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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】物体保持装置及び露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240109BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022148829
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2021021039の分割
【原出願日】2017-09-29
(65)【公開番号】P2022176233
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2016195104
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】青木 保夫
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-165582(JP,A)
【文献】特開2011-103407(JP,A)
【文献】特開2000-012663(JP,A)
【文献】特開2008-251754(JP,A)
【文献】特開2013-153146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を保持する第1保持面と、前記第1保持面の裏面側の互いに異なる位置に設けられた第1部分および第2部分と、をそれぞれ備える複数の第1部材と、
前記第1部材を保持する第2保持面を備え第2部材と、
ベース部と、
前記ベース部と前記第2部材との間に設けられ管路部と、を有し、
前記第1部分は、前記第1部材と前記物体の間の第1空間につながる貫通孔を有し、
前記第2部材は、前記第1部分の前記貫通孔を介して前記第1空間につながる第1貫通孔と、前記第1部材と前記第2部材の間の第2空間につながる第2貫通孔と、を有し、
前記管路部は、前記第1空間の気体を吸引可能なように前記第1貫通孔と前記第1部分の前記貫通孔とに連通した第1管路と、前記第2空間の気体を吸引可能なように前記第2貫通孔に連通した第2管路と、を備え、
吸引力が供給された前記第1管路によって、前記第1管路に連通した前記第1貫通孔および前記第1部分の前記貫通孔を介して前記第1空間の気体が吸引されることで、前記第1部材は前記物体を保持し、
吸引力が供給された前記第2管路によって、前記第2管路に連通する前記第2貫通孔を介して前記第2空間の気体が吸引されることで、前記第1部分および前記第2部分が前記第2保持面に接触した状態で前記第2部材は前記第1部材を保持し、
前記第2管路に吸引力が供給されず、前記第2管路に連通する前記第2貫通孔を介した前記第2空間の気体の吸引が行われないことで、前記第1部材は前記第2部から取り外すことができる状態となる、物体保持装置。
【請求項2】
前記管路部は、第管路をさらに有し、
前記複数の第1部材は、前記第1管路および前記第1部分を通過す気体を吸引して、第1保持力で前記物体の第1位置を保持し、前記第管路および前記第1部分を通過する前記気体を吸引して、前記第1保持力と異なる第2保持力で前記物体の第2位置を保持する、請求項1に記載の物体保持装置。
【請求項3】
前記第1管路の位置は、前記第管路の位置よりも、前記ベース部の中央部に近く、
前記第1保持力は、前記第2保持力よりも大きい、請求項2に記載の物体保持装置。
【請求項4】
前記第1部材は、前記物体を保持可能な複数のピン部と、前記複数のピン部を囲む壁部と、を有し、前記第1空間は、前記壁部と前記複数のピン部の間の空間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の物体保持装置。
【請求項5】
前記第1部材は、前記第2部分を囲む壁部を有し、前記第2空間は、前記壁部と前記第2部分の間の空間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の物体保持装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の物体保持装置と、
前記物体保持装置に保持された前記物体に対してエネルギビームを用いてパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体保持装置及び露光装置に係り、更に詳しくは、物体を保持する物体保持装置、及び前記物体保持装置を備える露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示素子、半導体素子(集積回路等)等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するリソグラフィ工程では、マスク又はレチクル(以下、「マスク」と総称する)に形成されたパターンを、エネルギビームを用いてガラスプレート又はウエハ(以下、「基板」と総称する)に転写する露光装置が用いられている。
【0003】
この種の露光装置では、基板ステージ装置が有する基板ホルダが、基板を、例えば真空吸着して保持する基板保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
基板保持装置は、基板を高い平面度で保持することが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0266961号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の事情の下でなされたもので、第1の態様によれば、物体を支持する支持面を有する複数の支持部材と、前記複数の支持部材を支持するベース部と、前記複数の支持部材と前記ベース部との間に設けられ、前記複数の支持部材と前記物体との間に気体を供給する管路を有する管路部と、上下方向に関して前記ベース部に支持された前記複数の支持部材の各支持面が所定範囲内に位置した状態で、前記複数の支持部材を連結する連結部と、を備える物体保持装置が提供される。
【0007】
第2の態様によれば、本発明の物体保持装置と、前記物体保持装置に保持された前記物体に対してエネルギビームを用いて所定のパターンを形成するパターン形成装置と、を備える露光装置、が提供される。
【0008】
第3の態様によれば、本発明の露光装置を用いて前記基板を露光することと、露光された前記基板を現像することと、を含むフラットパネルディスプレイの製造方法、が提供される。
【0009】
第4の態様によれば、本発明の露光装置を用いて前記物体を露光することと、露光された前記物体を現像することと、を含むデバイス製造方法、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る液晶露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2図1の液晶露光装置が備える微動ステージを示す(上面の一部省略)図である。
図3図2の微動ステージの分解図である。
図4図2の微動ステージの平面図である。
図5図4のA-A矢視断面図である。
図6図4のB-B矢視断面図である。
図7】微動ステージから一部の部材を取り除いた平面図である。
図8】微動ステージの組み立て手順を説明するための図である。
図9】微動ステージが備えるチャック部の平面図である。
図10】微動ステージが備える管路部及びホルダ部の断面図である。
図11】チャック部の裏面側から見た平面図である。
図12】微動ステージの変形例の一例を示す図である。
図13図12の微動ステージの平面図である。
図14図12の微動ステージの断面図である。
図15】チャック部の締結構造の一例を示す図である。
図16】チャック部の締結構造の他の例を示す図である。
図17】チャック部の浮き上がり防止構造の一例を示す図である。
図18】チャック部の浮き上がり防止構造の他の例を示す図である。
図19】微動ステージに対するラッピング加工を示す図である。
