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特許7413839刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法
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  • 特許-刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法 図1
  • 特許-刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法 図2
  • 特許-刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法 図3
  • 特許-刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20240109BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240109BHJP
   B23Q 41/00 20060101ALI20240109BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240109BHJP
   G05B 19/4065 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B23Q17/00 D
B23Q17/09 B
B23Q17/00 G
B23Q41/00 F
G05B19/418 Z
G05B19/4065
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020033630
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133482
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】小田島 礼人
(72)【発明者】
【氏名】小宮 聖士
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-222825(JP,A)
【文献】特開2005-199379(JP,A)
【文献】特開2013-158871(JP,A)
【文献】特開平03-245949(JP,A)
【文献】特開平03-149162(JP,A)
【文献】特開昭59-124615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00 - 17/24
B23Q 41/00
B23Q 3/155
G05B 19/18 - 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の刃具を備えた複数の加工設備の刃具交換時期を表示するための刃具交換時期表示装置であって、
各前記刃具の使用回数を収集する収集部と、
予め各前記刃具について設定された設定寿命と前記使用回数から、各前記刃具のうち二以上を一括して交換させるための時期を演算する演算部と、
前記演算部で演算された時期を表示する表示部と、を有し、
各前記刃具の設定寿命が、各前記刃具のうちの最小の設定寿命の倍数に設定されている
ことを特徴とする刃具交換時期表示装置。
【請求項2】
複数の刃具を備えた複数の加工設備の刃具交換時期を表示するための刃具交換時期表示方法であって、
各前記刃具の使用回数を収集する収集工程と、
予め各前記刃具について設定された設定寿命と前記使用回数から、各前記刃具のうち二以上を一括して交換させるための時期を演算する演算工程と、
前記演算工程で演算された時期を表示する表示工程と、を有し、
各前記刃具の設定寿命が、各前記刃具のうちの最小の設定寿命の倍数に設定されている
ことを特徴とする刃具交換時期表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の刃具を備えた複数の加工設備のための刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の加工設備を有する加工ラインでは、設備停止を最少に抑え製品の加工数を増加させるために、稼働率を向上させることが求められる。設備故障以外では、寿命の近づいた刃具の交換作業が最大の設備停止理由となり、刃具交換時間を最少にすることで稼働率向上に繋がる。
【0003】
刃具寿命は一定周期で尽きることが一般的で、刃具交換自体は避けられない状況にあるが、刃具交換が製品品質に影響を及ぼしていないことを確認するため、刃具交換前後で製品の品質確認を実施することが通常行われている。また、製品の自動搬送ラインでは、品質確認中はロボット搬送が停止することもあり、品質確認作業は最少に抑える必要がある。
【0004】
多量の刃具交換作業となる場合、設備停止を最少に留めるために、多くの刃具交換応援者(以下、「水すまし」と称す)が必要になる。
【0005】
さらに、刃具交換作業の効率化と合わせ、コスト改善や稼働率向上のためには刃具寿命近くまで最大限に刃具を使い切ることや、寿命増のための施策が求められる。
