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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】吸水防止剤及び板紙
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20240109BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240109BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240109BHJP
   D21H 21/16 20060101ALI20240109BHJP
   D21H 19/32 20060101ALI20240109BHJP
   C08G 77/26 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C09D183/08
C09D5/02
C09D7/63
D21H21/16
D21H19/32
C08G77/26
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021567383
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047361
(87)【国際公開番号】W WO2021132057
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019233038
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱嶋 優太
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172491(JP,A)
【文献】特開2003-252994(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125348(WO,A1)
【文献】特開2003-003378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
D21H
C08G 77/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(1)
【化1】
[式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換一価炭化水素基であり、R2は互いに独立に、一般式(2)
-R4-(NH-R5-)pNH2 (2)
(R4及びR5は互いに独立に、炭素数1~6の二価有機基であり、pは0又は1である。)
で表される基であり、R3は互いに独立に、R1及びR2の選択肢から選ばれる基、又は-OH、-OCH3及び-OC25から選ばれる基であり、a,b,c,d及びeは、2≦a≦10、10≦b≦1,000、0≦c≦50、0≦d≦5、0≦e≦5の範囲を満たす数である。但し、c=0の場合R3はR2である。]
で表され、25℃における粘度が800~100,000mPa・sであり、アミノ基当量が500~20,000g/molであるアミノ変性シリコーンであって、
オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量が0.1質量%以下、
デカメチルシクロペンタシロキサンの含有量が0.1質量%以下、
ドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量が0.1質量%以下
であるアミノ変性シリコーン:100質量部、
(B)ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(但し、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを除く。):5~100質量部、及び
(C)水:10~2,000質量部
を含有するアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物からなる吸水防止剤(但し、ポリエーテル変性シリコーン又はカルボン酸型両性界面活性剤を含有するものを除く。)
【請求項2】
(A)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサンの含有量が0.03質量%以下である請求項1記載の吸水防止剤。
【請求項3】
(A)成分中の
デカメチルシクロペンタシロキサンの含有量が0.05質量%以下、
ドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量が0.06質量%以下である請求項1又は2記載の吸水防止剤。
【請求項4】
(B)成分が、ノニオン界面活性剤を含む界面活性剤である請求項1~3のいずれか1項記載の吸水防止剤。
【請求項5】
(B)ノニオン界面活性剤が、HLB値15.0以下のノニオン系界面活性剤である請求項4記載の吸水防止剤。
【請求項6】
(B)成分が、カチオン界面活性剤を含まない界面活性剤である請求項1~5のいずれか1項記載の吸水防止剤。
【請求項7】
(B)成分が、ノニオン界面活性剤のみである請求項1~3のいずれか1項記載の吸水防止剤。
【請求項8】
紙用吸水防止剤である請求項1~のいずれか1項記載の吸水防止剤。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載の吸水防止剤を、板紙基材の少なくとも一方の面に塗布した後、加熱処理してなる吸水防止処理された板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ変性シリコーンエマルジョンからなる吸水防止剤及びこれを用いた板紙に関する。詳細には、紙用撥水剤として効果が高く、かつ低環境負荷である吸水防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築材料として石こうボードが大量に使用されている。周知の如く、石こうボードは、水和硬化した石こう板の両面に多層抄きした板紙を強固に結合固着させた板状体であり、この場合に使用する板紙には、板紙自身の強度が大きいこと、耐吸湿性であること、湿潤時の寸法変化が小さいこと、できるだけ通気性が大きいこと等の諸特性が要求されている。
【0003】
これらの諸特性の中でも、特に耐吸湿性及び湿潤時の寸法安定性は重要であり、従来耐吸湿性を向上すること及び湿潤時の寸法変化を抑えることを目的として、板紙の表面に吸水防止性を付与するための処理が行われてきた。この場合の処理方法としては、シリコーン樹脂による処理が通気性を損なうことが少ないことと相まって、広く行われている。この処理におけるシリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーンオイルをはじめとして、種々の変性シリコーンオイルが有効であるとされ、これらを用いた多くの乳化物が好適な表面処理剤として提案されている。
【0004】
