IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

特許7414668ポリビニルアルコール含有造粒物及び固形製剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ポリビニルアルコール含有造粒物及び固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20240109BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240109BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/02
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020144742
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039618
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】平間 康之
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/162852(WO,A1)
【文献】特開2019-131533(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、
けん化度が60~72モル%であるポリビニルアルコール0.1~5.0質量%とを少なくとも含む造粒物。
【請求項2】
前記賦形剤が含まれ、該賦形剤が、糖、糖アルコール、デキストリン、粉末セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び硫酸カルシウムからなる群から選ばれる請求項1に記載の造粒物。
【請求項3】
前記崩壊剤が含まれ、該崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びクロスポビドンからなる群から選ばれる請求項1又は請求項2に記載の造粒物。
【請求項4】
前記1種以上が、デンプン又は微結晶セルロースである請求項1に記載の造粒物。
【請求項5】
前記けん化度が60~70モル%である請求項1~4のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項6】
前記けん化度が60~66モル%である請求項1~4のいずれか1項に記載の造粒物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の造粒物と、該造粒物が前記活性成分を含まないときは活性成分とを少なくとも含む固形製剤。
【請求項8】
錠剤、顆粒剤又はカプセル剤である請求項に記載の固形製剤。
【請求項9】
活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上を少なくとも含む被添加成分に、水を少なくとも含む添加成分を添加しながら造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程であって、前記被添加成分及び/又は前記添加成分がけん化度60~72モル%のポリビニルアルコールを造粒物中に0.1~5.0質量%となる量で含む造粒工程を少なくとも含む造粒物の製造方法。
【請求項10】
前記賦形剤が含まれ、該賦形剤が、糖、糖アルコール、デキストリン、粉末セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び硫酸カルシウムからなる群から選ばれる請求項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項11】
前記崩壊剤が含まれ、該崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム及びクロスポビドンからなる群から選ばれる請求項又は請求項10に記載の造粒物の製造方法。
【請求項12】
前記1種以上が、デンプン又は微結晶セルロースである請求項9に記載の造粒物の製造方法。
【請求項13】
前記けん化度が60~70モル%である請求項9~12のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【請求項14】
前記けん化度が60~66モル%である請求項9~12のいずれか1項に記載の造粒物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールを含有する造粒物及びこれを少なくとも含む崩壊性に優れる医薬品又は健康食品の固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品又は栄養機能食品等の健康食品の活性成分を経口投与する際の剤形としては、錠剤、顆粒剤及びカプセル剤等の固形製剤、エリキシル剤及び懸濁剤、乳剤等の液剤等がある。これらのうち、錠剤は、粉体を一定の形状に圧縮成形した固形製剤であり、取り扱いや服用が容易である等の利点を有する。特に医薬品分野において、錠剤は全生産額の約50%を占めており、最も汎用されている。
【0003】
錠剤の製造方法としては、乾式直接打錠法、乾式造粒打錠法、押出造粒打錠法、湿式造粒打錠法等が挙げられる。薬物と賦形剤等とを混合してそのまま打錠する乾式直接打錠法と比較して、湿式造粒打錠法は工程が複雑であるが、造粒操作により粉体の結合性、流動性及び薬物の含量均一性を大きく改善することができるため、より一般的に汎用される方法である。ここで、湿式造粒打錠法とは、薬物と賦形剤等との混合物を、結合剤溶液や水等の溶媒の付着力を利用して造粒後、乾燥し、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る方法であり、さらに撹拌造粒機を用いる場合の湿式撹拌造粒打錠法と、流動層造粒機を用いる場合の流動層造粒打錠法とがある。
また、得られた造粒物を打錠せずに、そのまま医薬品又は健康食品として経口投与する場合の固形製剤を顆粒剤といい、造粒物をカプセルに充填して得られる固形製剤をカプセル剤という。
【0004】
湿式造粒打錠法における造粒時に用いる結合剤としては、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」とも記載する。)、ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「HPC」とも記載する。)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」とも記載する。)が主に使用されている。
しかし、これらの結合剤では結合力が不足し、所定の粒子径を有する造粒物が得られない場合や、所定の錠剤硬度を有する錠剤が得られない場合、また、打錠時にキャッピング等の打錠障害が発生する場合があり、結合力を充足させるために添加量を増やすと、崩壊性が悪化する問題がある。
そのため、結合剤の添加量を増やすことなく、十分な粒子径を有し、さらに打錠した際には錠剤硬度が高く、かつ崩壊時間が短い錠剤を得ることができる造粒物、及び、特殊な技術や機器を用いずに前記造粒物を製造する方法の開発が望まれている。
【0005】
