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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】画像処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/387 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H04N1/387 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019226246
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2021097288
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
(72)【発明者】
【氏名】林 浩司
【審査官】花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-287566(JP,A)
【文献】特開平07-231385(JP,A)
【文献】特開2006-270248(JP,A)
【文献】特開2006-343831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/38 - 1/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を処理するシステムであって、
前記画像を複数の領域に分割した各領域につき、前記各領域の画像を構成する複数の画素の画素値から得られるパターンと予め用意されたパターンとのパターンマッチングにより線を構成する画素を検出する検出手段と、
前記検出手段により前記各領域につき検出された前記画素の数を計数し、計数した前記画素の数が閾値以上となる前記領域の数が一定数以上でない場合、前記画像の解像度を第1の解像度と決定し、前記領域の数が一定数以上である場合、前記画像の解像度を前記第1の解像度より高い第2の解像度と決定する決定手段と
を含む、画像処理システム。
【請求項2】
前記検出手段は、無彩色の背景上の線を構成する第1の画素を検出する第1の検出手段と、有彩色の背景上の線を構成する第2の画素を検出する第2の検出手段とを含み、
前記決定手段は、前記第1の検出手段により前記各領域につき検出された前記第1の画素の数および前記第2の検出手段により前記各領域につき検出された前記第2の画素の数を計数し、計数した前記第1の画素の数および前記第2の画素の数の少なくとも一方が閾値以上となる前記領域の数が一定数以上でない場合、前記画像の解像度を第1の解像度と決定し、計数した前記第1の画素の数および前記第2の画素の数の少なくとも一方が閾値以上となる前記領域の数が一定数以上である場合、前記画像の解像度を第2の解像度と決定する、請求項に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記決定手段は、前記第1の検出手段により前記各領域につき検出された前記第1の画素のおよび前記第2の検出手段により前記各領域につき検出された前記第2の画素の数を計数し、計数した前記第1の画素の数および前記第2の画素の数の少なくとも一方が閾値以上となる前記領域の数が一定数以上である場合において、前記閾値以上となる画素が前記第1の画素である場合、前記画像の解像度を前記第2の解像度と決定し、前記閾値以上となる画素が前記第2の画素である場合、前記画像の解像度を前記第1の解像度より高く、前記第2の解像度より低い第3の解像度と決定する、請求項に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記第1の検出手段は、前記各画素値に含まれる複数の色成分のうちの最も大きい色成分の値を2値化したデータから得られる、第1の注目画素を中心とした画素群の第1のパターンと、前記各画素値に含まれる複数の色成分のうちの最も小さい色成分の値を2値化したデータから得られる、第2の注目画素を中心とした画素群の第2のパターンのそれぞれが、前記予め用意されたパターンのいずれかと一致する場合の前記第1の注目画素と前記第2の注目画素をそれぞれ所定数以上含む画素群の中心にある画素を仮エッジ画素とし、前記仮エッジ画素が一定個数以上存在する領域を、前記線との境界部分に存在するエッジ領域として抽出することにより、前記線を構成する前記第1の画素を検出する、請求項2または3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記第1の検出手段は、前記各画素値に含まれる複数の色成分のうちの最も大きい色成分の値を2値化して得られる第3のパターンが予め用意されたパターンのうちの白地画素パターンと一致する場合、前記第3のパターンに含まれる画素を白画素とし、第3の注目画素を中心とした前記白画素が所定数以上含まれている画素群を仮白地背景領域と判定し、前記仮白地背景領域と判定された第4の注目画素を中心として一方向に一定の距離離間した2つの画素が前記仮白地背景領域と判定されている場合、前記第4の注目画素を白地背景領域として抽出し、背景を前記白地背景領域として、前記線を構成する前記第1の画素を検出する、請求項4に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記第2の検出手段は、前記各画素値に含まれる複数の色成分のうちの1つの色成分の値を2値化して得られる第4のパターンが前記予め用意されたパターンのうちの尾根画素パターンと一致する場合、前記第4のパターンの画素群の中心にある第5の注目画素を尾根画素として検出し、第6の注目画素の前記1つの色成分の値が該第6の注目画素の周囲の画素より一定レベル以上か否かを判定