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  • 特許-熱伝導シートおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】熱伝導シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240109BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240109BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240109BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 27/12 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
C08J5/18 CEW
C08K3/04
H01L23/36 D
H05K7/20 F
C08L27/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019117445
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004284
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】村上 康之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 秀親
(72)【発明者】
【氏名】永尾 暁
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/033461(WO,A1)
【文献】特開2018-067695(JP,A)
【文献】特開2018-140474(JP,A)
【文献】国際公開第2017/145957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05K 7/20
H01L 23/34-23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と熱伝導性充填材とを含む熱伝導シートであって、
厚み方向の熱伝導率が30W/m・K以上であり、
表面粗さSaが両面共に1.0μm以上2.5μm以下であり、
表面粗さのバラツキが両面共に0.30μm以下である、熱伝導シート。
【請求項2】
引張強度が0.45MPa以上0.7MPa以下である、請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
面内の引張強度のバラツキが0.10MPa以下である、請求項1または2に記載の熱伝導シート。
【請求項4】
前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、
前記粒子状炭素材料の体積平均粒子径が10μm以上100μm以下である、請求項1~3の何れかに記載の熱伝導シート。
【請求項5】
前記粒子状炭素材料が異方性黒鉛である、請求項4に記載の熱伝導シート。
【請求項6】
平面視面積が3600mm以上である、請求項1~5の何れかに記載の熱伝導シート。
【請求項7】
平均厚みが250μm以下である、請求項1~6の何れかに記載の熱伝導シート。
【請求項8】
樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックをスライス機構でスライスして請求項1~7の何れかに記載の熱伝導シートを得る工程を含む熱伝導シートの製造方法であって、
前記スライス機構が、逃げ面と、すくい面と、前記逃げ面と前記すくい面との交差角部よりなる刃先とを有する片刃の切断刃、および、前記すくい面に対向配置されたガイド部材を備え、
前記スライスを、前記樹脂ブロックから切り出された部分が前記すくい面と前記ガイド部材との間を通過するように行う、熱伝導シートの製造方法。
【請求項9】
前記すくい面に対向する前記ガイド部材の表面の静止摩擦係数が0.4以下である、請求項8に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項10】
前記ガイド部材の長さが1cm以上5cm以下である、請求項8または9に記載の熱伝導シートの製造方法。
【請求項11】
前記樹脂ブロックを25mm/秒以上200mm/秒以下の速度でスライスする、請求項8~10の何れかに記載の熱伝導シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導シートおよび熱伝導シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)や集積回路(IC)チップ等の電子部品は、高性能化に伴って発熱量が増大している。その結果、電子部品を用いた電子機器では、電子部品の温度上昇による機能障害対策を講じる必要が生じている。
【0003】
電子部品の温度上昇による機能障害対策としては、一般に、電子部品等の発熱体に対し、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体を取り付けることによって、放熱を促進させる方法が採られている。そして、放熱体を使用する際には、発熱体から放熱体へと熱を効率的に伝えるために、熱伝導率が高いシート状の部材(熱伝導シート)を介在させた状態で発熱体と放熱体とを密着させている。
