(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置、定着方法及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240109BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240109BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/01 K
G03G9/08 391
(21)【出願番号】P 2020066403
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】吉永洋
(72)【発明者】
【氏名】長谷岳誠
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205674(JP,A)
【文献】特開2006-058358(JP,A)
【文献】特開2019-008139(JP,A)
【文献】特開2014-170225(JP,A)
【文献】米国特許第04407219(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/01
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着ローラ、加熱ローラ、該加熱ローラからの熱を受ける定着部材及び加圧部材を有し、光輝性トナーを含むトナー像が形成された記録媒体を
前記定着部材と
前記加圧部材の間のニップ部を通過させることで、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、
前記定着部材が、前記定着ローラと前記加熱ローラの間に掛け渡されたベルト部材であり、
先端がループ状に構成されたブラシ状部材が
、前記定着ローラと前記加熱ローラの間で前記定着部材の表面に接触して
おり、
前記定着部材を介して前記ブラシ状部材の対向側に支持部材が設置されている、ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ブラシ状部材は回転可能な形状を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ブラシ状部材の先端が、前記定着部材の移動方向に対して逆方向に回転する、ことを特徴とする請求項1又は2記載の定着装置。
【請求項4】
前記ブラシ状部材に接触し、前記ブラシ状部材の付着物を除去する清掃部材が設けられる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
光輝性トナーを含むトナー像が形成された記録媒体を定着部材と加圧部材の間のニップ部を通過させることで、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着方法において、
前記定着部材が、定着ローラと加熱ローラの間に掛け渡されたベルト部材であり、
先端がループ状に構成されたブラシ状部材を
、前記定着部材の裏側に設置された支持部材の前記定着部材を介する対向側において、前記定着ローラと前記加熱ローラの間で前記定着部材の表面に接触させる、ことを特徴とする定着方法。
【請求項7】
光輝性トナーを含むトナー像が形成された記録媒体を定着部材と加圧部材の間のニップ部を通過させることで、前記トナー像を前記記録媒体に定着させ、画像を形成する画像形成方法において、
前記定着部材が、定着ローラと加熱ローラの間に掛け渡されたベルト部材であり、
先端がループ状に構成されたブラシ状部材を
、前記定着部材の裏側に設置された支持部材の前記定着部材を介する対向側において、前記定着ローラと前記加熱ローラの間で前記定着部材の表面に接触させる、ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置、定着方法及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を定着する定着装置において、金属粉末を含む画像の定着が行われることがある。具体的には、金属色トナー(メタリックトナー)を用いて画像を形成することで、金色や銀色などの金属色の画像を記録媒体上に形成することができる。
【0003】
金属色トナーは、例えばスチレンやアクリル等の合成樹脂による結着樹脂や、着色剤、配合剤に、銀粉末、金属アルミニウム粉等のような粒径が相対的に大きい金属顔料(金属粉末)を配合したものである。
【0004】
ここで、銀粉末などの金属顔料は、扁平状、鱗片状、円盤状又は球形状に形成されている。さらに、銀粉末などの金属顔料の平均粒子径は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒などの通常のトナーよりも相対的に大きく、また金属顔料自体が硬く、端部形状が鋭利な形状の金属顔料が含まれる。そのため、この金属顔料により、定着に用いられる定着用部材に傷がつくことがある。定着用部材についた傷は、後に定着が行われる画像に転写され、定着画像の質の低下を招く。
【0005】
特許文献1は、光輝性トナーを含む画像の定着を連続した場合に、画像の光沢低下を防ぐことを目的として、基材、弾性層及びテトラフルオロエチレン-パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体を含む表面層がこの順で積層された構造を有する定着部材を用いることを開示する。しかしながら、この技術では、光輝性トナーに含まれる扁平状の硬い粒子である光輝性顔料が加熱部材表面に刺さった場合には除去ができない。
