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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物及び接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/58 20060101AFI20240109BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20240109BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240109BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08G18/58
C08G18/10
C08G18/48 037
C08G18/80
C08G59/40
C08G18/22
C08G18/38 019
C08G59/68
C09J175/08
C09J163/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020060180
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155673
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 肇
(72)【発明者】
【氏名】中野 宏明
(72)【発明者】
【氏名】東 一郎
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-239890(JP,A)
【文献】特公昭49-011880(JP,B1)
【文献】特開2007-119619(JP,A)
【文献】特開平11-171964(JP,A)
【文献】特開平03-281539(JP,A)
【文献】特開昭60-190417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08G 59/00-59/72
C09J 175/08
C09J 163/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、を必須の原料とするイソシアネートプレポリマー(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)及びアルミニウムキレート化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(C)と、
2官能以上の硬化剤(D)と、
を含有する硬化性組成物であって、
前記硬化剤(D)が、ジシアンジアミドであることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリオール(a1)が、ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むものである請求項1記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記イソシアネートプレポリマー(A)が、前記ポリオール(a1)中の水酸基に対して、過剰のイソシアネート基となるようにポリイソシアネート(a2)を用いてなるポリウレタンをブロック化剤(a3)でブロックしてなるブロックイソシアネートプレポリマーである請求項1又は2記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ブロック化剤(a3)が1価のフェノール化合物である請求項記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリオール(a1)が、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体である請求項2~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記ポリオール(a1)が3官能成分を含むものである請求項1~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート(a2)がジイソシアネートである請求項1~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(B)のエポキシ当量が150~350g/eqの範囲である請求項1~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)中の金属が、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス又はレアアースである請求項1~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)中の脂肪酸が、プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸、トール油脂肪酸、ステアリン酸、ロジン酸又はナフテン酸である請求項1~の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項11】
前記アルミニウムキレート化合物(C3)がジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート又はビス[エチル-3-(オキソ-κO)ブタノアト-κO’](2-プロパノラト)アルミニウムである請求項1~9の何れか1項記載の硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1~11の何れか1項記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項13】
