(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240109BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2020558354
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044925
(87)【国際公開番号】W WO2020105561
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018216789
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】名木 達哉
(72)【発明者】
【氏名】杉山 崇明
(72)【発明者】
【氏名】福田 一平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳
(72)【発明者】
【氏名】石川 和典
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔一朗
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159733(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/062353(WO,A1)
【文献】特開2017-145346(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094786(WO,A1)
【文献】特開2014-219656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と下記式(6)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物とを含有するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分と、の重合反応により得られるポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドを含有することを特徴とする液晶配向剤。
【化1】
(X
1は下記式(X1-1)~(X1-4)のいずれかで表される構造である。X
2は下記式(X2-1)又は(X2-2)で表される構造である。X
3は4つの結合手を有する芳香環である。)
【化2】
(R
3~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基であり、少なくとも一つは水素原子以外である。R
7~R
23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。)
【化3】
【請求項2】
前記ポリイミドのイミド化率が10~100%である請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項3】
前記テトラカルボン酸成分が、前記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を、前記テトラカルボン酸成分に対して1~30モル%含有する請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記テトラカルボン酸成分が、前記式(6)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を、前記テトラカルボン酸成分に対して1~20モル%含有する請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
前記式(1)において、X
1が、下記式(X1-12)~(X1-16)のいずれかで表される構造から選ばれる少なくとも1種である請求項1~4に記載の液晶配向剤。
【化4】
【請求項6】
前記式(2)において、X
2が前記式(X2-1)で表される構造である請求項1~
5に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
前記ジアミン成分が、下記式(3)、下記式(4)及び下記式(5)のいずれかで表される構造から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有する請求項1~
6に記載の液晶配向剤。
【化5】
(A
1及びA
4は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-OCO-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR
1-CO-NR
2-(R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、炭素数2~20の2価の鎖状炭化水素基、又は当該2価の鎖状炭化水素基の-CH
2-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR
1-CO-NR
2-(R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す。)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンから選ばれる基で置換された基(h1)を表す。A
2は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、ニトロ基、リン酸基、又は炭素数1~20の1価の有機基である。尚、前記A
1及びA
4の鎖状炭化水素基及び基(h1)が有する水素原子の一部又は全部を炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子で置換してもよい。A
3は、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、又は当該2価の鎖状炭化水素基の-CH
2-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR
1-CO-NR
2-(R
1及びR
2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す。)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンから選ばれる基で置換された基(h2)である。尚、A
3の前記鎖状炭化水素基及び基(h2)が有する水素原子の一部又は全部を炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子で置換してもよい。aは1~4の整数であり、aが2以上の場合、A
2は同一でも異なってもよい。b及びcは、それぞれ独立して、1又は2の整数である。dは0又は1の整数である。)
【請求項8】
前記ジアミン成分が、下記式(DA-3-1)、(DA-4-1)~(DA-4-24)、(DA-5-1)~(DA-5-3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジアミンを含有する請求項1~
7に記載の液晶配向剤。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項9】
下記(A)、(B)、(C)、及び(D)の工程を有する液晶配向膜の製造方法。
工程(A):請求項1~
8のいずれかに記載の液晶配向剤を塗布する工程
工程(B):工程(A)で得られる塗膜を焼成する工程
工程(C):工程(B)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程
工程(D):工程(C)で得られた膜を、100℃以上、且つ、工程(B)よりも高い温度で焼成する工程。
【請求項10】
前記工程(B)において、50℃~150℃で焼成する請求項
9に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項11】
前記工程(D)において、膜を150~300℃で焼成する請求項
9又は
