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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ペースト塩化ビニル系樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 14/06 20060101AFI20240109BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08F14/06
C08J9/06 CEV
C08L27/06
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019232463
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021100989
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊輔
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-304920(JP,A)
【文献】特開2009-001695(JP,A)
【文献】特開2000-204211(JP,A)
【文献】特開平08-259761(JP,A)
【文献】特開平06-107711(JP,A)
【文献】特開2004-83854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134822(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0311531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0123077(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C08J
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径0.3μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩化ビニル系樹脂であって、粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が90wt%以上かつ該小粒子群の累積重量頻度が10wt%以下であり、該小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400以下、大粒子群における頻度の最大ピークを示す粒子径が1.8μm以上、小粒子群における頻度の最大ピークを示す粒子径が0.2μm未満、ペースト塩化ビニル系樹脂としての平均重合度が1000以下であることを特徴とするペースト塩化ビニル系樹脂。
【請求項2】
壁紙発泡体用であることを特徴とする請求項1に記載のペースト塩化ビニル系樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の粒子径分布を有する塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩化ビニル系樹脂に関するものであり、特に表面平滑性に優れ、加工初期の発泡荒れが少なく、発泡壁紙用として優れた特性を有するペースト塩化ビニル系樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペースト加工用として知られているペースト塩化ビニル系樹脂(以下、ペースト塩ビと略記する場合もある)は、一般的に可塑剤、安定剤、発泡剤等の配合剤と混練することにより、ペースト塩ビゾルとして加工に供され、種々の加工法により様々な成形品が得られる。その中でも壁紙、クッションフロア、発泡シートのような建築資材はペースト塩ビの主要な用途の一つである。
【0003】
一般に壁紙、クッションフロア、発泡シート等は、裏打ち材料にペースト塩ビゾルを塗付し加熱する原反作成工程、原反にグラビア印刷等で着色を施す印刷工程、印刷された原反を加熱発泡し発泡体を生産する発泡工程、発泡体に柄を付けるエンボス工程からなる方法で製造される。
【0004】
得られた発泡体の表面が荒れていると、印刷工程での印刷が困難となる。また、エンボス後に得られる製品の意匠性が損なわれることから、表面平滑性の優れたペースト塩ビが求められている。
【0005】
また、発泡工程において、加工初期のオーブンの熱量が安定しないことから、得られる発泡体表面の平滑性荒れ(以下、スタート発泡荒れと称する場合もある)、歩留まりが低下する場合があることから、耐スタート発泡荒れ性の優れたペースト塩ビが求められている。
【0006】
一般的に、ペースト塩ビでは粒子の制御を行うことで種々の特性を発揮させており、特定の粒子径分布と、特定の重合度を有する、発泡性に優れたペースト塩ビが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0007】
また、微細セルロース繊維を含有させることで、チキソトロピー性と表面平滑性を向上させたペースト塩ビが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-080479号公報
【文献】特開2019-172979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に提案の方法では平均重合度1500以上の微小粒子を含有するため、また、特許文献2に提案の方法では溶融しにくい微細セルロース繊維を含有するため、発泡荒れが発生して表面平滑性が低下するという課題があった。
【0010】
そこで、表面平滑性に優れ、加工初期の発泡荒れが少なく、特に発泡壁紙用として優れた特性を有するペースト塩ビが求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の粒径分布と、特定の重合度を有する塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩ビが表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性に優れ、特に発泡壁紙用として優れた特性を有するものとなることを見出し、発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、粒子径0.3μmを超えて5μm以下の大粒子群の塩化ビニル系樹脂と0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むペースト塩ビであって、粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度が90wt%以上かつ該小粒子群の累積重量頻度が10wt%以下であり、該小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400以下であることを特徴とするペースト塩ビに関するものである。
【0013】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0014】
本発明のペースト塩ビは、大粒子群の塩化ビニル系樹脂と小粒子群の塩化ビニル系樹脂とを含むものであり、該大粒子群は、粒子径0.3μmを超えて5μm以下の塩化ビニル系樹脂であり、該小粒子群は、0.3μm以下の塩化ビニル系樹脂である。また、粒子径分布測定における該大粒子群の累積重量頻度は、90wt%以上であり、該小粒子群の累積重量頻度は10wt%以下である。これら大粒子群の塩化ビニル系樹脂と小粒子群の塩化ビニル系樹脂の組合せにより、表面平滑性に優れ、加工初期の発泡荒れの少ないペースト塩ビとなるものである。ここで、大粒子群の累積重量頻度が90wt%未満のものである場合、耐スタート発泡荒れ性に劣るものとなる。なお、本発明における粒径分布、平均粒子径等の測定方法としては、例えばペースト塩ビを水に分散し、超音波分散を行い、ディスク遠心式粒度分布測定装置を用いて測定する方法を挙げることができる。
【0015】
また、該小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1400以下である。ここで、該小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度が1400を越えるものである場合、表面平滑性に劣るものとなる。なお、本発明における平均重合度の測定方法としては、例えばJIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により重合度を算出する方法を挙げることができる。