【0004】
従って、発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用される熱伝導シートには、優れた熱伝導性を発揮することが求められている。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、樹脂および粒子状炭素材料を含む一次熱伝導シートの積層体を積層方向に対して45°以下の角度でスライスして得た二次熱伝導シートを加圧することにより、発熱体と放熱体との間に挟み込んだ際にかかる圧力が低い場合であっても優れた熱伝導性を発揮し得る熱伝導シートとして、少なくとも一方の主面の表面粗さSzが3.5μm以下の熱伝導シートを得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-67695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の熱伝導シートには、二次熱伝導シートを加圧して表面粗さSzが3.5μm以下の熱伝導シートを得る際にシート中の粒子状炭素材料の配向が崩れて熱伝導率が低下するため、熱伝導率を向上させるという点において改善の余地があった。
【0008】
また、熱伝導シートには、引張強度を高めることが求められていた。
【0009】
そこで、本発明は、優れた熱伝導性を発揮することができ、且つ、引張強度が高い熱伝導シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった。そして、本発明者は、所定の熱伝導率と所定の表面粗さ(算術平均高さ)Saとを有する熱伝導シートであれば、引張強度を向上させると共に優れた熱伝導性を発揮させることができること、並びに、所定の製造方法を用いれば上述した熱伝導シートを容易に得ることが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートは、樹脂と熱伝導性充填材とを含む熱伝導シートであって、厚み方向の熱伝導率が12W/m・K以上であり、表面粗さSaが両面共に2.5μm以下であることを特徴とする。このように、厚み方向の熱伝導率が12W/m・K以上であり、且つ、表面粗さSaが両面共に2.5μm以下である熱伝導シートは、優れた熱伝導性を発揮し得ると共に、引張強度に優れている。
なお、本発明において、「熱伝導率」および「表面粗さSa」は、それぞれ、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0012】
ここで、本発明の熱伝導シートは、表面粗さのバラツキが両面共に0.30μm以下であることが好ましい。表面粗さのバラツキが両面共に0.30μm以下である熱伝導シートは、品質の安定性に優れている。
なお、本発明において、「表面粗さのバラツキ」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0013】
また、本発明の熱伝導シートは、面内の引張強度のバラツキが0.10MPa以下であることが好ましい。面内の引張強度のバラツキが0.10MPa以下である熱伝導シートは、均一性に優れている。
なお、本発明において、「面内の引張強度のバラツキ」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0014】
更に、本発明の熱伝導シートは、前記熱伝導性充填材が粒子状炭素材料を含み、前記粒子状炭素材料の体積平均粒子径が10μm以上100μm以下であることが好ましい。体積平均粒子径が10μm以上100μm以下の粒子状炭素材料を含んでいれば、熱伝導性を更に高めることができる。
【0015】
また、本発明の熱伝導シートは、前記粒子状炭素材料が異方性黒鉛であることが好ましい。粒子状炭素材料が異方性黒鉛であれば、熱伝導性を更に高めることができる。
【0016】
更に、本発明の熱伝導シートは、平面視面積が3600mm以上であることが好ましい。平面視面積が3600mm以上であれば、生産性を高めることができる。
【0017】
そして、本発明の熱伝導シートは、平均厚みが250μm以下であることが好ましい。平均厚みが250μm以下であれば、実装した際のデバイス内における配置の自由度を高めることができる。
なお、本発明において、「平均厚み」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックをスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程を含む熱伝導シートの製造方法であって、前記スライス機構が、逃げ面と、すくい面と、前記逃げ面と前記すくい面との交差角部よりなる刃先とを有する片刃の切断刃、および、前記すくい面に対向配置されたガイド部材を備え、前記スライスを、前記樹脂ブロックから切り出された部分が前記すくい面と前記ガイド部材との間を通過するように行うことを特徴とする。このように、片刃の切断刃と、片刃の切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材とを備えるスライス機構を用いて樹脂ブロックをスライスすれば、樹脂ブロックのスライス片よりなる熱伝導シートがカールするのを抑制することができるので、優れた熱伝導性を発揮し得ると共に、引張強度に優れている熱伝導シートを得ることができる。