10に記載の液晶配向膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれかに記載の液晶配向剤を用いて得られる液晶配向膜。
【請求項13】
請求項
12に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項14】
横電界で液晶を駆動する請求項
13に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、この液晶配向剤によって得られる液晶配向膜、及び得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ、液晶ディスプレイなどに用いられる液晶表示素子は、通常、液晶の配列状態を制御するための液晶配向膜が素子内に設けられている。
現在、工業的に最も普及している液晶配向膜は、電極基板上に形成されたポリアミック酸及び/又はこれをイミド化したポリイミドからなる膜の表面を、綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一方向に擦る、いわゆるラビング処理を行うことで作製されている。
ラビング処理は、簡便で生産性に優れた工業的に有用な方法である。しかし、液晶表示素子の高性能化、高精細化、大型化に伴い、ラビング処理で発生する配向膜の表面の傷、発塵、機械的な力や静電気による影響、更には、配向処理面内の不均一性などの種々の問題が明らかとなっている。
【0003】
ラビング処理に代わる方法としては、偏光された放射線を照射することにより、液晶配向能を付与する光配向法が知られている。光配向法による処理は、光異性化反応を利用したもの、光架橋反応を利用したもの、光分解反応を利用したものなどが提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1では、主鎖にシクロブタン環などの脂環構造を有するポリイミド膜を光配向法に用いることが提案されている。
上記のような光配向法は、ラビングレス配向処理方法として、工業的にも簡便な製造プロセスで生産できるだけでなく、IPS駆動方式やFFS(フリンジフィールドスイッチング)駆動方式の液晶表示素子においては、ラビング処理法で得られる液晶配向膜に比べて、液晶表示素子のコントラストや視野角特性の向上が期待できるため、有望な液晶配向処理方法として注目されている。
【0005】
IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子に用いられる液晶配向膜には、優れた液晶配向性や電気特性などの基本特性に加えて、長期交流駆動による残像の抑制が必要とされる。
しかしながら、光配向法により得られる液晶配向膜は、ラビングによるものに比べて、高分子膜の配向方向に対する異方性が小さいという問題がある。異方性が小さいと充分な液晶配向性が得られず、液晶表示素子とした場合に、残像などの問題が発生する。これに対して、特許文献2では、光配向法により得られる液晶配向膜の異方性を高める方法として、光照射後に、光照射によって前記ポリイミドの主鎖が切断されて生成した低分子量成分を除去することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本特開平9-297313号公報
【文献】日本特開2011-107266号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「液晶光配向膜」木戸脇、市村 機能材料 1997年11月号 Vol.17、 No.11、13~22ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、ポリイミド前駆体及びポリイミドなどの有機被膜の光配向処理を行う場合、本発明者の知見によると、光配向の効果は、用いる光の照射量に敏感であり、比較的範囲の狭い最適照射量が必要とされ、この最適範囲の照射量をはずれると、液晶配向膜の一部又は全体において配向が不完全になり、液晶の安定な配向が実現できない場合が生じることが判明した。
そして、特に、寸法の大きなパネルを光配向法により処理する場合には、光照射量を均一に制御した光配向照射を行うことが困難になり、結果的に安定な光配向法による配向処理が困難になることを知見した。
【0009】
そこで、本発明の目的は、良好な配向制御能が得られる光照射量の範囲(以下、最適照射量マージンともいう。)を拡大させ、広い照射量マージンをもたらしめることにより、特に寸法の大きいパネルの場合でも、品質のよい安定した液晶配向能が得られる液晶配向剤を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、配向制御能が安定して生じる広い光照射量の範囲を有し、高品質の液晶配向膜を効率よく得られる液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記の要旨を有する液晶配向剤を含む発明により、上記の目的を達成し得ることを見出した。
下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と下記式(6)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物とを含有するテトラカルボン酸成分と、ジアミン成分と、の重合反応により得られるポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドを含有することを特徴とする液晶配向剤。
【0011】
【化1】
但し、X
1は下記式(X1-1)~(X1-4)のいずれかで表される構造である。X
2は下記式(X2-1)又は(X2-2)で表される構造である。X
3は4つの結合手を有する芳香環である。
【0012】
【化2】
但し、R
3~R
6はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基であり、同一でも異なってよいが、少なくとも一つは水素原子以外である。R
7~R
23はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。
【0013】
【発明の効果】
【0014】
本発明の液晶配向剤により、従来困難であった優れた光配向処理をもたらす光照射量マージンの拡大が可能になり、且つ良好な残像特性を有する液晶配向膜を得ることができる。よって、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、液晶パネル製造における歩留りが高く、且つIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する交流駆動による残像を低減することができ、残像特性に優れたIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の液晶配向剤は、上記のように、特定構造を有するテトラカルボン酸又はその誘導体を有するテトラカルボン酸成分誘導体とジアミン成分から得られるポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミド(以下、特定重合体とも称する)を含有することを特徴とする。
【0016】
<特定重合体>
本発明に用いられる特定重合体は、特定構造を有するポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドである。ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどの加熱、又は触媒による化学イミド化によって、イミド環を形成するポリイミド前駆体であれば、特に限定されない。加熱、又は化学イミド化が進行しやすいという観点から、ポリイミド前駆体としては、ポリアミック酸、又はポリアミック酸エステルがより好ましい。
ポリイミドのイミド化率は、特に限定されないが、10~100%が好ましく、50~100%がより好ましく、50~80%が更に好ましい。
以下、上記特定重合体をなす原料となる各成分について説明する。
【0017】
<テトラカルボン酸成分>
