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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ニトリルゴムの回収方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20240109BHJP
   C08C 1/14 20060101ALI20240109BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240109BHJP
   C08F 6/22 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08J3/16 CEQ
C08C1/14
C08L21/00
C08F6/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020563350
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050856
(87)【国際公開番号】W WO2020138183
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018248404
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 清香
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-100145(JP,A)
【文献】特開2009-179686(JP,A)
【文献】特開2004-131654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28、99/00
C08C 1/14
C08L 1/00-101/14
C08F 6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも洗浄・脱水ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する方法であって、
0.2MPa以上の水圧にて前記洗浄・脱水ゾーンに洗浄水を供給しながら、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて、前記クラム状のニトリルゴムと、供給された洗浄水とを混合することで、前記クラム状のニトリルゴムの洗浄および脱水を行い、
前記スクリューとして、前記洗浄水の供給位置に対応する箇所に、ニーディングディスクを備えるものを用い、
前記押出機として、複数のバレルブロックを有するものを使用し、
前記洗浄水を供給するための供給口が形成されたバレルブロック中における、前記スクリューのスクリュー構成を、長さ方向における、ニーディングディスクの占める割合が70~100%の範囲にあるものとするニトリルゴムの回収方法。
【請求項2】
前記押出機として、前記洗浄・脱水ゾーンよりも上流側に、凝固ゾーンを備えるものを用い、
前記凝固ゾーンに、ニトリルゴムのラテックスと、凝固水とを供給して、前記ニトリルゴムのラテックスを凝固させることで、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムを得た後、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて洗浄および脱水を行う請求項1に記載のニトリルゴムの回収方法。
【請求項3】
前記ニトリルゴムのラテックスの、前記押出機への供給レートを、50~2000kg/hrとする請求項に記載のニトリルゴムの回収方法。
【請求項4】
前記押出機として、前記洗浄・脱水ゾーンよりも下流側に、乾燥ゾーンを備えるものを用い、
前記洗浄・脱水ゾーンにおいて洗浄および脱水を行った後のクラム状のニトリルゴムについて、前記乾燥ゾーンにて乾燥を行う請求項1~のいずれかに記載のニトリルゴムの回収方法。
【請求項5】
前記洗浄水の、前記洗浄・脱水ゾーンへの供給レートを、10~400L/hrとする請求項1~のいずれかに記載のニトリルゴムの回収方法。
【請求項6】
前記洗浄水の、前記洗浄・脱水ゾーンへの供給量を、前記ニトリルゴム100重量部に対して、25~1000重量部とする請求項1~のいずれかに記載のニトリルゴムの回収方法。
【請求項7】
前記洗浄水の温度が、20~95℃である請求項1~のいずれかに記載のニトリルゴムの回収方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乳化重合で得られた重合体のラテックスから重合体を回収するには、まず凝固タンク内の重合体のラテックスに、たとえば酸あるいは無機塩の水溶液などの凝固剤を加え、撹拌しながらラテックスを凝固させ、次いでこの凝固操作で得られた重合体クラムを、たとえば遠心脱水機やスクイザーなどの脱水装置に導入して脱水した後、たとえばバンド乾燥機、気流乾燥機または押出乾燥機などの乾燥装置に導入して乾燥することにより行われている。なお、乾燥装置の下流側には、通常ペレタイザーあるいはベーラーマシーンが接続してあり、乾燥後の重合体は最終的にはペレット状、ベール状またはシート状に加工されて製品化されることが多い。
【0003】
しかしながら、重合体のラテックスから重合体を回収するために、これらの脱水・乾燥装置を利用したのでは、工程が多くなるほか、凝固タンクおよび付帯設備の装置コストが高くなり、しかも設置スペースが増大することからも問題が多い。
【0004】
このような問題を解決するために、たとえば特許文献1では、重合体のラテックスと凝固剤とを直接、スクリュー押出機の内部に供給し、押出機の内部で凝固・脱水・乾燥を行う方法が試みられている。しかしながら、この特許文献1記載の方法では、得られる重合体中に比較的多量の凝固剤が残存してしまい、凝固剤の残存による特性低下(たとえば、耐水性の低下等)が起こってしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-12142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する際に、凝固に用いられた凝固剤量を効果的に低減することのできるニトリルゴムの回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、少なくとも洗浄・脱水ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する際に、0.2MPa以上の水圧にて、洗浄・脱水ゾーンに洗浄水を供給しながら、洗浄・脱水ゾーンにおいて、クラム状のニトリルゴムと、供給された洗浄水とを混合することで、クラム状のニトリルゴムの洗浄および脱水を行うことで、凝固に用いられた凝固剤量を効果的に低減することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、少なくとも洗浄・脱水ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する方法であって、
0.2MPa以上の水圧にて、前記洗浄・脱水ゾーンに洗浄水を供給しながら、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて、前記クラム状のニトリルゴムと、供給された洗浄水とを混合することで、前記クラム状のニトリルゴムの洗浄および脱水を行うニトリルゴムの回収方法が提供される。
【0009】
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記スクリューとして、前記洗浄水の供給位置に対応する箇所に、ニーディングディスクを備えるものを用いることが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記押出機として、複数のバレルブロックを有するものを使用し、前記洗浄水を供給するための供給口が形成されたバレルブロック中における、前記スクリューのスクリュー構成を、長さ方向における、ニーディングディスクの占める割合が5~100%の範囲にあるものとすることが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記押出機として、前記洗浄・脱水ゾーンよりも上流側に、凝固ゾーンを備えるものを用い、前記凝固ゾーンに、ニトリルゴムのラテックスと、凝固水とを供給して、前記ニトリルゴムのラテックスを凝固させることで、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムを得た後、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて洗浄および脱水を行うことが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記ニトリルゴムのラテックスの、前記押出機への供給レートを、50~2000kg/hrとすることが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記押出機として、前記洗浄・脱水ゾーンよりも下流側に、乾燥ゾーンを備えるものを用い、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて洗浄および脱水を行った後のクラム状のニトリルゴムについて、前記乾燥ゾーンにて乾燥を行うことが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記洗浄水の、前記洗浄・脱水ゾーンへの供給レートを、10~400L/hrとすることが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記洗浄水の、前記洗浄・脱水ゾーンへの供給量を、前記ニトリルゴム100重量部に対して、25~1000重量部とすることが好ましい。
本発明のニトリルゴムの回収方法において、前記洗浄水の温度が、20~95℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する際に、凝固に用いられた凝固剤量を効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るニトリルゴムの回収方法に用いる押出機を示す概略図である。
図2図2は、押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
図3図3は、図2のスクリューの一部破断概略図である。