【0006】
また特許文献2は、定着部材表面に不織布やフェルトなどの繊維状シート材料を摺接させ、光輝性顔料を摺接クリーニングする技術を開示する。しかしながら、このような不織布やフェルトなどの繊維状シート材料を摺接させる摺接クリーニングでは、光輝性顔料が加熱部材表面に刺さった状態で、加熱部材と繊維状シート材料との間に線速差が生じるため、加熱部材表面で加熱部材の移動方向に傷が拡大して定着部材表面の凹凸や傷が拡大するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、定着装置において光輝性トナーを含む画像を定着する場合に、定着部材に傷がつくことを抑制して定着部材を長期にわたって良好に維持するとともに高画質を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、定着ローラ、加熱ローラ、該加熱ローラからの熱を受ける定着部材及び加圧部材を有し、光輝性トナーを含むトナー像が形成された記録媒体を前記定着部材と前記加圧部材の間のニップ部を通過させることで、前記トナー像を前記記録媒体に定着させる定着装置において、前記定着部材が、前記定着ローラと前記加熱ローラの間に掛け渡されたベルト部材であり、先端がループ状に構成されたブラシ状部材が、前記定着ローラと前記加熱ローラの間で前記定着部材の表面に接触しており、前記定着部材を介して前記ブラシ状部材の対向側に支持部材が設置されている、ことを特徴とする定着装置によって解決される。
【発明の効果】
【0009】
定着装置において光輝性トナーを含む画像を定着する場合に、定着部材に傷がつくことを抑制して定着部材を長期にわたって良好に維持するとともに高画質を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】画像形成装置全体の構成・動作を示す概略図である。
【
図2】画像形成装置1に設置される定着装置20の構成を示す概略図である。
【
図3】従来の定着ベルト表面の光輝性顔料の除去方法を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る定着装置を示す概略図であって、本発明の実施形態の定着ベルト表面の光輝性顔料の除去方法を示す概略図である。
【
図5】本発明の別な実施形態に係る定着装置20の構成を示す概略図である。
【
図6】本発明の別な実施形態に係る定着装置20の構成を示す概略図である。
【
図7】本発明の別な実施形態に係る定着装置20の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(トナー)
先ず、本発明の実施形態に係るトナーについて説明する。本発明の実施形態に係るトナーは、少なくとも結着樹脂と、前記結着樹脂中に板状の顔料とを含有する。
前記板状の顔料は、平均粒子径が10μm~25μmであり、アスペクト比が20~125であり、シリカコート処理が施されており表面にシリカコート層を有する。
上記トナーは、高い光輝性を広い定着温度範囲に渡り示すことができる。
本発明の実施形態に係る電子写真用トナー(「トナー」ともいう)は、少なくとも結着樹脂と、板状の顔料とを含有し、更に必要に応じて、離型剤、その他の成分を含有する。本発明の実施形態のトナーは、光輝性のトナーである(本発明では、トナーとも光輝性トナーともいう)。ここで、「光輝性」とは、トナーによって形成された画像に金属光沢性の輝きを視認する場合をいう。
【0012】
<結着樹脂>
前記結着樹脂としては、使用する有機溶剤に溶解するものであれば特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、中でもポリエステル樹脂が好ましい。
【0013】
<<ポリエステル樹脂>>
前記ポリエステル樹脂としては、一般公知のアルコールと酸との重縮合反応によって得られるもの全てを用いることができる。
前記アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどのジオール類:1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどのエーテル化ビスフェノール類;これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価のアルコール単量体;その他の二価のアルコール単量体:ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-サルビタン、ペンタエスリトールジペンタエスリトール、トリペンタエスリトール、蔗糖、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の三価以上の高アルコール単量体などが挙げられる。
また、ポリエステル樹脂を得るために用いられるカルボン酸としては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのモノカルボン酸:マレイン酸、フマール酸、メサコン酸、シトラコン酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらを炭素数3~22の飽和もしくは不飽和の炭化水素基で置換した二価の有機酸単量体;これらの酸の無水物;低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体:1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸エンボール三量体酸;これらの酸の無水物等の三価以上の多価カルボン酸単量体などが挙げられる。
