(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-04
(45)【発行日】2024-01-15
(54)【発明の名称】メチル6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレートの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/12 20060101AFI20240105BHJP
C07C 309/65 20060101ALI20240105BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20240105BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240105BHJP
A61P 43/00 20060101ALN20240105BHJP
A61K 31/40 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C07D207/12
C07C309/65 CSP
C07C69/76 Z
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/40
(21)【出願番号】P 2021512672
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073827
(87)【国際公開番号】W WO2020049153
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-08
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ラビオン
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・タバール
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴェーライ
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/140669(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/091153(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07C
A61P
A61K 31/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(2)を調製する方法であって:
【化1】
化合物(2)は、塩基形態または塩形態であり、化合物(3)の鈴木カップリングによって得られることを特徴とし、
【化2】
ここで、LGは、トリフラート基およびノナフレート基からなる群から選択される1つの脱離基を表し、
OrganoBがホウ素誘導体であり、Xが次式の(3S)-1-(3-フルオロプロ
ピル)-3-フェノキシピロリジン部分である、有機ホウ素試薬OrganoB-Xが用いられ:
【化3】
場合によっては、塩化反応が続く、
方法。
【請求項2】
前記有機ホウ素試薬が、(3S)-1-(3-フルオロプロピル)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジン)、対応する酸、またはそれらの塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有機ホウ素試薬が、試薬(1)、(2)および(3)から選択される、請求項2に記載の方法:
【化4】
【請求項4】
鈴木カップリングが、パラジウム錯体の存在下で実施される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記パラジウム錯体が、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
鈴木カップリングが、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドおよび炭酸セシウムの存在下、有機溶媒中で実施される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
化合物(3)中の脱離基LGが、トリフラート基を表す、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
化合物(2)が、鈴木カップリング後に行われる塩化反応によって、シュウ酸塩の形態で調製される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
化合物(2)のシュウ酸塩が、イソプロピルアセテート中でシュウ酸を用いて得られる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
化合物(3)が、脱離基LGによる化合物(4)の活性化によって得られる、請求項1~9のいずれかに記載の方法:
【化5】
【請求項11】
化合物(4)が、トリフレーション試薬によって、化合物(3’)へと活性化される、請求項10に記載の方法:
【化6】
【請求項12】
水素化ナトリウムが強塩基として使用され、DBUが触媒として使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
N-フェニルビストリフルイミドがトリフレーション試薬として、有機溶媒としてのMe-THF中で使用される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
化合物(4)が、メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキレートの、1-LG’-2,4-ジクロロベンゼンによるアルファ-アリール化によって得られ、LG’は脱離基を表す、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記脱離基LG’が、臭素またはヨウ素から選択される1つのハロゲン原子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アルファ-アリール化が、有機溶媒中で、触媒としてのパラジウム誘導体、配位子、および鉱物塩基の存在下で、実施される、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記パラジウム誘導体が、Pd(OAc)
2またはPd
2dba
