンプリングを実行するとは、引き続いて同じ試料Sの異なる場所からサンプリングを継続することである。サンプリングすべき個数の設定は、ステップS10で事前に登録しているため、制御用コンピュータ22はこのデータを確認して次のサンプリングを実行するかを判定する。次のサンプリングを実行すると判定する場合は、制御用コンピュータ22は、ステップS50に戻り、上述のように後続するステップを続けサンプリング作業を実行する。一方、制御用コンピュータ22は、次のサンプリングを実行しないと判定する場合は、自動MSの一連のフローを終了する。
【0082】
なお、本実施形態では、学習データが、学習画像と、この学習画像内の対象物の位置を示す情報との組である場合の一例について説明したが、これに限らない。学習データには、学習画像以外に、試料の種類、スキャンパラメータ(集束イオンビーム照射光学系14、及び電子ビーム照射光学系15の加速電圧など)、ニードル18のクリーニングを実行してからの使用回数、ニードル18の先端に異物が付着しているか否か、などを示す情報であるパラメータ情報が含まれてもよい。
【0083】
その場合、機械学習モデルM1は、学習画像と、パラメータ情報とに基づいて機械学習が実行されて生成される。また、判定部304は、制御用コンピュータ22からSIM画像やSEM画像の画像データに加え、パラメータ情報を取得して、画像データ、パラメータ情報と、機械学習モデルM1とに基づいて対象物の画像内の位置を判定する。
【0084】
また、さらにパラメータ情報に、上述した方向情報が含まれてもよい。学習データに方向情報が含まれる場合、対象物と、この対象物をみている方向(試料ステージ12を基準とする方向)との関係が学習されて機械学習モデルM1が生成されるため、判定部304は、対象物の位置の判定に方向情報を用いる必要はない。
【0085】
なお上述したように、コンピュータ(本実施形態において、制御用コンピュータ22)は、画像処理用コンピュータ30が機械学習のモデル(本実施形態において、機械学習モデルM1)と、第2画像(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片QのSIM画像やSEM画像)を含む第2情報とに基づいて第2対象物(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片Q)に関する位置を判定した結果に基づいて、第2対象物(本実施形態において、柱状部44、ニードル18、及び試料片Q)に関する位置の制御を行う。なお、画像処理用コンピュータ30と、制御用コンピュータ22とは、一体となって荷電粒子ビーム装置10に備えられてもよい。
【0086】
(第2の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第2の実施形態について詳しく説明する。
本実施形態では、学習画像として、対象物の種類に応じて生成された疑似画像が用いられたり、対象物の種類に応じて用いられる機械学習モデルが選択されたりする場合について説明をする。
本実施形態に係る荷電粒子ビーム装置10を荷電粒子ビーム装置10aといい、画像処理用コンピュータ30を画像処理用コンピュータ30aという。
【0087】
図23は、本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30aの構成の一例を示す図である。本実施形態に係る画像処理用コンピュータ30a(図23)と第1の実施形態に係る画像処理用コンピュータ30(図6)とを比較すると、学習画像生成部306a、分類部307a、機械学習モデルM1a、及び分類用学習モデルM2aが異なる。ここで、他の構成要素が持つ機能は第1の実施形態と同じである。第1の実施形態と同じ機能の説明は省略し、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
制御部300aは、学習データ取得部301と、学習部302と、判定画像取得部303と、判定部304とに加え、学習画像生成部306aと、分類部307aとを備える。
【0088】
学習画像生成部306aは、学習画像として疑似画像PIを生成する。本実施形態において疑似画像PIとは、対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像やSEM画像を元に生成した画像である。学習画像生成部306aは、一例として、ベアウェアBWと、パターン画像PTとに基づいて疑似画像PIを生成する。
【0089】
ベアウェアBWとは、対象物から表面のパターンが除かれて対象物の形状を示す画像である。ベアウェアBWは、サイズ、コントラスト、フォーカスなどが異なる複数の対象物の形状を示す複数の画像であることが好ましい。ベアウェアBWは、SIM画像やSEM画像とは異なり、画像ソフトウェアを用いて描画された画像である。
パターン画像PTとは、対象物の内部構造に応じたパターンを示す画像である。パターン画像PTは、荷電粒子ビームの照射によって得られたSIM画像やSEM画像であってもよいし、画像ソフトウェアを用いて描画された画像であってもよい。
【0090】
学習画像生成部306aは、疑似画像生成アルゴリズムを用いて、パターン画像PTが示す対象物の内部構造に応じたパターンにランダムノイズを加えて、ベアウェアBWに重畳することによって疑似画像PIを生成する。
【0091】
本実施形態では、一例として、学習画像生成部306aが、試料片Qの学習画像として疑似画像PIを生成する場合の一例について説明するが、これに限らない。学習画像生成部306aは、ニードル18や柱状部44の学習画像として疑似画像PIを生成してもよい。
【0092】
なお、学習画像生成部306aは、学習画像に、上述した第1実施形態の対象物への荷電粒子ビームの照射によって予め得られたSIM画像やSEM画像を含めてもよい。つまり、学習画像生成部306aは、学習画像として、疑似画像PIのみを用いてもよいし、疑似画像PIとSIM画像やSEM画像とを組み合わせて用いてもよい。
