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特許7414063無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
C09C3/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021511497
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020012972
(87)【国際公開番号】W WO2020203459
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2019066855
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
(72)【発明者】
【氏名】大塚 剛史
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-214339(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026956(WO,A1)
【文献】特開2018-024577(JP,A)
【文献】特開2015-091985(JP,A)
【文献】特開2017-193631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
C08K 9/00-9/12
C09C 1/00-3/12
C09D 15/00-17/00
H01L 33/52-33/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液中において前記無機粒子を分散する分散工程と、を有し、
前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、
前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、無機粒子の表面修飾方法。
【請求項2】
前記混合工程の前に、さらに、少なくとも表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る、加水分解工程を有し、
前記混合工程が、加水分解された表面修飾材料を含む前記加水分解液と前記無機粒子とを混合することにより、前記混合液を得る工程である、請求項1に記載の無機粒子の表面修飾方法。
【請求項3】
前記加水分解液に添加される水の量が、前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下である、請求項2に記載の無機粒子の表面修飾方法。
【請求項4】
表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液中において前記無機粒子を分散して、前記無機粒子が分散した分散液を得る分散工程と、を有し、
前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、分散液の製造方法。
【請求項5】
無機粒子と、少なくとも一部が前記無機粒子に付着した1種以上の表面修飾材料と、を含み、
前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、
前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であり、
前記無機粒子100質量%に対して、前記表面修飾材料が140質量%以上800質量%以下である、分散液。
【請求項6】
前記無機粒子の体積基準90%粒子径をD90、前記無機粒子の体積基準50%粒子径をD50をとした際の、D90/D50が1.0以上3.0以下である、請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
前記無機粒子の平均一次粒子径が3nm以上200nm以下である、請求項5または6に記載の分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液に関する。
本願は、2019年3月29日に、日本に出願された特願2019-066855号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子は、屈折率調整効果、熱線遮蔽機能等、様々な性能を部品、部材や材料に付与することができる。したがって、化粧料、樹脂製品や光学部品等の様々な技術分野において利用されている。
【0003】
無機粒子は、無修飾の場合、一般にその表面に水酸基が存在するため、通常は親水性である。そこで、疎水性材料に無機粒子を添加する場合には、シランカップリング剤等の表面改質剤により、無機粒子の表面を疎水性に改質することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1では、顔料の表面がn-オクチルトリエトキシシラン等の特定のシランカップリング剤により被覆処理された、化粧料に配合した際に高い撥水性を有しながら感触はしっとりとして重くなく、肌への付着性が高い、化粧料用顔料が提案されている。
また、特許文献2では、1つ以上の反応性官能基を有する表面修飾剤により表面が修飾されかつ分散粒径が1nm以上かつ20nm以下の無機酸化物粒子を含有することを特徴とする無機酸化物透明分散液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-181136号公報
【文献】国際公開第2007/049573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、無機粒子を液相中にて表面修飾材料により表面修飾する場合には、無機粒子と表面修飾材料のみならず分散媒も混合して混合液を得て、この混合液について分散機を用いて分散処理することが一般的である。なお、このような方法で表面修飾された無機粒子は、疎水性の高い材料と混合した際に、十分に前記材料中に分散できず凝集してしまい、結果、疎水性の高い材料に白濁等の濁りが生じる問題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、疎水性の高い材料と混合した場合であっても凝集が抑制され、白濁等の濁りの発生が防止された無機粒子を得るための、無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様として、
少なくとも表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る混合工程と、
上記混合液中において上記無機粒子を分散する分散工程と、を有し、
上記混合液中における上記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、上記混合液中における上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、無機粒子の表面修飾方法が提供される。
本発明の第一の態様の方法は、以下に述べる特徴を好ましく含む。以下に述べる特徴は、単独であってよく、あるいは2つ以上の特徴を組み合わせても良い。
【0009】
上記無機粒子の表面修飾方法は、前記混合工程の前に、さらに、表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る、加水分解工程を有し、
前記混合工程が、加水分解された表面修飾材料を含む前記加水分解液と前記無機粒子とを混合することにより、前記混合液を得る工程であってもよい。
【0010】
前記加水分解液に添加される水の量は、前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下であってもよい。
【0011】