3である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記鉱物塩基が、K
2CO
3、K
3PO
4、Cs
2CO
3またはtBuONaである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルファ-アリール化が、トルエン中で、触媒としてのPd
2dba
3及び配位子としての4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテンの存在下で実施される、請求項16~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
化合物(1)またはその薬学的に許容される塩を調製するための方法であって:
【化7】
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法によって、化合物(2)
を調製し:
【化8】
化合物(2)の鹸化により、化合物(1)を得ることを特徴とする、方法。
【請求項21】
LGは、トリフラート基およびノナフレート基からなる群から選択される1つの脱離基を表す、化合物(4)
または化合物(3)。
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、メチル6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレートを調製するための新規な方法、およびそのような方法に有用な新規な化合物が提供される。
【0002】
メチル6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレートは、6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボン酸メチルエステルとも呼ばれ、以下「化合物(2)」と表記され、6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-[4-[(3S)-1-(3-フルオロプロピル)ピロリジン-3-イル]オキシフェニル]-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボン酸(以下「化合物(1)」)の合成におけるN-1中間体である。実際、化合物(1)は、化合物(2)の鹸化によって得ることができる。
【背景技術】
【0003】
以下に示す化合物(1)は、エストロゲン受容体アンタゴニスト特性を有し、エストロゲン受容体のプロテアソーム分解を加速する、選択的エストロゲン受容体分解物(SERD)である。それは、特に抗がん剤として使用できる。この化合物は、特許文献1に開示されている。
【化1】
【0004】
医薬品の有効成分とその合成中間体については、工業的実施に更に適した新しい合成ルートを見つける必要が常にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書では、化合物(2)(化合物(1)のメチルエステル)を調製するための新規な方法を記載する:
【化2】
化合物(2)は化合物(3)の鈴木カップリングによって得られることを特徴とし、塩基形態または塩形態であり、LGは有機ホウ素試薬による脱離基を表し:
【化3】
場合によっては、塩化反応が続く。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書では、化合物(2)の調製のための方法が提供され:
【化4】
化合物(2)は化合物(3)の鈴木カップリングによって得られることを特徴とし、塩基形態または塩形態にあり、
【化5】
ここで、LGは脱離基を表し、
これは、有機ホウ素試薬OrganoB-Xによるものであり、OrganoBはホウ素誘導体であり、Xは次式の(3S)-1-(3-フルオロプロピル)-3-フェノキシピロリジン部分であり:
【化6】
場合によっては、塩化反応が続く。
【0008】
本明細書で提供される方法の実施形態において、上記の化合物(3)は、脱離基LGを有する化合物(4)の活性化によって得られる。
【化7】
【0009】
本明細書で提供される方法の別の実施形態において、上記の化合物(4)は、以下に定義される1-LG’-2,4-ジクロロベンゼンによって、メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレート(下記に化合物(5)として示される)のアルファ-アリール化によって得られる。
【化8】
【0010】
本発明によれば、LG’は任意の脱離基を表す。
一実施形態では、LG’は、式-0-S02-CnF(2n+1)の脱離基(n=1~4)、より具体的にはトリフラート(n=1の場合)またはノナフレート(n=4の場合)、または、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子、を表す。
1つの特定の実施形態において、1-LG’-2、4-ジクロロベンゼンは、1-Hal-2,4-ジクロロベンゼンであり、ここで、Halは、臭素またはヨウ素から選択されるハロゲン原子を表す。
【0011】
本明細書で提供される方法において、脱離基LGおよびLG’は、脱離基の特性を示し、その後の化学反応におけるさらなる置換を可能にする化学部分として定義される。
より具体的には、化合物(3)の脱離基LGは、化合物(4)のカルボニル官能基を活性化することによって得られる。化合物(4)におけるカルボニル官能基の従来の活性化反応は、当業者に知られているように使用することができる。
例えば、化合物(3)の脱離基LGは、ハロゲン原子またはアルキルまたはアリールスルファメート、アルキルまたはアリールホスフェートまたはアルキルまたはアリールスルホネート、特にハロゲン原子またはアルキルまたはアリールスルホネートであってもよい。
一実施形態では、化合物(3)の脱離基は、ハロゲン原子またはメシレート、トシレート、スルファメート、ホスフェートまたはトリフラート基であってもよい。
本発明の別の実施形態では、脱離基LGは、ハロゲン原子またはメシレート、トシレート、スルファメート、ホスフェート、トリフラートまたはノナフラート基である。
本発明の特定の実施形態において、脱離基LGは、トリフラートまたはノナフラート基である。
有利には、脱離基LGはトリフラート基(トリフルオロメタンスルホニル、式-0-S(0)2-CF3に対応する)である。
【0012】
本発明の文脈において、以下の用語は、本明細書全体を通して特に言及されない限り、以下の定義を有する。
