(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】消泡剤、消泡剤を含む潤滑油組成物及び潤滑油組成物を用いた機械
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20240109BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20240109BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240109BHJP
C10N 30/18 20060101ALN20240109BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240109BHJP
C10N 40/06 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
C10M155/02
B01D19/04 A
C08F290/06
C10N30:18
C10N40:04
C10N40:06
(21)【出願番号】P 2023543157
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2022031154
(87)【国際公開番号】W WO2023037837
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】P 2021145316
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】藤原 龍太
(72)【発明者】
【氏名】小池 展行
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-209778(JP,A)
【文献】特開2014-062250(JP,A)
【文献】特表2010-501701(JP,A)
【文献】特開昭59-069110(JP,A)
【文献】特表2008-542462(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161948(WO,A1)
【文献】特表2001-508357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
B01D 19/00-19/04
B01D 23/00-35/04,35/08-37/08
C08F 283/01,290/00-290/14,299/00-299/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と消泡剤とを含有する潤滑油組成物であって、
前記消泡剤が、
下記一般式(1-1)で表される化合物であるシリコーン鎖含有官能基を有する重合性単量体(1)と、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基を有する重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体である潤滑油組成物。
【化1】
(前記一般式(1-1)中、
R
11
は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
17
)
3
で表される基(R
17
はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12
は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
18
)
3
で表される基(R
18
はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
13
は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
14
は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
15
は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
16
は水素原子又はメチル基であり、
L
1
は2価の有機基であり、
nは0以上の整数である。)
【請求項2】
潤滑油基油と消泡剤とを含有する潤滑油組成物であって、
前記消泡剤が、シリコーン鎖含有官能基を有する重合性単量体(1)と、
下記式(2-1)で表される化合物であるポリオキシアルキレン鎖含有官能基を有する重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体である潤滑油組成物。
【化2】
(前記一般式(2-1)中、
R
21
は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又はフェニル基であり、
R
22
は水素原子又はメチル基であり、
nは1~4の範囲の整数であり、
mは1~4の範囲の整数であり、
p及びqはそれぞれ独立に0~200の範囲の整数であり、p+q≧1を満たす。)
【請求項3】
前記重合性単量体(1)が、下記一般式(1-1)で表される化合物である請求項
2に記載の潤滑油組成物。
【化1】
(前記一般式(1-1)中、
R
11は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
17)
3で表される基(R
17はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
18)
3で表される基(R
18はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
14は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
15は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
16は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基であり、
nは0以上の整数である。)
【請求項4】
前記重合性単量体(2)が、下記式(2-1)で表される化合物である請求項
1に記載の潤滑油組成物。
【化2】
(前記一般式(2-1)中、
R
21は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又はフェニル基であり、
R
22は水素原子又はメチル基であり、
nは1~4の範囲の整数であり、
mは1~4の範囲の整数であり、
p及びqはそれぞれ独立に0~200の範囲の整数であり、p+q≧1を満たす。)
【請求項5】
前記重合成分が炭素原子数1~30のアルキル基を有する重合性単量体(3)をさらに含む請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記重合性単量体(3)が、下記式(3-1)で表される化合物である請求項
5に記載の潤滑油組成物。