【0019】
ここで、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記すくい面に対向する前記ガイド部材の表面の静止摩擦係数が0.4以下であることが好ましい。すくい面に対向するガイド部材の表面の静止摩擦係数が0.4以下であれば、樹脂ブロックから切り出された部分をすくい面とガイド部材との間に良好に通過させることができる。
なお、本発明において、「静止摩擦係数」は、実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0020】
また、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記ガイド部材の長さが1cm以上5cm以下であることが好ましい。ガイド部材の長さが1cm以上であれば、熱伝導シートがカールするのを十分に抑制し、優れた熱伝導性を発揮し得ると共に、引張強度に優れている熱伝導シートを得ることができる。また、ガイド部材の長さが5cm以下であれば、すくい面とガイド部材との間から熱伝導シートを容易に取り出すことができる。
【0021】
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、前記樹脂ブロックを25mm/秒以上200mm/秒以下の速度でスライスすることが好ましい。スライス速度を25mm/秒以上200mm/秒以下とすれば、片刃の切断刃とガイド部材とを備えるスライス機構を用いて樹脂ブロックを良好にスライスすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、優れた熱伝導性を発揮することができ、且つ、引張強度が高い熱伝導シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(a)~(c)は、本発明に従う熱伝導シートの製造方法の一例を用いて熱伝導シートを製造する過程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の熱伝導シートは、電子部品等の発熱体と、金属製のヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体との間に挟み込んで使用されるものであり、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造することができる。
【0025】
(熱伝導シート)
本発明の熱伝導シートは、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含み得る。また、本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が12W/m・K以上であり、表面粗さSaが両面共に2.5μm以下であることを必要とする。厚み方向の熱伝導率が12W/m・K以上であり、且つ、表面粗さSaが両面共に2.5μm以下であれば、十分な高さの引張強度を確保しつつ、優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0026】
<樹脂>
ここで、樹脂としては、常温常圧下で液体の樹脂と、常温常圧下で固体の樹脂との少なくとも一方を用いることができる。なお、本明細書において、「常温」とは23℃を指し、「常圧」とは、1atm(絶対圧)を指す。
【0027】
常温常圧下で液体の樹脂としては、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で液体の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
また、常温常圧下で液体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
【0028】
また、常温常圧下で固体の樹脂としては、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂および常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂が挙げられる。
そして、常温常圧下で固体の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2-エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコン樹脂;フッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン-プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン-アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン-ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン-イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。
また、常温常圧下で固体の熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。