請求項1~11の何れか1項記載の硬化性組成物からなる接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物における耐湿熱性特性に優れ、接着剤用途に好適な硬化性組成物とその硬化物、及び接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの観点から構造体材料としてアルミニウムや、マグネシウム、プラスチック等の軽量材料の採用が進んでおり、また、組み立てにおいても溶接による接合に替えて接着剤の利用が増えてきている。自動車等の構造体用接着剤には異素材間の接着性が良好であることや、使用環境の温度・湿度の変化に耐えられることなどが要求されている。これらの要求を満たすために、例えば、基材への追従性を向上させることで接着性を維持できるとの観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂とウレタン変性エポキシ樹脂やゴム変性エポキシ樹脂とを併用してなる接着剤が提供されている(例えば、特許文献1参照)しかしながら、エポキシ樹脂を変性することで柔軟性骨格を導入する場合には、その導入量に上限があり、高度化する要求を十分に満たせない場合がある。更に、耐湿熱性の観点からは、硬化物(接着層)の疎水性に起因して、基材と硬化物との界面に水分が入り込むことで、界面剥離を起こしやすいという点においても、改良が求められている。
【0003】
また、一液型の接着剤とするために、硬化剤との反応性を有さないブロックイソシネートを用いる方法も提供されている。例えば、3官能ポリオールとジイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーをフェノール性水酸基を有する炭化水素樹脂でブロック化した組成物が示されている(例えば、特許文献2参照)が、ブロック化剤の分子量が大きくまた解離性も低いことから、このブロック化剤が硬化系に組み込まれず、接着性や耐久性において満足するレベルには到達しないものである。さらに、3官能ポリオキシプロピレンとジイソシアネートから得られるイソシアネートプレポリマーを、パラターシャリーブチルフェノールでブロック化した組成物とウレタン変性エポキシ樹脂からなる硬化性組成物が示されている(例えば、特許文献3参照)が、これも耐湿熱性が乏しいうえに、耐湿熱試験後の破壊状態が界面剥離であり、改良が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-185034号公報
【文献】特開平11-322882号公報
【文献】国際公開第2006/132093号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、耐湿熱特性に優れ、接着剤用途に好適に用いることができる硬化性組成物とその硬化物、及び接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ポリオールを原料とするイソシアネートプレポリマーをエポキシ樹脂と併用し、さらに特定の金属化合物を配合することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、を必須の原料とするイソシアネートプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)及びアルミニウムキレート化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(C)と、2官能以上の硬化剤(D)と、を含有することを特徴とする硬化性組成物とその硬化物、並びに当該硬化性組成物からなる接着剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化物における基材との密着性が良好であり、耐湿熱特性にも優れ、接着剤用途に好適な硬化性組成物とその硬化物、及び接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ポリオール(a1)と、ポリイソシアネート(a2)と、を必須の原料とするイソシアネートプレポリマー(A)と、エポキシ樹脂(B)と、脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)及びアルミニウムキレート化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(C)と、2官能以上の硬化剤(D)とを含有することを特徴とする。
【0010】
特に前記ポリオール(a1)として、ポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとを含むポリオールを用いることによって、接着剤として用いた際に、接着層(硬化物)中に水分をある程度取り込むことが可能となり、その結果として、仮にはがれを起こしたとしても界面剥離を抑制し、凝集破壊性が高いことに起因し、接着剤としての機能をより一層奏することが可能となる。
【0011】
前記ポリオール(a1)に含まれるポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとは、同一分子内に存在する必要はなく、例えば、ポリオキシエチレンユニットのみを含むポリオールとポリオキシプロピレンユニットのみを含むポリオールとを併用して後述するポリイソシアネート(a2)と反応させてもよい。
【0012】
ポリオール(a1)がポリオキシエチレンポリオールとポリオキシプロピレンポリオールのコポリマーである場合、ポリオキシエチレンポリオール中のポリオキシエチレンユニットの繰り返し単位は2~10の範囲であることが、接着剤として用いた際の基材への密着性と、機械的強度と耐湿熱性のバランスに優れる観点から好ましいものである。
【0013】
また、ポリオール(a1)中のポリプロプレングリコールユニットとしての分子量は、数平均分子量として2000~4000の範囲であることが、同様の観点から好ましいものである。
【0014】
前記ポリオール(a1)中のポリオキシエチレンユニットとポリオキシプロピレンユニットとの質量比としては、25/70~1/99の範囲であることが、界面剥離を抑制できる観点と、基材との密着性の確保、並びに硬化物の柔軟性・靱性のバランスにより優れる観点から好ましく、特に30/70~1/99の範囲であることが好ましい。
【0015】
