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特許7414509流体供給装置用切替システム及び流体供給システム
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  • 特許-流体供給装置用切替システム及び流体供給システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】流体供給装置用切替システム及び流体供給システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20240109BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20240109BHJP
   F04D 15/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F04B49/06 311
F04B49/10 311
F04D15/00 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019228287
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021095890
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】ニナウェ プラティク
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-063000(JP,A)
【文献】特開2014-138497(JP,A)
【文献】特開2009-074541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04B 49/10
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給装置のインバータへの電力供給経路と通信経路を切り替える流体供給装置用切替システムであって、
遠隔操作装置と電力線通信し、インバータと第1の通信方式で通信する第1の通信部と、
前記遠隔操作装置と電力線通信可能であり、前記インバータと第2の通信方式で通信可能な第2の通信部と、
流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリと、
商用電源と前記バッテリの出力端子との間で、前記インバータへの導通を切り替えるスイッチと、
前記第1の通信部または前記商用電源の電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記スイッチを制御するコントローラと、
を備え、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記スイッチにおいて前記商用電源と前記インバータとを導通させ、前記第1の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継し、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記スイッチにおいて前記バッテリの出力端子と前記インバータとを導通させ、前記第2の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継する
流体供給装置用切替システム。
【請求項2】
前記第2の通信部と前記バッテリの入力端子との間で、前記遠隔操作装置への導通を切り替え可能な切替部を更に備え、
前記コントローラは、前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記切替部を制御し、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記バッテリの入力端子と前記遠隔操作装置を導通しており、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記切替部において前記第2の通信部と前記遠隔操作装置を導通させる
請求項1に記載の流体供給装置用切替システム。
【請求項3】
前記スイッチは、商用電源と接続されている第1の端子と前記バッテリの出力端子に接続されている第2の端子との間で、インバータと接続されている第3の端子との導通を切り替え可能であり、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記スイッチにおいて前記第1の端子と前記第3の端子とが導通して前記商用電源から前記インバータへ電力が供給され、前記第1の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継し、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記バッテリから前記インバータへ電力が供給するように、前記スイッチにおける前記第2の端子と前記第3の端子とを導通させ、前記第2の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継する
請求項1または2に記載の流体供給装置用切替システム。
【請求項4】
前記切替部は、前記第2の通信部と接続されている第4の端子と前記バッテリの入力端子に接続されている第5の端子との間で、前記遠隔操作装置と送電線で接続されている第6の端子との導通を切り替え可能であり、
前記コントローラは、前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記切替部を制御し、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記切替部における前記第5の端子と前記第6の端子とが導通して前記バッテリが充電されており、