【0029】
中でも、樹脂としては、常温常圧下で液体のフッ素樹脂と、常温常圧下で固体のフッ素樹脂とを用いることが好ましい。
なお、上述した樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<熱伝導性充填材>
熱伝導性充填材としては、特に限定されることなく、例えば、アルミナ粒子、酸化亜鉛粒子、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子および粒子状炭素材料(例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック等)などの粒子状材料、並びに、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、およびそれらの切断物などの繊維状材料が挙げられる。中でも、熱伝導性充填材としては、窒化ホウ素粒子、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料;並びに、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)などの繊維状炭素ナノ材料;からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、鱗片状粒子材料を用いることがより好ましく、鱗片状黒鉛および膨張化黒鉛等の異方性黒鉛を用いることが更に好ましく、膨張化黒鉛を用いることが特に好ましい。これらの熱伝導性充填材を用いれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
なお、熱伝導性充填材は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
なお、熱伝導性充填材として使用し得る粒子状炭素材料などの粒子状材料の体積平均粒子径は、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上80μm以下であることがより好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、熱伝導シートの熱伝導性を更に高めることができる。
【0032】
そして、熱伝導性充填材の含有量は、特に限定されることなく、例えば、上述した樹脂100質量部当たり、5質量部以上とすることが好ましく、50質量部以上とすることがより好ましく、80質量部以上とすることが更に好ましく、150質量部以下とすることが好ましく、120質量部以下とすることがより好ましく、100質量部以下とすることが更に好ましい。熱伝導性充填材の含有量が上記下限値以上であれば、熱伝導シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、熱伝導性充填材の含有量が上記上限値以下であれば、表面粗さSaの小さな熱伝導シートの製造が容易である。
【0033】
<添加剤>
熱伝導シートに任意に含有させ得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、難燃剤、可塑剤、靭性改良剤、吸湿剤、接着力向上剤、濡れ性向上剤、イオントラップ剤などが挙げられる。
【0034】
<熱伝導シートの性状>
そして、本発明の熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導率が12W/m・K以上であり、且つ、表面粗さSaが両面共に2.5μm以下であることを必要とし、更に以下の性状を有することが好ましい。
【0035】
[厚み方向の熱伝導率]
熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率は、20W/m・K以上であることが好ましく、25W/m・K以上であることがより好ましく、30W/m・K以上であることが更に好ましい。厚み方向の熱伝導率が上記下限値以上であれば、発熱体から放熱体へと良好に熱を伝えることができる。
【0036】
[表面粗さSa]
熱伝導シートは、両方の主面(表面および裏面)の表面粗さSaが、1.0μm以上2.3μm以下であることが好ましい。表面粗さSaが上記上限値以下であれば、引張強度を十分に高めることができる。また、表面粗さSaが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの製造が容易である。
【0037】
また、熱伝導シートの各主面における表面粗さSaのバラツキは、それぞれ、0.50μm以下であることが好ましく、0.30μm以下であることがより好ましく、0.20μm以下であることが更に好ましい。表面粗さSaのバラツキが両面共に上記上限値以下であれば、熱伝導シートの品質の安定性を高めることができる。
【0038】
[引張強度]
更に、熱伝導シートの引張強度は、0.45MPa以上であることが好ましく、0.50MPa以上であることがより好ましく、1.00MPa以下であることが好ましく、0.7MPa以下であることがより好ましい。引張強度が上記下限値以上であれば、十分な強度を確保することができる。また、引張強度が上記上限値以下であれば、熱伝導シートの製造が容易である。
【0039】
