(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】粘接着剤組成物、粘接着剤、粘接着シート、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240109BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240109BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240109BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240109BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20240109BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J163/00
C09J11/06
C09J7/38
C09J7/35
B32B27/00 D
(21)【出願番号】P 2020016667
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】布谷 昌平
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 直也
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-118636(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149926(WO,A1)
【文献】特開2014-065889(JP,A)
【文献】特開2018-065948(JP,A)
【文献】特開2014-216611(JP,A)
【文献】特開昭63-312379(JP,A)
【文献】特開2014-156519(JP,A)
【文献】国際公開第2015/037634(WO,A1)
【文献】特開2006-022194(JP,A)
【文献】特開平03-221578(JP,A)
【文献】特開2019-123808(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030544(WO,A1)
【文献】特開2012-216651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系樹脂(A)(ただし、エポキシ
系化合物(B)を除く。)、エポキシ系化合物(B)、エポキシ系化合物用硬化剤(C)及び硬化促進剤(D)を含有し、下記要件[I]~[VII]を満足することを特徴とする粘接着剤組成物。
[I]エポキシ系化合物(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、30~150重量部である。
[II]エポキシ系化合物用硬化剤(C)が25℃で液状の硬化剤(C1)を含有する。
[III]25℃で液状の硬化剤(C1)の含有量が、エポキシ系化合物(B)に対して、0.3~3当量である。
[IV]エポキシ系化合物(B)及びエポキシ系化合物用硬化剤(C)に含有される25℃で液状成分の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、40~250重量部である。
[V]硬化促進剤(D)の含有量が、エポキシ系化合物(B)に対して、0.01~0.99重量%である。
[VI]エポキシ系化合物(B)が25℃で液状のエポキシ系化合物(B1)を含有する。
[VII]アクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種の官能基含有モノマーと、メチル(メタ)アクリレートとを含有する重合成分の重合体であり、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である。
【請求項2】
エポキシ系化合物用硬化剤(C)が酸無水物の硬化剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の粘接着剤組成物を含有することを特徴とする粘接着剤。
【請求項4】
100~250℃の加熱により硬化する機能を有することを特徴とする請求項3記載の粘接着剤。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の粘接着剤を含有する粘接着剤層を有することを特徴とする粘接着シート。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の粘接着剤を含有する粘接着剤層が被着体上に積層されていることを特徴とする積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常態下では粘着性を有し、加熱などにより硬化することにより接着性が発現する粘接着剤組成物に関する。また本発明は、上記粘接着剤組成物を含有し、タック感が良好で、金属やプラスチックフィルム等の部材との接着性に優れた粘接着剤に関する。更に本発明は、上記粘接着剤を含有する粘接着剤層を有する粘接着シート、及び、上記粘接着剤を含有する粘接着剤層と被着体とが積層されている積層体に関する。本発明の粘接着シート及び積層体は、その貼合面における硬化前の粘着力保持性と硬化後の接着性に優れるという特長を有する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ系化合物を用いた液状の接着剤が、金属やプラスチックの接着に用いられている。また最近、常態下では粘着性を有し、被着体に貼着後は加熱により硬化して強固に接着するといった、粘着剤と接着剤の両方の性質を併せ持つ粘接着剤の要求も高まっている。
このような粘接着剤に用いられる組成物として、例えば特許文献1には、特定組成のアクリル系共重合体、エポキシ樹脂、及び特定粒子径のエポキシ樹脂用硬化剤を含有する熱硬化性接着組成物が提案されている。
また、特許文献2には、エポキシ樹脂、及び常温で液状のエポキシ樹脂用硬化剤を含有する熱硬化型の接着剤組成物も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-253163号公報
【文献】特開2018-195822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の熱硬化性接着組成物では熱硬化前の粘着性(タック)について全く考慮されておらず、この組成物を用いて例えば粘接着シートを作製した際には粘接着シートのタックが不足するという問題があった。また、熱硬化前に充分なタックを有する程度に組成物を柔らかくすると、凝集力が不足しリワーク性に劣るなどの問題があった。
【0005】
更に、粘接着シートを作製するに際しても、特許文献1では、エポキシ樹脂用硬化剤が粉体であるので、塗工時に塗工スジが発生したり、塗膜表面が荒れやすく被着体との密着性が低下したりするなどの不具合が懸念される。また、粉体が塗膜に分散しているので、塗膜が白くなり、透明性が求められる用途には不向きであった。
【0006】