PVP、HPC及びHPMCでは結合力が不足する場合に、高い結合力を有する結合剤として、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも記載する。)が使用される場合がある。例えば、結合剤として、医薬品添加物規格に適合するPVAを用いて湿式撹拌造粒を行って得られた造粒物は、HPC及びHPMCを用いた場合と比較して、微粒子量が少なく、圧縮度が小さく、流動性に優れ、PVAを含む造粒物を打錠して得られる錠剤は、HPC及びHPMCと比較して、錠剤硬度が高く、摩損度が低いことが知られている(非特許文献1)。
また、PVAは、難溶性薬物の溶解性、溶出性を改善するため、固体分散体(薬物が非晶化して担体中に分子レベルで分散したもの)の担体(キャリヤー)として用いられる(特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/199281号
【文献】国際公開第2018/199282号
【非特許文献】
【0007】
【文献】第30回製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集2013年第38~39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、湿式撹拌造粒をはじめとする湿式造粒を行って得られる造粒物中において、PVAを結合剤として用いた場合は、他の結合剤を用いた場合と比較して、崩壊時間が遅延してしまう場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、PVAを結合剤として用いた場合においても崩壊性に優れる造粒物、その製造方法及び該造粒物を少なくとも含む固形製剤を提供することを目的とする。なお、本発明は、造粒物に関するものであるため、固体分散体と異なり、造粒物の製造時に結晶の薬物が非晶質化することはない。また、固体分散体を造粒する場合を除き、造粒物には、固体分散体は含まれず、除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、湿式造粒打錠法における造粒時に、けん化度が60~72モル%であるPVAを用いることにより、硬度及び崩壊性に優れる錠剤を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の1つの態様によれば、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、けん化度が60~72モル%であるポリビニルアルコールを0.1~5.0質量%とを少なくとも含む造粒物が提供される。
本発明の別の態様によれば、前記造粒物と、該造粒物が前記活性成分を含まないときは活性成分とを少なくとも含む固形製剤が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上を少なくとも含む被添加成分に、水を少なくとも含む添加成分を添加しながら造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程であって、前記被添加成分及び/又は前記添加成分がけん化度60~72モル%のポリビニルアルコールを造粒物中に0.1~5.0質量%となる量で含む造粒工程を少なくとも含む造粒物の製造方法が提供される。
本発明の他の態様によれば、前記造粒物及び滑沢剤を少なくとも含む打錠末を打錠して錠剤を得る工程を少なくとも含む錠剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬度及び崩壊性に優れる高品質な固形製剤を製造することができるため、充填時や輸送時等において割れや欠けの発生を抑制でき、経口投与した際に速やかに薬効を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)造粒物
造粒物は、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、結合剤としてけん化度が60~77モル%であるポリビニルアルコールを0.1~5.0質量%とを少なくとも含む。
【0012】
活性成分としては、経口投与可能な活性成分であれば特に限定されるものではないが、医薬品に用いられる薬物並びに栄養機能食品、特定保健用食品及び機能性表示食品等の健康食品に用いられる活性成分等が挙げられる。
医薬品に用いられる薬物としては、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0013】
中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、ナプロキセン、ピロキシカム、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシド等が挙げられる。
循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。
【0014】
呼吸器系薬物としては、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシン等が挙げられる。
消化器系薬物としては、2-[〔3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5-メトキシ-2-〔(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル及び5-アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0015】
抗生物質としては、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシン等が挙げられる。
鎮咳・去たん剤としては、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。
解熱鎮痛消炎剤としては、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。
【0016】
利尿剤としては、カフェイン等が挙げられる。
自律神経作用薬としては、リン酸ジヒドロコデイン及びdl-塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。
抗マラリア剤としては、塩酸キニーネ等が挙げられる。
止潟剤としては、塩酸ロペラミド等が挙げられる。
向精神剤としては、クロルプロマジン等が挙げられる。
ビタミン類及びその誘導体としては、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。
【0017】
健康食品に用いられる活性成分としては、前記ビタミン類及びその誘導体、ミネラル、カロテノイド、アミノ酸及びその誘導体、植物エキス並びに健康食品素材等が挙げられる。
ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、セレン、クロム、硫黄、ヨウ素等が挙げられる。
カロテノイドとしては、β-カロチン、α-カロチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、リコペン、アスタキサンチン、マルチカロチン等が挙げられる。
【0018】
アミノ酸としては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸及び酸性アミノ酸アミド等が挙げられる。
酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸等が挙げられる。
塩基性アミノ酸としては、リシン、アルギニン及びヒスチジン等が挙げられる。