してピーク画素を検出することにより網点領域を検出し、第7の注目画素を中心とした画素群の全画素の前記1つの色成分の値が中間レベルをとる場合、前記第7の注目画素をべた画素候補として検出し、第8の注目画素を中心として両側に並ぶ所定数の画素のうち各側の少なくとも1つが前記べた画素候補として検出されている場合、前記第8の注目画素をべた画素として検出し、前記各画素値に含まれる複数の色成分の値の差の最大値が所定の閾値以上である画素を有彩色画素として検出し、第9の注目画素を中心として一方向に一定の距離離間した2つの画素が前記有彩色画素として検出されている場合、前記第9の注目画素を有彩色領域として検出し、前記尾根画素であって、背景が前記有彩色領域かつ前記網点領域もしくは前記べた画素である画素を、前記線を構成する前記第2の画素として検出する、請求項2または3に記載の画像処理システム。
【請求項7】
画像を処理するシステムに実行させるプログラムであって、該システムに、
前記画像を複数の領域に分割した各領域につき、該各領域の画像を構成する複数の画素の画素値から得られるパターンと予め用意されたパターンとのパターンマッチングにより線を構成する画素を検出するステップと、
前記各領域につき検出された前記画素の数を計数し、計数した前記画素の数が閾値以上となる前記領域の数が一定数以上存在しない場合、前記画像の解像度を第1の解像度と決定し、前記領域の数が一定数以上存在する場合、前記画像の解像度を前記第1の解像度より高い第2の解像度と決定するステップと
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を処理するシステムおよびその画像の処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原稿を読み込んだ後、画像データの内容から自動で解像度を決定し、決定した解像度に変換して出力する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、個々の画素が文字画像の一部であるか、写真画像の一部であるかを判断し、文字画像の場合は解像度を上げ、写真画像の場合は解像度を低くし、文字画像と写真画像の両方を高品位に出力することを可能にしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の技術では、図面や道路地図等に含まれる線が文字画像ではないことから、高解像度に設定することができず、線を原稿に忠実に再現することが困難であるという問題があった。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、原稿の画像に含まれる線を、原稿に忠実に再現することが可能なシステムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、画像を処理するシステムであって、
画像を構成する複数の画素の画素値に基づき、線を構成する画素を検出する検出手段と、
検出手段により検出された画素の画像における分布に基づき、出力する画像の解像度を決定する決定手段と
を含む、画像処理システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、原稿の画像に含まれる線を、原稿に忠実に再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る画像処理システムの構成例を示した図。
図2】画像処理部の構成例を示した図。
図3】処理パラメータ決定部の構成例を示した図。
図4】原稿を4つの領域に4分割した例を示した図。
図5】白地上細線エッジ分布判定部の構成例を示した図。
図6】白地上細線エッジ画素検出回路の構成例を示した図。
図7】エッジ画素検出回路の構成例を示した図。
図8】黒画素パターンの例を示した図。
図9】白画素パターンの例を示した図。
図10】白地背景検出回路の構成例を示した図。
図11】白画素検出パターンの一例を示した図。
図12】注目画素の補正方法の第1の例を示した図。
図13】注目画素の補正方法の第2の例を示した図。
図14】色地上細線分布判定部の構成例を示した図。
図15】色地上細線画素検出回路の構成例を示した図。
図16】尾根画素検出回路の構成例を示した図。
図17】べた画素検出回路の構成例を示した図。
図18】注目画素の補正方法の第3の例を示した図。
図19】色判定回路の構成例を示した図。
図20】画像処理システムにより実行される処理の流れを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本実施形態に係る画像処理システムの構成例を示した図である。画像処理システムは、画像入力装置と、画像処理装置とを含む。画像入力装置は、原稿を読み取り、画像データを出力する装置である。画像処理装置は、画像入力装置が出力した画像データに対し、所定の処理を行う装置である。
【0009】
画像入力装置と画像処理装置は、別個の装置として構成されていてもよいし、図1に示すように、これら2つの装置を1つの筐体内に実装した画像形成装置(MFP)として構成されていてもよい。
【0010】
MFP10は、画像入力部11と、送信部12と、操作部13と、画像処理部14と、制御部15とを含む。
【0011】
画像入力部11は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含むカラースキャナにより構成される。画像入力部11は、例えばCCDを用いて原稿16からの反射光像をRGB(R:赤、G:緑、B:青)のアナログ信号として読み取る。画像入力部11が読み取った画像の解像度は、入力解像度として参照され、例えば600dpi(dots per inch)×300dpiである。
【0012】
