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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20240105BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240105BHJP
   G01N 21/958 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G01M11/00 T
G02B5/30
G01N21/958
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020144842
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039692
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】小林 信次
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊介
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-53057(JP,A)
【文献】特開2020-85854(JP,A)
【文献】特開2016-126005(JP,A)
【文献】特開2001-159582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-11/04
G01N 21/84-21/958
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光フィルムと位相差膜とが積層されてなる円偏光板を備えるフィルム状の被検査物の欠陥の有無を判断する検査方法であって、
光源と、
第1の直線偏光板と、
前記偏光フィルム側を前記第1の直線偏光板側へ向けた前記被検査物と、
前記光源が発する光の反射を抑える反射抑制構造物と、を前記光源が発する光の光路上にこの順に並ぶように、かつ、
前記第1の直線偏光板とクロスニコルを構成する第2の直線偏光板を前記被検査物によって反射される前記光の光路上に位置するように配置し、
前記第1の直線偏光板に前記光源の光を入射し、前記被検査物によって反射された前記光を前記第2の直線偏光板側から観察して前記円偏光板の欠陥の有無を判断する、検査方法。
【請求項2】
前記被検査物は、前記偏光フィルムが積層されている側に表面保護フィルムを備え、
前記被検査物を、前記表面保護フィルムが有する遅相軸が前記第1の直線偏光板の吸収軸と平行又は垂直となるように配置する、請求項1記載の検査方法。
【請求項3】
前記反射抑制構造物は、前記円偏光板とは別の円偏光板である、請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項4】
前記反射抑制構造物は、内部が空洞な立体構造物である、請求項1又は2記載の検査方法。
【請求項5】
前記反射抑制構造物は、前記光の反射率が8%以下である、請求項1~4のいずれか一項記載の検査方法。
【請求項6】
前記位相差膜は、重合性液晶化合物の硬化物からなるものである、請求項1~5のいずれか一項記載の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等に用いられる偏光板は、一般的に偏光子が2枚の保護フィルムに挟まれて構成されている。偏光板を表示装置に貼り付けるため、片方の保護フィルムには粘着剤層が積層され、更に粘着剤層に剥離フィルムが積層される。また、他方の保護フィルムにもその表面を保護する剥離フィルム(表面保護フィルム)が貼合される場合が多い。偏光板はこのように剥離フィルムが積層された状態で流通搬送され、表示装置の製造工程で表示装置に貼合する際に剥離フィルムが剥離される。
【0003】
ところで、偏光板はその製造段階において、偏光子と保護フィルムとの間に異物が混入したり、気泡が残ったり、あるいは、保護フィルムが位相差フィルムの機能を持つ場合には配向欠陥が内在していることがある(以下、これらの異物、気泡及び配向欠陥をまとめて、「欠陥」ということがある)。欠陥が存在する偏光板を表示装置に貼合した場合、その欠陥の箇所が輝点として視認されたり、欠陥の箇所で画像がゆがんで見えたりすることがある。特に、輝点として視認される欠陥は、当該表示装置の黒表示時に視認されやすい。
【0004】