中性アミノ酸としては、アラニン及びグリシン等の直鎖状の脂肪族アミノ酸、バリン、ロイシン及びイソロイシン等の分岐状の脂肪族アミノ酸、セリン及びトレオニン等のヒドロキシアミノ酸、システイン及びメチオニン等の含硫アミノ酸、フェニルアラニン及びチロシン等の芳香族アミノ酸、トリプトファン等の複素環式アミノ酸及びプロリン等のイミノ酸等が挙げられる。
酸性アミノ酸アミドとしては、アスパラギン及びグルタミン等が挙げられる。
アミノ酸誘導体としては、アセチルグルタミン、アセチルシステイン、カルボキシメチルシステイン、アセチルチロシン、アセチルヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシプロリン、グルタチオン、クレアチン、S-アデノシルメチオニン、グリシルグリシン、グリシルグルタミン、ドーパ、アラニルグルタミン、カルニチン及びγ-アミノ酪酸等が挙げられる。
【0019】
植物エキスとしては、アロエ、プロポリス、アガリクス、高麗人参、イチョウ葉、ウコン、クルクミン、発芽玄米、椎茸菌糸体、甜茶、甘茶、メシマコブ、ごま、にんにく、マカ、冬虫夏草、カミツレ及びトウガラシ等が挙げられる。
健康食品素材としては、ローヤルゼリー、食物繊維、プロテイン、ビフィズス菌、乳酸菌、キトサン、酵母、グルコサミン、レシチン、ポリフェノール、動物魚介軟骨、スッポン、ラクトフェリン、シジミ、エイコサペンタエン酸、ゲルマニウム、酵素、クレアチン、カルニチン、クエン酸、ラズベリーケトン、コエンザイムQ10、メチルスルホニルメタン及びリン脂質結合大豆ペプチド等が挙げられる。
【0020】
活性成分の使用量は、後述する固形製剤中における活性成分の含量に応じて定めることができる。活性成分は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、活性成分は、市販のものを用いることができる。
【0021】
賦形剤としては、白糖、乳糖、グルコース、マルトース等の糖;D-マンニトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール;コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン;デキストリン;粉末セルロース;、微結晶セルロース;炭酸カルシウム;リン酸カルシウム及び硫酸カルシウム等が挙げられ、る。
賦形剤の使用量は、後述する固形製剤中における活性成分の含量に応じて定めることができる。賦形剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、賦形剤は、市販のものを用いることができる。
【0022】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース;コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン;部分アルファー化デンプン;デンプングリコール酸ナトリウム;カルメロース;カルメロースカルシウム;クロスカルメロースナトリウム;微結晶セルロース及びクロスポビドン等が挙げられる。
例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(low-substituted hydroxypropyl cellulose;以下、「L-HPC」とも記載する。)におけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、崩壊性の観点から、好ましくは5~16質量%、より好ましくは7~15質量%である。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、第十七改正日本薬局方の「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」の項に収載された定量法によって測定することができる。
崩壊剤の使用量は、目的とする固形製剤中における崩壊剤の含量に応じて定めることができる。崩壊剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、崩壊剤は、市販のものを用いることができる。
【0023】
PVAは、水溶性のポリマーで、結合剤として使用される。一般的に、酢酸ビニルモノマーを重合し、その後、アルカリによるけん化を行うことにより、PVAが製造される。PVAのけん化度は、60~77モル%、好ましくは60~74モル%、より好ましくは60~72モル%、特に好ましくは62~72モル%である。けん化度が60モル%未満の場合は、水への溶解性が低下して相分離が生じて析出したり、結合性が不十分となる。また、77モル%を超えた場合は、固形製剤に使用した場合に崩壊性が不十分となる。
PVAのけん化度は、JIS K6726に記載のけん化度測定方法に従って測定することができる。
【0024】
PVAの4質量%水溶液の20℃における粘度は、1.5~100.0mPa・s、好ましくは2.0~80.0mPa・s、より好ましくは3.0~50.0mPa・sである。粘度が1.5mPa・sだと十分な結合力が得られず、100mPa・sを超えると造粒が亢進しすぎて団粒が発生したり、固形製剤に使用した場合に崩壊性が不十分となる。
PVAの4質量%水溶液の20℃における粘度は、JIS K6726に記載の粘度測定方法に従って測定することができる。
【0025】
造粒物中のPVAの含有量は、造粒物中に、0.1~5.0質量%、好ましくは0.2~4.0質量%、より好ましくは0.5~3.0質量%である。含有量が0.1質量%未満の場合は、十分な結合力が得られず、また、5.0質量%を超えた場合は、造粒が亢進しすぎて団粒が発生したり、固形製剤に使用した場合に崩壊性が不十分となる。
【0026】
造粒物は、必要に応じて、PVA以外の結合剤、活性成分と賦形剤と崩壊剤以外の添加剤(以下、「その他の添加剤」とも記載する。)を含んでもよい。
PVA以外の結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及び酢酸ビニル樹脂・ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
【0027】
その他の添加剤としては、香料、甘味料、流動化剤、及び活性成分の溶解補助剤等が挙げられる。
香料としては、メントール、ハッカ油及びバニリン等が挙げられる。
甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア及びソーマチン等が挙げられる。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
活性成分の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸及びアジピン酸等の有機酸等又はそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
その他の添加剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、その他の添加剤は、市販のものを用いることができる。その他の添加剤の使用量は、固形製剤中の含量として後述する。
【0028】
造粒物の平均粒子径は、用途により異なるが、錠剤に用いる場合は打錠性や錠剤の質量ばらつきの観点から、好ましくは60~300μm、より好ましくは70~200μm、更に好ましくは80~150μmである。