一方、上記特許文献2に開示の熱硬化型接着剤組成物では、常温で液状の酸無水物系硬化剤が使用されているので、透明性には優れるものの、経時でエポキシ樹脂の硬化が進行しやすく、組成物の長期保存安定性に劣るという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような背景下において、硬化前は適度な粘着力とリワーク性を有し、硬化後は充分な剪断強度を有する粘接着剤組成物を提供すること目的とする。また本発明は、粘接着剤組成物を含有する粘接着剤層を有する粘接着シートにおいて、粘接着剤層の透明性に優れ、硬化前の長期保存安定性にも優れることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)、エポキシ系化合物用硬化剤(C)及び硬化促進剤(D)を含有する粘接着剤組成物において、エポキシ系化合物用硬化剤(C)として所定量の液状硬化剤(C1)を含有し、粘接着剤組成物中の液状成分を多くし、エポキシ系化合物(B)、硬化剤(C)、硬化促進剤(D)の各含有量をそれぞれ所定範囲に調整することによって上記課題を解決できること、具体的には、当該粘接着剤組成物が、硬化前は適度な粘着力とリワーク性を有し、硬化後は充分な剪断強度を有することを見出した。また本発明者らは、当該粘接着剤組成物を用いて形成された粘接着剤層を有する粘接着シートが、粘接着剤層の透明性に優れ、硬化前における粘接着剤層の長期保存安定性に優れることも見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、アクリル系樹脂(A)(ただし、エポキシ系化合物(B)を除く。)、エポキシ系化合物(B)、エポキシ系化合物用硬化剤(C)及び硬化促進剤(D)を含有する粘接着剤組成物であって、下記要件[I]~[VII]を満足する粘接着剤組成物を第1の要旨とする。
[I]エポキシ系化合物(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、30~150重量部である。
[II]エポキシ系化合物用硬化剤(C)が25℃で液状の硬化剤(C1)を含有する。
[III]25℃で液状の硬化剤(C1)の含有量が、エポキシ系化合物(B)に対して、0.3~3当量である。
[IV]エポキシ系化合物(B)及びエポキシ系化合物用硬化剤(C)に含有される25℃で液状成分の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、40~250重量部である。
[V]硬化促進剤(D)の含有量が、エポキシ系化合物(B)に対して、0.01~0.99重量%である。
[VI]エポキシ系化合物(B)が25℃で液状のエポキシ系化合物(B1)を含有する。
[VII]アクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種の官能基含有モノマーと、メチル(メタ)アクリレートとを含有する重合成分の重合体であり、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である。
【0010】
本発明は、上記第1の要旨である粘接着剤組成物を含有する粘接着剤を第2の要旨とする。
【0011】
本発明は、上記第2の要旨である粘接着剤を含有する粘接着剤層を有する粘接着シートを第3の要旨とし、また、上記第2の要旨である粘接着剤を含有する粘接着剤層が被着体上に積層されている積層体を第4の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘接着剤組成物によれば、硬化前は適度な粘着力とリワーク性を有し、硬化後は充分な接着力を有する粘接着剤を形成することができる。またこの粘接着剤を用いて形成された粘接着剤層を有する粘接着シートは、粘接着剤層の透明性に優れるとともに、硬化前の長期保存安定性に優れる。したがって、本発明の粘接着剤組成物は、種々の粘接着用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用などの種々の粘接着用途に好適に用いることができる。
【0013】
エポキシ系樹脂用の硬化剤として液状の硬化剤を用いると、常温でも硬化が進行し易いので、液状の硬化剤を用いて粘接着シートを作製した場合、シートの保存安定性に不具合が懸念される。そのため、従来、粉体の硬化剤を用いることがシートの保存安定性の点から一般的であったが、粉体の硬化剤を含有する粘接着剤をシートに塗工する際に塗工スジが発生したり、塗膜表面が荒れやすく被着体との密着性が低下したり、塗膜が白くなったりするなどの課題があった。
本発明によれば、特に、アクリル系樹脂に対して液状の硬化剤と硬化促進剤を所定量の割合で用いることで、上記懸念点が生じることなくシートの保存安定性に優れるとともに、粘接着剤層の透明性、硬化前のリワーク性、硬化後の接着性にも優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、本明細書に記載の用語や記号の一部について以下に説明する。
「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートを、「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルをそれぞれ意味する。
【0015】
記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含む。例えば「2~10」は2以上10以下を表す。
また濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2~10質量%」および「好ましくは4~8質量%」の記載がある場合、「2~4質量%」、「2~8質量%」、「4~10質量%」および「8~10質量%」の記載も包含される。
【0016】
「ガラス転移温度」とは、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製、DSC Q2000)を用いて測定される値である。なお、測定温度範囲は-85~200℃、温度上昇速度は5℃/分である。
【0017】
〔粘接着剤組成物〕
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)、エポキシ系化合物用硬化剤(C)及び硬化促進剤(D)を含有する。これら化合物を以下に順次説明する。
【0018】
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A)とは、少なくとも1種の(メタ)アクリル系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂であり、例えば、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とし、場合により、他の各種の重合性モノマーを含有する重合成分を重合して得られるアクリル系樹脂が挙げられる。
なお、(メタ)アクリル系モノマーを「主成分とする」とは、重合成分全体に対して(メタ)アクリル系モノマーを通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上含有することを意味する。
【0019】
上記(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその誘導体、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体などが挙げられる。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸の誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