結着樹脂中のポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は9,500~30,000が好ましく、数平均分子量(Mn)は2,100~2,300が好ましい。
【0014】
<<その他の結着樹脂>>
ポリエステル樹脂以外に、その他の結着樹脂を含んでもよい。その他の結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル共重合体などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
<板状の顔料>
前記板状の顔料は、平均粒子径が10μm~25μmであり、より好ましくは13μm~21μmである。顔料の平均粒子径が10μmより小さいと、定着時に光輝性顔料の配向性を揃えるのが困難となるのに加えて、画像中の顔料間に隙間が生じ易くなることから、光輝性が低下する。
また、顔料の平均粒子径が25μmより大きいと、定着時に顔料同士の重なりが発生し、光輝性が損なわれる。
前記板状の顔料は、アスペクト比(粒子径/厚み)が20~125であり、より好ましくは、40~100である。アスペクト比(粒子径/厚み)が20より小さいと、顔料が球形に近づき、光輝性自体が損なわれてしまう。また、アスペクト比(粒子径/厚み)が125より大きいと、定着時、顔料の屈曲が発生するため、光輝性が損なわれる。
前記板状の顔料は、シリカコート処理が施されており、表面にシリカコート層を有する。シリカコート処理が施されていないと、定着時、顔料の屈曲が増加し、光輝性が低下する。
板状の顔料の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、東洋アルミニウム株式会社製のTCRシリーズなどが挙げられる。
また、前記板状の顔料の前記トナーに対する含有量は、トナー100質量部に対して3質量部~11質量部であることが好ましく、5質量部~11質量部であることがより好ましい。
顔料の表面にシリカコート層を有しているか否かは、走査型電子顕微鏡 Zeiss Ultra55(カールツァイスマイクロスコピー株式会社製)を用い、EDS(元素分析)測定を行うことで観察することができる。また、本発明の実施形態では、表面にシリカ層が0.02μm程度、被覆されているとよい。
本発明の実施形態に用いるアルミニウム顔料の製造方法は、特に限定されず、公知の手法により実施することができる。例えば、ボールミルやアトライターミルを使用し、粉砕媒体の存在下、アルミニウム粉末を脂肪酸等の粉砕助剤を用いて粉砕し製造する方法がある。これにより任意の粒径・厚さの顔料を得ることが可能である。
得られたアルミニウム顔料の表面をシリカコートする方法としては、例えば以下の手法がある。顔料をプロピレングリコールモノメチルエーテルに分散させ、テトラエトキシシランを添加した後、アンモニア水と、水を添加し、攪拌しシリカコート処理を行うことができる。
【0016】
[顔料の平均粒子径、及びアスペクト比(粒子径/厚み)の測定]
本発明の実施形態における各顔料の平均粒子径、アスペクト比(粒子径/厚み)の測定は、例えば、走査型電子顕微鏡 Zeiss Ultra55(カールツァイスマイクロスコピー株式会社製)を用いて測定を行うことができる。
得られた画像を画像処理ソフトA像君(旭化成エンジニアリング株式会社)で二値化し、顔料面積を算出する。
平均粒子径は、上記で得られた値が円形面積によるものであるとし、直径の値に換算する。
また、顔料厚みは、以下のようにして求める。各顔料が同一方向となるよう、該トナーを可溶溶媒(テトラヒドロフランなど)に溶かした後、スピンコートを用い、ポリエステルフィルム上で塗膜を作成し、乾燥させる。この塗装物を2液混合型エポキシ樹脂に包埋した後、顔料方向に対し垂直となるようウルトラミクロトームULTRACUT-S(ライカ株式会社)を用いて薄片化、その断面を観測することで厚みを求める。
【0017】
次に、
図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
【0018】
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。光輝性顔料を含むトナーは上記4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kのいずれか、もしくは複数で置き換え可能である。また上記4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kに加えて光輝性顔料を含むトナー専用の作像ステーションを設け、5つもしくはそれ以上の作像部を配設する構成としても良い。
【0019】
各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電部75、現像装置76、クリーニング部77、除電部等が配設されている。そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。
【0020】