本発明の特定重合体の重合に用いられるテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、その誘導体である、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド用いることもできる。
【0018】
本発明の特定重合体の重合に用いられるテトラカルボン酸成分は、下記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と、下記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と、下記式(6)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体とを含有する。上記式(1)のテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体を含有することで、特定重合体の光反応に必要な光照射量を低減し、高い液晶配向性を示す液晶配向膜が得られる。上記式(2)のテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体と、上記式(6)のテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体を含有することで、特定重合体の光反応性を調整することができ、照射量マージンの広い液晶配向膜が得られる。
【化4】
X
1は、下記式(X1-1)~(X1-4)のいずれかで表される構造である。
【化5】
R
3~R
6は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基であり、少なくとも一つは水素原子以外である。R
7~R
23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1~6の1価の有機基、又はフェニル基である。
【0019】
長期交流駆動による残像の抑制するため、X
1は、下記式(X1-12)~(X1-16)のいずれかで表される構造から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、下記式(X1-12)が特に好ましい。
【化6】
【0020】
上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の含有割合は、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸成分に対して50~98モル%が好ましく、60~93モル%がより好ましく、65~87モル%が更に好ましい。
【0021】
式(2)において、X
2は下記式(X2-1)又は(X2-2)の構造である。
【化7】
長期交流駆動による残像を抑制するため、X
2は式(X2-1)が好ましい。
【0022】
上記式(2)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の含有割合は、全テトラカルボン酸成分1モルに対して1~30モル%であることが好ましく、5~25%がより好ましく、10~20%が更に好ましい。
【0023】
X3は4価の有機基であって、4つの結合手を有する芳香環、好ましくはベンゼン環又はナフタレン環を少なくとも1つ有し、ベンゼン環、又はナフタレン環上に4つの結合手を有する芳香環である。具体例を挙げるならば、下記式(X3-1)~(X3-26)のいずれかの構造が挙げられる。液晶配向性を高める場合においては、X3は、(X3-1)、(X3-5)~(X3-11)、(X3-14)~(X3-26)のいずれかが好ましい。更に好ましくは、(X3-1)、(X3-7)、(X3-8)におけるnが1~4である構造、(X3-9)~(X3-10)、又は(X3-14)~(X3-26)が好ましい。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
上記式(6)で表される芳香族テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の含有割合は、テトラカルボン酸成分1モルに対して1~20モル%であることが好ましく、2~15モル%がより好ましく、3~15モル%が更に好ましい。
【0028】
本発明の特定重合体の重合に用いられるテトラカルボン酸成分は、上記式(1)、(2)及び(6)以外に、下記式(7)で表されるテトラカルボン酸二無水物若しくはその誘導体を含有してもよい。
【化11】
但し、X
4は4価の有機基であり、上記X
1~X
3以外であるが、その構造は特に限定されない。具体例を挙げるならば、下記式(X4-1)~(X4-26)、エチレンジアミン四酢酸二無水物に由来する4価の基などが挙げられる。液晶配向性を高める場合においては、X4は、(X4-8)~(X4-12)、(X4-17)~(X4-19)、(X4-24)~(X4-26)が挙げられる。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
<ジアミン>
本発明の特定重合体の製造に用いられるジアミン成分は、公知のジアミンであれば特に限定されない。長期交流駆動による残像の抑制の観点から、下記式(3)、下記式(4)及び下記式(5)から選ばれる少なくとも1種類のジアミンを含有することが好ましい。
【0035】
【0036】
上記式式(3)~式(5)中、A1及びA4は、それぞれ独立して、単結合、-CO-O-、-OCO-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR1-CO-NR2-(R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、炭素数2~20の2価の鎖状炭化水素基、又は該2価の鎖状炭化水素基の-CH2-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR1-CO-NR2-(R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す。)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンから選ばれる基で置換された基(h1)を表す。尚、上記A1及びA4の上記鎖状炭化水素基及び基(h1)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基などの炭素数1~3のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換してもよい。A2は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基、ニトロ基、リン酸基、又は炭素数1~20の1価の有機基である。A3は、炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、又は当該2価の鎖状炭化水素基の-CH2-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR1-CO-NR2-(R1及びR2はそれぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。)、-NR-(Rはメチル基を表す。)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンから選ばれる基で置換された基(h2)を表す。尚、上記A3の鎖状炭化水素基及び基(h2)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基などの炭素数1~3のアルキル基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換してもよい。aは1~4の整数であり、aが2以上の場合、A2の構造は同一でも異なってもよい。b及びcは1又は2の整数である。dは0又は1の整数である。)
【0037】
上記炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基としては、例えば、メタンジイル基、エタンジイル基、n-プロパンジイル基、i-プロパンジイル基、n-ブタンジイル基、i-ブタンジイル基、sec-ブタンジイル基、t-ブタンジイル基等のアルカンジイル基;エテンジイル基、プロペンジイル基、ブテンジイル基等のアルケンジイル基;エチンジイル基、プロピンジイル基、ブチンジイル基等のアルキンジイル基などが挙げられる。