【化3】
(前記一般式(3-1)中、
R
31は炭素原子数1~30のアルキル基であり、
R
32は水素原子又はメチル基である。)
【請求項7】
前記炭素原子数1~30のアルキル基が、炭素原子数3~14の環状アルキル基である請求項
5に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記重合性単量体(1)と前記重合性単量体(2)の質量比が、重合性単量体(1):重合性単量体(2)=40:60~80:20の範囲にある請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記重合体の重量平均分子量が3,000~50,000の範囲にある請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
内燃機関又は電動モーターを備える機械において、前記機械の駆動部の潤滑に用いられる請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
内燃機関又は電動モーターを備える自動車において、前記自動車の駆動部の潤滑に用いられる請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
請求項
1又は2に記載の潤滑油組成物を駆動部に用いた機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤、消泡剤を含む潤滑油組成物及び潤滑油組成物を用いた機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は二酸化炭素の排出量削減が産業界における重要なテーマとなっている。なかでも自動車を含む輸送機器の二酸化炭素の排出量は全体の2割近くを占めており、これを削減するための対応策の1つとして、ガソリン自動車から電気自動車(EV)へ切り替えが各国の方針として打ち出されている。
【0003】
EVにおける最重要課題は燃費向上であり、そのために車体の小型化、駆動系の高効率化などの検討が急ピッチで進められている。駆動系の高効率化の課題の1つが潤滑油の泡立ちである。摩擦抵抗低減のために潤滑油は低粘度化が進んでいるが、この低粘度化によって泡立ちやすくなっている。
【0004】
高負荷運転や高速走行が連続して行われると、低粘度化した潤滑油中では発泡が増大し、発泡により潤滑性能や冷却効率が低下する;摩擦箇所における油膜の破断により、摩耗および焼付きが発生する;油温の上昇により潤滑油の劣化が促進される、等の問題が発生する場合があった。
【0005】
このため運転初期から長期にわたって発泡を抑制できるよう、高い消泡性を有する潤滑油が求められており、潤滑油には泡立ちを防止するための消泡剤が含まれる。当該消泡剤としては、ポリシロキサン系消泡剤が知られており、種々のポリシロキサン系消泡剤が提案されている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-87065号公報
【文献】特開2009-235252号公報
【文献】特開2008-120889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらなる高性能化及び省燃費化のために潤滑油は低粘度化が進んでおり、低粘度な潤滑油に対しては従来のポリシロキサン系消泡剤では十分な消泡性が得られない問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、優れた消泡性を示す消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、シリコーン鎖含有官能基とを有する重合性単量体(1)とポリオキシアルキレン鎖含有官能基を有する重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体が優れた消泡性を示す消泡剤であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、シリコーン鎖含有官能基を有する重合性単量体(1)と、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基を有する重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体である消泡剤に関するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、優れた消泡性を示す消泡剤が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
尚、本願明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいう。
【0013】
[消泡剤]
本発明の消泡剤は、シリコーン鎖含有官能基を有する重合性単量体(1)と、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基を有する重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体である。以下、重合性単量体(1)と重合性単量体(2)とを重合成分とする重合体を「本発明の重合体」という場合がある。
【0014】
本発明において「重合成分」とは、重合体を構成する成分という意味であり、重合体を構成しない溶媒や重合開始剤等は含まれない。
【0015】
本発明において「重合性単量体」とは、重合性不飽和基を有する化合物という意味であり、重合性単量体(1)および重合性単量体(2)が有する重合性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリロイルアミノ基、マレイミド基等が挙げられる。これらの中でも、原料の入手容易性や重合反応性が良好であることから、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0016】
重合性単量体(1)が有するシリコーン鎖含有官能基におけるシリコーン鎖とは、下記一般式(SILICONE)で表される基が挙げられる。
【0017】
【化1】
(前記一般式(SILICONE)中、
Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1~18のアルキル基又はフェニル基であり、
n1は繰り返し数である。)
【0018】
Rの炭素原子数1~18のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び環状アルキル基のいずれでもよく、具体例としてメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ヘキサデシル基等を挙げることができる。
Rの炭素原子数1~18のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0019】
