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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電荷輸送性組成物
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/15 20230101AFI20240109BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20240109BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240109BHJP
   C07D 487/16 20060101ALI20240109BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240109BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240109BHJP
【FI】
H10K50/15
C07D209/88
C07D487/04 137
C07D487/16
H10K50/10
H10K85/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020534740
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030221
(87)【国際公開番号】W WO2020027262
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018147125
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 歳幸
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/137395(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/050253(WO,A1)
【文献】特開2016-025360(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
C07D 209/88
C07D 487/04
C07D 487/16
H10K 50/10
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアニリン誘導体を含む電荷輸送性組成物。
【化1】
[式中、各Arは、下記式(Ar1)で表される基である。
【化2】
(式中、R 1 は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ2で置換されていてもよい素数2~20のヘテロアリール基であり、
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基であり、
2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基であり、
3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。)]
【請求項2】
更に、ドーパントを含む請求項記載の電荷輸送性組成物。
【請求項3】
前記ドーパントが、アリールスルホン酸エステル化合物である請求項記載の電荷輸送性組成物。
【請求項4】
前記アリールスルホン酸エステル化合物が、式(H6)~(H8)のいずれかで表されるものである請求項記載の電荷輸送性組成物。
【化3】
(式中、mは、1≦m≦4を満たす整数であり、nは、1≦n≦4を満たす整数であり、
11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基であり、
12は、-O-又は-S-であり、
13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であり、
14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、
15は、-O-又は-S-であり、
16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、
17は、-O-、-S-又は-NH-であり、
18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、
s1~Rs4は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、
s5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり、
s6及びRs7は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、Rs8は、直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、ただし、Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計は6以上であり、
s9~Rs13は、互いに独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、
s14~Rs17は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり、
s18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又はORs19であり、Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。)
【請求項5】
式(H6)~(H8)のいずれかで表されるアリールスルホン酸エステル化合物の使用量が、物質量(モル)比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、0.01~20.0である請求項記載の電荷輸送性組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項記載の電荷輸送性組成物を用いて作製される電荷輸送性薄膜。
【請求項7】
請求項記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷輸送性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELともいう。)素子に用いられる電荷輸送性薄膜は、その着色が有機EL素子の色純度及び色再現性を低下させる等の事情から、近年、可視領域での透過率が高く、透明性に優れることが望まれている(特許文献1)。この点に鑑み、本出願人は、可視領域での着色が抑制された、透明性に優れた電荷輸送性薄膜を与えるウェットプロセス用材料を既に見出している(特許文献1、2)。
【0003】
一方、これまで、有機EL素子を高性能化するために様々な取り込みがなされてきているが、光取出し効率を向上させる等の目的で、用いる機能膜の屈折率を調整する取り組みがなされている。具体的には、素子の全体構成や隣接する他の部材の屈折率を考慮して、相対的に高いあるいは低い屈折率の正孔注入層や正孔輸送層を用いることで、素子の高効率化を図る試みがなされている(例えば、特許文献3、4)。このように、屈折率は有機EL素子の設計上重要な要素であり、有機EL素子用材料では屈折率も考慮すべき重要な物性値と考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/042623号
【文献】国際公開第2008/032616号
【文献】特表2007-536718号
【文献】特表2017-501585号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、電荷輸送性が良好で、消衰係数(k)が低く透明性が良好で、屈折率(n)が高い薄膜を与え、この薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を実現できる電荷輸送性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内にN,N,N',N'-テトラ(カルバゾール-2-イル)-パラフェニレンジアミン構造を有する所定のアニリン誘導体を含む電荷輸送性組成物が、類似構造のアニリン誘導体を用いた場合と比べ、消衰係数(k)が低く透明性が良好で、屈折率(n)が高い電荷輸送性薄膜を与えるだけでなく、その組成物自体の保存安定性も優れること、及び当該電荷輸送性薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
