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特許7414076遮光用紫外線硬化性組成物、遮光膜、及び、遮光膜を有する物品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】遮光用紫外線硬化性組成物、遮光膜、及び、遮光膜を有する物品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20240109BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240109BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/22
G02B5/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021561132
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046902
(87)【国際公開番号】W WO2021106221
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】古園 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】高原 直己
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0021128(KR,A)
【文献】国際公開第2015/159370(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/110939(WO,A1)
【文献】特開2018-141968(JP,A)
【文献】特開2018-155878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
G02B 5/22
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性モノマと、
ラクタム系顔料を含む有機黒色顔料と、
粒子状の光散乱材と、
を含み、
前記光散乱材の平均粒径が0.1~1.0μmであり、前記光散乱材がシリコーン粒子を含む
遮光用紫外線硬化性組成物。
【請求項2】
前記光散乱材の含有量が、当該遮光用紫外線硬化性組成物の質量を基準として0.5~10質量%である、請求項に記載の遮光用紫外線硬化性組成物。
【請求項3】
当該遮光用紫外線硬化性組成物の膜が硬化することにより形成される硬化膜のOD値が、1.5以上であり、
前記OD値が、厚み130μm±5μmの前記硬化膜の、波長400~700nmの光に対する平均透過率から算出される値である、
請求項1又は2に記載の遮光用紫外線硬化性組成物。
【請求項4】
光重合開始剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の遮光用紫外線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の遮光用紫外線硬化性組成物の硬化物を含む、遮光膜。
【請求項6】
基材上に請求項1~のいずれか一項に記載の遮光用紫外線硬化性組成物を含む樹脂膜を形成することと、
前記樹脂膜に紫外線を照射することによって、前記遮光用紫外線硬化性組成物の硬化物を含む遮光膜を形成することと、
を含む、遮光膜を有する物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光用紫外線硬化性組成物、遮光膜、及び、遮光膜を有する物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の各種表示装置に設けられる遮光膜は、カーボンブラック等の黒色顔料を含む熱硬化型又は紫外線硬化型のインクを用いて形成されることがある(例えば、特許文献1)。紫外線硬化型のインクは、遮光膜の周辺部材又は印刷装置の損傷抑制、及び、印刷精度等の点で、熱硬化型のインクと比較して有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-37234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カーボンブラックを含む遮光膜は高い遮光性を有するものの、カーボンブラックが紫外線を実質的に透過しないことから、カーボンブラックを含む紫外線硬化性組成物(又はインク)は十分な紫外線硬化性を有し難い。紫外線をある程度透過する有機黒色顔料を用いることにより、紫外線硬化性の改善が期待されるが、その場合、遮光膜の遮光性が不足する傾向がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、十分な紫外線硬化性を有するとともに、高い遮光性を有する遮光膜を形成することができる、遮光用紫外線硬化性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、光重合性モノマと、有機黒色顔料と、粒子状の光散乱材とを含む、遮光用紫外線硬化性組成物を提供する。
【0007】
本発明の別の一側面は、上記遮光用紫外線硬化性組成物の硬化物を含む、遮光膜を提供する。
【0008】