送信部12は、ネットワークカードやモデム等により構成される。送信部12は、公衆送信網、LAN(Local Area Network)、インターネット等の通信ネットワークに接続可能で、ファクシミリや電子メール等の通信方法により、通信ネットワークを介して外部へ画像データを送信する。
【0013】
操作部13は、操作パネル等とされ、ユーザが動作モード等を設定するための設定ボタンやテンキーと、設定画面や動作状況等を表示する表示部とを含む。操作部13は、動作モードの選択画面を表示する。例えば、操作部13においてscan to mailモードが選択された場合、送信部12は、画像データを電子メールに添付し、設定された送信先へ送信する。
【0014】
画像処理部14は、画像入力部11により入力された画像に対し、所定の処理を実行する。画像処理部14は、所定の処理として、例えば階調補正、色補正、解像度変換等を行う。画像処理部14は、処理した画像を画像データとして送信部12へ出力する。制御部15は、CPUにより構成され、MFP10で実行される各種の処理を制御する。
【0015】
図2は、図1に示した画像処理部14の構成例を示した図である。画像処理部14は、A/D変換部20と、シェーディング補正部21と、入力階調補正部22と、領域分離処理部23と、色補正部24と、処理パラメータ決定部25と、空間フィルタ処理部26と、解像度変換処理部27と、出力階調補正部28と、圧縮処理部29とを含む。なお、A/D変換部20等の各部は、回路により構成することもできるし、CPUがプログラムを実行し、CPUを各部として機能させることも可能である。
【0016】
A/D変換部20は、画像入力部11により入力されたRGBのアナログ信号の画像を、RGBのデジタル信号の画像データに変換する。A/D変換部20は、変換した画像データをシェーディング補正部21へ出力する。
【0017】
シェーディング補正部21は、入力されたRGBの画像データに対し、画像入力部11が備えるカラースキャナの照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を実行する。シェーディング補正部21は、歪みを取り除いた画像データを入力階調補正部22へ出力する。
【0018】
入力階調補正部22は、入力された画像データに対し、カラーバランスの調整、下地濃度の除去、コントラストの調整等の画質調整処理を実行する。入力階調補正部22は、画質調整を行った画像データを領域分離処理部23へ出力する。
【0019】
領域分離処理部23は、入力された画像データの画像を構成する各画素を、文字領域、網点領域、写真領域のいずれかに分離する。領域分離処理部23は、分離結果に基づき、各画素がどの領域に属しているかを示す情報(領域識別信号)を空間フィルタ処理部26へ出力する。なお、領域分離処理部23は、画像データを色補正部24および処理パラメータ決定部25へ出力する。
【0020】
色補正部24は、入力された画像データに対し、表示装置の表示特性に適合したR’G’B’の画像データへ変換する。色補正部24は、変換した画像データを空間フィルタ処理部26へ出力する。
【0021】
処理パラメータ決定部25は、解像度変換処理部27で画像データを最適な解像度に変換するための出力解像度を決定する。
【0022】
空間フィルタ処理部26は、色補正部24から入力された画像データに対し、領域分離処理部23から入力された情報を基に、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理を実行し、空間周波数特性を補正する。これにより、画像のぼやけや粒状性劣化を改善する。空間フィルタ処理部26は、ぼやけ等を改善した画像データを解像度変換処理部27へ出力する。
【0023】
解像度変換処理部27は、処理パラメータ決定部25により決定された所望の解像度の画像データになるように解像度変換処理を実行する。解像度変換処理部27は、例えば入力解像度が主走査方向600dpi×副走査方向300dpiで、処理パラメータ決定部25が決定した解像度が300dpi×300dpiである場合、主走査方向の解像度が1/2であるから、主走査方向の2画素毎に平均値を求め、それを出力値とすることで、決定した解像度の300dpi×300dpiへ解像度変換を行う。解像度変換処理部27は、解像度変換した所定解像度の画像データを出力階調補正部28へ出力する。
【0024】
出力階調補正部28は、入力された画像データに対し、必要に応じてかぶりやハイライトの下地が消えるように、あるいは薄くなるように出力階調補正を実行する。かぶりは、画像の一部が暗く表示される現象で、ハイライトは、画像の一部が明るく(白く)表示される現象である。出力階調補正部28は、階調補正を行った画像データを圧縮処理部29へ出力する。
【0025】
圧縮処理部29は、R’G’B’信号からなる画像データに対し、操作部13において設定されたファイル圧縮のためのファイルフォーマットに従い、圧縮処理を実行する。ファイルフォーマットとしては、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、GIF(Graphics Interchange Format)、PNG(Portable Network Graphics)等が挙げられる。圧縮処理部29は、圧縮処理により圧縮データを生成し、送信部12へ出力する。
【0026】
ここでは、圧縮処理部29が送信部12へ出力する構成を示したが、これに限定されるものではなく、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記憶媒体やハードディスクに格納するように構成されていてもよい。
【0027】
図3は、図2に示した処理パラメータ決定部25の構成例を示した図である。処理パラメータ決定部25は、白地上細線エッジ分布判定部30と、色地上細線分布判定部31と、総合判定部32とを含む。