n1の繰り返し数は、例えば1~200の範囲の整数であり、好ましくは1~150の範囲の整数である。
【0020】
シリコーン鎖含有官能基のシリコーン鎖部分の数平均分子量は例えば100~20,000の範囲であり、好ましくは400~18,000の範囲であり、より好ましくは1,000~15,000の範囲であり、さらに好ましくは1,500~12,000の範囲である。
【0021】
重合性単量体(1)は、好ましくは下記一般式(1-A)で表される化合物及び下記一般式(1-B)で表される化合物からなる群から選択される1種以上である。
【0022】
【化2】
(前記一般式(1-A)及び(1-B)中、
R
1は、水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価若しくは3価の有機基又は単結合であり、
L
2は2価の有機基又は単結合であり、
R
2はシリコーン鎖含有官能基であり、
R
3は2価のシリコーン鎖含有官能基であり、
xは1又は2の整数である。)
【0023】
前記一般式(1-A)において、xが2の場合、2つのR2は互いに同じでもよく、異なってもよい。前記一般式(1-B)において、括弧で括られた2つの構造は互いに同じでもよく、異なってもよい。
【0024】
L1の2価の有機基は、好ましくは炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である。
【0025】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基、n-ドデシレン基、イソプロピレン基、2-メチルプロピレン基、2-メチルへキシレン基、テトラメチルエチレン基等が挙げられ、
【0026】
L1の炭素原子数1~50のアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数1~5のアルキレン基であり、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基又はイソプロピレン基である。
【0027】
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、例えば前記アルキレン基の中の1つ以上の-CH2-が-O-に置換された基である。
L1の炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基は、好ましくは炭素原子数1~15のアルキレンオキシ基であり、より好ましくは炭素原子数1~8のアルキレンオキシ基であり、さらに好ましくはメチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、オキシトリメチレン基、ブチレンオキシ基、オキシテトラメチレン基、ペンチレンオキシ基、ヘプチレンオキシ基、オクチレンオキシ基、ジメチレンオキシ基、ジエチレンオキシ基又はジプロピレンオキシ基である。
【0028】
L1の2価の有機基が、炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基である場合、これら2価の有機基は、-CH2-の一部がカルボニル基(-C(=O)-)、フェニレン基に置き変わっていてもよく、さらに炭素原子に水酸基等が置換していてもよい。
【0029】
L1の3価の有機基は、上述の2価の有機基中のいずれか1つの水素原子が結合手に置き換わった基であり、好ましくは炭素原子数1~50のアルキレン基又は炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基のいずれか1つの水素原子が結合手に置き換わった基である。
炭素原子数1~50のアルキレン基及び炭素原子数1~50のアルキレンオキシ基の具体例等は、上記と同じである。
【0030】
L2の2価の有機基としては、L1の2価の有機基と同じものが挙げられる。
【0031】
R2のシリコーン鎖含有官能基は、好ましくは下記一般式(1-C)で表される基である。
【0032】
【化3】
(前記一般式(1-C)中、
R
11は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
16)
3で表される基(R
16はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
17)
3で表される基(R
17はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
14は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
15は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
nは0以上の整数である。)
【0033】
R11、R12、R13、R14、R16及びR17はメチル基であると好ましく、R15は炭素原子数1~6のアルキル基であると好ましい。
【0034】
R3の2価のシリコーン鎖含有官能基は、好ましくは前記一般式(SILICONE)で表される基である。
【0035】
重合性単量体(1)は、好ましくは下記一般式(1-1)で表される化合物である。
【0036】
【化4】
(前記一般式(1-1)中、
R
11は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
17)
3で表される基(R
17はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
12は、炭素原子数1~6のアルキル基又は-OSi(R
18)
3で表される基(R
18はそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基)であり、
R
13は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
14は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
15は、炭素原子数1~6のアルキル基であり、
R
16は水素原子又はメチル基であり、
L
1は2価の有機基であり、
nは0以上の整数である。)
【0037】
重合性単量体(1)は1種単独の使用でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
重合性単量体(1)は、公知の方法により製造することができる。また、重合性単量体(1)は、市販品を用いてもよい。
【0039】
重合性単量体(2)が有する(ポリ)オキシアルキレン鎖を含む基とは、オキシアルキレンの繰り返し部分を含む1価の基又はオキシアルキレンの繰り返し部分を含む2価の連結基である。
本発明の重合体を潤滑油組成物の消泡剤として使用する場合に、重合性単量体(2)が有する(ポリ)オキシアルキレン鎖を含む基によって、潤滑油組成物の潤滑油基油又は消泡剤以外の潤滑油用添加剤に対して相溶性を示すことができる。
【0040】