造粒物の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、Malvern社製)を用いて、Fraunhofer回折理論により、乾式法にて、分散圧2bar、散乱強度2~10%の条件で、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当する径を測定できる。
【0029】
(2)造粒物の製造方法
まず、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、結合剤としてけん化度が60~77モル%であるポリビニルアルコールを0.1~5.0質量%とを少なくとも含む造粒物の製造方法について説明する。
造粒物は、例えば、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上を少なくとも含む被添加成分に、水と、けん化度が60~77モル%であるPVAを少なくとも含む添加成分を添加しながら造粒を行うことにより造粒物を得る工程を少なくとも含む製造方法(以下、「造粒物製造方法A」とも記載する。)により製造してもよい。
また、造粒物は、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、けん化度が60~77モル%であるPVAを少なくとも含む被添加成分に、水を少なくとも含む添加成分を添加しながら造粒を行うことにより造粒物を得る工程を少なくとも含む製造方法(以下、「造粒物製造方法B」とも記載する。)により製造してもよい。
さらに、造粒物は、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と、けん化度が60~77モル%であるPVAを少なくとも含む被添加成分に、水と、けん化度が60~77モル%であるPVAを少なくとも含む添加成分を添加しながら造粒を行うことにより造粒物を得る工程を少なくとも含む製造方法(以下、「造粒物製造方法C」とも記載する。)により製造してもよい。
【0030】
造粒物製造方法Aにおける被添加成分は、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上を少なくとも含む。造粒物製造方法B及びCにおける被添加成分は、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上及びPVAを少なくとも含む。
造粒物製造方法A及びCにおける添加成分は、PVAと水とを少なくとも含む水性組成物である。造粒物製造方法Bにおける添加成分は、水を少なくとも含む。
【0031】
PVAの平均粒子径は、添加成分において使用する場合は特に制限されないが、PVA含有水性組成物の調製時の溶解速度の観点から、好ましくは20~5000μm、より好ましくは50~2000μmである。被添加成分において使用する場合は、造粒時の溶解性の観点から、好ましくは10~200μm、より好ましくは20~150μmである。
PVAの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、Malvern社製)を用いて、Fraunhofer回折理論により、乾式法にて、分散圧2bar、散乱強度2~10%の条件にて、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当する径を測定できる。または、JIS Z 8815:1994のふるい分け試験方法通則に記載の乾式の機械ふるい分け法に従ってふるい分けを行い、積算ふるい上百分率をロジンラムラー(Rosin-Rammler)線図にプロットし、積算ふるい上百分率が50%となるときの粒子径を平均粒子径として測定できる。なお、平均粒子径が1000μm以下の場合は、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して平均粒子径を測定することが好ましく、平均粒子径が1000μmを超える場合は、JIS Z 8815:1994に従い平均粒子径を測定することが好ましい。
【0032】
水としては、精製水等が挙げられる。
水の使用量は、特に制限されないが、噴霧と乾燥を同時に行うことができる造粒機(例えば流動層造粒機)を使用する場合は、生産性及び操作性の観点から、添加成分と被添加成分を合わせた造粒物(水を含まない。)100質量部に対して、好ましくは10~500質量部、より好ましくは20~200質量部である。
水の使用量は、噴霧と乾燥を同時に行うことができない造粒機(例えば湿式撹拌造粒機)を使用する場合は、造粒性の観点から、添加成分と被添加成分を合わせた造粒物(水を含まない。)100質量部に対して、好ましくは5~100質量部、より好ましくは10~50質量部である。
【0033】
また、被添加成分の内容にかかわらず、添加成分は、必要に応じて、活性成分、賦形剤及び/又は崩壊剤を含んでも良い。被添加成分及び添加成分のいずれか一方又は両方は、必要に応じて、PVA以外の結合剤、活性成分と賦形剤と崩壊剤以外の添加剤(以下、「その他の添加剤」とも記載する。)を含んでも良い。
【0034】
造粒は、造粒機を用いることにより行うことができる。造粒機としては、流動層造粒機、撹拌造粒機、転動流動層造粒機、噴霧乾燥造粒機等が挙げられる。
流動層造粒機を使用した場合を例に、造粒物製造方法Aにおける造粒操作について説明すると、流動層造粒機に活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上を少なくとも含む粉末状の被添加成分を仕込み、添加成分として所定のPVAと水とを少なくとも含む水性組成物を添加(好ましくは噴霧)しながら、造粒を行うことにより造粒物を得ることができる。
また、湿式撹拌造粒機を使用した場合を例に、造粒物製造方法Bにおける造粒操作について説明すると、湿式撹拌造粒機に、被添加成分として、活性成分、賦形剤及び崩壊剤から選ばれる1種以上と所定のPVAとを仕込み、水を少なくとも含む添加成分を添加(好ましくは噴霧)しながら造粒を行うことにより造粒物を得ることができる。
【0035】
得られた造粒物は、噴霧と乾燥を同時に行うことができる造粒機(例えば流動層造粒機)を用いて乾燥を行った場合にはさらに乾燥する必要はないが、乾燥を行なわかった場合や乾燥を行うことができない造粒機(例えば湿式撹拌造粒機)を使用した場合は、公知の方法により乾燥を行うことが好ましい。
乾燥は、乾燥機(乾燥器)を用いて行うことができる。乾燥機(乾燥器)としては、流動層乾燥機、気流乾燥機、箱型乾燥機、振動乾燥機、自然対流式定温乾燥器、送風定温乾燥器、送風定温恒湿器等が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは40~120℃である。
乾燥後の造粒物の水分量は、錠剤の安定性の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下である。造粒物の水分量は、加熱乾燥式水分計(MX-50、エー・アンド・デイ社製)を用いて、造粒物の仕込み量5g、加熱温度105℃、加熱時間60分間の条件で測定できる。
【0036】
(3)固形製剤
固形製剤は、上述の造粒物と、造粒物が活性成分を含まないときは造粒物と混合された活性成分とを少なくとも含む。固形製剤として、錠剤、顆粒剤及びカプセル剤が挙げられる。
【0037】
固形製剤中又は造粒物中における活性成分の含有量は、特に制限されないが、薬効もしくは効能の観点から、好ましくは0.01~99.40質量%である。
固形製剤中又は造粒物中における賦形剤の含有量は、特に制限されないが、錠剤の硬度と崩壊時間を制御する観点から、好ましくは0.00~99.39質量%、より好ましくは0.00~95.00である。