【0028】
白地上細線エッジ分布判定部30は、原稿中から白地上の細線エッジに属する画素を検出し、検出した画素の数を領域毎にカウントし、各領域につきカウントした数が閾値を超えるかどうかを判定し、その判定結果を出力する。白地上の細線エッジに属する画素は、細線と白地との境界部分に存在する画素である。ここでは、白地上の黒色の細線エッジに属する画素を検出するものとして説明するが、白地上の灰色の細線エッジや、黒地上の白色または灰色の細線エッジや、灰色の背景上の白色または黒色の細線エッジ等を検出するものであってもよい。線は、線幅が一定の太さを超える線(例えば太線)であってもよいが、太線は比較的再現がしやすいことから、以下、線幅が一定以下の細線として説明する。
【0029】
領域は、図4に示すように原稿16の画像を4分割した場合、向かって左上の領域Aと、右上の領域B、左下の領域C、右下の領域Dの4つの領域となる。白地上細線エッジ分布判定部30は、各領域につき、細線のエッジに位置する画素を検出してカウントし、それぞれが閾値を超えるかどうかを判定する。白地上細線エッジ分布判定部30は、閾値を超えるか否かを示す判定結果をそれぞれ1bitのデータとして出力する。この例では、4つの領域が存在するため、白地上細線エッジ分布判定部30は、4bitのデータを出力する。なお、領域は、4分割に限られるものではなく、9分割や16分割等であってもよい。
【0030】
図5は、白地上細線エッジ分布判定部30の構成例を示した図である。白地上細線エッジ分布判定部30は、白地上の細線エッジに属する画素を検出する白地上細線エッジ画素検出回路40と、4つのカウンタ回路41と、4つの閾値処理回路42とを含んで構成される。
【0031】
白地上細線エッジ画素検出回路40は、8ビットのデータとして入力された画像データから白地上の細線エッジに属する画素を検出する。なお、画像データは、説明の都合上、8ビットのデータとして説明するが、これに限られるものではない。8ビットのデータは、原稿の白側を「255」付近、黒側を「0」付近とする。
【0032】
図6は、白地上細線エッジ画素検出回路40の構成例を示した図である。白地上細線エッジ画素検出回路40は、MAX回路50と、MIN回路51と、エッジ画素検出回路52と、白地背景検出回路53と、AND回路54とを含んで構成される。
【0033】
画像データは、RGBの3つの色成分のデータを含み、各色成分のデータがMAX回路50、MIN回路51へ入力される。MAX回路50は、3つの色成分のデータのうち、最も大きい値をもつデータを出力し、MIN回路51は、3つの色成分のデータのうち、最も小さい値をもつデータを出力する。出力された2つのデータは、エッジ画素検出回路52へ入力される。また、MAX回路50から出力されたデータは、白地背景検出回路53へも入力される。
【0034】
図7は、エッジ画素検出回路52の構成例を示した図である。エッジ画素検出回路52は、黒色の線(文字を含む)の一部と線に連続した白地の一部が共存する画素領域を検出する。エッジ画素検出回路52は、2値化A回路60と、黒画素パターンマッチング回路61と、計数A回路62と、2値化B回路63と、白画素パターンマッチング回路64と、計数B回路65と、AND回路66と、判定回路67とを含んで構成される。
【0035】
MIN回路51から出力されたデータは、2値化A回路60へ入力される。2値化A回路60は、入力されたデータを所定の閾値と比較し、非低レベル(非黒)/低レベル(黒)に2値化し、黒画素パターンマッチング回路61へ出力する。
【0036】
黒画素パターンマッチング回路61は、例えば注目すべき画素(注目画素)を中心とした3×3の画素群(マトリックス)の非黒/黒のパターンと、図8に示すパターンとのパターンマッチングを行う。マトリックスのパターンが、図8に示すいずれかのパターンと一致した場合、黒画素パターンマッチング回路61は、注目画素を連結黒画素と判定し、連結黒画素であることを示す信号「1」を判定結果として出力する。連結黒画素は、一方に延びるように少なくとも2つの黒画素と連結される黒画素である。図8は、黒丸が含まれる画素70は、黒でなければならない画素(黒画素)で、無印の画素71は、白、黒を問わない画素である。
【0037】
黒画素パターンマッチング回路61は、両者のパターンが一致しない場合、判定結果として信号「0」を出力する。
【0038】
計数A回路62は、黒画素パターンマッチング回路61から出力された「1」の個数(連結黒画素の個数)を、注目画素を中心とした、例えば3×3のマトリックス内について計数する。計数A回路62は、計数した値が一定値(例えば2)以上の場合「1」を出力し、一定値未満の場合「0」を出力する。
【0039】
MAX回路50から出力されたデータは、2値化B回路63へ入力される。2値化B回路63は、入力されたデータを所定の閾値と比較し、非高レベル(非白)/高レベル(白)に2値化し、白画素パターンマッチング回路64へ出力する。
【0040】
白画素パターンマッチング回路64では、例えば注目画素を中心とした3×3のマトリックスの非白/白のパターンと、図9に示すいずれかのパターンとが一致した場合、注目画素を連結白画素と判定し、連結白画素であることを示す信号「1」を出力する。図9は、白丸が含まれる画素72は、白でなければならない画素で、無印の画素73は、白、黒を問わない画素である。
【0041】
白画素パターンマッチング回路64は、両者のパターンが一致しない場合、判定結果として「0」を出力する。
【0042】
計数B回路65は、白画素パターンマッチング回路64から出力された信号「1」の個数(連結白画素の個数)を、注目画素を中心とした、例えば3×3のマトリックス内について計数する。計数B回路65は、計数した値が一定値(例えば2)以上の場合「1」を出力し、一定値未満の場合「0」を出力する。