【0038】
A2における炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば上記A3の炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基、基(h2)、又は該炭素数1~20の2価の鎖状炭化水素基及び基(h2)が有する水素原子の一部又は全部をメチル基などの炭素数1~3のアルキル基、又は、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換された基として例示したものに1個の水素原子を加えた基等が挙げられる。
【0039】
長期交流駆動による残像の抑制するため、上記式(3)及び上記式(4)としては、下記式(DA-3-1)、(DA-4-1)~(DA-4-24)、(DA-5-1)~(DA-5-3)が好ましい。なかでも、(DA-3-1)、(DA-4-1)~(DA-4-11)、(DA-4-13)~(DA-4-24)、(DA-5-1)~(DA-5-2)がより好ましい。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
上記式(3)、式(4)又は式(5)で表されるジアミンの含有量は、ジアミン成分1モルに対して、50~100モル%が好ましく、70モル%~100モル%であることがより好ましい。
【0045】
ポリマーの溶解性が向上するという観点で、本発明の特定重合体の製造に用いられるジアミンは、下記式(8)で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【化22】
上記式(8)中、Y
6は下記式(9)で表される構造を含む2価の有機基である。A
6は、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A
6は水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0046】
【0047】
上記記式(9)で表される構造を含む2価の有機基の具体例としては、下記式(J-1)又は式(J-2)が挙げられる。
【化24】
【0048】
上記式(J-1)及び(J-1)中、*1はNH-A6への結合を表し、Q5は単結合、-(CH2)n-(nは1~20の整数である)、又は-(CH2)n-の任意の-CH2-がそれぞれ隣り合わない条件で-O-、-COO-、-OCO-、-NR-、-NRCO-、-CONR-、-NRCONR-、-NRCOO-、-OCOO-に置き換えられる基であり、Rは水素原子又は1価の有機基を表す。
Q6、Q7はそれぞれ独立して-H、-NHD、-N(D)2、-NHDを有する基、又は-N(D)2を有する基を表す。Q8は-NHD、-N(D)2、-NHDを有する基、又は-N(D)2を有する基を表す。Dはt-ブトキシカルボニル基を表す。但し、Q5、Q6及びQ7の少なくとも一つは基中に、t-ブトキシカルボニル基(Boc)を有する。より好ましくは、下記式(J-1-a)~(J-1-d)、又は(J-2-1)で表される2価の有機基である。
【0049】
【0050】
本発明の特定重合体の重合に用いられるジアミンは、上記式(3)~(5)及び(8)以外に、下記式(10)で表されるジアミンを含んでもよい。
【化26】
上記式(10)中、A
8は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A
8は水素原子、又はメチル基が好ましい。
Y
8は2価の有機基であり、WO2018/117239号パンフレットに記載の式(Y-1)~(Y-167)のいずれかで表される基等が挙げられる。
【0051】
<ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸及びポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステル、ポリアミック酸及びポリイミドは、例えば、国際公開公報WO2013/157586に記載されるような公知の方法で合成できる。
【0052】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、特定重合体などの重合体成分が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。特定重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、更に好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、更に好ましくは、5,000~50,000である。
【0053】
本発明の液晶配向剤は、上記の特定重合体と有機溶媒とを含有する組成物であり、異なる構造の特定重合体を2種以上含有していてもよい。また、本発明の液晶配向剤は、特定重合体以外の重合体(以下、第2の重合体とも言う)や各種の添加剤、を含有していてもよい。
【0054】
本発明の液晶配向剤が第2の重合体を含有する場合、全重合体成分に対する特定重合体の割合は5質量%以上が好ましく、その例として5~95質量%が挙げられる。
【0055】
第2の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン又はその誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
特に、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸(以下、第2のポリアミック酸とも言う)は第2の重合体として好ましい。
【0056】
第2のポリアミック酸を得るためのテトラカルボン酸成分としては、下記式(11)で表されるテトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。該テトラカルボン酸二無水物は、2種類以上であってもよい。
【化27】
上記式(11)中、Aは4価の有機基であり、好ましくは炭素数4~30の4価の有機基である。
【0057】
以下に、好ましい上記Aの構造を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化28】
【0058】
上記の構造のうち、(A-1)、(A-2)は光配向性の更なる向上という観点から好ましく、(A-4)は蓄積電荷の緩和速度の更なる向上という観点から好ましく、(A-15)~(A-17)は、液晶配向性と蓄積電荷の緩和速度の更なる向上という観点から好ましい。第2のポリアミック酸を得るためのテトラカルボン酸二無水物成分は、一種類のテトラカルボン酸二無水物であってもよく、2種類以上のテトラカルボン酸二無水物が併用されていてもよい。
【0059】
第2のポリアミック酸を得るためのジアミン成分としては、目的に応じて適宜決定することができるが、例えば下記式(12)で表されるジアミンを用いることができる。
【化29】
(Y
9は2価の有機基を表す。A
9は、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、又は炭素数2~5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A
9は水素原子、又はメチル基が好ましい。)
【0060】
電気特性や緩和特性を改善する目的では、Y9は3級窒素原子を有する2価の有機基、又は分子内に-NH-CO-NH-を有する2価の有機基であることが好ましい。Y9が3級窒素原子を有する2価の有機基である場合における式(12)の具体例としては、国際公開公報WO2017/126627に記載のピロール構造を有するジアミン、好ましくは下式(pr)で表されるジアミンが挙げられる。
【0061】
【化30】
上記式(pr)中、R
1は水素原子、水素、フッ素原子、シアノ基、ヒドロキシ基、又はメチル基を表す。R
2はそれぞれ独立して単結合又は基「*1-R
3-Ph-*2」を表し、R