前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記第2の通信部が前記遠隔操作装置との間で電力線通信できるように、前記切替部における前記第4の端子と前記第6の端子とを導通させる
請求項2に記載の流体供給装置用切替システム。
【請求項5】
前記バッテリの出力端子に接続されており当該バッテリから出力された直流電圧を交流電圧に変換する交流変換器を備え、
前記スイッチにおける前記第2の端子は、前記交流変換器を介して前記バッテリに接続されている
請求項に記載の流体供給装置用切替システム。
【請求項6】
前記第1の通信方式と前記第2の通信方式は同じである
請求項1から5のいずれか一項に記載の流体供給装置用切替システム。
【請求項7】
ポンプを駆動するモータと、
前記モータを可変速制御するインバータと、
請求項1から6のいずれか一項に記載の流体供給装置用切替システムと、
を備え、
前記インバータは、前記第1の通信部または前記第2の通信部を介して前記遠隔操作装置と通信する通信部と、前記遠隔操作装置からの通信信号に応じてモータを可変速制御するプロセッサと、を有する
流体供給システム。
【請求項8】
前記モータと前記インバータが一体となっている
請求項7に記載の流体供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時に流体供給装置への電力供給及び通信経路を切り替える流体供給装置用切替システム及び流体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水などの液体や各種気体をポンプによって移送して需要元へ供給する流体供給装置が用いられている。流体供給装置の一例としては、ビルやマンションなどの建物の高い場所へ水を汲み上げて供給する給水装置などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/099242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプ、ポンプを駆動するモータ、モータを可変速制御するインバータを備える給水装置を遠隔操作または遠隔監視することが考えられる。この場合、インバータがプロセッサと通信部を有するようにすれば、インバータを通信により遠隔制御することによって、ポンプの運転を遠隔制御することが可能である。
【0005】
しかしながら、災害時には、通信の基地局(例えば、無線基地局)が故障する場合があり、その場合、給水装置を遠隔操作することができないという問題がある。このため、災害等による停電等が原因で商用電源から給水装置に電力を供給できない状況でも、ライフラインとして水の使用ができるようにするために、給水装置への電力供給と給水装置の遠隔制御を可能とすることが望まれている。
しかし、ビルやマンション全体をバックアップする電源としてディーゼルエンジン等を設置すると初期コストもかかり、設置スペースも大きくなり、メンテナンスも手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、停電等が原因で商用電源から流体供給装置用のインバータに電力を供給できない状況でも、設置スペースを抑えつつインバータへの電力供給とインバータの遠隔制御を可能とする流体供給装置用切替システム及び流体供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様に係る流体供給装置用切替システムは、流体供給装置のインバータへの電力供給経路と通信経路を切り替える流体供給装置用切替システムであって、遠隔操作装置と電力線通信し、インバータと第1の通信方式で通信する第1の通信部と、前記遠隔操作装置と電力線通信可能であり、前記インバータと第2の通信方式で通信可能な第2の通信部と、流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリと、商用電源と前記バッテリの出力端子との間で、前記インバータへの導通を切り替えるスイッチと、前記第1の通信部または前記商用電源の電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記スイッチを制御するコントローラと、を備え、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記スイッチにおいて前記商用電源と前記インバータとを導通させ、前記第1の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継し、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記スイッチにおいて前記バッテリの出力端子と前記インバータとを導通させ、前記第2の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継する。
【0008】