そこで、偏光板を表示装置に貼合する前段階(剥離フィルムを備えた状態の偏光板)で、この偏光板の欠陥を検出するための検査が行われる。この欠陥の検査は、一般的には偏光板の偏光軸を利用した光検査である。具体的には、特許文献1に示されているように、被検査物である偏光板と光源との間に偏光フィルタを設けたうえで、この偏光板又は偏光フィルタを平面方向に回転させ、これらのそれぞれの偏光軸方向を特定の関係とする。偏光軸方向同士が互いに直交する場合(すなわちクロスニコルを構成する配置の場合)、偏光フィルタを通過した直線偏光は、偏光板を通過しない。しかしながら、偏光板に欠陥が存在すると、当該箇所では直線偏光が透過してしまうので、その光が検出されることで欠陥の存在が判明する。一方、偏光板と偏光フィルタとの偏光軸方向同士が平行である場合、偏光フィルタを通過した直線偏光は偏光板を透過する。しかしながら、偏光板に欠陥が存在すると、当該箇所では直線偏光が遮断されるので、その光が検出されないことで欠陥の存在が判明する。偏光板を透過してきた光を検査者が目視により検出するか、あるいはCCDカメラと画像処理装置とを組み合わせた画像解析処理値により自動的に検出することで、偏光板の欠陥の有無の検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-229817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
検査対象が円偏光板である場合も上記と同様の原理で欠陥の有無の検査をすることが可能であるが、特許文献1に示されている検査方法の原理は、被検査物を透過した光を観察するというものである。この原理では被検査物に変形欠陥(例えば、円偏光板の裁断時に生じた皺)が存在した場合、正常部分と変形欠陥部分とで光路長がほとんど変化しないので、光学的に変形欠陥を検出することが困難である。
【0007】
そこで本発明は、反射型の検査方法であって、円偏光板の欠陥の有無を容易に判断することができる検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、偏光フィルムと位相差膜とが積層されてなる円偏光板を備えるフィルム状の被検査物の欠陥の有無を判断する検査方法であって、光源と、第1の直線偏光板と、偏光フィルム側を第1の直線偏光板側へ向けた被検査物と、光源が発する光の反射を抑える反射抑制構造物と、を光源が発する光の光路上にこの順に並ぶように、かつ、第1の直線偏光板とクロスニコルを構成する第2の直線偏光板を被検査物によって反射される光の光路上に位置するように配置し、第1の直線偏光板に光源の光を入射し、被検査物によって反射された光を第2の直線偏光板側から観察して円偏光板の欠陥の有無を判断する、検査方法を提供する。
【0009】
この検査方法では、第1の直線偏光板と第2の直線偏光板とをクロスニコルを構成するように配置していることから、被検査物の正常部分で反射した光が(例えば偏光フィルムの表面で反射した光)第2の直線偏光板で遮断されるので、観察視野を十分に暗くすることができ、欠陥部分の観察をしやすくなる。他方、被検査物の内部に生じている欠陥部分で反射した光は、その欠陥に起因して位相差が理想よりもずれている(意図しない楕円偏光となっている)ので、そのずれの分だけ第2の直線偏光板を透過することとなり、被検査物の欠陥部分として検出することができる。ここで、被検査物の載置台が反射する光も欠陥の観察の障害となり得るが、本発明の検査方法では被検査物を透過した光は反射抑制構造物により反射が抑制されるので、載置台による光の反射が障害になりにくく、欠陥を観察しやすい。また、このような反射型の検査方法は、透過型の検査方法と比べて被検査物中の光路が長くなるので、透過型の検査方法では検出が困難であった変形欠陥も容易に検出することができる。以上のことから、本発明の検査方法では円偏光板の欠陥の有無を容易に判断することができる。
【0010】
この検査方法において、被検査物は、偏光フィルムが積層されている側に表面保護フィルムを備え、被検査物を、表面保護フィルムが有する遅相軸が第1の直線偏光板の吸収軸と平行又は垂直となるように配置してもよい。このような配置であると、第1の直線偏光板によって生じた直線偏光の偏光状態が乱されることなく円偏光板1の検査をすることができる。
【0011】
この検査方法において、反射抑制構造物は、円偏光板とは別の円偏光板であってもよく、又は、内部が空洞な立体構造物であってもよい。そして、反射抑制構造物は、光の反射率が8%以下であることが好ましい。
【0012】
この検査方法において、位相差膜は、重合性液晶化合物の硬化物からなるものであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反射型の検査方法であって、円偏光板の欠陥の有無を容易に判断することができる検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の検査装置を示す図である。
図2】被検査物の断面図である。
図3】変形例の検査装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
(検査装置と被検査物)
本実施形態の検査装置は、円偏光板の表面又は内部の欠陥の有無を検査するものである。図1に示されているとおり、検査装置100Aは、光源2と、光源2に対向するように配置された第1の直線偏光板3Aと、第1の直線偏光板3Aの隣に並べるようにして配置された第2の直線偏光板3Bと、被検査物10を載置する載置台22の表面に載置された反射抑制用円偏光板20とからなるものである。ここで、第1の直線偏光板3Aと第2の直線偏光板3Bとは面が互いに平行で略同一面上に並んでおり、反射抑制用円偏光板20は、載置台22の上に固定して載置されている。
【0017】