3は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH
2)
l-、-O(CH
2)
mO-、-CONH-、及び-NHCO-から選ばれる2価の有機基を表し(l、mは1~5の整数を表す)、*1は式(pr)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(pr)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3を表す。
国際公開公報WO2018/062197に記載のピロール構造を有するジアミン、好ましくは下式(pn)で表される構造を有するジアミン。
【0062】
【化31】
(R
1及びR
2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、R
3は単結合又は基「*1-R
4-Ph-*2」を表し、R
4は単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-(CH
2)
l-、-O(CH
2)
mO-、-CONH-、及び-NHCO-から選ばれる2価の有機基を表し(l、mは1~5の整数を表す)、*1は式(pn)中のベンゼン環と結合する部位を表し、*2は式(pn)中のアミノ基と結合する部位を表す。Phはフェニレン基を表す。nは1~3を表す。)、
国際公開公報WO2018/110354に記載のカルバゾール構造を有するジアミン、好ましくは下式(cz)で表される構造を有するジアミン。
【0063】
【化32】
(R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2はメチル基を表す。)、
国際公開公報WO2015/046374の段落[0173]~[0188]に記載の窒素含有複素環を有するジアミンや特開2016-218149号公報の段落[0050]に記載の窒素含有構造を有するジアミン、下記式(BP)で表されるジアミン。
【0064】
【化33】
(Xはビフェニル環又はフルオレン環であり、Yはベンゼン環、ビフェニル環、又は-フェニル-Z-フェニル-から選ばれる基であり、Zは-O-、-NH-、-CH
2-、-SO
2-、-C(CH
3)
2-又はC(CF
3)
2-で表される2価の基である。A及びBは水素原子又はメチル基である)、2,3-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、5,6-ジアミノ-2,3-ジシアノピラジン、5,6-ジアミノ-2,4-ジヒドロキシピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ジメチルアミノ-1,3,5-トリアジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、4,4’-[4,4’-プロパン-1,3-ジイルビス(ピペリジン-1,4-ジイル)]ジアニリン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、4,6-ジアミノ-2-ビニル-s-トリアジン、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、6,9-ジアミノ-2-エトキシアクリジンラクテート、3,8-ジアミノ-6-フェニルフェナントリジン、1,4-ジアミノピペラジン、3,6-ジアミノアクリジン、ビス(4-アミノフェニル)フェニルアミン、4,4’-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジフェニルアミン、3,6-ジアミノカルバゾール、9-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、9-エチル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(w1)~(w2)で表されるジアミン等が挙げられる。
【0065】
【化34】
(Spは、フェニレン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、炭素数2~20の2価の鎖状炭化水素基、又は当該2価の鎖状炭化水素基の-CH
2-が、-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR-(Rはメチル基を表す)、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジンから選ばれる基で置換された基を表す。)
【0066】
Y
9が分子内に-NH-CO-NH-を有する2価の有機基である場合における上記式(12)の具体例としては、上記式(4)で、A
1が-NH-CO-NH-であるか、炭素数2~20の鎖状炭化水素基の-CH
2-の少なくとも一つが-NH-CO-NH-で置換された基、又は炭素数2~20の鎖状炭化水素基の-CH
2-の少なくとも一つが-NH-CO-NH-で置換され、且つ、他の-CH
2-の少なくとも一つが-O-、-CO-、-CO-O-、-NRCO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-NRCOO-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-CONR-(Rは水素原子又はメチル基を表す。)、-COS-、-NR-(Rはメチル基を表す)から選ばれる基で置換された基である場合のジアミンなどを挙げることができる。より好ましいジアミンの具体例としては、下記式(U-1)~(U-9)で表されるジアミン等が挙げられる。
【化35】
【0067】
上記式(w1)~(w2)で表されるジアミンの好ましい具体例としては、下記式(n3-1)~(n3-7)で表されるジアミン、下記式(n4-1)~(n4-6)で表されるジアミン等が挙げられる。
【化36】
【化37】
【0068】
印刷性を改善する目的では、カルボキシル基(COOH基)や水酸基(OH基)を有するジアミン化合物を用いることもできる。具体的には、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸又は3,5-ジアミノ安息香酸を挙げることができる。なかでも、2,4-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸又は3,5-ジアミノ安息香酸が好ましい。また、下記の式[3b-1]~式[3b-4]で示されるジアミン化合物及びこれらのアミノ基が2級のアミノ基であるジアミン化合物を用いることもできる。
【0069】
【化38】
(式[3b-1]中、Q
1は単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又はN(CH
3)CO-を示し、m
1及びm
2はそれぞれ独立して、0~4の整数を示し、かつm
1+m
2は1~4の整数を示し、式[3b-2]中、m
3及びm
4はそれぞれ独立して、1~5の整数を示し、式[3b-3]中、Q
2は炭素数1~5の直鎖又は分岐アルキレン基を示し、m
5は1~5の整数を示し、式[3b-4]中、Q
3及びQ
4はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2-、-C
2H
4-、-C(CH
3)
2-、-CF
2-、-C(CF
3)
2-、-O-、-CO-、-NH-、-N(CH
3)-、-CONH-、-NHCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-CON(CH
3)-又はN(CH
3)CO-を示し、m
6は1~4の整数を示す。)
【0070】
第2のポリアミック酸を得るためのジアミン成分としては、上記以外に特定重合体で用いたジアミンや公知のジアミンを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。第2のポリアミック酸を得るためのジアミン成分は、一種類のジアミンであってもよく、2種類以上のジアミンが併用されていてもよい。
【0071】