したがって、本発明は、下記電荷輸送性組成物を提供する。
1.下記式(1)で表されるアニリン誘導体を含む電荷輸送性組成物。
【化1】
[式中、各Arは、互いに独立に、下記式(Ar1)~(Ar9)のいずれかで表される基である。
【化2】
(式中、R1~R21は、互いに独立に、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ2で置換されていてもよい素数2~20のヘテロアリール基であり、
1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基であり、
2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基であり、
3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。)]
2.Arが、全て同じ基である1の電荷輸送性組成物。
3.Arが、式(Ar1)~(Ar5)のいずれかで表される基である2の電荷輸送性組成物。
4.Arが、式(Ar1)で表される基である3の電荷輸送性組成物。
5.更に、ドーパントを含む1~4のいずれかの電荷輸送性組成物。
6.前記ドーパントが、アリールスルホン酸エステル化合物である5の電荷輸送性組成物。
7.前記アリールスルホン酸エステル化合物が、式(H6)~(H8)のいずれかで表されるものである6の電荷輸送性組成物。
【化3】
(式中、mは、1≦m≦4を満たす整数であり、nは、1≦n≦4を満たす整数であり、
11 は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基であり、
12 は、-O-又は-S-であり、
13 は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であり、
14 は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、
15 は、-O-又は-S-であり、
16 は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、
17 は、-O-、-S-又は-NH-であり、
18 は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、
s1 ~R s4 は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、
s5 は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり、
s6 及びR s7 は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、R s8 は、直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、ただし、R s6 、R s7 及びR s8 の炭素数の合計は6以上であり、
s9 ~R s13 は、互いに独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、
s14 ~R s17 は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり、
s18 は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又はOR s19 であり、R s19 は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。)
8.式(H6)~(H8)のいずれかで表されるアリールスルホン酸エステル化合物の使用量が、物質量(モル)比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、0.01~20.0である7の電荷輸送性組成物。
.1~のいずれかの電荷輸送性組成物を用いて作製される電荷輸送性薄膜。
10の電荷輸送性薄膜を備える有機EL素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電荷輸送性組成物を用いることで、類似構造のアニリン誘導体を含む組成物を用いた場合と比べ、高い透明性(低消衰係数(k))と高い屈折率(n)の電荷輸送性薄膜を作製することができる。また、本発明の電荷輸送性組成物は、類似構造のアニリン誘導体を含む組成物と比べ、保存安定性に優れる。そして、本発明の電荷輸送性組成物から得られる電荷輸送性薄膜は、有機EL素子をはじめとした電子素子用薄膜として好適に用いることができ、有機EL素子の陽極と発光層の間に設けられる機能層、特に正孔注入層として用いることで、特性に優れた有機EL素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[電荷輸送性組成物]
本発明の電荷輸送性組成物は、下記式(1)で表されるアニリン誘導体を含む。
【化3】
【0010】
式(1)中、各Arは、互いに独立に、下記式(Ar1)~(Ar9)のいずれかで表される基である。
【化4】
【0011】
式(Ar1)~(Ar9)中、R1~R21は、互いに独立に、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基である。Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基である。Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基又はZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基である。Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。
【0012】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられるが、フッ素原子が好ましい。
【0013】
前記炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基が挙げられる。
【0014】
前記炭素数2~20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エテニル基、n-1-プロペニル基、n-2-プロペニル基、1-メチルエテニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、n-1-ペンテニル基、n-1-デセニル基等が挙げられる。
【0015】
前記炭素数2~20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、n-1-ペンチニル基、n-2-ペンチニル基、n-3-ペンチニル基、n-4-ペンチニル基、1-メチル-n-ブチニル基、2-メチル-n-ブチニル基、3-メチル-n-ブチニル基、1,1-ジメチル-n-プロピニル基、n-1-ヘキシニル基、n-1-デシニル基等が挙げられる。
【0016】
前記炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられる。
【0017】
前記炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基等の含酸素ヘテロアリール基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基等の含硫黄ヘテロアリール基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピラジル基、3-ピラジル基、5-ピラジル基、6-ピラジル基、2-ピリミジル基、4-ピリミジル基、5-ピリミジル基、6-ピリミジル基、3-ピリダジル基、4-ピリダジル基、5-ピリダジル基、6-ピリダジル基、1,2,3-トリアジン-4-イル基、1,2,3-トリアジン-5-イル基、1,2,4-トリアジン-3-イル基、1,2,4-トリアジン-5-イル基、1,2,4-トリアジン-6-イル基、1,3,5-トリアジン-2-イル基、1,2,4,5-テトラジン-3-イル基、1,2,3,4-テトラジン-5-イル基、2-キノリニル基、3-キノリニル基、4-キノリニル基、5-キノリニル基、6-キノリニル基、7-キノリニル基、8-キノリニル基、1-イソキノリニル基、3-イソキノリニル基、4-イソキノリニル基、5-イソキノリニル基、6-イソキノリニル基、7-イソキノリニル基、8-イソキノリニル基、2-キノキサニル基、5-キノキサニル基、6-キノキサニル基、2-キナゾリニル基、4-キナゾリニル基、5-キナゾリニル基、6-キナゾリニル基、7-キナゾリニル基、8-キナゾリニル基、3-シンノリニル基、4-シンノリニル基、5-シンノリニル基、6-シンノリニル基、7-シンノリニル基、8-シンノリニル基等の含窒素ヘテロアリール基等が挙げられる。