固形製剤中又は造粒物中における崩壊剤の含有量は、崩壊性、保存安定性の観点から、好ましくは0.5~30.0質量%、より好ましくは1.0~20.0質量%、更に好ましくは2.0~10.0質量%である。
固形製剤中又は造粒物中におけるPVA以外の結合剤の含有量は、錠剤の硬度と崩壊時間を制御する観点から、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%である。
固形製剤中又は造粒物中におけるその他の添加剤の含有量は、特に制限されないが、錠剤の風味を制御、打錠末の流動性を制御又は活性成分の溶出性を制御する観点から、好ましくは0~10質量%である。
活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び添加剤は、上述の錠剤中における含有量の範囲において、粉状の被添加成分、添加成分のいずれに含めてもよいし、造粒物を得てから、任意に活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び添加剤を混合して含めてもよい。また、結合剤を水性組成物のみならず、粉末組成物に含めて造粒を行ってもよい。
【0038】
固形製剤として、錠剤について説明する。
錠剤径としては、取り扱い性及び服用性の観点から、好ましくは6~12mmである。
錠剤質量としては、一錠あたり、好ましくは70~700mgである。
錠剤の硬度は、充填時、輸送時又はPTPシートから錠剤を取り出す際に、割れや欠け等を防ぐ観点から、好ましくは60~300N、より好ましくは80~250N、更に好ましくは、100~200Nである。錠剤硬度は、錠剤硬度計(TBH-125、ERWEKA製)を用いて、錠剤の直径方向に1mm/秒の速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度として測定できる。
錠剤の崩壊時間は、薬効発現の観点から、好ましくは130秒以内、より好ましくは3100秒以内、更に好ましくは80秒以内である。錠剤の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法(試験液:水、補助盤なし)に従い、崩壊試験器(NT-400、富山産業製)を用いて測定できる。
【0039】
固形製剤として、顆粒剤及びカプセル剤は、好ましくは、薬効発現の観点から第十七改正日本薬局方の溶出試験法に適合するものが挙げられる。
【0040】
(4)固形製剤の製造方法
次に、造粒物と、該造粒物が前記活性成分を含まないときは活性成分とを少なくとも含む固形製剤の製造方法について説明する。固形製剤として、得られた造粒物を用いて、錠剤を製造する場合について説明する。
造粒物に活性成分が含まれない場合は、造粒物と活性成分を混合する。このとき、必要に応じて、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤又はその他の添加剤とともに混合してもよく、内部滑沢法を用いる場合には、滑沢剤を含めてもよい。
混合方法としては、混合方法は、特に制限されないが、混合機を用いて行うことができる。混合機としては、V型混合機、リボン型混合機、コンテナー型混合機、タンブラー型混合機等が挙げられる。
【0041】
固形製剤の製造方法として錠剤の製造方法について説明する。
造粒物に対して、少なくとも滑沢剤を添加混合(内部滑沢法)し、打錠することにより錠剤を得ることができる。また、造粒物に滑沢剤を添加混合せず、後述する外部滑沢法より滑沢剤を添加して打錠することにより錠剤を得ることもできる。
必要に応じて、造粒物は、打錠末に変換してもよい。打錠末は、造粒物に、活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、添加剤及び後述する滑沢剤の少なくとも一つを混合する工程により得ることができる。混合方法は、特に制限されないが、混合機を用いて行うことができる。混合機としては、V型混合機、リボン型混合機、コンテナー型混合機、タンブラー型混合機等が挙げられる。
造粒物に他に添加するものがない場合は、造粒物が打錠末となる。
【0042】
打錠は、打錠機を用いて行うことができる。打錠機としては、ロータリー式打錠機、単発式打錠機等が挙げられる。
【0043】
滑沢剤の添加方法(以下、「滑沢方法」とも記載する。)としては、内部滑沢法又は外部滑沢法を選択できる。
内部滑沢法は、滑沢剤を含む打錠末を用いて、打錠末接触部に滑沢剤が備えられていない杵及び臼が装着された打錠機を使用する方法である。一方、外部滑沢法は、滑沢剤を含まない打錠末又は造粒物を用いて、打錠末接触部に滑沢剤が予め備えられた杵及び/又は臼が装着された打錠機を使用する方法である。
【0044】
内部滑沢法を用いて錠剤を製造する場合においては、ロータリー式打錠機、単発式打錠機等の打錠機を用いて、打錠末を打錠末接触部に滑沢剤が備えられていない臼に、滑沢剤を含む打錠末を充填し、上下の打錠末接触部に滑沢剤が備えられていない杵によって所定の圧力で圧縮することにより、錠剤を製造できる。
外部滑沢法を用いて錠剤を製造する場合においては、外部滑沢噴霧システム(ELS-P1、菊水製作所製)を接続したロータリー式打錠機等を用いて、打錠機にセットした打錠末(又は造粒物)接触部に滑沢剤が予め備えられた臼に、滑沢剤を含まない打錠末又は造粒物を充填し、上下の打錠末(又は造粒物)接触部に滑沢剤が予め備えられた杵によって所定の圧力で圧縮することにより、錠剤を製造できる。杵及び臼における打錠末接触部に滑沢剤を備える方法としては、滑沢剤の噴霧や塗布等が挙げられる。
【0045】
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、パラフィン及びカルナウバロウ等のワックス類及びヒマシ硬化油、菜種硬化油及び牛脂硬化油等の硬化油等が挙げられる。
内部滑沢法にて滑沢剤を使用する場合における滑沢剤の使用量は、打錠障害の抑制、崩壊遅延及び錠剤硬度低下を防止する観点から、滑沢剤を含まない錠剤(造粒物又は打錠末)質量100質量部に対して、好ましくは0.2~5.0質量部、より好ましくは0.4~3.0質量部である。
外部滑沢法にて滑沢剤を使用する場合における滑沢剤の使用量は、打錠障害の抑制、崩壊遅延及び錠剤硬度低下を防止する観点から、滑沢剤を含まない錠剤(造粒物又は打錠末)質量100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.05~1.0質量部である。
打錠時の打錠圧は、錠剤硬度、崩壊時間及び打錠障害の観点から、20~400MPaが好ましい。
【0046】
顆粒剤の製造方法としては、例えば、上述した造粒物の製造方法と同じであり、得られた造粒物を打錠せずに顆粒剤として用いる。
カプセル剤の製造方法は、例えば、上述した造粒物の製造方法に含まれる各工程と、得られた造粒物をカプセルに充填する工程とを少なくとも含む。
【実施例
【0047】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
<PVA粉末Aの製造>