しかしながら、例えば、米国特許第3,389,042号に開示されているエポキシ変性シリコーンオイルを用いる方法によっては、充分な吸水防止効果を得ることができず、特公昭56-47994号公報に開示されたメルカプト基含有シリコーンオイルを主剤として使用した場合には、高い吸水防止効果を得ることができるものの、メルカプト基特有の異臭が極めて強いため、作業環境上好ましくないという欠点があった。
【0005】
特公平08-025255号公報には、特定の粘度とアミン当量を有するアミノ変性シリコーンを利用することで、撥水効果を得る技術が提案されている。しかしながら、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェノルエーテルを使用しており、希釈剤としてオクタメチルシクロテトラシロキサンを使用している。ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルは、EUのREACH規制における高懸念物質に挙げられている。また、近年、環状低分子シロキサン(オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン)が環境負荷物質として懸念されるようになり、各国で規制が強化されつつあることから、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量を抑制した製品が求められるようになっている。上記背景から、高い吸水防止性の付与と低環境負荷との両立が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3,389,042号
【文献】特公昭56-47994号公報
【文献】特公平08-025255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、吸水防止付与効果に優れ、希釈安定性が良好で、かつ環境負荷物質の含有量が低減された吸水防止剤を提供することを目的とする。なお、「希釈安定性が良好」とは、後述する実施例の評価方法に記載されたように、吸水防止剤を一定量の水で希釈し、保存した後の安定性をいう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、下記(A)~(C)成分を含有するアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物が、優れた吸水防止性を付与する共に、希釈安定性が良好で、環境負荷物質の含有量を低減できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
従って、本発明は下記吸水防止剤及び板紙を提供する。
1.(A)下記平均組成式(1)
【化1】
[式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換一価炭化水素基であり、R2は互いに独立に、一般式(2)
-R4-(NH-R5-)pNH2 (2)
(R4及びR5は互いに独立に、炭素数1~6の二価有機基であり、pは0又は1である。)
で表される基であり、R3は互いに独立に、R1及びR2の選択肢から選ばれる基、又は-OH、-OCH3及び-OC25から選ばれる基であり、a,b,c,d及びeは、2≦a≦10、10≦b≦1,000、0≦c≦50、0≦d≦5、0≦e≦5の範囲を満たす数である。但し、c=0の場合R3はR2である。]
で表され、25℃における粘度が800~100,000mPa・sであり、アミノ基当量が500~20,000g/molであるアミノ変性シリコーンであって、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量が1質量%以下であるアミノ変性シリコーン:100質量部、
(B)ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(但し、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを除く。):5~100質量部、及び
(C)水:10~2,000質量部
を含有するアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物からなる吸水防止剤。
2.(A)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサンの含有量が1質量%以下である1記載の吸水防止剤。
3.(A)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量が1質量%以下である1又は2記載の吸水防止剤。
4.(B)成分が、ノニオン界面活性剤を含む界面活性剤である1~3のいずれかに記載の吸水防止剤。
5.(B)ノニオン界面活性剤が、HLB値15.0以下のノニオン系界面活性剤である4記載の吸水防止剤。
6.(B)成分が、カチオン界面活性剤を含まない界面活性剤である1~5いずれかに記載の吸水防止剤。
7.紙用吸水防止剤である1~6のいずれかに記載の吸水防止剤。
8.1~6いずれかに記載の吸水防止剤を、板紙基材の少なくとも一方の面に塗布した後、加熱処理してなる吸水防止処理された板紙。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物は、吸水防止効果に優れ、希釈安定性が良好でかつ環境負荷物質の含有量を低減することができ、環境に対する負荷が小さい。この組成物を防水処理剤として使用すると、板紙等に優れた吸水防止性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
(A)下記平均組成式(1)
【化2】
[式中、R1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換一価炭化水素基であり、R2は互いに独立に、一般式(2)
-R4-(NH-R5-)pNH2 (2)
(R4及びR5は互いに独立に、炭素数1~6の二価有機基であり、pは0又は1である。)
で表される基であり、R3は互いに独立に、R1及びR2の選択肢から選ばれる基、又は-OH、-OCH3及び-OC25から選ばれる基であり、a,b,c,d及びeは、2≦a≦10、10≦b≦1,000、0≦c≦50、0≦d≦5、0≦e≦5の範囲を満たす数である。但し、c=0の時R3はR2である。]
で表され、25℃における粘度が800~100,000mPa・sであり、アミノ基当量が500~20,000g/molであるアミノ変性シリコーンであって、オクタメチルシクロテトラシロキサン含有量が1質量%以下であるアミノ変性シリコーンであり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0012】
1は互いに独立に、炭素数1~20の非置換一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等のアルキル基:ビニル基、アリル基、5-ヘキセニル基、オレイル基等のアルケニル基:フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、メチル基、長鎖(炭素数6~20)アルキル基、フェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0013】
2は互いに独立に、一般式(2)
-R4-(NH-R5-)pNH2 (2)