この構成によれば、通常時には、第1の通信部が遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。一方、停電等が原因で商用電源から流体供給装置制御用のインバータへ電力が供給できない場合、インバータへ電力の供給元を、商用電源からバッテリに切り替えることにより、インバータを継続運転させることができる。更に第2の通信部が、遠隔操作装置と電力線通信しインバータと第2の通信方式で通信することにより、遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。よって、停電等が原因で商用電源からビルやマンションの他の機器が使用できない時でも、最低限ライフラインである流体供給装置制御用のインバータへの電力供給とインバータの遠隔制御を実現することができる。本構成では、建物全体をバックアップする大型の電源を必要とせず、流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリに加えて、電力線通信する第2の通信部(例えばPLC通信基板)、及び、コントローラ(例えば切り替え用制御基板)を搭載した簡易な構成によりライフラインである流体供給装置の機能を維持することができ、既存の流体供給装置(例えば給水装置)へ追加することも容易とできるメリットがある。
【0009】
本発明の第2の態様に係る流体供給装置用切替システムは、第1の態様に係る流体供給装置用切替システムであって、前記第2の通信部と前記バッテリの入力端子との間で、前記遠隔操作装置への導通を切り替え可能な切替部を更に備え、前記コントローラは、前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記切替部を制御し、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記バッテリの入力端子と前記遠隔操作装置を導通しており、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記切替部において前記第2の通信部と前記遠隔操作装置を導通させる。
【0010】
この構成によれば、通常時には、バッテリを充電することができる。一方、停電等が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、第2の通信部が遠隔操作装置と電力線通信することができるので、第2の通信部は、遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継することができる。よって、停電が原因で商用電源からインバータに電力を供給できない状況でも、インバータの遠隔制御をすることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る流体供給装置用切替システムは、第1または2の態様に係る流体供給装置用切替システムであって、前記スイッチは、商用電源と接続されている第1の端子と前記バッテリの出力端子に接続されている第2の端子との間で、インバータと接続されている第3の端子との導通を切り替え可能であり、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記スイッチにおいて前記第1の端子と前記第3の端子とが導通して前記商用電源から前記インバータへ電力が供給され、前記第1の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継し、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記バッテリから前記インバータへ電力が供給するように、前記スイッチにおける前記第2の端子と前記第3の端子とを導通させ、前記第2の通信部は前記遠隔操作装置と前記インバータとの間の通信を中継する。
【0012】
この構成によれば、通常時には、第1の通信部が遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。一方、停電等が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、インバータへ電力の供給元を、商用電源からバッテリに切り替えることにより、インバータを継続運転させることができる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る流体供給装置用切替システムは、第2の態様に係る流体供給装置用切替システムであって、前記切替部は、前記第2の通信部と接続されている第4の端子と前記バッテリの入力端子に接続されている第5の端子との間で、前記遠隔操作装置と送電線で接続されている第6の端子との導通を切り替え可能であり、前記コントローラは、前記電流検出部が検出した電流値に応じて、前記切替部を制御し、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、前記切替部における前記第5の端子と前記第6の端子とが導通して前記バッテリが充電されており、前記電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合、前記コントローラは、前記第2の通信部が前記遠隔操作装置との間で電力線通信できるように、前記切替部における前記第4の端子と前記第6の端子とを導通させる。
【0014】
この構成によれば、通常時にはバッテリを充電することができる。一方、商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、第2の通信部が送電線で遠隔操作装置に接続されるので、第2の通信部が遠隔操作装置との間で電力線通信することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る流体供給装置用切替システムは、第1から4のいずれかの態様に係る流体供給装置用切替システムであって、前記バッテリの出力端子に接続されており当該バッテリから出力された直流電圧を交流電圧に変換する交流変換器を備え、前記スイッチにおける前記第2の端子は、前記交流変換器を介して前記バッテリに接続されている。
【0016】