そして、熱伝導シートは、面内の引張強度のバラツキが0.10MPa以下であることが好ましく、0.08MPa以下であることがより好ましく、0.06MPa以下であることが更に好ましい。面内の引張強度のバラツキが上記上限値以下であれば、熱伝導シートの均一性を十分に高めることができる。
【0040】
[形状]
熱伝導シートは、平面視における面積が3600mm以上であることが好ましく、10000mm以上であることがより好ましい。平面視面積が上記下限値以上であれば、生産性を高めることができる。
【0041】
また、熱伝導シートは、平均厚みが250μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、50μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましい。平均厚みが上記上限値以下であれば、熱伝導シートの実装時のデバイス内における配置の自由度を高めることができる。また、平均厚みが上記下限値以上であれば、熱伝導シートの強度を十分に確保することができる。
【0042】
なお、本発明の熱伝導シートは、例えば本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造することができ、特に限定されることなく、樹脂と熱伝導性充填材とを含む条片が条片の幅方向に並列接合された構成を有し得る。
【0043】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と、熱伝導性充填材とを含み、任意に添加剤を更に含有し得る熱伝導シートを製造する際に用いられる。中でも、本発明の熱伝導シートの製造方法は、上述した本発明の熱伝導シートを製造する際に好適に用いることができる。
【0044】
そして、本発明の熱伝導シートの製造方法は、樹脂と熱伝導性充填材とを含有する樹脂ブロックをスライス機構でスライスして熱伝導シートを得る工程を含む。また、本発明の熱伝導シートの製造方法では、逃げ面、すくい面および逃げ面とすくい面との交差角部よりなる刃先を有する片刃の切断刃と、片刃の切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材を備えるスライス機構を使用し、樹脂ブロックから切り出された部分がすくい面とガイド部材との間を通過するようにスライスを行うことを必要とする。
【0045】
このように、片刃の切断刃と、片刃の切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材とを備えるスライス機構を使用し、切り出された部分がすくい面とガイド部材との間を通過するように樹脂ブロックをスライスすれば、樹脂ブロックのスライス片よりなる熱伝導シートがカールするのを抑制することができる。従って、スライス時のカールに起因して熱伝導シートの表面粗さSaが大きくなったり、引張強度が低下したりするのを抑制することができる。そのため、熱伝導率の低下の原因となり得る加圧等の操作をスライス後に行わなくても、表面粗さSaが小さくて引張強度が大きい熱伝導シートを得ることができる。よって、優れた熱伝導性を発揮し得ると共に、引張強度に優れている熱伝導シートを得ることができる。
【0046】
なお、熱伝導性充填材の含有量が多い場合、体積平均粒子径の小さい熱伝導性充填材を使用した場合、および、製造する熱伝導シートの厚みを薄くした場合には、通常、得られる熱伝導シートがカールし易いが、本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、これらの場合であっても熱伝導シートのカールを十分に抑制することができる。
【0047】
<樹脂ブロック>
ここで、熱伝導シートの材料となる樹脂ブロックは、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する。
なお、樹脂、熱伝導性充填材および添加剤としては、上述した本発明の熱伝導シートと同様のものを用いることができ、その好適な態様についても上述した本発明の熱伝導シートと同様であるため、以下では説明を省略する。
【0048】
[樹脂ブロックの形状および構造]
樹脂ブロックの形状は、特に限定されることなく、スライスした際に所望の形状の熱伝導シートが得られる形状とすることができる。具体的には、例えば、矩形状の熱伝導シートを製造する場合には、樹脂ブロックの形状は、直方体であることが好ましい。
【0049】
また、樹脂ブロックの構造は、特に限定されることなく、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物を金型などの既知の成形装置を用いて所望の形状に成形してなる構造であってもよいし、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物をシート状に成形して得たシートを積層、折畳または捲回してなる構造であってもよい。
なお、シートを積層してなる積層体では、通常、シートの表面同士の接着力は、シートを積層する際の圧力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層を行ってもよいし、シートの表面に接着剤を塗布した状態またはシートの表面に接着層を設けた状態で積層を行ってもよいし、シートを積層させた積層体を積層方向に更にプレスしてもよい。
【0050】