(R4及びR5は互いに独立に、炭素数1~6の二価有機基であり、pは0又は1である。)
で表される基である。炭素数1~6の二価有機基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等の2価炭化水素基が挙げられる。一般式(2)で表される基としては、例えば、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基、6-アミノヘキシル基、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基、N-(3-アミノプロピル)-3-アミノプロピル基、N-(2-アミノエチル)-6-アミノヘキシル基等を挙げることができる。中でも、原料の入手の容易さ等の点から、3-アミノプロピル基又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基が好ましい。
【0014】
3は互いに独立に、R1及びR2の選択肢から選ばれる基、又は-OH、-OCH3及び-OC25から選ばれる基であり、c=0の場合R3はR2である。aは、2≦a≦10であり、2≦a≦5が好ましく、a=2がより好ましい。aが2未満では、アミノ変性シリコーンの粘度が高くなりすぎて、乳化安定性(乳化物そのものの安定性)が悪くなる。一方、aが10を超えると、アミノ変性シリコーンの粘度が低くなりすぎて吸水防止性が悪くなる。また、R1、R2及びR3の合計個数に対するメチル基の含有率が70%以上であることが好ましい。
【0015】
bは、10≦b≦1,000であり、200≦b≦800が好ましい。bが150未満では、アミノ変性シリコーンの粘度が低くなりすぎて吸水防止性が悪くなる。一方、bが1,000を超えると、アミノ変性シリコーンの粘度が高くなりすぎて乳化安定性が悪くなる。
【0016】
cは0≦c≦50であり、1~30が好ましい。cが1未満ではアミノ変性シリコーン中のアミノ基量が少なすぎて乳化安定性が悪くなるおそれがある。ただし、R3=R2の場合は、cは1未満、c=0であってもよい。一方、cが50を超えると、アミノ変性シリコーン中のアミノ基量が多すぎて吸水防止性が悪くなる。
【0017】
dは0≦d≦5であり、d=0が好ましい。dが5を超えると、アミノ変性シリコーンの粘度が高くなりすぎて乳化安定性が悪くなる。
【0018】
eは0≦e≦5であり、e=0が好ましい。eが5を超えると、アミノ変性シリコーンの粘度が高くなりすぎて乳化安定性が悪くなる。
【0019】
(A)成分の25℃における粘度が800~100,000mPa・sであり、1,000~50,000mPa・sが好ましく、1,000~30,000mPa・sがより好ましい。粘度が上記下限値未満だと、吸水防止性が悪くなる。また上記上限値を超えると、乳化安定性が悪くなる。なお、本発明において、粘度はBM型粘度計(例えば、東京計器社製)により測定した値である。なお、粘度に応じてローター、回転数及び回転時間は、常法に基づき適宜選定する。
【0020】
(A)成分のアミノ基当量は500~20,000g/molであり、800~15,000g/molが好ましく、1,000~13,000g/molがさらに好ましい。アミノ基当量が前記下限値未満では、アミノ基が多すぎるため、吸水防止性が悪くなる。一方、アミノ基当量が上記上限値を超えると、アミノ基が少なすぎるため、アミノ変性シリコーンとして与えられるべき親水性が不足し、これにより乳化安定性が悪くなる。なお、本発明におけるアミノ基当量とは、1モルの塩酸で中和し得る対象となるアミノ変性シリコーンのグラム数であり、理論的には、分子量/窒素原子数である。アミン当量は中和滴定法、例えば、平沼産業社製の自動滴定装置により測定できる。
【0021】
(A)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン含有量は1質量%以下であり、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
デカメチルシクロペンタシロキサンの含有量は1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
ドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量は1質量%以下が好ましい。0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。具体的には、アセトン10mLに0.1gの測定サンプルを添加し、2時間程度振とうする。振とうによりアセトン溶液に環状低分子シロキサンを抽出させた後、上澄みのアセトン溶液をガスクロマトグラフィーにて測定する。
【0022】
(A)アミノ変性シリコーンは、公知の合成方法により容易に得ることができる。例えば、アルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の触媒存在下に、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンと、3-アミノプロピルジエトキシメチルシランあるいはN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン又はその加水分解物、及びその他の原料としてヘキサメチルジシロキサン等から選択される化合物とを平衡化反応することにより得られる。
【0023】
(A)成分を合成する際に、製造方法によりオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンが副生するが、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンの含有量を1質量%以下とするため、得られた(A)成分の揮発成分を除去する工程を実施することが好ましい。(A)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンは、公知の方法により除去することができる。例えば、(A)成分に窒素ガスを吹き込みながら、80~150℃、5~40時間、30mmHg以下の条件にて減圧留去することで、(A)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンを、(A)成分中1質量%以下とすることができる。
【0024】
[(B)成分]
(B)成分は、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両イオン界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤(但し、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルを除く。)であり、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0025】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等が挙げられ、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンプロピレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレントリデシルエーテル等が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテルがより好ましい。