この構成によれば、電流検出部が検出する電流値が閾値を下回る場合にバッテリから出力された直流電圧が交流電圧に変換されたインバータに供給することができるので、停電時にインバータの電源を確保することができポンプを駆動することができる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る流体供給装置用切替システムは、第1から5のいずれかの態様に係る流体供給装置用切替システムであって、前記第1の通信方式と前記第2の通信方式は同じである。
【0018】
この構成によれば、インバータの通信回路が一つの方式の回路でよいので、インバータの通信回路の大きさを小さくすることができるとともにコストを抑えることができる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る流体供給システムは、ポンプを駆動するモータと、前記モータを可変速制御するインバータと、第1から6のいずれかの態様に係る流体供給装置用切替システムと、を備え、前記インバータは、前記第1の通信部または前記第2の通信部を介して前記遠隔操作装置と通信する通信部と、前記遠隔操作装置からの通信信号に応じてモータを可変速制御するプロセッサと、を有する。
【0020】
この構成によれば、通常時には、第1の通信部が遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。一方、停電が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、インバータへ電力の供給元を、商用電源からバッテリに切り替えることにより、インバータを継続運転させることができる。更に第2の通信部が、遠隔操作装置と電力線通信しインバータと第2の通信方式で通信することにより、遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。 よって、停電が原因で商用電源からインバータに電力を供給できない状況でも、インバータへの電力供給とインバータの遠隔制御を実現することができる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る流体供給システムは、第7に係る流体供給システムであって、前記モータと前記インバータが一体となっている。
【0022】
この構成によれば、インバータとモータとの間の配線が露出するのを避けることができるので取り回しが容易になるとともに、省スペース化を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様によれば、通常時には、第1の通信部が遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。一方、停電が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、インバータへ電力の供給元を、商用電源からバッテリに切り替えることにより、インバータを継続運転させることができる。更に第2の通信部が、遠隔操作装置と電力線通信しインバータと第2の通信方式で通信することにより、遠隔操作装置とインバータとの間の通信を中継して、遠隔操作装置によりインバータを制御することができる。よって、停電等が原因で商用電源からビルやマンションの他の機器が使用できない時でも、最低限ライフラインである流体供給装置制御用のインバータへの電力供給とインバータの遠隔制御を実現することができる。本構成では、建物全体をバックアップする大型の電源を必要とせず、流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリに加えて、電力線通信する第2の通信部(例えばPLC通信基板)、及び、コントローラ(例えば切り替え用制御基板)を搭載した簡易な構成によりライフラインである流体供給装置の機能を維持することができ、既存の流体供給装置(例えば給水装置)へ追加することも容易とできるメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る給水システムの構成を示す概略構成図である。
図2】通常時の流体供給装置用切替システムの動作を説明するための模式図である。
図3】停電時の流体供給装置用切替システムの動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0026】
本実施形態では、災害等の停電が原因で商用電源からインバータに電力を供給できない状況の場合、バッテリから電力をインバータへ供給してインバータを駆動し、中継器と遠隔操作装置との間は、電力線通信(Power Line Communication:PLC)を使用して電力ケーブルで通信をする。これにより、災害等の際に商用電源が停電となり、ビルやマンションの他の機器が使用できないときでも、ポンプ装置に給電するためのインバータを遠隔で制御することができるので、ポンプを運転することができる。本実施形態では、一例として、モータとインバータが一体となっているインバータ一体型モータを例に説明する。このインバータ一体型モータを用いることにより、インバータとモータとの間の配線が露出するのを避けることができるので取り回しが容易になるとともに、省スペース化を実現することができる。
【0027】
<構成>
本実施形態では、流体供給システムの一例として給水システムSについて説明する。図1は、本実施形態に係る給水システムの構成を示す概略構成図である。図1に示すように、流体供給システムの一例である給水システムSは、後述するインバータ62への電力供給と通信経路を切り替える流体供給装置用切替システム1と、電力ケーブルで流体供給装置用切替システム1に接続されている送電網8と、電力ケーブルで送電網8に接続されている遠隔操作装置9とを備える。ここで流体供給装置用切替システム1は、遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信信号を中継する第1の中継器2と、遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信信号を中継する第2の中継器3と、スイッチ4とを有する。