【0016】
そして、本発明のペースト塩ビとしては、特に溶融性に優れ、耐スタート発泡荒れ性に優れるペースト塩ビとなることから、粒子径分布測定における大粒子群及び小粒子群の粒子径分布はそれぞれ少なくとも1つのピークを有するものであることが好ましく、その際の大粒子群における頻度の最大ピークを示す粒子径は1.8μm以上であり、小粒子群における頻度の最大ピークを示す粒子径は0.2μm未満のものであることが好ましく、特に大粒子群においては1.9μm以上、小粒子群においては0.2μm未満のものが好ましい。
【0017】
本発明のペースト塩ビは、特に表面平滑性が良好なものとなることから平均重合度1000以下のものであることが好ましく、更に800以下のものであることが好ましい。
【0018】
本発明のペースト塩ビは、大粒子群の塩化ビニル系樹脂と小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであり、これら塩化ビニル系樹脂は塩化ビニル系樹脂の範疇に属するものであれば同一でも異なる成分のものであってもよく、該塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル単独重合体はもとより、共重合体であってもよく、その際の共重合可能な単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル類;マレイン酸エステル、フマル酸エステル、桂皮酸エステル類等の不飽和カルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルアミルエーテル、ビニルフェニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のモノオレフィン類;塩化ビニリデン、スチレン及びその誘導体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0019】
本発明のペースト塩ビの製造方法としては、ペースト塩ビの一般的な重合法として知られている方法を用いることができ、例えば乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等の重合法により塩化ビニル系樹脂ラテックスを得て、得られたラテックスの水分を除去することによりペースト塩ビを得ることができる。その際に、塩化ビニル系樹脂ラテックスから水分を除去する方法としては、例えば噴霧乾燥、流動層乾燥、通気乾燥、回転乾燥、伝導加熱乾燥による方法等が挙げられ、中でも、効率よく水分を除去できることから、噴霧乾燥による方法が好ましい。
【0020】
以下に、本発明のペースト塩ビを製造する際に用いられる塩化ビニル系樹脂ラテックスの製造法の一例として、シードミクロ懸濁重合法を示す。
【0021】
シードミクロ懸濁重合法とは、1)ミクロ懸濁重合法により油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂を含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックスを得る第一段階、2)得られたシードラテックスを塩化ビニル単量体、又は塩化ビニル単量体とこれと共重合可能な単量体を、脱イオン水、乳化剤、緩衝剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化助剤の存在下で緩やかな攪拌で重合を行い、シードラテックスを肥大化させて塩化ビニル系樹脂ラテックスを得る第二段階からなる重合方法である。
【0022】
ここで、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体としては、上記した単量体を例示することができる。また、乳化剤としては、一般的なアニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤があげられ、アニオン性乳化剤としては、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸エステル塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジへキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸塩;ラウリン酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテルサルフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルサルフェートナトリウム塩などのエトキシサルフェート塩;アルカンスルホン酸塩;アルキルエーテル燐酸エステルナトリウム塩などを挙げることができる。また、ノニオン性乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリルエステルなどを挙げることができる。そして、その中でも、より安定にペースト塩ビの製造が可能となることから、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩又はアルキルベンゼンスルホン酸塩とアルキル硫酸エステル塩との混合物を使用することが好ましい。
【0023】
緩衝剤としては、例えば、リン酸一水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸-苛性カリウム溶液等が挙げられる。
【0024】
必要に応じて用いられる乳化助剤としては、例えば、セチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;そのエステル、芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0025】
また、シードミクロ懸濁重合法に用いられる1)の油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂シードラテックスは、以下のようなミクロ懸濁重合法で調製することが可能である。まず、塩化ビニル単量体、油溶性重合開始剤、界面活性剤、緩衝剤、高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、塩素化パラフィン等の分散助剤、必要に応じて重合度調整剤を添加してプレミックスし、ホモジナイザーにより均質化処理して油滴の調製を行なう。この際のホモジナイザーとしては、例えば、コロイドミル、振動攪拌機、二段式高圧ポンプ等を用いることができる。そして、均質化処理した液を重合器に送り、緩やかに攪拌しながら重合器内の温度を上げて重合反応を開始し、所定の転化率に達するまで重合を行なうことにより油溶性重合開始剤を含有するシードラテックスを調整することが可能である。
【0026】
油溶性重合開始剤としては、10時間半減期温度30~70℃のジアシルパーオキサイドが好ましく、そのような重合開始剤としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド等が挙げられる。
【0027】
そして、得られた油溶性重合開始剤を含む塩化ビニル系樹脂シードラテックスを2)の工程にて、塩化ビニル単量体等の存在下で肥大化を行い、重合を行うことにより塩化ビニル系樹脂ラテックスとすることが可能である。
【0028】
本発明のペースト塩ビは、これら方法により大粒子群の塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックス及び小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含む塩化ビニル系樹脂ラテックスを調製し、これらを混合し噴霧乾燥機等により処すことにより得ることができる。
【0029】
本発明のペースト塩ビは、可塑剤、充填剤、顔料、発泡剤、希釈剤、安定剤等を配合することにより、成形加工性に優れるペースト塩ビゾルとすることが可能となり、フィルム、シート、壁紙、床材、発泡シート等の各種用途に適用可能であり、特に表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性の要求される発泡壁紙用として特に適したものとなる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のペースト塩ビは、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性に優れる発泡体を提供することが可能であり、その工業的価値は非常に高いものである。
【実施例
【0031】