前記ポリオール(a1)中には、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン以外のユニットを含んでいてもよい。その他のユニットとしては、例えば、テトラメチレングルコール、ネオペンタングリコール等の脂肪族二価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールプロパン等の三価アルコール;エリトリット、ペンタエリトリット、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,3,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール等の四価アルコール;アドニット、アラビット、キシリット等の五価アルコール;ソルビット、マンニット、イジット等の六価アルコール等を単独で、或いは複数を繰返し単位として有するユニットが挙げられる。
【0016】
本発明で用いるポリオール(a1)は、例えば、両末端が水酸基であるポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオールをそのまま用いてもよく、ポリオキシエチレンポリオールとポリオキシプロピレンポリオールとの共重合体であって、水酸基を2~3有する化合物であるポリエーテルポリオールであることが好ましい。更に、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオールとポリカルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールや、ひまし油のエチレンオキシド付加物やプロピレンオキシド付加物等であってもよい。
【0017】
これらの中でも、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を用いることが、接着剤としての機能の均一性により優れる観点から好ましい。ポリオキシエチレンユニットの含有率の調整のために、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレン共重合体と、ポリオキシプロピレンポリオールとを混合して用いることも好ましいものである。
【0018】
更に、前記ポリオール(a1)としては、2~4官能成分を含むことが好ましく、特に3官能成分を含むことが、基材との密着性により優れる点から好ましい。また、ポリオール(a1)の数平均分子量としては、1000~5000の範囲であることが好ましく、特に2000~4000の範囲であることがより好ましい。
【0019】
本発明で用いるポリイソシアネート(a2)は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物であればよく、特に2~4個有する化合物であることが、イソシアネートプレポリマー(A)の分子量調整が容易である観点から好ましく、ジイソシアネートであることが最も好ましい。
【0020】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、プロパン-1,2-ジイソシアネート、2,3-ジメチルブタン-2,3-ジイソシアネート、2-メチルペンタン-2,4-ジイソシアネート、オクタン-3,6-ジイソシアネート、3,3-ジニトロペンタン-1,5-ジイソシアネート、オクタン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、メタテトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート)、1,3-又は1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水添MDI)、水添トリレンジイソシアネート等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、前記ポリオール(a1)との反応制御がしやすい、原料入手容易性の観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートを用いることが好ましく、特にイソホロンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0022】
本発明では、特に前記ポリオール(a1)中の水酸基に対して、過剰のイソシアネート基となるようにポリイソシアネート(a2)を用いてなるポリウレタンをブロック化剤(a3)でブロックしてなるブロックイソシアネートプレポリマーであることが、硬化性組成物としたときの保存安定性がより良好である観点から好ましいものである。
【0023】
前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)との反応は特に限定されるものではなく、通常のウレタン化反応で実施すればよい。例えば、反応温度40~140℃、好ましくは60~130℃であり、反応を促進するために種々のウレタン重合用触媒、例えば、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、第一スズオクトエート、スタナスオクトエート、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛等の有機金属化合物、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の第三級アミン系化合物を使用することができる。
【0024】
前記ポリオール(a1)中の水酸基に対するイソシアネート基の過剰量としては、水酸基1モルに対し、イソシアネート基が2.05~3.50モルの範囲であることが、得られるプレポリマーの分子量を調整しやすいことや、未反応ポリイソシアネート低減の観点から好ましい。
【0025】