特許文献1には、複数の加工設備から複数の刃具情報を取得し、交換時間をずらすことで刃具交換の効率化を図る技術が開示されている。
また、特許文献2には、複数の加工設備から複数の刃具情報を取得し、刃具交換タイミングを決められた方法でグループ化し交換時間をずらすことで刃具交換の効率化、稼働率向上を図る技術として公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-130451号
【文献】特開平06-222825号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法では、刃具寿命は刃具や工具、切削部によって異なるため、交換時間が様々なタイミングになることもある。この場合、加工設備の稼働率が逆に低下するおそれがあった。
また、刃具交換を前倒して実施するため、最大刃具寿命に達する前に刃具交換することもある。
【0008】
さらに、特許文献2の方法では、刃具寿命は刃具や工具、切削部によって異なるため、交換時間が様々なタイミングになることもある。また、複数の設備が刃具交換タイミングの同一グループになることも想定され作業効率が低下してしまう恐れもある。
【0009】
そこで本発明では、刃具交換が効率的かつ計画的に実施され、さらに刃具寿命を最大限使用できる刃具交換時期表示装置および刃具交換時期表示方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の刃具交換時期表示装置は、複数の刃具を備えた複数の加工設備の刃具交換時期を表示するための刃具交換時期表示装置であって、各前記刃具の使用回数を収集する収集部と、予め各前記刃具について設定された設定寿命と前記使用回数から、各前記刃具のうち二以上を一括して交換させるための時期を演算する演算部と、前記演算部で演算された時期を表示する表示部と、を有し、各前記刃具の設定寿命が、各前記刃具のうちの最小の設定寿命の倍数に設定されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の刃具交換時期表示方法は、複数の刃具を備えた複数の加工設備の刃具交換時期を表示するための刃具交換時期表示方法であって、各前記刃具の使用回数を収集する収集工程と、予め各前記刃具について設定された設定寿命と前記使用回数から、各前記刃具のうち二以上を一括して交換させるための時期を演算する演算工程と、前記演算工程で演算された時期を表示する表示工程と、を有し、各前記刃具の設定寿命が、各前記刃具のうちの最小の設定寿命の倍数に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、刃具交換作業を計画的かつ効率的に実施することが可能となり、稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の説明に用いる、加工ラインの全体構成の例を示す概略図である。
図2】実施形態における、刃具交換時期表示装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図3】実施形態における、刃具交換時期表示方法のフローチャートの例である。
図4】実施形態において、表示装置に出力される表示の例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1に示す加工ライン100は、その全体構成概略図に示す通り、加工設備101~105、表示装置111を備えている。加工ライン100では、例えば一人の作業者が刃具交換を担当する。また、加工ラインは複数存在し、刃具交換負荷状況によって水すましによる刃具交換作業支援を実施することができる。
【0018】
加工設備101~105とはマシニングセンタ(以下、M/C)や旋盤加工機械などの工作機械のことをいい、一つの加工設備には例えば10~20の複数の刃具が備え付けられている。表示装置111は、例えば、タブレット端末やパソコン、タッチパネルモニタなどを用い構成することができる。
【0019】
また、加工設備101~105、表示装置111は、ローカルエリアネットワーク110を介して接続している。なお、加工設備101~105と表示装置111の接続は、ローカルエリアネットワークに限らず、シリアル通信や無線通信などを用いても良い。
【0020】
[刃具交換時期表示装置]
図2は、本実施形態における刃具交換時期表示装置の機能構成の例を示すブロック図である。ここで、設定部は、複数の刃具を備えた複数の加工設備に対し、各刃具について寿命を設定する。収集部202は、加工設備の刃具の設定寿命、使用回数を収集する。演算部203は、収集した刃具の設定寿命、使用回数から複数の刃具交換を一括して実施させるための時期を演算する。表示部204は、演算された情報を加工設備・刃具の識別情報と共に表示する。
【0021】
[刃具交換時期表示方法]
次に、刃具交換時期表示方法の例を、図3のフローチャート、および図4の表示例を用いて説明する。
【0022】
(設定工程)