中でも、樹脂ブロックの構造は、例えば図1(a)~(c)に示す樹脂ブロック10のような、樹脂と、熱伝導性充填材とを含有し、任意に添加剤を更に含有する樹脂組成物を加圧してシート状に成形し、樹脂と、熱伝導性充填材と、任意の添加剤とを含有するシート11を得た後、得られたシート11を厚み方向に複数枚積層してなる構造、或いは、得られたシート11を折畳または捲回してなる構造であることが好ましい。樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、フィラーがシートの面内方向に配向するため、得られたシートを積層、折畳または捲回してなる積層体をスライスすれば、熱伝導性に異方性を有する熱伝導シートを得ることができるからである。具体的には、熱伝導性充填材を含む樹脂組成物を加圧してシート状に成形してなるシートでは、熱伝導性充填材が面内方向に配向し、面内方向の熱伝導性が向上する。従って、当該シートの積層体を積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するシートの双方に直交する方向にスライスすれば、厚さ方向の熱伝導性に優れる熱伝導シートを得ることができる。
なお、シートの積層体を、積層体の積層方向、或いは、積層体の積層方向および積層体を構成するシートの双方に直交する方向にスライスして得た熱伝導シートは、積層体を構成していたシートのスライス片(樹脂と、熱伝導性充填材とを含む条片)が並列接合されてなる構成を有している。換言すれば、当該熱伝導シートは、樹脂および熱伝導性充填材を含み、積層体を構成していたシートの厚みと略等しい寸法の幅を有する条片が、条片の幅方向が熱伝導シートの厚み方向と直交する姿勢で、条片の幅方向に並列接合されてなる構成を有している。ここで、特にこのような構成を有する熱伝導シートでは、スライス時にカールすると隣接する条片同士の間で剥離が起こり易く、特にスライス時に切断刃の逃げ面が接触していた面側では、カールによる剥離の影響が顕著である。そして、一度カールしたシートは、押圧などの物理的な処理により平坦にすればカール自体は解消するが、一度剥離した条片同士を再結合させるのは困難である。しかし、本発明の熱伝導シートの製造方法によれば、カールの発生を抑制することができるので、条片同士の剥離を抑制し、表面粗さが小さくて引張強度に優れる熱伝導シートを得ることができる。
【0051】
<スライス機構>
スライス機構は、片刃の切断刃と、片刃の切断刃のすくい面に対向配置されたガイド部材とを備えている。具体的には、スライス機構の一例は、例えば図1(a)~(c)に示すように、すくい面21と、逃げ面22と、すくい面21および逃げ面22の交差角部よりなる刃先とを有する片刃の切断刃20と、片刃の切断刃20のすくい面21に対向配置されたガイド部材30とを備えている。そして、図示例において、片刃の切断刃20とガイド部材30とは、すくい面21とガイド部材30の表面31とが互いに平行になるように、平板状のガイド部材30の幅方向両端部に設けられた棒状部材を介して接続されており、図1(b),(c)に示すように、スライス時に樹脂ブロック10から切り出された部分50は、すくい面21とガイド部材30のすくい面21側の表面31との間の隙間40を通過する。
【0052】
ここで、すくい面に対向するガイド部材の表面の静止摩擦係数は、0.4以下であることが好ましい。静止摩擦係数が上記上限値以下であれば、樹脂ブロックから切り出された部分をすくい面とガイド部材との間に良好に通過させ、カールの発生を良好に抑制することができる。
【0053】
また、ガイド部材の長さは、1cm以上であることが好ましく、2cm以上であることがより好ましく、5cm以下であることが好ましい。ガイド部材の長さが上記下限値以上であれば、カールの発生を十分に抑制することができる。また、ガイド部材の長さが上記上限値以下であれば、樹脂ブロックをスライスして得た熱伝導シートをすくい面とガイド部材との間から容易に取り出すことができる。
【0054】
更に、ガイド部材の配設角度は、すくい面との間に十分な間隔を確保できれば特に限定されるものではないが、カールの発生を更に良好に抑制する観点からは、すくい面と平行であることが好ましい。
【0055】
また、ガイド部材とすくい面との間の間隔は、特に限定されるものではないが、製造する熱伝導シートの厚みの2倍以上40倍以下であることが好ましい。ガイド部材とすくい面との間の間隔が上記下限値以上であれば、樹脂ブロックから切り出された部分をすくい面とガイド部材との間に良好に通過させ、カールの発生を良好に抑制することができる。また、ガイド部材とすくい面との間の間隔が上記上限値以下であれば、スライス機構をコンパクト化することができる。
【0056】
そして、鉛直方向(図1では上下方向)におけるガイド部材の下端(片刃の切断刃の刃先が位置する側の端縁)の位置は、カールの発生を良好に抑制しつつ樹脂ブロックを良好にスライスすることができれば特に限定されるものではないが、樹脂ブロックの載置面とガイド部材とが接触するのを防止して樹脂ブロックを底面まで良好にスライスする観点からは、片刃の切断刃の刃先の位置と同じか、刃先よりも上側であることが好ましい。また、樹脂ブロックから切り出された部分をすくい面とガイド部材との間に良好に通過させる観点からは、鉛直方向におけるガイド部材の下端の位置は、片刃の切断刃の刃先から鉛直方向上方に5mmの位置よりも下側であることが好ましい。中でも、鉛直方向におけるガイド部材の下端の位置は、片刃の切断刃の刃先の位置と同じであることが特に好ましい。