図20】チャック部の交換手順を説明するための図(その1)である。
図21】チャック部の交換手順を説明するための図(その2)である。
図22】チャック部の交換手順を説明するための図(その3)である。
図23】チャック部の交換手順を説明するための図(その4)である。
図24】交換用チャック部の裏面を示す図である。
図25】チャック部の交換手順の他の例(その1)を説明するための図である。
図26図25に係る交換手順で用いられるチャック部の平面図である。
図27】チャック部の交換手順の他の例(その2)を説明するための図である。
図28図27に係る交換手順で用いられるチャック部の裏面を示す図である。
図29】チャック部の変形例を示す図である。
図30】隣接するチャック部同士の衝突防止構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態について、図1図30を用いて説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る露光装置(ここでは液晶露光装置10)の構成が概略的に示されている。液晶露光装置10は、物体(ここではガラス基板P)を露光対象物とするステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。ガラス基板P(以下、単に「基板P」と称する)は、平面視矩形(角型)に形成され、液晶表示装置(フラットパネルディスプレイ)などに用いられる。
【0013】
液晶露光装置10は、照明系12、投影光学系14、表面(図1で+Z側を向いた面)にレジスト(感応剤)が塗布された基板Pを保持する基板ステージ装置20、及びこれらの制御系等を有している。以下、露光時にマスクMと基板Pとが投影光学系14に対してそれぞれ相対走査される方向を第1方向(ここではX軸方向)とし、水平面内でX軸に直交する方向を第2方向(ここではY軸方向)、X軸及びY軸に直交する方向をZ軸方向(投影光学系14の光軸方向と平行な方向)とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。また、X軸、Y軸、及びZ軸方向に関する位置をそれぞれX位置、Y位置、及びZ位置として説明を行う。
【0014】
照明系12は、米国特許第5,729,331号明細書などに開示される照明系と同様に構成されており、露光用照明光(照明光)ILをマスクMに照射する。照明光ILとしては、i線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)などの光(あるいは、上記i線、g線、h線の合成光)が用いられる。
【0015】
マスクMとしては、透過型のフォトマスクが用いられている。マスクMの下面(図1では-Z側を向いた面)には、所定の回路パターンが形成されている。マスクMは、不図示のマスクステージ装置によって走査方向(X軸方向)に所定の長ストロークで駆動される。
【0016】
投影光学系14は、マスクMの下方に配置されている。投影光学系14は、米国特許第6,552,775号明細書などに開示される投影光学系と同様な構成の、いわゆるマルチレンズ投影光学系であり、両側テレセントリックな等倍系で正立正像を形成する複数のレンズモジュールを備えている。
【0017】
液晶露光装置10では、照明系12からの照明光ILによってマスクM上の照明領域が照明されると、マスクMを通過(透過)した照明光ILにより、投影光学系14を介してその照明領域内のマスクMの回路パターンの投影像(部分正立像)が、基板P上の照明領域に共役な照明光の照射領域(露光領域)に形成される。そして、照明領域(照明光IL)に対してマスクMが走査方向に相対移動するとともに、露光領域(照明光IL)に対して基板Pが走査方向に相対移動することで、基板P上の1つのショット領域の走査露光が行われ、そのショット領域にマスクMに形成されたパターンが転写される。
【0018】
基板ステージ装置20は、基板Pを投影光学系14(照明光IL)に対して高精度で位置制御するための装置であり、基板Pを水平面(X軸方向、及びY軸方向)に沿って所定の長ストロークで駆動するとともに、6自由度方向に微少駆動する。液晶露光装置10で用いられる基板ステージ装置(微動ステージ22を除く)の構成は、特に限定されないが、本実施形態では、一例として米国特許出願公開第2012/0057140号明細書などに開示されるような、ガントリタイプの2次元粗動ステージと、該2次元粗動ステージに対して微少駆動される微動ステージとを含む、いわゆる粗微動構成の基板ステージ装置20が用いられている。
【0019】
基板ステージ装置20は、微動ステージ22、Y粗動ステージ24、X粗動ステージ26、自重支持装置28などを備えている。
【0020】
微動ステージ22は、全体的に平面視矩形(図2参照)の板状(あるいは箱形)に形成され、その上面(基板載置面)に基板Pが載置される。微動ステージ22の上面のX軸及びY軸方向の寸法は、基板Pと同程度に(実際には幾分短く)設定されている。基板Pは、微動ステージ22の上面に載置された状態で微動ステージ22に真空吸着保持されることによって、ほぼ全体(全面)が微動ステージ22の上面に沿って平面矯正される。従って、本実施形態の微動ステージ22は、従来の基板ステージ装置が備える基板ホルダと同機能の部材であると言うこともできる。微動ステージ22の詳細な構成については、後述する
【0021】
Y粗動ステージ24は、微動ステージ22の下方(-Z側)に配置されている。Y粗動ステージ24は、一対のXビーム30aを有している。Xビーム30aは、X軸方向に延びるYZ断面矩形の部材から成る。一対のXビーム30aは、Y軸方向に所定間隔で平行に配置されている。一対のXビーム30aを含み、Y粗動ステージ24は、不図示のYアクチュエータによってY軸方向へ所定の長ストロークで駆動される。
【0022】
X粗動ステージ26は、Y粗動ステージ24の上方(+Z側)であって、微動ステージ22の下方に(微動ステージ22とY粗動ステージ24との間に)配置されている。X粗動ステージ26は、平面視矩形の板状の部材であって、一対のXビーム30a上に複数の機械的なリニアガイド装置30bを介して載置されている。X粗動ステージ26は、Y粗動ステージ24に対してX軸方向に関して移動自在であるのに対し、Y軸方向に関しては、Y粗動ステージ24と一体的に移動する。X粗動ステージ26は、Y粗動ステージ24に対して、複数のXアクチュエータ30cによってX軸方向へ所定の長ストロークで駆動される。なお、図1では、Xアクチュエータ30cとして、リニアモータが図示されているが、Xアクチュエータの種類は、特に限定されない。Y粗動ステージ24を駆動するためのYアクチュエータの種類も、同様に特に限定されない。
【0023】
X粗動ステージ26の上面には、Y固定子32aが取り付けられている。Y固定子32aは、微動ステージ22の側面に取り付けられたY可動子32bとともに、微動ステージ22に対してY軸方向の推力を付与するためのYリニアモータ(本実施形態では、ボイスコイルモータ)を構成する。基板ステージ装置20において、Yリニアモータは、X軸方向に離間して複数配置されている。不図示であるが、基板ステージ装置20は、微動ステージ22に対してX軸方向の推力を付与するためのXリニアモータも複数有している。Xリニアモータの構成は、配置が異なる以外はYリニアモータと同じである。すなわち、X粗動ステージ26の上面にはX固定子、微動ステージ22の側面にはX可動子がそれぞれ取り付けられている。
【0024】
不図示の主制御装置は、X粗動ステージ26がX軸及び/又はY軸方向に移動する際に、微動ステージ22とX粗動ステージ26との相対位置が所定範囲内に収まるように、上記複数のX、Yリニアモータを用いて微動ステージ22に水平面内3自由度方向(X軸、Y軸、θzの各方向)の推力を付与するとともに、上記複数のX、Yリニアモータを用いて微動ステージ22をX粗動ステージ26に対して水平面内3自由度方向に微少駆動する。微動ステージ22の水平面内3自由度方向の位置情報は、微動ステージ22にミラーベース34aを介して固定されたバーミラー34bを用いて、不図示のレーザ干渉計によって求められる。なお、図1ではX軸方向に延びるYバーミラーのみが図示されているが、実際には、微動ステージ22の-Y側の側面にYバーミラーが固定され、微動ステージ22の-X側の側面にY軸方向に延びるXバーミラーが固定されている。レーザ干渉計を用いた計測システムに関しては、一例として米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。なお、微動ステージ22の水平面内3自由度方向の位置情報は、干渉計ではなくヘッドとスケールとを有するエンコーダーシステムを用いて求めても良い。