・アルキル基:特に明記しない限り、1~6個の炭素原子を含む直鎖または分岐飽和炭化水素ベースの脂肪族基(「(Ci-C6)-アルキル」と表記)である。例として、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルおよびイソヘキシル基などが述べられてもよいが、これらに限定されない。前記基は、部分的または完全にフッ素原子によって置換されていてもよく、パーフルオロメチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチルなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
・アリール基:フェニル、ナフチルまたは置換フェニルであり、ここで、置換フェニルは、1つまたは複数の水素が、ハロゲン原子、アルキル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アリール、ヘテロアリールおよびトリフルオロメチル基などの、同じまたは異なる置換基で置換されているフェニル基として定義されるが、これらに限定されない。
【0013】
したがって、本明細書で提供される方法の実施形態において、化合物(4)は化合物(3’)へと活性化される。ここで、化合物(3’)は、LGがトリフラート基を表す化合物(3)として定義されている。化合物(4)の化合物(3’)への活性化は、トリフレーション反応である。
【化9】
【0014】
このような反応では、N-フェニルビストリフルイミドまたはトリフリック無水物などのトリフレーション試薬が使用される。
好ましくは、N、N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリンとしても知られるN-フェニルビストリフルイミドは、トリフレーション試薬として使用される。この試薬は、化合物(4)に対してわずかに過剰な量、例えば約1.3eq.(当量)で使用される。
適切なトリフレーション媒体は、当業者に知られているように、使用されるトリフレーション試薬に依存する。
【0015】
トリフレーション反応は、適切な有機溶媒、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、Me-THF(メチル-テトラヒドロフラン)、アセトニトリル、ジオキサン、またはトルエンとMe-THFの混合物中で行われる。好ましくは、Me-THFが有機溶媒として使用される。
トリフレーション反応は、好ましくは、トリフレーション試薬としてN-フェニルビストリフルイミドを用いて、有機溶媒としてMe-THF中で行われる。トリフレーション反応の温度は、好ましくは、0℃から室温の間で選択される。
トリフレーション反応は、強塩基、例えば水素化ナトリウム(NaH)、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド(KHMDS)、またはBEMP(2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン)またはBTPP(tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン)などのホスファゼン塩基によって行われる。好ましくは、水素化ナトリウムが強塩基として使用される。
【0016】
NaHを強塩基として使用する場合、トリフレーション反応は、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)またはDBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン)などの触媒を使用して実行される。好ましくは、DBUが触媒として使用される。
好ましくは、トリフレーション反応は、強塩基として水素化ナトリウムを使用し、触媒としてDBUを使用して実行される。好ましくは、触媒量のDBUおよび化学量論量のNaH(約1.0~1.1当量など)、または化学量論以下の量のNaH(約0.7~0.8当量)および化学量論量のDBU(約1.0-1.2当量)がトリフレーション反応(約0.2当量など)に使用される。
【0017】
トリフレーション反応の後には、好ましくは、方法の次のステップを実行する前に、当業者に知られている結晶化技術に従って得られた生成物の結晶化が続き、99%以上の純度レベルなどの高純度で化合物(3)が得られる。このような結晶化ステップは、例えば、アセトニトリル、tert-アミルアルコール、ヘプタンまたはジイソプロピルエーテル中で実施することができる。好ましくは、結晶化はアセトニトリル中で行われる。アセトニトリル中での結晶化は、好ましくは0℃で実施され、その後、約45℃で乾燥することができる。
【0018】
本明細書で提供される方法の実施形態において、化合物(4)を生成するための化合物(5)のアルファアリール化は、共に市販の反応物である、1-ヨード-2,4-ジクロロベンゼンまたは1-ブロモ-2,4-ジクロロベンゼンを用いて実施される。好ましくは、1-ブロモ-2,4-ジクロロベンゼンがアルファ-アリール化反応物として使用される。
このアルファアリール化ステップは、触媒としてのパラジウム誘導体、アルファアリール化反応のための適切な配位子、および鉱物塩基の存在下で、有機溶媒中で実施することができる。
【0019】
好ましくは、アルファアリール化ステップは、有機溶媒として、キシレン、トルエン、ブチルアセテート、イソプロピルアセテートまたはTHF中で、触媒として、パラジウム(II)アセテート(Pd(OAc)2)またはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2dba3)、および配位子として、キサントホス(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)を用いて、実施される。あるいは、Pd2dba3を触媒として使用する場合、DPEPhos(ビス[(2-ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテル)を配位子として使用することができる。アルファアリール化ステップで使用するための別の可能なパラジウム誘導体は、[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(PdCl2(dtbpf))である。 好ましくは、アルファアリール化ステップは、有機溶媒としてトルエン中で、触媒としてPd2dba3を使用して実行される。これらの条件下で、還流加熱を適用することができる。