図4図4は、図1のIV-IV線と図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、図1のV-V線と図2のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、本発明の第2実施形態に係るニトリルゴムの回収方法に用いる押出機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のニトリルゴムの回収方法は、少なくとも洗浄・脱水ゾーンが形成されたバレルの内部にスクリューが回転駆動自在に配置されている押出機を用いて、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムから、ニトリルゴムを回収する方法であって、
0.2MPa以上の水圧にて、前記洗浄・脱水ゾーンに洗浄水を供給しながら、前記洗浄・脱水ゾーンにおいて、前記クラム状のニトリルゴムと、供給された洗浄水とを混合することで、前記クラム状のニトリルゴムの洗浄および脱水を行うものである。
【0013】
<ニトリルゴム>
まず、本発明で用いるニトリルゴムについて説明する。
本発明で用いるニトリルゴムとしては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、および、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合することで得られる共重合体が挙げられる。
【0014】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独で用いてもよく、これらの複数種を併用してもよい。
【0015】
本発明で用いるニトリルゴム中における、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは8~55重量%、さらに好ましくは10~50重量%である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合に、耐油性および耐寒性を良好にバランスさせることができる。
【0016】
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4~6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3-ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンが特に好ましい。これらのなかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。これらは単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0017】
本発明で用いるニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位(飽和化されている単位も含む)の含有割合は、好ましくは10~95重量%、より好ましくは15~90重量%、さらに好ましくは20~85重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合に、耐油性、耐熱老化性、および耐化学的安定性を良好なものとしながら、ゴム弾性を適切に高めることができる。
【0018】
また、本発明で用いるニトリルゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、および共役ジエン単量体に加えて、カルボキシル基含有単量体を共重合したものであることが好ましい。カルボキシル基含有単量体を共重合させることで、ゴム架橋物とした際に、耐圧縮永久歪み性を高めることができる。
【0019】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。
【0020】
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0021】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0022】
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β-不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0023】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn-ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn-ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn-ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0024】
カルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。これらの中でも、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体がより好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがさらに好ましく、マレイン酸モノn-ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2~8が好ましい。
【0025】
本発明で用いるニトリルゴム中における、カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械特性および耐圧縮永久歪み性をより良好なものとすることができる。
【0026】
また、本発明で用いるニトリルゴムは、耐寒性をより高めるという観点より、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、およびカルボキシル基含有単量体に加えて、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体を共重合したものであることが好ましい。
【0027】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アミノアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸フルオロアルキルエステル単量体などが挙げられる。これらのなかでも、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、またはα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
【0028】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル単量体としては、アルキル基として、炭素数が3~10でアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が3~8であるアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が4~6であるアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0029】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル単量体;アクリル酸メチルシクロペンチル、アクリル酸エチルシクロペンチル、アクリル酸メチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-オクチルなどのメタクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;クロトン酸プロピル、クロトン酸n-ブチル、クロトン酸2-エチルヘキシルなどのクロトン酸アルキルエステル単量体;クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸シクロオクチルなどのクロトン酸シクロアルキルエステル単量体;クロトン酸メチルシクロペンチル、クロトン酸メチルシクロヘキシルなどのクロトン酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0030】
また、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルコキシアルキル基として、炭素数が2~8でアルコキシアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が2~6であるアルコキシアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が2~4であるアルコキシアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0031】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸エトキシドデシル、アクリル酸n-プロポキシエチル、アクリル酸i-プロポキシエチル、アクリル酸n-ブトキシエチル、アクリル酸i-ブトキシエチル、アクリル酸t-ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシペンチル、メタクリル酸n-プロポキシエチル、メタクリル酸i-プロポキシエチル、メタクリル酸n-ブトキシエチル、メタクリル酸i-ブトキシエチル、メタクリル酸t-ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチルなどのメタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0032】
これらα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体のなかでも、アクリル酸アルキルエステル単量体、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸メトキシエチルがより好ましい。また、これらα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0033】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明で用いるニトリルゴム中における、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは10~60重量%であり、より好ましくは15~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%である。α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合における耐寒性をより適切に高めることができる。
【0034】