本発明の更に別の一側面は、基材上に上記遮光用紫外線硬化性組成物を含む樹脂膜を形成することと、前記樹脂膜に紫外線を照射することによって、上記遮光用紫外線硬化性組成物の硬化物を含む遮光膜を形成することと、を含む、遮光膜を有する物品を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、十分な紫外線硬化性を有するとともに、高い遮光性を有する遮光膜を形成することができる、遮光用紫外線硬化性組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「(メタ)アクリロイル」はメタクリロイル又はアクリロイルを意味する。これはその他の類似の表現についても同様である。
【0011】
一実施形態に係る遮光用紫外線硬化性組成物は、光重合性モノマと、有機黒色顔料と、粒子状の光散乱材とを含む。この紫外線硬化性組成物は、遮光膜を形成するために用いることができる。本実施形態に係る紫外線硬化性組成物は、遮光膜を印刷法によって形成するためのインク(例えばインクジェットインク)であることができる。
【0012】
光重合性モノマは、光重合性の官能基を1以上有する1種以上の化合物から構成される。光重合性の官能基は、エチレン性不飽和基であってもよい。光重合性モノマは、1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であってもよい。重合性モノマとして用いられる(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はこれらから選ばれる2種以上の組み合わせであってもよく、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミドが有するアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、アリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、グリシジル基、及びアミノ基が挙げられる。
【0013】
光重合性モノマは、室温(25℃)において液状であってもよい。液状の光重合性モノマを含む紫外線硬化性組成物は、無溶剤であっても、印刷に適した流動性を有し易い。光重合性モノマは、1個の(メタ)アクリロイル基を有する単官能アクリルモノマ、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリルモノマ、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0014】
単官能アクリルモノマは、特に限定されないが、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1~18のアルキル基を有する(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレート;並びに、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、フェニルノルボルニル(メタ)アクリレート、シアノノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メンチル(メタ)アクリレート、フェンチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ-8-イル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ-4-メチル(メタ)アクリレート、及びシクロデシル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0015】
硬化性組成物が、液状の光重合性モノマと、ポリマ及び/又はオリゴマとを含んでいてもよい。ポリマ及びオリゴマが、光重合性基を有していてもよい。本明細書において、光重合性基を有するポリマ及びオリゴマは、光重合性モノマとみなされる。
【0016】
光重合性モノマの含有量は、紫外線硬化性組成物の質量を基準として、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上であってもよく、95質量%以下であってもよい。ここでの含有量は、2種以上の化合物が光重合性モノマとして用いられる場合、それらの合計の含有量を意味する。
【0017】
遮光用紫外線硬化性組成物は、光重合開始剤を更に含んでいてもよい。光重合開始剤は、紫外線を吸収することにより、光重合性モノマの重合反応を開始させる化合物である。光重合開始剤は、例えば光ラジカル重合開始剤、又は光カチオン重合開始剤であることができ、特に光ラジカル重合開始剤であってもよい。紫外線硬化性の観点から、光重合開始剤は、吸収スペクトルにおいて300~400nmの範囲に極大値を示す化合物を含んでいてもよい。光重合性モノマと、有機黒色顔料と、粒子状の光散乱材とを含む組成物を、光重合開始剤と混合して遮光用紫外線硬化性組成物を製造するために用いてもよい。
【0018】
