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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/36 20060101AFI20240109BHJP
   C10G 9/36 20060101ALI20240109BHJP
   C01B 32/40 20170101ALI20240109BHJP
【FI】
C01B3/36
C10G9/36
C01B32/40
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022542477
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2021018397
(87)【国際公開番号】W WO2022164006
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0013204
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン、スン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ウー
(72)【発明者】
【氏名】キ、シク
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0203130(US,A1)
【文献】特開2008-050303(JP,A)
【文献】特表2020-517797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 3/38
C01B 32/40
C10G 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリーム、および熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを混合して混合油ストリームを生成するステップ(S10)と、
前記混合油ストリームをガス化工程のための燃焼室に供給するステップ(S20)とを含み、
前記混合油ストリームの単位時間当たりの流量の重量(kg/h)に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの単位時間当たりの流量の重量(kg/h)の比率は0.01~0.3である、合成ガスの製造方法。
【請求項2】
前記混合油ストリームの単位時間当たりの流量の重量(kg/h)に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの単位時間当たりの流量の重量(kg/h)の比率は0.05~0.2である、請求項1に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項3】
前記混合油ストリームは、燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下であり、
前記混合油ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上高い、請求項1または2に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項4】
前記混合油ストリームは、燃焼室への供給時点での動粘度が1cSt~300cStであり、
前記混合油ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃~150℃高い、請求項3に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項5】
前記混合油ストリームを前記燃焼室に供給する前に熱交換器を通過させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項6】
前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点の温度は20℃~90℃である、請求項1から5のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項7】
前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上含み、
前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項8】
前記PGOストリームは、40℃での動粘度が1~200cStであり、
前記PFOストリームは、40℃での動粘度が400~100,000cStである、請求項1から7のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項9】
前記PGOストリームの引火点は10~50℃であり、
前記PFOストリームの引火点は70~200℃である、請求項1から8のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項10】
前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の側部から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパーに供給した後、前記第1ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームであり、
前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程のガソリン精留塔の下部から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパーに供給した後、前記第2ストリッパーの下部から排出された下部排出ストリームである、請求項1から9のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項11】
前記ガソリン精留塔の下部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して90%以上の段から排出され、
前記ガソリン精留塔の側部排出ストリームは、前記ガソリン精留塔の全体の段数に対して10%~70%の段から排出される、請求項10に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項12】
前記燃焼室に供給された混合油ストリームを700℃以上の温度で燃焼させるステップ(S30)をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項13】
前記(S20)ステップにおいて、前記混合油ストリームをガス化剤とともに前記燃焼室に供給する、請求項1から12のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項14】