過剰のイソシアネート基は、前記のようにブロック化剤(a3)を用いてブロックすることが好ましく、ブロック化剤(a3)としては例えば、、マロン酸ジエステル(マロン酸ジエチル等)、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル(アセト酢酸エチル等)等の活性メチレン化合物;アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)、メチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)等のオキシム化合物;メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ヘプチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、イソノニルアルコール、ステアリルアルコール等の一価アルコール又はこれらの異性体;メチルグリコール、エチルグリコール、エチルジグリコール、エチルトリグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール等のグリコール誘導体;ジシクロヘキシルアミン等のアミン化合物;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、第三ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、カーダノール、クロロフェノール、ブロモフェノール等の1価のフェノール化合物、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ナフトール、カードール、メチルカードール、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールF等の2価のフェノール化合物;ε-カプロラクトン、ε-カプロラクタム等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0026】
これらの中でも、硬化性組成物を調製したのち、硬化物を得る際の反応に影響を及ぼしにくい観点から、1価のフェノール化合物であることが好ましく、特にアルキル基を有するアルキルフェノール、もしくはアルケニル基を有するアルケニルフェノールであることが好ましく、安全性の観点から、p-t-ブチルフェノール、もしくはカーダノールを用いることが最も好ましい。
【0027】
ブロック化反応は、公知の反応方法により行なうことができ、ブロック化剤(a3)の使用量は、遊離のイソシアネート基に対し、通常1~2当量、好ましくは1.05~1.5当量である。
【0028】
前記ブロック化剤(a3)によるブロック化反応は、通常ポリウレタンの重合の最終の反応でブロック化剤(a3)を添加する方法をとるが、ポリウレタンの重合の任意の段階でブロック化剤(a3)を添加し反応させて、ブロックイソシアネートプレポリマーを得ることもできる。
【0029】
ブロック化剤(a3)の添加方法としては、所定の重合終了時に添加するか、重合初期に添加するか、又は重合初期に一部添加し重合終了時に残部を添加する等の方法が可能であるが、好ましくは重合終了時に添加する。この場合、所定の重合終了時の目安としては、イソシアネート%を基準とすればよい。ブロック化剤を添加する際の反応温度は、通常50~150℃であり、好ましくは60~120℃である。反応時間は通常1~7時間程度とする。反応に際し、前記ウレタン重合用触媒を添加して反応を促進することも可能である。また、反応に際し、可塑剤を任意の量加えてもよい。
【0030】
本発明におけるイソシアネートプレポリマー(A)の重量平均分子量としては、4000~15000の範囲であることが、硬化性組成物を接着剤として用いる際の取り扱いが良好である観点から好ましく、特に5000~10000の範囲であることが好ましい。
【0031】
尚、本発明において、ポリオールの数平均分子量(Mn)は水酸基価と官能基数からの計算値であり、その他の重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0032】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK-GUARDCOLUMN SuperHZ-L
+東ソー株式会社製 TSK-GEL SuperHZM-M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0033】
本発明で用いるエポキシ樹脂(B)としては、特に限定されるものではなく、種々のものを使用することができる。接着剤として用いる場合は、常温下で液状のエポキシ樹脂であることが好ましく、例えば、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂;ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の脂肪族ポリオールポリグリシジルエーテル;ジグリシジルアニリン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の環構造含有ポリグリシジル化合物;アルキルフェノールモノグリシジルエーテル等の環構造含有単官能グリシジル化合物;ネオデカン酸グリシジルエステル等のポリグリシジルエステル化合物等が挙げられる。中でも、柔軟性、靱性等により優れた硬化物が得られることからビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましく、工業的入手容易性の観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。特に、エポキシ樹脂(B)の総質量に対するビスフェノール型エポキシ樹脂の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
【0034】
前記ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、各種のビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、エピハロヒドリンとを樹脂原料として得られるものが挙げられ、具体的には、下記構造式(1)
【0035】
【化1】
[式中Xはそれぞれ独立に下記構造式(2-1)~(2-8)
【0036】