光ラジカル重合開始剤は、特に制限されないが、例えば、α-開裂型化合物、又は水素引き抜き型化合物であってもよく、2分子系ラジカル重合開始剤であってもよい。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロル-2-メチルアントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等の芳香族ケトン化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、及びエチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジル;2,2-ジエトキシアセトフェノン;ベンジルジメチルケタール;β-(アクリジン-9-イル)(メタ)アクリル酸のエステル化合物;9-フェニルアクリジン、9-ピリジルアクリジン、及び1,7-ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モリホリノフェニル)-1-ブタノン;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド;並びにオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性組成物の質量を基準として、例えば0.1~10質量%であってもよい。ここでの含有量は、2種以上の化合物が光重合開始剤として用いられる場合、それらの合計の含有量を意味する。
【0020】
有機黒色顔料は、有機色素を含む黒色粒子であり、黒色顔料として通常用いられているものから選択することができる。有機黒色顔料は、例えば、ペリレン系顔料(ペリレンブラック)、ラクタム系顔料(ラクタムブラック)、アニリンブラック、シアニンブラック、リグニンブラック、及びRGBブラックからなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0021】
紫外線硬化性組成物中に分散している有機黒色顔料の平均粒径(分散粒径)は、特に制限されないが、例えば0.01~1.0μmであってもよい。
【0022】
有機黒色顔料の含有量は、遮光膜の適切な遮光性の観点から、紫外線硬化性組成物の質量を基準として、0.5質量%以上、又は1.0質量%以上であってもよく、50質量%以下であってもよい。ここでの含有量は、2種以上の有機黒色顔料が用いられる場合、それらの合計の含有量を意味する。
【0023】
光散乱材は、複数の粒子から構成される。通常、これら複数の粒子が紫外線硬化性組成物中に分散している。光散乱材の平均粒径は、0.05μm以上であってもよく、5.0μm以下、4.0μm以下、3.0μm以下、2.0μm以下、又は1.0μm以下であってもよい。遮光膜の適切な遮光性の観点から、光散乱材の平均粒径が0.1~1.0μmであってもよい。光散乱材の平均粒径は、レーザ回折・散乱法によって得られる体積基準の粒度分布から得られる値であってもよい。
【0024】
光散乱材は、例えば、シリコーン粒子、シリカ粒子又はこれらの組み合わせを含んでいてもよい。光散乱材が、シリコーン粒子と、シリカ粒子、アルミナ粒子、及び酸化チタン粒子から選ばれるその他の粒子とを含んでいてもよい。光散乱材のうち一部又は全部が中空粒子であってもよい。シリコーン粒子はポリシロキサン鎖を有するシリコーンを含む粒子であり、シリコーンは、ポリシロキサン鎖が架橋された構造を有していてもよく、ポリオルガノシルセスキオキサンであってもよい。シリコーン粒子が、ポリシロキサン鎖を有するシリコーンを含む核粒子と、核粒子の表面上に形成された、ポリオルガノシルセスキオキサンを含む膜とを有する複合粒子であってもよい。
【0025】
光散乱材の含有量は、紫外線硬化性組成物の質量を基準として0.5質量%以上又は1.0質量%以上であってもよく、10質量%以下、9.0質量%以下、8.0質量%以下、7.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、又は4.0質量%以下であってもよい。ここでの含有量は、2種以上の光散乱材が用いられる場合、それらの合計の含有量を意味する。
【0026】
紫外線硬化性組成物は、溶剤を実質的に含まない無溶剤の組成物であってもよい。より具体的には、溶剤の含有量が、紫外線硬化性組成物の質量を基準として1.0質量%以下であってもよく、0質量%であってもよい。溶剤を実質的に含まない組成物(インク)は、例えば、遮光膜周辺の部材への損傷防止、印刷装置の損傷防止、及び、高精度な遮光膜の形成の点で有利である。
【0027】
紫外線硬化性組成物の膜が硬化することにより形成される硬化膜は、高い遮光性を有する。例えば、形成される硬化膜のOD値(光学濃度)が、1.5以上、2.0以上、又は2.5以上であってもよい。ここでのOD値は、厚み130μm±5μmの硬化膜の、波長400~700nmの光に対する平均透過率から算出される値である。
【0028】
以上例示した実施形態に係る紫外線硬化性組成物を用いて、遮光膜を有する各種の物品を製造することができる。遮光膜を有する物品を製造する方法の一実施形態は、基材上に紫外線硬化性組成物を含む樹脂膜を形成することと、樹脂膜に紫外線を照射することにより、紫外線硬化性組成物の硬化物である遮光膜を形成することとを含む。紫外線硬化性組成物をインクとして用いた印刷(例えばインクジェット印刷)によって、樹脂膜を形成してもよい。樹脂膜を形成している紫外線硬化性組成物を硬化するための紫外線の波長は、300~400nmであってもよい。樹脂膜(遮光膜)の厚みは、例えば20~1000μmであってもよい。
【0029】
遮光膜を有する物品の例としては、画像表示装置、光学式センサー、及びレンズが挙げられる。
【実施例
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0031】
1.原料
1-1.黒色顔料
有機黒色顔料
・ラクタム系顔料(分散粒径:0.17μm)
・ペリレン系顔料(分散粒径:0.17μm)
