(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】高周波加速空胴用コアおよびそれを用いた高周波加速空胴
(51)【国際特許分類】
H05H 7/18 20060101AFI20240109BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20240109BHJP
H01F 27/25 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H05H7/18
H01F1/153 108
H01F1/153 133
H01F27/25
(21)【出願番号】P 2021550635
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035608
(87)【国際公開番号】W WO2021070604
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019187936
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】303058328
【氏名又は名称】東芝マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 忠雄
(72)【発明者】
【氏名】土生 悟
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-333717(JP,A)
【文献】特開平09-167699(JP,A)
【文献】米国特許第06246172(US,B1)
【文献】SAITO K., et al.,FINEMET-core loaded untuned RF cavity,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A,NL,ELSEVIER,1997年07月25日,402,pp. 1-13
【文献】YOSHIZAWA S. et al.,New Fe-based soft magnetic alloys composed of ultrafine grain structure,J. Appl. Phys.,米国,American Institure of Physics,1988年11月,Vol. 64, No. 10,pp. 6044-6046
【文献】SUGIURA A. et al.,IMPROVEMENT OF CO-BASED AMORPHOUS CORE FOR UNTUNED BROADBAND CAVITY,Proceedings of EPAC 2006,フランス,European Physical Society,2006年07月,TUPCH124, T06,pp. 1304-1306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 7/18
H01F 1/153
H01F 27/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層を介して、平均結晶粒径1μm以下の結晶を有するFe系磁性薄帯を巻回したトロイダル状コアであって、
前記絶縁層の厚みは1μm以上5μm以下であり、Fe系磁性薄帯の占積率が40%以上59%以下であることを特徴とする高周波加速空胴用コア。
【請求項2】
1MHzにおけるμQf値が3×10
9Hz以上であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項3】
前記平均結晶粒径が0.1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項4】
前記占積率が45%以上55%以下であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項5】
前記Fe系磁性薄帯は、Nb、Cu、Si、Bを含むことを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記Fe系磁性薄帯の表面の少なくとも一方に
設けられ、磁性薄帯の板厚の5%以上25%以下の範囲内の厚さを有す
ることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項7】
前記Fe系磁性薄帯の厚さは10μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項8】
前記トロイダル状コアは、内径から外径にかけて隙間部を有する箇所があることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項9】
前記隙間部の占積率が5%以上40%以下であることを特徴とする請求項8に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項10】
前記隙間部の大きさが10μm以上であることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項11】
前記Fe系磁性薄帯の厚さは10μm以上30μm以下であり、前記平均結晶粒径が0.1μm以下であり、
前記絶縁層は、前記Fe系磁性薄帯の表面の少なくとも一方に
設けられ、磁性薄帯の板厚の5%以上25%以下の範囲内の厚さを有す
ることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項12】
前記トロイダル状コアの外径は280mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項13】
前記トロイダル状コアは、前記Fe系磁性薄帯が5mmを超える波型部を有していないことを特徴とする請求項1に記載の高周波加速空胴用コア。
【請求項14】
請求項1ないし請求項
13のいずれか1項に記載の高周波加速空胴用コアを具備したことを特徴とする高周波加速空胴。
【請求項15】
前記高周波加速空胴用コアを複数個具備したことを特徴とする請求項
14に記載の高周波加速空胴。
【請求項16】
個々の前記高周波加速空胴用コアに高周波電力を供給する装置を具備することを特徴とする請求項
15に記載の高周波加速空胴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、概ね、高周波加速空胴用コアおよびそれを用いた高周波加速空胴に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加速器は、荷電粒子を加速して高い運動エネルギーの粒子線を発生させる装置である。加速器の一種として、高周波加速空胴がある。高周波加速空胴は、高周波電場を使い荷電粒子を効率よく加速する装置である。高周波加速空胴は、工業用、医療用など様々な分野で使用されている。また、高周波加速空胴には、サイクロトロン型、導波管型、シンクロトロン型などがある。サイクロトロン型は、高出力電子管と高周波加速空胴が自励発振を行うタイプである。また、導波管型は、高周波加速空胴が100m以上にも長くなったタイプである。また、シンクロトロン型は、加速過程で高周波の周波数を変える機能を有するものである。
【0003】
高周波加速空胴は、高周波電場を発生させるために、磁性コアを用いている。荷電粒子を効率的に加速するためには、複数の磁性コアを並べて加速距離をとる必要がある。加速を安定させるためには、磁性コア同士の隙間の加速も安定させる必要がある。このためには、加速間隙電圧を高電圧にすることが有効である。
【0004】
従来、高周波加速空胴用コアには、フェライトコアが用いられていた。一般的に、磁性コアは温度上昇に伴い比透磁率が緩やかに上昇し、キュリー温度付近で急激に減少する。高電圧を印加するとフェライトコアの発熱が大きいため、冷却設備の大型化が必要であった。また、発熱に伴う磁束の飽和も起き易かった。また、初透磁率μが小さいことにより、数100kHzの低周波領域で安定に高い加速間隙電圧を得ることが困難であった。
【0005】
これに代わり、微細結晶構造を有するFe系磁性合金を用いた磁性コアが検討されている。特許文献1では、平均粒径100nm以下の微細結晶構造を有するFe系磁性薄帯を卷回した高周波加速空胴用磁心が開示されている。微細結晶構造を有するFe系磁性薄帯を用いた磁性コアは、フェライトコアと比べて発熱を抑制できた。また、初透磁率μが大きいため、低周波領域での特性も改善できていた。しかしながら、それ以上の特性改善には至っていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の磁性コアは占積率を60%~80%にしている。占積率とは磁性コア中の磁性材料の占有率であり、体積率(%)または面積率(%)で示されている。微細結晶構造を有するFe系磁性合金は、Fe系非晶質合金を熱処理して製造されている。微細結晶構造を有するFe系磁性合金は、脆い材料である。このため、Fe系非晶質合金をトロイダル状に卷回した後、熱処理して微細結晶構造を付与している。熱処理により、微細結晶構造を付与する際に、磁性薄帯が収縮していた。収縮に伴い磁性薄帯がゆがみ、巻回構造に波型状のシワが生じていた。このシワが応力劣化の原因となることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る高周波加速空胴用コアは、絶縁層を介して、平均結晶粒径1μm以下の結晶を有するFe系磁性薄帯を巻回したトロイダル状コアであって、前記絶縁層の厚みは1μm以上5μm以下であり、Fe系磁性薄帯の占積率が40%以上59%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る高周波加速空胴用コアの一例を示す外観図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る高周波加速空胴用コアの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、高周波加速空胴の一例を示す概念図である。
【
図5】
図5は、磁性薄帯の平均板厚を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る高周波加速空胴用コアは、平均結晶粒径1μm以下の結晶を有するFe系磁性薄帯を巻回したトロイダル状コアであって、Fe系磁性薄帯の占積率が40%以上59%以下、1MHzにおけるμQf値が3×109Hz以上であることを特徴とするものである。
【0011】
図1に実施形態に係る高周波加速空胴用コアの一例を示す外観図を示した。また、