感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、画像形成装置1に備えられた駆動モータによって
図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電部75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0021】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程である。)。
【0022】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0023】
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程である。)。
【0024】
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、画像形成装置1に備えられた除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で行われる、一連の作像プロセスが終了する。
【0025】
その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト78上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト78上にカラー画像が形成される。
【0026】
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82~84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって
図1中の矢印方向に無端移動される。
【0027】
4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。
【0028】
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
【0029】
その後、各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト78は、2次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、2次転写バックアップローラ82が、2次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで2次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト78上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体P上に転写される。このとき、中間転写ベルト78には、記録媒体Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0030】
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0031】
ここで、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体Pは、画像形成装置1の下方に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が
図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
【0032】
レジストローラ対98に搬送された記録媒体Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、記録媒体Pが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、記録媒体P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0033】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写された記録媒体Pは、定着装置20のニップ部(定着ベルト21と加圧ローラ31とが圧接する位置である。)に搬送される。そして、ニップ部(定着ニップ部)で、定着ベルト21及び加圧ローラ31による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像が記録媒体P上に定着される。
【0034】
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0035】
次に、
図2にて、画像形成装置1に設置される定着装置20の構成について説明する。
図2に示すように、本発明の実施形態に係る定着装置20は、ベルト定着方式として構成されており、加熱ローラ23、該加熱ローラからの熱を受ける定着部材としての定着ベルト21、定着ローラ22、加圧部材としての加圧ローラ31、ブラシ状部材201等を有する。また定着装置20は、定着ベルト21を回転させて用紙Pを搬送するベルト駆動手段、及び加圧ローラ31の定着ベルト21に対する加圧動作・脱圧動作を行う加圧・脱圧機構を備えている。定着装置20は、少なくとも光輝性トナーを含むトナー像Tが形成された記録媒体Pを定着ベルト21と加圧ローラ31の間のニップ部を通過させることで、トナー像Tを記録媒体Pに定着させる。
【0036】