また、本発明で用いるニトリルゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体、およびα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体に加えて、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体(上述したものを除く)、エチレン、α-オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0035】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。
【0036】
α-オレフィン単量体としては、炭素数が3~12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。
【0037】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0038】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0039】
共重合性老化防止剤としては、N-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0040】
これらの共重合可能なその他の単量体は、一種単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。本発明で用いるニトリルゴム中における、これらの他の単量体単位の含有量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0041】
本発明で用いるニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは15~80である。ニトリルゴムのムーニー粘度は、連鎖移動剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度などの条件を適宜選定することにより調整することができる。
【0042】
本発明で用いるニトリルゴムの製造方法は、特に限定されず、たとえば、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、ならびに、必要に応じて加えられる、カルボキシル基含有単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体、およびこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。乳化重合法によれば、ニトリルゴムを、水媒体中にニトリルゴムが分散してなるラテックスの形態として、すなわち、ニトリルゴムのラテックスとして得ることができる。
【0043】
また、本発明で用いるニトリルゴムとしては、ポリマー主鎖中の炭素-炭素二重結合のうち少なくとも一部が水素化されたものであってもよい。ニトリルゴムを、水媒体中にニトリルゴムが分散してなるラテックスの形態として得た場合には、水素化反応は、ニトリルゴムのラテックスの状態で行うことが好ましく、また、水素化反応に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。なお、ニトリルゴムを水素化する場合には、得られる水素化ニトリルゴムのヨウ素価を、好ましくは120以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは80以下となるように、水素化を行うことが好ましい。
【0044】
また、水素化反応において、白金族元素を含有する水素化触媒などを用いた場合には、水素化触媒を除去する操作を行ってもよい。水素化触媒の除去は、たとえば、次の方法により行われる。すなわち、まず、水素化反応後のニトリルゴムのラテックスの、水系媒体中または重合体粒子中に存在する白金族元素化合物中の白金族元素を、錯化剤により錯化させることにより、不溶性錯体を形成させ、析出させる。そして、このようにして得られた不溶性錯体を含有するラテックスを、遠心分離装置に連続的に供給して遠心分離操作を連続的に行うことにより、ニトリルゴムのラテックスから、白金族元素を不溶性錯体の状態で連続的に除去することができる。なお、この際には、遠心分離操作に代えて、別の分離方法を採用してもよい。
【0045】
<第1実施形態に係るニトリルゴムの回収方法>
次いで、本発明の第1実施形態に係るニトリルゴムの回収方法について、説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るニトリルゴムの回収方法に用いる押出機1を示す概略図である。
【0046】
以下においては、本発明で用いるニトリルゴムの回収装置として、図1に示す押出機1を使用する場合を例示して、上記した方法にしたがって得られるニトリルゴムのラテックスから、クラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムを得て、次いで、この含水クラムから、ニトリルゴムを回収する方法について説明する。
【0047】
図1に示すように、第1実施形態に係るニトリルゴムの回収装置としての押出機1は、駆動ユニット2、および分割された18個のバレルブロック31~48で構成される単一のバレル3を有する。バレル3の内部には、凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106が、バレル3の上流側から下流側にかけて順次形成されている。
【0048】
凝固ゾーン100は、ニトリルゴムのラテックスと凝固剤を接触させて重合体を凝固させ、クラム状のニトリルゴムのスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、ニトリルゴムの凝固後に生じる液体(セラム水)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄・脱水ゾーン104は、含水状態のクラムを洗浄し、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン106は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0049】
第1実施形態では、バレルブロック31~36の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック37の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック38~41の内部が洗浄・脱水ゾーン104に対応し、バレルブロック42~48の内部が乾燥ゾーン106に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱うニトリルゴムの組成等に応じて最適な数をもって実施することができ、図1に示す態様に限定されるものではない。
【0050】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック32には、ニトリルゴムのラテックスを供給するためのフィード口320(図示省略)と、凝固剤を供給するためのフィード口321(図示省略)と、水蒸気を供給するためのフィード口322(図示省略)とがそれぞれ形成されている。また、排水ゾーン102を構成するバレルブロック37には、凝固後のニトリルゴムの水スラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット370が形成されている。さらに、洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック38には、洗浄水を受け入れる第1洗浄水フィード口380が形成されており、バレルブロック39には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット390が形成されている。乾燥ゾーン106の一部を構成するバレルブロック43,46,47には、脱気のためのベント口430,460,470が、それぞれ形成されている。
【0051】
図2は、押出機1の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。バレル3の内部には、図2に示すようなスクリュー5が配置されている。スクリュー5の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(図1参照)に格納されたモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー5は回転駆動自在に保持される。スクリュー5の形状は、特に限定されないが、たとえば、多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組合せて構成することができる。
【0052】
第1実施形態では、スクリュー5は、バレル3の内部に形成された上述した各ゾーン100,102,104,106に対応する領域に、それぞれ異なる態様のスクリュー構成を有する。ここで、図3は、図2のスクリューの一部破断概略図である。図3に示すように、スクリュー5は、スクリューブロック50と、ニーディングディスク52とから構成される。なお、図3は、スクリューブロック50と、ニーディングディスク52との組み合わせの一例を示す図であり、第1実施形態は、この図3に示す組み合わせに特に限定されるものではない。
【0053】
図2に示すように、第1実施形態では、スクリュー5の長さをL(mm)とし、スクリュー5の外径をDa(mm)とした場合に、L/Daは、好ましくは30~100であり、より好ましくは40~80である。なお、スクリュー5の外径Daは、スクリューを構成するスクリューブロック50の山部50A(図3参照)の、軸方向から見た場合における直径で定義される。
【0054】
また、図4に示すように、第1実施形態では、このようなスクリュー5を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。ここで、図4は、図1のIV-IV線と図2のIV-IV線に沿う断面図であり、図4に示す断面図は、押出機1のスクリューブロック50部分の断面図であって、谷部50Bを横切る断面図である。すなわち、図4に示すように、2本のスクリュー5,5は、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bに噛み合わせるとともに、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。二軸噛合型とすることにより、各ゾーン100,102,104,106における混合性を向上させることができる。また、2本のスクリュー5の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0055】