ポリオキシアルキレン鎖を含む基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である重合性単量体(2)としては、例えばポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・1,2-ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリ1,2-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・1,2-ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリ1,2-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(テトラエチレングリコール・1,2-ブチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリテトラエチレングリコール・ポリ1,2-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ1,2-ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(トリメチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリトリメチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(1,2-ブチレングリコール・トリメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ1,2-ブチレングリコール・ポリトリメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリ(1,2-ブチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ1,2-ブチレングリコール・ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
尚、上記「ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのランダム共重合物を意味し、「ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール」は、エチレングリコールとプロピレングリコールとのブロック共重合物を意味する。
【0041】
重合性単量体(2)は、好ましくは下記一般式(2-1)で表される化合物である。
【化5】
(前記一般式(2-1)中、
R
21は水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又はフェニル基であり、
R
22は水素原子又はメチル基であり、
nは1~4の範囲の整数であり、
mは1~4の範囲の整数であり、
p及びqはそれぞれ独立に0~200の範囲の整数であり、p+q≧1を満たす。)
【0042】
R21の炭素原子数1~30のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基及び環状アルキル基のいずれでもよく、具体例としてメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ヘキサデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、ステアリル基等を挙げることができる。
【0043】
R21の炭素原子数1~30のアルキル基は、好ましくは炭素原子数1~25のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数3~14の環状アルキル基である。
【0044】
前記一般式(2-1)で表される化合物において、pで括られた繰り返し単位とqで括られた繰り返し単位の部分は、pで括られた繰り返し単位とqで括られた繰り返し単位のランダム共重合体構造でもよく、pで括られた繰り返し単位とqで括られた繰り返し単位のブロック共重合体構造でもよい。
【0045】
重合性単量体(2)は1種単独の使用でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
重合性単量体(2)は、公知の方法により製造することができる。また、重合性単量体(2)は、市販品を用いてもよい。
【0047】
本発明の重合体は、重合性単量体(1)及び重合性単量体(2)を重合成分とする共重合体であり、当該共重合体の重合形式は特に限定されず、重合性単量体(1)及び重合性単量体(2)のランダム共重合体でもよく、重合性単量体(1)及び重合性単量体(2)のブロック共重合体でもよい。
【0048】
本発明の重合体において、重合性単量体(1)と重合性単量体(2)の質量比は、例えば重合性単量体(1):重合性単量体(2)=5:95~95:5の範囲であり、好ましくは重合性単量体(1):重合性単量体(2)=25:75~90:10の範囲であり、より好ましくは重合性単量体(1):重合性単量体(2)=40:60~85:15の範囲であり、さらに好ましくは重合性単量体(1):重合性単量体(2)=50:50~85:15の範囲である。
【0049】
本発明の重合体において、重合性単量体(1)に由来する構造の含有割合(以下、単に「重合性単量体(1)の含有割合」という)は、重合体の全量に対して例えば5質量%以上であり、15質量%以上、35質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上の順に好ましい。
重合性単量体(1)の含有割合の上限については特に限定されないが、重合体の全量に対して例えば95質量%以下であり、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下の順に好ましい。
重合性単量体(1)の含有割合は、本発明の重合体の質量を基準にした値(重合性単量体(1)の重量/重合体の重量)であり、本発明の重合体を製造する際の重合性単量体(1)の原料仕込み比により調整できる。
【0050】
本発明の重合体は、重合性単量体(1)および重合性単量体(2)を重合成分とする重合体であればよく、さらに炭素原子数1~30のアルキル基を有する重合性単量体(3)を含むと好ましい。
【0051】
重合性単量体(3)が有するアルキル基は、炭素原子数1~30のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1~25のアルキル基であり、より好ましくは炭素原子数3~14のアルキル基である。
尚、上記アルキル基は直鎖でも分岐でもよく、また、環状でもよい。
【0052】
炭素原子数1~30のアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイル基である重合性単量体(3)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数が1~18のアルキルエステル;ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸の炭素原子数3~18の橋架け環状アルキルエステルなどが挙げられる。