【0025】
X粗動ステージ26の上面には、Z固定子36aが取り付けられている。Z固定子36aは、微動ステージ22の下面に取り付けられたZ可動子36bとともに、微動ステージ22に対してZ軸方向の推力を付与するためのZリニアモータ(本実施形態では、ボイスコイルモータ)を構成する。基板ステージ装置20において、Zリニアモータは、少なくとも同一直線上にない3箇所に配置されている。不図示の主制御装置は、複数のZリニアモータを用いて微動ステージ22をX粗動ステージ26に対してZチルト方向(Z軸、θx、θyの各方向)に微少駆動する。微動ステージ22のZチルト方向の位置情報は、微動ステージ22の下面に取り付けられたZセンサ38aによって、自重支持装置28に取り付けられたターゲット38bを用いて求められる。基板ステージ装置20において、Zセンサ38a(及び対応するターゲット38b)は、少なくとも同一直線上にない3箇所に配置されている。複数のZセンサ38aを用いた計測システムに関しては、一例として米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0026】
自重支持装置28は、微動ステージ22の自重を下方から支持する重量キャンセル装置40aと、該重量キャンセル装置40aを下方から支持するYステップガイド42aとを備えている。
【0027】
重量キャンセル装置40aは、X粗動ステージ26に形成された開口部に挿入されている。重量キャンセル装置40aは、X粗動ステージ26に対して複数の連結部材40bを介して機械的に接続されており、X粗動ステージ26と一体的にX軸、及び/又はY軸方向に移動する。重量キャンセル装置40aは、レベリング装置44を介して微動ステージ22の自重を下方から非接触で支持している。これにより、微動ステージ22の重量キャンセル装置40aに対するX軸、Y軸、及びθz方向への相対移動、及び水平面に対する揺動(θx、θy方向への相対移動)が許容される。重量キャンセル装置40aの構成及び機能に関しては、一例として米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されているので、説明を省略する。
【0028】
Yステップガイド42aは、X軸に平行に延びる部材から成り、一対のXビーム30a間に配置されている。重量キャンセル装置40aは、Yステップガイド42a上にエアベアリング40cを介して載置されている。Yステップガイド42aは、架台16上に機械的なリニアガイド装置42bを介して載置されており、架台16に対してY軸方向に移動自在であるのに対し、X軸方向に関する相対移動が制限されている。架台16は、上記投影光学系14などを支持する部材の一部であって、Y粗動ステージ24、X粗動ステージ26とは、振動的に分離されている。Yステップガイド42aは、一対のXビーム30aに対して複数の連結部材42cを介して機械的に接続されている。Yステップガイド42aは、Y粗動ステージ24に牽引されることによって、Y粗動ステージ24と一体的にY軸方向に移動する。
【0029】
次に、微動ステージ22の構成について説明する。図2に示されるように、微動ステージ22は、定盤部50、管路部60、ベース部72、及びチャック部74を備えている。定盤部50は、平面視矩形の箱状に形成され、管路部60、及びホルダ部70は、それぞれ平面視矩形の板状に形成されている。微動ステージ22は、定盤部50上に管路部60が配置(積層)され、管路部60上にベース部72が配置(積層)され、さらにベース部72上にチャック部74が配置(積層)されることにより、全体的に4層構造となっている。
【0030】
定盤部50、管路部60、ベース部72、及びチャック部74それぞれの長さ及び幅方向(X軸及びY軸方向)の寸法は、ほぼ同じに設定されているのに対し、定盤部50の厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、管路部60、ベース部72、及びチャック部74に比べて大きく(厚く)設定されている。定盤部50、管路部60、及びベース部72をあわせた厚さ方向(Z軸方向)の寸法は、チャック部74に比べて大きく(厚く)設定されている。また、定盤部50、管路部60、及びベース部72をあわせた重さは、チャック部74に比べて重く、たとえば2.5倍程度の重さを有している。
【0031】
最下層である定盤部50は、微動ステージ22のベースとなる部分である。定盤部50は、図3に示されるように、下面部52、上面部54、外壁部56、及びハニカム構造体58を備えている。下面部52、及び上面部54は、それぞれCFRP(carbon-fiber-reinforced plastic)により形成された平面視矩形の板状部材である。外壁部56は、平面視矩形の枠状部材であって、アルミニウム合金、あるいはCFRPによって形成されている。外壁部56の内部には、ハニカム構造体58が充填されている。ハニカム構造体58は、アルミニウム合金によって形成されている。なお、図3では、図面の錯綜を避ける観点から、ハニカム構造体は、一部のみが図示されているが、実際には、ハニカム構造体58は、外壁部56の内部にほぼ隙間なく配置されている(図5及び図6参照)。
【0032】
ハニカム構造体58が内部に充填された外壁部56は、上面に上面部54が接着されるとともに、下面に下面部52が接着されている。これにより、定盤部50は、いわゆるサンドウィッチ構造とされており、軽量、且つ高剛性(特に厚さ方向に高剛性)であり、作成も容易である。なお、定盤部50を構成する各要素を形成する材料は、上記説明したものに限られず、適宜変更が可能である。また、下面部52、上面部54、及び外壁部56の締結構造も、接着に限られない。
【0033】
下面部52の中央部には、開口52aが形成されている。ハニカム構造体58において、開口52aに対応する部分には、凹部(窪み)が形成されており(図5及び図6参照)、該凹部には、上述したレベリング装置44が嵌め込まれている。ここで、レベリング装置44は、微動ステージ22を水平面に対して(θx及びθy方向に)揺動自在に支持する機能を有していれば、その構成は、特に限定されない。従って、図1では、球面軸受け装置が図示されているが、レベリング装置44としては、これに限られず、図5及び図6に示されるような弾性ヒンジ装置であっても良いし、米国特許出願公開第2010/0018950号明細書などに開示されるような疑似球面軸受け装置であっても良い。
【0034】
管路部60は、Y軸方向に延びる複数のパイプ62を備え、X軸方向に複数のパイプ62が並んで配置されている。パイプ62の長手方向(Y軸方向)の寸法は、定盤部50のY軸方向の寸法と概ね同じに設定されている。なお、パイプ62の本数は、特に限定されず、微動ステージ22に要求される所望の性能に応じて適宜変更が可能である。図6などでは、微動ステージ22の構成、及び機能の理解を容易にするため、パイプ62の本数が実際よりも少なく図示されている。また、パイプ62のXZ断面の断面形状も特に限定されない。図6などでは、パイプ62としてXZ断面が矩形の、いわゆる角パイプが用いられているが、これに限られず、図12に示されるような、いわゆる丸パイプを用いても良い。丸パイプを用いる場合、該丸パイプの外周面の上面と下面とが互いに平行となるように(長手方向に直交する断面が樽型となるように)加工すると良い。本実施形態において、パイプ62は、CFRPによって形成されているが、パイプ62の素材も特に限定されず、適宜変更が可能である。パイプ62の素材としてCFRPを使わない場合、CFRPとは膨張係数が異なる部材を用いることが好ましい。また、複数のパイプ62はY軸方向に延びX軸方向に並んで配置されていると説明したが、これに限定されず、X軸方向に延びY軸方向に並んで配置されるようにしても良い。