【0026】
カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アルキルアミン酢酸塩等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等が挙げられる。
【0027】
(B)成分の界面活性剤としては、アミノ変性シリコーンの乳化容易性の点から、ノニオン界面活性剤を必須とし、ノニオン界面活性剤を含むことが好ましい。希釈安定性の観点から、ノニオン系界面活性剤はHLB値15.0以下であることが好ましく、HLB値14.5以下がより好ましく、HLB値1.40以下がさらに好ましい。界面活性剤は、ノニオン界面活性剤のみでもいいし、ノニオン界面活性剤と、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両イオン界面活性剤から選ばれる界面活性剤との組み合わせでもよいが、吸水防止性点から、(B)成分がノニオン界面活性剤のみである場合が好ましく、吸水防止性の点から、カチオン界面活性剤を含まないことが好ましい。なお、HLBはグリフィン法により計算された値である。
【0028】
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して5~100質量部であり、2~80質量部が好ましく、3~70質量部がより好ましく、4~60質量部がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値未満だと、希釈安定性が悪くなり、上記上限値を超えると、吸水防止性が悪くなる。
【0029】
[(C)成分]
(C)成分は水であり、イオン交換水、精製水等全ての水を用いることができる。(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して10~2,000質量部であり、50~1,000質量部が好ましい。
【0030】
[製造方法]
本発明のアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物は、例えば以下の方法で調製することができる。
(C)成分を、(A)成分及び(B)成分と混合し、常法に準じて乳化分散させることにより調製することができる。中でも、水中油滴(O/W型)エマルションが好ましい。また、エマルジョンにさらに水を加えて希釈して、後述する用途に用いることができる。希釈するための水の量は特に制限されるものでなく、用途に応じて適宜調整されればよい。
【0031】
本発明のアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物は、上記(A)~(C)成分以外に、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で種々の任意成分を適量配合することができる。このような任意成分としては、(A)成分以外のシリコーン成分、添加剤等が挙げられる。
【0032】
(A)成分以外のシリコーン成分として、具体的には、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルが挙げられる。(A)成分以外のシリコーン成分を配合する場合、その量は(A)成分100質量部に対して5~50質量部であることが好ましい。
【0033】
添加剤としては、例えば、乳化安定性を向上させるために塩酸、硫酸、リン酸、ギ酸、酢酸、ステアリン酸、乳酸、クエン酸等の酸を配合することができる。添加剤の量は任意に設定できるが、本発明のエマルジョン組成物のpHを3~7に調整する量であるのが好ましい。その他の添加剤としては、増粘剤、凍結防止剤、防腐剤、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0034】
[吸水防止剤]
アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物は、優れた吸水防止効果、撥水効果を有するため、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物からなる吸水防止剤として用いる。吸水防止剤としては、板紙用吸水防止剤、繊維用吸水防止剤(繊維処理剤)等が挙げられる。板紙は特に限定されず、段ボール原紙、紙器用板紙、雑板紙等に対しても有効である。繊維も特に限定されず、綿、絹、麻、ウール、アンゴラ、モヘア等の天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、スパンデックス等の合成繊維、これらを組み合わせた混紡の繊維に対しても全て有効である。また、その形態、形状にも制限はなく、ステープル、フィラメント、トウ、糸等のような原材料形状に限らず、織物、編み物、詰め綿、不織布等の多様な加工形態のものも本発明の繊維処理剤の処理可能な対象となる。
【0035】
吸水防止剤の使用方法としては、対象にそのままアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物を塗布しても、水で希釈してから塗布してもよい。希釈する場合、濃度に特に制限はないが、(A)成分のアミノ変性シリコーンの含有量が0.05~5質量%となるように希釈するとよい。この含有量が0.05質量%未満であると、対象に充分な防水性を付与できなくなるおそれがある。塗布量としては、基材1m2に対してシリコーンオイル分が0.001~5gであることが好ましい。塗布後に吸水防止剤を加熱処理することが好ましく、加熱温度は50~200℃、加熱時間は10秒~5分の間から適宜選定するとよい。
【0036】
[板紙]
本発明の板紙は、上記アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物からなる吸水防止剤を、板紙基材の少なくとも一方の面に塗布した後、加熱処理してなる吸水防止処理された板紙である。板紙、吸水防止剤の処理方法等は上記に記載の通りである。
【実施例
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、配合量は、配合製品名が記載されている場合は、配合製品の配合量である。
【0038】
実施例及び比較例に使用した原料を示す。
(A)アミノ変性シリコーン
25℃における粘度は、BM型粘度計(東京計器社製)により測定した値である。
アミノ基当量は自動滴定装置(平沼産業社製)により測定した値である。
オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサン量は、アセトン10mLに0.1gの測定サンプルを添加し、2時間程度振とうした。振とうによりアセトン溶液に環状低分子シロキサンを抽出させた後、上澄みのアセトン溶液をガスクロマトグラフィー(Agilent 7890B(アジレント・テクノロジー製))にて測定した。ガスクロマトグラフィーのカラムはDB-5MS(アジレント・テクノロジー製)を使用し、測定時のカラム内温度は300℃、内標物質としてテトラデカンを使用した。
【0039】
(A-1)アミノ変性シリコーン