【0053】
炭素原子数1~30のアルキル基を有し、重合性不飽和基がビニルエーテル基である重合性単量体(3)としては、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、n-ヘキシルビニルエーテル、n-オクチルビニルエーテル、n-ドデシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;シクロアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0054】
炭素原子数1~30のアルキル基を有し、重合性不飽和基が(メタ)アクリロイルアミノ基である重合性単量体(3)としては、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0055】
炭素原子数1~30のアルキル基を有し、重合性不飽和基がマレイミド基である重合性単量体(3)としては、例えばメチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0056】
重合性単量体(3)は、好ましくは下記一般式(3-1)で表される化合物である。
【化6】
(前記一般式(3-1)中、
R
31は炭素原子数1~30のアルキル基であり、
R
32は水素原子又はメチル基である)
【0057】
重合性単量体(3)は、アルキル基にさらに芳香族基が置換していてもよく、例えばベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシメチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
本発明の重合体は、重合性単量体(1)、重合性単量体(2)および任意に重合性単量体(3)を重合成分とする重合体であればよく、本発明の効果を損なわない範囲で重合性単量体(1)、重合性単量体(2)および重合性単量体(3)以外のその他の重合性単量体を重合成分として含んでもよい。
【0059】
前記その他の重合性単量体としては、例えばフッ素含有官能基を有する重合性単量体(4)および芳香族基を有する重合性単量体(5)が挙げられる。
【0060】
重合性単量体(4)が有するフッ素含有官能基としては、炭素原子数1~6のフッ素化アルキル基、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖を含む基等が挙げられる。
【0061】
尚、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とは、2価のフッ化炭化水素基と酸素原子が交互に連結した下記一般式(PFPE)で表される構造である。
【0062】
【化7】
(前記一般式(PFPE)中、
Xは、それぞれ独立に、パーフルオロアルキレン基であり、
n4は繰り返し数である。)
【0063】
前記一般式(PFPE)で表される構造において、n4で括られた繰り返し単位内のXが2種以上の場合、n4で括られた繰り返し単位部分は、n4で括られた繰り返し単位のランダム共重合体構造でもよく、n4で括られた繰り返し単位のブロック共重合体構造でもよい。
【0064】
Xのパーフルオロアルキレン基としては、下記パーフルオロアルキレン基(X-1)~(X-6)が例示できる。
【0065】
【0066】
Xのパーフルオロアルキレン基は、好ましくは炭素原子数1~3のパーフルオロアルキレン基であり、より好ましくはパーフルオロメチレン基又はパーフルオロエチレン基である。
前記一般式(PFPE)中に、Xとしてパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基の両方が存在するとさらに好ましい。前記パーフルオロメチレン基(X-1)とパーフルオロエチレン基(X-2)とが共存する場合、その存在比(X-1/X-2)(個数の比)は1/10~10/1が好ましく、3/10~10/3がより好ましい。
【0067】
n4の繰り返し数は、例えば1~300の範囲の整数であり、好ましくは2~200の範囲の整数であり、より好ましくは3~100の範囲の整数であり、さらに好ましくは6~70の範囲の整数であり、最も好ましくは12~50の範囲の整数である。
【0068】
重合性単量体(4)は、好ましくは下記一般式(4-1)で表される化合物及び下記一般式(4-2)で表される化合物からなる群から選択される1種以上である。
【0069】
【化9】
(前記一般式(4-1)及び(4-2)中、
R
41は、水素原子又はメチル基であり、
L
41は2価若しくは3価の有機基又は単結合であり、
L
42は2価の有機基又は単結合であり、
R
42はフッ素含有官能基であり、
R
43は2価のフッ素含有官能基であり、
xは1又は2の整数である。)
【0070】
前記一般式(4-1)および(4-2)において、L41の2価若しくは3価の有機基としては、上述のL1の2価若しくは3価の有機基と同じものが挙げられる。
前記一般式(4-1)および(4-2)において、L42の2価の有機基としては、上述のL2の2価の有機基と同じものが挙げられる。
【0071】
例えばR43が前記一般式(PFPE)で表される基である場合、前記一般式(4-2)で表される化合物の具体例としては以下が挙げられる。
【0072】
【化10】
(nは、それぞれ独立に、1~10の範囲の整数である。)
【0073】
重合性単量体(5)が有する芳香族基は、好ましくは炭素原子数6~20の芳香族基であり、より好ましくはフェニル基、ナフチル基、アントラセン-1-イル基又はフェナントレン-1-イル基である。
【0074】
芳香族基を有する重合性単量体(5)としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン等が挙げられる。
【0075】
本発明の重合体は、好ましくは重合成分が重合性単量体(1)、重合性単量体(2)および任意の重合性単量体(3)から実質的になる重合体であり、より好ましくは重合成分が重合性単量体(1)、重合性単量体(2)および任意の重合性単量体(3)のみからなる重合体である。ここで「実質的になる」とは、重合成分における重合性単量体(1)、重合性単量体(2)および任意の重合性単量体(3)の合計の含有割合が、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、又は99質量%以上である場合をいう。
【0076】
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)は、好ましくは1,000~50,000の範囲であり、より好ましくは1,000~30,000の範囲であり、さらに好ましくは1,500~10,000の範囲である。