【0035】
ベース部72は、図3に示されるように、平面視矩形の薄板状部材であって、石材、あるいはセラミックスなどによって形成されている。なお、ベース部72の素材は、特に限定されないが、硬度に優れ且つ高精度加工が容易な材料が好ましい。微動ステージ22では、複数枚のベース部72が、管路部60を構成する複数のパイプ62上に載置されている。各ベース部72は、互いに密着(隙間が無視できる程度に接触)した状態で、管路部60に敷き詰められており、複数のパイプ62に対して接着剤により固定されている。
【0036】
各ベース部72それぞれは、表面(パイプ62に対する接着面とは反対側の面)の平面度が非常に高くなるように加工(ラップ加工など)されている。また、複数のベース部72は、管路部60上に敷き詰められた状態で、各ベース部72間の段差が実質的に無視できる程度となるように、それぞれの表面高さ位置が調整されている。なお、管路部60の上方に、基板P(図1参照)と同等の面積を有する平面を形成することができれば、各ベース部72の大きさ(面積)は、図3に示されるように、共通の大きさを有していても良いし、図7に示されるように、サイズの異なるベース部72が混在していても良い。また、ベース部72の総枚数も、特に限定されず、1枚のベース部72により構成されていても良い。なお、ベース部72は、平面度が非常に高くなるように加工されていると説明したがこれに限られない。1つもしくは一部のベース部72が他のベース部72よりも低い場合や、ベース部72の一部欠けていたり、くぼみがあったりしても良い。後述するが、チャック部74がベース部72上に載置されたときに平面度が出れば良く、チャック部74の大きさよりも小さな欠けやくぼみがベース部72にあっても良い。
【0037】
上述した各ベース部72間の表面高さ位置調整は、ラップ加工などによって行うと良い。この場合、ラップ加工は、微動ステージ22に各種付属物(バーミラー34b、可動子32b、36b、複数のチャック部74)が取り付いた状態で所望の精度になるように撓みを考慮して行うことが望ましい。また、図10に示されるように、ベース部72の上面における端部近傍は、面取り加工が施されており、複数のベース部72を敷き詰めた状態で、隣接するベース部72間には、V字溝が形成される。該V字溝には、目地材72aが充填されており、隣接するベース部72間に、ラップ加工時の水分などが侵入することを防止することができる。
【0038】
図3に戻り、チャック部74は、基板P(図1参照)が載置される部分である。チャック部74は、管路部60とベース部72と協働して基板Pを吸着保持する。チャック部74は、平面視矩形の薄板状部材であって、セラミックスなどによって形成されている。チャック部74をセラミックスにより形成することで、基板Pからの静電気の発生を抑制することができる。なお、チャック部74の素材は、特に限定されないが、軽量且つ高精度加工が容易な材料が好ましい。ベース部72の素材として、軽量な素材を用いることで、ベース部および/または管路部60の変形を防止することができる。チャック部74の厚み(たとえば8mm)は、ベース部の厚み(たとえば12mm)に対して薄く設定されている。微動ステージ22では、複数のベース部72が敷き詰めされることによって形成された平面上に、複数枚のチャック部74が敷き詰められている(図2及び図3では一部図示省略)。チャック部74は、対応する(該チャック部74の下方の)ベース部72に吸着保持される。ベース部72にチャック部74を吸着保持させるための構造(チャック部74の吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0039】
1つ(1枚)のチャック部74は、1つ(1枚)のベース部72よりも面積が小さく設定されている。図3に示される例では、1枚のベース部72上に、2枚のチャック部74が載置される場合が示されているが、1枚のベース部72上に載置されるチャック部74の枚数は特に限定されない。また1枚のチャック部74の面積も上記のものに限られず、1枚のベース部72と同じ面積を持っていても良いし、1枚のベース部72よりも大きい面積を持っていても良い。そして同じ面積の場合は、1枚のベース部72に1枚のチャック部74を載置するように構成しても良いし、チャック部74の方の面積が大きい場合には1枚のチャック部74を複数枚のベース部72で支持するようにしても良い。なお、ベース部72とチャック部74とを合わせてホルダ部70と称しても良い。この場合は、ホルダ部70は、ベース部72(下層)とチャック部74(上層)との2層構造となる。上述したように、微動ステージ22は、定盤部50、管路部60、ベース部72、チャック部74の4層構造となっているが、定盤部50、管路部60、及びホルダ部70から成る3層構造であると言うこともできる。
【0040】
微動ステージ22では、複数枚のベース部72上に載置された(敷き詰められた)複数枚のチャック部74によって基板載置面が形成される。各チャック部74は、厚みが実質的に同じとなるように高精度加工されている。従って、複数枚のチャック部74によって形成される微動ステージ22の基板載置面は、複数のベース部72によって形成される平面に倣って、平面度が高く形成される。チャック部74は、ベース部72上に交換・分離可能に載置されている。またチャック部74は、定盤部50および/または管路部60に対して交換・分離可能に載置されている。
【0041】
次にチャック部74の構成について説明する。微動ステージ22は、いわゆるピンチャック型のホルダであって、各チャック部74の上面には、図9に示されるように、複数のピン74a、及び、周壁部74bが形成されている。複数のピン74aは、ほぼ均等な間隔で配置されている。ピンチャック型ホルダにおけるピン74aの径は非常に小さい(例えば直径1mm程度)く、また周壁部74bの幅も細いので、基板Pの裏面にゴミや異物を挟み込んで支持する可能性を低減でき、その異物の挟み込みによる基板Pの変形の可能性も低減できる。なお、ピン74aの本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。周壁部74bは、チャック部74の上面の外周を囲むように形成されている。複数のピン74aと周壁部74bとは、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。また、チャック部74の上面には、照明光IL(図1参照)の反射を抑制するために、表面が黒色となるように皮膜処理、セラミック溶射などの各種表面加工が施されている。
【0042】
微動ステージ22では、基板P(それぞれ図1参照)が複数のピン74a、及び周壁部74b上に載置された状態で、周壁部74bに囲まれた空間に真空吸引力が供給される(空間内の空気が真空吸引される)ことによって、基板Pがチャック部74に吸着保持される。基板Pは、複数のピン74a、及び周壁部74bの先端部に倣って平面矯正される。チャック部74に基板Pを吸着保持させるための構造(基板Pの吸着保持構造)に関しては、後に説明する。
【0043】
また、微動ステージ22は、基板P(図1参照)が複数のピン74a、及び周壁部74b上に載置された状態で、周壁部74bに囲まれた空間に加圧気体(圧縮空気など)を供給することによって、基板載置面上の該基板Pの吸着を解除することができる。基板載置面上の基板Pの吸着を解除させるため、換言すると基板載置面上の基板Pを浮上させるための構造(基板Pの浮上支持構造)に関しては、後に説明する。
【0044】