【0018】
中でも、R1~R21としては、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、Z2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基がより好ましく、Z2で置換されていてもよいフェニル基、Z2で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z2で置換されていてもよい2-ナフチル基がより一層好ましい。また、Z2としては、ハロゲン原子、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基が好ましい。Z3としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0019】
本発明においては、アニリン誘導体の合成の容易性の観点から、Arは、全て同じ基であることが好ましい。また、アニリン誘導体の有機溶媒への溶解性を向上させ、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点から、式(Ar1)~(Ar5)のいずれかで表される基が好ましく、式(Ar1)で表される基が最適である。
【0020】
以下、本発明で好適なアニリン誘導体の具体例を挙げるが、これに限定されない。
【化5】
(式中、Phは、フェニル基である。)
【0021】
本発明で用いるアニリン誘導体は、触媒の存在下、パラフェニレンジアミン(1,4-フェニレンジアミン)と、ハロゲン化又は擬ハロゲン化カルバゾール誘導体Ar-X(Arは、前記と同じ。Xは、ハロゲン原子又は擬ハロゲン基である。)とを反応させることで製造することができる。
【0022】
前記ハロゲン原子としては、前記と同様のものが挙げられるが、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。前記擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等の(フルオロ)アルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
1,4-フェニレンジアミンとハロゲン化又は擬ハロゲン化カルバゾール誘導体との仕込み比は、1,4-フェニレンジアミンの全NH基の物質量に対し、ハロゲン化又は擬ハロゲン化カルバゾール誘導体を当量以上とすることができるが、1~1.2当量程度が好適である。
【0024】
前記反応に用いられる触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPh3)4)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(Pd(PPh3)2Cl2)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd2(dba)3)、ビス[トリ(t-ブチルホスフィン)]パラジウム(Pd(P-t-Bu3)2)、酢酸パラジウム(Pd(OAc)2)等のパラジウム触媒等が挙げられる。これらの触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。このような配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、ジ-t-ブチル(フェニル)ホスフィン、ジ-t-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)」プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の3級ホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3級ホスファイト等が挙げられる。
【0026】
触媒の使用量は、ハロゲン化又は擬ハロゲン化カルバゾール誘導体1molに対し、0.01~0.2mol程度とすることができるが、0.15mol程度が好適である。
また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する触媒に対し、0.1~5当量とすることができるが、1~2当量が好適である。
【0027】
原料化合物が全て固体である場合あるいは目的とするアニリン誘導体を効率よく得る観点から、前記各反応は溶媒中で行う。溶媒を使用する場合、その種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ラクタム及びラクトン類(N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン等)、尿素類(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、通常0~200℃程度の範囲であり、好ましくは20~150℃の範囲である。反応終了後は、常法にしたがって後処理をし、目的とするアニリン誘導体を得ることができる。
【0029】
本発明の電荷輸送性組成物は、有機溶媒を含む。このような有機溶媒としては、電荷輸送性物質である式(1)で表されるアニリン誘導体を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。高溶解性溶媒の具体例としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その使用量は、組成物に使用する溶媒全体に対し、5~100質量%とすることができる。
【0030】
また、組成物に、25℃で10~200mPa・s、特に35~150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50~300℃、特に150~250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種類含有させることで、組成物の粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、用いる塗布方法に応じた組成物の調製が可能となる。高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物に用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5~80質量%が好ましい。
【0031】
更に、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、組成物に使用する溶媒全体に対し、1~90質量%、好ましくは1~50質量%の割合で混合することもできる。このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ-ブチロラクトン、エチルラクテート、n-ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
また、式(1)で表されるアニリン誘導体が、例えば、その分子内のカルバゾール部位の9位の窒素原子上にアリール基を有する場合のように、分子内の少なくとも1つの窒素原子上に置換基を有する場合、好ましくは全ての窒素原子上に置換基を有している場合、低極性溶媒のみを用いた組成物の調製が容易になる。そのような低極性溶媒の具体例としては、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、フタル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の電荷輸送性組成物は、溶媒として水も含み得るが、組成物から得られる電荷輸送性薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いた場合に高耐久性の素子を再現性よく得る観点から、水の含有量は、溶媒全体の10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、溶媒として有機溶媒のみを用いることが最適である。なお、この場合における「有機溶媒のみ」とは、溶媒として用いるものが有機溶媒だけであることを意味し、使用する有機溶媒や固形分等に微量に含まれる「水」の存在までをも否定するものではない。また、本発明において、固形分とは、電荷輸送性組成物に含まれる溶媒以外の成分を意味する。