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~200,000の範囲であり、より好ましくは1,500~150,000の範囲であり、さらに好ましくは2,000~100,000の範囲であり、特に好ましくは3,000~50,000の範囲である。
【0077】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
本発明の重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の値は、実施例に記載の方法により測定する。
【0078】
[重合体の製造方法]
本発明の重合体の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。
本発明の重合体は、ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等により製造できる。例えばラジカル重合法であれば、有機溶媒中に重合性単量体混合物を仕込み、汎用のラジカル重合開始剤を添加することで、本発明の重合体を製造できる。
【0079】
前記重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、過酸化ベンゾイル、過酸化ジアシル等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)3等の金属キレート化合物等が挙げられる。
必要に応じて、ラウリルメルカプタン、2-メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いてもよい。
【0080】
前記有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、エチルセロソルブアセテート等のエーテル類、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類およびそのエステル類、1,1,1-トリクロルエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類、更にパーフルオロオクタン、パーフルオロトリ-n-ブチルアミン等のフッ素化イナートリキッド類等が挙げられる。
これら溶剤は、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0081】
本発明の重合体は、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合等のリビング重合をすることにより製造することもできる。
【0082】
リビングラジカル重合は、活性重合末端が原子又は原子団により保護されたドーマント種が可逆的にラジカルを発生させてモノマーと反応することにより生長反応が進行し、第一のモノマーが消費されても生長末端が活性を失うことなく、逐次的に追加される第二モノマーと反応してブロックポリマーを得ることができる。このようなリビングラジカル重合の例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加-開裂型ラジカル重合(RAFT)、ニトロキシドを介するラジカル重合(NMP)、有機テルルを用いるラジカル重合(TERP)等が挙げられる。これらのうち、どの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどからATRPが好ましい。ATRPは、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物等を重合開始剤とし、遷移金属化合物と配位子からなる金属錯体を触媒として重合される。
【0083】
ATRPで使用できる重合開始剤の具体例としては、1-フェニルエチルクロライド、1-フェニルエチルブロマイド、クロロホルム、四塩化炭素、2-クロロプロピオニトリル、α,α’-ジクロロキシレン、α,α’-ジブロモキシレン、ヘキサキス(α-ブロモメチル)ベンゼン、炭素原子数1~6の2-ハロゲン化カルボン酸(例えば2-クロロプロピオン酸、2-ブロモプロピオン酸、2-クロロイソ酪酸、2-ブロモイソ酪酸など)の炭素原子数1~6のアルキルエステル等が挙げられる。
炭素原子数1~6の2-ハロゲン化カルボン酸の炭素原子数1~6のアルキルエステルのより具体的な例としては、例えば、2-クロロプロピオン酸メチル、2-クロロプロピオン酸エチル、2-ブロモプロピオン酸メチル、2-ブロモイソ酪酸エチル等が挙げられる。
【0084】
ATRPで使用できる遷移金属化合物は、Mn+Xnで表されるものである。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物の遷移金属Mn+としては、Cu+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Ru2+、Ru3+、Cr2+、Cr3+、Mo0、Mo+、Mo2+、Mo3+、W2+、W3+、Rh3+、Rh4+、Co+、Co2+、Re2+、Re3+、Ni0、Ni+、Mn3+、Mn4+、V2+、V3+、Zn+、Zn2+、Au+、Au2+、Ag+及びAg2+からなる群から選択することができる。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物のXは、ハロゲン原子、炭素原子数1~6のアルコキシル基、(SO4)1/2、(PO4)1/3、(HPO4)1/2、(H2PO4)、トリフラート、ヘキサフルオロホスフェート、メタンスルホネート、アリールスルホネート(好ましくはベンゼンスルホネート又はトルエンスルホネート)、SeR11、CN及びR12COOからなる群から選択することができる。ここで、R11は、アリール基、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~20(好ましくは炭素原子数1~10)のアルキル基を表し、R12は、水素原子、ハロゲンで1~5回(好適にはフッ素もしくは塩素で1~3回)置換されていてもよい直鎖状又は分岐状の炭素原子数1~6のアルキル基(好ましくはメチル基)を表す。
Mn+Xnで表される遷移金属化合物のnは、金属上の形式電荷を表し、0~7の整数である。
【0085】
上記遷移金属化合物の遷移金属に配位結合可能な配位子化合物としては、遷移金属とσ結合を介して配位できる1つ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子又は硫黄原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とπ結合を介して配位できる2つ以上の炭素原子を含む配位子を有する化合物、遷移金属とμ結合又はη結合を介して配位できる配位子を有する化合物が挙げられる。
【0086】
上記遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましいものとして、7、8、9、10、11族の遷移金属錯体が、さらに好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。