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(JMR-30LL、日本酢ビ・ポバール社製)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニル樹脂の51質量%メタノール溶液を得た。この溶液250g(500質量部)を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液6.5g(13質量部)を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて均一になるまで十分に撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール325g(650質量部)、酢酸メチル165g(330質量部)及び水8.5g(17質量部)からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌した後、pHが8~9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った。中和後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA粒状物を得た。
続いて、ワンダーブレンダー(WB-1、大阪ケミカル社製)を用いてPVA粒状物を粉砕した後、目開き150μmのJIS試験用ふるいで篩過し、PVA粉末Aを得た。
得られたPVA粉末Aのけん化度及び4質量%水溶液の20℃における粘度をJIS K6726に記載のけん化度測定方法及び粘度測定方法に従い測定した。また、平均粒子径をレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0048】
<PVA粉末Bの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を5.5g(11質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Bを得た。
得られたPVA粉末Bのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0049】
<PVA粉末Cの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を5.0g(10質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Cを得た。
得られたPVA粉末Cのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0050】
<PVA粉末Dの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を4.5g(9質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Dを得た。
得られたPVA粉末Dのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0051】
<PVA粉末Eの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を4.0g(8質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Eを得た。
得られたPVA粉末Eのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0052】
<PVA粉末Fの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を3.5g(7質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Fを得た。
得られたPVA粉末Fのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0053】
<PVA粉末Gの製造>
35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を2.5g(5質量部)に変えた以外は、PVA粉末Aの製造方法と同様にして、PVA粉末Gを得た。
得られたPVA粉末Gのけん化度、4質量%水溶液の20℃における粘度及び平均粒子径を、PVA粉末Aと同様に測定した。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
参考例1
精製水144gに結合剤としてPVA粉末B(けん化度が76モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が96μm)6gを溶解し、水性組成物(以下、「バインダー水溶液」とも記載する。)を調製した。
次に、活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)60g、賦形剤として乳糖(Pharmatose200M、DFE Pharma社製)219g及び崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.5~0.6m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件にて、上記のバインダー水溶液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧終了後、同一装置内において、給気温度80℃、流動エアー量0.5~0.6mの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物100g(100質量部)に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧10.0kN(約199.0MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0056】
参考例2
結合剤としてPVA粉末C(けん化度が73モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が104μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0057】
実施例3
結合剤としてPVA粉末D(けん化度が70モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が107μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0058】
実施例4
結合剤としてPVA粉末E(けん化度が66モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.3mPa・sであり、平均粒子径が111μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0059】
実施例5
結合剤としてPVA粉末F(けん化度が63モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が3.8mPa・sであり、平均粒子径が108μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0060】
実施例6
精製水147gに結合剤としてPVA粉末D3gを溶解してバインダー水溶液を調製し、流動層造粒機への乳糖の仕込み量を222gにした以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0061】
実施例7
精製水148.5gに結合剤としてPVA粉末D1.5gを溶解してバインダー水溶液を調製し、流動層造粒機への乳糖の仕込み量を223.5gにした以外は、実施例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0062】