図2に示されているとおり、被検査物10はフィルム状であり、検査対象の本体である円偏光板1と、円偏光板1に対して粘着剤層15を介して積層された剥離フィルム16aとを備えている。円偏光板1は、偏光フィルム11の両面に保護フィルム12a,12bが貼合されており、更に、剥離フィルム16aを備える側の保護フィルム12a上に粘着剤層13を介して位相差膜14が形成されてなるものである。そして、円偏光板1のうち剥離フィルム16aを備えていない側の面には表面保護フィルム16bが積層されている。円偏光板1は、一般的に表示装置、例えば液晶表示装置や有機EL表示装置に用いられるものであり、使用時には剥離フィルム16aを剥がして、粘着剤層15を介して表示装置に貼り付けられる。
【0018】
なお、本明細書において「円偏光板」とは、円偏光板及び楕円偏光板を含むものとする。また、「円偏光」は、円偏光と楕円偏光を含むものとする。
【0019】
偏光フィルム11は、表面保護フィルム16b側から入射した光を直線偏光に変換するフィルムである。偏光フィルム11としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素や二色性色素が吸着・配向されたものや、重合性液晶化合物を配向・重合したものに、二色性色素が吸着・配向したものが挙げられる。
【0020】
保護フィルム12a,12bは、偏光フィルム11を保護するためのものである。保護フィルム12a,12bとしては、適度な機械的強度を有する偏光板を得る目的で、偏光板の技術分野で汎用されているものが用いられる。典型的には、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のセルロースエステル系フィルム;環状オレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステル系フィルム:ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等の(メタ)アクリル系フィルム等である。また、偏光板の技術分野で汎用されている添加剤が、保護フィルムに含まれていてもよい。
【0021】
保護フィルム12a,12bは、円偏光板1の構成要素として偏光フィルム11とともに表示装置に貼合されるものであるので、位相差値の厳密な管理等が要求される。保護フィルム12aとしては,典型的には、位相差値が極めて小さいものが好ましく用いられる。また、保護フィルム12bとしては、例えば、偏光サングラスを介して表示装置を視認したときの見易さのため、λ/4の位相差を有するものや位相差値の小さいものが用いられる。保護フィルム12a,12bは、接着剤を介して偏光フィルム11に貼合される。
【0022】
位相差膜14は、表面保護フィルム16b側から入射し偏光フィルム11によって直線偏光とされた光を円偏光に変換する膜である。剥離フィルム16a側からみれば、位相差膜14は、剥離フィルム16a側から入射した円偏光を直線偏光に変換する膜である。位相差膜14は、位相差を有する膜であれば特に制限はないが、λ/2膜とλ/4膜とが積層されたものであってもよい。この場合、偏光フィルム11から近いほうからλ/2膜、λ/4膜の順にしてもよい。
【0023】
また、位相差膜14は、重合性液晶化合物の硬化物からなるものであることが好ましい。重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差膜14は、通常厚さが0.2μm~10μm程度と薄く、異物等を含む場合にその部分で位相差値が低下しやすい。このような部位では、直線偏光が理想どおりの円偏光に変換しきらず、意図しない楕円偏光になる。
【0024】
位相差膜14を形成し得る重合性液晶化合物は、例えば、特開2009-173893号公報、特開2010-31223号公報、WO2012/147904号公報、WO2014/10325号公報及びWO2017-43438号公報に開示されたものを挙げることができる。これらの公報に記載の重合性液晶化合物は、広い波長域において一様の偏光変換が可能な、いわゆる逆波長分散性を有する位相差膜を形成可能である。例えば、当該重合性液晶化合物を含む溶液(重合性液晶化合物溶液)を適当な基材上に塗布して光重合させることで、上述のように極めて薄い位相差膜を形成することができるので、かかる位相差膜を有する円偏光板は、厚みが極めて薄い円偏光板を形成することができる。このように厚みが極めて薄い円偏光板は、近年着目されているフレキシブル表示材料用の円偏光板として有利である。
【0025】
重合性液晶化合物溶液を塗布する基材としては、上述の公報に記載されたものを挙げることができる。かかる基材には、重合性液晶化合物を配向させるために配向膜が設けられていてもよい。配向膜は偏光照射により光配向させるものや、ラビング処理により機械的に配向させたもののいずれでもよい。なお、かかる配向膜に関しても、上記公報に記載されている。
【0026】
しかしながら、重合性液晶化合物溶液を塗布する基材に異物等が存在していたり、基材自体に傷等があったりする場合に、重合性液晶化合物溶液を塗布して得られる塗布膜自体に欠陥が生じることがある。また、配向膜をラビング処理した場合には、ラビング布の屑が配向膜上に残り、これが重合性液晶化合物溶液(液晶硬化膜形成用組成物)の塗布膜に欠陥を生じさせることもある。このように、重合性液晶化合物から形成される位相差膜は、厚みが極めて薄い位相差膜を形成可能であるが、欠陥を生じる要因がある。
