(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】歯牙年齢算定装置及び歯牙年齢算定プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240109BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2021166122
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000117054
【氏名又は名称】朝日レントゲン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲野 和彦
(72)【発明者】
【氏名】古々本 一馬
(72)【発明者】
【氏名】大川 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】呉本 勝章
(72)【発明者】
【氏名】比村 圭助
(72)【発明者】
【氏名】松崎 貴好
【審査官】森田 充功
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/196939(WO,A1)
【文献】特表2022-521136(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112086198(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113379724(CN,A)
【文献】特開2020-110215(JP,A)
【文献】DE TOBEL, Jannick et al.,An automated technique to stage lower third molar development on panoramic radiographs for age estimation: a pilot study,Journal of Forensic Odonto-Stomatology,第35巻, 第2号,2017年12月01日,p.42-54,[検索日 2023.10.06], インターネット:<URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6100230/pdf/JFOS-35-2-42.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像を取得する取得部と、
ROI(Region of Interest)と歯胚の
複数の種類
それぞれとの関係を第1人工知能に予め学習させることによって得られる第1学習モデルを用いて、前記パノラマX線画像から歯胚の
複数の種類
それぞれを特定して歯胚を検出する検出部と、
歯胚の形状と発育段階との関係を第2人工知能に予め学習させることによって得られる第2学習モデルを用いて、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの発育段階を判定する判定部と、
歯胚の各発育段階の基準値を予め記憶する記憶部と、
前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢を前記判定部の判定結果と前記基準値とを用いて求め、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から前記小児の歯牙年齢を算定する算定部と、
を備える、歯牙年齢算定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記発育段階を、
歯胚形成期、石灰化開始期、歯冠形成期の開始期、及び前記歯冠形成期の1/2期を含む第1段階、
前記歯冠形成期の3/4期を含む第2段階、
前記歯冠形成期の完成期を含む第3段階、
歯根形成期の1/4期を含む第4段階、
前記歯根形成期の1/2期を含む第5段階、
前記歯根形成期の3/4期を含む第6段階、
前記歯根形成期の完成期を含む第7段階、並びに
根尖閉鎖期を含む第8段階に区分して前記発育段階を評価する、請求項1に記載の歯牙年齢算定装置。
【請求項3】
前記判定部は、歯胚を前歯又は小臼歯と大臼歯との2つに分類して前記発育段階を評価する、請求項1又は請求項2に記載の歯牙年齢算定装置。
【請求項4】
コンピュータを、
小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像を取得する取得部と、
ROI(Region of Interest)と歯胚の
複数の種類
それぞれとの関係を第1人工知能に予め学習させることによって得られる第1学習モデルを用いて、前記パノラマX線画像から歯胚の
複数の種類
それぞれを特定して歯胚を検出する検出部、
歯胚の形状と発育段階との関係を第2人工知能に予め学習させることによって得られる第2学習モデルを用いて、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの発育段階を判定する判定部、及び
前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢を前記判定部の判定結果と前記コンピュータの記憶部にあらかじめ記憶されている歯胚の各発育段階の基準値とを用いて求め、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から前記小児の歯牙年齢を算定する算定部、
として機能させるための歯牙年齢算定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙年齢を算定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
歯牙年齢は、パノラマX線画像に写っている全ての永久歯歯胚の成熟具合を評価して算定される。歯牙年齢は、生理的年齢の一つであり、小児の成長を計る指標として用いられる。小児の発育には個人差があり、また歯胚の成長にもばらつきがあるため、歯牙年齢と実年齢とが一致しないことは日常臨床上多々認められる。
【0003】
歯牙年齢を求めることで、乳歯から永久歯への生えかわりが早い或いは遅いことの評価、乳歯から永久歯への生えかわりの左右差の評価、疾患の疑いなどの様々な診断を行うことが可能となる。このため、小児歯科に携わる者の多くは、歯牙年齢を算定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Haavikko,K. (1970). The formation and the alveolar and clinical eruption of the permanent teeth. Anorthopantomographic study. Suom Hammaslaak Toim 66, 103-170.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歯牙年齢の算定には非特許文献1に開示されている手法が用いられることが多いが、算定手順が煩雑であり、大変な手間がかかる。
【0006】