【0034】
本発明の電荷輸送性組成物は、式(1)で表されるアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質とともに、その他の電荷輸送性物質を含んでいてもよい。
【0035】
本発明の電荷輸送性組成物は、式(1)で表されるアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質と、有機溶媒とを含むものであるが、得られる薄膜の用途に応じ、その電荷輸送能の向上等を目的としてドーパント(電荷受容性物質)を含んでいてもよい。
【0036】
ドーパントとしては、組成物に使用する少なくとも1種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系のドーパント、有機系のドーパントのいずれも使用できる。また、無機系及び有機系のドーパントは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。更に、ドーパントは、組成物から固体膜である電荷輸送性薄膜を得る過程で、例えば、焼成時の加熱といった外部からの刺激によって、分子内の一部が外れることによってドーパントとしての機能が初めて発現又は向上するようになる物質、例えば、スルホン酸基が脱離しやすい基で保護されたアリールスルホン酸エステル化合物であってもよい。
【0037】
組成物中のドーパント物質の量は、所望の電荷輸送性の程度やドーパント物質の種類に応じて異なるため一概に規定できないが、通常、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、質量比で、0.0001~100の範囲である。
【0038】
本発明においては、好ましい無機系のドーパントとしては、ヘテロポリ酸が挙げられる。ヘテロポリ酸とは、代表的に下記式(H1)で表されるKeggin型あるいは下記式(H2)で表されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【化6】
【0039】
ヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられる。これらのヘテロポリ酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらのヘテロポリ酸は、市販品として入手可能であり、また、公知の方法により合成することもできる。
【0040】
特に、1種類のヘテロポリ酸を用いる場合、その1種類のヘテロポリ酸は、リンタングステン酸又はリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が最適である。また、2種類以上のヘテロポリ酸を用いる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸の1つは、リンタングステン酸又はリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。
【0041】
なお、ヘテロポリ酸は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多いもの、又は少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。すなわち、例えば、一般的には、リンタングステン酸は化学式H3(PW1240)・nH2Oで、リンモリブデン酸は化学式H3(PMo1240)・nH2Oでそれぞれ示されるが、定量分析において、この式中のP(リン)、O(酸素)又はW(タングステン)若しくはMo(モリブデン)の数が多いもの又は少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。この場合、本発明に規定されるヘテロポリ酸の質量とは、合成物や市販品中における純粋なリンタングステン酸の質量(リンタングステン酸含量)ではなく、市販品として入手可能な形態及び公知の合成法にて単離可能な形態において、水和水やその他の不純物等を含んだ状態での全質量を意味する。
【0042】
ドーパントとしてヘテロポリ酸を使用する場合、その使用量は、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、質量比で、0.001~50.0程度とすることができるが、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.1~10.0程度である。
【0043】
一方、好ましい有機系のドーパントとしては、テトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体が挙げられる。テトラシアノキノジメタン誘導体の具体例としては、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)や、下記式(H3)で表されるハロテトラシアノキノジメタン等が挙げられる。また、ベンゾキノン誘導体の具体例としては、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン(F4BQ)、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(クロラニル)、テトラブロモ-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)等が挙げられる。
【0044】
【化7】
【0045】
式(H3)中、R101~R104は、互いに独立に、水素原子又はハロゲン原子を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子であり、少なくとも2つがハロゲン原子であることが好ましく、少なくとも3つがハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であることが最も好ましい。ハロゲン原子としては前記と同じものが挙げられるが、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0046】
このようなハロテトラシアノキノジメタンの具体例としては、2-フルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2-クロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6-テトラクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)等が挙げられる。
【0047】
ドーパントとしてテトラシアノキノジメタン誘導体又はベンゾキノン誘導体を使用する場合、その使用量は、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、物質量(モル)比で、0.01~20.0程度とすることができるが、好ましくは0.1~10.0程度、より好ましくは0.5~5.0程度である。
【0048】
また、その他の好ましい有機系のドーパントとしては、アリールスルホン酸化合物が挙げられる。その具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p-スチレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5-ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7-ジブチル-2-ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3-ドデシル-2-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4-ヘキシル-1-ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2-オクチル-1-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7-へキシル-1-ナフタレンスルホン酸、6-ヘキシル-2-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7-ジノニル-4-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7-ジノニル-4,5-ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号記載の1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号記載のアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号記載のアリールスルホン酸化合物等が挙げられる。
