IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

特許7413667硬質ポリウレタンフォーム用組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム用組成物及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/10 20060101AFI20240109BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240109BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/00 G
C08G18/00 H
C08G18/42 008
C08G18/50 003
C08G18/76 057
E04B1/80 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019128100
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021014480
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 佑平
(72)【発明者】
【氏名】石川 康伸
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-114498(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074814(WO,A1)
【文献】特開2020-045415(JP,A)
【文献】特開2013-023510(JP,A)
【文献】特開2008-081702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、及び発泡剤(D)を含むポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)とからなる硬質ポリウレタンフォーム用組成物であって、ポリオール成分(A)が、平均官能基数2.0~3.0のフタル酸系ポリエステルポリオール、および平均官能基数2.0~3.0で分子中にハロゲン原子を含有する25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種を含み、イソシアネート基末端プレポリマー(F)が、イソシアネート組成物(G)とジオール(H)との反応生成物である、20℃における粘度が800~6000mP・sのイソシアネート基末端プレポリマーであり、イソシアネート組成物(G)が、モノメリックMDIとポリメリックMDIとを含み、かつ平均官能基数が2.2~2.6であり、ジオール(H)が平均官能基数2.0のフタル酸系ポリエステルジオール、および平均官能基数2.0で分子中にハロゲン原子を含有する25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルジオールから選ばれる少なくとも一種を含み、ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)とを配合した際の、ポリオール成分(A)とジオール(H)の合計量中における含ハロゲンポリエーテルポリオールおよび含ハロゲンポリエーテルジオールの合計量の比率が10~80質量%であり、かつ、下記の要件(i)または(ii)の少なくともいずれかを満たすことを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
(i)ポリオール成分(A)が平均官能基数2.0~3.0のフタル酸系ポリエステルポリオールを含む
(ii)ジオール(H)が平均官能基数2.0のフタル酸系ポリエステルジオールを含む
【請求項2】
含ハロゲンポリエーテルポリオール、および含ハロゲンポリエーテルジオールに含まれるハロゲン元素が、臭素、および塩素から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項3】
ポリオール組成物(E)またはイソシアネート基末端プレポリマー(F)が、難燃剤(J)を含み、難燃剤(J)の含有量が、ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)の配合量の合計量に対して3~12質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項4】
難燃剤(J)がメトキシフェノキシシクロホスファゼンであることを特徴とする請求項3に記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物から得られる硬質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の硬質フォーム用組成物を反応発泡させる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の硬質ポリウレタンフォームと、クラフト紙、ポリエステル不織布、及びガラス不織布から選ばれるいずれかと、から構成されるラミネートボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム用組成物、及び硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱性能、寸法安定性および施工性が優れているために、冷蔵庫、冷凍倉庫、建築材料等の断熱材としてまたスプレー用途として広範囲に使用されている。