【0087】
ATRPで使用できる触媒の具体例としては、中心金属が銅の場合は2,2’-ビピリジル及びその誘導体、1,10-フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン等のポリアミン等の配位子との錯体が挙げられる。また2価のルテニウム錯体としては、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリブチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロベンゼンルテニウム、ジクロロp-シメンルテニウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)ルテニウム、シス-ジクロロビス(2,2’-ビピリジン)ルテニウム、ジクロロトリス(1,10-フェナントロリン)ルテニウム、カルボニルクロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。さらに2価の鉄錯体としては、ビストリフェニルホスフィン錯体、トリアザシクロノナン錯体等が挙げられる。
【0088】
リビングラジカル重合においては、溶媒を使用することが好ましい。
リビングラジカル重合で使用する溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
上記溶媒は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記リビングラジカル重合の際の重合温度は、室温から120℃の範囲が好ましい。
【0090】
本発明の重合体をリビングラジカル重合により製造する場合は、得られる重合体中に、重合で用いた遷移金属化合物に起因する金属が残留する場合がある。得られる重合体中に残留した金属は、重合終了後に活性アルミナ等を用いて除去するとよい。
【0091】
[潤滑油組成物]
本発明の消泡剤は、潤滑油組成物の消泡剤として好適に用いることができ、本発明の潤滑油組成物は本発明の消泡剤を含有する。
本発明の消泡剤は、高い消泡性能を有し、例えば自動車の緩衝器、変速機、パワーステアリング等の駆動系機器用の潤滑油組成物に制限無く用いることができる。
【0092】
本発明の潤滑油組成物における本発明の消泡剤の含有割合は、特に制限されず、例えば潤滑油組成物全量の1~1000質量ppmの範囲であり、好ましくは5~700質量ppmの範囲であり、さらに好ましくは10~400質量ppmの範囲である。
【0093】
本発明の潤滑油組成物の潤滑油基油は、公知のものを使用でき、鉱油であってもよく、合成油であってもよく、鉱油と合成油との混合油であってもよい。
【0094】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等のうちの1つ以上の処理を行って精製した鉱油があり、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などを挙げることができる。
また、鉱油系ワックスやフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することによって製造される鉱油等も挙げられる。
【0095】
合成油としては、ポリブテン、α-オレフィン単独重合体や共重合体(例えばエチレン-α-オレフィン共重合体)などのポリオレフィン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、リン酸エステルなどの各種のエステル、ポリフェニルエーテルなどの各種のエーテル、ポリグリコール、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどが挙げられる。
【0096】
潤滑油基油は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0097】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、好ましくは2~20mm2/sの範囲であり、より好ましくは2~15mm2/sの範囲であり、さらに好ましくは3~10mm2/sの範囲である。
潤滑油基油の100℃における動粘度が上記範囲にあることで、蒸発損失が少なく、粘性抵抗による動力損失があまり大きくないため、燃費改善効果が得られやすくなる。
【0098】
潤滑油基油は、好ましくはn-d-M環分析によるパラフィン分(%Cpと記載することがある)が70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さに好ましくは80%以上である。
潤滑油基油は、パラフィン分が上記範囲にあることで酸化安定性等が良好になる。
【0099】
潤滑油組成物における潤滑油基油の含有割合は、例えば潤滑油組成物全量の65~95質量%の範囲であり、好ましくは70~95質量%の範囲であり、さらに好ましくは70~90質量%の範囲である。
【0100】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の消泡剤及び潤滑油基油を含めばよく、その他添加剤をさらに含んでもよい。
その他添加剤としては、無灰清浄剤、無灰系摩擦調整剤、耐摩耗剤、極圧剤、粘度指数向上剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、防錆剤等の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0101】
その他添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜調整することができ、潤滑油組成物全量基準で、通常0.001~25質量%、好ましくは0.005~20質量%、より好ましくは0.01~15質量%である。
その他添加剤の合計含有量は、潤滑油組成物全量基準で、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0102】
無灰清浄剤としては、アルケニルコハク酸モノイミド、アルケニルコハク酸ビスイミド等のアルケニルコハク酸イミド、ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド等が挙げられる。
【0103】
無灰系摩擦調整剤としては、例えば、炭素原子数6~30のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、脂肪族アミン、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族エーテル等が挙げられる。
【0104】
耐摩耗剤又は極圧剤としては、例えば、ジチオリン酸亜鉛等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
【0105】