【0049】
更に具体的には、下記式(H4)又は(H5)で表されるアリールスルホン酸化合物が挙がられる。
【化8】
【0050】
式(H4)中、A1は、O又はSを表すが、Oが好ましい。A2は、ナフタレン又はアントラセンに由来する(q+1)価の基(すなわち、ナフタレン又はアントラセンから(q+1)個の水素原子を取り除いて得られる基)であるが、ナフタレンに由来するものが好ましい。A3は、パーフルオロビフェニルから誘導されるp価の基(すなわち、パーフルオロビフェニルからp個のフッ素原子を取り除いて得られる基)である。pは、A1とA3との結合数を表し、2≦p≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。このとき、A3は、パーフルオロビフェニルジイル基であるが、好ましくはパーフルオロビフェニル-4,4'-ジイル基である。qは、A2に結合するスルホン酸基数を表し、1≦q≦4を満たす整数であるが、2が最適である。
【0051】
式(H5)中、A4~A8は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基又は炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基であるが、A4~A8のうち少なくとも3つは、ハロゲン原子である。
【0052】
炭素数1~20のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。その他、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基の例としては前記と同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0053】
これらの中でも、A4~A8としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、かつA4~A8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ化アルキル基、又は炭素数2~5のフッ化アルケニル基であり、かつ、A4~A8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、又は炭素数1~5のパーフルオロアルケニル基であり、かつ、A4、A5及びA8がフッ素原子であることがより一層好ましい。なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
【0054】
式(H5)中、rは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数を表し、1≦r≦4を満たす整数であるが、2~4が好ましく、2が最適である。
【0055】
以下、好適なアリールスルホン酸化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【化9】
【0056】
ドーパントとしてアリールスルホン酸化合物を使用する場合、その使用量は、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、物質量(モル)比で、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.4~5.0程度である。アリールスルホン酸化合物は市販品を用いてもよいが、国際公開第2006/025342号、国際公開第2009/096352号等に記載の公知の方法で合成することもできる。
【0057】
また、その他の好ましい有機系のドーパントとしては、アリールスルホン酸エステル化合物が挙げられる。その具体例としては、国際公開第2017/217455号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物、国際公開第2017/217457号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0058】
更に具体的には、アリールスルホン酸エステル化合物としては下記式(H6)~(H8)のいずれかで表されるものが好ましい。
【化10】
【0059】
式(H6)~(H8)中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
【0060】
式(H6)中、A11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基である。A12は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。A13は、ナフタレン又はアントラセンから誘導される(n+1)価の基であるが、ナフタレンから誘導されるものが好ましい。
【0061】
s1~Rs4は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rs5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。前記直鎖状又は分岐状の炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。前記炭素数2~20の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等のアルキル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。
【0062】
特に、Rs1~Rs4のうち、Rs1又はRs3が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であるか、Rs1が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs2~Rs4が水素原子であることが好ましい。この場合、炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、Rs5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
【0063】
式(H7)中、A14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、この炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素化合物からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。このような炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。なお、前記炭化水素基は、その水素原子の一部又は全部が、更に置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホ基等が挙げられる。これらの中でも、A14としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
【0064】
式(H7)中、A15は、-O-又は-S-であるが、-O-が好ましい。
【0065】
式(H7)中、A16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。このような芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。中でも、A16としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
【0066】