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかである。)
の何れかで表される構造部位であり、nは繰り返し数である。]
で表されるものが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0037】
前記構造式(1)中のXは、前記構造式(2-1)~(2-8)の何れかで表される構造部位であり、分子中に複数存在するXは同一の構造部位であっても良いし、それぞれ異なる構造部位であっても良い。中でも、硬化物における柔軟性と靱性に優れることから、前記一般式(2-1)又は(2-2)で表される構造部位であることが好ましい。
【0038】
前記ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ当量は150~350g/eqの範囲であることが好ましく、特に硬化物における柔軟性と靱性に優れることから、160~250g/eqの範囲であることがより好ましい。
【0039】
前記ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂は、前述の通り、各種のビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、エピハロヒドリンとを樹脂原料とする方法などにより製造することができる。具体的な製造方法としては、例えば、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて得られるジグリシジルエーテル化合物を、更にビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と反応させる方法(方法1)や、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させて直接エポキシ樹脂を得る方法(方法2)等が挙げられる。中でも、反応が制御し易く、得られるエポキシ樹脂(B)のエポキシ当量を前記好ましい値に制御することが容易であることから、前記方法1が好ましい。
【0040】
前記方法1又は2で用いるビスフェノール化合物又はビフェノール化合物は、例えば、下記構造式(3-1)~(3-8)
【0041】
【化3】
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかであり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基の何れかである。)
の何れかで表される化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、硬化物における柔軟性と靱性に優れることから、前記一般式(3-1)又は(3-2)で表される化合物が好ましい。
【0042】
前記方法1について、ビスフェノール化合物又はビフェノール化合物と、これらのジグリシジルエーテル化合物との反応割合は、両者の質量比が50/50~5/95の範囲であることが好ましい。反応温度は120~160℃程度であることが好ましく、テトラメチルアンモニウムクロライド等の反応触媒を用いても良い。
【0043】
本発明では、前述のイソシアネートプレポリマー(A)と前記エポキシ樹脂(B)とをあらかじめ反応させ、ウレタン変性エポキシ樹脂としたのち、後述の脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)及びアルミニウムキレート化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(C)と、2官能以上の硬化剤(D)とを配合して、硬化性組成物としてもよい。
【0044】
本発明では、前述のブロックイソシアネートプレポリマーを用いる場合には、得られる硬化物の柔軟性や靱性をより向上させるために、エポキシ樹脂(B)として、ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂と、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂等の柔軟性エポキシ樹脂を併用することが好ましい。
【0045】
前記ウレタン変性エポキシ樹脂は、分子中にウレタン結合と2個以上のエポキシ基とを有する樹脂であれば、その構造として特に限定されるものではない。ウレタン結合とエポキシ基とを効率的に1分子中に導入することができる点から、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタン結合含有化合物と、ヒドロキシ基含有エポキシ化合物とを反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0046】
ウレタン変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシカルボン酸とアルキレンオキシドの付加物、ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。ポリヒドロキシ化合物の分子量は、柔軟性と硬化性のバランスに優れる点から、数平均分子量として1000~5000、特に2000~4000の範囲のものを用いることが好ましい。
【0047】
ウレタン変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるポリイソシアネートは、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香族炭化水素基を有するポリイソシアネートが挙げられる。なかでも、脂肪族ジイソシアネートもしくは芳香族ポリイソシアネートが接着強度の観点から好ましい。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが挙げられ、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが挙げられる。
【0048】