また、チャック部74の下面にも、図11に示されるように、複数のピン74c、74d、及び周壁部74eが形成されている。すなわちチャック部74の下面もピンチャック構造となっている。チャック部74は、ベース部72上に載置された状態で、複数のピン74c、74d、及び周壁部74eの先端部が、ベース部72の上面に接触する。複数のピン74c、74dは、ほぼ均等な間隔で配置されている。ピン74dは、ピン74cよりも径方向寸法が大きく(太く)設定されており、ベース部72(図10参照)に対する接触面積が、ピン74cよりも広い。ピン74dのほぼ中央にはそれぞれ貫通孔74f、74gが設けられてる。これら貫通孔74f,74gはそれぞれチャック部74を貫通するように構成されており、且つベース部72に設けられている吸引用パイプ62bに連通する貫通孔72b、排気用パイプ62cの貫通孔に連通するベース部72の貫通孔に連通している。貫通孔74fは空気を吸引するための孔であり、チャック部74の上面に形成されたピンチャックと基板Pとによって形成された空間(空気)を貫通孔74fを介して真空吸引して基板Pを吸着保持する。貫通孔74gは空気を排気する(吹き出す)ための圧空排気孔であり、貫通孔74fよりも径(開口径)が小さく構成されており、チャック部74の上面に吸着された基板Pの吸着を解除する際に、貫通孔74gを介して基板Pに対して基板Pを浮上させるだけの勢いを持つエアーを吹きつける。
【0045】
なお、ピン74c、74dの本数及び配置は、特に限定されず、適宜変更が可能である。複数のピン74aと複数のピン74c、74dのXY方向の位置は同じでも良いし、異なる位置に配置されても良い。周壁部74eは、チャック部74の下面の外周を囲むように形成されている。複数のピン74c、74dと周壁部74eとは、先端の高さ位置(Z位置)が同じに設定されている。微動ステージ22では、チャック部74がベース部72上に載置された状態で、周壁部74eに囲まれた空間に真空吸引力が供給されることによってチャック部74がベース部72に吸着保持される。すなわちベース部72チャック部74の下面(裏面)側において、ベース部72と、チャック部74の周壁部74e、ピン74c、およびピン74dとによって囲まれた空間(真空吸引される空間)を介して、チャック部74はベース部72に固着される。その一方で、上述したように、チャック部74の下面の貫通孔74f、74gは、ベース部72の貫通孔に連通しているように配置されているためベース部72に固着されることは無い。
【0046】
ここで本実施形態におけるチャック部74のベース部72に対する固着とは、上述の真空吸着のように、チャック部74の下面の一部(上記空間)に対して吸着力が作用している間は、ベース部72から剥がれず(Z方向の位置ずれを生じず)、且つベース部72に対する相対的な位置ずれ(X,Y方向の位置ずれ)を生じない状態を維持することである。更に、この真空吸着を解除してチャック部74に対する上述の吸着力の作用がなくなれば、ベース部72からチャック部74を離脱(取り外し)できるようになることでもある。なお、複数のベース部72によって形成される平面に倣ってチャック部74を載置すると説明したが、平面でなくても良い。複数のベース部72によって形成される面とチャック部74の下面との形状が実質的に同じであれば、複数のベース部72が平面でなく曲面であっても良い。
【0047】
ここで、微動ステージ22は、複数のチャック部74のベース部72からの浮き上がりを防止するための各種機構を有している。図4図6に示される例では、チャック部74の+Y側の端部に平板状の凸部76が形成されるともに、-Y側の端部に凸部76に対応する凹部(凸部76と重なっているため不図示)が形成されている。隣接するチャック部74は、凸部76と対応する凹部とを嵌合させることによって機械的に締結される。また、微動ステージ22の外周に沿って配置されたチャック部74は、締結部材78によってベース部72に機械的に締結されている。なお、各チャック部74は、定盤部50、あるいは管路部60に締結されても良い(図12参照)。締結部材78は、ベース部72、定盤部50、あるいは管路部60のたとえば+X側かつ+Y側の角に設けるようにし、別の部材を使って、-X側と-Y側からチャック部74を締結部材78に対して押圧して、締結させるようにしても良い。
【0048】
また、図12図14に示される締結構造の例では、チャック部74の+Y側及び-Y側の端部それぞれに凹部176が形成され、対向する一対の凹部176内に帯状の部材178(バンド178)が挿入されている。バンド178は、定盤部50(ベース部72、あるいは管路部60でも良い)に締結されており、これによって、チャック部74のベース部72からの浮き上がりが防止される。
【0049】
なお、チャック部74の締結構造、及び浮き上がり防止構造は、適宜変更が可能である。凸部76と該凸部76に対応する凹部が、チャック部74のY側端部に設けられていたが、X側端部に設けられるようにしても良いし、Y側とX側との両端部に設けられるようにしても良い。図15に示される例では、チャック部74及びY軸方向に関する両端部に凹部276(ホゾ穴)が形成され、該凹部276には、チャック部74の本体部分とは別部品として用意されたホゾ278が接着剤などにより組み付けられる。この例では、チャック部74の本体部分に成型時に表面に出っ張りがないので、所望の外形寸法で高精度に加工できる。また、ホゾ278を脆性材料にしなければ欠けにも強い。
【0050】
また、図16に示される例では、チャック部74の下面側にマグネット374が埋め込まれている。この場合、ベース部72を磁性材料によって形成することにより、チャック部74の浮き上がり、脱落等を防止できる。この場合、各チャック部74を連結させなくても良い。チャック部74の浮き上がり、脱落等を防止をより確実なものとするために、各チャック部74を連結させるようにしても良い。また、チャック部74のマグネット374により、ベース部72への仮止めを行い、さらにチャック部74をベース部72へ吸着保持するようにしても良い。
【0051】
また、図12図14に示される例では、帯状のバンド178によって各チャック部74が定盤部50に締結されたが、図17に示されるように、バンド178に換えてワイヤロープ476によって各チャック部74が締結しても良い。また、図18に示されるように、上記バンド178(図13参照)、ワイヤロープ476(図17参照)に換えて、1本の棒材576を隣接するチャック部74間に挿入する構造であっても良い。この場合、チャック部74のY軸方向の端部に形成される凹部578は、1本の棒材576が一対のチャック部74に跨るように断面で三角形状となるように形成すると良い。
【0052】
次に、上述した微動ステージ22における、チャック部74の吸着保持構造、基板Pの吸着保持構造、及び基板Pの浮上支持構造について、それぞれ図7などを用いて説明する。上述したように微動ステージ22の管路部60は、複数のパイプ62によって構成されている。図7に示されるように、複数のパイプ62には、チャック部74を吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ62a、基板Pを吸着する真空吸引力を供給するための吸引用パイプ62b、基板Pを浮上させる加圧気体を供給するための排気用パイプ62c、及び上記パイプ62a~62c間の隙間に配置されたパイプ62dが含まれる。パイプ62dには、真空吸引力、又は加圧気体が供給されず、専ら各パイプ62a~62cとともに複数のベース部72を支持するための部材として機能する。なお、図7では、5本1組のパイプ62(パイプ62aが2本、パイプ62bが1本、パイプ62cが2本)上にベース部72を介してチャック部74が載置される例(1枚のチャック部74に対応して5本1組のパイプ62が配置される例)が示されているが、各パイプ62a~62cの本数、組み合わせ、配置などは、これに限られず、適宜変更が可能である。また、吸引用パイプ62bと排気用パイプ62cとをそれぞれ設けるのではなく、それぞれの機能を兼用する兼用パイプ62eを設けるようにしても良い。
【0053】
図10に示されるように、基板吸引用のパイプ62bの長手方向の一端(本実施形態では-Y側の端部)には、プラグ64が嵌め込まれている。また、パイプ62bの長手方向の他端には、継手付きのプラグ66(以下、単に「継手66」と称する)が嵌め込まれている。継手66には、不図示の管路部材(チューブなど)を介して微動ステージ22の外部から真空吸引力(図10の黒矢印参照)が供給(パイプ62b内部が真空状態と)される。兼用パイプ62eが設けられる場合、真空吸引力と加圧気体とを切り替え可能供給される。