以下に、実施例より得られたペースト塩ビの評価方法を示す。
【0032】
<重合度>
JIS K6721のウベローデ粘度計を用いて、溶液粘度測定法により重合度を算出した。
【0033】
<粒子径分布>
ペースト塩ビを水に分散し、超音波分散を行い、ディスク遠心式粒度分布測定装置(日本ルフト(株)、(商品名)DC24000∪HR)を用いて、粒子径分布を測定した。
【0034】
<表面平滑性>
発泡温度230℃、発泡時間45秒で得られた発泡体の表面平滑性を目視で観察評価した。
表面平滑性の評価基準を以下に示す。
○:表面が平滑。
×:表面が粗い。
【0035】
<耐スタート発泡荒れ性>
発泡温度200℃、発泡時間30秒で得られた発泡体の表面平滑性を目視で観察評価した。
○:表面が平滑。
×:表面が粗い。
【0036】
合成例1(開始剤等含有シードの合成例)
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル12kg及び25重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液20kgを仕込み、ホモジナイザーを用いて2時間循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて、重合を進めた。45℃における塩化ビニル単量体の飽和蒸気圧より0.2MPa圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)を得た。
【0037】
合成例2(小粒子シードの合成例)
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水320kg、塩化ビニル単量体300kg、過硫酸カリウム80g、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液10kg及び25重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液10kgを仕込み、反応系の温度を54℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、平均重合度1150である塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)を得た。
【0038】
合成例3(小粒子シードの合成例)
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水320kg、塩化ビニル単量体300kg、過硫酸カリウム80g、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液10kg及び25重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液10kgを仕込み、反応系の温度を51℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、平均重合度1400である塩化ビニル系樹脂シードラテックス(c)を得た。
【0039】
合成例4(小粒子シードの合成例)
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水320kg、塩化ビニル単量体300kg、過硫酸カリウム80g、16重量%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び25重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液10kgを仕込み、反応系の温度を48℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、平均重合度1650である塩化ビニル系樹脂シードラテックス(d)を得た。
【0040】
実施例1
2.5Lステンレス製オートクレーブに脱イオン水620g、塩化ビニル単量体730g、5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液15g、リン酸水素ナトリウム/水酸化カリウム混合液10g、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルを0.5g、合成例1により得られた開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)を塩化ビニルモノマー100重量部に対し3.5重量部、合成例2により得られた塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)を4.6重量部仕込み、この反応混合物の温度を66℃に上げて重合を開始した。重合を開始してから重合終了までの間、塩化ビニル単量体100重量部に対しに対し5重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液73gと、5重量%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液29gを連続的に添加した。単量体の合計に対して重合転化率が93%となったところで重合を終了し、未反応塩化ビニル単量体を回収した。得られたペースト塩ビラテックスを、スプレードライヤーにて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト塩ビを得た。
【0041】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.82μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は91wt%、小粒子群の累積重量頻度は9wt%であった。
【0042】
得られたペースト塩ビ100重量部に対し、可塑剤としてDOP((株)ジェイ・プラス、グレード工業用)45重量部、充填剤として炭酸カルシウム(日東粉化工業(株)、(商品名)NN#500)100重量部、顔料として酸化チタントナー(大日精化工業(株)、(商品名)VTH-0775)20重量部、発泡剤(永和化成工業(株)、(商品名)ビニホールAC#3C-K2)3重量部、安定剤3重量部(大協化成(株)、(商品名)LFX―107H)、希釈剤(東燃ゼネラ石油(株)、(商品名)Exxsol D40)10重量部を用い、ディゾルバーを用いて混練し、ペースト塩ビゾルを得た。
【0043】
得られたペースト塩ビゾルを、予め180℃で5秒加熱した裏打ち紙上に0.14mmの厚みでコーティングし、180℃で10秒加熱することにより、原反を得た。得られた原反を230℃で45秒発泡することにより表面平滑性を、200℃で30秒発泡することにより耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示す。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0044】
実施例2
開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)の添加量を3.0重量部、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の添加量を3.9重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0045】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.86μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は91wt%、小粒子群の累積重量頻度は9wt%であった。
【0046】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示す。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0047】
実施例3
開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)の添加量を2.5重量部、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の添加量を3.3重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0048】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.91μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は92wt%、小粒子群の累積重量頻度は8wt%であった。