上記の反応により、末端に遊離のイソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーを得る。これに1分子中に少なくとも1個の水酸基を有するエポキシ樹脂(例えばビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、脂肪族多価アルコールのジグリシジルエーテルおよびグリシドールなど)を反応せしめることでウレタン変性エポキシ樹脂が得られる。
【0049】
ウレタン変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200~400g/eqであるのが好ましい。
【0050】
ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ基を2個以上有し、骨格がゴムであるエポキシ樹脂であれば特に制限されない。骨格を形成するゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル基末端NBR(CTBN)が挙げられる。ゴム変性エポキシ樹脂はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
ゴム変性エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200~500g/eqであるのが好ましい。ゴム変性エポキシ樹脂はその製造について特に制限されない。例えば、多量のエポキシ中でゴムとエポキシとを反応させて製造することができる。ゴム変性エポキシ樹脂を製造する際に使用されるエポキシ(例えば、エポキシ樹脂)は特に制限されない。
【0052】
本発明で用いる脂肪酸金属塩(C1)は、市販のものであっても、調整したものであってもよい。脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸等のカルボン酸と、マンガン、コバルト、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅、ストロンチウム、バリウム、カリウム、セリウム、レアアース等の金属との塩(以下、「金属石鹸」という場合がある。)が挙げられ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明で用いる脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)は、市販のものであっても、調整したものであってもよく、例えば、下記一般式(4)で表されるものが挙げられ、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0054】
【化4】
(式中、Mはマンガン、コバルト、カルシウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、銅、ストロンチウム、バリウム、カリウム、セリウム、レアアース等の金属原子を表し、R~Rはそれぞれ独立にオクチル酸、ネオデカン酸、ナフテン酸等のカルボン酸基を表す。なお、前記カルボン酸基は、カルボン酸が有するカルボキシル基の水素原子を除いた残基を意味する。)
【0055】
前記脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)の製造方法は、特に限定されないが、目的とする金属塩が効率的に得られる点から、例えば、特公昭63-63551号公報に記載されている方法で製造することが好ましい。
【0056】
これらの中でも、加熱時の硬化性が良好であり、液状とすることが容易な観点から、前記脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)中の金属が、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ビスマス又はレアアースであり、また脂肪酸としては、プロピオン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、ネオデカン酸、トール油脂肪酸又はナフテン酸であることが好ましい。
【0057】
本発明で用いるアルミニウムキレート化合物(C3)としては、市販のものであっても、調整したものであってもよく、又1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
アルミニウムキレート化合物(C3)としては、下記一般式(5)で表される3つのβ-ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体化合物が挙げられる。
【0059】
【化5】
ここで、R、R、Rは、それぞれ独立的にアルキル基又はアルコキシル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基等が挙げられ、アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。
【0060】
前記一般式(5)で表されるアルミニウムキレート化合物(C3)の具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられ、加熱時の硬化性が良好であり、又前記イミダゾール化合物(A1)と混合した際に、液状の硬化剤とすることが容易な観点から、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート又はビス[エチル-3-(オキソ-κO)ブタノアト-κO’](2-プロパノラト)アルミニウムを用いることが好ましい。
【0061】
前記アルミニウムキレート化合物(C3)としては、そのまま用いてもよく、或いは、多孔質型のマイクロカプセル化されたものを使用してもよいが、より微小空間での使用の際の硬化不良の抑制、取扱い上の容易性等の観点から、液状であることが好ましい。
【0062】
液状とする方法としては、例えば、脂肪酸として、プロピオン酸、ネオデカン酸、2-エチルヘキサン酸、トール油脂肪酸、ナフテン酸等の常温で液状の化合物を用いる方法等、目的とする粘度や使用方法によって、適宜選択することが可能である。
【0063】