参考例8
精製水144gに結合剤としてPVA粉末C(けん化度が73モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が104μm)6gを溶解し、バインダー水溶液を調製した。
次に、活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)60g、賦形剤としてD-マンニトール(PEARLITOL25C、Roquette社製)219gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.5~0.6m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件にて、上記のバインダー水溶液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧終了後、同一装置内において、給気温度80℃、流動エアー量0.5~0.6mの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物95g(95質量部)と、崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5g(5質量部)とを混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧7.5kN(約149.3MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0063】
実施例9
参考例8で得られた造粒物95g(95質量部)と、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウム(Primojel、DFE Pharma社製)5g(5質量部)とを混合し、参考例8と同様の方法にて打錠末及び錠剤を製造した。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0064】
実施例10
精製水144gに結合剤としてPVA粉末D(けん化度が70モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が107μm)6gを溶解し、バインダー水溶液を調製した。
次に、賦形剤としてD-マンニトール(PEARLITOL25C、Roquette社製)279g及び崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.5~0.6m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件にて、上記のバインダー水溶液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧終了後、同一装置内において、給気温度80℃、流動エアー量0.5~0.6mの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物90g(90質量部)と活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)10g(10質量部)とを混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧10.0kN(約199.0MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0065】
実施例11
精製水144gに結合剤としてPVA粉末D(けん化度が70モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が107μm)6gを溶解し、バインダー水溶液を調製した。
次に、活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)294gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて流動することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.5~0.6m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件にて、上記のバインダー水溶液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧終了後、同一装置内において、給気温度80℃、流動エアー量0.5~0.6mの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物50g(50質量部)、賦形剤として乳糖(ダイラクトーズ(登録商標) S、フロイント産業製)38g(38質量部)及び結晶セルロース(Avicel(登録商標) PH-101、FMC社製)10g(10質量部)、崩壊剤としてクロスポビドン(Kollidon(登録商標) CL、BASF社製)2g(2質量部)を混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧10kN(約199.0MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0066】
実施例12
精製水144gに結合剤としてPVA粉末D(けん化度が70モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が107μm)6gを溶解し、バインダー水溶液を調製した。
次に、賦形剤として乳糖(Pharmatose200M、DFE Pharma社製)205.8g及びトウモロコシデンプン(日食コーンスターチW、日本食品化工社製)88.2gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.5~0.6m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件にて、上記のバインダー水溶液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧終了後、同一装置内において、給気温度80℃、流動エアー量0.5~0.6mの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物88g(88質量部)、活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)10g(10質量部)を崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol(登録商標)、FMC社製)2g(2質量部)を混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧10kN(約199.0MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0067】
実施例13
活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)60g、賦形剤として乳糖(Pharmatose200M、DFE Pharma社製)210g、崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース15g及び結合剤としてPVA粉末D15gを湿式撹拌造粒機(VG-05、パウレック社製)に仕込み、メインブレード回転数450rpm、クロススクリュー回転数3000rpmにて1分間混合することにより、粉末組成物を得た。