【0054】
パイプ62bの上面には、複数の貫通孔68が形成されている。また、ホルダ部70のベース部72には、パイプ62b上に載置された状態で貫通孔68とXY平面内の位置がほぼ同じとなる位置に貫通孔72bが形成されている。さらに、ホルダ部70のチャック部74には、ベース部72上に載置された状態で、貫通孔68、72bとXY平面内の位置がほぼ同じとなる位置に貫通孔74fが形成されている。貫通孔68、72b、74fは、連通しており、パイプ62b内に真空吸引力が供給されると、上記貫通孔68、72b、74fを介してチャック部74上面のうち、周壁部74b(図9参照)に囲まれた空間に真空吸引力が供給される。これにより、微動ステージ22は、チャック部74上に載置された基板P(図1参照)を吸着保持する。
【0055】
なお、貫通孔68、72b、74fに供給される真空吸引力の強さを、微動ステージ内の位置に応じて変更しても良い。微動ステージ22の中央部に配置された貫通孔68、72b、74fに供給される真空吸引力の強さを強くすることで、基板Pの中央部に生じる空気溜まりを無くすことができる。また、空気溜まりがなくなった際に、真空吸引力の強さを弱めるようにしても良い。また、微動ステージ22の中央部に配置された貫通孔68、72b、74fに供給される真空吸引力を微動ステージ22の周辺部に配置された貫通孔68、72b、74fよりも早く、つまり時間差をつけて、供給するようにしても良い。ここで、図11に示されるように、貫通孔74fは、ピン74d(太いピン)を貫通するように形成されており、パイプ62bからの真空吸引力がチャック部74の下面側に供給されることがない。
【0056】
なお、図9では、チャック部74に貫通孔74fが2つ形成された例が示されているが、貫通孔74f(対応する貫通孔68、72bも同様)の数、及び配置は、これに限られず、適宜変更が可能である。なお、貫通孔68、72b、74fの直径はそれぞれ異なっていても良い。より下方に位置する貫通孔の直径を大きくしたり、つまり貫通孔68の直径を貫通孔74fの直径よりも大きくしたり、これとは逆に、より上方に位置する貫通孔の直径を大きくしたり、つまり貫通孔74fの直径を貫通孔68の直径よりも大きくするようにしても良い。これにより、チャック部74、ベース部72、パイプ62bとを積層(載置)する際の位置合わせが容易となる。また、貫通孔68、72b、74fの直径は、微動ステージの中央付近に位置する貫通孔68、72b、74fほど大きくするようにしても良い。また、貫通孔68、72b、74fの直径は、Y軸方向に関して、プラグ64に近いほど大きくするようにしても良い。
【0057】
チャック部74の吸着保持構造は、上記基板Pの吸着保持構造と概ね同じに構成されている。すなわち、チャック部吸引用のパイプ62aの両端部には、プラグ64と継手66とがそれぞれ嵌め込まれ、継手66を介して微動ステージ22の外部からパイプ62a内に真空吸引力が供給される。パイプ62aの上面には、貫通孔が形成され(図7参照)、該貫通孔とベース部72に形成された貫通孔(図7参照)を介して、チャック部74下面のうち、周壁部74e(図11参照)に囲まれた空間に真空吸引力が供給される。図11における符号Dは、ベース部72に形成された貫通孔に対応する領域を示しており、真空吸引力がピン74c、74dと重ならない位置に供給されることが分かる。
【0058】
上記実施形態では、チャック部74のベース部72に対して固着する方法(構成)として、真空吸着する方法(構成)について説明したが、チャック部74を固着する方法としては吸着に限られるものでは無い。たとえば、チャック部74の裏面の一部をベース部72に接着材で接着することで、チャック部42をベース部72に固着するようにしても良い。この場合、チャック部74とベース部72とを接着する接着剤に求められる性能は、両者が剥がしやすく、ずれにくいことである。接着剤が硬化した際に非常に硬くなって膨張し、接着剤がチャック部74をベース部72から持ち上げてしまわないこと、つまり段差を生じさせないことが求められる。チャック部74裏面とベース部72とが密着することによってチャック部42上面の平面度は決まるため、接着剤は硬化前はペースト状でチャック部42裏面の溝部に入り込むが、硬化後は弾力性のあるゴム状のものであることが好ましく、たとえば、湿気硬化型の剥離可能な変形シリコーン系シーリング材などが用いられることが好ましい。
【0059】
またチャック部74をベース部72に固着する方法として、上述の真空吸着による方法と接着による方法とを兼用しても良い。
【0060】
なおチャック部74に接着材を塗布した場所からは、空気の出し入れが出来なくなるので、チャック部74の裏面における接着剤の塗布する場合には、基板Pを吸着保持するための空気の流路および吸引孔を塞がないような位置に塗布する。
【0061】
また、チャック部74の内部にマグネットを内蔵するとともに、ベース部72(図2など参照)を磁性材料によって形成しておき、このマグネットの磁気力によってチャック部474をベース部72に固着するようにしても良い。
【0062】
またマグネットと磁性材料の関係を逆転させて、チャック部74を磁性材料で形成し、ベース部72にマグネットを設けるように構成することも考えられるが、この場合には、磁性材料が例えば金属である場合には、チャック部74の表面で静電気が生じ易くなるため、静電気対策(除電装置の利用)が必要になる。また露光光による照射熱やステージから伝わる熱などの熱対策、温度管理(冷却用気体の利用)も行う必要がある。
【0063】
なお、装置の運搬時や組み立て時など、チャック部74をベース部72に吸着保持(真空吸着)できない場合には、上記接着剤やマグネット等を用いて、チャック部74がベース部72からずれない(外れない)ようにしても良い。
【0064】
基板Pの浮上支持構造も、上記基板Pの吸着保持構造と概ね同じに構成されている。すなわち、基板浮上用のパイプ62cに加圧気体が供給されると、該パイブ62cに形成がされた貫通孔、該貫通孔にそれぞれ連通するベース部72の貫通孔、及びチャック部74の貫通孔74g(図9参照)を介して、周壁部74b内に加圧気体が供給される。これにより、微動ステージ22は、チャック部74上に載置された基板P(図1参照)を下方から浮上させることができる。以上のように、管路部60、ベース部72、チャック部74によって、基板Pが吸着保持され基板載置面に沿って平面矯正される。つまり、管路部60、ベース部72、チャック部74の3層構造によって、基板ホルダの機能を有しているとも言える。
【0065】
なお、微動ステージ22は、基板Pをチャック部74からメカ部材を使って浮上させる浮上ピンを有していても良い。浮上ピンは基板Pに当接する面を有しており、該面を支持する棒上の部材によって構成される。浮上ピンの面とチャック部74の上面とで、基板載置面を形成する。また、浮上ピンは、各チャック部74との間に配置されることでチャック部74の浮き上がり防止構造としても機能する。なお、浮上ピンの数や配置は特に限定されない。
【0066】
なお、管路部60は、複数のパイプ62を備える構成として説明をしたが、一枚もしくは複数の板状の部材に溝を設け、定盤部50および/またはベース部72により該溝を覆うことで、加圧気体(圧縮空気など)が流れる流路を形成したり、真空吸引力が供給される(空間内の空気が真空吸引される)流路を形成したりするようにしても良い。
【0067】
以上のようにして構成された液晶露光装置10(図1参照)では、不図示の主制御装置の管理の下、不図示のプレートローダによって、微動ステージ22上への基板Pのロードが行われるとともに、不図示のアライメント検出系を用いてアライメント計測が実行され、そのアライメント計測の終了後、基板P上に設定された複数のショット領域に逐次ステップ・アンド・スキャン方式の露光動作が行なわれる。この露光動作は従来から行われているステップ・アンド・スキャン方式の露光動作と同様であるので、その詳細な説明は省略するものとする。
【0068】