本発明では、前記化合物(C)を用いることによって、硬化反応時にエポキシ樹脂と反応せずに未反応となっているイソシアネート基に対してこの化合物(C)が反応することにより、硬化物中に未反応のイソシアネート基が残りにくく、その結果として、硬化物の耐湿熱性が向上するものと考えられる。さらに、この化合物(C)が含まれることによって、各種基材との密着性も向上することになり、接着剤として好適な組成物となる。
【0064】
本発明では、硬化剤としてさらに2官能以上の硬化剤(D)を含む。前記硬化剤(D)としては、従来エポキシ樹脂用の硬化剤として用いられるものをいずれも好適に用いることができる。なお、この2官能以上との意味は、エポキシ基との反応部位が1分子中に2個以上含まれていることをいう。
【0065】
前記硬化剤(D)としては、例えば、例えば、ポリアミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノ-ル性水酸基含有樹脂等が挙げられる。
【0066】
前記ポリアミン化合物は、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等の脂肪族アミン化合物;
【0067】
ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;
【0068】
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m-キシレンジアミン等の芳香族アミン化合物;
【0069】
エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ジヒドラジド、ジアミノマレオニトリル等の変性アミン化合物等が挙げられる。
【0070】
前記アミド化合物は、例えば、ポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンは、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と、脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものが挙げられる。
【0071】
前記酸無水物は、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0072】
前記フェノ-ル性水酸基含有樹脂は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0073】
これらの中でも、硬化性組成物を接着剤として用いる場合には、ジシアンジアミドを用いることが、取り扱い上の容易性の観点から好ましい。ジシアンジアミドは、エポキシ樹脂の潜在性硬化剤として知られており、180℃以上の高温下で活性化する。その構造中には1級アミノ基及び2級アミノ基を有しており、活性水素は1分子中に4つ存在している。通常、エポキシ樹脂と硬化剤との反応はエポキシ基と活性水素は等量で用いることが多く、特にジシアンジアミドにおいては、硬化物中に未反応のジシアンジアミドが残ることによる悪影響(耐水性の劣化等)が懸念されるほか、活性化したジシアンジアミドの硬化触媒としての機能があること等の理由により、エポキシ基に対してジシアンジアミド中の活性水素が0.5~1.3倍の範囲で設計されることが多いが、活性水素としてエポキシ基の1.5倍以上で用いた場合には、特に接着強度があがることがあるので、目的とする性能に応じてその配合量は適宜選択することができる。
【0074】
本発明において、前記イソシアネートプレポリマー(A)とエポキシ樹脂(B)との使用割合としては、得られる硬化物の柔軟性、靱性並びに耐湿熱特性のバランスにより優れる観点から、通常(A)/(B)で表される質量比として、5/95~40/60の範囲であり、10/90~30/70の範囲であることがより好ましい。
【0075】
本発明の硬化性組成物は、この他、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、シリコン系添加剤、フッ素系添加剤、難燃剤、可塑剤、シランカップリング剤、有機ビーズ、無機微粒子、無機フィラー、レオロジーコントロール剤、脱泡剤、防曇剤、着色剤等を含有していても良い。これら各種成分は所望の性能に応じて任意の量を添加してよい。
【0076】
本発明の硬化性組成物は、前記イソシアネートプレポリマー(A)とエポキシ樹脂(B)、脂肪酸金属塩(C1)、脂肪酸ホウ酸金属塩(C2)及びアルミニウムキレート化合物(C3)からなる群から選ばれる1種以上の化合物(C)、及び前記各種の任意成分を、ポットミル、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、ホモジナイザー、スーパーミル、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、プラネタリーミキサー等を用いて均一に混合することにより調製することができる。
【0077】
本発明の硬化性組成物の用途は特に限定されず、塗料、コーティング剤、成形材料、絶縁材料、封止剤、シール剤、繊維の結束剤など様々な用途に用いることができる。中でも、硬化物における柔軟性と靭性に優れる特徴を生かし、自動車、電車、土木建築、エレクトロニクス、航空機、宇宙産業分野の構造部材の接着剤として好適に用いることができる。本発明の接着剤は、例えば、金属-非金属間のような異素材の接着に用いた場合にも、温度環境の変化に影響されず高い接着性を維持することができ、剥がれ等が生じ難い。また、本発明の接着剤は、構造部材用途の他、一般事務用、医療用、炭素繊維、電子材料用などの接着剤としても使用でき、電子材料用の接着剤としては、例えば、ビルドアップ基板などの多層基板の層間接着剤、光学部品接合用接着剤、光ディスク貼り合わせ用接着剤、プリント配線板実装用接着剤、ダイボンディング接着剤、アンダーフィルなどの半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペーストなどの実装用接着剤などが挙げられる。
【実施例
【0078】
以下に、実施例および比較例をもって本発明をより詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限られるものではない。