また、上記(メタ)アクリル酸の誘導体の他の例として、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等のビフェニルオキシ構造含有(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト等の多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシ基又はフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0022】
更に、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシル-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート等のオキセタン基含有(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0023】
上記(メタ)アクリルアミドの誘導体としては、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール-N-プロパン(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;アミノメチル(メタ)アクリルアミド、アミノエチル(メタ)アクリルアミド等のN-アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシ基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;メルカプトメチル(メタ)アクリルアミド、メルカプトエチル(メタ)アクリルアミド等のN-メルカプトアルキル基含有(メタ)アクリルアミド誘導体;N-アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン等の複素環含有(メタ)アクリルアミド誘導体:等が挙げられる。
【0024】
これらの(メタ)アクリル系モノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの(メタ)アクリル系モノマーの中でも、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが好適に用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、通常1~20であり、好ましくは1~12、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~4である。当該アルキル基の炭素数は小さい方が、後述するエポキシ系化合物(B)との相溶性に優れるので好ましい。
【0025】
また、これらの(メタ)アクリル系モノマーのうち、アクリロイル基を有するモノマーを、アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対して25重量%以上含有させることが好ましく、35重量%以上含有させることがより好ましい。なお、アクリル系樹脂(A)の重合成分全体に対するアクリロイル基を有するモノマーの含有量の上限は100重量%である。アクリロイル基を有するモノマーの含有割合を多くすることによって、硬化前の粘着性を損なうことなく、粘接着剤層形成後の転写性が優れたものとなり、取り扱い性が良好となる。
【0026】
このようなアクリロイル基を有するモノマーとしては、前述の各種の(メタ)アクリル系モノマーのうち、アクリル酸又はその誘導体、アクリルアミド又はその誘導体などを選択して用いることができる。
【0027】
上記アクリロイル基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸誘導体を用いる場合、ガラス転移温度が高く、硬化後の剪断強度が高くなる傾向がある点、アクリル系樹脂(A)の分子量を高めやすい点で、ホモポリマーを調製した際のガラス転移温度が0℃以上のアクリル酸誘導体が好ましい。特に、重合性の点でメチルアクリレートが好適である。
【0028】
ガラス転移温度が高く、硬化後の剪断強度が高くなる傾向があることや、後述するアクリル系樹脂用架橋剤(E)との反応性などを考慮すると、水酸基を含有するアクリレートが好適であり、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート等が好適である。また、上記水酸基を含有するアクリレートが好適である理由と同様の理由により、アクリル酸を使用することも好適である。
【0029】
上記アクリロイル基を有するモノマーとして、例えば、アクリルアミド誘導体を用いる場合、ガラス転移温度が高く、エポキシ系化合物(B)との相溶性に優れている点で、ジアルキルアクリルアミドやN-アクリロイルモルホリンが好適である。特に、ホモポリマーを調製した際のガラス転移温度が0℃以上のアクリルアミド誘導体を用いることが、得られるアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度を高く維持できる点で好適である。
【0030】
アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分は、(メタ)アクリル系モノマー以外の重合性モノマー(以下「その他の重合性モノマー」という。)を含有していても良い。
上記その他の重合性モノマーとしては、例えば、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸、アクリルアミド-N-グリコール酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステルモノマー;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香環を含有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分は、とりわけ、官能基含有モノマーを含有することが好ましい。かかる官能基含有モノマーとして、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーから選ばれる少なくとも1種の官能基含有モノマーを含有することが好ましい。中でも、(メタ)アクリロイル基を含有する官能基含有モノマーが好ましく、更にアクリロイル基を含有する官能基含有モノマーが好ましい。これらの中でも、特に、2-ヒドロシキエチルアクリレート、アクリル酸が好ましい。
【0032】
かかる官能基含有モノマーの含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分全体に対して、0.1~30重量%であることが好ましく、1~25重量%であることがより好ましく、3~20重量%であることが更に好ましい。上記官能基含有モノマーが少なすぎると、粘接着剤層を形成したときの凝集力が低下する傾向になり、タックやリワーク性が低下する傾向がある。また、逆に多すぎると、粘接着剤層の保存安定性が低下したり、ポットライフが短くなったりする傾向がある。