また、前記課題を解決するために、本発明の第二の態様として、表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る混合工程と、
前記混合液中において前記無機粒子を分散して、前記無機粒子が分散した分散液を得る分散工程と、を有し、
前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、分散液の製造方法が提供される。
【0012】
また、前記課題を解決するために、本発明の第三の態様として、無機粒子と、少なくとも一部が前記無機粒子に付着した1種以上の表面修飾材料と、を含み、
前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、
前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である、分散液が提供される。
本発明の第三の態様の分散液は、以下に述べる特徴を好ましく含む。以下に述べる特徴は、単独であってよく、あるいは2つ以上の特徴を組み合わせても良い。
【0013】
前記無機粒子の体積基準90%粒子径をD90、前記無機粒子の体積基準50%粒子径をD50をとした際の、D90/D50は、1.0以上3.0以下であってもよい。
前記無機粒子の平均一次粒子径は、3nm以上200nm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、疎水性の高い材料と混合した場合であっても凝集が抑制され、白濁等の濁りの発生が防止された無機粒子を得るための、無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施の形態の例について詳細に説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、量、数、種類、比率、構成等について、省略、追加、置換、又は変更が可能である。
<1. 本発明者らの着想>
まず、本発明の詳細な説明に先立ち、本発明者らによる本発明に至るまでの着想について説明する。
【0016】
上述したように、無機粒子を液相中にて表面修飾材料により表面修飾する場合には、無機粒子と表面修飾材料のみならず分散媒も混合して混合液を得て、その後、前記混合液について分散機を用いて分散処理することが一般的である。ここで、このような表面修飾された無機粒子は、疎水性の高い材料と混合した際に、十分に前記材料中に分散できず凝集してしまい、結果、疎水性の高い材料に白濁等の濁りが生じる問題がある。このような場合、添加される無機粒子は、期待した性能が十分に発揮されない。
【0017】
分散媒は、通常、無機粒子を均一に分散させ、表面修飾材料に無機粒子の表面を均一に修飾させることを目的として添加される。従来では、分散媒を用いない場合は、分散液の粘度が上昇する結果、表面修飾材料が無機粒子の表面に十分に付着しないと考えられていた。本発明者らは、驚くべきことに、このような従来必須であると見做されてきた分散媒を使用しないあるいは少量のみ使用し、無機粒子を高濃度の表面修飾材料中に直接分散させることにより、得られる分散液中において、無機粒子の均一な分散が達成されるとともに、無機粒子への表面修飾材料の均一な修飾が可能であることを見出した。
【0018】
さらには、このようにして得られる分散液を疎水性の高い材料と混合した際に、前記材料中に無機粒子が凝集することなく分散可能であり、濁りの発生が抑制されることを本発明者らは見出し、本発明に至った。
【0019】
なお、分散時に分散媒を多量に用いた場合、分散液を疎水性の高い材料と混合した際に、疎水性の高い材料中に無機粒子が分散せず、濁りが生じる理由については、定かではない。しかしながら、分散媒の存在により無機粒子近傍の表面修飾材料が希薄となった結果、表面修飾材料の無機粒子に対する反応性が低下し、無機粒子に十分な量の表面修飾材料が付着しなかったことが考えられる。また、分散時の分散媒として疎水性溶媒を多量に用いた場合、そもそも水酸基を表面に有する無機粒子が十分に分散しないと考えられる。また、分散時の分散媒として親水性溶媒を多量に用いた場合、分散液中に含まれる親水性溶媒と疎水性の高い材料との混和性が十分でない。
【0020】
また、ヘンシェルミキサーやスプレードライヤ等により、乾式にて無機粒子の表面に表面修飾材料を付着させることも考えられる。しかしながら、この場合、無機粒子が凝集してしまい、均一に表面修飾材料が無機粒子の表面に付着しない傾向がある。さらには、乾式にて修飾を行う場合、十分な量の表面修飾材料を使用することが困難であると考えられる。この結果、無機粒子を疎水性の高い材料と混合した際に、前記材料中に無機粒子が十分に分散せず、濁りが生じてしまう。
【0021】
<2. 無機粒子の表面修飾方法および分散液の製造方法>
次に、本実施形態に係る無機粒子の表面修飾方法および分散液の製造方法の好ましい例について説明する。なお無機粒子の表面修飾方法を、分散液の製造方法として考えても良い。
【0022】
本発明者らが以上の検討により想到した本実施形態に係る無機粒子の表面修飾方法は、表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る工程(混合工程)と、前記混合液中において前記無機粒子を分散する工程(分散工程)と、を有する。前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である。
なお、前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計含有量には、後述する表面修飾材料の加水分解で発生するアルコールは含まない。すなわち、上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計含有量とは、加水分解されていない表面修飾材料と、加水分解された表面修飾材料と、無機粒子と、の合計量を意味してよい。なお、上記合計含有量が上記表面修飾材料に付着された無機粒子の含有量を含めた値であることは言うまでもない。
【0023】
また、本実施形態に係る分散液の製造方法は、表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る工程(混合工程)と、前記混合液中において前記無機粒子を分散して、前記無機粒子が分散した分散液を得る工程(分散工程)と、を有する。前記混合液において、前記混合液中における前記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、前記混合液中における前記表面修飾材料と前記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である。
【0024】
なお、本実施形態においては、上記の各工程に先立ち、表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る工程(加水分解工程)を好ましく有する。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0025】
(2.1 加水分解工程)
本工程においては、表面修飾材料と水とを混合して、加水分解された表面修飾材料を含む加水分解液を得る。このように予め表面修飾材料の少なくとも一部が加水分解した混合液を用いることにより、後述する分散工程において無機粒子に表面修飾材料が付着しやすくなる。
【0026】
このような表面修飾材料としては任意に選択でき、反応性官能基、例えばアルケニル基、H-Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基、を有する表面修飾材料が好適に用いられる。特に、アルコキシ基を有する表面修飾材料は、水と反応して加水分解し得ることから、本実施形態において好適に用いられる。