【0028】
第1の中継器2は、商用電源CPと電力線で接続され、スイッチ4の第1の端子T1と電力線で接続されている。すなわち、第1の中継器2は、商用電源CPからの電力をスイッチ4の第1の端子T1へ分配する。商用電源CPからの電力を受け、この電力の一部を自身で消費し、この電力の一部をスイッチ4の第1の端子T1を介して、インバータ62へ供給する。
【0029】
ここで、第1の中継器2は、第1の通信部21と、電流検出部22とを備える。第1の通信部21は、遠隔操作装置9と電力線通信し、インバータ62と第1の通信方式で通信する。ここで第1の通信部21は、遠隔操作装置9と電力線通信するPLC通信部211と、インバータ62と第1の通信方式で通信回路212とを備える。この第1の通信方式は、有線通信であっても、無線通信(例えば、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等)であってもよい。
【0030】
電流検出部22は、第1の通信部21または商用電源CPの電流を検出する。商用電源CPの系統が停電ではない場合、電流検出部22は、閾値を超える電流を検出することができる。
【0031】
第2の中継器3は、電流検出部22に接続されたコントローラ31と、第2の通信部32と、入力端子TIと出力端子TOを有し流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリ33と、バッテリ33の出力端子TOに接続されている交流変換器34と、切替部35とを備える。
【0032】
コントローラ31は、電流検出部22が検出した電流値に応じて、スイッチ4を制御する。またコントローラ31は、電流検出部22が検出した電流値に応じて、切替部35を制御する。
【0033】
第2の通信部32は、遠隔操作装置と電力線通信可能であり、インバータ62と第2の通信方式で通信可能である。ここで、第2の通信部32は、遠隔操作装置と電力線通信可能なPLC通信部321と、インバータ62と第2の通信方式で通信可能な通信回路322とを有する。交流変換器34は、バッテリ33から出力された直流電圧を交流電圧に変換する。この第2の通信方式は、第1の通信方式と同じであってもよい。また第2の通信方式は、有線通信であっても、無線通信(例えば、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等)であってもよい。
【0034】
切替部35は、第2の通信部32と接続されている第4の端子T4と、バッテリ33の入力端子TIに接続されている第5の端子T5と、送電網8を介して遠隔操作装置9と送電線で接続されている第6の端子T6とを有する。切替部35は、第2の通信部32と接続されている第4の端子T4とバッテリ33の入力端子TIに接続されている第5の端子T5との間で、遠隔操作装置9と送電線で接続されている第6の端子T6との導通を切り替え可能である。
【0035】
スイッチ4は、商用電源CPと接続されている第1の端子T1と、交流変換器34の出力に第2の端子T2と、端子箱64を介してインバータ62に接続されている第3の端子T3とを有する。このように、スイッチ4における第2の端子T2は、交流変換器34を介してバッテリ33に接続されている。これにより、電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合にバッテリ33から出力された直流電圧が交流電圧に変換されたインバータ62に供給することができるので、停電時にインバータ62の電源を確保することができポンプを駆動することができる。スイッチ4は、商用電源CPと接続されている第1の端子T1とバッテリの出力端子TOに接続されている第2の端子T2との間で、インバータ62と接続されている第3の端子T3との導通を切り替え可能である。
【0036】
更に給水システムSは、流体供給装置を備え、この流体供給装置はポンプ5と、ポンプを駆動するインバータ一体型モータ6とを有する。ポンプ5は、水を吸い込む吸込部51と水を吐き出す吐出部52とを有する。インバータ一体型モータ6は、モータ61とインバータ62が一体となっているものである。インバータ一体型モータ6は、ポンプ5を駆動するモータ61と、モータ61を可変速制御するインバータ62と、ファン63と、スイッチ4からの電力線が接続される端子を含む端子箱64を備える。ここで、インバータ62は、第1の通信部21または第2の通信部32を介して遠隔操作装置9と通信する通信部622と、遠隔操作装置9からの通信信号に応じてモータを可変速制御するプロセッサ621と、を備える。
【0037】
通信部622における通信は、特定の通信方式(有線でも、無線でもよく、無線であれば例えばWi-Fi、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等)であってよく、第1の通信部21と通信する際の第1の通式方式と、第2の通信部32と通信する際の第2の通式方式とは同じであっても異なっていてもよい。なお、第1の通式方式と第2の通式方式は同じであることが好ましい。これにより、インバータ62の通信部622における通信回路が一つの方式の回路でよいので、インバータ62の通信部622の通信回路の大きさを小さくすることができるとともにコストを抑えることができる。
【0038】
更に給水システムSは、吐出圧力を検出する圧力センサ71と、モータ61の軸の振動を検出する振動センサ72とを備える。圧力センサ71及び振動センサ72の配線は端子箱64に接続され、端子箱64を介して電力の供給を受ける。