ここで、定着部材としての定着ベルト21は、ポリイミド樹脂からなる層厚90μmのベース層上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造の無端ベルトである。定着ベルト21の弾性層は、層厚が200μm程度であって、シリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性材料で形成されている。定着ベルト21の離型層は、層厚が20μm程度であって、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等で形成されている。定着ベルト21の表層に離型層を設けることにより、トナー像Tに対する離型性(剥離性)が担保されることになる。定着ベルト21は、複数のローラ部材(定着ローラ22、加熱ローラ23)に張架・支持されて、
図2中の矢印方向に走行する。
【0037】
定着ローラ22は、SUS304等の芯金上に、フッ素ゴム、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム等の弾性層(本実施例では層厚が14mm)が形成された外径が52mmの円筒部材であって、加圧部材としての加圧ローラ31に定着ベルト21を介して当接してニップ部(定着ニップ部)を形成する。定着ローラ22は、
図2中の矢印方向に回転する。
【0038】
加熱ローラ23は、アルミニウム等の金属材料からなる円筒体(肉厚が0.6mm、外径が35mm)であって、その円筒体の内部には熱源としてのヒータ25が固設されている。
【0039】
加熱ローラ23のヒータ25は、ハロゲンヒータであって、その両端部が定着装置20のフレームに固定されている。そして、画像形成装置1の電源部(交流電源)により出力制御されたヒータ25からの輻射熱によって加熱ローラ23が加熱されて、さらに加熱ローラ23によって加熱された定着ベルト21の表面から記録媒体P上のトナー像Tに熱が加えられる。ヒータ25の出力制御は、定着装置20に備えられた、定着ベルト21表面に非接触で対向するサーモパイルによるベルト表面温度の検知結果に基づいて行われる。詳しくは、サーモパイルの検知結果に基づいて定められる通電時間だけ、ヒータ25に交流電圧が印加される。このようなヒータ25の出力制御によって、定着ベルト21の温度(定着温度)を所望の温度(目標制御温度)に調整制御することができる。加熱手段として加熱ローラ23内にヒータ25を備える構成だけでなく、IHにより定着ベルト21の外部を加熱する方式や、定着ニップ部に抵抗発熱体を備える方式(いわゆるSURF定着構成)等を用いても良い。
【0040】
また、加圧部材としての加圧ローラ31は、肉厚が1mmの中空芯金上に、シリコーンゴム、フッ素ゴム、発泡性シリコーンゴム等からなる層厚が1.5mmの弾性層が形成されたものである。加圧ローラ31は、外径が50mm程度に設定されている。なお、弾性層の表層にPFA等からなる薄肉の離型層を設けることもできる。
【0041】
そして、加圧ローラ31は、加圧ローラ31に接続された加圧手段によって定着ベルト21を介して定着ローラ22に圧接する。こうして、加圧ローラ31と定着ベルト21との間に、所望のニップ部(定着ニップ部)が形成される。加圧ローラ31は、画像形成装置1に備えられた駆動モータによって
図2の矢印方向に回転駆動される。
なお、本実施形態において、加圧ローラ31を直接的に加熱するヒータを設置することもできる。
【0042】
図3は、従来の定着ベルト表面の光輝性顔料の除去方法(
図3(a),(b))を示す概略図である。
図3は定着ベルト21上に残留した扁平状の硬い粒子である光輝性顔料50が定着ベルト21に刺さった状態を示している。この従来の光輝性顔料の除去方法では、清掃部材として機能する、ローラ状付勢部材45とローラ状付勢部材45の周りに巻き付けられたシート状摺動部材46が、定着ベルト21に押圧された状態で停止している(
図3(a))。このようなシート状摺動部材46を用いて光輝性顔料50を除去する場合、光輝性顔料50が、停止しているシート状摺動部材46によって定着ベルト21上を引きずられるため(
図3(b))、定着ベルト21が傷つけられてしまい(
図3(b)のハッチング部分)、画像の光沢度が低下する等の不具合が発生する。
【0043】
一方で、
図4は、本発明の実施形態に係る定着装置を示す概略図であって、本発明の実施形態に係る定着ベルト表面の光輝性顔料の除去方法を示す概略図である。
図4(a)に示すように、本実施形態に係る定着装置20は、先端がループ状に構成されたブラシ状部材201をさらに有する。このブラシ状部材201は、残留した扁平状の硬い粒子である光輝性顔料50が刺さった定着ベルト21表面に接触しており、清掃部材として機能する。先端がループ状に構成されたブラシ状部材201を定着ベルト21表面に接触させることにより、光輝性顔料50のエッジをブラシ状部材201の先端のループで引っ掛けることができ(
図4(b))、光輝性顔料50を定着ベルト21上を引きずることなく、引き抜くことができる(
図4(c))。
【0044】
こうして、ブラシ状部材201によって光輝性顔料50を定着ベルト21表面から除去し、定着ベルト21表面の凹凸や傷を拡大することなく、光輝性顔料50を除去し、定着ベルト21表面を清掃することが可能となる。よって、定着ベルト21表面に傷がついて画像の光沢度が低下する等の不具合の発生も抑制される。
【0045】
ここで、「ブラシ状部材」とは、獣毛・植物繊維・合成樹脂などを柄、板面又は軸などに多数植えつけた部材である。