式(H7)中、Rs6及びRs7は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐状の1価脂肪族炭化水素基であり、Rs8は、直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基である。ただし、Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計は6以上である。Rs6、Rs7及びRs8の炭素数の合計の上限は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。前記直鎖状又は分岐状の1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらの中でも、Rs6は水素原子が好ましく、Rs7及びRs8は、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
【0067】
式(H8)中、Rs9~Rs13は、互いに独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
【0068】
前記炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0069】
前記炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
【0070】
前記炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基は、前記炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基、パーフルオロ-1-ブテニル基、パーフルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、Rs9としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基がより一層好ましい。
【0072】
式(H8)中、Rs10~Rs13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0073】
式(H8)中、A17は、-O-、-S-又は-NH-であるが、-O-が好ましい。
【0074】
式(H8)中、A18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。このような芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。これらの中でも、A18としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
【0075】
式(H8)中、Rs14~Rs17は、互いに独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
【0076】
式(H8)中、Rs18は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又はORs19である。Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。Rs18で表される直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、前記と同様のものが挙げられる。Rs18が1価脂肪族炭化水素基である場合、Rs18は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。Rs19で表される炭素数2~20の1価炭化水素基としては、前述した1価脂肪族炭化水素基のうちメチル基以外のもののほか、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、Rs19としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。なお、前記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0077】
好適なアリールスルホン酸エステル化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化11】
【0078】
【化12】
【0079】
ドーパントとしてアリールスルホン酸エステル化合物を使用する場合、その使用量は、物質量(モル)比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、0.01~20.0程度とすることができるが、好ましくは0.1~10.0程度、より好ましくは0.5~5.0程度である。
【0080】
ドーパントとして有機系のドーパントを用いる場合、その分子量は、特に限定されないが、式(1)で表されるアニリン誘導体とともに用いた場合に、有機溶媒への良好な溶解性を確保し、均一性の高い組成物を再現性よく得る観点から、好ましくは5,000以下、より好ましくは3,000以下、より一層好ましくは2,000以下である。特に、ドーパントとして用いるアリールスルホン酸化合物の分子量は、同様の観点から、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下である。
【0081】
本発明においては、高電荷輸送性の薄膜を再現性よく得ること、ドーパントの入手容易性等を考慮すると、ドーパントとして、アリールスルホン酸化合物、アリールスルホン酸エステル化合物、ハロテトラシアノキノジメタン及びベンゾキノン誘導体の少なくとも1種を用いることが好ましく、より透明な電荷輸送性薄膜を再現性よく得ることを更に考慮すると、アリールスルホン酸化合物及びアリールスルホン酸エステル化合物の少なくとも1種を用いることがより好ましく、安定性に優れる電荷輸送性組成物を得ることを更に考慮すると、アリールスルホン酸エステル化合物を用いることがより一層好ましい
【0082】
前記電荷輸送性物質及びドーパントは、前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることが最適である。
【0083】
本発明の電荷輸送性組成物は、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合における正孔輸送層への注入性の向上、素子の寿命特性等の改善を目的として、有機シラン化合物やノニオン系含フッ素界面活性剤を含んでいてもよく、その含有量は、電荷輸送性物質及びドーパントの合計100質量部に対し、通常、1~30質量部程度である。
【0084】
本発明の電荷輸送性組成物中の固形分濃度は、電荷輸送性物質の析出を抑制しつつ十分な膜厚を確保する観点から、通常0.1~20質量%程度、好ましくは0.5~15質量%である。
【0085】
本発明の電荷輸送性組成物の粘度は、通常、25℃で1~50mPa・sであり、表面張力は、通常、25℃で20~50mN/mである。本発明の電荷輸送性組成物の粘度と表面張力は、用いる塗布方法、所望の膜厚等の各種要素を考慮して、用いる有機溶媒の種類やそれらの比率、固形分濃度等を変更することで調整可能である。
【0086】
本発明の電荷輸送性組成物は、式(1)で表されるアニリン誘導体を有機溶媒に溶解させることで製造できる。あらかじめ有機溶媒に前記アニリン誘導体を溶解させ、そこにその他の有機溶媒を順次加えてもよく、用いる全溶媒の混合溶媒をあらかじめ調製し、そこへ前記アニリン誘導体を溶解させてもよい。また、必要があれば、組成物に含まれる成分が分解したり変質したりしないように注意し、加熱して前記アニリン誘導体等の溶解を促進してもよい。本発明の電荷輸送性組成物が前記アニリン誘導体と溶媒以外の成分を含む場合も、同様の方法に従う。更に、本発明の電荷輸送性組成物は、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、電荷輸送性物質を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いてろ過してもよい。
【0087】
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性組成物を基材上に塗布して焼成することで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成することができる。
【0088】
組成物の塗布方法としては、特に限定されず、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられる。塗布方法に応じて、組成物の粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
【0089】
焼成雰囲気も特に限定されず、大気雰囲気(空気下)だけでなく、窒素等の不活性ガス下や真空中でも均一な成膜面及び電荷輸送性を有する薄膜を得ることができるが、通常、大気雰囲気で焼成する。
【0090】