前記ガス化剤は、酸素、水蒸気および空気からなる群から選択される1種以上を含む、請求項13に記載の合成ガスの製造方法。
【請求項15】
前記合成ガスは、一酸化炭素および水素を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の合成ガスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月29日付けの韓国特許出願第10-2021-0013204号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、合成ガスの製造方法に関し、より詳細には、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することができる合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
合成ガス(synthesis gas、syngas)は、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0004】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素と一酸化炭素からなる合成ガスに変換させる工程である。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼性能を低下させるか、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0005】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用するために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には、硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。
【0006】
一方、ナフサを分解して、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎素材を製造する工程であるNCC(Naphtha Cracking Center)工程から排出される副生成物である熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は、一般的に燃料として使用されているが、硫黄の含量が、前処理なしに燃料として使用するには高い水準であり、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後、販売が不可能な状況に備えなければならない状態である。
【0007】
したがって、本発明者らは、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することが可能であれば、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて、温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、前記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替し、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて、温室ガスの排出が低減することができ、ガス化工程の運転費用が減少し、工程効率が向上することができる合成ガスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、ナフサ分解工程(NCC)から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリーム、および熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを混合して混合油ストリームを生成するステップ(S10)と、前記混合油ストリームをガス化工程のための燃焼室に供給するステップ(S20)とを含み、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率は0.01~0.3である合成ガスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ナフサ分解工程(NCC)の熱分解燃料油(PFO)をガス化工程の原料として代替することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて、温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
図2】本発明の比較例1および5による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
図3】本発明の比較例4および8による合成ガスの製造方法に関する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0013】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、配管内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得、前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0014】
本発明において、「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C4」という用語は、4個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C4+」という用語は、4個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0015】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明について、図1を参照してより詳細に説明する。
【0016】
本発明によると、合成ガス(synthesis gas、syngas)の製造方法が提供される。前記合成ガスの製造方法は、下記の図1を参照すると、ナフサ分解工程S1から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)を含むPFOストリーム、および熱分解ガス油(Pyrolysis Gas Oil、PGO)を含むPGOストリームを混合して混合油ストリームを生成するステップ(S10)と、前記混合油ストリームをガス化工程(S3)のための燃焼室に供給するステップ(S20)とを含み、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率は、0.01~0.3であることができる。ここで、「流量」は、単位時間当たりの重量の流れを意味し得る。具体的な例として、前記流量の単位は、kg/hであることができる。