図4に示すように、第1実施形態では、スクリューブロック50の外径をDa(mm)、スクリューブロック50の谷部50Bの短径をDi(mm)とした場合に、Da/Diが、好ましくは1.2~2.5の範囲、より好ましくは1.4~2.0、さらに好ましくは1.5~1.8の範囲である。Da/Diをこのような範囲とすることで、設備を大がかりなものとすることなく、回収率や生産レート(単位時間あたりに得られる乾燥されたニトリルゴムの量)を良好なものとすることができる。
【0056】
また、谷部50Bの短径Diは、図4に示すように、谷部50Bのうち、谷部50Bの深さが、最も深くなっている部分である深さDi’(mm)である部分における、軸方向から見た場合における径である。すなわち、谷部50Bの短径Diは、外径Da、および谷部50Bのうち深さが最も深い部分である深さDi’から、Di=Da-Di’×2により求めることができる。
【0057】
ニーディングディスク52は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度ずつずらしながら、複数枚積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。ここで、図5は、図1のV-V線と図2のV-V線に沿う断面図であり、図5に示す断面図は、押出機1のニーディングディスク52部分における断面図である。図3図5においては、ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとし、これらを45度ずつずらし、5枚重ねた態様を示している。ただし、第1実施形態においては、ニーディングディスク52としては、このような態様に特に限定されるものではなく、複数枚のニーディングディスク52を、所定の角度だけずらして組み合わせることで、順送りニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、または逆送りニーディングディスクとすることができる。順送りニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を順送り方向に位相をずらすことで(たとえば、45°ずつずらすことや、60°ずつずらすことで)、順送り方向への送り能力を持たせたものであり、逆送りニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を逆送り方向に位相をずらすことで(たとえば、270°ずつずらすことで)、逆送り方向への送り能力を持たせたものである。ニュートラルニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を90°ずらして軸方向に平行に形成することで、送り能力を持たせないものである。
【0058】
また、図3図5においては、ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとしているが、擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル3の内壁面3aに各該ディスクの端部が所定0.1~5mm程度のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形または切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形または三角糸巻形としてもよい。
【0059】
また、第1実施形態においては、洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック38に形成される、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとすることが好ましい。このように、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成することにより、後述するように、第1洗浄水フィード口380から、洗浄水を供給する際に、洗浄水の水圧を好適に高めることができるものである。
【0060】
なお、第1実施形態では、上述したバレルブロック48の下流側には、バレル3内で凝固・脱水・乾燥処理されたニトリルゴムを、所定形状に押し出し製品化するためのダイ4が接続され、たとえば、シート状に押出すことができる。また、ダイ4には、通常、その吐出口よりも上流側に、異物等を捕捉するための金網が設けられる。
【0061】
次に、第1実施形態に係る押出機1を用いたニトリルゴムの回収方法を説明する。
まず、ニトリルゴムのラテックスをフィード口320につながる配管から、凝固剤をフィード口321につながる配管から、水蒸気をフィード口322につながる配管から、凝固ゾーン100に、それぞれ供給する。凝固剤としては、特に限定ないが、ポリマー・ムーニー粘度およびポリマーpHを適切な範囲に制御し、これにより得られるニトリルゴムの加工性等を十分なものとするという観点より、1価または2価の金属の塩が好適に用いられる。凝固剤の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなどなどが挙げられる。これらのなかでも、凝固性に優れているという観点より、塩化ナトリウムが好適に用いられる。
【0062】
ニトリルゴムのラテックス、凝固剤、および水蒸気の凝固ゾーン100内への供給レートは、押出機1の大きさなどによって変わり、特に限定されないが、第1実施形態では、たとえば、ニトリルゴムのラテックスの供給レートは、好ましくは50~2000kg/hr、より好ましくは150~600kg/hrである。
【0063】
また、フィード口321から供給する凝固液中の凝固剤の量は、ニトリルゴムのラテックス中に含まれるニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.5~200重量部であり、より好ましくは1~150重量部であり、さらに好ましくは1.5~120重量部である。凝固剤の供給量を上記範囲とすることにより、ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。なお、凝固剤は、水などに溶解して、凝固液として、フィード口321から供給してもよい。この場合における凝固液中の凝固剤の濃度は、特に限定されないが、凝固液全体に対して、好ましくは1~35重量%程度である。
【0064】
凝固ゾーン100に供給されたニトリルゴムのラテックスと凝固剤と水蒸気とは、スクリュー5の回転により接触させられ、ニトリルゴムは凝固し、直径約0.5~100mm程度のクラムとなって水中に懸濁し、クラム濃度が1~30重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)となる。凝固ゾーン100内部の温度は、20~100℃とすることが好ましく、30~95℃とすることがより好ましい。凝固ゾーン100の温度をこのような範囲とすることにより、ニトリルゴムの凝固を良好なものとしながら、ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。
【0065】
凝固ゾーン100で得られたクラムスラリーは、スクリュー5の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック37に設けられたスリット370から、クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、10~70重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0066】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー5の回転により洗浄・脱水ゾーン104に送られる。洗浄・脱水ゾーン104では、バレルブロック38に設けられた洗浄水フィード口380から、内部に洗浄水を導入し、洗浄水と、クラムとを混合することで、クラムが洗浄され、次いで、脱水される。洗浄済みの排水はバレルブロック39に設けられたスリット390から排出される。
【0067】
第1実施形態においては、洗浄・脱水ゾーン104において、洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する際に、洗浄水を、0.2MPa以上の水圧にて供給するものであり、この0.2MPa以上の水圧にて供給された洗浄水と、クラムとを混合することにより、クラムの洗浄を行うものである。そして、これにより、第1実施形態によれば、クラムの洗浄をより適切に行うことができ、結果として、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量を効果的に低減することができるものであり、比較的多量の凝固剤が残存してしまうことによる不具合、たとえば、耐水性の低下等などの得られるニトリルゴムにおける特性の低下を有効に防止することができるものである。
【0068】
洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する際における、洗浄水の水圧は0.2MPa以上とすればよいが、好ましくは0.22MPa以上であり、より好ましくは0.25MPa以上、さらに好ましくは0.3MPa以上である。なお、洗浄水の水圧の上限は、特に限定されないが、通常、15MPa以下である。
【0069】
なお、洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する際における、洗浄水の水圧を0.2MPa以上とする方法としては、特に限定されないが、たとえば、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成(すなわち、第1洗浄水フィード口380の出口における、スクリュー5のスクリュー構成)を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとする方法が挙げられる。特に、第1実施形態においては、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとし、かつ、洗浄水の供給量を調整することで、第1洗浄水フィード口380に供給される洗浄水の水圧を制御することができるものである。
【0070】
特に、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成することにより、複数のニーディングディスク52の存在および複数のニーディングディスク52により混練されるクラムの存在により、当該部分の空間体積が小さいものとなり、第1洗浄水フィード口380から洗浄水供給される洗浄水の、バレルブロック38中における拡散が抑制される(あるいは、流路が確保し難くなる)こととなり、これにより供給される洗浄水の水圧を適切に高めることができるものである。なお、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52により構成する際における、ディスク構成としては、特に限定されないが、順送りニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、または逆送りニーディングディスクとすることが好ましく、これらは組み合わせてもよい。