【0043】
計数A回路62および計数B回路65から出力された値は、AND回路66へ入力される。AND回路66は、2つの値の論理積による論理演算を行い、演算結果を判定回路67へ出力する。AND回路66は、例えば注目画素を中心とした3×3のマトリックス内に2個以上の連結黒画素および2個以上の連結白画素が同時に存在するとき、「1」を出力する。AND回路66は、「1」を出力したときの注目画素を仮エッジ画素とする。
【0044】
判定回路67は、例えば注目画素を中心とした5×5のマトリックス内に仮エッジ画素が一定個数(例えば1個)以上あれば、注目画素または注目画素を含む一定の大きさのブロックをエッジ領域と判定し、「1」を出力する。ブロックの大きさは、例えば5×5のマトリックスとすることができるが、これに限られるものではない。エッジ領域に含まれる画素がエッジ画素となる。
【0045】
これらの回路では、細線エッジには連結白画素および連結黒画素が同時に一定以上の密度で存在するという性質を利用し、判定のための範囲の大きさを適切に選ぶことで、細線のエッジ領域を抽出している。このような方法は、微小ノイズの影響を受けにくく、安定な領域抽出が可能である。
【0046】
白地上の黒色の細線は、細線のエッジ領域に加えて、背景に白地のある画素領域を検出することで、細線が存在する領域を正確に検出することができる。 図10は、背景に白地のある画素領域を検出する白地背景検出回路53の構成例を示した図である。白地背景検出回路53は、背景に白地のある幅の狭い領域を検出する。
【0047】
白地背景検出回路53は、2値化回路80と、白画素検出回路81と、膨張回路82と、補正回路83とを含んで構成される。
【0048】
MAX回路50から出力されたデータは、2値化回路80へ入力される。2値化回路80は、入力されたデータを所定の閾値と比較し、白/非白に2値化し、2値化信号として白画素検出回路81へ出力する。
【0049】
白画素検出回路81は、2値化信号により構成される局所的な2次元パターンと、予め用意した白地画素パターンとを比較し、白地画素を検出する。図11は、用意するパターンの一例を示した図である。図11中、L11~L55は全て白画素である。このため、5×5のマトリックス内の中心画素L33が白地画素である条件は、中心画素L33を含め、5×5の全ての画素が白画素であることである。白画素検出回路81は、検出結果を膨張回路82へ出力する。
【0050】
膨張回路82は、注目画素を中心としたN×N(N、Nは奇数)の大きさのブロック内に、白画素検出回路81で検出した白画素が1個以上存在するときに、注目画素またはブロックを仮白地背景領域と判定する。
【0051】
補正回路83は、図12に示すように、膨張回路82により仮白地背景領域と判定された注目画素Pまたはブロックの中心の注目画素Pから主走査方向にL(Lは1以上の整数)画素ずつ離れた画素A、Bについて、仮白地背景領域と判定されているかを確認する。補正回路83は、画素A、Bの両方が仮白地背景領域と判定されている場合、注目画素Pを白地背景領域と判定する。白地背景領域に含まれる画素が白地背景画素となる。補正回路83は、注目画素Pについて白地背景領域と判定した場合、白地背景領域であることを示す信号「1」を出力する。
【0052】
このようにして、細線のエッジ領域と白地背景領域とを正確に抽出することで、細線を鮮明に再現することが可能となる。
【0053】
なお、図12に示す例では、注目画素Pに対して主走査方向の前後にある白地に挟まれていることから、Lの値を適当に選択することで、注目画素Pが副走査方向に延びる細線の一部(仮の縦細線)である条件を入れることが可能となる。
【0054】
細線は、副走査方向に限らず、副走査方向に垂直な主走査方向へ延びるものもある。副走査方向に対しても、図13に示すように、注目画素Pに対してL画素ずつ離れた画素C、Dについて、画素A、Bと同様の判定を行うことで、主走査方向に延びる細線の一部(仮の横細線)である条件を入れることが可能となる。
【0055】
再び図6を参照して、AND回路54は、エッジ画素検出回路52からの出力値と白地背景検出回路53からの出力値の論理積による論理演算を行い、演算結果を出力する。注目画素がエッジ画素かつ白地背景画素である場合、AND回路54は、注目画素が白地上細線エッジ画素であることを示す信号「1」を出力する。注目画素がエッジ画素と白地背景画素のいずれか一方またはそのいずれでもない場合、AND回路54は、注目画素が白地上細線エッジ画素ではないことを示す信号「0」を出力する。
【0056】
再び図5を参照して、AND回路54から出力された、画像における各領域について検出した信号は、各領域用のカウンタ回路41へ入力される。カウンタ回路41は、白地上細線エッジ画素の数、すなわちAND回路54から出力された信号「1」の数を計数する。カウンタ回路41は、画像における対象領域につき、白地上細線エッジの画素の数を計数したところで、計数結果をカウンタ値として閾値処理回路42へ出力する。
【0057】
閾値処理回路42は、入力されたカウンタ値を所定の閾値と比較し、白地上細線エッジ画素が所定の閾値以上存在するか否かを判定する。そして、閾値処理回路42は、判定結果を、図3に示す総合判定部32へ出力する。判定結果は、例えば白地上細線エッジ画素が所定の閾値以上存在する旨の「有」、存在しない旨の「無」という情報とされる。ここでは、「有」、「無」としているが、「1」、「0」等であってもよい。
【0058】
次に、図3に示す色地上細線分布判定部31について説明する。色地上細線分布判定部31は、原稿中から色地上の細線に属する画素を検出し、図4に示したように原稿を各領域に分割し、各領域につき検出された画素をカウントし、各カウンタ値に対して閾値判定し、判定結果を出力する。