また、小児歯科に不慣れな歯科医師は、歯牙年齢が有益な情報であることを知っていても、歯牙年齢の算定方法を知らないことがある。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み、歯牙年齢を自動的に算定する歯牙年齢算定装置及び歯牙年齢算定プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る歯牙年齢算定装置は、取得部、検出部、判定部、記憶部、及び算定部を備える。前記取得部は、小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像を取得する。前記検出部は、ROI(Region of Interest)と歯胚の種類との関係を第1人工知能に予め学習させることによって得られる第1学習モデルを用いて、前記パノラマX線画像から歯胚の種類を特定して歯胚を検出する。前記判定部は、歯胚の形状と発育段階との関係を第2人工知能に予め学習させることによって得られる第2学習モデルを用いて、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの発育段階を判定する。前記記憶部は、歯胚の各発育段階の基準値を予め記憶する。前記算定部は、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢を前記判定部の判定結果と前記基準値とを用いて求め、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から前記小児の歯牙年齢を算定する。
【0009】
上記構成の歯牙年齢算定装置において、前記判定部は、前記発育段階を、歯胚形成期、石灰化開始期、歯冠形成期の開始期、及び前記歯冠形成期の1/2期を含む第1段階、前記歯冠形成期の3/4期を含む第2段階、前記歯冠形成期の完成期を含む第3段階、歯根形成期の1/4期を含む第4段階、前記歯根形成期の1/2期を含む第5段階、前記歯根形成期の3/4期を含む第6段階、前記歯根形成期の完成期を含む第7段階、並びに根尖閉鎖期を含む第8段階に区分して前記発育段階を評価するようにしてもよい。また、上記いずれかの構成の歯牙年齢算定装置において、前記判定部は、歯胚を前歯又は小臼歯と大臼歯との2つに分類して前記発育段階を評価するようにしてもよい。
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る歯牙年齢算定プログラムは、コンピュータを、取得部、検出部、判定部、記憶部、及び算定部として機能させる。前記取得部は、小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像を取得する。前記検出部は、ROI(Region of Interest)と歯胚の種類との関係を第1人工知能に予め学習させることによって得られる第1学習モデルを用いて、前記パノラマX線画像から歯胚の種類を特定して歯胚を検出する。前記判定部は、歯胚の形状と発育段階との関係を第2人工知能に予め学習させることによって得られる第2学習モデルを用いて、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの発育段階を判定する。前記記憶部は、歯胚の各発育段階の基準値を予め記憶する。前記算定部は、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢を前記判定部の判定結果と前記基準値とを用いて求め、前記検出部によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から前記小児の歯牙年齢を算定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、歯牙年齢が自動的に算定される。これにより、歯科医師が歯牙年齢を手計算する手間を省くことが可能となり、本来の診療行為に専念できる可能性が高まる。また、歯牙年齢に詳しくない歯科医師であっても歯牙年齢が容易に利用可能な情報になるため、本発明は、患者に対しては全国的な小児歯科診療の質の向上という利益を与えることができ、歯科医師に対しては歯牙年齢に関する知識の普及に貢献すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】コンピュータの機能の一例を示す機能ブロック図
【
図3】歯牙年齢算定装置の概略動作を示すフローチャート
【
図4】歯胚の位置に手動で設定されたROIと、当該ROIに対応する歯胚の種類との関係を示す情報を含むパノラマX線画像の一例を示す図
【
図7】記憶部に予め記憶されている基準値の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
図1は、コンピュータの一構成例を示す図である。コンピュータ1は、制御部11と、通信部12と、VRAM(Video Random Access Memory)13と、表示部14と、記憶部15と、操作部16と、を備える。
【0014】
制御部11は、コンピュータ1全体を制御する。制御部11は、例えば、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、作業メモリを提供するRAM(Random Access Memory)、及び固定的なプログラムやデータを記録するROM(Read Only Memory)を含む。
【0015】
通信部12は、外部との通信を行う。通信部12と外部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。外部装置としては、例えばパノラマX線画像を撮影する歯科用X線撮影装置、歯科用X線撮影装置によって撮影されたパノラマX線画像を記憶している記憶装置等を挙げることができる。
【0016】
VRAM13は、画像データを一時的に記憶する。表示部14は、VRAM13に記憶された画像データに基づいて画像を表示する。表示部14としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等を用いることができる。
【0017】
記憶部15は、歯牙年齢算定プログラム、画像データ、歯胚の各発育段階の基準値、及び各種学習モデル等を記憶する。記憶部15としては、例えば、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等を用いることができる。
【0018】
操作部16は、ユーザの操作に応じた信号を制御部11に送信する。操作部16としては、キーボード、ポインティングデバイス等を用いることができる。
【0019】
図2は、コンピュータ1の機能の一例を示す機能ブロック図である。コンピュータ1は、歯牙年齢算定プログラムを実行することによって歯牙年齢算定装置2として機能する。歯牙年齢算定装置2は、取得部21と、検出部22と、判定部23と、記憶部24と、算定部25と、を備える。歯牙年齢算定装置2は、小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像のデータD1を入力し、各歯胚の歯牙年齢および当該小児の歯牙年齢のデータD2を出力する。
【0020】
ここで、上述した
図2を参照しながら、歯牙年齢算定装置2の概略動作を
図3のフローチャートに従い説明する。
【0021】
まず始めに取得部21が、小児の歯胚を撮影したパノラマX線画像のデータD1を取得する(ステップS1)。
【0022】
次に検出部22が、第1学習モデルを用いて、取得部21によって取得されたパノラマX線画像から歯胚の種類を特定して歯胚を検出する(ステップS2)。第1学習モデルは、ROIと歯胚の種類との関係を第1人工知能に予め学習させることによって得られる。
【0023】
第1人工知能は、例えば
図4に示すパノラマX線画像を教師データとして用いて、ROIと歯胚の種類との関係を予め学習する。検出精度の高い第1学習モデルを生成するために、教師データとして用いられるパノラマX線画像のサンプル数は多数確保することが望ましい。
【0024】
図4に示すパノラマX線画像は、歯胚の位置に手動で設定されたROIと、当該ROIに対応する歯胚の種類との関係を示す情報を含む。
【0025】
「U1」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎中切歯の歯胚に対応する。「U1」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎中切歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U1」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎中切歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0026】