上記アライメント計測時、及び走査露光時において、微動ステージ22は、基板Pを吸着保持する。また、露光対象の基板Pが基板載置面上に載置される前のプリアライメント動作時、あるいは露光済みの基板Pを外部装置に搬出する際など、微動ステージ22は、基板Pの下面に加圧気体を噴出して、基板載置面上から基板Pの吸着を解除する。
【0069】
以上説明した本実施形態に係る微動ステージ22(基板ホルダ)によれば、複数のベース部72によって形成された平面上に複数のチャック部74をタイル状に敷き詰めることによって基板載置面(基板保持面)を形成するので、各チャック部74の厚さを精度良く加工するのみで、基板載置面の平面度を容易に確保することが可能となる。また、チャック部74は、基板Pのサイズに比べて小さいので、高精度で平面度良く加工することが容易である。また、チャック部74として、軽量且つ高剛性であるが、大型化が困難であるセラミックス材料を使用することが容易となる。
【0070】
また、基板ステージ装置20において、微動ステージ22の交換は、基板載置部全体を交換する必要がなく、所望のチャック部74のみを交換することが可能であるので、効率が良い。
【0071】
また、各チャック部74を真空吸着によってベース部72に固定するので、チャック部74に均等に吸着力を作用させることができる。従って、チャック部74の変形を抑制できる。
【0072】
また、微動ステージ22は、最下層である定盤部50がハニカム構造体によって形成されているので、軽量で剛性が高く、基板Pを平面度良く保持することが可能となる。
【0073】
また、微動ステージ22は、定盤部50とベース部72との間に管路部60が配置(挿入)されるため、管路部材を別途ホルダ部70に接続する場合に比べ、ベース部72、及びチャック部74の配置(交換も含む)を含み、微動ステージ22の組み立てが容易である。
【0074】
なお、微動ステージ22は、定盤部50、管路部60、ベース部72、チャック部74の4層構造として説明したが、管路部60の上面がベース部72の上面と同等の平面度を形成できる場合、ベース部72を管路部60の上に積層しなくても良い。この場合は、微動ステージ22は、定盤部50、管路部60、チャック部74の3層構造であると言える。
【0075】
次に、微動ステージ22の組み立て手順、及びチャック部74の交換方法について説明する。微動ステージ22は、一例として、定盤部50上に管路部60が載置された後に管路部60上にホルダ部70が載置されることによって組み立てられる。上述したように、ホルダ部70は、複数のベース部72が敷き詰められることよって平面度が高い平面が形成され、該平面上に複数のチャック部74が敷き詰められることによって形成される。
【0076】
ここで、複数のチャック部74それぞれは、厚みが均一となるように高精度加工されているが、チャック部74の枚数が多いことから、全てのチャック部74の厚みを厳密に均一とすることが困難となる可能性がある。
【0077】
そこで、図19に示されるように、複数のベース部72によって形成された平面上に複数のチャック部74を敷き詰めた後、該複数のチャック部74によって形成される面(基板載置面)に対してラップ加工を施すことにより、基板載置面を高い精度(平面度)の平面に加工する。なお、本実施形態では、加工対象物が大型の微動ステージ22であることから、ラップ加工は、ラッピングツール98を手動で加工対象物に対して動かすハンドラッピングにより行われる。これにより、複数のチャック部74の個々の厚みを厳密に管理することなく、平面度の非常に高い基板載置面を有する微動ステージ22を製造することができる。なお、ハンドラッピング時において使用する水分が、チャック部74よりも下方に浸透しないように、隣接するベース部72間の継ぎ目を、上述したように目地材(図10参照)などを用いて防水加工することが好ましい。また、図19では、各チャック部74がベース部72に対して真空吸着保持された状態でラップ加工が行われる場合が示されているが、該吸着保持は、必ずしも行わなくても良い。
【0078】
また、チャック部74には、基板Pと接触する複数の小径のピン74aが形成されているため、該ピン74aの破損、あるいは表面加工(皮膜など)の欠損などが生じる可能性がある。上述したように、本実施形態では、当該欠損の生じたチャック部74のみをピンポイント交換することができるので、効率が良いが、交換後に装着されたチャック部74とその他(既設)のチャック部74との間に微少な段差が発生する可能性がある。
【0079】
図20に示される例では、交換用のチャック部174は、既設のチャック部74よりも薄く形成されている。チャック部174の下面には、外周(周壁部74eの先端)に沿って接着剤が塗布されている。また、接着剤は、チャック部174に形成された気体供給用、及び真空吸引用の孔部を囲むように塗布されている。図24に示されるように、周壁部74eの先端、及びピン74dに形成された孔部の周囲には、溝が形成されており、該溝に接着剤が塗布される。接着剤は、空気に触れると硬化し、且つ硬化後に剥がしやすいものが好ましい。なお、接着剤塗布用の溝は、ベース部72に形成しても良い。
【0080】
図21に示されるように、チャック部174は、他のチャック部74に比べて薄いので、チャック部174とチャック部74との間には、段差が形成される。そこで、交換用のチャック部174に隣接する一対のチャック部74間に、セラミックスによって形成された板98を架け渡す。この板98は、実質的な剛体であれば、セラミックス以外の材料でも良い。チャック部174は、チャック部74よりも薄いので、チャック部174の上面と板98の下面との間には、隙間が形成される。
【0081】
次いで、図22に示されるように、チャック部174の下方に配置されたベース部72から圧縮空気を供給する。該流路は、ベース部72において、パイプ62の長手方向(ここではY軸方向)に沿って複数形成され、その一部は、上面側が細く形成されている。そして、図24に示されるように、交換用のチャック部174の下面には、ピン74cと同様に下方に突出した座面74hが形成されており、上記圧縮空気は、座面74hの先端に対して噴出される。これにより、図22に示されるように、チャック部174は、圧縮空気の静圧によって、ベース部72上に浮上し、板98の下面に密着する。この状態で、所定の時間が経過すると、接着剤が硬化する。接着剤は、硬化後に周壁部74eの一部、及び気体供給用、及び気体吸引用の管路として機能する。
【0082】
そして、図23に示されるように、一対のチャック部74間に架設された板98を取り除くと、チャック部174表面の高さ位置が、他のチャック部74表面の高さ位置と実質的に一致した状態となる。これにより、複数のチャック部74と交換用チャック部174とによって形成される基板載置面の全体的な平面度が確保される。以上説明したチャック部74の交換方向によれば、基板ステージ装置20から微動ステージ22を外すことなく所望のチャック部74(基板載置面の一部)のみを容易に交換することができる。
【0083】
なお、交換用チャック部174の位置決め、及び固定手順は、これに限られない。図26に示される例では、チャック部174に形成された真空吸引用の貫通孔74f(図9参照)に、上方から容易に取り外しが可能なプラグ94が取り付けられている。また、基板Pを浮上支持するために加圧気体を噴出するための管路は、他のピン74aよりも幾分太いピン74iの内部に形成され、該ピン74iの先端部には、加圧気体噴出用の貫通孔74gが開口している。この場合、図25に示されるように、板98には、真空吸着用の継手98aが接続されており、交換用チャック部174は、上面側から真空吸引されることによって、他のチャック部74と上面の高さ位置が揃えられる。プラグ94は、上記接着剤の硬化後に取り外される。本例によれば、上述の例(図24など参照)と異なり、ベース部72、及びチャック部174の裏面にエアフロー用の加工を施す必要がない。
【0084】