【0003】
一方、硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率は継時的に上昇し、断熱性能が低下することが知られている。
【0004】
断熱性能の継時的な低下は、発泡セル内部の断熱ガスが系外に拡散するとともに、より熱伝導率が高い空気が発泡セル内部に流入することで、セル内ガスの熱伝導率が上昇することにより引き起こされる。
【0005】
製品のライフサイクル全般に渡って高い断熱性能を維持することは、省エネルギー化の観点から重要な課題であり、断熱性能の経年劣化が少ない断熱材の開発が望まれている。
【0006】
特に、高い通気性を有する軟質面材を使用したラミネートボードにおいては、硬質ポリウレタンフォーム自体に高いガスバリア性が求められる。
【0007】
上記課題に対し、特許文献1には、層状のシリケートをポリオール中にナノスケールで分散させることで気泡膜のガスバリア性を向上させる手法が開示されている。しかしながら、固体状添加物はフォーム生産現場における混合吐出ヘッドや液送りポンプ等の設備の摩耗を促進させ、設備への負担が大きいために好ましくない。
【0008】
また、特許文献2には、発泡セルのサイズと形状を制御することにより、大気からの空気の侵入に対する障壁数を増やし、ガスバリア性を向上させる手法が開示されている。しかしながら、セル形状を制御するために、発泡過程において一定の時間まで発泡圧以上の圧力を加え、その後圧力を開放する手法をとっており、フォームの製造工程が煩雑なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-339437号公報
【文献】特開2007-332203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、フォームの製造において煩雑な工程を含むことなく、一般的なフォーム製造設備で生産可能な、経年による断熱性能低下が少ない硬質ポリウレタンフォームを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは検討を重ねた結果、特定のポリオール組成物、および特定のイソシアネート基末端プレポリマーを用いることで上記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち本発明は、以下の実施形態を含むものである。
【0013】
(1)ポリオール成分(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、及び発泡剤(D)を含むポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)とからなる硬質ポリウレタンフォーム用組成物であって、ポリオール成分(A)が、平均官能基数2.0~3.0のフタル酸系ポリエステルポリオール、および平均官能基数2.0~3.0で分子中にハロゲン原子を含有する25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも一種を含み、イソシアネート基末端プレポリマー(F)が、イソシアネート組成物(G)とジオール(H)との反応生成物である、20℃における粘度が800~6000mP・sのイソシアネート基末端プレポリマーであり、イソシアネート組成物(G)が、モノメリックMDIとポリメリックMDIとを含み、かつ平均官能基数が2.2~2.6であり、ジオール(H)が平均官能基数2.0のフタル酸系ポリエステルジオール、および平均官能基数2.0で分子中にハロゲン原子を含有する25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルジオールから選ばれる少なくとも一種を含み、ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)とを配合した際の、ポリオール成分(A)とジオール(H)の合計量中における含ハロゲンポリエーテルポリオールおよび含ハロゲンポリエーテルジオールの合計量の比率が10~80質量%であることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【0014】
(2)含ハロゲンポリエーテルポリオール、および含ハロゲンポリエーテルジオールに含まれるハロゲン元素が、臭素、および塩素から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、上記(1)に記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【0015】
(3)ポリオール組成物(E)またはイソシアネート基末端プレポリマー(F)が、難燃剤(J)を含み、難燃剤(J)の含有量が、ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)の配合量の合計量に対して3~12質量%であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【0016】
(4)難燃剤(J)がメトキシフェノキシシクロホスファゼンであることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物。
【0017】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の硬質ポリウレタンフォーム用組成物から得られる硬質ポリウレタンフォーム。