続いて、同一装置内において、水54gを加え、メインブレード回転数450rpm、クロススクリュー回転数3000rpmにて5分間練合後、目開き1mmのJIS試験用篩でふるい、湿潤造粒物を得た。これを流動層造粒乾燥機(マルチプレックスMP-01、パウレック社製)に仕込み、吸気温度80℃、風量0.6~0.8m/minの条件にて、排気温度45℃になるまで乾燥を行った後、目開き710μmのJIS試験用篩でふるい、造粒物を得た。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。
次に、得られた造粒物100g(100質量部)に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)0.5g(0.5質量部)を添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧15.0kN(約298.6MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0068】
実施例14
賦形剤として乳糖(Pharmatose200M、DFE Pharma社製)216g、結合剤としてPVA粉末E9gを使用した以外は、実施例13と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0069】
実施例15
結合剤としてPVA粉末Fを使用した以外は、実施例14と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0070】
比較例1
結合剤としてPVA粉末A(けん化度が79モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであり、平均粒子径が96μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0071】
比較例2
結合剤としてPVA粉末G(けん化度が58モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が3.0mPa・sであり、平均粒子径が115μm)を使用した以外は、参考例1と同様の方法にて造粒を行ったところ、相分離して析出したPVAのゲル状物がスプレーノズルを閉塞させ、溶液を噴霧できなくなったため造粒操作を中断した。
【0072】
比較例3
精製水132gに結合剤としてPVA粉末D18gを溶解してバインダー水溶液を調製し、流動層造粒装置への乳糖の仕込み量を207gにした以外は、参考例1と同様の方法にて造粒を行ったところ、造粒が亢進しすぎて流動状態が悪化し、流動層造粒装置内でブロッキングが発生したため造粒操作を中断した。
【0073】
比較例4
結合剤としてPVA粉末Aを使用した以外は、参考例8と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0074】
比較例5
結合剤としてPVA粉末Aを使用した以外は、実施例9と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0075】
比較例6
結合剤としてPVA粉末Aを使用した以外は、実施例14と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0076】
比較例7
湿式撹拌造粒機への乳糖の仕込み量を225gとし、PVA粉末を仕込まなかった以外は、実施例13と同様の方法にて造粒物及び錠剤を製造した。得られた造粒物の組成、平均粒子径及び水分量を表2に示す。また、得られた錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表3に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
けん化度が63~76モル%のPVAを使用した参考例1及び実施例3~5では、十分な平均粒子径を有する造粒物が得られ、かつ良好な硬度及び崩壊性を有する錠剤が得られた。さらに、PVAのけん化度が低いほど崩壊性の改善効果が大きいことが知見された。一方、けん化度が79モル%のPVAを使用した比較例1では、十分な造粒性及び錠剤硬度を有していたが、崩壊性が不十分であった。
PVAは、分子中にヒドロキシ基を多数有する親水性の高い水溶性結合剤であるが、分子間水素結合が強く水への溶解速度が遅いため、比較例1の錠剤ではPVAの溶解に時間を要し、崩壊性が不十分であったと考えられる。一方、けん化度が低いほどヒドロキシ基に結合する疎水性のアセチル基の量が増え、分子間水素結合が弱まるため水への溶解速度が速くなり、参考例1及び実施例3~5の錠剤においてけん化度が低いほど崩壊時間が速くなる傾向を示したと考えられる。また、けん化度が58モル%のPVAを使用した比較例2より、けん化度が低すぎる場合は、疎水性の増加によって水への溶解性が低下し、相分離して析出したPVAのゲル状物がスプレーノズルを閉塞させて溶液を噴霧できず、造粒物が得られないため、結合剤として不適であることが示された。
【0080】
けん化度が70モル%のPVAを使用した実施例3、6及び7より、PVAの添加量が少ないほど造粒物の平均粒子径及び錠剤硬度が低下するが、十分な造粒性及び錠剤硬度を有しており、崩壊性が改善することが分かる。反対に、PVAの添加量が多いほど造粒性及び錠剤硬度が改善されることが示されたが、比較例3によって、PVAの添加量が多すぎると造粒が亢進しすぎて造粒時の流動状態が悪化し、流動層造粒装置内でブロッキングが発生して造粒操作を継続できず造粒物が得られないことも示されたため、PVAの添加量には適正範囲があると考えられる。
【0081】
参考例1~2及び実施例3~7と異なる賦形剤を使用し、崩壊剤を造粒時に内添ではなく造粒後に外添した参考例8及び比較例4により、賦形剤の種類や崩壊剤の添加方法 (内添・外添) によらず、PVAのけん化度が低下することにより、崩壊性が改善することが分かった。さらに、参考例8と異なる崩壊剤を使用した実施例9及び比較例5より、崩壊剤の種類によらずPVAのけん化度が低下することにより、崩壊性が改善することが分かった。
【0082】
賦形剤、崩壊剤及びPVAの3成分からなる造粒物に対して活性成分を外添した場合の実施例10、活性成分及びPVAの2成分からなる造粒物に対して賦形剤及び崩壊剤を外添した場合の実施例11、並びに賦形剤及びPVAの2成分からなる造粒物に対して活性成分及び崩壊剤を外添した場合の実施例12のいずれにおいても、良好な硬度及び崩壊性を有する錠剤が得られた。このことから、賦形剤、崩壊剤及び活性成分の添加方法(内添・外添)によらず、良好な物性を有する錠剤を得ることができると言える。
【0083】
活性成分、賦形剤及び崩壊剤に対してPVAの水溶液を添加して造粒を行った参考例12及び実施例3~7とは異なる造粒方法、すなわち、活性成分、賦形剤、崩壊剤及びPVA(けん化度70~63モル%)に対して水を添加して造粒を行った実施例13~15においても、十分な粒子径を有する造粒物が得られ、かつ良好な硬度及び崩壊性を有する錠剤が得られた。一方、実施例13~15と同じ造粒方法で、けん化度79モル%のPVAを使用した比較例6では、十分な造粒物平均粒子径及び錠剤硬度を有していたが、崩壊性が不良であった。また、PVAを添加しなかった比較例7では、結合力が不足して十分な粒子径の造粒物が得られず、十分な硬度を有する錠剤が得られなかった。