「U2」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎側切歯の歯胚に対応する。「U2」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎側切歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U2」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎側切歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0027】
「U3」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎犬歯の歯胚に対応する。「U3」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎犬歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U3」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎犬歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0028】
「U4」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎第一小臼歯の歯胚に対応する。「U4」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎第一小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U4」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎第一小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0029】
「U5」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎第二小臼歯の歯胚に対応する。「U5」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎第二小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U5」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎第二小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0030】
「U6」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎第一大臼歯の歯胚に対応する。「U6」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎第一大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U6」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎第一大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0031】
「U7」がラベリングされている矩形状のROIは、上顎第二大臼歯の歯胚に対応する。「U7」がラベリングされている右側のROIは、右側の上顎第二大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「U7」がラベリングされている左側のROIは、左側の上顎第二大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0032】
「L1」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎中切歯の歯胚に対応する。「L1」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎中切歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L1」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎中切歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0033】
「L2」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎側切歯の歯胚に対応する。「L2」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎側切歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L2」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎側切歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0034】
「L3」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎犬歯の歯胚に対応する。「L3」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎犬歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L3」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎犬歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0035】
「L4」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎第一小臼歯の歯胚に対応する。「L4」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎第一小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L4」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎第一小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0036】
「L5」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎第二小臼歯の歯胚に対応する。「L5」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎第二小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L5」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎第二小臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0037】