【0018】
(6)上記(1)~(4)のいずれかに記載の硬質フォーム用組成物を反応発泡させる、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【0019】
(7)上記(5)に記載の硬質ポリウレタンフォームと、通気性軟質面材から構成されるラミネートボード。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、フォーム製造過程において煩雑な後処理工程を含むことなく、経年による断熱性能低下が少ない硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。また、本発明により得られる硬質ポリウレタンフォームは優れた難燃性を有するため、建築物用の断熱材として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0022】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)とからなるものである。
【0023】
本発明におけるポリオール組成物(E)は、ポリオール成分(A)、触媒(B)、整泡剤(C)、及び発泡剤(D)を含むものであり、イソシアネート基末端プレポリマー(F)は、イソシアネート組成物(G)とジオール(H)とから得られるものである。
【0024】
<ポリオール成分(A)>
本発明のポリオール組成物(E)に含まれるポリオール成分(A)は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの無水物等のうち少なくとも1種類を含む酸成分と多官能アルコール類の縮重合反応から得られるポリエステルポリオール、および分子中にハロゲン元素を含有し、25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルポリオールのうちの少なくとも一種を用いる。前記ポリエステルポリオールの酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの無水物等のうち少なくとも1種類と、他のジカルボン酸またはその酸無水物を併用しても良い。併用する酸成分は特に限定されないが、例えばナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等が好適である。多官能アルコール類は特に限定されないが、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類が好ましい。含ハロゲンポリエーテルポリオールに含まれるハロゲン原子は特に限定されないが、塩素、及び臭素から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。このような含ハロゲンポリエーテルポリオールとしては、例えばsorvay社製のIxol M125やIxol B251等が挙げられる。
【0025】
ポリオール成分(A)の平均官能基数は2.0~3.0であり、2.0官能が好ましい。平均官能基数が3.0を超えると硬質ポリウレタンフォーム用組成物中の架橋点濃度が過剰となるためにイソシアネート基の三量化反応完結率が低下し、気泡膜のガスバリア性低下を招く。
【0026】
また、含ハロゲンポリエーテルポリオールの25℃における比重は1.4以上である。比重が1.4以上であることで、ウレタンフォーム中に占めるウレタン樹脂の体積分率が低減し、空隙率が向上するために熱伝導を抑制することができる。
【0027】
〈触媒(B)〉
触媒(B)としては、例えば当該分野において公知である各種のウレタン化触媒、イソシアヌレート化触媒等を使用でき、ウレタン化触媒と、イソシアヌレート化触媒とを併用することが好ましい。
【0028】
ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン等のアミン化合物類、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチルビスアミノエチルエーテル、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N,N-ジイソプロパノールアミン、N-(2-ヒドロキシエチル)-N’-メチルピペラジン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、5-ジメチルアミノ-3-メチル-1-ペンタノール等のアルカノールアミン類等が挙げられる。これらのウレタン化触媒は単独で使用、もしくは2種以上を併用しても良い。
【0029】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば4級アンモニウム塩類、炭素数2~12のカルボン酸のアルカリ金属塩、アセルチアセトンやサリチルアルデヒドのアルカリ金属塩、アミンのルイス酸錯体塩、金属触媒等を挙げることができる。
【0030】
触媒(B)の添加量は、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用組成物中に占める割合が、ウレタン化触媒が0.1~1.0質量%、およびイソシアヌレート化触媒が0.1~2.0質量%であることが好ましい。
【0031】
〈整泡剤(C)〉