また、焼成条件も特に限定されないが、例えば、ホットプレートを用いて加熱焼成する。通常、所望の電荷輸送性等も考慮して、焼成温度は100~260℃の範囲内で、焼成時間は1分間~1時間の範囲内で適宜決定する。更に、必要に応じて、異なる2以上の温度で多段階の焼成をしてもよい。
【0091】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の機能層として用いる場合、5~300nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、例えば、電荷輸送性組成物中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の液量を変化させたりする方法がある。
【0092】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、機能層として本発明の電荷輸送性薄膜を有するものである。
【0093】
有機EL素子の代表的な構成としては、以下の(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層又は正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。更に、必要に応じて各層の間に任意の機能層を設けることも可能である。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
【0094】
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
【0095】
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
【0096】
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
【0097】
本発明の電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、陽極と発光層の間に設けられる機能層として好適であり、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層としてより好適であり、正孔注入層としてより一層好適である。
【0098】
本発明の電荷輸送性組成物を用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本発明の電荷輸送性組成物から得られる薄膜をからなる正孔輸送層を有するOLED素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
【0100】
陽極基板上に、前記の方法により、本発明の電荷輸送性薄膜からなる正孔注入層を形成する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子輸送層/ホールブロック層、陰極金属を順次蒸着する。あるいは、当該方法において蒸着で正孔輸送層と発光層とを形成するかわりに、正孔輸送性高分子を含む正孔輸送層形成用組成物と発光性高分子を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによってこれらの層を形成する。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
【0101】
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
発光層を形成する材料としては、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(II)等の8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体、亜鉛錯体等の金属錯体、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられるが、これらに限定されない。また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(PPy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、オキシジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)等の金属酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)の金属フッ化物が挙げられるが、これらに限定されない
【0105】
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられるが、これに限定されない。
【0107】
正孔輸送性高分子としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1'-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1'-ペンテン-5'-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
【0108】
発光性高分子としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0109】
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料選択する。
【0110】
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出されることから、陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
【0111】
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等とともに封止してもよい。
【実施例
【0112】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)LDI-MS:Bruker社製AutoFlex
(2)1H-NMR:日本電子(株)製JNM-ECP300 FT NMR SYSTEM
(3)基板洗浄:長州産業(株)製基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)組成物の塗布:ミカサ(株)製スピンコーターMS-A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製微細形状測定機サーフコーダET-4000
(6)素子の作製:長州産業(株)製多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(7)素子の電流密度等の測定:(株)イーエッチシー製多チャンネルIVL測定装置
(8)屈折率(n)と消衰係数(k)の測定:ジェー・エー・ウーラムジャパン社製多入社角分光エリプソメーターVASE
【0113】
[1]化合物の製造
[合成例1]
【化13】
【0114】
フラスコ内に、1,4-フェニレンジアミン0.502g、2-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール6.26g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.106g及びナトリウムt-ブトキシド2.24gを入れ、フラスコ内を窒素置換した。そこへ、トルエン10mL及び別途あらかじめ準備したフェニルジ-t-ブチルホスフィンのトルエン溶液1.3mL(濃度:62.5g/L)を加え、90℃で3時間攪拌した。反応混合液を室温まで冷却した後、冷却した反応混合液とともに、トルエンと飽和食塩水とを分液漏斗に入れて、分液処理を行い、有機層を回収した。回収した有機層に活性炭を加えて室温で0.5時間攪拌した後、シリカゲルろ過を行い、得られたろ液を濃縮した。
得られた濃縮液を、メタノールと酢酸エチルの混合溶媒に滴下し、暫くの間、攪拌した。得られたスラリー溶液をろ過し、得られたろ物を乾燥して、目的とするアニリン誘導体Aを2.96g(収率:59%)得た。得られた目的物は、1H-NMRで同定した。
1H-NMR(500MHz, DMSO-d6) δ[ppm]: 8.09-8.15(m, 8H), 7.54-7.57(m, 8H), 7.43-7.47(m, 12H), 7.33-7.37(m, 4H), 7.24-7.30(m, 8H), 7.05(m, 8H), 6.92-6.94(m, 4H).