【0027】
アルケニル基の例としては、例えば炭素数2~5の直鎖または分岐状アルケニル基を用いることができ、具体的には、ビニル基、2-プロペニル基、プロパ-2-エン-1-イル基等が好ましく挙げられる。
アルコキシ基の例としては、例えば炭素数1~5の直鎖または分岐状アルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等が好ましく挙げられる。
【0028】
アルケニル基、H-Si基、およびアルコキシ基の群から選択される少なくとも1種の官能基を有する表面修飾材料の例としては、例えば、以下のシラン化合物、シリコーン化合物、および炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸が好ましく挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびエチルトリプロポキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン等のアルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、ビニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルケニル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、ジエトキシモノメチルシラン、モノエトキシジメチルシラン、ジフェニルモノメトキシシラン、ジフェニルモノエトキシシラン等のH-Si基およびアルコキシ基を含むシラン化合物、フェニルトリメトキシシラン等のその他アルコキシ基を含むシラン化合物、ならびにジメチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、フェニルジクロロシラン、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、モノメトキシシラン、トリエトキシシラン等のH-Si基を含むシラン化合物等が挙げられる。
【0030】
シリコーン化合物としては、例えば、メチルフェニルシリコーンや、ジメチルシリコーンや、メチルハイドロジェンシリコーン、メチルフェニルハイドロジェンシリコーン、ジフェニルハイドロジェンシリコーン等のH-Si基を含むシリコーン化合物や、アルコキシ両末端フェニルシリコーン、アルコキシ両末端メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有メチルフェニルシリコーン、アルコキシ基含有ジメチルシリコーン、アルコキシ片末端トリメチル片末端(メチル基片末端)ジメチルシリコーン、アルコキシ基含有フェニルシリコーン等のアルコキシ基を含むシリコーン化合物が挙げられる。
シリコーン化合物は、モノマーであってもよく、オリゴマーであってもよく、レジン(ポリマー)であってもよい。表面修飾が容易であることより、シリコーン化合物はモノマーかオリゴマーを用いることが好ましい。
炭素-炭素不飽和結合含有脂肪酸としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられる。
これら化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0031】
上述した中でも、表面修飾材料は、粘度が低く、後述する分散工程における無機粒子の分散が容易となる観点から、好ましくはアルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物であること、またはこの化合物を含むことが好ましい。
【0032】
このようなアルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルコキシ基の数は、好ましくは1以上3以下であればよく、アルコキシ基の数は3であることがより好ましい。なお必要に応じて、アルコキシ基の数は1や2であってもよい。アルコキシ基の炭素数は任意に選択できるが、1以上5以下であることが好ましい。前記炭素数は、1以上3以下や、2以上4以下であっても良い。
【0033】
アルキル基およびアルコキシ基を含むシラン化合物中のアルキル基の数は、1以上3以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。なお必要に応じて、アルキル基の数は2や3であってもよい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上3以下であり、さらに好ましくは1以上2以下である。アルコキシ基とアルキル基の総数は2以上4以下であることが好ましく、4であることがより好ましい。
【0034】
このような表面修飾材料としてのシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびエチルトリプロポキシシランが例として挙げられ、これらの化合物からなる群から選択される1種または2種以上を好ましく含むことができる。
【0035】
表面修飾材料の25℃における粘度は必要に応じて選択できるが、例えば、50mPa・s以下であることが好ましい。
表面修飾材料の粘度が50mPa・s以下であることにより、分散媒を多く含有させることなく、無機粒子を表面修飾材料中に分散させることができる。なお、ここでいう粘度とは、Z 8803:2011に準拠して測定される粘度をいう。
【0036】
また、加水分解液中における表面修飾材料の含有量は、特に限定されない。加水分解液中から他の成分を除いた残部とすることができるが、加水分解液中における表面修飾材料の含有量は、例えば60質量%以上99質量%以下、好ましくは70質量%以上97質量%以下、より好ましくは80質量%以上95質量%以下である。
【0037】
また、本工程において、加水分解液は水を含む。水は、表面修飾材料の加水分解反応の基質となる。
加水分解液中における水の含有量は、特に限定されず、任意に選択できる。例えば、水の含有量は、表面修飾材料の量に対応して適宜設定できる。例えば、加水分解液に添加される水の量は、前記表面修飾材料1molに対し、0.5mol以上5mol以下であることが好ましく、より好ましくは0.6mol以上3mol以下であり、さらに好ましくは、0.7mol以上2mol以下である。これにより、表面修飾材料の加水分解反応を十分に進行させつつ、過剰量の水により製造される分散液において無機粒子の凝集が生じることを、より確実に防止することができる。加水分解液中における水の含有量は、例えば、1質量%以上40質量%以下であってもよく、3質量%以上30質量%以下であってもよく、5質量%以上20質量%以下や、8質量%以上13質量%以下であってもよい。
【0038】
あるいは、加水分解液中における水の含有量は、例えば1質量%以上20質量%以下であってもよく、好ましくは1質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であってもよい。
【0039】
また、加水分解液には、触媒が添加されてもよい。加水分解液は、表面修飾材料と水と触媒のみを含んでも良い。触媒としては、例えば酸または塩基を用いることができる。
酸は、加水分解液中およびこれを含んで調製される混合液において、表面修飾材料の加水分解反応を触媒する。一方塩基は、加水分解された表面修飾材料と無機粒子表面の官能基、例えば水酸基やシラノール基、との縮合反応を触媒する。これら反応により、表面修飾材料が無機粒子に付着しやすくなり、無機粒子の分散安定性が向上する。
ここで、上記の「酸」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく酸をいい、ここでは、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを与える物質をいう。また、上記の「塩基」とは、いわゆるブレンステッド-ローリの定義に基づく塩基をいい、ここでは、表面修飾材料の加水分解反応およびその後の縮合反応においてプロトンを受容する物質をいう。