【0033】
アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができる。例えば、有機溶媒中に、適宜選択してなる重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し、所定の重合条件にて重合する方法等が挙げられ、中でも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、安定にアクリル系樹脂が得られる点で、溶液ラジカル重合が特に好ましい。
【0034】
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさ、連鎖移動の効果、粘接着剤組成物の塗工時の乾燥のしやすさ、安全上の点から、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、特には、酢酸エチルが好ましい。
【0036】
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
このようにして、本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
【0038】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万~150万であることが好ましく、より好ましくは15万~100万、更に好ましくは20万~80万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、得られる粘接着剤層の靱性や凝集力が低下する傾向があり、転写性やリワーク性、硬化後の剪断強度が低下する傾向がある。また、かかる重量平均分子量が大きすぎると、粘度が高くなりすぎて重合時にスケーリングが多くなったり、エポキシ系化合物(B)との相溶性やハンドリング性が低下したりする傾向がある。
【0039】
また、アクリル系樹脂(A)の分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、10以下であることが好ましく、より好ましくは7以下、更に好ましくは5.5以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下する傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
【0040】
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本ウォーターズ社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列に接続して用いることにより測定することができ、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は、上記重量平均分子量と数平均分子量の測定値より求めることができる。
【0041】
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上であることが好ましく、より好ましくは10~250℃、更に好ましくは15~200℃、特に好ましくは20~180℃である。かかるガラス転移温度が低すぎると、硬化後の剪断強度が低下する傾向にあり、高すぎると硬化前のタックが低くなる傾向がある。
【0042】
アクリル系樹脂(A)の屈折率は、通常1.440~1.600である。かかる屈折率は積層する部材との屈折率差を小さくすることが、部材界面での光損失が小さくなり好ましい。
【0043】
なお、上記屈折率は、薄膜にしたアクリル系樹脂(A)を、屈折率測定装置(アタゴ社製「アッベ屈折計1T」)を用いてNaD線、23℃で測定した値である。
【0044】
<エポキシ系化合物(B)>
エポキシ系樹脂(B)とは、分子内に1つ又は2つ以上のエポキシ基を有する化合物のことである。本発明で用いられるエポキシ系化合物(B)としては、分子内に1つのエポキシ基を有する単官能エポキシ系化合物、2つ以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ系化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化後の剪断強度が高くなる傾向がある点で、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ系化合物が好ましい。
【0045】
上記の単官能エポキシ系化合物としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、アルコキシグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、EO(エチレンオキサイド)変性フェノールグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0046】
上記の多官能エポキシ系化合物のうちエポキシ基を2つ有する2官能エポキシ系化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルテレフタラート、ジグリシジル-o-フタレート、ジグリシジルレソルシノールエーテル、ビスフェノールA型ジグリシジル化合物及びその水添物、ビスフェノールF型ジグリシジル化合物及びその水添物、ビフェニル型ジグリシジル化合物及びその誘導体などが挙げられる。
【0047】
上記エポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ系化合物として、例えば、
グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリグリシジル及びその誘導体、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル等の3官能エポキシ系化合物;
ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラグリシジルエーテル等の4官能エポキシ系化合物;
ポリグリセロールペンタグリシジルエーテル、ペンタエリストールペンタグリシジルエーテル、ジペンタエリストールペンタグリシジルエーテル等の5官能エポキシ系化合物;
ソルビトールヘキサグリシジルエーテル:ジペンタエリストールヘキサグリシジルエーテル等の6官能エポキシ系化合物;
ポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ系化合物、クレゾールノボラック型エポキシ系化合物;等が挙げられる。
これらの中でも、特に、2官能以上のエポキシ系化合物が好ましく、3官能以上のエポキシ系化合物がより好ましい。
【0048】
エポキシ系化合物(B)は、硬化前の粘接着剤層の粘着力、リワーク性、タック等のバランスに優れる点で、25℃で液状のエポキシ系化合物(B1)を含有することが好ましい。
ただし、本発明においては25℃で液状ではないエポキシ系化合物を用いることもできる。25℃で液状のエポキシ系化合物(B1)と、液状ではないエポキシ系化合物との含有重量比は、液状のエポキシ系化合物(B1):液状ではないエポキシ系化合物=10:90~100:0が好ましく、20:80~100:0がより好ましく、30:60~100:0が更に好ましく、50:50~100:0が特に好ましい。