【0057】
<スライス>
スライス機構を用いて樹脂ブロックをスライスする方向は、特に限定されることなく、スライスされた樹脂ブロックの端面(スライス面)と、片刃の切断刃の逃げ面との間の逃げ角が5°以下、特には0°となる方向とすることができる。そして、スライスは、例えば図1(b)および(c)に示すように、樹脂ブロック10から切り出された部分50がすくい面21とガイド部材30との間を通過するように行う。
【0058】
なお、上述したスライス機構を用いた樹脂ブロックのスライスは、特に限定されることなく、樹脂ブロックに対して圧力を負荷しながら行うことが好ましく、0.1MPa以上1.0MPa以下の圧力を負荷しながら行うことがより好ましい。
【0059】
また、樹脂ブロックを容易にスライスする観点からは、スライスする際の樹脂ブロックの温度は、-20℃以上30℃以下とすることが好ましい。
【0060】
更に、樹脂ブロックのスライス速度は、特に限定されることなく、25mm/秒以上とすることが好ましく、100mm/秒以上とすることがより好ましく、200mm/秒以下とすることが好ましく、150mm/秒以下とすることがより好ましい。スライス速度を上記範囲内にすれば、熱伝導シートの生産性を高めつつ樹脂ブロックを良好にスライスし、カールが十分に抑制された熱伝導シートを得ることができる。
【実施例
【0061】
以下、本発明について実施例を用いて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、熱伝導シートの熱伝導率、表面粗さSa、表面粗さのバラツキ、引張強度、面内の引張強度のバラツキ、平均厚み、および、熱抵抗値、並びに、ガイド部材の静止摩擦係数は、それぞれ以下の方法を使用して測定した。
【0062】
<熱伝導率>
熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および比重ρ(g/m)を、それぞれ、以下の方法で測定した。
[厚み方向の熱拡散率α]
熱拡散・熱伝導率測定装置(株式会社アイフェイズ製、製品名「アイフェイズ・モバイル 1u」)を使用して、ISO 22007-3の規定に基づき測定した。
[定圧比熱Cp]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、25℃における比熱を測定した。
[比重ρ(密度)]
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER-H」)を用いて測定した。
そして、各測定値を、下記式(I):
λ=α×Cp×ρ・・・(I)
に代入し、25℃における熱伝導シートの厚み方向の熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。
<表面粗さSaおよび表面粗さのバラツキ>
熱伝導シートの表面粗さSaは、三次元形状測定機(株式会社キーエンス製、製品名「ワンショット3D測定マクロスコープ」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートの評価対象の表面から抽出した5点の解析範囲(1cm×1cm)について、三次元形状を測定した。なお、5点抽出する際に各解析範囲は1cm以上離れていることが望ましいが、熱伝導シートのサイズが小さい場合は、解析範囲の一部が重なっていても構わない。また、熱伝導シートのサイズが小さく、1cm×1cmの解析範囲を確保できない場合には、解析範囲を0.3cm×0.3cmまで小さくしてもよい。
更に、三次元形状の測定結果に対してソフトウェアでフィルター処理(2.5mm)を行い、うねり成分を取り除くことにより、表面粗さSa(μm)を自動計算し、5点の解析範囲の平均値を熱伝導シートの表面粗さSaとした。
なお、三次元形状の測定は、A面(スライス時に切断刃のすくい面が接触していた面)およびB面(スライス時に切断刃の逃げ面が接触していた面)のそれぞれに対して行った。
また、測定した5点の解析範囲について、表面粗さSaの最大値と最小値との差を算出し、熱伝導シートの表面粗さのバラツキを求めた。
<引張強度および面内の引張強度のバラツキ>
JIS K7113に準拠したダンベル2号(ダンベル型、幅:3mm、長さ70mm)を用いて熱伝導シートを打ち抜き成型し、試料片を5つ作製した。そして、引張試験機(株式会社島津製作所製、商品名「AG-IS20kN」)を用い、ロードセル:50N、チャック間距離:35mm、速度:25mm/分、温度:23℃の条件で引っ張り、破断強度(引張強度)を測定した。
なお、試料片を打ち抜く方向は、ダンベルの長軸が熱伝導シートを構成する条片に対して90度の角度で交差する方向とし、打ち抜き場所は、シート中央および4隅(角から内側に3cm以内の範囲にダンベルの一部が入る位置)の計5箇所とした。
5つの試料片の測定値の平均値を熱伝導シートの引張強度とし、最大値と最小値の差を熱伝導シートの面内の引張強度のバラツキとした。
一般に、カールが生じた部位は引張強度が悪くなる。
<平均厚み>
膜厚計(ミツトヨ製、製品名「デジマチックインジケーター ID-C112XBS」)を用いて、熱伝導シートの中心および四隅の計五点における厚みを測定し、測定した厚みの平均値(μm)を求めた。