【0017】
前記合成ガスは、油田と炭鉱地域の地から噴出する自然性ガス、メタンガス、エタンガスなどの天然ガスとは異なり、人工的に製造されたガスであり、ガス化(gasification)工程を経て製造される。
【0018】
前記ガス化工程は、石炭、石油、バイオマスなどの炭化水素を原料として、熱分解や、酸素、空気、水蒸気などのガス化剤と化学反応させて、主に水素および一酸化炭素からなる合成ガスに変換させる工程である。このようなガス化工程の最前段に位置する燃焼室には、ガス化剤および原料が供給されて700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成するが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が高いほど、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧(atomizing)がスムーズに行われず燃焼の性能を低下させたり、酸素過剰による爆発の恐れを高める。
【0019】
従来、液体相の炭化水素(Hydrocarbon)原料を用いて合成ガスを製造するためのガス化工程の原料としては、原油を精製する精油工場(refinery)から排出される減圧残渣油(vacuum residue、VR)、バンカーC油(bunker-c oil)などの精油残渣油(refinery residue)を主に使用していた。しかし、このような精油残渣油は、動粘度が高くて、ガス化工程の原料として使用されるために、粘度緩和のための熱処理、希釈剤または水の添加などの前処理が必要なだけでなく、精油残渣油には硫黄および窒素の含量が高くて、ガス化工程中に硫化水素などの酸性ガスおよびアンモニアの発生量が高くなるため、強化した環境規制に対応するためには、硫黄および窒素の含量が低い原料で精油残渣油を代替する必要性が高まっている状況である。例えば、前記精油残渣油のうち、減圧残渣油には、約3.5重量%の硫黄と、約3600ppmの窒素が含まれ、バンカーC油には、約4.5重量%の硫黄が含まれることができる。
【0020】
一方、ナフサを分解して、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎素材を製造する工程であるナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(Pyrolysis Fuel Oil、PFO)は、一般的に燃料として使用されているが、硫黄の含量が、前処理なしに燃料として使用するには高い水準であるため、環境規制によって販路が次第に狭くなっており、今後、販売が不可能な状況に備えなければならない状態である。
【0021】
したがって、本発明では、ナフサ分解工程から排出される熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームと熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを特定の比率で混合して混合油ストリームを生成した後、前記混合油ストリームを前記ガス化工程の原料として代替することで、従来の精油残渣油を原料として使用する場合に比べて、温室ガスの排出を低減し、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させようとした。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームおよび前記熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームは、ナフサ分解工程S1から排出されることができる。
【0023】
具体的には、前記ナフサ分解工程は、パラフィン(paraffin)、ナフテン(naphthene)および芳香族化合物(aromatics)を含むナフサ(naphtha)を分解して石油化学基礎素材として使用されるエチレン、プロピレンなどのオレフィン(olefin)を製造する工程であり、ナフサ分解工程は、大きく、分解工程、急冷工程、圧縮工程および精製工程からなることができる。
【0024】
前記分解工程は、ナフサを800℃以上の分解炉で炭素数が少ない炭化水素として熱分解反応させる工程であり、高温の分解ガスが排出され得る。この際、前記ナフサは、分解炉への進入前に高圧の水蒸気から予熱過程を経た後、分解炉に供給されることができる。
【0025】
前記急冷工程は、分解炉から排出された高温の分解ガス内の炭化水素の重合反応を抑制し、廃熱回収および後続工程(圧縮工程)の熱負荷の減少のために、前記高温の分解ガスを冷却させるステップである。この際、前記急冷工程は、前記高温の分解ガスを急冷オイル(quench oil)で1次冷却するステップと、急冷水(quench water)で2次冷却させるステップとを含んで行われることができる。
【0026】
具体的には、前記1次冷却するステップの後、および前記2次冷却させるステップの前に、前記1次冷却された分解ガスをガソリン精留塔(gasoline fractionator)に供給して、水素、メタン、エチレン、プロピレンなどを含む軽質留分、熱分解ガソリン(pyrolysis、PG)、前記熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を分離することができる。次に、前記軽質留分は、後続する圧縮工程に移送されることができる。
【0027】
前記圧縮工程は、前記軽質留分を経済的に分離および精製するために、高圧下で軽質留分の昇圧により体積を減少させた圧縮ガスを生成する工程であることができる。
【0028】
前記精製工程は、前記高圧で圧縮された圧縮ガスを超低温に冷却させた後、沸点差によってステップ別に成分を分離する工程であり、水素、エチレン、プロピレン、プロパン、C4留分および熱分解ガソリン(RPG)などが生成されることができる。
【0029】
上述のように、前記ナフサの分解工程S1のうち急冷工程では、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)が排出されることができる。一般的に、前記熱分解燃料油(PFO)には、約0.1重量%以下の硫黄、および約20ppm以下の窒素が含まれており、燃料として使用時に、燃焼過程で硫酸化物(SOx)および窒素酸化物(NOx)が排出されるため、環境問題が引き起こされ得る。
【0030】