【0049】
エポキシ系化合物(B)として、25℃で液状のエポキシ系化合物(B1)を用いる場合、エポキシ系化合物(B1)の粘度は、100~30, 000mPa・s/25℃であることが好ましく、120~15,000mPa・s/25℃であることがより好ましい。上記エポキシ系化合物(B1)の粘度が高すぎると、粘接着剤層を形成した際のタックが低下する傾向にあり、粘度が低すぎると、粘接着剤層を形成した際の凝集力が低下する傾向にある。
【0050】
上記粘度は、JIS K 7233に準拠してB型粘度計を用いて測定した値である。
【0051】
エポキシ系化合物(B)の重量平均分子量(前述の測定方法による、以下同じ)は、150~50,000が好ましく、250~30,000がより好ましく、300~10,000が更に好ましい。分子量が低すぎると、高温で揮発したり白煙が発生したりする傾向にあり、分子量が高すぎると、アクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向にある。
【0052】
エポキシ系化合物(B)の含有量は、上記アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、30~150重量部であり、好ましくは50~120重量部、より好ましくは60~100重量部である。アクリル系樹脂(A)に対するエポキシ系化合物(B)の含有割合が少なすぎると、粘接着剤層のタックが低下してハンドリング性が低下したり、部材を貼り合わせて硬化する際に密着性が低下することとなる。含有割合が多すぎると、粘接着剤のリワーク性が低下することとなる。
【0053】
<エポキシ系化合物用硬化剤(C)>
エポキシ系化合物用硬化剤(C)は、上記エポキシ系化合物(B)の硬化剤として用いられ、エポキシ基と反応しうる官能基を有する。かかる官能基としては、例えば、酸無水物基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、イミダゾール基、フェノール基等が挙げられ、なかでもハンドリング性、硬化性及び粘接着層形成後の保存安定性の点で酸無水物基が好ましい。
また、本発明で用いるエポキシ系化合物用硬化剤(C)は、25℃で液状の硬化剤(C1)を少なくとも含む。液状の硬化剤(C1)は、ポットライフが短く、硬化し易いという欠点がある反面、粉体などの固体の硬化剤に比べて、取扱いが容易であり、透明な粘接着剤層が得られるという利点がある。
【0054】
エポキシ系化合物用硬化剤(C)として、25℃で液状の硬化剤(C1)を用いる場合、硬化剤(C1)の粘度は、30, 000mPa・s以下であることが好ましく、10~15,000mPa・sであることがより好ましい。上記硬化剤(C1)の粘度が高すぎると、粘接着剤層を形成した際のタックが低下する傾向にある。
【0055】
上記粘度は、JIS K 7233に準拠してB型粘度計を用いて測定した値である。
【0056】
硬化剤(C1)は、25℃で液状であれば特に限定されないが、酸無水物であることが好ましい。このような酸無水物としては、例えば、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ハイミック酸(例えば、5-ノルボルネン-2, 3-ジカルボン酸無水物)、無水メチルナジック酸(例えば、メチル-5-ノルボルネン-2, 3-ジカルボン酸無水物)、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸などが例示される。これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のなかでも25℃で液状の硬化剤(C1)としては、汎用性に加え、硬化性、粘接着シートの保存安定性の点で無水メチルナジック酸、無水ハイミック酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸などが好ましい。
【0057】
エポキシ系化合物用硬化剤(C)として、25℃で液状の硬化剤(C1)とともに、25℃で液状ではない硬化剤、例えば粉体などの固体の硬化剤を併せて用いることができる。
固体の硬化剤(C)は、融点が150℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは170℃以上である。なお、融点の上限は、通常300℃である。また、硬化剤(C)の融点が範囲として得られる場合は、融点の上限の数値が上記融点以上であればよい。固体の硬化剤(C)の融点は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される。
【0058】
このような融点が150℃以上の固体の硬化剤(C)としては、例えば、ジシアンジアミド(209℃);アジピン酸ジヒドラジド(177~183℃)、セバシン酸ジヒドラジド(186~188℃)、ドデカンジオヒドラジド(188~192℃)、イソフタル酸ジヒドラジド(215~225℃)等の有機酸ヒドラジド系化合物;無水コハク酸(181℃)、テトラブロモ無水フタル酸(269~271℃)、ジフェン酸無水物(225~227℃)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物(225℃以上)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3シクロヘキセン-1,2、ジカルボン酸無水物(172~176℃)、ビフェニルテトラカルボン酸無水物(299℃)、無水トリメリット酸(163~166℃)、ビシクロ[ 2. 2. 2] オクト-7-エン-2, 3, 5, 6-テトラカルボン酸無水物(300℃以上)などの酸無水物化合物;N,N-ジアルキル尿素誘導体、N,N-ジアルキルチオ尿素誘導体、ジメチルウレア類等の尿素系化合物;3級アミン、ポリアミン等のアミン系化合物;メラミン類;アセトグアナミン(213~273℃)、ベンゾグアナミン(228℃)等のグアナミン類;グアニジン類;ケチミン化合物;オニウム塩;等を用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記の括弧()内の数値は融点を示す。
【0059】
25℃で液状の硬化剤(C1)と、25℃で液状ではない硬化剤との含有重量比は、液状の硬化剤(C1):液状ではない硬化剤=20:80~100:0が好ましく、30:70~100:0がより好ましく、50:50~100:0が更に好ましく、80:20~100:0が特に好ましい。
【0060】
エポキシ系化合物用硬化剤(C)に含有される25℃で液状の硬化剤(C1)の含有量は、エポキシ系化合物(B)に対して、0.3~3当量であり、好ましくは0.4~2.5当量、より好ましくは0.4~2当量、更に好ましくは0.55~1.5当量である。液状の硬化剤(C1)の含有量が少なすぎると、硬化が不充分となり、含有量が多すぎると、余剰分の硬化剤によって硬化後のせん断強度が低下することとなる。
【0061】