また、図27及び図28に示される例では、交換用チャック部174には、厚さ方向に貫通するねじ穴が複数形成されており、該ねじには、セットねじ74jが螺合している。また、板98には、上記ねじ穴と一致する位置に、セットねじ74jのねじ径よりも大径の工具穴98bが厚さ方向に貫通して形成されている。この例では、工具穴98bから工具98cを挿入し、セットねじ74jを回すと、セットねじ74jの先端部がベース部72に突き当たり、その後チャック部174がベース部72から持ち上がって板98に密着する。この例では、交換用のチャック部174の上面の面位置と既設のチャック部74の上面の面位置を揃えるのに、空気(高圧、真空圧)を必要としないので、チャック部74の交換作業が容易である。なお、図27及び図28に示される例では、セットねじ74jによってチャック部174の上面の高さ位置が機械的に規定されるので、チャック部174とベース部72とを接着する接着剤は、硬化性のものに限られず、コーキング剤のような弾力性のあるものを用いても良い。
【0085】
なお、以上説明した実施形態に係る微動ステージ22などの構成は、一例であって、適宜変更が可能である。図29に示される変形例に係るチャック部474のように、チャック部474の全体を多孔質材で形成するようにしても良い。該多孔質材に真空吸引力を供給することによって、基板Pを吸着保持するようにしても良い。この場合、チャック部474の内部にマグネットを内蔵するとともに、ベース部72(図2など参照)を磁性材料によって形成し、磁気力によってチャック部474をベース部72に固着(固定)すると良い。
【0086】
また、多孔質材で形成されたチャック部474をベース部72に固着する方法としては上述の接着剤による方法を用いても良い。また、多孔質材のチャック部474の下面の一部に、真空吸着可能な領域(例えば、一部にくり抜きを形成し、そのくり抜き部に空気漏れが無いように空気漏れを防止する部材(ゴム等)をコーティングして真空吸引できる空間等)を形成している場合には真空吸引により固着するようにしても良い。また、上述のようにチャック部474を多孔質材で形成し、該多孔質材に加圧気体を供給するように構成することによって、基板Pを浮上支持する非接触ホルダを得ることもできる。多孔質材で形成されたチャック部474の上面(基板載置面)には、管路部60と連通する微小な孔部が複数形成されている。非接触ホルダ32は、管路部60から供給される加圧気体(例えば圧縮空気)が上記孔部(の一部)を介して基板Pの下面に噴出することにより基板Pを浮上させる。また、非接触ホルダは、上記加圧気体の噴出と併用して、真空吸引力により、基板Pの下面と基板支持面との間の空気を吸引する。これにより、基板Pに荷重(プリロード)が作用し、非接触ホルダの上面に沿って基板Pが平面矯正される。つまり基板Pを平面矯正しながら(平坦にしながら)該基板Pをチャック部474上で浮上支持(非接触支持)することができる。
【0087】
また、図30に示される変形例のように、隣接するチャック部74同士の衝突を防止するため、隣接するチャック部74間に、緩衝部材676を挿入しても良い。緩衝部材676は、粘弾性体によって形成すると良い。
【0088】
なお、以上説明した実施形態の構成は、適宜変更が可能である。上記実施形態において、微動ステージ22は、基板Pの非接触支持(基板P下面に対する加圧気体の噴出)と、基板Pの吸着保持(基板Pの真空吸引)とを選択的に行うことが可能な構成であったが、これに限られず、これらの機能の一方のみを行う形態であっても良い。
【0089】
また、上記実施形態において、各チャック部74は、ベース部72に真空吸引力によって固定(機械的に拘束しない状態で固定)される構成であったが、これに限られず、各チャック部74をベース部72に対して接着剤等によって固定しても良い。この場合、チャック部74の安定性、及び交換容易性をそれぞれ確保するため、上記接着剤としては、硬化時の変形が少なく、且つ容易に剥離することができる接着剤、たとえば、エポキシ樹脂系の接着剤を用いることが好ましい。また、この場合、ベース部72からの剥離を容易にするために、ベース部72、あるいはチャック部74に剥離剤、離型剤を予め塗布しておくと良い。剥離剤、離型剤として、塗膜が薄く(たとえば0.1~1.0μm程度)且つ、表面張力が低いフッ素系離型剤などを用いると良い。
【0090】
また、本実施形態の微動ステージ22は、水平面内2軸方向に長ストロークで移動可能であったが、これに限られず、水平面内の1軸方向のみに長ストロークで移動可能な構成であっても良いし、水平面内の位置が固定であっても良い。また、微動ステージ22は、水平面内6自由度方向に微少移動可能な構成であったが、微少移動しない構成の基板保持部材(基板ホルダ)に上記実施形態の構成を適用しても良い。
【0091】
また、照明光は、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。また、照明光としては、DFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、エルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。また、固体レーザ(波長:355nm、266nm)などを使用しても良い。
【0092】
また、投影光学系14が複数本の光学系を備えたマルチレンズ方式の投影光学系である場合について説明したが、投影光学系の本数はこれに限らず、1本以上あれば良い。また、マルチレンズ方式の投影光学系に限らず、オフナー型の大型ミラーを用いた投影光学系などであっても良い。また、投影光学系14としては、拡大系、又は縮小系であっても良い。
【0093】
また、露光装置の用途としては角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置に限定されることなく、有機EL(Electro-Luminescence)パネル製造用の露光装置、半導体製造用の露光装置、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるマスク又はレチクルを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも適用できる。
【0094】
また、露光対象となる物体はガラスプレートに限られず、ウエハ、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど、他の物体でも良い。また、露光対象物がフラットパネルディスプレイ用の基板である場合、その基板の厚さは特に限定されず、フィルム状(可撓性を有するシート状の部材)のものも含まれる。なお、本実施形態の露光装置は、一辺の長さ、又は対角長が500mm以上の基板が露光対象物である場合に特に有効である。
【0095】
液晶表示素子(あるいは半導体素子)などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたマスク(あるいはレチクル)を製作するステップ、ガラス基板(あるいはウエハ)を製作するステップ、上述した各実施形態の露光装置、及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをガラス基板に転写するリソグラフィステップ、露光されたガラス基板を現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ガラス基板上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明の物体保持装置は、物体を保持するのに適している。また、本発明の露光装置は、物体に所定のパターンを形成するのに適している。また、本発明のフラットパネルディスプレイの製造方法は、フラットパネルディスプレイの製造に適している。また、本発明のデバイス製造方法は、マイクロデバイスの製造に適している。
【符号の説明】
【0097】
10…液晶露光装置、20…基板ステージ装置、22…微動ステージ、50…定盤部、60…管路部、70…ホルダ部、72…ベース部、74…チャック部、P…基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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