【0040】
本実施形態に係る製造方法に用いることのできる酸としては、表面修飾材料の加水分解反応においてプロトンを供給可能であれば特に限定されず、任意に選択できる。例えば、酸として、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸等の無機酸や、酢酸、クエン酸、ギ酸、等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
本実施形態に係る製造方法に用いることのできる塩基としては、表面修飾材料の加水分解反応またはその後の縮合反応においてプロトンを受容可能であれば特に限定されず任意に選択できる。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上述した中でも、触媒としては酸を用いることが好ましい。酸としては、酸性度の観点から、無機酸が好ましく、また、塩酸がより好ましい。
【0043】
加水分解液中における触媒の含有量は、特に限定されず任意に選択できる。例えば10ppm以上1000ppm以下であってよく、好ましくは20ppm以上800ppm以下、より好ましくは30ppm以上600ppm以下である。これにより表面修飾材料の加水分解を十分に促進させつつ、表面修飾材料の不本意な副反応を抑制することができる。なお必要に応じて、0.1ppm以上100ppm以下や、1ppm以上10ppm以下であってもよい。また例えば、塩酸(1N)を触媒として使用する時、塩酸の量は、加水分解液中100質量部に対して、0.001質量部以上5質量部以下であってもよく、0.001質量部以上3質量部以下であってもよく、0.005質量部以上1質量部以下であってもよく、0.005質量部以上0.1質量部以下であってもよい。
【0044】
また、加水分解液は、必要に応じて、親水性溶媒を含んでいてもよい。親水性溶媒は、加水分解液中において、水と表面修飾材料の混和を促進させ、表面修飾材料の加水分解反応をより一層促進させることができる。
【0045】
このような親水性溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、ニトリル系溶媒等が挙げられる。これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて、好ましく用いることができる。
【0046】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素数1~4の分岐または直鎖状アルコール化合物およびそのエーテル縮合物が挙げられる。これら溶媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級、第2級および第3級アルコールのいずれであってもよい。またアルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価、二価および三価アルコールのいずれであってもよい。より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が、好ましく挙げられる。
【0047】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が、好ましく挙げられる。
ニトリル系溶媒としては、例えば、アセトニトリル等が、好ましく挙げられる。
【0048】
上述した中でも、水と疎水性溶媒双方との親和性に優れ、これらの混和を促進させる観点から、親水性溶媒は、好ましくはアルコール系溶媒を含む。この場合において、アルコール系溶媒を構成するアルコール化合物の炭素数は、好ましくは1以上3以下、より好ましくは1以上2以下である。親水性溶媒は、アルコール系溶媒のみからなってもよい。
上述した中でも、メタノールおよびエタノールが好ましい。特にメタノールは、上記のアルコール系溶媒の効果を十分に発現することができるために好適に用いることができる。
【0049】
また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、特に限定されないが、例えば60質量%以下、好ましくは50質量%以下であることができる。この範囲により、加水分解液中における表面修飾材料および水の含有量を十分に大きくすることができる。前記親水性溶媒の含有量は、40質量%以下や、20質量%以下や、10質量%以下や、5質量%以下であってもよい。また、加水分解液中における親水性溶媒の含有量は、例えば10質量%以上、好ましくは15質量%以上であることができる。この範囲により、表面修飾材料と水との混和をより一層促進することができ、その結果、表面修飾材料の加水分解反応を効率よく進行させることができる。なお、加水分解液中において、加水分解反応由来の化合物を除いて、親水性溶媒が含まれなくてもよい。すなわち、加水分解反応由来の化合物である親水性溶媒のみが含まれてもよい。
【0050】
本実施形態では、表面修飾材料としてアルコキシ基を有する化合物、例えばアルコキシ基を有するシラン化合物を用いる場合、これが加水分解するため、アルコキシ基由来のアルコール化合物が混合液中に含まれることとなる。加水分解反応は、無機粒子の吸着水でも進行するため、加水分解工程、混合工程、分散工程のいずれでも起こりうる。そのため、この場合、アルコール化合物を除去する工程がない限りは、最終的な分散液にはアルコール化合物が含まれる。
【0051】
本工程においては、加水分解液を調製後、任意に選択される一定の温度で、所定の時間保持してもよい。これにより、表面修飾材料の加水分解をより一層促進させることができる。
この処理において、加水分解液の温度は、特に限定されず任意に選択でき、表面修飾材料の種類によって適宜変更できる。例えば5℃以上65℃以下、より好ましくは20℃以上65℃以下、さらに好ましくは30℃以上60℃以下である。必要に応じて、40℃以上75℃以下や、50℃以上70℃以下であっても良い。
【0052】
また、上記温度での保持時間は、特に限定されないが、例えば10分以上180分以下、好ましくは30分以上120分以下である。必要に応じて、15分以上60分以下や、20分以上40分以下であっても良い。
【0053】
なお、上記の加水分解液の保持において、加水分解液を適宜撹拌してもよい。
また、本工程は、必要に応じて行うことができ、省略されてもよい。
【0054】
(2.2 混合工程)
本工程においては、少なくとも表面修飾材料と無機粒子とを混合して混合液を得る。なお、上述した加水分解工程により表面修飾材料を含む加水分解液を得ている場合、混合液は加水分解液と無機粒子とを混合することにより、得られる。この加水分解液には、表面修飾材料以外に、上述した化合物や溶媒を含むことができる。混合液は、好ましくは、前記加水分解液と前記無機粒子のみからなる。
【0055】
なおこの工程では、混合液中における無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下であるようにして、混合が行われる。なお混合工程における上記含有量が満足されるように、予め、各材料の量や割合を調整しておいてもよい。
【0056】
このように、本実施形態においては、混合液中の表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が、65質量%以上98質量%以下と、非常に大きい。そして、従来必須であると見做されてきた有機溶媒や、水等の分散媒は、混合液中に含まれない、あるいは従来と比較して非常に少量のみが混合される。あるいは、加水分解により、不可避的なアルコール化合物が、少量含まれる程度である。このような場合であっても、混合液中において分散工程を経ることにより、無機粒子の均一な分散が可能であるとともに、表面修飾材料の無機粒子への均一な付着(表面修飾)が達成されることを、本発明者らは見出した。