【0059】
図14は、色地上細線分布判定部31の構成例を示した図である。色地上細線分布判定部31は、白地ではなく、有彩色の背景(色地)上の細線に属する画素を検出する色地細線画素検出回路90と、4つのカウンタ回路91と、4つの閾値処理回路92とを含んで構成される。
【0060】
色地細線画素検出回路90は、8ビットのデータとして入力された画像データから色地上の細線に属する画素を検出する。
【0061】
図15は、色地細線画素検出回路90の構成例を示した図である。色地細線画素検出回路90は、尾根画素判定回路100と、網点画素判定回路101と、べた画素判定回路102と、色判定回路103と、総合判定回路104とを含んで構成される。
【0062】
尾根画素判定回路100は、注目画素が線画(文字を含む)の尾根に相当する画素であるか否かを判定する。尾根は、線状に連なっている突出した部分である。尾根画素判定回路100は、例えば5×5程度のマトリックス内で急峻な尾根状の箇所(尾根画素)を検出する。尾根画素は、尾根状の箇所に限られるものではなく、同じく線状に連なっている谷状の箇所も含まれる。尾根画素判定回路100は、線状に連なっている部分を検出することができることから、文字を含む細線に相当する画素も検出することができる。尾根画素判定回路100は、RGBの3色のうちの1色のデータがあれば尾根状の箇所を検出することが可能である。このため、図14に示す例では、尾根画素判定回路100は、G(緑)のデータのみの入力を受け付けている。
【0063】
網点画素判定回路101は、注目画素の周囲や線の背景が網点領域(網点画素)であるか否かを判定する。網点は、色の濃淡を表現するための小さな点で、同じ色でも、点を大きくすることで濃い色を表現し、点を小さくすることで淡い色を表現する。網点画素判定回路101も、1色のデータがあれば網点領域か否かを検出することが可能であり、この例ではGのデータのみの入力を受け付けている。
【0064】
べた画素判定回路102は、注目画素の周辺や線の背景がべた領域(べた画素)であるか否かを判定する。べた領域は、単色で塗り潰された領域である。べた画素判定回路102も、1色のデータがあればべた領域か否かを検出することが可能であり、この例ではGのデータのみの入力を受け付けている。
【0065】
色判定回路103は、注目画素の周辺が有彩領域(有彩画素)であるか否かを判定する。有彩領域は、色の三属性である色相、明度、彩度を有する色であって、黒、灰、白(無彩色)以外の色を有する領域である。色判定回路103は、RGBの全ての色データが必要であるため、3つの色データの入力を受け付けている。
【0066】
総合判定回路104は、注目画素が所定の特徴を有するか否かを判定し、判定結果を出力する。所定の特徴としては、例えば注目画素が尾根画素であり、背景が有彩画素かつ網点画素であること、あるいは注目画素が尾根画素であり、背景が有彩画素かつべた画素であること、等が挙げられる。細い道路が多く混み合った(ビジーな)道路地図のような原稿は、多数の線の網点から構成されていることが多い。これらの網点は、スキャナによって点(ドット)が潰れて検出できない場合がある。この場合、潰れたドットはべた画素として検出することが可能である。そこで、総合判定回路104は、線部の背景をべた領域として検出できるようにしている。
【0067】
尾根画素判定回路100は、細線の尾根に相当する画素を、適当なマスクを使用して検出する。マスクを使用した画素の検出方法については、例えば特開平3-82269号公報に詳述されているので、その詳細については当該公報を参照されたい。ここでは、その方法を簡単に説明する。
【0068】
尾根画素判定回路100は、図16に示すような構成とされる。すなわち、尾根画素判定回路100は、平滑化処理回路110と、尾根画素検出回路111とを含む。平滑化処理回路110は、入力されたデータを所定の重み係数で平滑化し、入力データの前処理を行う。平滑化されると、孤立した小さなドットからなる網点の濃度レベルが縮小され、細線との濃度レベルの差がより大きくなる。このため、細線とそれ以外の領域との分離が行いやすくなる。
【0069】
尾根画素検出回路111は、平滑化されたデータの局所的な二次元パターンと、所定サイズの尾根画素パターンとを比較し、二次元パターンの領域の中心画素(注目画素)を尾根画素として検出する。これは、線の中心部が、画素レベルにおいて尾根状に連なる特性を有していることを利用したものである。
【0070】
網点画素判定回路101は、原稿中から網点(印刷の絵柄)領域を検出する。網点画素の検出方法については、例えば「文字/絵柄(網点、写真)混在画像の像域分離方式」、電子情報通信学会論文誌Vol.J75-D、No.1 pp30-47(1992年1月)に詳述されているので、その詳細については当該論文誌を参照されたい。
【0071】
網点画素の検出は、網点領域の濃度変化が文字領域の濃度変化と大きく異なる点に着目し、例えば3×3画素のブロックにおける中心画素(注目画素)の値が周囲画素より一定レベル以上か否かを判定してピーク画素を検出する。そして、ピーク画素の検出結果を基に網点領域を検出し、補正し、分離することにより検出する。
【0072】
べた画素判定回路102は、図17に示すような構成とされる。すなわち、べた画素判定回路102は、平滑化処理回路120と、べた画素検出回路121と、補正回路122とを含む。
【0073】
平滑化処理回路120は、尾根画素判定回路100に含まれる平滑化処理回路110と同様、入力されたデータを所定の重み係数で平滑化し、入力データの前処理を行う。
【0074】
べた画素検出回路121は、例えば5×5画素のマスクにおいて、マスク内の全画素が中間レベルをとるか否かを判定して、べた画素候補を検出する。画素が中間レベルをとるか否かは、次の式1の条件を満たすか否かにより判定することができる。べた画素候補は、上記式1を満たす場合のマスク内の中心にある注目画素である。