【0071】
また、第1実施形態においては、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成すればよいが、供給される洗浄水の水圧をより適切に高め、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量をより効果的に低減することができるという観点より、次のような態様とすることが好ましい。すなわち、第1洗浄水フィード口380が形成されるバレルブロック38中における、スクリュー5のスクリュー構成を、ニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)が5~100%となるような構成とすることが好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が10~100%となるような構成とすることがより好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が70~100%となるような構成とすることがさらに好ましく、このような構成とすることで、洗浄・脱水ゾーン104における、クラムの洗浄効率をより高めることができるものである。
【0072】
なお、洗浄・脱水ゾーン104全体における、スクリュー5中におけるニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)は、特に限定されないが、洗浄効率に加え、脱水効率も高めるという観点より、好ましくは5~85%、より好ましくは10~80%である。
【0073】
あるいは、洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する際における、洗浄水の水圧を0.2MPa以上とする方法としては、スクリュー5の回転数を制御する方法、フィード口320から供給するニトリルゴムのラテックスの供給レートを制御する方法、さらには、洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートや供給量を制御する方法なども挙げられる。これらの方法は、上述した、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとする方法に代えて、あるいは、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとする方法に加えて、採用することができる。
【0074】
なお、スクリュー5の回転数としては、特に限定されないが、好ましくは10~1000rpm、より好ましくは20~600rpmである。また、フィード口320から供給するニトリルゴムのラテックスの供給レートは、上述した量とすればよく、洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートや供給量としては、以下の通りとすればよい。
【0075】
すなわち、洗浄水の供給レートは、特に限定されないが、好ましくは10~400L/hrであり、より好ましくは20~320L/hr、さらに好ましくは60~320L/hrである。また、第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の量は、ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは25~1000重量部、より好ましくは50~800重量部である。洗浄水の供給レート、洗浄水の量をそれぞれ上記範囲とすることにより、洗浄・脱水ゾーン104における洗浄効果をより高めることができ、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量をより効果的に低減することができる。また、洗浄水の温度は、特に限定されないが、好ましくは20~95℃であり、より好ましくは30~90℃、さらに好ましくは45~75℃である。
【0076】
洗浄・脱水ゾーン104の内部温度は、40~250℃とすることが好ましく、50~230℃とすることがより好ましい。そして、洗浄・脱水ゾーン104において、2~20重量%程度の水分を含有する洗浄後のクラムが得られる。
【0077】
次いで、洗浄・脱水ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー5の回転により乾燥ゾーン106に送られる。乾燥ゾーン106に送られたクラムは、スクリュー5の回転により可塑化混練されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、この融体がバレルブロック43,46,47に設けられたベント口430,460,470に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン106内部の温度は、90~250℃とすることが好ましく、より好ましくは100~230℃である。また、内部圧力(ダイ部での圧力)は1000~15000kPa(G:ゲージ圧)程度である。なお、乾燥ゾーン106は、減圧にしてもよい。
【0078】
乾燥ゾーン106を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー5により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量が1.5重量%以下)でダイ4に導入され、ここで、たとえばシート状で排出された後、シートカッター(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされる。
以上のようにして、ニトリルゴムのラテックスから、ニトリルゴムを回収することができる。
【0079】
以上のように、第1実施形態によれば、洗浄・脱水ゾーン104において、第1洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する際に、洗浄水を、0.2MPa以上の水圧にて供給して、0.2MPa以上の水圧にて供給された洗浄水と、クラムとを混合することにより、クラムの洗浄を行うものであり、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量を効果的に低減することができるものである。
【0080】
<第2実施形態に係るニトリルゴムの回収方法>
次いで、本発明の第2実施形態に係るニトリルゴムの回収方法について、説明する。
図6は本発明の第2実施形態に係るニトリルゴムの回収方法に用いる押出機1aを示す概略図である。
【0081】
第2実施形態に係る押出機1aは、上述した第1実施形態に係る押出機1と比較して、バレルブロック40に、洗浄水を供給するための第2洗浄水フィード口400を備える以外は、上述した第1実施形態に係る押出機1と同様の構成を有するものである。
【0082】
そして、第2実施形態に係るニトリルゴムの回収方法は、図6に示す押出機1aを使用し、かつ、以下に説明する態様を採用する以外は、上述した第1実施形態に係るニトリルゴムの回収方法と同様である。
【0083】
すなわち、第2実施形態に係る押出機1aは、図6に示すように、洗浄・脱水ゾーン104に、第1洗浄水フィード口380に加えて、第2洗浄水フィード口400を備えるものであり、第2実施形態においては、第1洗浄水フィード口380からの洗浄水の供給に加え、第2洗浄水フィード口400からも洗浄水を供給し、これにより、クラムの洗浄を行うものである。
【0084】
この際における、第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の水圧は0.2MPa以上とすればよいが、好ましくは0.22MPa以上であり、より好ましくは0.25MPa以上、さらに好ましくは0.3MPa以上である。また、第2洗浄水フィード口400から供給する洗浄水の水圧も0.2MPa以上とすればよいが、好ましくは0.22MPa以上であり、より好ましくは0.25MPa以上、さらに好ましくは0.30MPa以上である。なお、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400から供給する洗浄水の水圧の上限は、特に限定されないが、通常、15MPa以下である。
【0085】
なお、洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400から洗浄水を供給する際における、洗浄水の水圧を0.2MPa以上とする方法としては、特に限定されないが、上述した第1実施形態と同様に、第1洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成(すなわち、第1洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400の出口における、スクリュー5のスクリュー構成)を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとする方法が挙げられる。あるいは、上述した第1実施形態と同様に、スクリュー5の回転数を制御する方法、フィード口320から供給するニトリルゴムのラテックスの供給レートを制御する方法、さらには、洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートや供給量を制御する方法などを採用してもよい。また、第2実施形態においては、第1洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとし、かつ、洗浄水の供給量を調整することで、第1洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400に供給される洗浄水の水圧を制御することができるものである。
【0086】
なお、第2実施形態においては、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380、第2洗浄水フィード口400に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成すればよいが、供給される洗浄水の水圧をより適切に高め、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量をより効果的に低減することができるという観点より、次のような態様とすることが好ましい。すなわち、第1洗浄水フィード口380が形成されるバレルブロック38中における、スクリュー5のスクリュー構成を、ニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)が30~100%となるような構成とすることが好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が40~100%となるような構成とすることがより好ましい。また、第2洗浄水フィード口400が形成されるバレルブロック40中における、スクリュー5のスクリュー構成を、ニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)が5~100%となるような構成とすることが好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が10~100%となるような構成とすることがより好ましい。