本発明の液晶配向剤に含有される第2の重合体の分子量は、基板上に均一で欠陥のない塗膜が形成できる限りにおいて特に限定されず、その好ましい重量平均分子量及び数平均分子量は特定重合体の場合と同様である。
【0072】
上記液晶配向剤に添加される各種の添加剤としては、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、更には塗膜を焼成する際にポリアミック酸のイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等が挙げられる。
【0073】
架橋性化合物としては、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基、シクロカーボネート基、ブロックイソシアネート基、ヒドロキシル基若しくはアルコキシル基などの置換基を有する架橋性化合物、及び重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を添加することが好ましい。
なお、これらの置換基や、重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有することが架橋性を高める観点から好ましい。架橋性化合物の具体例としては、国際公開公報2011/132751号の段落[0169]~[0190]に記載のエポキシ基又はイソシアネート基を有する化合物、オキセタン基を有する化合物、ヒドロキシル基、アルコキシル基又は低級アルコキシアルキル基を有するアミノ樹脂、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有するベンゼン又はフェノール性化合物、国際公開公報2012/014898号の段落[0103]~[0112]に記載のシクロカーボネート基を有する化合物、国際公開公報2015/072554号に記載のヒドロキシアルキルアミド基を有する化合物、国際公開公報2015/141598に記載のブロックイソシアネート基を有する化合物などが挙げられる。
【0074】
架橋性化合物のより好ましい具体例としては、下記式(CL-1)~(CL-13)、タケネートB-830、同B-882(以上いずれも三井化学社製)で示されるものが挙げられる。
【化39】
【0075】
架橋性化合物の含有量は、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、液晶の配向性を高める観点から、より好ましくは0.1~50質量部であり、更に好ましくは、1~50質量部である。
【0076】
上記シランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらシランカップリング剤を使用する場合は、液晶配向性を担保する観点から、液晶配向剤に含有される全ての重合体成分100質量部に対して0.1~30質量部であることが好ましく、より好ましくは1~20質量部である。
【0077】
本発明の液晶配向剤における特定重合体を含む重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができる。なかでも、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0078】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体成分を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0079】
本発明の液晶配向剤は、重合体成分を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例としては、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソブチルカルビノール等が挙げられる。これらの溶媒は2種上を併用してもよい。
【0080】
<液晶配向膜の製造方法>
本発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜の製造方法は、上記のように、液晶配向剤を塗布する工程(工程(A))、工程(A)で得られる塗膜を焼成する工程(工程(B))、工程(B)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程(工程(C))、工程(C)で得られた膜を、100℃以上、且つ、工程(B)よりも高い温度で焼成する工程(工程(D))を順次行うことを特徴とする。
【0081】
<工程(A)>
本発明に用いられる液晶配向剤を塗布する基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板とともに、アクリル基板、ポリカーボネート基板などのプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷又はインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法又はスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0082】
<工程(B)>
工程(B)は、基板上に塗布した液晶配向剤を焼成し、膜を形成する工程である。液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン又はIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させたり、重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行うことができる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができ、複数回行ってもよい。液晶配向剤の有機溶媒を除去する温度としては、例えば40~150℃の範囲で行うことができる。プロセスを短縮する観点で、40~120℃で行ってもよい。焼成時間としては特に限定されないが、1~10分又は、1~5分の焼成時間が挙げられる。重合体中のアミック酸又はアミック酸エステルの熱イミド化を行う場合には、上記有機溶媒を除去する工程の後、例えば190~250℃、又は200~240℃の温度範囲で焼成する工程ができる。焼成時間としては特に限定されないが、5~40分、又は、5~30分の焼成時間が挙げられる。
【0083】
<工程(C)>
工程(C)は、工程(B)で得られた膜に偏光された紫外線を照射する工程である。紫外線としては、200~400nmの波長を有する紫外線を用いることが好ましく、なかでも、好ましくは200~300nmの波長を有する紫外線がより好ましい。液晶配向性を改善するために、液晶配向膜が塗膜された基板を50~250℃で加熱しながら、紫外線を照射してもよい。また、上記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cm2が好ましい。なかでも、100~5,000mJ/cm2が好ましい。このようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
【0084】
<工程(D)>
工程(D)は、工程(C)で得られた膜を、100℃以上、且つ、工程(B)よりも高い温度で焼成する工程である。焼成温度は、100℃以上、且つ、工程(B)での焼成温度よりも高ければ、特に限定されないが、150~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましく、200~250℃が更に好ましい。焼成時間は、5~120分が好ましく、より好ましくは5~60分、更に好ましくは、5~30分である。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。
【0085】
更に、上記工程(C)又は(D)のいずれかの工程を行った後、得られた液晶配向膜を、水や溶媒を用いて、接触処理をすることもできる。