そのため、本発明では、熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を特定の比率で混合した混合油ストリームを、前記ガス化工程の原料として代替して前記の問題点を解決することができ、さらには、従来の精油残渣油をガス化工程の原料として使用する場合に比べて、温室ガスの排出を低減することができ、ガス化工程の運転費用を減少させ、工程効率を向上させることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上述のように、本発明のPFOストリームおよびPGOストリームは、それぞれ、ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10から排出される熱分解燃料油(PFO)および熱分解ガス油(PGO)を含むことができる。具体的な例として、図1に図示されているガソリン精留塔10の全体の段数において、最上段を1%の段、最下段を100%の段として表現すると、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して、前記熱分解燃料油(PFO)は、90%以上の段、95%以上の段、または95%~100%の段から排出され、前記熱分解ガス油(PGO)は、10%~70%の段、15%~65%の段、または20%~60%の段から排出されることができる。例えば、前記ガソリン精留塔10の全体の段数が100段である場合、最上段が1段、最下段が100段であることができ、前記ガソリン精留塔10の全体の段数の90%以上の段は、ガソリン精留塔10の90段~100段を意味し得る。
【0032】
本発明の一実施形態によると、図1に図示されているように、前記PGOストリームは、前記ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10の側部から排出され、熱分解ガス油(PGO)を含む側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から排出された下部排出ストリームであり、前記PFOストリームは、前記ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10の下部から排出され、熱分解燃料油(PFO)を含む下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から排出された下部排出ストリームであることができる。
【0033】
前記第1ストリッパー20および第2ストリッパー30は、液体の中に溶解されている気体または蒸気を分離および除去するストリッピング(stripping)工程が行われる装置であることができ、例えば、スチームまたは不活性ガスなどによる直接接触、加熱および加圧などの方法によって行われることができる。具体的な例として、前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給して、第1ストリッパー20から前記ガソリン精留塔10の側部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。また、前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給して、第2ストリッパー30により前記ガソリン精留塔10の下部排出ストリームから分離した軽質分を含む上部排出ストリームを前記ガソリン精留塔10に還流させることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームは、C10~C12の炭化水素を70重量%以上または70重量%~95重量%含むものであり、前記PFOストリームは、C13+炭化水素を70重量%以上または70重量%~98重量%含むことができる。例えば、前記C10~C12の炭化水素を70重量%以上含むPGOストリームの40℃での動粘度は、1~200cStであることができ、引火点は、10~50℃であることができる。また、例えば、前記C13+炭化水素を70重量%以上含むPFOストリームの40℃での動粘度は、400~100,000cStであることができ、引火点は、70~200℃であることができる。このように、前記PGOストリームに比べて重質の炭化水素をより多く含むPFOストリームは、同じ温度条件で熱分解ガス油に比べて動粘度および引火点が高いことができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、前記PGOストリームの沸点は、200~288℃、または210~270℃であり、前記PFOストリームの沸点は、289℃~550℃、または300~500℃であることができる。
【0036】
前記PGOストリームおよびPFOストリームの沸点は、それぞれ、多数の炭化水素からなるバルク(bulk)状のPGOストリームおよびPFOストリームの沸点を意味し得る。この際、前記PGOストリームに含まれる炭化水素の種類とPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は互いに相違していてもよく、一部の種類は同一であってもよい。具体的な例として、前記PGOストリームおよびPFOストリームに含まれる炭化水素の種類は、上述のように含まれることができる。
【0037】
本発明の一実施形態によると、前記(S10)ステップでは、PFOストリームおよびPGOストリームを混合して混合油ストリームを生成することができる。この際、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率(以下、「PGOストリームの流量の比率」と称する。)は、0.01~0.3、0.01~0.2、または0.05~0.2であることができる。
【0038】
前記の範囲のPGOストリームの流量の比率を有する混合油ストリームを生成する過程は、図1の前処理工程(S2)に図示されている、第1流量調節装置V1、第2流量調節装置V2、第3流量調節装置V3、および第4流量調節装置V4を用いて、PGOストリームおよびPFOストリームの流量を調節することで行われることができる。すなわち、前記(S10)ステップは、図1の前処理工程(S2)により行われることができる。
【0039】