【0087】
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートおよび洗浄水の供給量は、上述した第1実施形態と同様とすればよい。また、第2洗浄水フィード口400から供給する洗浄水の供給レートは、特に限定されないが、好ましくは10~400L/hrであり、より好ましくは20~320L/hrであり、第2洗浄水フィード口400から供給する洗浄水の量は、ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは25~1000重量部、より好ましくは50~800重量部である。洗浄水の供給レート、洗浄水の量をそれぞれ上記範囲とすることにより、洗浄・脱水ゾーン104における洗浄効果をより高めることができ、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量をより効果的に低減することができる。また、洗浄水の温度は、特に限定されないが、好ましくは20~95℃であり、より好ましくは30~90℃である。
【0088】
洗浄・脱水ゾーン104の内部温度は、上述した第1実施形態と同様とすればよい。そして、洗浄・脱水ゾーン104において、5~10重量%程度の水分を含有する洗浄後のクラムが得られる。次いで、洗浄・脱水ゾーン104で得られたクラムを、乾燥ゾーン106にて乾燥し、ダイ4から、たとえばシート状で排出された後、シートカッター(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされる。
以上のようにして、ニトリルゴムのラテックスから、ニトリルゴムを回収することができる。
【0089】
以上のように、第2実施形態によれば、洗浄・脱水ゾーン104において、第1洗浄水フィード口380に加えて、第2洗浄水フィード口400からも洗浄水を供給するとともに、第1洗浄水フィード口380、および第2洗浄水フィード口400からの洗浄水の水圧を0.2MPa以上として、クラムの洗浄を行うものであり、これにより、得られるニトリルゴム中に含まれる凝固剤量をより効果的に低減することができるものである。
【0090】
<その他の実施形態>
なお、上述した第1実施形態、第2実施形態においては、押出機1,1aとして、凝固ゾーン100、および排水ゾーン102を備えるものを使用し、押出機1,1aにて、ニトリルゴムのラテックスの凝固を行い、押出機1,1a内における凝固により得られたクラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムについて、洗浄・脱水ゾーン104にて洗浄および脱水を行う態様を例示したが、このような態様に特に限定されるものではない。たとえば、押出機として、凝固ゾーン100、および排水ゾーン102を備えないものを使用するとともに、別の装置にて凝固を行うことにより得られたクラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムを、含水クラムの状態で押出機に供給して、洗浄および脱水を行うような態様としてもよい。
【0091】
また、上述した第1実施形態、第2実施形態においては、押出機1,1aとして、乾燥ゾーン106を備えるものを用い、洗浄・脱水ゾーン104にて洗浄および脱水されたクラムを、乾燥ゾーン106にて乾燥を行う態様を例示したが、このような態様に特に限定されるものではない。たとえば、押出機として、乾燥ゾーン106を備えないものを使用するとともに、洗浄・脱水ゾーン104にて洗浄および脱水されたクラムを、クラムの状態で押出機から排出し、別の乾燥装置で乾燥を行うような態様としてもよい。
【0092】
さらに、上述した第1実施形態、第2実施形態においては、押出機1,1a内において、ニトリルゴムのラテックスの凝固を行う際に、フィード口320,321,322から、ニトリルゴムのラテックス、凝固剤および水蒸気を供給するような態様を例示したが、水蒸気については供給せずに、ニトリルゴムのラテックス、および凝固剤のみを供給することで、凝固を行うような態様としてもよい。
【0093】
以上のようにして、本実施形態においては、ニトリルゴムを回収することができるものである。そして、このようにして回収されるニトリルゴムは、たとえば、架橋剤を配合することで、ゴム組成物として用いることができる。架橋剤としては、特に限定されないが、ゴム架橋物とした場合における耐圧縮永久歪み性をより高めることができるという点より、ポリアミン系架橋剤を好適に用いることができる。本発明のゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、ニトリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.1~20重量部であり、より好ましくは0.2~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部である。
【0094】
また、本発明のゴム組成物には、架橋剤以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、充填剤、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、架橋促進剤、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。さらに、本発明のゴム組成物には、ニトリルゴム以外のゴムを配合してもよい。
【0095】
また、上述したゴム組成物は、架橋することによりゴム架橋物とすることができる。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0097】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0098】
[水素化ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合]
マレイン酸モノn-ブチル単位の含有割合は、2mm角の水素化ニトリルゴム0.2gに、2-ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、水素化ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn-ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3-ブタジエン単位および飽和化ブタジエン単位の含有割合は、水素化ニトリルゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、水素化ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n-ブチル単位、およびアクリル酸2-メトキシエチル単位の含有割合は、上記各単量体単位に対する残り成分として算出した。
【0099】
[水素化ニトリルゴムのムーニー粘度]
水素化ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0100】
[水素化ニトリルゴム中の塩素含有量、ナトリウム含有量]
水素化ニトリルゴム0.5gに対し、メチルエチルケトン70mlを加え、攪拌することで、水素化ニトリルゴムを完全に溶解させた。次いで、イソプロピルアルコール30mlを加え、さらに、メチルエチルケトンを加えて全量を150mlに調整した。そして、この溶液に、2%硫酸溶液1mlを駒込ピペットで加え、これに、N/200硝酸銀水溶液を滴下して電位差滴定を行うことで、塩素含有量を求めた。また、測定された塩素が塩化ナトリウムに由来するものとして、求めた塩素含有量より、ナトリウム含有量を求めた。なお、滴定装置としては、平沼製COMITE-101を用い、銀支持電極AG-68/銀比較電極AM-44を使用した。
【0101】
[製造例1、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の製造]
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、濃度10%のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩5部、アクリロニトリル20.4部、マレイン酸モノn-ブチル5部、アクリル酸n-ブチル35.2部、t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.75部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3-ブタジエン39.4部を仕込んだ。金属製ボトルを10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続し、重合転化率が80%になった時点で、濃度2.5重量%の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル水溶液(重合停止剤)4部を加えて重合反応を停止した。次いで、水温60℃で残留単量体を除去し、ニトリルゴムのラテックス(X1)(固形分濃度25重量%)を得た。
【0102】
また、上記とは別に、塩化パラジウム(塩化パラジウム中のPd金属/ラテックス中のニトリルゴムの重量比で2800重量ppm)に対して、塩化パラジウム中のPd金属の2倍モル当量の塩化ナトリウムを含有する水溶液を添加してパラジウム水溶液を得た。そして、得られたパラジウム水溶液300部に、重量平均分子量5,000のポリビニルピロリドンを、塩化パラジウム中のPd金属に対して重量比で5倍となる量を添加し、さらに水酸化カリウム水溶液を添加することで、pH12.0の触媒水溶液を調製した。
【0103】