上記接触処理に使用する溶媒としては、紫外線の照射によって液晶配向膜から生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル又は酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。なかでも、汎用性や溶媒の安全性の点から、水、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。より好ましいのは、水、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルである。溶媒は、1種類でも、2種類以上組み合わせてもよい。
【0086】
上記の接触処理、すなわち、偏光された紫外線を照射した液晶配向膜に水や溶媒を処理としては、浸漬処理や噴霧処理(スプレー処理ともいう)が挙げられる。これらの処理における処理時間は、紫外線によって液晶配向膜から生成した分解物を効率的に溶解させる点から、10秒~1時間であることが好ましい。なかでも、1分~30分間浸漬処理をすることが好ましい。また、上記接触処理時の溶媒は、常温でも加温しても良いが、好ましくは、10~80℃である。なかでも、20~50℃が好ましい。加えて、分解物の溶解性の点から、必要に応じて、超音波処理などを行っても良い。
【0087】
上記接触処理の後に、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン又はメチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンスともいう)や液晶配向膜の焼成を行うことが好ましい。その際、リンスと焼成のどちらか一方を行っても、又は、両方を行っても良い。焼成の温度は、150~300℃であることが好ましい。なかでも、180~250℃が好ましい。より好ましいのは、200~230℃である。また、焼成の時間は、10秒~30分が好ましい。なかでも、1~10分が好ましい。
【0088】
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式などの横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として有用である。液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して得られる。
液晶セルの作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。なお、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0089】
具体的には、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO2-TiO2の膜とすることができる。
次に、各基板の上に液晶配向膜を形成し、一方の基板に他方の基板を互いの液晶配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール剤で接着する。シール剤には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておき、また、シール剤を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール剤の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。次いで、シール剤に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール剤で包囲された空間内に液晶材料を注入し、その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。液晶材料は、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。
【0090】
上記のようにして、本発明の製造方法を用いることで、IPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する長期交流駆動による残像が抑制出来、低分子量化合物が残存することで発生する輝点などの不具合がなく、且つ、従来よりも少ない工程数での製造が可能な液晶配向膜を得ることができる。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下における化合物の略号及び各特性の測定方法は、次のとおりである。
(ジアミン)
【0092】
【化40】
(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0093】
(テトラカルボン酸二無水物)
CA-X-1:下記式(CA-X-1)で表される化合物
【化41】
(化合物C)
c-1:下記式(c-1)で表される化合物
(その他の添加剤)
LS-4668:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(下記(s-1)で表される化合物)
【0094】
【化42】
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 GBL:γ-ブチロラクトン、
BCS:ブチルセロソルブ、
【0095】
<イミド化率の測定>
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)0.53mlを添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500、日本電子データム社製)を使用して500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用いて以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値であり、yは基準プロトンのピーク積算値であり、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0096】
[重合体の合成]
<合成例1>
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの四つ口フラスコに、DA-h-1を3.62g(14.8mmol)、DA-h-2を4.75g(14.8mmol)、DA-i-1を1.92g(17.8mmol)、及びDA-j-1を4.05g(11.9mmol)を秤取し、NMPを固形分濃度が12質量%になるように加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。得られた溶液を撹拌しながらCA-1-1を10.1g(45.2mmol)、CA-2-1を2.12g(8.5mmol)、及びCA-3-1を0.83g(2.8mmol)添加し、更に固形分濃度が15質量%になるようにNMPを加えた。次いで、40℃で24時間撹拌してポリアミック酸溶液を得た。
【0097】
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに得られた上記ポリアミック酸溶液を30.0g取り、NMPを固形分濃度が10質量%となるように加え、30分撹拌した。得られたポリアミック酸溶液に、無水酢酸を2.80g、及びピリジンを1.50g加えて、55℃で3時間加熱し、化学イミド化を行った。得られた反応液を反応液質量の3.5倍量のメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物をろ取し、続いて、メタノールで3回洗浄した。得られた樹脂粉末を60℃で12時間乾燥することで、ポリイミド(PI-A-1)の粉末を得た。このポリイミド樹脂粉末のイミド化率は62%であった。得られたポリイミド(PI-A-1)にNMPを加え、70℃で24時間攪拌し、固形分濃度が12質量%のポリイミド(PI-A-1)の溶液を得た。
【0098】
<合成例2~5>
下記表1に示す、ジアミン成分、テトラカルボン酸成分、及び有機溶媒を使用し、それぞれ、合成例1と同様の手順で実施することにより、下記表1に示すポリイミド(PI-A-2)~(PI-A-4)、(R-PI-1)及びポリアミック酸(PAA-B-1)~(PAA-B-3)の溶液を得た。尚、ポリアミック酸(PAA-B-1)~(PAA-B-3)についてはLS-4668をポリアミック酸固形分に対して1質量%となるように添加した。