【0057】
ここで、表面修飾材料が無機粒子に「付着する」とは、表面修飾材料が無機粒子に対し、これらの間の相互作用により接触または結合することをいう。接触としては、例えば物理吸着が挙げられる。また、結合としては、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0058】
これに対し、表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が65質量%未満である場合、上記2成分以外の成分、例えば分散媒が多くなりすぎ、その為、後述する分散工程において表面修飾材料を十分には無機粒子の表面に付着させることができない傾向が強い。その結果、無機粒子表面に水酸基が多く残存してしまい、その後分散によって得られる分散液を、疎水性の高い材料と混合した際に、無機粒子が凝集してしまい、疎水性の高い材料に濁りが生じてしまう。表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量は、65質量%以上であればよいが、好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。必要に応じて、80質量%以上や、85質量%以上や、90質量%以上や、92質量%以上であってもよい。
【0059】
これに対し、表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量が98質量%を超えると、混合液の粘度が高くなりすぎて、後述する分散工程において、表面修飾材料を十分には無機粒子の表面に付着させることができない傾向が強い。表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量は、98質量%以下であればよいが、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。必要に応じて、90質量%以下や、85質量%以下や、80質量%以下や、75質量%以下であってもよい。
【0060】
また、上述したように、混合液中における無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下である。このような範囲により、無機粒子に対する表面修飾材料の量を適切な範囲内とすることができ、無機粒子の表面に均一に表面修飾材料を付着させることができるとともに、混合液の粘度の上昇を抑制することができる。なお、混合液における表面修飾材料の含有量は、16質量%以上88質量%以下であってもよい。
【0061】
一方、混合液中における無機粒子の含有量が10質量%未満である場合、無機粒子に対して表面修飾材料の量が過剰となり、得られる分散液において過剰の表面修飾材料が無機粒子の凝集を誘発する傾向が強い。
混合液中における無機粒子の含有量は、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは23質量%以上、さらに好ましくは26質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。
【0062】
また、無機粒子の含有量が49質量%を超えると、無機粒子に対して表面修飾材料の量が不足し、無機粒子に十分な量の表面修飾材料が付着しない。また、無機粒子の含有量が多くなりすぎる結果、混合液の粘度が大きくなりすぎ、後述する分散工程において、無機粒子を十分に分散できない傾向が強い。混合液中における無機粒子の含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは38質量%以下であり、特に好ましくは36質量%以下である。34質量%以下であっても良い。
【0063】
混合液中における無機粒子の含有量に対する表面修飾材料の含有量の比率は、特に限定されないが、無機粒子の100質量%の量に対して、例えば100質量%以上800質量%以下、好ましくは140質量%以上600質量%以下、より好ましくは180質量%以上400質量%以下であり、特に好ましくは200質量%以上270質量%以下である。これにより、無機粒子に対する表面修飾材料の量を適切な範囲内とすることができ、無機粒子の表面に均一に表面修飾材料を付着させることができる。
【0064】
本実施形態に係る混合液中に含まれる無機粒子としては、特に限定されない。本実施形態において、無機粒子としては、例えば、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、シリカ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化鉄粒子、酸化銅粒子、酸化スズ粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化ニオブ粒子、酸化タングステン粒子、酸化ユーロピウム粒子、酸化イットリウム粒子、酸化モリブデン粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、酸化ゲルマニウム粒子、酸化鉛粒子、酸化ビスマス粒子、および酸化ハフニウム粒子ならびにチタン酸カリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、ニオブ酸カリウム粒子、ニオブ酸リチウム粒子、タングステン酸カルシウム粒子、イットリア安定化ジルコニア粒子、アルミナ安定化ジルコニア粒子、シリカ安定化ジルコニア粒子、カルシア安定化ジルコニア粒子、マグネシア安定化ジルコニア粒子、スカンジア安定化ジルコニア粒子、ハフニア安定化ジルコニア粒子、イッテルビア安定化ジルコニア粒子、セリア安定化ジルコニア粒子、インジア安定化ジルコニア粒子、ストロンチウム安定化ジルコニア粒子、酸化サマリウム安定化ジルコニア粒子、酸化ガドリニウム安定化ジルコニア粒子、アンチモン添加酸化スズ粒子、およびインジウム添加酸化スズ粒子からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上を含む無機酸化物粒子が、好適に用いられる。
混合工程における混合時間や混合温度は任意に選択できるが、例えば室温で混合を行っても良く、材料を一緒にした後に、0~600秒ほど攪拌を行ってもよい。
【0065】
無機粒子は、得られる分散液の用途に応じて、その種類を適宜選択できる。例えば、得られる分散液中の無機粒子を、発光素子の封止部材の材料として用いる場合、透明性や封止樹脂(樹脂成分)との相溶性(親和性)を向上させる観点から、混合液は、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子およびシリカ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機粒子は、封止部材の屈折率を向上させる観点から、屈折率が1.7以上であることが好ましい。このような無機粒子としては、上述したシリカ粒子以外の無機酸化物粒子が挙げられる。封止部材の材料として用いる場合、無機粒子は、より好ましくは酸化ジルコニウム粒子および/または酸化チタン粒子であり、特に好ましくは、酸化ジルコニウム粒子である。
【0066】
なお、無機粒子は、混合液において一次粒子として分散していてもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子として分散していてもよい。通常、無機粒子は、二次粒子として混合液中に分散している。
【0067】