次いで、上記にて得られたニトリルゴムのラテックス(X1)に含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が2800重量ppmになるように、オートクレーブ中に、上記にて得られたニトリルゴムのラテックス(X1)および上記にて調製した触媒水溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、老化防止剤を適量加えることで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)(固形分濃度:13.0重量%)を得た。得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)に含まれる水素化ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位20.5重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)45.5重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位5.0重量%、アクリル酸n-ブチル単位29重量%であり、ヨウ素価は7であった。
【0104】
[製造例2、水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)の製造]
アクリロニトリルの使用量を15.7部とし、アクリル酸n-ブチルの使用量を36.2部とし、1,3-ブタジエンの使用量を43.1部とした以外は、製造例1と同様にして、水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)(固形分濃度:13.0重量%)を得た。得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)に含まれる水素化ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位15.5重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)46重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位5重量%、アクリル酸n-ブチル単位33.5重量%であり、ヨウ素価は8であった。
【0105】
[製造例3、水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)の製造]
アクリロニトリルの使用量を23部とし、1,3-ブタジエンの使用量を40部とし、マレイン酸モノn-ブチルの使用量を6.5部とするとともに、アクリル酸n-ブチルに代えて、アクリル酸2-メトキシエチル30.5部を使用した以外は、製造例1と同様にして、水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)(固形分濃度:13.0重量%)を得た。得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)に含まれる水素化ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位24重量%、ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)44重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位6.5重量%、アクリル酸2-メトキシエチル単位25重量%であり、ヨウ素価は7であった。
【0106】
[製造例4、水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)の製造]
アクリロニトリルの使用量を63部とし、1,3-ブタジエンの使用量を37部とし、アクリル酸n-ブチルおよびマレイン酸モノn-ブチルを使用しなかった以外は、製造例1と同様にして、水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)(固形分濃度:13.0重量%)を得た。得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)に含まれる水素化ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位37重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)63重量%であり、ヨウ素価は7であった。
【0107】
[実施例1]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)を、硫酸水溶液を用いて、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整し、凝固液として塩化ナトリウム水溶液(濃度:25重量%)と、水蒸気とを使用して、図1に示す押出機1により、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を行うことで、水素化ニトリルゴムを回収した。
【0108】
押出機1としては、バレル3内に2本のスクリュー(シリンダ径=47mm、L/Da=63)5,5を平行に設け、これらのスクリュー5,5を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリューの山部を他方のスクリューの谷部に噛み合わせ、一方のスクリューの谷部を他方のスクリューの山部に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機を用いた。
【0109】
また、凝固ゾーン100に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL1を931mmとし、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL2を161mmとし、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL3を678mmとし、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL4を1058mmとした。
【0110】
また、実施例1においては、2本のスクリュー5,5として、下記表1に示すスクリュー構成αを採用し、各バレルブロックの設定温度は、バレルブロック31~39:90℃、バレルブロック40~43:130~140℃、バレルブロック44~48:120~130℃とした。
【表1】
【0111】
なお、表1中、「A」は、順送りニーディングディスク、「B」は、ニュートラルニーディングディスク、「C」は、逆送りニーディングディスク、「D」は、フルフライトスクリューを示す。
表1からも確認できるように、スクリュー構成αにおいては、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっており、一方、スクリュー構成γにおいては、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクではなく、スクリューブロックにより構成されたものとなっている。また、スクリュー構成αにおいては、バレルブロック38中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、100%である。
同様に、スクリュー構成βにおいては、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、いずれも、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっており、一方、スクリュー構成δにおいては、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、いずれも、複数のニーディングディスクではなく、スクリューブロックにより構成されたものとなっている。また、スクリュー構成βにおいては、バレルブロック38中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、100%であり、バレルブロック40中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、67%である。
【0112】
そして、このような構成を有する押出機1のバレルブロック32に設けられたフィード口320から、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整した水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)を330kg/hrのレートで連続的に供給を開始した。同時に、バレルブロック32に設けられたフィード口321から、塩化ナトリウム水溶液(凝固剤濃度:25重量%)を96kg/hrのレートで、バレルブロック32に設けられたフィード口322から、水蒸気を0.35MPaの圧力で70kg/hrのレートで、それぞれ連続的に供給を開始した。すなわち、フィード口321を通過した際のセラム水の全量に対する凝固剤の濃度〔塩化ナトリウム量/全供給物からなるセラム水量〕を4.8重量%とし、水素化ニトリルゴム100部当たり、塩化ナトリウム60部となる量とした。同時に、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380から、温度60℃の洗浄水を300L/hr(水素化ニトリルゴム100部当たり、750部となる量)の条件にて連続的に供給し、スクリュー回転数200rpmで押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際における、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を、第1洗浄水フィード口380近傍に設けた水圧計で測定したところ、4.0MPaであった。
【0113】
そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、上記方法にしたがい、ムーニー粘度、塩素含有量、およびナトリウム含有量の各測定を行った。結果を表2に示す。
【0114】
[実施例2]
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートを180L/hr(水素化ニトリルゴム100部当たり、450部となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、1.3MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0115】
[実施例3]
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートを80L/hr(水素化ニトリルゴム100部当たり、200部となる量)に変更した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.6MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0116】