【0039】
<通常時の動作>
続いて、流体供給装置用切替システムの動作について説明する。図2は、通常時の流体供給装置用切替システムの動作を説明するための模式図である。通常時は、電流検出部22が検出する電流値が閾値を超える。電流検出部が検出する電流値が閾値を超える場合、図2に示すように、スイッチ4において第1の端子T1と第3の端子T3とが導通して商用電源CPからインバータ62へ電力が供給され、第1の通信部21は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。
【0040】
具体的には、第1の通信部21のPLC通信部211と遠隔操作装置9との間で通信信号S1が流れる。一方、第1の通信部21の通信回路212とインバータ62の通信部622との間で通信信号S2が流れる。これにより、第1の通信部21のPLC通信部211は、電力線を介して遠隔操作装置9と通信する。第1の通信部21の通信回路212は、インバータ62の通信部622と通信する。これにより、第1の通信部21は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継することができる。
【0041】
また、電流検出部22が検出する電流値が閾値を超える場合、切替部35における第5の端子T5と第6の端子T6とが導通してバッテリ33が充電されている。これにより、通常時には、バッテリ33を充電することができる。
【0042】
<停電等が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合の動作>
続いて、停電等が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合の動作について図3を用いて説明する。図3は、停電時の流体供給装置用切替システムの動作を説明するための模式図である。図3に示すように、電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合、コントローラ31は、バッテリ33からインバータ62へ電力が供給するように、スイッチ4における第2の端子T2と第3の端子T3とを導通させ、第2の通信部32は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。停電等が原因で商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、第2の通信部32は、バッテリ33から電力を供給されて駆動してもよいし、第2の通信部32は、送電網8経由で電力線通信しつつ送電網8からの電力で駆動してもよい。
【0043】
具体的には、第2の通信部32のPLC通信部321と遠隔操作装置9との間で通信信号S1が流れる。一方、第2の通信部32の通信回路322とインバータ62の通信部622との間で通信信号S3が流れる。これにより、第2の通信部32のPLC通信部321は、電力線を介して遠隔操作装置9と通信する。第2の通信部32の通信回路322は、インバータ62の通信部622と通信する。これにより、第2の通信部32は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継することができる。
【0044】
更に、電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合、コントローラ31は、第2の通信部32が遠隔操作装置9との間で電力線通信できるように、切替部35における第4の端子T4と第6の端子T6とを導通させる。これにより、商用電源からインバータへ電力が供給できない場合、第2の通信部32が送電線で遠隔操作装置に接続されるので、第2の通信部32が遠隔操作装置9との間で電力線通信することができる。
【0045】
以上、本実施形態に係る流体供給装置用切替システム1は、流体供給装置のインバータへの電力供給経路と通信経路を切り替える流体供給装置用切替システムであって、遠隔操作装置9と電力線通信し、インバータと第1の通信方式で通信する第1の通信部21と、遠隔操作装置9と電力線通信可能であり、前記インバータと第2の通信方式で通信可能な第2の通信部32と、蓄電するバッテリ33と、商用電源CPと接続されている第1の端子T1とバッテリ33の出力端子に接続されている第2の端子T2との間で、インバータ62と接続されている第3の端子T3との導通を切り替え可能なスイッチ4と、第1の通信部21または商用電源CPの電流を検出する電流検出部22と、電流検出部22が検出した電流値に応じて、スイッチ4を制御するコントローラ31と、を備える。電流検出部22が検出する電流値が閾値を超える場合、スイッチ4において第1の端子T1と第3の端子T3とが導通して商用電源CPからインバータ62へ電力が供給され、第1の通信部21は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合、コントローラ31は、バッテリ33からインバータ62へ電力が供給するように、スイッチ4における第2の端子T2と第3の端子T3とを導通させ、第2の通信部32は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。
【0046】