【0079】
合成例1
窒素雰囲気下三井ケミカル&SKCポリウレタン(MCNS)社製ポリオキシエチレン(PE)-ポリオキシプロピレン(PP)コポリマーであるポリエーテルポリオール(アクトコールED-37A Mn:3000 官能基数:2) 830質量部、住化コベストロウレタン社製イソホロンジイソシアネート(IPDI)96質量部を混合し、触媒としてネオスタン U-820 0.1質量部を投入し、80℃で5時間反応せしめ、次いでブロック化剤としてパラターシャリーブチルフェノール(PTBP)74質量部を投入し90℃で5時間反応せしめ、ブロックイソシアネートプレポリマー(1)を得た。
【0080】
合成例2
合成例1と同様の処方で、表1の配合組成より、ブロックイソシアネートプレポリマー(2)を得た。
【0081】
【表1】
【0082】
表1中の化合物
ED-37A:MCNS社製PE-PPポリオール(Mn3000 官能基数:2)
EP-530:MCNS社製PE-PPポリオール(Mw:3000 官能基数:3)
T-3000:MCNS社製PPポリオール(Mn:3000 官能基数:3)
IPDI:住化コベストロウレタン社製イソホロンジイソシアネート
H12MDI:住化コベストロウレタン社製ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート
NX-2026:Cardolite NX-2026 Cardolite社製 カーダノール
【0083】
合成例3:ウレタン変性エポキシ樹脂(3)の合成
窒素雰囲気下三井ケミカル&SKCポリウレタン(MCNS)社製ポリオキシプロピレン(PP)ポリオール(アクトコールD-2000 Mw:2000 官能基数:2) 122質量部、T-3000 122質量部、住化コベストロウレタン社製イソホロンジイソシアネート(IPDI)56質量部を混合し、触媒としてネオスタン U-820 0.1質量部を投入し、80℃で5時間反応せしめ、次いでビスフェノールA型エポキシ樹脂EPICLON850-S 700質量部を投入し90℃で5時間反応せしめ、ウレタン変性エポキシ樹脂(3)を得た。当該ウレタン変性エポキシ樹脂のエポキシ当量は269であった。
【0084】
合成例4:中間体組成物(1)の合成
合成例1で合成したブロックイソシアネートプレポリマー(1) 25質量部、DIC社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂EPICLON 850-S 70質量部、DIC社製ゴム変性エポキシ樹脂EPICLON TSR-601 5質量部、硬化剤としてジシアンジアミド(DICY) 7質量部、硬化促進剤として3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(DCMU)1質量部、フィラーとして炭酸カルシウム(CaCO)を30質量部を混合し、中間体組成物(1)を得た。
【0085】
合成例5:中間体組成物(2)の合成
ブロックイソシアネートプレポリマー(1)に替えてブロックイソシアネートプレポリマー(2)を用いて合成例4と同様にして配合した中間体組成物(2)を調整した。
【0086】
合成例6:中間体組成物(3)の合成
合成例3で合成したウレタン変性エポキシ樹脂(3) 65質量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂EPICLON 850-S 35質量部、硬化剤としてジシアンジアミド(DICY) 7質量部、硬化促進剤として3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(DCMU)1質量部、フィラーとして炭酸カルシウム(CaCO3)を30質量部を混合し、中間体組成物(3)を得た。
【0087】
実施例1
合成例3で調製した中間体組成物(1)100質量部に DIC社製金属石鹸12%Zr-OCTOATE(2-エチルヘキサン酸ジルコニウム 1質量部を添加・混合した硬化性組成物(1)を調製した後に170℃で30分かけて硬化した硬化物について、接着性評価と耐湿熱試験を行った。
【0088】
接着性評価
<引張剪断試験>
JIS K6859 (接着剤のクリープ破壊試験)方法で25℃の条件で島津製作所株式会社製 AUTOGRAPH AG-XPlus 100kNを用いて引張せん断強度を測定した。併せて破壊状態についても凝集破壊(CF)の面積比率(%)で評価を行った。
<T字剥離試験>
JIS K6854-3 (接着剤の剥離接着強さ試験)方法で25℃の条件で島津製作所株式会社製 AUTOGRAPH AG-IS 1kNを用いて剥離強度を測定した。
【0089】
耐湿熱性試験
上記<引張剪断試験>、<T字剥離試験>で作製した試験片を70℃、90%の条件で2週間耐湿熱試験を行った後、5時間以内にJIS K6859 (接着剤のクリープ破壊試験)方法で25℃の条件で 島津製作所株式会社製 AUTOGRAPH AG-XPlus 100kNを用いて引張せん断強度を測定した。併せて破壊状態についても凝集破壊(CF)の面積比率で評価を行った。同様の試験機で引張剪断強度と剥離強度を測定した。
【0090】
実施例2~5
実施例1と同様にして表2に示した配合で硬化性組成物(2)~(5)を調製し、実施例1と同様の評価を実施した。またその評価結果を表2にまとめた。
【0091】
【表2】
【0092】
表2中の化合物
12%-ZrOct:DIC株式会社製12%Zr-OCTOATE 2-エチルヘキサン酸ジルコニウム
Fe5%SB:DIC株式会社製DICNATE Fe5%SB ネオデカン酸鉄
5000Co:DIC株式会社製DICNATE 5000 ネオデカン酸コバルト
NBC-2:DIC株式会社製DICNATE NBC-2ネオデカン酸ホウ酸コバルト
15Ba-Oct:DIC株式会社製Ba-OCTOATE 15% 2-エチルヘキサン酸バリウム
【0093】
比較例1~2
下記表3に基づいて硬化性組成物を調整し、実施例と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0094】
【表3】