上述のように、前記ガス化工程(S3)の最前段に位置する燃焼室(図示せず)には、ガス化剤および原料が供給され、700℃以上の温度で燃焼過程を経て合成ガスを生成することができる。この際、前記合成ガスの生成反応は、20~80気圧の高圧で行われ、燃焼室内で、原料は、2~40m/sの速い流速で移動する必要がある。したがって、前記合成ガスの生成反応のために、高い圧力で原料が速い流速でポンピングされる必要があるが、前記燃焼室に供給される原料の動粘度が適正範囲を超える場合、ポンパビリティー(pumpability)の低下によって高価のポンプを使用しなければならないか、エネルギー消費量が増加して費用が増加し、所望の条件でのポンピング(pumping)が不可能になり得る。さらに、ポンピングがスムーズに行われず、原料を燃焼室に均一に供給することができない問題がある。また、燃焼室内の差圧が上昇するか、小さい粒子径で原料の均一な噴霧(atomizing)がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、生産性が低下し、多量のガス化剤が必要となり、酸素過剰による爆発の恐れが高まる。この際、前記動粘度の適正範囲は、合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて多少差があり得るが、一般的に、前記原料の動粘度は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に原料が供給される時点の原料の温度で、費用、生産性および安定性の面で、低いほど有利であり、300cSt以下の範囲を有することが好ましく、この範囲内で、燃焼室内の差圧の上昇を防止し、噴霧がスムーズに行われて、燃焼性能を向上させることができる。
【0040】
また、前記燃焼室に供給される原料の引火点が適正範囲未満である場合、低い引火点によって燃焼反応の発生前にバーナー(Burner)で火炎が生じる可能性があり、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷し得る。この際、前記引火点の適正範囲は、燃焼室で合成しようとする合成ガスの種類、燃焼室で行われる燃焼過程の条件などに応じて変わることができるが、一般的に、原料の引火点は、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給される時点の原料の温度より25℃以上高い範囲を有することが好ましく、この範囲内で、原料の損失、爆発の恐れおよび燃焼室の耐火物の損傷を防止することができる。
【0041】
これにより、本発明では、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給される原料である混合油ストリームの動粘度および引火点を適正範囲に制御するために、前記混合油ストリーム内のPGOストリームおよびPFOストリームの流量の比率を調節することができる。すなわち、前記混合油ストリーム内のPGOストリームおよびPFOストリームの流量の比率を調節することで、前記混合油ストリームが前記燃焼室に供給される時点の温度での前記混合油ストリームの動粘度と引火点を適正範囲に制御することができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点での温度は、前記混合油ストリームの前記燃焼室への供給時点の引火点より25℃以上低く、300cSt以下の動粘度を有する温度であることができる。具体的には、前記混合油ストリームは、燃焼室への供給時点での動粘度が300cSt以下または1cSt~300cStであることができ、前記混合油ストリームの引火点は、前記燃焼室への供給時点での温度より25℃以上または25℃~150℃高いことができる。この際、混合油ストリームの燃焼室への供給時点の温度は、20℃~90℃または30℃~80℃であることができる。前記範囲内の混合油ストリームの燃焼室への供給時点の温度で、混合油ストリームの動粘度は、300cSt以下であることができ、混合油ストリームの引火点より25℃以上低いことができ、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転の条件を満たすことができる。
【0043】
具体的には、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率を0.01~0.3、0.01~0.2、または0.05~0.2に調節することで、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点で、前記混合油ストリームの引火点は、前記供給時点の混合油ストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記供給時点の混合油ストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することができる。
【0044】
一般的に、PFOストリームおよびPGOストリームは、NCC工程において最も重い残渣油であり、単純燃料として使用されており、このように、単純燃料として使用される場合には、組成および物性を調節する必要がなかった。しかし、本発明のように、合成ガスの原料として使用するためには特定の物性、例えば、動粘度と引火点を同時に満たす必要がある。しかし、PGOストリームは、動粘度が満たされても引火点が過剰に低く、PFOストリームは、引火点は高くても動粘度が過剰に高くて、それぞれのストリームは、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としては使用が困難であった。また、前記PFOストリームおよびPGOストリームを混合した混合油ストリームを合成ガスの原料として使用する場合、一般的に混合油ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率は0.35~0.7程度であり、この場合にも、動粘度と引火点を同時に満たすことができず、合成ガスの原料としては使用が困難であった。これに対し、本発明では、前記混合油ストリームの流量に対するPGOストリームの流量の比率を0.01~0.3に制御することで、混合油ストリームの燃焼室への供給時点で、前記混合油ストリームの引火点は、前記供給時点の混合油ストリームの温度より25℃以上高い範囲に制御するとともに、動粘度は、前記供給時点の混合油ストリームの温度で300cSt以下の範囲に制御することができ、これにより、合成ガスの原料として使用するための条件を満たすことができた。
【0045】
前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率は、0.01以上であることができる。すなわち、前記PFOストリームを、単独で、動粘度300cStを満たす温度で前記燃焼室に供給する場合には、前記PFOストリームの引火点が、前記供給時点の温度より25℃以上高い条件を満たさないこともある。しかし、前記PFOストリームにPGOストリームを前記の流量比率の範囲で混合して混合油ストリームとして前記燃焼室に供給する場合には、前記混合油ストリームの引火点が、動粘度300cStを満たす供給時点の温度より25℃以上高い条件を満たすことができる。すなわち、前記のPGOストリームの流量比率の範囲では、引火点の減少幅より動粘度の減少幅が増加するため、混合油ストリームの燃焼室への供給時点での引火点および動粘度を上述の引火点および動粘度の範囲に制御することができる。
【0046】