【0027】
位相差膜14は、基材上に配向膜形成用組成物を塗布し、更にその上に重合性液晶化合物を含んだ液晶硬化膜形成用組成物を塗布することによって作製することができる。そうして作成した位相差膜14を、保護フィルム12a上に形成された粘着剤層13に対して基材ごと貼合し、その後、基材を剥がすことで、位相差膜14を保護フィルム12a上に転写することができる。
【0028】
剥離フィルム16aは、表示装置に貼合するときに円偏光板1から剥がされるものであり、通常は、剥がされた剥離フィルム16aは廃棄される。したがって、保護フィルム12a,12bとは異なり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。
【0029】
なお、上記背景技術に記したように、円偏光板1において、剥離フィルム16aの反対面には、剥離フィルムの一種である表面保護フィルム16bが設けられることが多い。図2に示されている円偏光板1では保護フィルム12b側に表面保護フィルム16bが貼合されている。この表面保護フィルム16bも通常、表示装置に貼合するときに円偏光板1から剥がされるものであり、保護フィルム12a,12bとは異なり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。なお、図2において、保護フィルム12bと表面保護フィルム16bとは、適当な接着剤層又は粘着剤層を介して貼合されていてもよい(図2においては、この接着剤層又は粘着剤層は、図示はしていない)。
【0030】
本実施形態において、剥離フィルム16aはポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)からなるものである。また、表面保護フィルム16bについてもPET系樹脂からなるものを用いる。PET系樹脂からなるフィルム(PET系樹脂フィルム)は、剥離フィルムとして汎用であり、且つ安価であるという利点がある。一方、安価なPET系樹脂フィルムは上記のとおり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。そのため、例えば、製品ロットごとに位相差値にバラツキがあることがある。また、同一のPET樹脂系フィルムであっても、面内に位相差値のバラツキがあることもある。このような安価なPET樹脂系フィルムを剥離フィルムとして貼合した円偏光板であっても、本実施形態の検査方法により、その欠陥の有無を精度よく検出することができる。
【0031】
光源2は、種々の市販品を用いることができるが、例えばレーザ光等の直線光(直線光に近似するものも含む)であることが有利である。光源2が発する光は無偏光であり、後述する第1の直線偏光板3Aを通過し所定方向の偏光となる。
【0032】
第1の直線偏光板3A、及び、第2の直線偏光板3Bは、被検査物10を検査する場面では、常に互いにクロスニコルを構成するようにその向きが調整される。このとき、第2の直線偏光板3Bに入射する光は被検査物10で反射した反射光であることに留意する。そして、第1の直線偏光板3A及び第2の直線偏光板3Bは、いわゆる無欠陥のものが採用される。
【0033】
被検査物10の内部の欠陥部分で反射した光を観察するために、反射光の光路上、且つ、第2の直線偏光板3Bの両側のうち光源2がある側の位置に、CCDカメラ等を含む検出手段5を配置してもよい。例えば、CCDカメラと画像処理装置を組み合わせた画像処理解析により自動的に検出し、これによって被検査物の検査を行うことができる。或いは、検出手段5は部材ではなく、人間が第2の直線偏光板3Bを人が目視観察することであってもよい。また、適宜、光源2とCCDカメラとの間には仕切り版があってもよい。
【0034】
反射抑制用円偏光板20は広帯域の円偏光板であり、その構成要素である偏光フィルム側を光源2側へ、位相差膜側を載置台22側へ向けて、載置台22に固定されている。反射抑制用円偏光板20は、自然光の反射率が8%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることが更に好ましい。
【0035】
(検査方法)
検査装置100Aを用いた検査方法は、以下のとおりである。はじめに、検査装置100Aの内部のうち、光源2から見て第1の直線偏光板3A及び第2の直線偏光板3Bの向こう側に被検査物10を配置する。このとき、これら各フィルムの面がいずれも平行となるように、且つ、被検査物10中の表面保護フィルム16bや偏光フィルム11を備える側が光源2側を向くとともに表面保護フィルム16bの遅相軸と第1の直線偏光板3Aの吸収軸とが平行又は垂直となるように配置する。ここで、第1の直線偏光板3Aは被検査物10に入射する前の光が透過するように、かつ、第2の直線偏光板3Bは被検査物10が反射した光が入射するように、光源2と検出手段5との位置関係を調整する。そして、第1の直線偏光板3Aが第2の直線偏光板3Bとクロスニコルを構成するように調整する。
【0036】