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン-プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン-ジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体等)等が挙げられる。
【0106】
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。
【0107】
流動点降下剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。
【0108】
防錆剤としては、例えば、石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート、ジノニルナフタレンスルフォネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明は下記実施例に限定されない。
【0110】
実施例および比較例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエージョンクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
GPCの測定条件は以下の通りである。
【0111】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC-8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GUARDCOLUMN SuperHZ-L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM-N」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料7.5mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μL
標準試料:前記「HLC-8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0112】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-300」
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
東ソー株式会社製「F-288」
【0113】
(合成実施例1:消泡剤(1)の合成)
撹拌装置、温度計、冷却管、滴下装置を備えたガラスフラスコに、溶媒として酢酸n-ブチル20質量部を仕込み、窒素気流下にて攪拌しながら105℃に昇温した。次いで、下記式(A)で表される化合物30質量部およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシド鎖の繰り返し数が約9)20質量部を酢酸n-ブチル70質量部に溶解させたモノマー溶液と、ラジカル重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート5質量部を酢酸n-ブチル15質量部に溶解した重合開始剤溶液との2種類の滴下液をそれぞれ別々の滴下装置にセットした。この2種類の滴下液をフラスコ内を105℃に保ちながら同時に2時間かけて滴下した。滴下終了後、105℃で3時間攪拌することによって、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基とシリコーン鎖含有官能基とを有する重合体である消泡剤(1)を得た。
【0114】
【0115】
得られた消泡剤(1)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)17,000であった。
【0116】
(合成実施例2:消泡剤(2)の合成)
ラジカル重合開始剤であるt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートの添加量を2質量部に変更した他は合成実施例1と同様にして、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基とシリコーン鎖含有官能基とを有する重合体である消泡剤(2)を製造した。
【0117】
得られた消泡剤(2)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)30,400であった。
【0118】
(合成実施例3:消泡剤(3)の合成)
前記式(A)で表される化合物50質量部およびメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシド鎖の繰り返し数が約9)40質量部およびアクリル酸メチル10質量部を用いた他は合成実施例2と同様にして、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基とシリコーン鎖含有官能基とを有する重合体である消泡剤(3)を得た。
【0119】
得られた消泡剤(3)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)29,900であった。
【0120】
(合成実施例4:消泡剤(4)の合成)
前記式(A)で表される化合物57質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレンオキシド鎖の繰り返し数が約9)37質量部およびジシクロペンタニルアクリレート6質量部を用いた他は合成実施例1と同様にして、ポリオキシアルキレン鎖含有官能基とシリコーン鎖含有官能基と環状アルキル基とを有する重合体である消泡剤(4)を得た。
【0121】
得られた消泡剤(4)の分子量をGPCで測定した結果、重量平均分子量(Mw)43,200であった。
【0122】
下記で表される市販のジメチルシリコーン(信越シリコーン株式会社製「KF-96-60,000cs」)を消泡剤(1’)として別途用意した。
【0123】
【0124】
上記で製造した消泡剤を用いて下記泡立ち試験を行い、消泡剤の消泡性能を評価した。結果を表1に示す。
【0125】
(潤滑油組成物の調製)
潤滑油基油(パラフィン系鉱油)を主成分に、各種添加剤(粘度指数向上剤、亜リン酸エステル化合物、チアジアゾール化合物、カルシウム系洗浄剤、金属不活性化剤、無灰分散剤、酸化防止剤など)を少量含むベース潤滑油100質量部に、表1に示す消泡剤を表1に示す希釈溶剤で表1に示す量だけ加えて、それぞれ潤滑油組成物とした。
【0126】
(泡立ち試験)
得られた潤滑油組成物について、JIS K2518:2017に準拠した方法により、シーケンスII(93.5℃)の温度条件で5分間泡立たせた後、空気供給を遮断して5秒経過後の泡量(mL)を潤滑油組成物の泡立ち量とした。結果を表1に示す。泡立ち量が少ないほど消泡性に優れていることを意味する。
【0127】
【0128】
実施例と比較例の結果から、ポリオキシアルキレン鎖を導入することで潤滑油の泡立ち量を低減できることが分かる。