一方、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率が0.3以下である場合には、前記混合油ストリームの引火点が、動粘度300cStを満たす供給時点の温度より25℃以上高い条件を維持することができる。すなわち、前記のPGOストリームの流量比率の範囲では、混合油ストリームの燃焼室への供給時点での引火点および動粘度を上述の引火点および動粘度の範囲に制御することができる。一方、例えば、前記PGOストリームの流量の比率が0.3を超える場合には、動粘度の減少幅より引火点の減少幅が増加するため、前記混合油ストリームの引火点と動粘度300cStを満たす供給時点の温度差が25℃未満になって、燃焼室への供給条件を満たさないことがある。
【0047】
このように、前記混合油ストリーム内のPGOストリームおよびPFOストリームの流量の比率を調節することで、前記混合油ストリームの前記燃焼室への供給時点で引火点および動粘度を制御することができ、これにより、ガス化工程(S3)の原料として使用するのに適する物性を有するようにすることができる。
【0048】
一方、例えば、図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接燃焼室に供給するか、または、前記PGOストリームおよびPFOストリームを混合するとしても、本発明の適正範囲(0.01~0.3)から逸脱するPGOストリームの流量の比率で燃焼室に供給する場合には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をいずれも満たす温度が存在しない問題が発生し得る。このように、前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度で混合油ストリームが燃焼室に供給される場合には、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高めるか、または燃焼反応の発生前にバーナーで火炎が生じる可能性があり、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題が発生し得る。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記混合油ストリームを前記ガス化工程(S3)のための燃焼室に供給する前に熱交換器40を通過させて供給時点の温度に調節した後、前記燃焼室に供給することができる。前記混合油ストリームは、第1ストリッパーまたは第2ストリッパーから排出された高温のPGOストリームおよびPFOストリームを混合して生成されたものであり、廃熱として廃棄される前記混合油ストリームの顕熱を、熱交換器40を用いて、工程内において再使用することで、合成ガス原料としての供給時点の温度に制御するとともに工程エネルギーを低減することができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記ガス化工程(S3)内の燃焼室に供給された混合油ストリームを、700℃以上、700~2000℃、または800~1800℃の温度で燃焼させるステップ(S30)をさらに含むことができる。また、前記(S20)ステップにおいて、前記混合油ストリームをガス化剤とともに前記燃焼室に供給することができる。この際、前記ガス化剤は、酸素、空気、水蒸気からなる群から選択される1種以上を含むことができ、具体的な例として、前記ガス化剤は、酸素および水蒸気であることができる。
【0051】
このように、前記混合油ストリームを、ガス化剤の存在下で、高温で燃焼させることで、合成ガスが製造されることができる。本発明の製造方法により製造された前記合成ガスは、一酸化炭素と水素を含み、二酸化炭素、アンモニア、硫化水素、シアン化水素、および硫化カルボニルからなる群から選択される1種以上をさらに含むことができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、合成ガスの製造方法では、必要な場合、バルブ、ポンプ、分離器および混合器などの装置をさらに設置することができる。
【0053】
以上、本発明による合成ガスの製造方法について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示している工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による合成ガスの製造方法を実施するために適宜応用されて用いられることができる。
【0054】
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは、通常の技術者にとって明白なことであり、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0055】
<実施例>
実施例1~6
図1に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。
【0056】
具体的には、ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10の側部から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、前記ガソリン精留塔10の下部から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出した。その後、前処理工程(S2)により、前記PGOストリームおよびPFOストリームの流量の比率を調節して混合することで混合油ストリームを生成した。その後、前記混合油ストリームを酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給して、水素および一酸化炭素を含む合成ガスを製造した。
【0057】
この際、実施例1~3でのガソリン精留塔10において、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は92重量%と確認した。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、前記PFOストリーム内のC13+の含量は91重量%と確認した。
【0058】
また、実施例4~6でのガソリン精留塔10において、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は90重量%と確認した。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、前記PFOストリーム内のC13+の含量は96重量%と確認した。
【0059】
下記表1には、前記PGOストリーム、およびPFOストリームそれぞれの引火点と40℃での動粘度、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率、前記燃焼室への混合油ストリームの供給時点での前記混合油ストリームの温度、混合油ストリームの引火点を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転の基準を満たすか否かを確認した。この際、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点は、動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0060】