好ましくは、アルファアリール化ステップは、K2CO3、K3PO4、CS2CO3およびtBuONaなどの鉱物塩基の存在下で実施される。鉱物塩基は、好ましくは、化合物(5)に対して、1.5から4当量(eq.)、より具体的には、2.5~4eq.などのように、過剰に存在する。
【0020】
本明細書で提供される方法において、化合物(3)に適用されて化合物(2)を生成する鈴木反応は、有機ホウ素試薬および遷移金属ベースの触媒、好ましくはパラジウムベースの触媒を使用するカップリング反応として定義される。
好ましくは、本明細書で提供される方法の鈴木カップリングステップで使用するための有機ホウ素試薬は、試薬(1)すなわち特許出願WO2017/140669に記載されている、(3S)-1-(3-フルオロプロピル)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジンであるか、または試薬(1)のエステル部分の加水分解によって得られる、対応する酸(以下に示すように試薬(2)と名付けられている)であるか、またはボロン酸の塩化あるいは二フッ化水素カリウム(KHF2)による試薬(2)または(1)のエステル部分によって得られる、トリフルオロホウ酸カリウム塩(以下に示すように試薬(3)と名付けられている)のようなそれらの塩である:
【0021】
【0022】
(3S)-1-(3-フルオロプロピル)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2]-イル)フェノキシ]ピロリジン(試薬(1))の調製に関する特許出願WO2017/140669の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で提供される方法の鈴木カップリングステップで使用するための有機ホウ素試薬は、好ましくは、化合物(3)に対して等モル量(すなわち、約1当量)で使用される。
本明細書で提供される方法の鈴木カップリングステップで使用するためのパラジウムベースの触媒は、好ましくは、式PdCl2(PPh3)2のパラジウム錯体ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドである。
それは触媒量で、例えば約0.05当量で、使用される。
本明細書で提供される方法の鈴木カップリングステップに適した反応媒体は、当業者に知られているように、使用される特定の試薬に依存する。
ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリドを触媒として使用する場合、反応は、好ましくは、炭酸セシウム(CS2CO3)などの無機塩基を用いて、水/アセトニトリル(CH3CN)混合物などの有機溶媒中で実施される。
【0023】
本明細書で提供される方法の実施形態では、鈴木カップリングステップの後に、化合物(2)を塩の形態で、好ましくはシュウ酸塩の形態で得るために、塩化反応を実施することができる。
したがって、鈴木カップリングステップの後に、例えば、化合物(2)のシュウ酸塩または化合物(2)のジベンゾイル酒石酸塩を得るための塩化反応を行うことができる。
化合物(2)のシュウ酸塩は、アセテート溶媒(例えば、エチルアセテートまたはイソプロピルアセテート)などのエステル型溶媒、MTBE(メチル-tert-ブチルエーテル)またはジイソプロピルエーテルなど)などのエーテル型溶媒、およびトルエンから選択される溶媒中で、シュウ酸を用いて得ることができる。
好ましくは、化合物(2)のシュウ酸塩は、加熱下(例えば、約70℃)で、イソプロピルアセテート中でシュウ酸を用いて得られる。
【0024】
化合物(2)のジベンゾイル酒石酸塩は、トルエンおよびヘプタン中で、ジベンゾイル酒石酸((2R、3R)-2,3-ジベンゾイルオキシブタン二酸とも呼ばれる)を用いて得ることができる。
上記の化合物(2)の「塩化」という用語は、化合物(2)を沈殿させることを可能にする塩の形成を指す。
特にシュウ酸塩の場合、このような塩化ステップにより、反応混合物から化合物(2)を高純度で回収することができる。それはまた、反応混合物から化合物(2)を高純度で回収するためのカラムクロマトグラフィーの使用を回避することも可能にする。
塩を形成するこのような合成ルートは、工業規模および化合物(2)の貯蔵に特に便利である。
化合物(2)のジベンゾイル酒石酸塩は約93%の純度で沈殿し、化合物(2)のシュウ酸塩は98%以上の純度レベルで沈殿する。
【0025】
このテキストはまた、シュウ酸塩の形態で化合物(2)を説明している:
【化11】
【0026】
このテキストはまた、ジベンゾイル酒石酸塩の形態の化合物(2)を記載している:
【化12】
【0027】
上記の説明を考慮して、化合物(2)の調製のために本明細書で提供される方法の実施形態は以下のスキーム1に表され、ここで、LG’およびLGは、上記で定義された通りである。
【化13】
【0028】
化合物(2)の調製のために本明細書で提供される方法の別の実施形態は、以下のスキーム2に表され、ここで、LG’は上で定義された通りである:
【化14】
【0029】
化合物(2)は鹸化反応を進行させることができ、それにより、エステル官能基の加水分解は、対応する酸官能基を生じて、化合物(1)を産出する。このような鹸化反応は、当業者に知られている条件下、すなわち、塩基性媒体、好ましくは塩基として水酸化ナトリウムを用いて、そして、有機溶媒、好ましくはメタノールなどのアルコール溶媒中で行うことができる。エステル部分の加水分解を促進するために、例えば約60℃で、鹸化反応中に加熱が与えられる。このような鹸化反応は、特許出願WO2007/140669に記載されている。
化合物(2)の塩形態が使用される場合には、鹸化反応を実施する前に、例えば炭酸カリウムの水溶液を使用して、化合物(2)の遊離塩基が調製される。
【0030】
化合物(1)またはその薬学的に許容される塩の調製のための方法も、本明細書において提供される:
【化15】
化合物(2)の鹸化による:
【化16】
ここで、化合物(2)は、上記の方法によって得られる。
【0031】
化合物(4)、(3)および(3’)も本明細書で提供され、ここで、LGは、上記のような脱離基を表す:
【化17】
化合物(4)、(3)および(3’)は、化合物(2)の調製における新規中間体として有用である。
【0032】
本明細書で提供される化合物(2)の調製方法は、これまでに知られている化合物(2)の他の合成方法よりも少ない反応ステップを含むので、工業的実施に特に好ましく、これは特許出願WO2007/140669に記載されている。
【0033】