また、エポキシ系化合物(B)及びエポキシ系化合物用硬化剤(C)に含有される25℃で液状成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、40~250重量部であり、好ましくは50~230重量部、より好ましくは80~200重量部、更に好ましくは90~190重量部である。なお、エポキシ系化合物(B)は25℃で液状のエポキシ系化合物を含有しないことがあり、この場合、上記25℃で液状成分の含有量はエポキシ系化合物用硬化剤(C)に含有される25℃で液状の硬化剤(C1)の含有量となる。
両化合物(B)及び(C)に含有される25℃で液状成分の含有量が少なすぎると、粘接着剤層を形成した際のタックが低下することとなり、含有量が多すぎると、凝集力が低下しリワーク性が低下することとなる。
【0062】
<硬化促進剤(D)>
硬化促進剤(D)は、エポキシ系化合物(B)の硬化促進剤として用いられ、硬化温度を下げ、硬化時間を短くする機能を有する。
【0063】
硬化促進剤(D)としては、例えば、三級アミノ基を含有する化合物、イミダゾール及びその誘導体、有機ホスフィン類、ジメチル尿素、有機ポリマーや無機化合物などによる被覆剤を用いて上記化合物をマイクロカプセル化したものなどが挙げられる。これらの硬化促進剤(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記の三級アミノ基を含有する化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示される。
【0065】
上記のイミダゾール及びその誘導体としては、例えば、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
上記の有機ホスフィン類としては、例えば、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が挙げられる。
【0067】
これらの硬化促進剤(D)の中でも、ポットライフが長く、中温域での硬化性に優れ、粘接着剤組成物の硬化物の耐熱性に優れることから、イミダゾール及びその誘導体が好ましく、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾールがより好ましい。
【0068】
硬化促進剤(D)の含有量は、エポキシ系化合物(B)に対して、0.01~0.99重量%であり、好ましくは0.05~0.9重量%、より好ましくは0.1~0.8重量%、更に好ましくは0.15~0.7重量%、更に好ましくは0.2~0.5重量%である。硬化促進剤(D)の含有量が少なすぎると、硬化が不充分となり、含有量が多すぎると、粘接着層形成後の保存安定性が低下することとなる。
【0069】
本発明の粘接着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の任意成分を含有していてもよい。以下、それらの任意成分について説明する。
【0070】
<アクリル系樹脂用架橋剤(E)>
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)を架橋するアクリル系樹脂用架橋剤(E)を含有していてもよい。アクリル系樹脂用架橋剤(E)を含有することで、粘接着剤組成物を架橋させることができ、粘接着剤の凝集力を高め、リワーク性を向上させる点において好適である。なお、アクリル系樹脂(A)はエポキシ系化合物(B)によっても架橋されるので、本発明におけるアクリル系樹脂用架橋剤(E)はエポキシ系化合物(B)を除くものとする。
【0071】
アクリル系樹脂用架橋剤(E)としては、公知の架橋剤を用いることができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。
アクリル系樹脂用架橋剤(C)は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0072】
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
【0073】
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
【0074】
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0075】
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0076】
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物などが挙げられる。
【0077】
本発明において、アクリル系樹脂用架橋剤(E)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0~15重量部であることが好ましく、より好ましくは0~10重量部、更に好ましくは0~5重量部である。かかる架橋剤(E)の含有量が多すぎると、粘接着層を形成した際のタックが低下する傾向がある。
【0078】
<任意成分>
任意成分としては、例えば、カーボンや金属等の導電剤;金属粒子やガラス粒子などの無機フィラー;ウレタン樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、フェノール樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、スチレン系樹脂などの粘着付与剤;充填剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;シランカップリング剤;イオン性化合物、過酸化物、ウレタン化触媒などの架橋促進剤;アセチルアセトン等の架橋遅延剤;等の各種添加剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
なお、本発明の粘接着剤組成物は、上記任意成分の他にも、粘接着剤組成物の構成成分の製造原料などに含まれる不純物などが本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0080】
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、エポキシ系化合物(B)、エポキシ系化合物用硬化剤(C)及び硬化促進剤(D)、更に必要に応じて、アクリル系樹脂用架橋剤(E)やその他任意成分を混合することにより得ることができる。
これらの成分の混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法など、種々の方法を採用することができる。
【0081】
〔粘接着剤、粘接着シート、及び積層体〕
本発明の粘接着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)が架橋することにより粘接着剤とすることができる。また、この粘接着剤を含有する粘接着剤層をプラスチックフィルム等の基材に積層形成することにより、基材/粘接着剤層の積層構造を有する粘接着シートを得ることができる。更に、この粘接着剤層を被着体上に積層することにより、被着体/粘接着剤層の積層構造を有する積層体を得ることができる。なお、以下では基材と被着体を総括して「部材」ともいう。
【0082】
上記粘接着シートとしては、基材に粘接着剤層が積層された粘接着シートの他に、粘接着剤層の両面にセパレータ(剥離シート)を積層した基材レスの両面粘接着シートがあり、取り扱い易さの点で両面粘接着シートが好適である。
【0083】