図2に、実施形態に係る高周波加速空胴用コアの一例を示す断面図を示した。図中、1が高周波加速空胴用コア、2はFe系磁性薄帯、3は絶縁層、4は隙間部、である。また、D1はコアの外径、D2はコアの内径、Tはコアの幅、である。また、高周波加速空胴用コア1のことを単にコア1と呼ぶこともある。
【0012】
高周波加速空胴用コア1は、Fe系磁性薄帯2を巻回したトロイダル状コアである。
【0013】
Fe系磁性薄帯2はFe系磁性合金からなるものである。Fe系磁性合金は、構成元素の中でFe(鉄)を原子比率(at%)にて最も多く含有するFe合金を示す。
【0014】
また、Fe系磁性合金は次の一般式を満たすものが好ましい。
【0015】
一般式:FeaCubMcM’dM”eSifBg
【0016】
式中、Mは周期表の4族元素、5族元素、6族元素および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、M’はMn、Alおよび白金族元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、M”はCoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも一つの元素であり、aはa+b+c+d+e+f+g=100原子%を満足する数であり、bは0.01≦b≦8原子%を満足する数であり、cは0.01≦c≦10原子%を満足する数であり、dは0≦d≦10を満足する数であり、eは0≦e≦20原子%を満足する数であり、fは10≦f≦25原子%を満足する数であり、gは3≦g≦12原子%を満足する数である。
【0017】
Cuは耐食性を高め、結晶粒の粗大化を防ぎ、鉄損、透磁率等の軟磁気特性の改善に有効である。Cuの含有量は0.01原子%以上8原子%以下(0.01≦b≦8)であることが好ましい。含有量が0.01原子%未満では添加の効果が小さく、8原子%を超えると磁気特性が低下する。
【0018】
Mは、周期表の4族元素、5族元素、6族元素、および希土類元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。4族元素の例は、Ti(チタン)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)等を含む。5族元素の例は、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)等を含む。6族元素の例は、Cr(クロム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)等を含む。希土類元素の例は、Y(イットリウム)、ランタノイド元素、アクチノイド元素等を含む。M元素は、結晶粒径の均一化や温度変化に対する磁気特性の安定化に有効である。M元素の含有量は0.01原子%以上10原子%以下(0.01≦c≦10)であることが好ましい。また、周期律表は日本の周期律表で示している。
【0019】
M’は、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)、および白金族元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。白金族元素の例は、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)等を含む。M’元素は、飽和磁束密度等の軟磁気特性の向上に有効である。M’元素の含有量は0原子%以上10原子%以下(0≦d≦10)であることが好ましい。
【0020】
M”元素はCo(コバルト)およびNi(ニッケル)からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素である。M”元素は飽和磁束密度等の軟磁気特性の向上に有効である。M”元素の含有量は0原子%以上20原子%以下(0≦e≦20)であることが好ましい。
【0021】
Si(珪素)およびB(ホウ素)は、製造時における合金の非晶質化または微結晶の析出を助成する。SiおよびBは、結晶化温度の改善や、磁気特性向上のための熱処理に対して有効である。特に、Siは微細結晶粒の主成分であるFeに固溶し、磁歪や磁気異方性の低減に有効である。Siの含有量は10原子%以上25原子%以下(10≦f≦25)であることが好ましい。Bの含有量は3原子%以上12原子%以下(3≦g≦12)であることが好ましい。
【0022】
また、M元素の中ではNbが最も好ましい。このため、Fe系磁性合金は、Nb、Cu、Si、Bを含むことが好ましい。
【0023】
また、平均結晶粒径は、1μm以下である。平均結晶粒径が1μmを超えて大きいと軟磁気特性が低下する。このため、平均結晶粒径は1μm以下、さらには0.1μm以下が好ましい。また、より好ましくは平均結晶粒径0.05μm(50nm)以下である。
【0024】
平均結晶粒径は、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)分析により求められる回折ピークの半値幅からシェラー(Scherrer)の式により求められる。シェラーの式は、D=(K・λ)/(βcosθ)、で示される。ここでDは平均結晶粒径、Kは形状因子、λはX線の波長、βはピーク半値全幅(FWHM)、θはブラッグ角である。形状因子Kは0.9とする。ブラッグ角は回折角2θの半分である。XRD分析は、Cuターゲット、管電圧40kV、管電流40mA、スリット幅(RS)0.20mmの条件下で行われる。X線の照射方向は磁性薄帯の長手方向に対して、垂直方向とする。X線の照射角度を変化(2θ=5°~140°)させて、結晶ピークを解析するものとする。