この構成により、通常時には、第1の通信部21が遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継して、遠隔操作装置9によりインバータ62を制御することができる。一方、停電が原因で商用電源から流体供給装置制御用のインバータ62へ電力が供給できない場合、インバータ62へ電力の供給元を、商用電源からバッテリ33に切り替えることにより、インバータ62を継続運転させることができる。更に第2の通信部32が、遠隔操作装置9と電力線通信しインバータ62と第2の通信方式で通信することにより、遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継して、遠隔操作装置9によりインバータ62を制御することができる。よって、停電等が原因で商用電源からビルやマンションの他の機器が使用できない時でも、最低限ライフラインである流体供給装置制御用のインバータへの電力供給とインバータの遠隔制御を実現することができる。本構成では、建物全体をバックアップする大型の電源を必要とせず、流体供給に必要な容量を蓄電するバッテリに加えて、電力線通信する第2の通信部32(例えばPLC通信基板)、及び、コントローラ31(例えば切り替え用制御基板)を搭載した簡易な構成によりライフラインである流体供給装置の機能を維持することができ、既存の流体供給装置(例えば給水装置)へ追加することも容易とできるメリットがある。
【0047】
なお、スイッチ4は、商用電源と接続されている第1の端子と前記バッテリの出力端子に接続されている第2の端子との間で、インバータと接続されている第3の端子との導通を切り替え可能としたが、これに限ったものではない。スイッチ4は、商用電源CPとインバータ62との間の導通と非導通を切り替えるスイッチと、バッテリ33の出力端子TOとインバータ62との間の導通と非導通を切り替えるスイッチと、コントローラが二つのスイッチのうち一方を導通に他方を非導通にするように制御してもよい。このように、商用電源CPとバッテリ33の出力端子TOとの間で、インバータ62への導通を切り替えるものであればよい。
【0048】
この場合、電流検出部22が検出する電流値が閾値を超える場合、スイッチ4において商用電源CPとインバータ62とを導通させ、第1の通信部21は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。一方、電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合、コントローラ31は、スイッチ4においてバッテリ33の出力端子TOとインバータ62とを導通させ、第2の通信部32は遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継する。
【0049】
また、切替部35は、第2の通信部と接続されている第4の端子と前記バッテリの入力端子に接続されている第5の端子との間で、前記遠隔操作装置と送電線で接続されている第6の端子との導通を切り替え可能としたが、これに限ったものではない。切替部35は、遠隔操作装置9と第2の通信部32のPLC通信部321との導通と非導通を切り替えるスイッチと、遠隔操作装置9とバッテリ33の入力端子TIとの導通と非導通を切り替えるスイッチとを有し、コントローラ31が二つのスイッチのうち一方を導通に他方を非導通にするように制御してもよい。このように、切替部35は、第2の通信部32のPLC通信部321とバッテリ33の入力端子TIとの間で、遠隔操作装置9への導通を切り替えるものであればよい。
【0050】
この場合、電流検出部22が検出する電流値が閾値を超える場合、切替部35におけるおいてバッテリ33の入力端子TIと遠隔操作装置9を導通させる。これにより、バッテリ33を充電することができる。一方、電流検出部22が検出する電流値が閾値を下回る場合、コントローラ31は、切替部35において第2の通信部32と遠隔操作装置9を導通させる。これにより、第2の通信部32のPLC通信部321が遠隔操作装置9と電力線通信することができるので、第2の通信部32は、遠隔操作装置9とインバータ62との間の通信を中継することができる。よって、停電が原因で商用電源からインバータに電力を供給できない状況でも、インバータの遠隔制御をすることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、送電網8からの電力によってバッテリ33を充電したが、これに限ったものではない。バッテリ33は太陽光パネルと接続されており、太陽光パネルからの電力で充電されてもよい。
【0052】
なお、上述した実施形態で説明したコントローラ31の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ハードウェアで構成する場合には、コントローラ31の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0053】
さらに、一つまたは複数の情報処理装置によってコントローラ31を機能させてもよい。複数の情報処理装置を用いる場合、情報処理装置のうちの1つをコンピュータとし、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することによりコントローラ31の少なくとも1つの手段として機能が実現されてもよい。
【0054】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 流体供給装置用切替システム
10 流体供給装置
2 第1の中継器
21 第1の通信部
211 PLC通信部
212 通信回路
22 電流検出部
3 第2の中継器
31 コントローラ
32 第2の通信部
321 PLC通信部
322 通信回路
33 バッテリ
34 交流変換器
35 切替部
4 スイッチ
5 ポンプ
51 吸込部
52 吐出部
6 インバータ一体型モータ
61 モータ
62 インバータ
621 プロセッサ
622 通信部
63 ファン
64 端子箱
71 圧力センサ
72 振動センサ
8 送電網
9 遠隔操作装置
CP 商用電源
S 給水システム
図1
図2
図3