これらラクタム系顔料及びペリレン系顔料の透過スペクトルは、波長300~400nmの範囲において、透過率10%を超える部分を含む。
その他顔料
・カーボンブラック(分散粒径:0.15μm)
【0032】
1-2.光散乱材
・シリコーン粒子(信越化学工業製、製品名:X-52-854、平均粒径:0.7μm)
・シリコーン粒子(信越化学工業製、製品名:KMP-706、平均粒径:2.0μm)
・シリコーン複合粒子(信越化学工業製、製品名:X-52-7030、平均粒径:0.8μm)
・シリカ粒子(アドマテックス製、製品名:S0-C1、平均粒径:0.3μm)
・シリカ粒子(アドマテックス製、製品名:S0-C2、平均粒径:0.5μm)
【0033】
1-3.光重合性モノマ
・4-ヒドロキシブチルアクリレート(4-HBA)
1-4.光ラジカル重合開始剤
・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、製品名:Irgacure-184)
・4-メチルベンゾフェノン(株式会社ソート製、製品名:SB-PI712)
【0034】
2.紫外線硬化性組成物(インク)
実施例1
ラクタム系顔料3.0質量部を4-ヒドロキシブチルアクリレート91.7質量部に分散させて、ラクタム系顔料の分散粒径が0.17μmである分散液を得た。この分散液に、シリコーン粒子(X-52-854)2.0質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure-184)3.0質量部、及び4-メチルベンゾフェノン(SB-PI712)0.3質量部を加え、混合液を自公転ミキサ(株式会社シンキー、製品名:ARE-250)を用いて回転数2,000rpmにて5分間攪拌することで、紫外線硬化性組成物を得た。
【0035】
実施例2~8及び比較例1~3
各材料及び配合量を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、紫外線硬化性組成物を調製した。
【0036】
3.積層フィルムの作製
実施例及び比較例の各紫外線硬化性組成物を、離型処理された表面を有する厚み75μmの支持フィルム(ポリエチレンテレフタラートフィルム、藤森工業製、製品名:75E-0010HTA)上に、アプリケーターを用いて塗工した。形成された樹脂膜に、離型処理された厚み50μmの保護フィルム(ポリエチレンテレフタラートフィルム、藤森工業製、製品名:50E-0010BD)を被せた。保護フィルム側から、紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、メタルハライドランプ)を用いて紫外線を照射(3,000mJ/cm)することによって樹脂膜を硬化させ、紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物である遮光膜(厚み約130μm)を有する積層フィルムを得た。
【0037】
4.評価
4-1.反応率(紫外線硬化性)
実施例及び比較例の各紫外線硬化性組成物を、ガラス板上に1g程度滴下して、UV照射前の測定サンプルとしての樹脂膜を形成した。形成された樹脂膜の赤外線吸収スペクトルを、フーリエ変換赤外線分光光度計(島津製作所製、製品名:IR Spirit(QATR-Sユニット))を用いて、常温(25℃)の環境下、分解能:2cm-1、積算:64回の条件のATR法によって測定した。
【0038】
遮光膜を有する積層フィルムから、10mm×10mmのサイズを有する測定サンプルを切り出し、そこから保護フィルムを剥離した。露出した遮光膜をガラス板に貼合し、次いで、遮光膜から支持フィルムを剥離した。露出した遮光膜(UV照射後の測定サンプル)の赤外線吸収スペクトルを、上記と同様の方法で測定した。
【0039】
得られた各赤外線吸収スペクトルにおいて、810cm-1近傍に極大を示すアクリロイル基に帰属する吸収ピークの強度(A)と、1720cm-1近傍に極大を示すカルボニル基に帰属する吸収ピークの強度(B)とを求め、下記式により、アクリロイル基吸収ピーク比を算出した。
アクリロイル基吸収ピーク比=(A)/(B)
【0040】
UV照射前の測定サンプルの赤外線吸収スペクトルから得られたアクリロイル基吸収ピーク比α、及び、UV照射後の測定サンプルの赤外線吸収スペクトルから得られたアクリロイル基吸収ピーク比βから、下記式により、アクリロイル基の反応率を算出した。この反応率の値が大きいことは、紫外線照射によって効率的に硬化が進行したことを意味する。
反応率(%)=(β/α)×100
【0041】
4-2.OD値(遮光性)
40mm×50mmのサイズを有する遮光膜の透過率を、光源としてD65が装着されたヘイズメーター(日本電色工業製、製品名:SH7000)を用いて、400nmから700nmまで、5nmごとの各波長において測定した。各波長における透過率の平均値Cから、下記式によってOD値を算出した。OD値が大きいことは、遮光膜の可視光に対する遮蔽性(遮光性)が高いことを意味する。
OD値=-Log10(C/100)
【0042】
【表1】
【0043】
各実施例の紫外線硬化性組成物は、紫外線照射によって良好な硬化性で硬化するとともに、十分に高い遮光性を有する遮光膜を形成した。有機黒色顔料を含み、光散乱材を含まない比較例1の紫外線硬化性組成物から形成された遮光膜は、遮光性が低かった。カーボンブラックを含む比較例2の紫外線硬化性組成物は、高い遮光性を有する遮光膜を形成したものの、硬化性の点で十分でなかった。