以下のスキーム3は、WO2017/140669に記載されている化合物(2)の合成のための最短の方法を示している。スキーム3では、各中間体は、上記の国際特許出願で提供されているのと同じ名前で示されている。スキーム3に示される、市販の中間体2-メトキシ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-5-オンから出発する、この方法は、以後「ルートA」と称される。
【化18】
【0034】
スキーム3に示されているルートA下で、化合物(2)は、メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレート(同じ化合物が本明細書において「化合物(5)」として、およびWO2007/140669における「中間体(A5)」として指定されている)から出発して4ステップで得られている。したがって、本明細書で提供される化合物(2)の調製の方法は、ルートAと比較して、メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレートから出発してわずか3ステップでこの化合物を得ることができる。
【0035】
化合物(2)の合成の第2の方法は、WO2017/140669に記載されており、上記のスキーム3と同じ中間体2-メトキシ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-5-オンおよび中間体(A2)から出発している。化合物(2)のこの第2の合成方法は、以下のスキーム4に示され、そこでは、各中間体は、特許出願WO2017/140669で提供されるのと同じ名前で指定されている。スキーム4下のこの方法は、以後「ルートB」と称される。
【化19】
【0036】
したがって、スキーム4下での化合物(2)の調製方法は、スキーム3下での方法よりもはるかに多くの反応ステップを伴うように見える。
したがって、本明細書で提供される化合物(2)の合成のための新しい方法は、WO2017/140669に記載されるように、ルートAおよびBの両方と比較して、ステップ数の点で短い。
【実施例】
【0037】
以下に、本明細書で提供される新しい合成方法による、化合物(2)の合成のための手順の例を説明する。
【0038】
実施例1:有機ホウ素誘導体「試薬(1)」の調製
本明細書で提供される化合物(2)の合成方法の鈴木カップリングステップにおいて有用な試薬(1)の調製は、特許出願WO2017/140669から複製された以下のスキーム5に示されている。
【化20】
【0039】
スキーム5によれば、市販の化合物(a)(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール)をテトラヒドロフラン(THF)中で、(R)-1-N-Boc-3-ヒドロキシピロリジン上で、カップリング剤としてN,N,N’,N’-テトラメチルアゾジカルボキサミドを用いて、室温で縮合させる。
ステップ2によれば、このようにして得られた化合物(c)は、酸性剤、例えばジオキサン中のHCl 4Nの溶液を用いて、室温でメタノール(MeOH)中でN脱保護される。
次に、ピロリジン窒素のアルキル化は、化合物(d)を、対応する1,1-二置換 1-ハロゲノ-3-フルオロプロパン、例えば1-ヨード-3-フルオロプロパンと、アセトニトリル中で、炭酸カリウム(K2CO3)の存在下、約40℃で反応させることにより、ステップ3下で実施される。
【0040】
スキーム5のステップ1から3は、以下の詳細な手順によって示される。
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance DRX-400分光計上で、303Kの温度で2.50ppmに参照された溶媒ジメチルスルホキシド-d6(dDMSO-d6)中の化学シフト(ppm単位のδ)によって、実行された。結合定数(J)はヘルツ単位で与えられる。
液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)データは、UPLC Acquity Waters instrument、光散乱検出器Sedere、およびSQDWaters質量分析計、UV検出DAD210<l<400nmおよびカラムAcquityUPLC CSH C18 1.7μm、寸法2.1×30mm、移動相H20+0.1%HCO2H / CH3CN+0.1%HCO2Hを使用して取得した。
【0041】
化合物(c)。 Tert-ブチル(3S)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジン-1-カルボンキシレート。
【化21】
【0042】
THF(2L)中の4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール(a)(82.7g、364.51mmol)の溶液に、アルゴン下で、(R)-1-N-Boc-3-ヒドロキシピロリジン(b)(84.43g、437.41mmol)が、続いてN,N,N’,N’-テトラメチルアゾジカルボキサミド(99.1g、546.77mmol)が、加えられた。透明な反応混合物がオレンジに変わり、トリフェニルホスフィン(143.41g、546.77mmol)が加えられた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、その間にトリフェニルホスフィンオキシドの沈殿物(Ph3P=O)が形成された。反応混合物を水(1.5L)に注ぎ、エチルアセテート(AcOEt)(3×1.5L)で抽出した。集められた有機相をマグネシウムサルフェート(MgSO4)で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。残留物を採取してジイソプロピルエーテル(1.5L)に入れ、形成された固体(Ph3P=O)を濾過した。溶媒を減圧下で濃縮し、残留物を、カラムクロマトグラフィーによってヘプタンとAcOEtとの混合物(90/10;v/v)で溶出して精製し、145g(100%)のtert-ブチル(3S)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジン-1-カルボキシレート(c)を無色の油として得た。
【0043】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6,δppm):1.27(s,12H);1.39(s,9H);2.05(m,1H);2.14(m,1H);3.37(3H);3,55(m,1H);5.05(s,1H);6.94(d,J=8.4Hz,2H);7.61(d,J=8.4Hz,2H).