まず、ステップ301で、加工設備ごとに、複数の刃具のそれぞれの刃具の設定寿命が、全刃具のうち最小の設定寿命の刃具の設定寿命を基準として、その倍数となるように設定を行う。ステップ301は日々実施せず、設定寿命に変更がある場合のみ実施する。なお、各加工設備への刃具寿命の設定は個別に行わず、一括設定できる機器を用いてもよい。
【0023】
ここで、前記の最小寿命の倍数について例を挙げて説明する。最小寿命の刃具の寿命を加工回数20回とした場合、他の刃具寿命は40、60、80、100、1000などの20の倍数になるように加工回数を設定することをいう。
これにより、刃具交換時期である刃具交換タイミングを合わせることが可能になり、刃具交換の効率化、稼働率向上に繋げることができる。
【0024】
(収集工程)
次に、ステップ302で各加工設備から、ローカルエリアネットワーク110を介し、刃具番号、設定寿命、使用回数を読み出して収集する。加工設備からのデータ取得は、NCなどの加工設備に備え付けた装置や、集中管理する装置などから行ってもよい。
【0025】
(演算工程)
次に、ステップ303(ループの開始)からステップ307(ループの終了)にて、刃具交換予想時刻を演算する回数のループ処理を行う。このループ処理は、刃具交換予想時期表示部410における交換時期Noの欄411の表示数に相当する。交換時期Noの欄411の表示数は、刃具交換予想時間を予測させる回数を表し、設置場所の環境や運用方法に応じて表示数、つまりループ処理回数を変更させる。図4では3回ループ処理を行った場合の結果である。
ループ回数を増加させることでNoの欄411の表示数が増加され、例えばシフト交換後の刃具交換タイミングを表示させることが可能になる。
【0026】
ステップ304で、ステップ302で読み出して収集した全刃具の設定寿命、使用回数から加工残数を算出し、加工残数が最も小さい刃具、つまり、刃具交換タイミングが最も近い刃具を抽出する。加工残数は下記式(1)によって算出する
加工残数=設定寿命-使用回数・・・・(1)
【0027】
ステップ305にて、前記加工残数が最も小さい刃具の刃具交換予想時刻を演算して算出する。刃具交換予想時刻は下記式(2)によって算出する。
刃具交換予想時刻=現在時刻+加工残数×(シフト時間÷基準加工数)・・・・(2)
【0028】
なお、予め以下のようにして、シフト時間402および基準加工数403から、シフト単位の加工数を計算して取り込んでおく。ここで、シフト時間402とはシフトごとの勤務時間をいう。また、基準加工数とは前記シフト時間における加工数の標準を設定したものである。シフト単位の加工数は下記式(3)によって算出する。
シフト単位の加工数=シフト時間402÷基準加工数403・・・・(3)
シフト単位の加工数は刃具の交換予測時間を求めるために使用する。
シフト時間402、基準加工数403は、勤務時間や稼働率の変動によって変更することができる。
【0029】
ステップ306にて、加工残数が最も小さい刃具と同時に交換する刃具を算出する。前記算出した情報は交換対象刃具の欄413に表示される情報となる。本実施形態では加工残数が最も小さい刃具と加工残数の差が3回以内を同時交換対象として表示しているが、刃具の寿命やコストによって、同時交換とする回数を管理するマスターなどを用いて変動させることができる。
【0030】
(表示工程)
ステップ303~307で演算したデータの表示方法308について説明する。
まず、ステップ302にて加工設備から読み込んだ刃具番号421、設定寿命422、使用回数423を加工設備情報表示部420として表示させる。次に、ステップ306にて算出した情報から、刃具交換時期である交換タイミングごとに刃具交換予想時期表示部410として表示させる。
図4に示す刃具交換予想時期表示部410では、交換時期No1に次回交換対象となる複数の刃具である加工設備1の刃具番号1、刃具番号4、加工設備3の刃具番号1、刃具番号4、加工設備5の刃具番号3を表示している。次に交換時期No2では次々回交換対象となる複数の刃具である加工設備3の刃具番号1、刃具番号2、刃具番号4、刃具番号14、刃具番号15を表示している。このように、刃具の交換タイミングによって分類し表示している。
【0031】
本実施形態では、加工設備情報表示部420と刃具交換予想時期表示部410の背景色や網掛け、罫線タイプを変更して表示させることができる。図4の表示例では、網掛けおよび罫線タイプ(太枠線、太枠破線、細枠破線)としており、それぞれの表示部での紐付けを捉えやすくしている。これにより作業者は視覚的に刃具交換対象数を認識することが可能となり、段取り時間の決定や水すましの要否を判断することが可能となる。本実施形態では背景色や網掛けや罫線タイプや変更することとしたが、フォントの変更など、視覚的に認知しやすい方法を用いてもよい。
【符号の説明】
【0032】
100 加工ライン
101~105 加工設備
110 ローカルエリアネットワーク
111 表示装置
401 現在時刻
402 シフト時間
403 基準加工数
410 刃具交換予想時期表示部
411 交換時期Noの欄
412 交換予想時刻の欄
413 交換対象刃具(加工設備、刃具番号)の欄
420 加工設備情報表示部
421 刃具番号
422 設定寿命
423 使用回数

図1
図2
図3
図4