整泡剤(C)としては、ポリウレタンフォームの製造に用いられる市販の整泡剤等が挙げられる。整泡剤(C)としては特に限定されないが、例えば、界面活性剤が挙げられ、有機シロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン-グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤等の有機シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、モーメンティブ社製L5420、L5340、L6188、L6877、L6889、L6900、L6866、L6643、エボニック社製B8040、B8155、B8239、B8244、B8330、B8443、B8450、B8460、B8462、B8465、B8466、B8467、B8481、B8484、B8485、B8486、B8496、B8870、B8871、東レ・ダウコーニング社製SZ-1328、SZ-1642、SZ-1677、SH-193、エアープロダクツ社製DC-193、DC5598等が挙げられる。
【0032】
整泡剤(C)の添加量としては、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用組成物中に占める割合が、0.1~5質量%の範囲が好ましい。下限値より少ない場合気泡構造や気泡サイズが安定せず、均一な発泡体が得られない恐れがあり、上限値を超えるとポリオール組成物に濁りを生じ、貯蔵安定性を低下させる恐れがある。
【0033】
〈発泡剤(D)〉
発泡剤(D)としては、化学的発泡剤としての水と、物理的発泡剤を併用する。水はイソシアネート基との反応で炭酸ガスを発生し、これにより発泡する。
【0034】
物理発泡剤は、炭化水素化合物、HFC類、HFO類等の、従来公知のものが使用できるが、環境負荷と断熱性能の観点から、HFO類が特に好ましい。HFO類の例としては、HFO-1233zd、HFO-1336mzz等が挙げられ、それぞれ単独でも複数を併用してもよい。
【0035】
発泡剤の添加量は、水と物理発泡剤の合計量として硬質ポリウレタンフォーム用組成物中に0.8~1.5mmol/g含有することが好ましい。発泡剤(D)中の物理発泡剤のモル分率は0.4~0.9であることが好ましく、0.6~0.8であることがより好ましい。
【0036】
〈イソシアネート組成物(G)〉
イソシアネート基末端プレポリマー(F)に含まれるイソシアネート組成物(G)は、モノメリックMDIとポリメリックMDIとを含み、数平均分子量から求められる平均官能基数が2.2~2.6である。
【0037】
平均官能基数が2.2未満であると、フォームの気泡径が拡大するために、輻射伝熱増大による熱伝導率初期値の上昇や、障壁数減少によるガスバリア性の悪化を招く。平均官能基数が2.6を超えると硬質フォーム用組成物中の架橋点濃度が過剰となるためにイソシアネート基の三量化反応完結率が低下し、気泡膜のガスバリア性低下を招く。
【0038】
〈ジオール(H)〉
イソシアネート基末端プレポリマー(F)に含まれるジオール(H)は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの無水物等のうち少なくとも1種類を含む酸成分とグリコール類との縮重合反応から得られるポリエステルジオール、および分子中にハロゲン元素を含有し、25℃における液比重が1.4以上である含ハロゲンポリエーテルジオールのうちの少なくとも一種を用いる。前記ポリエステルジオールの酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの無水物等のうち少なくとも1種類と、他のジカルボン酸またはその酸無水物を併用しても良い。併用する酸成分は特に限定されないが、例えばナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、α-ハイドロムコン酸、β-ハイドロムコン酸、α-ブチル-α-エチルグルタル酸、α,β-ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等が好適である。グリコール類は特に限定されないが、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β-ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール等の分子量500以下の低分子グリコール類が好ましい。含ハロゲンポリエーテルジオールに含まれるハロゲン元素は特に限定されないが、塩素、及び臭素から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。このような含ハロゲンポリエーテルジオールとしては、例えばsorvay社製のIxol M125等が挙げられる。
【0039】
以上のようなイソシアネート組成物(G)とジオール(H)との反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマー(F)は、20℃における粘度が、800~6000mPa・sであり、1000~4500mPa・sが好ましい。20℃における粘度が800mPa・s未満であると、フォームの気泡径が拡大するために、輻射伝熱増大による熱伝導率初期値の上昇や、障壁数減少によるガスバリア性の悪化を招く。また、6000mPa・sを超えると反応液の流動性が不足し、充填性の悪化を招く。
【0040】