【0044】
化合物(d)。(3S)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジン、塩酸塩。
【化22】
【0045】
MeOH(450ml)中の(S)-tert-ブチル3-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)ピロリジン-1-カルボキシレート(c)(80g、195.23mmol)の溶液に、ジオキサン(250ml)中のHCl 4Nを、ゆっくりと加えた。
1.5時間後、反応混合物を減圧下で濃縮し、残留物を撹拌しながらEt2Oに取り、固体を得、次にこれを濾過し、真空下で乾燥させて、化合物(d)61.8g(95%)を白色粉末として得た。
【0046】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6、δppm):1.28(s:12H);2.10(m:1H);2.21(m:1H);3.31(3H);3.48(m、:1H);5.19(m:1H);6.97(d、J=8.4Hz:2H);7.63(d、J=8.4Hz:2H);9.48(s:1H);9.71(s:1H)。
LC/MS(m/z、MH+):290
【0047】
試薬(1)。 (3S)-1-(3-フルオロプロピル)-3-[4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ]ピロリジン
【化23】
【0048】
アセトニトリル(100ml)中の(S)-3-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノキシ)ピロリジン塩酸塩(d)(20g、61.42mmol)の懸濁液に、K2CO3(21.22g、153.54mmol)と1-ヨード-3-フルオロプロパン(12.15g、61.42mmol)をアルゴン下で加えた。反応混合物を40℃で24時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応混合物を濾過し、アセトニトリルで洗浄した。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をDCMに取り、形成された固体を濾過し、DCMで洗浄した。濾液を濃縮して、試薬(1)21.5g(100%)を黄色の泡として得た。
【0049】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6,δppm):1.27(s,12H);1.77(m,2H);1.84(m,1H);2.27(m,1H);2.41(m,1H);2.49(2H);2.62(dd,J=2,6および10,4Hz,1H);2.69(m,1H);2.83(dd,J=6.2および1.4Hz,1H);4.47(td,J=6.2および47Hz,2H);4.99(m,1H);6.77(d,J=8.4Hz,2H);7.58(d,J=8.4Hz,2H)。
LC/MS(m/z、MH+):350
【0050】
実施例2:カルボキシメトキシ-ベンゾスベロン(5)からの化合物(2)の合成
中間体と最終化合物の番号付け(2)、(3’)、(4)、および(5)は、前述のスキーム2を参照している。
1番目のステップS1では、化合物(5)(カルボキシメトキシベンゾスベロン)の5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロベンゾ[7]アヌレンのコアが、還流トルエン中で、炭酸カリウムの存在下で、1-ブロモ-2,4-ジクロロベンゼンのパラジウム触媒カップリングを介して6位でアリール化され、シリカゲル濾過後にMe-THF溶液として単離される2,4-ジクロロフェニル前駆体(4)を生成する。
2番目のステップS2では、化合物(4)の原Me-THF溶液を、N-フェニル-ビス-トリフルイミドと、触媒DBUおよび過剰の水素化ナトリウムの存在下で反応させる。水洗およびアセトニトリルへの溶媒交換後、目的のトリフラート化合物(3’)を結晶化により白色固体として単離する。
3番目のステップS3では、環状エノールトリフラート(3’)は、前述のように、炭酸セシウムを塩基として用いて、アセトニトリル/水混合物中40±3℃で実行される、パラジウムで触媒された鈴木反応を介して、キラルなボロン酸エステル「試薬(1)」にカップリングされる。水性の後処理とイソプロピルアセテートとの溶媒交換の後、パラジウム残渣は、連続したエチレンジアミン、木炭、およびジメルカプトトリアジンのグラフト化シリカ処理によって除去される。化合物(2)の粗シュウ酸塩は、イソプロピルアセテート中での結晶化によって単離される。
【0051】
これらの手順は、以下の詳細な手順によって示されている。
1H NMRスペクトルは、300または400MHzのBruker Avance分光計上で、303Kの温度において2.50ppmで参照された、溶媒ジメチルスルホキシド-d6(dDMSO-d6)の化学シフト(ppm単位のδ)によって、実行された。結合定数(J)はヘルツ単位で与えられた。
液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)データは、UPLC-SQD Waters instrument、蒸発光散乱検出器Sedere、およびUV検出DAD 210<l<400nmとカラムAcquity UPLC CSH C18 1.7pm、寸法2.1×50mm、移動相H20+0.1%HCO2H/CH3CN+0.1%HCO2Hを使用したSQD Waters質量分析計で取得した。
【0052】