【0115】
[2]電荷輸送性組成物の調製及びその保存安定性の評価
[実施例1-1]
アニリン誘導体A0.243gと下記式で表されるアリールスルホン酸エステルB0.283gとの混合物に、キシレン10gを加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性組成物を得た。なお、アリールスルホン酸エステルBは、国際公開第2017/217457号に記載の方法に従って合成した(以下同様)。
【化14】
【0116】
[実施例1-2]
アニリン誘導体A0.243g及びアリールスルホン酸エステルB0.283gの混合物に、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル5g、安息香酸ブチル3g及びフタル酸ジメチル2gを加えて室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性組成物を得た。
【0117】
[実施例1-3]
アニリン誘導体A0.243gと、アリールスルホン酸エステルB0.283gとの混合物に、3-フェノキシトルエン3gと安息香酸ブチル7gとを加えて室温で攪拌して溶解させて得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性組成物を得た。
【0118】
[比較例1-1]
アニリン誘導体Aの代わりに、下記式で表されるアニリン誘導体Cを用いた以外は、実施例1-1と同様の方法で、電荷輸送性組成物の調製を試みた。しかし、常温で攪拌しても固形分は溶解せず、更に50℃で加熱して攪拌しても固形分は溶解せず、80℃で加熱して攪拌したところ固形分は溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性組成物を得た。なお、アニリン誘導体Cは、国際公開第2015/137395号に記載された方法に従って合成した。
【0119】
【化15】
【0120】
[比較例1-2]
アニリン誘導体Aのかわりにアニリン誘導体Cを用いた以外は、実施例1-2と同様の方法で、電荷輸送性組成物の調製を試みた。しかし、常温で攪拌しても固形分は溶解せず、更に50℃、80℃のいずれの温度で加熱して攪拌しても固形分は溶解せず、電荷輸送性薄膜を製造し得る程度に均一な電荷輸送性組成物は得られなかった。
【0121】
[比較例1-3]
アニリン誘導体Aのかわりにアニリン誘導体Cを用いた以外は、実施例1-3と同様の方法で、電荷輸送性組成物の調製を試みた。しかし、常温で攪拌しても固形分は溶解せず、更に50℃で加熱して攪拌しても固形分は溶解せず、80℃で加熱して攪拌したところ固形分は溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性組成物を得た。
【0122】
得られた組成物を0℃で1週間保管し、保管後の組成物の固形分が析出しているか否かを確認した。結果を、各組成物の調製の際の固形分の溶解性とともに、表1に示す。
【0123】
【表1】
【0124】
表1から明らかなとおり、本発明の組成物では、いずれの溶媒組成でも析出は確認されなかった。一方、本発明で用いるアニリン誘導体Aに類似する構造を有するアニリン誘導体Cを含む比較例の組成物では、析出が確認された。この結果から、本発明の組成物は、比較例の組成物と比べ、保存安定性に優れることがわかった。
【0125】
[3]薄膜の光学物性の評価
[実施例2及び比較例2]
実施例1-1及び比較例1-1で得られた電荷輸送性組成物を、それぞれスピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気雰囲気下で、80℃で1分間乾燥し、次いで200℃で15分間焼成して、60nmの均一な薄膜を基板上に作製した。
各薄膜の消衰係数k(波長400nm~800nmにおける平均消衰係数)と屈折率n(波長400nm~800nmにおける平均屈折率)の測定を行った。結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2から明らかなとおり、本発明の組成物から得られる薄膜は、比較例の組成物から得られる薄膜と比べ、低い消衰係数を示し、高透明で、かつ高屈折率であることがわかった。
【0128】
[4]ホールオンリー素子の作製及び評価
以下の例において、ITO基板としては、インジウム錫酸化物(ITO)が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
【0129】
[実施例3]
実施例1-1で得られた組成物を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、80℃で1分間乾燥し、次いで200℃で15分間焼成して、60nm膜厚の電荷輸送性薄膜を作製した。
その上に、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa、蒸着レート0.2nm/秒)を用いて、正孔輸送層として、α-NPD(N,N'-ジ(1-ナフチル)-N,N'-ジフェニルベンジジン)を0.2nm/秒にて30nm成膜し、更にその上に80nmのアルミニウム薄膜を形成し、素子を作製した。
【0130】
[比較例3]
実施例1-1で得られた組成物のかわりに比較例1-1で得られた組成物を用いた以外は、実施例3と同様の方法で素子を作製した。
【0131】
[実施例4]
実施例3と同様の方法で、ITO基板上に電荷輸送性薄膜を作製した。
その上に、窒素雰囲気のグローブボックス内で、TFBポリマー(Luminescence Technology社製LT-N148)の0.6質量%キシレン溶液をスピンコートにより塗布した後、130℃で10分間焼成し、20nmの電荷輸送性薄膜を正孔輸送層として形成した。更にその上に、実施例3と同様の方法で80nmのアルミニウム薄膜を形成し、素子を作製した。
【0132】
[比較例4]
実施例1-1で得られた組成物の代わりに比較例1-1で得られた組成物を用いた以外は、実施例4と同様の方法で素子を作製した。
【0133】
作製した素子を駆動電圧5Vで駆動した場合の電流密度を測定した。結果を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
表3に示したように、本発明の組成物から得られる電荷輸送性薄膜は、比較例の組成物から得られる電荷輸送性薄膜と比べて、正孔輸送層へのホール注入性に優れた。本発明の組成物から得られる電荷輸送性薄膜を用いることで、高特性の有機EL素子が期待できる。