下記平均式(1)で表されるアミノ変性シリコーン
【化3】
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=600,c=15,d=0,e=0であり、粘度:4,900mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol
(A-1)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.01質量%未満(検出限界以下)
(A-1)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.01質量%
(A-1)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.04質量%
【0040】
(A-1)製造方法
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン92.61質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物4.49質量部、下記式(3)で示されるジメチルシリコーン2.80質量部、カリウムシリコネート0.07質量部、を120℃で8時間加熱し、平衡化反応を行った。その後、エピクロロヒドリン0.03質量部を加え、70℃で2時間加熱し、中和反応を実施した。
その後、130℃、15mmHg以下の条件で、20時間の減圧ストリップを実施、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(A-1)を得た。
【化4】
【0041】
(A-2)アミノ変性シリコーン
上記平均式(1)で示されるアミノ変性シリコーン
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=350,c=3.5,d=0,e=0であり、粘度:2,600mPa・s,アミノ基当量:3,600g/mol
(A-2)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.01質量%未満
(A-2)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.02質量%
(A-2)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.03質量%
【0042】
(A-2)製造方法
(A-1)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン94.11質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物2.19質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン3.60質量部にした以外は(A-1)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-2)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-1)と同じである。
【0043】
(A-3)アミノ変性シリコーン
上記平均式(1)で示され
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=280,c=6,d=0,e=0であり、粘度:1,500mPa・s,アミノ基当量:1,700g/mol
(A-3)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.02質量%
(A-3)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.04質量%
(A-3)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.06質量%
【0044】
(A-3)製造方法
(A-1)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン91.20質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物4.40質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン4.30質量部にした以外は(A-1)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-3)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-1)と同じである。
【0045】
(A-4)アミノ変性シリコーン
(A-4)アミノ変性シリコーン
上記平均式(1)で示され、
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=300,c=1,d=0,e=0であり、粘度:1,660mPa・s,アミノ基当量:11,000g/mol
(A-4)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.02質量%
(A-4)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.03質量%
(A-4)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.03質量%
【0046】
(A-4)製造方法
(A-1)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン95.81質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物0.71質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン3.38質量部にした以外は(A-1)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-4)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-1)と同じである。
【0047】
(A-5)アミノ変性シリコーン
上記平均式(1)で示され、
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=650,c=14,d=0,e=0であり、粘度:13,000mPa・s,アミノ基当量:1,800g/mol
(A-5)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.03質量%
(A-5)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.05質量%
(A-5)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.06質量%
【0048】
(A-5)製造方法