光源2から、第1の直線偏光板3Aへ光を入射する。このとき、被検査物10に対する入射角(被検査物10の表面に対する垂線を基準とする角度)をを3°~30°とすることが好ましく、5°~20°とすることがより好ましい。光源2が発する光が、指向性が低い光である場合は、被検査物10からの反射角(又は検出手段5による観察角度)が上記の角度範囲となるようにすることが好ましい。
【0037】
光源2が発した光は第1の直線偏光板3Aに入射し、これを透過して直線偏光となり、次に被検査物10に入射する(光路9a)。そして、被検査物10中の表面保護フィルム16bを透過し、円偏光板1を構成する位相差膜14にて円偏光に変換され、剥離フィルム16aを透過する。そして、その円偏光は最終的に反射抑制用円偏光板20で吸収される(光路9aの終末)。ここで、第1の直線偏光板3Aを透過した光の一部は被検査物10中の表面保護フィルム16bの表面で反射する(光路9b)。この反射光は、第1の直線偏光板3Aと第2の直線偏光板3Bとがクロスニコルを構成するように配置されていることから、第2の直線偏光板3Bで遮断され(光路9bの終末)、このため検出手段5による第2の直線偏光板3Bの観察視野は暗くなっている。
【0038】
偏光フィルム11の吸収軸と第1の直線偏光板3Aの吸収軸については、クロスニコルとならない状態に配置を行う。偏光フィルム11の吸収軸と第1の直線偏光板3Aの吸収軸とのなす角としては、好ましくは、0°~80°とすることが好ましく、0°~60°とすることがより好ましく、最も好ましいのは0°~40°である。偏光フィルム11の吸収軸と第1の直線偏光板3Aの吸収軸とのなす角が、80°を超えると、検査光としての光量が不足し検査性能が著しく低下する。
【0039】
他方、被検査物10に入射した光の一部は、被検査物10中に存在する欠陥(位相差膜14と剥離フィルム16aとの界面に存在する欠陥Dや、位相差膜14中に存在する欠陥D’)の部分で反射が強くなる(光路9c)。この反射光は、その欠陥Dに起因して位相差が理想よりもずれている(意図しない楕円偏光となっている)ので、そのずれの分だけ偏光フィルム11では正規の遮断が行えず、第2の直線偏光板3Bを光が透過することとなる。これを検出手段5側から観察すると、欠陥部分が輝点として観察される。
【0040】
以上に示した検査方法によれば、第1の直線偏光板3Aと第2の直線偏光板3Bとをクロスニコルを構成するように配置しているので被検査物10の表面反射光を遮断して観察視野を暗くすることができ、更に、被検査物10を透過した光は反射抑制用円偏光板20で吸収されるので、観察視野を十分に暗くすることができ、欠陥部分の観察をしやすい。また、この検査方法は反射型の検査方法であるので、透過型の検査方法と比べて被検査物10中の光路が長くなり、透過型の検査方法では検出が困難であった皺等の変形欠陥も容易に検出することができる。以上のことから、本発明の検査方法では円偏光板の欠陥の有無を容易に判断することができる。
【0041】
また、上記の検査方法では、表面保護フィルム16bの遅相軸と第1の直線偏光板3Aの吸収軸とが平行又は垂直となるように配置しているので、第1の直線偏光板3Aによって生じた直線偏光の偏光状態が乱されることなく円偏光板1の検査をすることができる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では載置台22からの光の反射を抑制する反射抑制構造物として反射抑制用円偏光板20を用いたが、代わりに微細構造(例えばモスアイ構造)を施したものを用いてもよい。
【0043】
また、載置台22からの光の反射を抑えるために、図3に示した検査装置100Bのように、載置台22のうち検査光が当たる部分に貫通孔Hを設け、その下方に内部が空洞な立体構造物24を設けてもよい。この立体構造物24は例えば四面体であり、被検査物10を透過した光が貫通孔Hを通じて導かれる。立体構造物24の内面には、光を吸収する構造(例えば偏光板やモスアイ構造)が設けられており、一旦立体構造物24の内部に導かれた光が検出手段5に届くことはない。
【0044】
なお、検査装置100Bでは貫通孔Hが開いている部分が検査範囲であり、被検査物10を図示左右方向にスライドしながら検査を進行するのであるが、載置台22の貫通孔Hが設けられていない部分には反射抑制用円偏光板20が適用されている。これにより、検査光の指向性が低く検査範囲以外の部分に光が当たる場合でも、載置台22からの光の反射を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、円偏光板の品質検査に利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…円偏光板、2…光源、3A…第1の直線偏光板、3B…第2の直線偏光板、5…検出手段、9(9a,9b,9c)…光路、10…被検査物、11…偏光フィルム、12a,12b…保護フィルム、13…粘着剤層、14…位相差膜、15…粘着剤層、16a…剥離フィルム、16b…表面保護フィルム、20…反射抑制用円偏光板(反射抑制構造物)、22…載置台、24…立体構造物(反射抑制構造物)、100A,100B…検査装置、D,D’…欠陥、H…貫通孔。

図1
図2
図3