【0049】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示した。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0050】
実施例4
開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)の添加量を2.0重量部、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の添加量を2.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0051】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.95μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は93wt%、小粒子群の累積重量頻度は7wt%であった。
【0052】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示した。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0053】
実施例5
3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルを無添加とし、重合を温度59℃へ変更したこと以外は、実施例3と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0054】
得られたペースト塩ビは、平均重合度950であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.91μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は92wt%、小粒子群の累積重量頻度は8wt%であった。
【0055】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示した。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0056】
実施例6
塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の代わりに塩化ビニル系樹脂シードラテックス(c)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0057】
得られたペースト塩ビは、平均重合度750であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1400のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.82μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は91wt%、小粒子群の累積重量頻度は9wt%であった。
【0058】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表1に示した。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は良好となった。
【0059】
【表1】
【0060】
比較例1
開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)の添加量を3.8重量部、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の添加量を5.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0061】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.74μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は88wt%、小粒子群の累積重量頻度は12wt%であった。
【0062】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表2に示す。得られた発泡体の表面平滑性は良好であったが、耐スタート発泡荒れ性は劣っていた。
【0063】
比較例2
開始剤等含有塩化ビニル系樹脂シードラテックス(a)の添加量を3.2重量部、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の添加量を7.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0064】
得られたペースト塩ビは、平均重合度730であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1150のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.82μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は79wt%、小粒子群の累積重量頻度は21wt%であった。
【0065】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表2に示す。得られた発泡体の表面平滑性は良好であったが、耐スタート発泡荒れ性は劣っていた。
【0066】
比較例3
塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の代わりに、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(d)を用いたこと以外は、実施例3と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0067】
得られたペースト塩ビは、平均重合度750であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1650のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.91μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は92wt%、小粒子群の累積重量頻度は8wt%であった。
【0068】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表2に示す。得られた発泡体の耐スタート発泡荒れ性は良好であったが、表面平滑性は劣っていた。
【0069】
比較例4
塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)の代わりに、塩化ビニル系樹脂シードラテックス(d)を用いたこと以外は、比較例3と同様に行い、ペースト塩ビを得た。
【0070】
得られたペースト塩ビは、平均重合度1300であり、小粒子群の塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1650のものであった。また、得られたペースト塩ビを水に分散し、超音波分散して粒子径分布を測定したところ、0.3μmを越えて5μmの大粒子群の塩化ビニル系樹脂及び0.3μm以下の小粒子群の塩化ビニル系樹脂を含むものであることを確認した。大粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は1.93μm、小粒子群の頻度の最大ピークの粒子径は0.19μm、大粒子群の累積重量頻度は92wt%、小粒子群の累積重量頻度は8wt%であった。
【0071】
得られたペースト塩ビを用い、実施例1と同様に発泡体を作製し、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性を評価した。評価結果を表2に示す。得られた発泡体の表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性は劣っていた。
【0072】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のペースト塩化ビニル系樹脂は、表面平滑性、耐スタート発泡荒れ性に優れる発泡体を得ることが可能で、特に壁紙、床材、発泡シート等の建築資材として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。