(A-1)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン93.88質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物4.27質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン1.84質量部にした以外は(A-1)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-5)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-6)と同じである。
【0049】
(A-6)アミノ変性シリコーン(比較)
上記平均式(1)で示され、
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=37,c=1.1,d=0,e=0であり、粘度:40mPa・s,アミノ基当量:1,500g/mol
(A-6)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:2.5質量%
(A-6)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:2.0質量%
(A-6)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:1.5質量%
【0050】
(A-6)製造方法
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン59.50質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物5.81質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン34.59質量部、カリウムシリコネート0.07質量部を110℃で8時間加熱し、平衡化反応を行った。その後、エピクロロヒドリン0.03質量部を加え、80℃で3時間加熱し、中和反応を実施し、オイル状化合物(A-6)を得た。
【0051】
(A-7)アミノ変性シリコーン(比較)
上記平均式(1)で示され、
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=37,c=1.1,d=0,e=0であり、粘度:55mPa・s,アミノ基当量:1,500g/mol
(A-7)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.01質量%
(A-7)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:0.02質量%
(A-7)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:0.02質量%
【0052】
(A-7)製造方法
温度計、撹拌装置、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン59.50質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物5.81質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン34.59質量部、カリウムシリコネート0.07質量部を110℃で8時間加熱し、平衡化反応を行った。その後、エピクロロヒドリン0.03質量部を加え、80℃で3時間加熱し、中和反応を実施した。その後、110℃、15mmHg以下の条件で、10時間の減圧ストリップを実施、低沸点留分の除去を行い、オイル状化合物(A-7)を得た。
【0053】
(A-8)アミノ変性シリコーン(比較)
上記平均組成式(1)で表され、
1:-CH3,R2:-C36NH2,R3:-CH3,a=2,b=900,c=2,d=0,e=0であり、粘度:18,000mPa・s,アミノ基当量:33,000g/mol
(A-8)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:3.5質量%
(A-8)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:2.8質量%
(A-8)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:2.1質量%
【0054】
(A-8)製造方法
(A-6)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン98.03質量部、3-アミノプロピルメチルジエトキシシランの加水分解物0.37質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン1.50質量部にした以外は(A-6)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-8)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-6)と同じである。
【0055】
(A-9)アミノ変性シリコーン(比較)
上記平均式(1)で示され、
1:-CH3,R2:-C36NHC24NH2,R3:-CH3,a=2,b=600,c=15,d=0,e=0であり、粘度:3,600mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol
(A-9)成分中のオクタメチルシクロテトラシロキサン量:1.6質量%
(A-9)成分中のデカメチルシクロペンタシロキサン量:1.6質量%
(A-9)成分中のドデカメチルシクロヘキサシロキサン量:1.3質量%
【0056】
(A-9)製造方法
(A-6)の製造方法に準じ、原料の配合を、オクタメチルシクロテトラシロキサン92.61質量部、2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランの加水分解物4.49質量部、上記式(3)で示されるジメチルシリコーン2.80質量部にした以外は(A-6)の製造方法と同様の方法で、アミノ変性シリコーン(A-8)を得た。なお、カリウムシリコネート及び、エピクロロヒドリンの量は(A-6)と同じである。
【0057】
(B)界面活性剤
ニューコール1310(商品名):日本乳化剤社製、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、HLB値=13.7
ニューコール1004(商品名):日本乳化剤社製、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、HLB値=11.5
【0058】
[実施例1]
(A)アミノ変性シリコーンA-1(粘度:4,900mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:16.7質量部、(C)イオン交換水:213.9質量部、酢酸:2.8質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分35質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-1)を得た。
【0059】
[実施例2]