使用する無機粒子の平均一次粒子径は任意に選択できるが、例えば3nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上170nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。無機粒子の平均一次粒子径は、必要に応じて、5~20nmであってもよく、5~25nmであってもよく、50~120nmや、50~150nmであってもよい。平均一次粒子径が上記範囲であることにより、分散液の透明性が高くなる。また、発光素子、例えばLED(light emitting diode)の封止部材の材料として用いる場合には、発光素子(LED)の明るさを向上させることができる。
【0068】
無機粒子の平均一次粒子径の測定は、例えば、透過型電子顕微鏡での観察により行うことができる。まず、透過型電子顕微鏡により、分散液から無機粒子を採取したコロジオン膜を観察し、透過型電子顕微鏡画像を得る。次いで、透過型電子顕微鏡画像中の無機粒子を所定数、例えば100個を選び出す。そして、これらの無機粒子各々の最長の直線分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して求める。
【0069】
ここで無機粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している無機粒子の粒子(一次粒子)の最大長径を所定数測定し、平均一次粒子径とする。
【0070】
また、本工程において、混合液にさらに有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒を混合することにより、表面修飾材料の反応性を制御することが可能となり、無機粒子表面への表面修飾材料の付着の程度を制御することが可能となる。さらに、有機溶媒により、混合液の粘度の調節が可能となる。
【0071】
このような有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族系溶媒、飽和炭化水素系溶媒、不飽和炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、混合工程で表面修飾材料が加水分解された場合には、表面修飾材料由来の化合物、例えばアルコール系溶媒が混合液中に含まれることとなる。
【0072】
混合液中における有機溶媒の含有量は、上述した無機粒子および表面修飾材料の含有量を満足するものであれば特に限定されない。なお、混合液中に有機溶媒が含まれなくてもよいことはいうまでもない。
【0073】
また、混合液には、必要に応じて上述した以外の成分、例えば、分散剤、分散助剤、酸化防止剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤、防腐剤等の一般的な添加剤等が混合されてもよい。
【0074】
(2.3 分散工程)
次に、混合液中において無機粒子を分散して、無機粒子が分散した分散液を得る。無機粒子の分散は公知の分散方法、例えば公知の分散機を用いることにより、行うことができる。分散機としては、例えば、ビーズミル、ボールミル、ホモジナイザー、ディスパー、撹拌機等が好適に用いられる。分散工程は、好ましくは、混合工程で得られた混合物のみを分散処理する工程である。
【0075】
ここで、本工程においては、分散液中における無機粒子の粒径(分散粒径)がほぼ均一となる様に、過剰なエネルギーは付与せず、必要最低限のエネルギーを付与して分散させることが好ましい。
分散時間は、条件に応じて任意に選択できるが、例えば6~18時間であってもよく、好ましくは8~12時間であり、より好ましくは10~11時間である。ただしこれらのみに限定されない。
分散温度は任意に選択できるが、例えば10~50℃であってもよく、好ましくは20~40℃であり、より好ましくは30~40℃である。ただしこれらのみに限定されない。
なお分散工程が、混合工程と異なる点として、分散が一定時間にわたって連続して行われることを意味してよい。
【0076】
以上により、分散液を得ることができる。本実施形態に係る方法を用いて製造された分散液は、無機粒子が均一に分散するとともに無機粒子の表面が表面修飾材料により均一かつ十分に修飾されている。さらには、この後、疎水性の高い材料と分散液とを混合した場合において、無機粒子は、均一に疎水性の高い材料中に分散することができる。この結果、疎水性の高い材料の濁り、例えば白濁が防止される。このため、疎水性の高い材料の色調に影響をほとんど与えることなく、無機粒子の目的とする機能が発揮される。
【0077】
<3. 分散液>
次に、本実施形態に係る分散液について説明する。本実施形態に係る分散液は、無機粒子と少なくとも一部が上記無機粒子に付着した1種以上の表面修飾材料とを含む。上記無機粒子の含有量が10質量%以上49質量%以下であり、上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量が65質量%以上98質量%以下である。
なお、上記表面修飾材料と上記無機粒子との合計の含有量は、固形分により評価することもできる。なお固形分は、後に述べる方法で測定することができる。
【0078】
本実施形態においては、分散液は、上述した本実施形態に係る分散液の製造方法により製造される。したがって、無機粒子が均一に分散するとともに、無機粒子の表面が表面修飾材料により均一かつ十分に修飾されている。さらには、疎水性の高い材料と得られた分散液とを混合した場合において、無機粒子は、均一に疎水性の高い材料中に分散することができ、疎水性材料の白濁が防止される。この結果、疎水性の高い材料の色調にほとんど影響を与えることなく、無機粒子の目的とする機能が発揮される。
【0079】
また、本実施形態に係る分散液は、分散しにくい無機粒子、例えば微粒の無機粒子の場合に、上述したような効果を、より顕著に得ることができる。
【0080】
得られた分散液中の無機粒子の体積基準50%粒子径D50は、特に限定されないが、例えば30nm以上400nm以下、好ましくは40nm以上300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下である。必要に応じて、30nm以上80nm以下や、30nm以上100nm以下や、80nm以上180nm以下などであってもよい。一般に、上記のような範囲の粒径は、高い比表面積に起因して無機粒子同士が凝集しやすい。しかしながら、本実施形態に係る分散液は、無機粒子に表面修飾材料が均一かつ十分に付着している。このため、無機粒子の安定した分散が可能である。また、分散液を疎水性の高い材料と混合した際にも、無機粒子の凝集が抑制され、安定して疎水性の高い材料中で分散することができる。
【0081】
さらに、無機粒子の体積基準90%粒子径をD90、無機粒子の体積基準50%粒子径をD50をとした際の、D90/D50は、特に限定されないが、例えば1.0以上3.0以下、好ましくは1.0以上2.5以下、より好ましくは1.0以上2.3以下である。必要に応じて、1.4以上2.3以下や、1.6以上2.1以下や、1.8以上2.0以下であってもよい。D90/D50は、無機粒子の粒度分布の形状の指標であり、無機粒子の粒子径の均一性の指標の1つとなる。D90/D50が上述したような範囲内にあることにより、分散液中の無機粒子の粒子径が比較的均一となる。また、本実施形態に係る分散液のこのような均一な粒子径を有する無機粒子は、疎水性の高い材料中においても比較的安定して、均一に分散することができる。このようなD90/D50の範囲は、上述した本実施形態に係る分散液の製造方法により、比較的容易に達成可能である。
【0082】
なお、無機粒子のD50およびD90は、それぞれ、動的光散乱法により得られる散乱強度分布の累積百分率が50%、90%のときの無機粒子の粒子径D50、D90であることができる。D10,D50およびD90は、動的光散乱式の粒度分布計(例えば、HORIBA社製、型番:SZ-100SP)により測定することができる。測定は、固形分をアルコール化合物で5質量%に調整した分散液を対象として光路長10mm×10mmの石英セルを用いて行うことができる。