【0093】
学習部302は、機械学習において、学習画像生成部306aが生成した学習画像から、対象物の表面の形状や、内部構造のパターンを特徴量として抽出して、機械学習モデルM1aを生成する。
【0094】
ここで図24から図26を参照し、疑似画像PIの生成方法について説明する。
図24は、本実施形態に係るベアウェアBWの一例を示す図である。図24では、試料片QのベアウェアBWとして、ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3が示されている。ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3は、複数のサイズの試料片Qの形状を模した画像である。なお、ベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3には、ピックアップ位置を示す情報としてニードル18に対応する画像がそれぞれ含まれている。
【0095】
図25は、本実施形態に係るパターン画像PTの一例を示す図である。図25では、パターン画像PTとして、ユーザーサンプルU1が示されている。ユーザーサンプルU1は、荷電粒子ビーム装置10aのユーザーが加工しようとする試料片Qの種類に応じて予め用意された画像である。ユーザーサンプルU1では、複数の層からなる試料片について、それら複数の層を構成する物質の種類に応じたパターンが描かれている。
【0096】
図26は、本実施形態に係る疑似画像PIの一例を示す図である。図26では、疑似画像PIとして、図24のベアウェアBW1、ベアウェアBW2、ベアウェアBW3と、図25のユーザーサンプルU1とに基づいて生成された疑似画像PI1、疑似画像PI2、疑似画像PI3が示されている。疑似画像PI1、疑似画像PI2、疑似画像PI3は、複数のサイズの試料片Qの形状に、ユーザーサンプルU1が示す内部構造のパターンが重畳されている。
【0097】
図23に戻って画像処理用コンピュータ30aの構成の説明を続ける。
分類部307aは、分類用学習モデルM2aに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像を分類する。ここで分類部307aは、必ずしも判定画像を分類しなくてもよい。分類部307aが判定画像を分類するか否かは、例えば、制御用コンピュータ22へ入力される設定に応じて画像処理用コンピュータ30において設定される。
分類用学習モデルM2aは、対象物の種類に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定部304が判定に用いるモデルを選択するためのモデルである。ここで機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルは、モデルの生成に用いられた学習データのセットだけでなく、機械学習のアルゴリズムによっても区別される。
【0098】
分類用学習モデルM2aは、例えば、ユーザー毎の加工する試料片Qの種類と、機械学習モデルM1aに含まれるモデルとを対応づける。分類用学習モデルM2aは、機械学習に基づいて予め生成されて記憶部305に記憶される。
【0099】
次に図27を参照し、分類用学習モデルM2aが用いられた荷電粒子ビーム装置10aの自動MSの動作として、試料片Qのピックアップ位置を検出する処理について説明する。
図27は、本実施形態に係るピックアップ位置の検出処理の一例を示す図である。
ステップS310:分類部307aは、分類用学習モデルM2aに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像を分類する。
ステップS320:分類部307aは、分類した結果に応じて、機械学習モデルM1aに含まれる複数のモデルのなかから、判定部304が判定に用いる機械学習モデルを選択する。
ステップS330:判定部304は、分類部307aが選択した機械学習モデルに基づいて、判定画像取得部303が取得した判定画像に含まれる対象物の位置を判定する。
【0100】
なお、上述した実施形態では、荷電粒子ビーム装置10、10aが集束イオンビーム照射光学系14と、電子ビーム照射光学系15との2つの荷電粒子ビーム照射光学系を備える場合の一例について説明したが、これに限らない。荷電粒子ビーム装置は、1つの荷電粒子ビーム照射光学系を備えてもよい。その場合、荷電粒子ビーム照射光学系の荷電粒子ビーム照射によって得られる判定画像には、例えば、対象物に加えこの対象物の影が映っていることが好ましい。また、その場合、対象物はニードル18である。
【0101】
ニードル18の影とは、試料ステージ12の鉛直方向に対して所定角度傾斜した傾斜方向から観察時にニードル18が試料片Qの表面に接近すると、ニードル18近傍の試料片Qの表面から発生する2次電子(又は2次イオン)の検出器16への到達を遮蔽するために生じる現象で、ニードル18と試料片Qの表面との距離が近いほど顕著になる。したがって、ニードル18と試料片Qの表面との距離が近いほど判定画像における影の輝度値が高くなる。
【0102】
画像処理用コンピュータ30は、判定画像からニードル18の先端の位置を判定画像における2次元の座標として判定することに加え、ニードル18の影の輝度値からニードル18の先端と試料片Qの表面との距離を算出する。これによって、画像処理用コンピュータ30は、判定画像からニードル18の先端の位置を、3次元座標の値として判定する。
【0103】
なお、上述した実施形態において、制御用コンピュータ22はスキャン速度を第1の速度よりも遅い第2の速度にして吸収電流画像データを生成し、画像処理用コンピュータ30は、スキャン速度を第2の速度にして生成された吸収電流画像データに含まれる画像の解像度を第1の解像度よりも高い第2の解像度にしてから、機械学習モデルMに基づいて対象物の位置を判定してもよい。