<熱抵抗値>
熱伝導シートの熱抵抗値は、熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「樹脂材料熱抵抗測定装置」)を用いて測定した。
具体的には、熱伝導シートから1cm角の大きさの略正方形状の試料を切り出し、試料温度50℃において、0.1MPaおよび0.9MPaの圧力を加えた時の熱抵抗値(℃/W)を測定した。熱抵抗値が小さいほど熱伝導シートが熱伝導性に優れ、例えば、発熱体と放熱体との間に介在させた際の放熱特性に優れていることを示す。
<静止摩擦係数>
静摩擦係数は、JIS K7125に準拠し、小型卓上試験機(日本電産シンポ製、商品名「FGS-500TV」)を用いて測定した。具体的には、相手材としてアルミ板を用い、3回測定した値の平均値を静摩擦係数とした。
【0063】
(実施例1)
<組成物の調製>
常温常圧下で液体の熱可塑性フッ素樹脂(ダイキン工業株式会社製、商品名「ダイエルG-101」)70部と、常温常圧下で固体の熱可塑性フッ素樹脂(スリーエムジャパン株式会社製、商品名「ダイニオンFC2211」)30部と、粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業株式会社製、商品名「EC300」、体積平均粒子径:50μm)90部とを、加圧ニーダー(日本スピンドル製)を用いて、温度150℃にて20分間撹拌混合した。次に、得られた混合物を解砕機(大阪ケミカル社製、商品名「ワンダークラッシュミルD3V-10」)に投入して、10秒間解砕することにより、組成物を得た。
<プレ熱伝導シートの形成>
次いで、得られた組成物50gを、サンドブラスト処理を施した厚み50μmの保護フィルム(PETフィルム)で挟み、ロール間隙1000μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形(一次加圧)し、厚み0.8mmのプレ熱伝導シートを得た。
<積層体の形成>
続いて、得られたプレ熱伝導シートを縦150mm×横150mm×厚み0.8mmに裁断し、プレ熱伝導シートの厚み方向に188枚積層した。そして、温度120℃、圧力0.1MPaで3分間、積層方向にプレス(二次加圧)することにより、高さ約150mmの積層体を得た。
<熱伝導シートの形成>
その後、積層体を積層方向が地面(積層体の載置面)に対して水平方向となるように置き、スライスに必要な長さを積層体の積層方向に直交する方向の一端側に残して、設置した積層体の上面の全体を金属板で押え、上から0.1MPaの圧力をかけて、積層体を固定した。なお、積層体の側面、背面の固定は行わなかった。このとき、積層体の温度は25℃であった。
次いで、サーボプレス機(放電精密加工研究所製)のプレス部分に、図1に示す形状の切断刃(片刃、刃角:20°、刃部の最大厚み:3.5mm、材質:超鋼、ロックウェル硬度:91.5、刃面のシリコン加工:なし、全長:200mm)およびガイド部材(長さ:50mm、静止摩擦係数:0.4)よりなるスライス機構(ガイド部材とすくい面との間の間隔:0.5mm)を取り付け、積層方向が水平方向となるように置いた積層体を、スライス速度25mm/秒、スライス幅100μmの条件で鉛直方向(積層体の積層方向に直交する方向)にスライスして、縦150mm×横150mm×厚み(平均厚み)0.10mmの熱伝導シートを得た。なお、スライス時の切断刃の姿勢は、逃げ面の延在方向が積層体のスライス面と平行な方向になる姿勢とした。また、得られた熱伝導シートは、プレ熱伝導シートのスライス片(条片)が並列接合した構成を有していた。
そして、得られた熱伝導シートについて、各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例2)
スライス速度を100mm/秒とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
(実施例3)
スライス速度を200mm/秒とした以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(実施例4)
スライス機構のガイド部材とすくい面との間の間隔を1.5mmに変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例1)
ガイド部材を使用せず、切断刃のみを用いてスライスを行った以外は実施例1と同様にして熱伝導シートを製造した。なお、熱伝導シートは、スライス時にカールして直径0.5cmの筒状になったため、手で伸ばして熱伝導シートとした。
そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
表1より、実施例1~4の熱伝導シートは、比較例1の熱伝導シートと比較し、引張強度が高く、且つ、優れた熱伝導性を発揮することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、優れた熱伝導性を発揮することができ、且つ、引張強度が高い熱伝導シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 樹脂ブロック
11 シート
20 切断刃
21 すくい面
22 逃げ面
30 ガイド部材
31 表面
40 隙間
50 部分
図1