【0075】
【数1】
【0076】
補正回路122は、図18に示すような補正を行い、真のべた画素か否かを判定する。図18は、注目画素Pを中心とし、その両側(ここでは左右とする)に並ぶ32画素中、それぞれ1つでも、べた画素検出回路121によりべた画素候補として検出された画素があれば、注目画素Pを真のべた画素として出力する。
【0077】
色判定回路103は、図19に示すような構成とされる。すなわち、色判定回路103は、有彩色画素検出回路130と、第1補正回路131と、第2補正回路132とを含んで構成される。
【0078】
有彩色画素検出回路130は、R、G、Bの3つのデータの入力を受け付け、3つのデータの差の最大値Δ(R,G,B)が所定の閾値以上である画素を有彩色画素として検出する。
【0079】
第1補正回路131は、注目領域を中心とした所定の大きさのマスクにおいて、有彩色画素の数を計数し、計数した数が所定の閾値以上である場合、注目領域を構成する注目画素またはブロックを有彩色候補画素領域とする。
【0080】
第2補正回路132は、図12に示した補正例を参考にして、注目画素Pが有彩色候補画素領域であるか、あるいは注目画素Pの左右の一定距離だけ離れた画素A、Bが共に有彩色候補画素領域であるかを判定する。第2補正回路132は、注目画素Pあるいは画素A、Bのいずれかが有彩色候補画素領域である場合、注目画素Pを有彩色領域として信号「1」を出力し、そうでない場合、注目画素Pを非有彩色領域(無彩色領域)として信号「0」を出力する。
【0081】
総合判定回路104は、注目画素が次の(1)~(3)の特徴を有する場合にアクティブ(ON)と判定し、信号「1」を出力する。
【0082】
(1) 注目画素が、尾根画素判定回路100により尾根画素として検出された。
(2) 注目画素が、網点画素判定回路101により網点画素として検出されたまたはべた画素判定回路102によりべた画素として検出された。
(3) 注目画素が、色判定回路103により有彩色領域として検出された。
【0083】
再び図14を参照して、総合判定回路104から出力された、画像における各領域について検出した信号は、各領域用のカウンタ回路91へ入力される。カウンタ回路91は、色地上細線画素の数、すなわち総合判定回路104から出力された信号「1」の数を計数する。カウンタ回路91は、画像における対象領域につき、色地上細線画素の数を計数したところで、計数結果をカウンタ値として閾値処理回路92へ出力する。
【0084】
閾値処理回路92は、入力されたカウンタ値を所定の閾値と比較し、色地上細線画素が所定の閾値以上存在するか否かを判定する。そして、閾値処理回路92は、判定結果を、図3に示す総合判定部32へ出力する。判定結果は、例えば色地上細線画素が所定の閾値以上存在する旨の「有」、存在しない旨の「無」という情報とされる。
【0085】
再び図3を参照して、総合判定部32は、各閾値処理回路42、92から出力された情報に基づき、画像の出力解像度を決定する。図5に示した白地上細線エッジ分布判定部30および図14に示した色地上細線分布判定部31は、それぞれ4つずつ閾値処理回路42、92を有することから、計8つの「有」、「無」という情報が出力される。
【0086】
白地上細線エッジ分布判定部30の閾値処理回路42から「有」の情報が出力された場合、白地上に細線が存在することを示している。色地上細線分布判定部31の閾値処理回路92から「有」の情報が出力された場合、色地上に細線が存在していることを示している。総合判定部32は、細線を1本でも含む場合に、その細線を忠実に再現するべく高い解像度に決定することができるが、これではほとんどの原稿が高解像度に決定されてしまう。
【0087】
そこで、図面原稿やビジーな道路地図原稿等の1枚の原稿全体で「有」の情報が出力された場合に、高解像度に決定することができる。
【0088】
しかしながら、図面原稿や道路地図原稿等は、余白の部分や、海や山等の部分が存在し、全ての領域で「有」と判定されない場合がある。このことに鑑み、4領域のうち3領域以上で判定結果が「有」の場合、高解像度に決定することができる。ここでは、4領域のうち3領域以上としたが、これに限られるものではなく、4領域のうち2領域以上としてもよい。
【0089】
例えば、通常の解像度を150dpiとした場合、図面原稿や道路地図原稿等は、その倍の300dpiとすることができる。1ページ全体が図面から構成される図面原稿は、白地上に細線が複数存在することから、総合判定部32は、白地上細線エッジ分布判定部30の3以上の閾値処理回路42から「有」の情報が出力された場合に、高解像度である300dpiと決定する。1ページ全体が道路地図から構成される道路地図原稿は、色地上に細線が複数存在することから、総合判定部32は、色地上細線分布判定部31の3以上の閾値処理回路92から「有」の情報が出力された場合に、高解像である300dpiと決定する。総合判定部32は、2以下の閾値処理回路42または2以下の閾値処理回路92からしか「有」の情報が出力されなかった場合、通常の解像度150dpiと決定する。
【0090】
原稿は、図面領域と道路地図領域の両方を含む場合がある。この場合、総合判定部32は、画像を4つに分けた4領域のうち3領域以上で、閾値処理回路42および閾値処理回路92の少なくとも一方から「有」の情報が出力された場合に、300dpiと決定する。
【0091】