2.1:ステップS1とS2の連結
メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレート(5)(40g)、炭酸カリウム(K2CO3、40~101g、すなわち1.5~4当量)、ブロモ-ジクロロベンゼン(62.1g)、キサントホス(21.2g)およびPd2dba3(8.39g)の脱気混合物を、トルエン(320ml)中、窒素下で還流し、完了するまで激しく攪拌する。
室温まで冷却した後、不溶性物質を、シリカパッド(80g)上で濾過し、続いてフィルターをトルエン(600ml)で洗浄することにより除去する。トルエンを濾液から蒸留除去し、そして、Me-THFで交換して、MeTHF(400ml)中にα-アリール化生成物(4)(メチル6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレート)を生成して、次のステップでそのまま使用する。
純粋な生成物(4)のサンプルは、アリコート(溶離液:ジクロロメタン-ヘプタン)のシリカゲルクロマトグラフィーによって分離された。
【0053】
単離された化合物(4)の1H NMR(400MHz、ppm単位のDMSO-d6):1.77(m、1H)2.00(m、1H);2.18(m、2H);3.08(m、1H);3.20(m、1H);3.89(s、3H);4.46(dd、J=11.3、3.7Hz、1H);7.46(m、2H);7.59(d、J=2.0Hz、1H);7.64(d、J=7.9Hz、1H);7.91(dd、J=8.0、1.4Hz、1H);7.94(s、1H)。
LC/MS([M+H]+):363
【0054】
ステップS1で得られた化合物(4)のMe-THF溶液(スケール:化合物(4)40g)に、N、N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(80g)を加える。得られた溶液を、0℃で、撹拌しながら、DBU(5ml)を含むNaH(10g-60%油中分散液)のMe-THF(200ml)懸濁液に、滴下する。反応混合物を、完了するまで室温で撹拌する。
0℃に冷却した後、酢酸(4ml)、続いて水(400ml)を滴下して加える。水相を室温で分離し、有機相を希釈した塩化ナトリウム水溶液(NaCl、0.6M;3×400ml)で洗浄する。Me-THFを蒸留除去し、アセトニトリルで交換する。不溶性物質を熱アセトニトリル中での濾過により除去した後、化合物(3’)(メチル6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレート)を250mlのアセトニトリル中で結晶化し、濾過および冷アセトニトリルおよびヘプタンでの洗浄により単離して、61.2gの純粋なトリフラートを白色の固体として得る。
収率:67.4%(S1およびS2の2ステップにおいて)。
【0055】
1HNMR(400MHz,ppm単位のDMSO-d6):2.18(m,2H);2.41(m,2H);2.95(m,2H);3.90(s,3H);7.55(m,2H);7.68(d,J=8Hz,1H);7.80(d,J=1.8Hz,1H)8.01(m,2H)。
LC/MS(Elm/z):494+
化合物(3’)の純度:99.0%、HPLCで測定:
.移動相:水/アセトニトリル/HCOOH;
.固定相:XSelect CSH C18-3.5pm(Waters)または同等のもの;
.カラム長:100mm;
.カラム内径:4.6mm;
.流量:1mL/分;
.注入量:10pL;
.検出:254nm(UV)。
【0056】
2.2:ステップS3
トリフラート(3’)(20g)、ボロン酸エステル「試薬(1)」(14.1g)、CS
2CO
3(19.7g)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1.4g)、水(100ml)およびアセトニトリル(260ml)の脱気混合物を、40℃、窒素下で撹拌する。変換が完了した後、反応媒体を室温に冷却し、イソプロピルアセテート(100ml)を加え、水相を分離する。有機相を希釈したNaCl水溶液(0.3M;2×200ml)で洗浄し、イソプロピルアセテートとの共沸蒸留によって乾燥させ、続いてエチレンジアミン、木炭およびジメルカプトトリアジングラフト化シリカで処理して、パラジウム残渣を除去する。
得られた化合物(2)の溶液、すなわち6-(2,4-ジクロロフェニル)-5-{4-[1-(3-フルオロ-プロピル)-ピロリジン-3-イルオキシ]-フェニル}-8,9-ジヒドロ-7H-ベンゾシクロヘプテン-2-カルボン酸メチルエステルを、イソプロピルアセテート中で、200mlに調整して、70℃に加熱し、イソプロピルアセテート(43ml)中のシュウ酸(3.6g)溶液を、撹拌しながら滴下する。シード化(従来の結晶化技術によって製品の別のバッチで以前に準備されたシードを使用して)および0℃に冷却した後、以下に示す化合物(2)の目的のシュウ酸塩が結晶化し、濾過によって70%の収率(18.6gの白い粉)で分離される:
【化24】
【0057】
1H NMR(400MHz,ppm単位のDMSO-d6):7.92(d,J=2.0Hz,1H);7.78(dd,J=8.0及び2.0Hz,1H);7.59(d,J=2.2Hz,1H);7.29(dd,J=8.3及び2.2Hz,1H);7.22(d,J=8.3Hz,1H);6.90(d,J=8.0Hz,1H);6.78(d,J=9.0Hz,2H);6.73(d,J=9.0Hz,2H);4.98(m,1H);4.50(dt,J=47.2及び5.7Hz,2H);3.86(s,3H);3.49(dd,J=12.8及び5.8Hz,1H);3.38~3.08(m,5H);2.94(t,J=5.0Hz,2H);2.34(m,1H);2.23~2.11(m,3H);2.07~1.93(m,2H)。