上記粘接着シートの製造方法としては、例えば、基材上に粘接着剤組成物を塗工し、乾燥させた後、セパレータを貼合し、常温(加温しない状態)でのエージング及び加温状態でのエージングの少なくとも一方によるエージング処理を行う方法等が挙げられる。なお、粘接着剤組成物をセパレータに塗工し、乾燥させた後、当該セパレータと剥離力の異なる他のセパレータを貼合し、エージング処理を行なうことにより、基材レスの両面粘接着シートを製造することができる。
【0084】
上記エージング処理は、アクリル系樹脂(A)と架橋剤(E)とを化学架橋させて、粘接着剤に適度な粘着性を発現させるために行なう処理であり、エージングの条件としては、例えば、温度が通常は室温(20±10℃)~40℃、時間が通常は1~30日間であり、具体的には、例えば23℃で1~20日間、40℃で1~7日間などの条件が挙げられる。
【0085】
上記粘接着剤組成物の塗工に際しては、この粘接着剤組成物を溶剤で希釈して塗工することが好ましく、固形分濃度は、好ましくは5~65重量%、より好ましくは20~55重量%である。また、上記溶剤としては、粘接着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤;等を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチルが好適に用いられる。
【0086】
上記希釈された粘接着剤組成物の粘度は、500~15000mPa・s/25℃が好ましく、1000~10000mPa・s/25℃がより好ましい。粘度が低すぎると比重の重い成分を用いた場合、その成分が沈降し易くなり、粘接着剤組成物中の成分の濃度が不均一となる傾向がある。
【0087】
上記粘接着剤組成物の塗工方法としては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の方法が挙げられる。
【0088】
粘接着シートにおける粘接着剤層の厚みは、好ましくは5~250μm、より好ましくは25~200μm、更に好ましくは50~175μmである。上記粘接着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘接着力が低くなったりする傾向があり、上記粘接着剤層が厚すぎると、粘接着シートをロール状にした際に端部から粘接着剤層がはみ出す傾向がある。
【0089】
粘接着剤層のゲル分率は、部材との密着性、リワーク性、硬化前の粘着性の点から、好ましくは40重量%未満、より好ましくは25重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。粘接着剤層のゲル分率が高すぎると、粘接着シートを部材に貼り合わせる際に、粘接着剤層と部材界面との充分な密着性が得られず硬化後の剪断強度が低下する傾向がある。
【0090】
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。まず、基材の表面に粘接着剤層が積層されている粘接着シートから粘接着剤をピッキングにより採取し、当該粘接着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬する。酢酸エチル浸漬の前後における粘接着剤層の重量をそれぞれ測定し、両重量の差を金網中に残存した不溶解の粘接着剤成分の重量とする。酢酸エチル浸漬前における粘接着剤層の重量に対する、金網中に残存した不溶解の粘接着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
【0091】
本発明においては、上記粘接着剤が所定温度の加熱により硬化する機能を有するので、粘接着シートにおける粘接着剤層の接着力が上昇して、粘接着シートが被着体に固着する。
粘接着剤を硬化する際の加熱温度は、好ましくは100~250℃であり、より好ましくは120~200℃、更に好ましくは130~185℃である。かかる温度が低すぎると、硬化時間が長くなり、作業性が低下する傾向があり、かかる温度が高すぎると、エポキシ系化合物(B)が揮発したり発火したりする傾向がある。また、加熱時間は、好ましくは5~180分間であり、より好ましくは30~120分間、更に好ましくは45~90分間である。かかる時間が短すぎると剪断強度が低下する傾向があり、長すぎると作業性が低下する傾向がある。
【0092】
硬化前の剪断強度(MPa)に対する、硬化後の剪断強度(MPa)の比は、硬化前の粘着物性と硬化後の剪断強度及び耐久性とのバランスの点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上、更に好ましくは100以上である。なお、当該比の上限は、通常10万である。
【0093】
本発明の粘接着剤を含有する粘接着剤層は、硬化前の状態において適度な粘着力とリワーク性を有し、硬化後の状態において充分な剪断強度を発現する、という優れた特徴を有している。またこの粘接着剤層を有する粘接着シートは、粘接着剤層の透明性に優れるとともに、硬化前の長期保存安定性に優れる。したがって、本発明の粘接着剤は、種々の粘接着用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用などの種々の粘接着用途に好適に用いることができる。
【0094】
セパレータの表面上に粘接着剤層が積層された粘接着シートは、当該セパレータを剥離し、目的とする被着体面に、この粘接着剤層を粘着させるだけで、簡単に粘接着剤層を転写することができるので、非常に作業効率が良い。
【0095】
更に、上記粘接着剤層を介して他の部材を積層させてなる積層体、即ち、被着体/粘接着剤層/他の部材の積層構造を有する積層体は、粘接着剤層が硬化前に高い粘着性を有し、硬化後に高い剪断強度を発現することから、他の部材が容易にずれたり被着体から剥離したりし難い。したがって、本発明の粘接着剤を用いることにより、接着の信頼性が高く、外観上も優れた品質の積層体が得られる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度、その他の諸物性は前述の方法に従って測定した。
まず、実施例に先立って下記の成分を準備した。
【0097】
<アクリル系樹脂(A)>
[アクリル系樹脂(A-1)の調製]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル80部、メチルエチルケトン21部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.036部仕込み、加熱して内温が沸点に到達した後、メチルアクリレート(MA)74.9部、メチルメタクリレート(MMA)20部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)5部、アクリル酸(AAc)0.1部、酢酸エチル4部、重合開始剤(AIBN)0.036部の混合溶液を、沸騰状態を維持したまま2時間にわたって滴下した。その後、反応を継続しながら、重合開始剤(AIBN)0.036部を2度追加し、7時間反応させた後、希釈して、アクリル系樹脂(A-1)溶液(固形分濃度34.1%、粘度6100mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-1):重量平均分子量(Mw)42万、分散度(Mw/Mn)3.9、ガラス転移温度(Tg)21.2℃)を得た。