【0099】
表1中、括弧内の数値は、テトラカルボン酸成分については、合成に使用したテトラカルボン酸成分の合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表し、ジアミン酸成分については、合成に使用したジアミン成分の合計量100モル部に対する各化合物の配合割合(モル部)を表す。有機溶媒については、合成に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0100】
【0101】
[液晶配向剤の調製]
<実施例1>
合成例1で得られたポリイミド(PI-A-1)の溶液を、NMP及びBCSにより希釈し、室温で攪拌した。次いで、この得られた溶液を孔径0.5μmのフィルターでろ過することにより、溶媒組成比(NMP:BCS=80:20(質量比))、重合体固形分濃度が6質量%となる液晶配向剤(1)を得た(下記の表2参照)。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0102】
<実施例2~4、比較例1>
下記表2に示す、それぞれの重合体を使用した以外は、実施例1と同様に実施することにより、液晶配向剤(2)~(4)及び(R1)を得た。
【0103】
<実施例5~7、比較例2>
合成例2で得られたポリイミド(PI-A-2)の溶液及び合成例6で得られたポリアミック酸(PAA-B-1)の溶液を用いて、NMP、GBL、及びBCSにより希釈し、更に化合物(c-1)を全ての重合体100質量部に対して3質量部となるように添加し室温で攪拌した。次いで、得られた溶液を孔径0.5μmのフィルターでろ過することにより、重合体の成分比率が(PI-A-2):(PAA-B-1)=40:60(固形分換算質量比)、溶媒組成比がNMP:GBL:BCS=50:30:20(質量比)、重合体固形分濃度が6質量%となる液晶配向剤(1)を得た(下記の表2参照)。この液晶配向剤に、濁りや析出などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
【0104】
表2中、括弧内の数値は、重合体及び化合物(C)についてはそれぞれ液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の合計100質量部に対する各重合体成分又は化合物(C)の配合割合(質量部)を表す。有機溶媒については、液晶配向剤の調製に使用した有機溶媒の合計量100質量部に対する各有機溶媒の配合割合(質量部)を表す。
【0105】
【0106】
[液晶表示素子の作製]
FFSモード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。
始めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×50mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、ベタ状のパターンを備えたITO電極が形成されている。第1層目の対向電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
【0107】
第3層目の画素電極は、中央部分が内角160°に屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の「くの字」に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0108】
次に、液晶配向剤を上記電極付き基板と裏面にITO膜が成膜されている高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板に、スピンコート法にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、この塗膜面に偏光板を介して消光比が26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を照射した後、230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜付き基板を得た。なお、上記電極付き基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1の基板上の液晶の配向方向と第2の基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理した。得られた2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合うようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶表示素子を得た。その後、得られた液晶表示素子を120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから評価に使用した。
【0109】
[評価]
・照射量マージンの評価
上記で得られた液晶表示素子を60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶表示素子の画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
上記の処理を行った液晶表示素子について、電圧無印加状態における、画素の第1領域の液晶の配向方向と第2領域の液晶の配向方向とのずれを角度として算出した。
具体的には、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に液晶表示素子を設置し、バックライトを点灯させ、画素の第1領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整し、次に画素の第2領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルを回転させたときに要する回転角度(以下、Δacと称する)を求めた。
このΔacが0.15°未満となる最も低い光照射量Emin(mJ/cm2)と、最も高い光照射量Emax(mJ/cm2)を用いて、以下の3段階の指標で評価を行った。評価結果を下記の表3に示す。
【0110】
優:EmaxとEminとの差が、300mJ/cm2以上である。
良:EmaxとEminとの差が、200mJ/cm2以上、300mJ/cm2未満である。
不良:EmaxとEminとの差が、200mJ/cm2未満である。
【0111】
【0112】
上記のとおり、本発明の実施例1~7で用いた液晶配向剤(1)~(7)から得られる液晶配向膜は、150~350mJ/cm2、又は150~450mJ/cm2の光照射量を照射した際に、Δacがいずれも0.15°未満となり、良好な残像特性を示した。 一方、比較例1~2で用いた液晶配向剤(R1)~(R2)は、150~250mJ/cm2の光照射量を照射した際に、Δacが0.15°未満となり良好な残像特性を示したが、350mJ/cm2の光照射量を照射した際にはΔacが0.15°以上となり、良好な残像特性が得られなかった。以上から、本発明の液晶配向剤により、光照射量マージンの拡大が可能になり、且つ良好な残像特性を有する液晶配向膜を得ることができることがわかる。よって、本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、液晶パネル製造における歩留りが高く、且つIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子において発生する交流駆動による残像を低減することができ、残像特性に優れたIPS駆動方式やFFS駆動方式の液晶表示素子が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の液晶配向剤は、IPS駆動方式やFFS駆動方式などの広範な液晶表示素子における液晶配向膜の形成に有用である。
なお、2018年11月19日に出願された日本特許出願2018-216789号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。