LC/MS([M+H]+):568
化合物(2)の純度、シュウ酸塩:98.2%は、上記のステップS2で説明したのと同じ条件下でHPLCによって測定。
【0058】
実施例3:ステップS1の代替手順
3.1:代替1
tert-ブトキシドナトリウムの2MTHF溶液(19.48ml)を、60℃で、化合物(5)(5g)、1-ブロモ-2,4-ジクロロベンゼン(7.76g)、パラジウムアセテート(257mg)、キサントホス(660mg)およびTHF(20ml)を含む脱気混合物に滴下する。反応物を完了するまで60℃で加熱し、室温に冷却し、モルKH2PO4水溶液でクエンチする。エチルアセテート抽出、水洗浄、およびシリカゲルクロマトグラフィーによる精製の後に、化合物(4)を70%の収率および92%の純度で単離する。
【0059】
1H NMR(400MHz,ppn単位のDMSO-d6):1.78(m,1H);2.01(m,1H);2.19(m,2H);3.10(m,1H);3.22(m,1H);3.89(s,3H);4.47(dd,J=11.3,3.6Hz,1H);7.47(m,2H);7.61(d,J=1.8Hz,1H);7.65(d,J=7.9Hz,1H);7.92(d,J=7.7Hz,1H);7.95(s,1H)。
LC/MS([M+H]+):363
【0060】
3.2:代替2
化合物(5)(0.5g)、1-ヨード-2,4-ジクロロベンゼン(0.76ml)、トルエン(9ml)、水(1ml)、CS2CO3(1.05g)、パラジウムアセテート(50mg)およびキサントホス(250mg)を含む脱気混合物を、約22時間、還流するように加熱する。室温まで冷却した後、有機相をジクロロメタンで希釈し、水で洗浄し、シリカゲルでのクロマトグラフィーにより精製して、730mg(87%)の白色固体を得る。
【0061】
1H NMR(400MHz,ppm単位のDMSO-d6):1.78(m,1H);2.01(m,1H);2.19(m,2H);3.09(m,1H);3.21(m,1H);3.89(s,3H);4.47(dd,J=11.3,3.7Hz,1H);7.47(m,2H);7.60(d,J=2.0Hz,1H);7.64(d,J=8.1Hz,1H);7.92(dd,J=7.9,1.5Hz,1H);7.95(s,1H)。
【0062】
実施例4:ステップS2の代替手順
3.1:代替1
カリウムビス-トリメチルシリルアミドの0.5MのTHF溶液(7.70ml)を、-50℃で、THF(18ml)中の化合物(4)(1g)とN-フェニルビス-トリフルイミド(1.22g)の混合物に滴下して加える。室温まで温めた後、反応媒体を0~5℃の水でクエンチし、ジクロロメタン、続いてエチルアセテートで抽出し、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン-ヘプタン)で精製して、所望の化合物(3’)を、収率80%、LC/MSで測定した純度90%で得る。
【0063】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6(ppm)):2.18(m,2H);2.41(m,2H);2.95(m,2H);3.89(s,3H);7.55(m,2H);7.68(d,J=8.1Hz,1H);7.80(d,J=1.7Hz,1H);8.01(m,2H)。
LC/MS([M+H]+):494
【0064】
3.2:代替2
DBU(247μl)を、0~5℃で、アセトニトリル(2ml)中に化合物(4)(500mg)、およびN、N-ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アニリン(639mg)を含む懸濁液に、滴下する。
室温で22時間撹拌した後の転化率は約80%である。反応混合物を0~5℃に冷却し、水素化ナトリウム(27.5mgの60%油中分散液)を加える。室温で1.5時間撹拌した後、変換率は約100%である。得られた懸濁液を0~5℃に冷却し、濾過し、予冷したアセトニトリル(0.5ml)、続いて水(2ml)で洗浄して、460mgの化合物(3’)を、LC/MSで測定した純度98%の白色粉末(収率:67.5%)として得た。
【0065】
1H NMR(400MHz,ppm単位のDMSO-d6):2.18(m,2H);2.42(m,2H);2.95(m,2H);3.90(s,3H);7.55(m,2H);7.68(d,J=7.9Hz,1H);7.82(s,1H);8.02(m,2H)。
【0066】
上記の例に示されるように、本明細書で提供される化合物(2)の新しい合成方法は、化合物(5)から化合物(2)まで、約33~49%の全体的な収率を可能にする。これは、スキーム3に記載の前述の合成方法で見られるものよりも高い収率であり、化合物(2)を得るための収率は、同じ化合物メチル5-オキソ-6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾ[7]アヌレン-2-カルボキシレートから出発する場合、約26%である。
また、本明細書で提供される新しい合成方法により、鈴木カップリングスステップ後に、既知の合成ルートで必要とされていたが工業レベルで適用可能な合成ルートを求める場合には適切ではないカラムクロマトグラフィーを実行する必要なしに、化合物(2)を良好な収率で得ることができる。