[実施例4]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例2で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)を、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、実施例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、1.4MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0117】
[実施例5]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例3で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)を、pH=3.7、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、実施例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、1.1MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0118】
[実施例6]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例4で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)を、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、実施例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、1.1MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0119】
[実施例7]
実施例7においては、図1に示す押出機1に代えて、図6に示す押出機1aを使用して、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整した水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を行うことで、水素化ニトリルゴムを回収した。
【0120】
押出機1aとしては、図6に示すように、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を備え、かつ、2本のスクリュー5,5として、上記表1に示すスクリュー構成βを有するものを使用した以外は、実施例1で使用した押出機1と同様のものを用いた。また、各バレルブロックの設定温度は、バレルブロック31~39:90℃、バレルブロック40~43:130℃、バレルブロック44~48:130℃とした。
【0121】
また、押出機1aの運転条件としては、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380からの洗浄水の供給レートを180L/hr、バレルブロック40に設けられた第2洗浄水フィード口400からの洗浄水の供給レートを80L/hrとした以外は、実施例1と同様として、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際における、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を、第1洗浄水フィード口380近傍に設けた水圧計で測定したところ、0.8MPaであり、バレルブロック40に設けられた第2洗浄水フィード口400から供給される洗浄水の水圧を、第2洗浄水フィード口400近傍に設けた水圧計で測定したところ、1.0MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0122】
[比較例1]
比較例1においては、図1に示す押出機1において、2本のスクリュー5,5として、上記表1に示すスクリュー構成γを有するものを使用した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.02MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0123】
[比較例2]
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートを180L/hr(水素化ニトリルゴム100部当たり、450部となる量)に変更した以外は、比較例1と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.01MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
[比較例3]
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートを80L/hr(水素化ニトリルゴム100部当たり、200部となる量)に変更した以外は、比較例1と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.005MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0125】
[比較例4]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例2で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)を、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、比較例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L2)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.01MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
[比較例5]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例3で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)を、pH=3.7、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、比較例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L3)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.01MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例6]
製造例1で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の代わりに、製造例4で得られた水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)を、pH=3.6、固形分濃度12.0重量%に調整して使用した以外は、比較例2と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L4)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例1と同様に、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.01MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例7]
比較例7においては、図6に示す押出機1aにおいて、2本のスクリュー5,5として、上記表1に示すスクリュー構成δを有するものを使用した以外は、実施例7と同様にして、押出機1を運転することで、水素化ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、水素化ニトリルゴムを、40kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際において、実施例7と同様に、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400から供給される洗浄水の水圧を測定したところ、0.01MPaおよび0.005MPaであった。そして、回収された水素化ニトリルゴムについて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
表2に示すように、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成を複数のニーディングディスクで構成し、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を0.2MPa以上として、洗浄を行った場合には、回収されるニトリルゴムは、いずれも、ムーニー粘度を適切な範囲に保持しながら、凝固剤に起因する塩素含有量およびナトリウム含有量が低く抑えられる結果となることが確認できる(実施例1~6)。
また、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の2箇所から洗浄水を供給する構成とするとともに、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成を、いずれも、複数のニーディングディスクで構成し、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400から供給される洗浄水の水圧を、いずれも0.2MPa以上として、洗浄を行った場合には、回収されるニトリルゴムは、凝固剤に起因する塩素含有量およびナトリウム含有量のさらなる低減が可能なものであった(実施例7)。
【0131】
一方、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水の水圧を0.005~0.02MPaとした場合、さらには、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の2箇所から洗浄水を供給した場合であっても、供給される洗浄水の水圧を0.005~0.02MPaとした場合には、回収されるニトリルゴムは、凝固剤に起因する塩素含有量およびナトリウム含有量が高くなる結果となった(比較例1~7)。
【符号の説明】
【0132】
1,1a… 押出機
2… 駆動ユニット
3… バレル
31~48… バレルブロック
380… 第1洗浄水フィード口
400… 第2洗浄水フィード口
4… ダイ
5… スクリュー
図1
図2
図3
図4
図5
図6