なお本明細書において「固形分」とは、分散液において揮発可能な成分を除去した際の残留物をいう。例えば、分散液1.2gを磁性るつぼに入れて、ホットプレートで、100℃で1時間加熱した時に、揮発せずに残留する成分(無機粒子や表面修飾材料等)を固形分とすることができる。
【0083】
また、無機粒子のD50、D90は、無機粒子が一次粒子または二次粒子のいずれの状態で分散しているかに関わらず、分散している状態の無機粒子の径に基づいて測定、算出される。また、本実施形態において、無機粒子のD50、D90は、表面修飾材料が付着した無機粒子のD50、D90として測定されてもよい。分散液中には、表面修飾材料が付着した無機粒子と、表面修飾材料が付着していない無機粒子とが存在し得る。このため、通常、無機粒子のD50、D90は、これらの混合状態における値として測定され得る。
【0084】
無機粒子の平均一次粒子径は、例えば3nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上170nm以下、より好ましくは10nm以上100nm以下である。平均一次粒子径が上記範囲であることにより、分散液の透明性が高くなる。また、発光素子、例えばLEDの封止部材の材料として用いる場合には、発光素子(LED)の明るさを向上させることができる。
【0085】
なお、分散液中における無機粒子、表面修飾材料の種類、含有量や、他の成分については、上述した混合液と同様であるので説明を省略する。
ただし、表面修飾材料の無機粒子への付着に際し、加水分解等の分解反応が生じる場合には、分散液中における表面修飾材料の含有量が、混合液中における表面修飾材料の含有量と比較して小さくなり得る。したがって、分散液中の表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量についても、混合液中における表面修飾材料と無機粒子との合計の含有量と比較して小さくなり得る。また、分解反応によって生じる化合物、例えばアルコール系化合物が、分散液中において、混合液の場合と比較して増加しうる。
【0086】
上述したように、本実施形態に係る分散液を、疎水性の高い材料と混合した場合、無機粒子が疎水性の高い材料中に均一に分散可能であり、疎水性の高い材料の白濁を抑制することが可能である。疎水性の高い材料とは、親水性の低い材料を意味してもよい。疎水性の高い材料の例としては、任意に選択できるが、例えば、炭素や疎水性基を多く含む、有機溶媒、樹脂材料、油脂等が挙げられる。前記有機溶媒の例としては、芳香族類、飽和炭化水素類、不飽和炭化水素類が、好ましく挙げられる。1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。疎水性の高い材料のより具体的な例としては、例えば、シリコーン樹脂、例えば、ジメチルシリコーン樹脂など、メチル基を多く含むシリコーン等が挙げられる。さらに具体的な前記材料の例を挙げれば、メチルフェニルシリコーン、トルエン、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン、ベンゼン、エチルベンゼン、1-フェニルプロパン、イソプロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、o-、m-またはp-キシレン、2-、3-または4-エチルトルエンなどが挙げられる。ただし、これらのみに限定されない。
【0087】
また、本実施形態に係る分散液を用いた場合、疎水性の高い材料中において、微粒の無機粒子の均一な分散を達成することができる。したがって、本実施形態に係る分散液は、疎水性の高い材料中に微粒の無機粒子を均一に分散させることが求められる部材、例えば発光素子の封止部材等の光学部材の材料として、適している。よって、本実施形態に係る分散液は、光学部材用分散液、特に、発光素子の封止部材用分散液に、好適に使用されることができる。
【実施例
【0088】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、あくまでも本発明の一例であって、本発明を限定するものではない。
【0089】
[実施例1]
(1. 分散液の作製)
(i)加水分解工程
表面修飾材料としてのメチルトリメトキシシラン(信越工業化学社製、製品名KBM-13)90.78質量部と、水9.21質量部と、塩酸(1N)0.01質量部と用意した。これらを、容器に添加して混合し、加水分解液を得た。次いでこの加水分解液を、60℃で30分撹拌し、メチルトリメトキシシランの加水分解処理を行った。なお、加水分解液に添加したメチルトリエトキシシランと水とはほぼ等モルである。
【0090】
(ii)混合工程
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)30質量部、上記加水分解液70質量部を混合して、混合液を得た。混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は63.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、93.5質量%であった。
【0091】
(iii)分散工程
この混合液をビーズミルで10時間、室温で分散処理した。この後、ビーズを除去し、実施例1に係る分散液を得た。
分散液の固形分(100℃で1時間加熱した後の残留成分)を測定した結果、固形分の量は70質量%であった。
【0092】
(2. 評価)
(2.1 分散液の粒度分布の評価)
得られた分散液の一部を採取し、固形分が5質量%になるようにメタノールで調整した分散液のD10とD50とD90を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ-100SP)を用いて測定した。その結果、D10は15nmで、D50は65nmで、D90は108nmであった。なお、分散液に含まれる粒子は、表面修飾材料を多めに用いて処理されたことから、基本的には、表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子のみであると考えられる。このことから、測定されたD10、D50、D90は、表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子のD10、D50およびD90であると考えられた。また、D90/D50は、1.66であった。
【0093】
(2.2 疎水性樹脂との混合安定性の評価)
以下の方法で、疎水性樹脂との混合安定性を評価した。
(i)シリコーン処理
まず評価用分散液を用意した。なおこの評価用分散液は、下記の(ii)から(v)の各評価においては、必要に応じて更に追加の処理を経て、最終分散液又は最終組成物となって各評価に使用された。
実施例1に係る分散液39.0質量部と、メトキシ基含有フェニルシリコーンレジン(信越化学工業社製、KR217)8.6質量部と、トルエンを52.4質量部と、を添加し、110℃で18時間混合し、酸化ジルコニウム粒子の表面がシリコーンで処理された評価用分散液を得た。
なお上記配合においては、得られた評価用分散液の固形分を測定した結果が70質量%であったので、評価用分散液における固形分が30質量%となるように、トルエンを添加した。
【0094】
(ii)分散液の評価(無機粒子の粒子径の均一性の確認)
上記の得られた評価用分散液の一部を採取し、さらにトルエンを加えて固形分を5質量%に調整した、分散液(最終分散液)を用意した。この分散液のD10とD50とD90を、粒度分布計(HORIBA社製、型番:SZ-100SP)を用いて測定した。その結果、D10は54nmで、D50は108nmで、D90は213nmであった。なお、評価用分散液に含まれる粒子は、基本的に表面修飾材料が付着した酸化ジルコニウム粒子のみと考えられる。よって、測定されたD10、D50、D90は、この分散液中の酸化ジルコニウム粒子のD10、D50およびD90であると考えられた。