また、「ループ状」とは、上記合成樹脂などがパイル織物のように輪状に形成されている状態を言う。
【0046】
図5は、本発明の別な実施形態に係る定着装置20を示す概略図である。
図5(a)に示すように、本実施形態に係る定着装置20は、回転可能な形状を有するブラシ状部材202を有する。ここで、回転可能な形状は例えば円筒形状である。このブラシ状部材202は、残留した扁平状の硬い粒子である光輝性顔料50が刺さった定着ベルト21表面に接触しており、清掃部材として機能する。回転可能な形状を有するブラシ状部材202を定着ベルト21表面に接触させることにより、光輝性顔料50のエッジをブラシ状部材202の先端のループで引っ掛けることができ(
図5(b))、光輝性顔料50を定着ベルト21上を引きずることなく、引き抜くことができる(
図5(c))。こうして、ブラシ状部材201によって光輝性顔料50を定着ベルト21表面から除去し、定着ベルト21表面の凹凸や傷を拡大することなく、光輝性顔料50を除去し、定着ベルト21表面を清掃することが可能となる。さらに、回転可能な形状を有するブラシ状部材202の先端を回転させて、定着ベルト21表面に連続的に接触させることにより、ブラシ状部材202の清掃能力を長期間維持できる。
【0047】
さらに、ブラシ状部材202の先端は、定着ベルト21の移動方向に対して逆方向に(カウンター方向に)回転する。これにより、単位時間当たりの定着ベルト21表面とブラシ状部材202の先端の接触時間が長くなり、定着ベルト21を効率良く清掃することが可能となる。
【0048】
図6は、本発明の別な実施形態に係る定着装置20を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る定着装置20は、ブラシ状部材202に接触して、ブラシ状部材202の付着物を除去する清掃部材203をさらに備える。清掃部材203は、例えばブレード状又は板状の形状を有する。このような清掃部材203をブラシ状部材202に接触させることで、定着ベルト21から除去した光輝性顔料50等の異物をブラシ状部材202から取り除くことができる。よって、ブラシ状部材202の先端をフレッシュな状態に維持できるため、ブラシ状部材202の清掃能力を長期間維持できる。
【0049】
図7は、本発明の別な実施形態に係る定着装置20を示す概略図である。
図示のように、本実施形態に係る定着装置20では、定着部材としての定着ベルト21がベルト部材であり(例えば、ローラ部材ではない)、定着ベルト21を介してブラシ状部材202の対向側に支持部材としてのバックアップ部材204が設置されている。これにより、ブラシ状部材202が定着ベルト21に接触する清掃部でのベルト軌道の安定化が可能となる。なお、
図2,4に示す実施形態において、回転しない清掃部材であるブラシ状部材201の対向側に支持部材としてのバックアップ部材204を設置してもよい。
【0050】
定着部材が定着ベルト21の場合、ベルト裏面に支持部材がない箇所では定着ベルト21のバタつき等のために、ブラシ状部材202の定着ベルト21への食い込み量が変動し、ブラシ状部材202が定着ベルト21に非接触になって清掃できなかったり、食い込みすぎて傷などが生じたりすることを防止する必要がある。このために、ベルト裏側にバックアップ部材204を備えることで、清掃部での定着ベルト21の軌道が安定し、常に良好な光輝性顔料50の除去、清掃が可能となる。
【0051】
また、本発明の実施形態に係る画像形成装置は上記定着装置を有する。これにより、光輝性顔料50を含む光輝性トナーを用いた場合でも長期間にわたって良好な画質を維持することが可能となる。
【0052】
また、本発明の実施形態に係る定着方法によれば、光輝性トナーを含むトナー像Tが形成された記録媒体Pを定着部材としての定着ベルト21と加圧部材としての加圧ローラ31の間のニップ部を通過させることで、トナー像Tを記録媒体Pに定着させる定着方法において、先端がループ状に構成されたブラシ状部材201,202を定着ベルト21の表面に接触させる。
【0053】
また、本発明の実施形態に係る画像形成方法によれば、光輝性トナーを含むトナー像Tが形成された記録媒体Pを定着部材としての定着ベルト21と加圧部材としての加圧ローラ31の間のニップ部を通過させることで、トナー像Tを記録媒体Pに定着させ、画像を形成する画像形成方法において、先端がループ状に構成されたブラシ状部材201,202を定着ベルト21の表面に接触させる。
【0054】
以上説明したように、光輝性トナーに含まれる扁平状の硬い粒子である光輝性顔料が定着部材表面に刺さった場合、従来のように停止した清掃部材を用いると光輝性顔料を引きずって定着部材を傷つけることがあった。これに対し、本発明によれば、定着部材表面にブラシ状の、特にブラシ先端をループ状に構成した清掃部材を接触させることにより、定着部材表面に刺さった扁平状の硬い粒子である光輝性顔料を引きずることなく、引き抜くことができる。こうして、定着部材表面の凹凸や傷を拡大することなく光輝性顔料を定着部材表面から除去し、清掃することができる。
【符号の説明】
【0055】
20 定着装置
21 定着ベルト(定着部材)
31 加圧ローラ(加圧部材)
201,202 ブラシ状部材
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【文献】特開2017-53974号公報
【文献】特開2018-205674号公報