本発明において、ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)を配合した際の、ポリオール成分(A)とジオール(H)の合計量中における含ハロゲンポリエーテルポリオールおよび含ハロゲンポリエーテルジオールの合計量の比率は10~80質量%であり、好ましくは20~60質量%である。含ハロゲンポリエーテルポリオールおよびハロゲン化ポリエーテルジオールの合計量の比率が80質量%を超えるとイソシアネート基の三量化反応が阻害され、気泡膜のガスバリア性低下や強度低下を招く。含ハロゲンポリエーテルポリオールおよびハロゲン化ポリエーテルジオールの合計量の比率が10質量%未満では、気泡膜のガスバリア性が低い為に熱伝導率の経時的変化が大きくなる。
【0041】
〈難燃剤(J)〉
本発明においては、必要に応じて難燃剤を添加し、難燃性を付与することができる。難燃剤の種類は特に限定されず、公知のものを使用できるが、常温液状であることが好ましく、メトキシフェノキシシクロホスファゼンが特に好ましい。難燃剤は、ポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)の何れにも添加することができ、添加量はポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)の合計量に対して3~12質量%が好ましく、5~10質量%がより好ましい。ここで、常温とは、5℃~35℃を意味する。
【0042】
本発明においては、添加剤として通常のポリウレタンフォーム用に用いられる可塑剤、着色剤等を必要に応じて使用することができる。これらの成分は、ポリオール組成物(E)と、イソシアネート基末端プレポリマー(F)の何れにも添加することができる。
【0043】
次に本発明における硬質ポリウレタンフォームの製造方法について説明する。
【0044】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、上記した硬質ポリウレタンフォーム用組成物を反応発泡させることにより得ることができる。
【0045】
具体的には、前記ポリオール組成物(E)とイソシアネート基末端プレポリマー(F)とを、たとえば、液温15~50℃、好ましくは20~30℃の範囲で攪拌混合し、金型等に導入することにより硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0046】
その際のイソシアネート基末端プレポリマー(F)のイソシアネート基(以下NCO基とも言う。)とポリオール組成物(E)の活性水素基(以下OH基とも言う。)との割合は、NCO基とOH基の当量比(NCO基/OH基)=1.5~4.0の範囲が好ましく、2.0~3.0の範囲が特に好ましい。
【0047】
硬質ポリウレタンフォームを製造するにあたっては、各原料液を均一に混合可能であればいかなる装置でも使用することができる。例えば、小型ミキサーや、一般のウレタンフォームを製造する際に使用する、注入発泡用の低圧又は高圧発泡機、スラブ発泡用の低圧又は高圧発泡機、連続ライン用の低圧又は高圧発泡機、吹き付け工事用のスプレー発泡機等を使用することができる。
【0048】
硬質ポリウレタンフォームの両面に面材を接着して設ける方法は従来公知の方法から適宜選択することができる。例えば、金型成形等により硬質ポリウレタンフォームを得て、得られる硬質ウレタンフォーム材の両面にプレス法により面材を接着してもよい。また、一般的に行われているいわゆるロールツーロール方式、又はロールツーロール類似の方式等を用いることができる。
【0049】
このロールツーロール方式、又はロールツーロール類似の方式は、下部巻回ロールおよび上部巻回ロールから供給される下部面材および上部面材の間に硬質ウレタンフォーム材の原料液を供給し、発泡成形するものである。成形は、下部面材の下に下部ベルトコンベアを、上部面材の上に上部ベルトコンベアを、それぞれ配置することで行う方法である。
【0050】
得られる面材にサンドイッチされた硬質ポリウレタンフォームは、巻取り可能な場合はロールツーロール方式のように巻取りロールで一端巻き取ってもよく、または、得られる断熱材を成形直後に適宜の寸法に裁断してパネル化してもよい。
【0051】
本発明においては、通気性及び透湿性が高い軟質面材を好適に用いることができる。通気性及び透湿性が高い軟質面材としては、例えば、クラフト紙やポリエステル不織布、ガラス不織布等が挙げられる。
【0052】
例えば、5m/分で走行する、幅110cmの下部コンベア上に設置された通気性軟質面材上に硬質ポリウレタンフォーム用組成物を連続的に吐出し、上部コンベアの下部に設置された通気性軟質面材との間で発泡させることにより通気性軟質面材に挟まれたラミネートボードを得ることができる。
【0053】
このようにして得られた本発明の硬質ポリウレタンフォームは、フォーム自体のガスバリア性に優れるため、通気性が高い軟質面材を使用したラミネートボードや、面材を用いない吹き付け施工断熱材であっても、発泡セル内部のガス組成の継時的変化が少なく、高い断熱性能を長期間保持することが可能である。
【0054】
また、本発明により得られた硬質ポリウレタンフォームを用いた成型品は、建築物の屋根、壁、地下構造物、橋梁の床板、水槽、またはタンク等に好適に用いることができる。
【実施例
【0055】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例において、「%」は全て「質量%」、「部」は全て「質量部」を意味する。
【0056】
<イソシアネート基末端プレポリマーの調製>