【0095】
(iii)疎水性樹脂との混合評価(凝集抑制の確認)
得られた評価用分散液5gと、メチルフェニルシリコーン(信越化学工業社製、KER-2500-B)3.5gと、を混合した。
次いで、この混合液をエバポレータによりトルエンを除去し、後述のLEDを封止するための組成物(最終組成物)を得た。
得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0096】
(iv)組成物の安定性の評価(安定性の確認)
組成物(最終組成物)の粘度を、レオメーター(レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、作製直後の粘度は、10Pa・sであった。
この組成物を室温(25℃)で保管し、1ヶ月後の粘度を測定した。その結果、組成物の粘度は50Pa・sであり、増粘はしたものの、実用に耐えられるレベルであった。
【0097】
(v)LEDパッケージの作製(発光素子への使用確認)
得られた組成物(最終組成物)1質量部に、メチルフェニルシリコーン樹脂(信越化学工業社製「KER-2500-A/B」を14質量部加えることで、組成物中に表面修飾酸化ジルコニウム粒子が2質量%となるように調整し、混合した。得られたこの組成物1質量部に、蛍光体粒子(イットリウム・アルミニウム・ガーネット:YAG)を0.38質量部を混合した。得られた組成物(表面修飾酸化ジルコニウム粒子と樹脂の合計量:蛍光体粒子=100:38)を、LEDリードフレーム内に、300μmの厚みで充填した。その後、室温で3時間保持した。次いで、ゆっくりと組成物を加熱硬化させて、封止部材を形成し、白色LEDパッケージを作製した。
【0098】
得られた白色LEDパッケージについて、全光束測定システム(大塚電子社製)にて、LEDパッケージに電圧3V、電流150mAを印加し測光することにより、明るさを測定した。この結果、この白色LEDパッケージの明るさは、73.2lmであった。
【0099】
[実施例2]
粒径の異なる酸化ジルコニウム粒子を用いた以外は、実施例1と同様に評価を行った。
(1. 分散液の作製)
平均一次粒子径が12nmの酸化ジルコニウム粒子に代えて、平均一次粒子径が90nmの酸化ジルコニウム粒子(住友大阪セメント社製)を用いた。これ以外は、実施例1と同様にして、加水分解工程、混合工程、及び分散工程を行い、実施例2に係る分散液を得た。混合工程において得られた混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は63.5質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、93.5質量%であった。
分散液の固形分(100℃で1時間)を測定した結果、70質量%であった。
【0100】
(2. 評価)
(2.1 分散液の粒度分布の評価)
実施例1と同様にして、分散液中の無機粒子のD10とD50とD90を測定した。その結果、D10は54nmで、D50は120nmで、D90は223nmであった。D90/D50は、1.86であった。
【0101】
(2.2 疎水性樹脂との混合安定性の評価)
(i)シリコーン処理
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、実施例2に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、シリコーン処理を行い、固形分が30質量%の評価用分散液を得た。
(ii)分散液の評価
この評価用分散液を実施例1と同様に評価した結果、D10は95nmで、D50は184nmで、D90は284nmであった。
【0102】
(iii)疎水性樹脂との混合評価
得られた評価用分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去して組成物を得た。得られた組成物の外観を目視で観察した結果、透明な組成物であった。
【0103】
(iv)組成物の安定性の評価
組成物の粘度を、レオメーター(レオストレスRS-6000、HAAKE社製)を用い、25℃、剪断速度1(1/s)の条件で測定した。
その結果、作製直後の粘度は、10Pa・sであった。
この組成物を室温(25℃)で保管し、1ヶ月後の粘度を測定した。その結果、組成物の粘度は40Pa・sであり、増粘はしたものの、実用に耐えられるレベルであった。
【0104】
[比較例1]
加水分解液にイソプロピルアルコールを高い比率で加えた以外は、実施例1と同様に評価を行った。
(1. 分散液の作製)
混合工程において、上記加水分解液70質量部に代えて、上記加水分解液20質量部と、イソプロピルアルコール50質量部とを用いた。これ以外は、実施例1と同様にして、加水分解工程、混合工程、及び分散工程を行い、比較例1に係る分散液(固形分30質量%)を得た。混合工程において得られた混合液中の酸化ジルコニウム粒子の含有量は30質量%、メチルトリメトキシシランの含有量は18.2質量%、酸化ジルコニウム粒子とメチルトリメトキシシランの合計の含有量は、48.2質量%であった。
なお、第1の分散液の固形分(100℃で1時間)を測定した結果、38質量%であった。
【0105】
(2. 評価)
(2.1 分散液の粒度分布の評価)
実施例1と同様にして、分散液中の無機粒子のD10とD50とD90を測定した。その結果、D10は13nmで、D50は62nmで、D90は95nmであった。D90/D50は、1.53であった。
【0106】
(2.2 疎水性樹脂との混合安定性の評価)
(i)シリコーン処理
実施例1に係る分散液を用いる替わりに、比較例1に係る分散液を用いた以外は実施例1と同様にして、シリコーン処理を行い、固形分が30質量%の評価用分散液を得た。
(ii)分散液の評価
この評価用分散液を実施例1と同様に評価した結果、D10は52nmで、D50は105nmで、D90は195nmであった。
【0107】
(iii)疎水性樹脂との混合評価
得られた評価用分散液を、実施例1と同様に、メチルフェニルシリコーンと混合し、トルエンを除去して組成物を得た。
トルエンを除去した結果、得られた組成物は白濁・ゲル化した。
(iv)組成物の安定性の評価
組成物が白濁及びゲル化した為、粘度の測定は行わなかった。
(v)LEDパッケージの作製
白濁・ゲル化した組成物が得られ、LEDを封止できるような組成物は得られなかった。このため、LEDパッケージは作製できなかった。
【0108】
なお、比較例1と実施例1の分散液とを比較すると、酸化ジルコニウム粒子を高濃度の表面修飾材料中で分散処理した為、実施例1は比較例1に比べて、得られる分散液の粒度分布(D90/D50)が大きく、若干劣っていた。これは、実施例1の分散液が表面処理材料を多く含むため、粘度が高い状態であり、分散しにくい条件であるためと推測される。
【0109】
しかしながら、酸化ジルコニウム粒子を高濃度の表面修飾材料中で分散処理した実施例1、2に係る分散液は、疎水性の高い樹脂に対して、白濁することなく、透明な組成物を得ることが可能であった。これに対し、比較例1に係る分散液を疎水性の樹脂に混合したところ、白濁し、透明な組成物を得ることができなかった。これらは、従来知られていなかった、驚くべき結果である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
疎水性の高い材料と混合した場合であっても凝集が抑制され、白濁等の濁りの発生が防止された無機粒子を得るための無機粒子の表面修飾方法、分散液の製造方法および分散液を提供する。