したがって、図4中、領域Aにつき、閾値処理回路42、閾値処理回路92の両方から「有」の情報が出力された場合、閾値処理回路42のみから「有」の情報が出力された場合、閾値処理回路92のみから「有」の情報が出力された場合のいずれの場合であっても、総合判定部32は、領域Aについては「有」と判定する。総合判定部32は、同様にして、領域B~Dについても「有」か「無」かを判定し、これら4領域のうち3領域以上が「有」である場合、高解像度である300dpiに決定する。一方、総合判定部32は、「有」が2領域以下の場合、150dpiと決定する。
【0092】
以上の説明では、図面原稿も、道路地図原稿も同じ解像度に決定しているが、異なる解像度に決定することも可能である。例えば、図面原稿は300dpi、道路地図原稿は200dpi、その他の原稿は150dpi等である。
【0093】
この場合、総合判定部32は、4つの閾値処理回路42のうち3以上から「有」の情報が出力された場合、図面原稿と判断し、300dpiに決定する。また、総合判定部32は、4つの閾値処理回路92のうち3以上から「有」の情報が出力された場合、道路地図原稿と判断し、200dpiに決定する。総合判定部32は、それ以外の場合、それ以外の原稿と判断し、150dpiに決定する。
【0094】
総合判定部32は、図2に示す解像度変換処理部27へ、各解像度に相当するフラグを処理パラメータ決定部25の出力値として出力する。
【0095】
図20に、本実施形態に係る画像処理システムにより実行される処理を簡単にまとめる。原稿をセットし、操作部13によりユーザが送信先を設定し、原稿の読み取りを開始させることによりステップ100から処理を開始する。ステップ101では、画像入力部11が原稿を読み取り、画像データに変換する。ステップ102では、シェーディング補正部21等が、変換された画像データに対してシェーディング補正等の画像処理を行う。
【0096】
ステップ103では、処理パラメータ決定部25が、画像データの画像を構成する複数の画素の画素値に基づき、細線を構成する画素を検出する。ステップ104では、処理パラメータ決定部25が、検出された画素の画像における分布に基づき、画像を出力する際の解像度を決定する。ステップ105では、解像度変換処理部27が決定された解像度の画像に変換する。ステップ106では、送信部12が、解像度が変換された画像の画像データを送信先へ送信し、ステップ107で処理を終了する。
【0097】
この例では、一般文書の出力解像度が低い解像度(例えば150dpi)に設定されているため、細線を検出し、細線を高解像度(例えば300dpi)で出力するように解像度を決定している。したがって、出力解像度が150dpiや200dpi等の、細線を出力する解像度より低い解像度に設定されている場合に、この処理を実行するように構成されていてもよい。
【0098】
以上に説明したように、原稿中の細線を、例えば150dpiという比較的低い解像度で出力した場合、線のジャギー、線の太り・細り、最悪は消えてしまうといった不具合が発生する。しかしながら、本実施形態に係るシステム等を提供することで、画像において文字の細線だけではなく、白地上の細線や色地(網点領域やべた領域)上の細線を検出し、その存在状態により最適な解像度を決定することができるので、このような不具合の発生を抑制することができる。具体的には、図面や道路地図等を高解像度で出力し、一般文書は通常の低解像度で出力することができる。
【0099】
原稿画像上の細線の検出を、画像を複数の領域に分割し、細線を構成する画素の分布に基づいて実施するため、細線の検出精度を向上させることができる。 また、白地上の細線か、色地上の細線かによって決定する解像度を変えることができるので、細線を最適な解像度で出力することができる。
【0100】
これまで本発明を画像処理システムおよびコンピュータに実行させるためのプログラムとして上述した実施の形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。したがって、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0101】
したがって、画像処理システムにより実行される方法や上記プログラムが記録された記録媒体、上記プログラムを、ネットワークを介して提供するサーバ装置等も提供することができるものである。
【符号の説明】
【0102】
10…MFP
11…画像入力部
12…送信部
13…操作部
14…画像処理部
15…制御部
20…A/D変換部
21…シェーディング補正部
22…入力階調補正部
23…領域分離処理部
24…色補正部
25…処理パラメータ決定部
26…空間フィルタ処理部
27…解像度変換処理部
28…出力階調補正部
29…圧縮処理部
30…白地上細線エッジ分布判定部
31…色地上細線分布判定部
32…総合判定部
40…白地上細線エッジ画素検出回路
41…カウンタ回路
42…閾値処理回路
50…MAX回路
51…MIN回路
52…エッジ画素検出回路
53…白地背景検出回路
54…AND回路
60…2値化A回路
61…黒画素パターンマッチング回路
62…計数A回路
63…2値化B回路
64…白画素パターンマッチング回路
65…計数B回路
66…AND回路
67…判定回路
70~73…画素
80…2値化回路
81…白画素検出回路
82…膨張回路
83…補正回路
90…色地上細線画素検出回路
91…カウンタ回路
92…閾値処理回路
100…尾根画素判定回路
101…網点画素判定回路
102…べた画素判定回路
103…色判定回路
104…総合判定回路
110…平滑化処理回路
111…尾根画素検出回路
120…平滑化処理回路
121…べた画素検出回路
122…補正回路
130…有彩色画素検出回路
131…第1補正回路
132…第2補正回路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0103】
【文献】特開2000-261659号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20