攪拌機、窒素導入管、温度計、温調機を備えた反応器を窒素置換した後、MR-200を61.6部、ミリオネートNMを26.4部、ISOEXTER4566を12.0部仕込み、70℃にて3時間撹拌させることにより、NCO基含有量25.7%、20℃における液粘度2860mPa・sのイソシアネート基末端プレポリマーF-1を得た。イソシアネート基末端プレポリマーF-2~F-4も表1に示す配合でF-1と同様に調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
表1で用いた原料を以下に示す。
・MR-200:ポリメリックMDI イソシアネート含量31.0%、平均官能基数
2.73(商品名、東ソー社製)
・ミリオネートNM:モノメリックMDI イソシアネート含量33.5%、平均官能基数2.0(商品名、東ソー社製)
・Isoexter4566:フタル酸系ポリエステルポリオール 水酸基価250(mgKOH/g 平均官能基数2.0 (商品名、COIM社製)
・Ixol M125 :含ハロゲンポリエーテルジオール 水酸基価239(mgKOH/g 平均官能基数2.0 液比重1.57(25℃) 臭素含有量32% 塩素含有量7%(商品名、Sorvay社製)。
【0059】
<ポリオール組成物の調製>
攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を備えた反応器を窒素置換した後、Isoexter4566を87部、Ixol M125を13部、TMCPPを39部、L-6643を2.6部、DMCHAを0.95部、TRXを3.5部、水を1.56部、HFO-1233zdを45.5部仕込み、20℃で0.5時間撹拌し均一に混合し、ポリオール組成物E-1を得た。ポリオール組成物E-2~E-9も、表2に示す配合でポリオール組成物E-1と同様に調製した。
【0060】
【表2】
【0061】
表2で用いた原料を以下に示す。
・Isoexter4566:フタル酸系ポリエステルポリオール 水酸基価250(mgKOH/g 平均官能基数2.0 (商品名、COIM社製)
・Ixol M125 :含ハロゲンポリエーテルジオール 水酸基価239(mgKOH/g 平均官能基数2.0 液比重1.57(25℃) 臭素含有量32% 塩素含有量7%(商品名、Sorvay社製)
・DMCHA:N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン(カオーライザーNo.10(商品名)、花王社製)
・toyocat-TRX:4級アンモニウム塩(商品名、東ソー社製)
・L-6643:シリコーン系整泡剤(商品名、MOMENTIVE社製)
・TMCPP:トリス(クロロプロピル)ホスフェート(商品名、大八化学社製)
・ラビトルFP-200:メトキシフェノキシシクロホスファゼン(商品名、伏見製薬所社製)
・HFO-1233zd:ハイドロフルオロオレフィン(solsticeLBA(商品名)、ハネウェルジャパン社製)。
【0062】
<実施例1~6、比較例1~3>
蓋を備えたアルミ製モールド(高さ250mm、幅250mm、厚み50mm)を、恒温槽内で60℃に調整した。
【0063】
表3に示す配合に従って、液温を20℃に調整したポリオール組成物E-1とイソシアネート基末端プレポリマーF-1とを、ラボミキサーを用いて6000rpmで5秒間撹拌混合し、フォーム密度が39kg/m3となるよう所定量をモールド内に注入し、直ちに蓋を閉じ、60℃の恒温槽内で20分間加熱硬化後に脱型して評価用のパネルサンプルを得た。脱型後直ちに、得られたパネルのコア部を200mm×200mm×14mmに切り出し、実施例1の熱伝導率測定用パネルを得た。また、残りのコア部を10mm×10mm×140mmに切り出し、実施例1の酸素指数測定用サンプルを得た。実施例2~6及び比較例1~3についても、表3に示す配合に従って、同様に評価用サンプルを得た。
【0064】
【表3】
【0065】
<評価方法>
表3の各評価方法について、以下に示す。
【0066】
[熱伝導率]
JIS A1412に示される熱流計法により、英弘精機社製オートλHC-074/314を用いて平均温度23℃で測定した。評価サンプルを作製し、23℃/50%R.H.の恒温恒湿室で24時間保管した後に測定した値を熱伝導率初期値とした。次いで、測定後のサンプルを再び23℃/50%R.H.の恒温恒湿室に30日間保管し、経時後の熱伝導率を測定した。30日間経時後の熱伝導率が20.0mW/m・K未満であれば高い断熱性能を有するといえ、30日間での熱伝導率変化率が、初期値の10%未満であれば経時変化が少ないといえる。
【0067】
[酸素指数]
JIS K 7201-2に準拠して、成形から24時間後に測定した。酸素指数が26.0以上であれば、高い難燃性を有するといえる。
【0068】
<評価結果>
実施例1~6は、30日経時後の熱伝導率が20.0mW/m・K未満、且つ初期値からの変化率が10%未満であり、断熱性能に優れる結果であった。難燃剤としてメトキシフェノキシシクロホスファゼンを用いた実施例6は、断熱性能と難燃性が特に優れている結果であった。比較例1は、イソシアネート基末端プレポリマーの20℃における粘度が800mPa・s未満であるため、熱伝導率の初期値が高く、経時による熱伝導率変化も大きかった。比較例2は、イソシアネート組成物の官能基数が2.6を超えているため、熱伝導率初期値は低いものの、経時による熱伝導率変化が大きくなった。比較例3は、含ハロゲンポリエーテルポリオールを含まないため、経時による熱伝導率変化が大きかった。