動粘度と引火点は、下記のように測定し、これは、実施例および比較例の両方で適用した。
【0061】
(1)動粘度:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、Anton Paar社製のSVM 3001を使用して、ASTM D7042に準じて測定した。また、前記各サンプルは、動粘度測定温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0062】
(2)引火点:測定しようとするサンプルのストリームからサンプルを取得し、TANAKA社製のapm-8を使用して、ASTM D93に準じて測定した。また、前記各サンプルは、引火点の予想温度より10℃低く温度を維持し、軽質物質(Light)の気化を防ぐために、密封した容器にサンプルを保管して気相の発生を最小化した。
【0063】
比較例1~8
前記実施例1で、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率を本発明の適正範囲(0.01~0.3)から逸脱するように設定した以外は、前記実施例1と同様に実施した。
【0064】
具体的には、比較例1および5の場合は、図2に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。より具体的には、ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10の下部から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出した。その後、前記PFOストリームを酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。
【0065】
また、比較例4および8の場合は、図3に図示されている工程フローチャートにしたがって、合成ガスの製造を行った。より具体的には、ナフサ分解工程S1のガソリン精留塔10の側部から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出した。その後、前記PGOストリームを酸素および蒸気とともにガス化工程(S3)内の燃焼室に供給した。
【0066】
この際、比較例1~4でのガソリン精留塔10において、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は92重量%と確認した。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、前記PFOストリーム内のC13+の含量は91重量%と確認した。
【0067】
また、比較例5~8でのガソリン精留塔10において、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して40%の段から排出された側部排出ストリームを第1ストリッパー20に供給した後、前記第1ストリッパー20の下部から熱分解ガス油(PGO)を含むPGOストリームを排出し、前記PGOストリーム内のC10~C12の含量は90重量%と確認した。また、前記ガソリン精留塔10の全体の段数に対して100%の段から排出された下部排出ストリームを第2ストリッパー30に供給した後、前記第2ストリッパー30の下部から熱分解燃料油(PFO)を含むPFOストリームを排出し、前記PFOストリーム内のC13+の含量は96重量%と確認した。
【0068】
下記表2には、前記PGOストリーム、およびPFOストリームそれぞれの引火点と40℃での動粘度、前記混合油ストリームの流量に対する前記混合油ストリーム内のPGOストリームの流量の比率、前記燃焼室で混合油ストリームの供給時点での前記混合油ストリームの温度、前記混合油ストリームの引火点を測定して示した。また、前記測定結果に応じて、工程運転の基準を満たすか否かを確認した。この際、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点は、動粘度を300cStに制御する温度条件に設定した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
前記表1および表2を参照すると、本発明の合成ガスの製造方法にしたがって、PGOストリームおよびPFOストリームを適正範囲の流量の比率で混合して混合油ストリームを生成した実施例1~6の場合、前記混合油ストリームの燃焼室への供給時点で、前記混合油ストリームの引火点は、前記供給時点の混合油ストリームの温度より25℃以上高く、動粘度は、前記供給時点の混合油ストリームの温度で300cSt以下の範囲を有することを確認することができる。このような引火点および動粘度の範囲を有することで、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転の条件を満たすことを確認した。
【0072】
一方、図2に図示されているように、前記PFOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給するか(比較例1、5)、または図3に図示されているように、前記PGOストリームを前処理工程(S2)なしに直接前記燃焼室に供給する場合(比較例4、8)には、上述の適正範囲の動粘度および引火点をいずれも満たす温度が存在しないことを確認することができる。
【0073】
一方、前記図1に図示されているように、前処理工程(S2)により前記PGOストリームおよびPFOストリームを混合した混合油ストリームを生成するとしても、前記PGOストリームおよびPFOストリームの流量の比率が本発明の適正範囲(0.01~0.3)から逸脱した比較例2、3、6および7の場合にも、上述の適正範囲の動粘度および引火点をいずれも満たす温度が存在しないことを確認することができる。
【0074】
このように、適正範囲の動粘度および引火点をいずれも満たすことができない比較例1~比較例8の場合には、ガス化工程(S3)の原料として使用するための工程運転の条件を満たしていないことを確認した。具体的には、前記適正範囲の動粘度および引火点のいずれか一つでも満たしていない温度で混合油ストリームが燃焼室に供給される場合には、燃焼室内の差圧が上昇するか、噴霧がスムーズに行われず、燃焼性能を低下させる可能性があり、酸素過剰による爆発の恐れを高め、燃焼反応の発生前にバーナーで火炎が生じる可能性があり、燃焼室内の火炎の逆化現象によって爆発の恐れが存在し、燃焼室の耐火物が損傷する問題が発生し得る。
図1
図2
図3