【0098】
[アクリル系樹脂(A-2)の調製]
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、酢酸エチル64部、メチルエチルケトン8部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を0.036部仕込み、加熱して内温が沸点に到達した後、メチルアクリレート(MA)49.9部、メチルメタクリレート(MMA)45部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)5部、アクリル酸(AAc)0.1部、酢酸エチル4部、重合開始剤(AIBN)0.036部の混合溶液を、沸騰状態を維持したまま2時間にわたって滴下した。その後、反応を継続しながら、重合開始剤(AIBN)0.036部を2度追加し、7時間反応させた後、希釈して、アクリル系樹脂(A-2)溶液(固形分濃度38.4%、粘度20400mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A-2):重量平均分子量(Mw)37万、分散度(Mw/Mn)2.5、ガラス転移温度(Tg)39.8℃)を得た。
【0099】
<エポキシ系化合物(B)>
エポキシ系化合物(B)として以下のものを用意した。
(B1-1):トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、「デナコールEX-321」、25℃で液体、粘度130mPa・s/25℃、エポキシ当量140g/mol、エポキシ基数2~3個)
【0100】
<エポキシ系化合物用硬化剤(C)>
(C1-1):メチルナジック酸無水物(メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物)(25℃で液状、粘度175~225mPa・s/25℃、東京化成工業社製)
(C-1):ジシアンジアミド(25℃で粉体、三菱ケミカル社製「DICY7」)
【0101】
<硬化促進剤(D)>
(D-1):2E4MZ-CN(2-エチル-4-メチルイミダゾール)(四国化成工業社製)
(D-2):2PZ-CN(1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)(四国化成工業社製)
【0102】
<アクリル系樹脂用架橋剤(E)>
(E-1):コロネートL-55E(東ソー社製)
【0103】
<実施例1~3、比較例1~4>
上記の成分を後記の表1にしたがって配合し、酢酸エチルを用いて固形分濃度を30~60%の範囲に調整することにより、粘接着剤組成物を得た。
【0104】
得られた粘接着剤組成物を、以下に示す手順にしたがって粘接着シートを作製した。その後、この粘接着シートを用いて、下記のとおり、硬化前の粘接着シートの塗膜外観、粘接着シート安定性、粘着力、リワーク性、および硬化後の剪断強度を評価した。
各項目の評価方法と評価基準は下記のとおりである。また、これらの結果を後記の表1に併せて示す。
【0105】
<粘接着シートの作製>
粘接着剤組成物を、厚み38μmの重剥離シリコンセパレータ(三井化学東セロ社製、「SPPET03 38BU」)に、乾燥後の厚みが50μmとなるようにコンマコータを用いて塗工し、100℃×3分間乾燥し、粘着剤層を形成した。当該粘接着剤層の表面に、厚み38μmの軽剥離シリコンセパレータ(三井化学東セロ社製、「SPPET01 38BU」)を貼り合わせて、粘接着シートを作製した(軽剥離シリコンセパレータ/粘接着剤層/重剥離シリコンセパレータの積層体)。
【0106】
[粘接着シートの塗膜外観]
上記作製した粘接着シートの塗膜外観を目視で確認し、下記の基準にて評価した。
○・・・透明
×・・・白濁あり
【0107】
[粘接着シート安定性]
上記作製した粘接着シートについて、粘接着剤層のゲル分率を下記の方法により測定し、得られたゲル分率の値を用いて、粘接着シート安定性を評価した。評価基準は下記の通りである。
(ゲル分率の測定方法)
上記作製した粘接着シートを5cm×5cmのサイズに切り出し、切り出した粘接着シートからセパレータを剥離し、粘接着剤層をSUS200メッシュに挟んだ状態で酢酸エチルに23℃下で24時間浸漬した。浸漬前後の粘接着剤層の重量変化量を算出し、その重量変化量を酢酸エチル浸漬前における粘接着剤層の重量で除した値の重量百分率をゲル分率とした。
【0108】
(評価基準)
上記ゲル分率の測定において、粘接着シート作製直後のゲル分率をゲル分率(α)、粘接着シート作製から常温下で28日経過した後のゲル分率をゲル分率(β)とし、かかるゲル分率の差(β-α)より、下記のとおり評価した。
○・・・0重量%以上10重量%未満
×・・・10重量%以上
【0109】
[粘着力]
上記作製した粘接着シートを25mm×120mmのサイズに切り出し、切り出した粘接着シートから軽剥離セパレータを剥離し、膜厚38μmの未処理PETに転写した後、もう一方の重剥離セパレータを剥離した。粘接着剤層の面にSUS-BA板を当て、1kgローラーで2往復して粘接着剤層をSUS-BA板に貼付した。貼付から30分後に23℃×50%RH条件下でAUTO Graph AG-X Plus(島津製作所社製)を用い、300mm/minの速度で180°剥離強度(単位:N/25mm)を測定した。
【0110】
[リワーク性]
上記粘着力の測定において、剥離後のSUS-BA板表面の糊残りを目視にて観察し、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
○・・・糊残りなし
×・・・糊残りあり
【0111】
[硬化後の剪断強度]
上記作製した粘接着シートを25mm×12.5mmのサイズに切り出し、切り出した粘接着シートから軽剥離セパレータを剥離し、SUS板に転写した。重剥離セパレータを剥離して露出した粘接着層の面に、同じサイズで別のSUS板を貼り合わせた。貼り合わせた部分をクリップで止めて140℃で1時間硬化した後、23℃×50%RH条件下でAUTO Graph AG-X Plus(島津製作所社製)を用い、5mm/minの速度で剪断強度(MPa)を測定した。評価基準は下記のとおりである。
(評価基準)
○・・・15MPa以上
×・・・15MPa未満
【0112】
【0113】
上記結果より、本発明の要件[I]~[VII]の全てを満足する実施例1~3は、硬化前の粘接着シートの塗膜外観、長期安定性、粘着力、リワーク性のいずれも優れていることが分かる。
一方、各要件をいずれかを満足しない比較例1~4では、上記の評価のうちいずれかで所望の効果が得られず、本発明の目的を達成することができないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の粘接着剤組成物は、硬化前は適度な粘着力とリワーク性を有し、硬化後は充分な接着力を有する粘接着剤を形成することができる。またこの粘接着剤を用いて形成された粘接着剤層を有する粘接着シートは、粘接着剤層の透明性に優れるとともに、硬化前の長期保存安定性に優れる。したがって、本発明の粘接着剤組成物は、種々の粘接着用途、例えば、建材用、車載部品用、電子部品用、半導体製造工程用、部材封止用、航空部品用、スポーツ用品用などの種々の粘接着用途に好適に用いることができる。