(A)アミノ変性シリコーン(A-1)(粘度:4,900mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10質量部、(C)イオン交換水:220.5質量部、酢酸:2.8質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-2)を得た。
【0060】
[実施例3]
(A)アミノ変性シリコーン(A-2)(粘度:2,600mPa・s,アミノ基当量:3,600g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:222.1質量部、酢酸:1.3質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-3)を得た。
【0061】
[実施例4]
(A)アミノ変性シリコーン(A-3)(粘度:1,500mPa・s,アミノ基当量:1,700g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:220.6質量部、酢酸:2.7質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-4)を得た。
【0062】
[実施例5]
(A)アミノ変性シリコーン(A-4)(粘度:1,660mPa・s,アミノ基当量:11,000g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:222.9質量部、酢酸:0.4質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-5)を得た。
【0063】
[実施例6]
(A)アミノ変性シリコーン(A-5)(粘度:13,000mPa・s,アミノ基当量:1,800g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:220.8質量部、酢酸:2.6質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-6)を得た。
【0064】
[実施例7]
(A)アミノ変性シリコーン(A-1)(粘度:4,900mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol):100質量部、(B)ニューコール1004:50.0質量部、(C)イオン交換水:180.53質量部、酢酸:2.8質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分45質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(I-6)を得た。
【0065】
[比較例1]
(A)アミノ変性シリコーン(A-6)(粘度:40mPa・s,アミノ基当量:1,500g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:220.3質量部、酢酸:3.1質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(II-1)を得た。
【0066】
[比較例2]
(A)アミノ変性シリコーン(A-7)(粘度:55mPa・s,アミノ基当量:1,500g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:220.3質量部、酢酸:3.1質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(II-2)を得た。
【0067】
[比較例3]
(A)アミノ変性シリコーン(A-8)(粘度:18,000mPa・s,アミノ基当量:33,000g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:223.2質量部、酢酸:0.1質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(II-3)を得た。
【0068】
[比較例4]
(A)アミノ変性シリコーン(A-9)(粘度:3,600mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol):100質量部、(B)ニューコール1310:10.0質量部、(C)イオン交換水:220.5質量部、酢酸:2.8質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(II-4)を得た。
【0069】
[比較例5]
(A)アミノ変性シリコーン(A-9)(粘度:3,600mPa・s,アミノ基当量:1,650g/mol):100質量部、(B)ニューコール1004:50.0質量部、(C)イオン交換水:180.5質量部、酢酸:2.8質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分33質量%を有する、アミノ変性シリコーンエマルジョン組成物(II-5)を得た。
【0070】
[比較例6]
(A)下記式(4)
【化5】
で示される、分子中にアミノ基を有しないシリコーンオイル(粘度:10,000mPa・s、含有オクタメチルシクロテトラシロキサン量:0.01質量%以下):100質量部、(B)ニューコール1310:15.0質量部、(C)イオン交換水:218.3質量部を、ホモミキサーを用いて混合して乳化分散し、105℃・3時間での不揮発分34.5質量%を有する、シリコーンエマルジョン組成物(II-6)を得た。
【0071】
得られたシリコーンエマルジョン組成物について、下記方法で「吸水率」、「希釈安定性」を評価した。(A)アミノ変性シリコーン物性と共に、結果を表中に併記する。
【0072】
[吸水率]
シリコーンエマルジョン組成物を、シリコーン分が0.5質量%になるようにさらに水で希釈した後、100mm×100mmで厚み0.38mmの工作板紙の表面に紙ガーゼを用いて塗布した。次いで、この板紙を120℃で5分間加熱乾燥し、その重量を測定した後(重量A)、シリコーン処理面を下にして1分間水面に浮かべた後水滴を拭き取り板紙の重量を測定して(重量B)下式に従い吸水率を求めた。吸水率においてはその値が小さいほど吸水防止性が優れているといえる。結果を下表に示す。
吸水率(%)=100(B-A)/A
【0073】
[希釈安定性]
シリコーンエマルジョン組成物を、水道水にて100倍(質量)に希釈した溶液をガラスビーカーに入れ、25℃にて20時間保管した際の分離の有無を目視で確認した。下記指標に基づき「希釈安定性」として評価した。結果を下表に示す。
○:析出物なし
△:僅かに析出物あり
×:析出物あり
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
上記結果から明らかであるように、本発明のアミノ変性シリコーンエマルジョン組成物は、吸水防止性に優れており、希釈安定性も良好である。さらに、環状低分子シロキサン含有量が少なく、環境に対する負荷が低い。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の吸水防止剤は、吸水防止性に優れており、希釈安定性も良好である。さらに、環状低分子シロキサン含有量が少なく、環境に対する負荷が低い。板紙用吸水防止剤として有用である。