「L6」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎第一大臼歯の歯胚に対応する。「L6」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎第一大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L6」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎第一大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0038】
「L7」がラベリングされている矩形状のROIは、下顎第二大臼歯の歯胚に対応する。「L7」がラベリングされている右側のROIは、右側の下顎第二大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。「L7」がラベリングされている左側のROIは、左側の下顎第二大臼歯の歯胚全体を含む画像領域である。
【0039】
ステップS2に続くステップS3において、判定部23が、第2学習モデルを用いて、検出部22によって検出された歯胚それぞれの発育段階を判定する。第2学習モデルは、歯胚の形状と発育段階との関係を第2人工知能に予め学習させることによって得られる。
【0040】
第2人工知能は、例えば歯胚の種類がメタ情報として付与されている歯胚の学習用X線撮影画像に対して発育段階が手動でラベリングされたデータを教師データとして用いて、歯胚の形状と発育段階との関係を予め学習する。判定精度の高い第2学習モデルを生成するために、教師データの構成要素として用いられる歯胚の学習用X線撮影画像のサンプル数は多数確保することが望ましい。
図5に示す3つのX線撮影画像はそれぞれ歯胚の学習用X線撮影画像の各例である。
【0041】
本実施形態では、発育段階のラベリングは8段階である。つまり、判定部23は、発育段階を第1~第8段階に区分して発育段階を評価する。
【0042】
第1段階は、
図6に示すように歯胚形成期、石灰化開始期、歯冠形成期の開始期、及び前記歯冠形成期の1/2期を含む。第2段階は、
図6に示すように歯冠形成期の3/4期を含む。第3段階は、
図6に示すように歯冠形成期の完成期を含む。第4段階は、
図6に示すように歯根形成期の1/4期を含む。第5段階は、
図6に示すように歯根形成期の1/2期を含む。第6段階は、
図6に示すように歯根形成期の3/4期を含む。第7段階は、
図6に示すように歯根形成期の完成期を含む。第8段階は、
図6に示すように根尖閉鎖期を含む。歯胚形成期、石灰化開始期、及び歯冠形成期の開始期は、第二小臼歯、第二大臼歯、及び第三大臼歯にしか定義されていない。また、複数の小児について調査したところ、歯胚形成期、石灰化開始期、又は歯冠形成期の開始期と判定される歯胚の数も少ない。したがって、歯胚形成期、石灰化開始期、及び歯冠形成期それぞれを独立した発育段階として分類する意義は小さい。そこで、本実施形態では、上述した通り、歯胚形成期、石灰化開始期、及び歯冠形成期の開始期を前記歯冠形成期の1/2期とまとめて第1段階としている。これにより、全ての種類の歯胚に対して発育段階の評価処理を共通化することができる。なお、
図6中の「前歯」は、「中切歯」、「側切歯」、及び「犬歯」を含む。また、本実施形態では、
図6に示すように判定部23は、歯胚を前歯又は小臼歯と大臼歯との2つに分類して発育段階を評価する。この最小の分類によって、発育段階の評価処理を簡単化することができる。ただし、歯胚の分類は2つに限定されない。例えば、判定部23は、歯胚を前歯と小臼歯と大臼歯との3つに分類して発育段階を評価してもよい。また例えば、判定部23は、歯胚を切歯と犬歯と小臼歯と大臼歯との4つに分類して発育段階を評価してもよい。また例えば、判定部23は、歯胚を歯胚の種類(例えば
図4に示すラベルの14種類)で分類して発育段階を評価してもよい。
【0043】
上述したように本実施形態では、発育段階は8段階に区分されているが、発育段階の区分数は8段階に限定されない。
【0044】
例えば、
図6に示す歯胚形成期、石灰化開始期、歯冠形成期、歯根形成期、及び根尖閉鎖期の5段階であってもよい。
【0045】
例えば、
図6に示す歯胚形成期、石灰化開始期、歯冠形成期の開始期、歯冠形成期の1/2期、歯冠形成期の3/4期、歯冠形成期の完成期、歯根形成期の1/4期、歯根形成期の1/2期、歯根形成期の3/4期、歯根形成期の完成期、及び根尖閉鎖期の11段階であってもよい。
【0046】
例えば、
図6に示す11個の期間を任意に組み合わせて6~10段階にしてもよい。また、4段階以下に簡単化してもよく、12段階以上に詳細化してもよい。
【0047】
ステップS3に続くステップS4において、算定部25が、小児の歯牙年齢を算定する。より詳細には、算定部25が、検出部22によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢を判定部23の判定結果と記憶部24に予め記憶されている基準値とを用いて求める。そして、算定部25が、検出部22によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から小児の歯牙年齢を算定する。
【0048】
図7は、記憶部24に予め記憶されている基準値の一例を示す図である。記憶部24は、基準値をデータテーブルの形式で記憶する。基準値は、歯胚の発育段階に応じた歯牙年齢を意味している。なお、本実施形態では、男児と女児それぞれで基準値を設定しているが、男児と女児の区別なく基準値を設定してもよい。本実施形態では、男児と女児それぞれで基準値を設定しているので、例えば、取得部21によって取得されるパノラマX線画像のメタ情報に男児と女児のいずれかであるかを示す情報を含めるとよい。
【0049】
検出部22によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢から小児の歯牙年齢を算定する具体的な方法としては、検出部22によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢の単純平均を小児の歯牙年齢としてもよく、検出部22によって検出された歯胚それぞれの歯牙年齢の重み付け平均を小児の歯牙年齢としてもよい。重み付け平均の場合、例えば歯胚の形状を明確に把握しやすい歯種に対して重みを大きくし、歯胚の形状を明確に把握しにくい歯種に対して重みを小さくすればよい。
【0050】
ステップS4の処理が終了すると、図に示すフローチャートの動作が終了する。ステップS4において算定部25によって求められた各歯胚の歯牙年齢およびステップS4において算定部25によって算出された小児の歯牙年齢のデータD2は、歯牙年齢算定装置2の出力となる。
【0051】
つまり、歯牙年齢算定装置2によって小児の歯牙年齢が自動的に算定される。これにより、歯科医師が歯牙年齢を手計算する手間を省くことが可能となり、本来の診療行為に専念できる可能性が高まる。また、歯牙年齢に詳しくない歯科医師であっても歯牙年齢が容易に利用可能な情報になるため、本発明は、患者に対しては全国的な小児歯科診療の質の向上という利益を与えることができ、歯科医師に対しては歯牙年齢に関する知識の普及に貢献すると考えられる。
【0052】
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0053】
例えば上記実施形態では、歯牙年齢算定装置2が各歯胚の歯牙年齢および小児の歯牙年齢のデータD2を出力したが、歯牙年齢算定装置2が各歯胚の歯牙年齢のデータを出力せずに小児の歯牙年齢のデータを出力してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 コンピュータ
11 制御部
12 通信部
13 VRAM
14 表示部
15 記憶部
16 操作部
2 歯牙年齢算定装置
21 取得部
22 検出部
23 判定部
24 記憶部
25 算定部