ここでスキャン速度とは、制御用コンピュータ22が吸収電流画像データを生成する過程において、荷電粒子ビームの照射位置を走査する速度である。第1の速度とは、例えば、従来の荷電粒子ビーム装置が荷電粒子ビームの照射位置を走査する速度である。第2の速度は、第1の速度よりも遅い任意の速度である。第2の速度は、例えば、従来の荷電粒子ビーム装置において、テンプレートマッチングの成功率を向上させるために高精細な画像を取得するために選択されていたスキャン速度である。
解像度とは、画像を構成する画素の密度である。第1の解像度とは、例えば、従来の荷電粒子ビーム装置において生成される吸収電流画像データに含まれるSIM画像、及びSEM画像の解像度である。第2の解像度とは、第1の解像度よりも高い空間周波数を有する任意の解像度である。
以下の説明において、スキャン速度を第2の速度にすることを、例えば、スキャン速度を低速するともいう。また、画像の解像度を第1の解像度から第2の解像度に変換することを、例えば、画像を超解像化するともいう。
【0104】
ここで、制御用コンピュータ22がスキャン速度を低速にして吸収電流画像データを生成し、画像処理用コンピュータ30がスキャン速度を低速にして生成された吸収電流画像データに含まれるSIM画像、及びSEM画像の解像度を超解像化してから、機械学習モデルMに基づいて対象物の位置を判定する場合の画像処理用コンピュータ30の処理について説明する。この処理は、上述した図7に示したステップS20、図14に示したステップS520、図22に示したステップS110などにおいて実行される。
【0105】
判定画像取得部303は、画像処理用コンピュータ30からSIM画像やSEM画像を判定画像として取得する。それらSIM画像やSEM画像は、制御用コンピュータ22がスキャン速度を低速にして生成した吸収電流画像データに含まれる画像である。判定部304は、判定画像取得部303が取得した判定画像を超解像化する処理を行う。判定部304が超解像化に用いる超解像技術は任意の超解像技術が用いられてよく限定されない。判定部304は、例えば、SIM画像やSEM画像の解像度を第1の解像度から第2の解像度に変換する。ここで判定部304は、SIM画像やSEM画像の解像度を変換するだけでなく、SIM画像やSEM画像に含まれる対象物の画像の空間周波数を変換前の画像に比べて高くする処理を行う。
判定部304は、機械学習モデルMに基づいて、超解像化した判定画像に含まれる対象物の位置を判定する。判定部304は、判定した対象物の位置を示す位置情報を制御用コンピュータ22に出力する。
【0106】
上述したように、制御用コンピュータ22はスキャン速度を第1の速度よりも遅い第2の速度にして吸収電流画像データを生成し、画像処理用コンピュータ30は、スキャン速度を第2の速度にして生成された吸収電流画像データに含まれる画像の解像度を第1の解像度よりも高い第2の解像度にしてから、機械学習モデルMに基づいて対象物の位置を判定する場合、スキャン速度を第2の速度にする場合において、対象物の位置を判定する処理の処理時間を、画像の解像度を第2の解像度にしない場合に比べて短縮することができ、かつ判定精度を向上させることができる。
【0107】
なお、制御用コンピュータ22は、スキャン速度を第2の速度にして取得した吸収電流画像データを超解像化してから機械学習モデルMに基づいて対象物の位置の判定を行い、その結果、対象物の位置を判定できなかった場合には、スキャン速度を第1の速度にして吸収電流画像データを取得し、超解像化を行わずに機械学習モデルMに基づいて対象物の位置の判定を行ってもよい。もし対象物の位置を判定できなかった原因が、超解像化が不十分であったことである場合、スキャン速度を第1の速度にして取得した吸収電流画像データを用いてリトライ処理を行うことによって対象物の位置を正しく検知できる可能性がある。
【0108】
なお、上述した実施形態における制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの一部、例えば、学習データ取得部301、学習部302、判定画像取得部303、判定部304、学習画像生成部306a、分類部307aをコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この制御機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aに内蔵されたコンピュータシステムであって、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
また、上述した実施形態における制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの一部、または全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。制御用コンピュータ22、画像処理用コンピュータ30、30aの各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【0109】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0110】
10、10a…荷電粒子ビーム装置、S…試料、Q…試料片、14…集束イオンビーム照射光学系(荷電粒子ビーム照射光学系)、15…電子ビーム照射光学系15(荷電粒子ビーム照射光学系)、12…試料ステージ、18…ニードル(試料片移設手段)、19…ニードル駆動機構(試料片移設手段)、P…試料片ホルダ、12a…ホルダ固定台、22…制御用コンピュータ(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27