【0025】
実施形態に係る高周波加速空胴用コア1は、Fe系磁性薄帯2の占積率が40%以上59%以下である。占積率とは、磁性コア中の磁性材料の占有率であり、例えば体積率(%)で示される。
【0026】
まず、コア1の体積を求める。コア1の体積=[(外径D1÷2)2×3.14-(内径D2÷2)2×3.14]×磁性薄帯2の幅T、により求める。この計算で求められる体積を、コア1の基準体積と呼ぶ。
【0027】
次に磁性薄帯2の密度を測定する。磁性薄帯2の密度は、アルキメデス法のよる実測値または組成から求める理論値のいずれかとする。なお、測定試料が小さいとアルキメデス法では検出が困難になる場合がある。測定試料が小さいときは、組成から求める理論値を用いる方が好ましい。
【0028】
コア1の基準体積×磁性薄帯2の密度=コア1の基準質量を求めることができる。コア1の基準質量は、磁性薄帯2の占積率100%としたときの理論質量である。
【0029】
次に、コア1の質量を測定する。この値をコア1の実質量とする。
【0030】
磁性薄帯2の占積率(%)=(実質量/理論質量)×100、により求めることができる。この方法は、絶縁層の質量を考慮していない方法である。後述するような薄い絶縁層を用いる場合は、この方法であっても問題ない。
【0031】
なお、磁性コア中の磁性材料の占有率は、以下のように面積率(%)で示されていてもよい。
【0032】
この場合、占積率の測定は、コアの任意の断面を用いて測定するものとする。断面は、コアの幅方向(Fe系磁性薄帯2の幅方向)に垂直な断面を用いるものとする。断面の拡大写真を撮影する。拡大写真の倍率は50倍とする。断面は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いるものとする。
【0033】
占積率は(外径D1-内径D2)×磁性薄帯2の幅Tを基準面積(100%)とする。基準面積中に存在するFe系磁性薄帯2の面積率(%)で求めるものとする。外径D1は磁性薄帯の最外層、内径D2は磁性薄帯の最内層とする。このため、ボビンや収納ケースは基準面積には含めないものとする。
【0034】
このように、断面画像を用いた占積率の算出は、例えばコア1のサイズが大きく、体積率(%)による占積率の算出が困難であるような場合に有用である。体積率(%)または面積率(%)のいずれの手法を用いて算出された場合でも、磁性コア中の磁性材料の占有率は略同等の値となる。
【0035】
占積率が40%以上59%以下であると、微細結晶構造を付与する熱処理を施した際に波型のシワが発生するのを抑制することができる。占積率が40%未満であると、磁性薄帯の割合が低下するので磁気特性が低下する。また、59%を超えると波型のシワが発生する可能性が高くなる。このため、占積率は40%以上59%以下が好ましく、45%以上55%以下がより好ましい。
【0036】
以上のような高周波加速空胴用コア1は、1MHzにおけるμQf値が3×109Hz以上である。
【0037】
μQf値は、インピーダンス実測値(Rs値、Xs値)を用いて算出されるものである。Rs値は純抵抗、Xs値はリアクタンス部の値である。また、fは測定周波数(Hz)、μ0は真空の透磁率(1.26×10-6N/A2)、μは初透磁率、D1はコアの外径、D2はコアの内径、Tはコアの幅、lnは平均磁路長、である。
【0038】
Μs’’= Rs/[f×μ0×T×ln(D1/D2)]
μs’= Xs/[f×μ0×T×ln(D1/D2)]
Q = μs’/μs’’
μ = μs’×[1+(1/Q2)]
μQf= μ×Q×f
【0039】
1MHzにおけるμQf値とは、周波数fが1MHzのときのμQf値である。1MHzにおけるμQf値が3×109Hz以上であると、高周波加速空胴用コアはインピーダンス特性に優れていることを示す。100kHz~10MHzの広い周波数域において、高周波電源と高周波加速空胴用コアのインピーダンスマッチングを行うことができる。これにより、安定的に高周波電力が供給でき、加速間隙電圧の高電圧化が可能となる。特に、100kHz~1000kHzの低周波域での高電圧化が可能となる。
【0040】
また、インピーダンスの測定はインピーダンス測定器を用いて測定するものとする。インピーダンス測定器はヒューレットパッカード製4285Aとする。0.5MHz、1MHz、5MHz、10MHzの周波数で、0.5V、1turn時のインピーダンス実測値Rs値、Xs値を測定して、μQf値を算出するものとする。
【0041】
また、Fe系磁性薄帯2の厚さは10μm以上30μm以下が好ましい。磁性薄帯2の厚さが10μm未満であると磁性薄帯の強度が低下する可能性がある。強度の低下は歩留まりの低下につながる。また、磁性薄帯2の厚さが30μmを超えると、損失が大きくなり発熱量が増加する可能性がある。このため、磁性薄帯2の厚さは10μm以上30μm以下が好ましく、さらには15μm以上25μm以下がより好ましい。
【0042】
また、磁性薄帯2の厚さは、質量および密度から算出した平均厚さTvを用いるものとする。
図5は磁性薄帯の平均板厚を示す概念図である。
【0043】
また、磁性薄帯2の厚さの測定は、コア1の断面の拡大写真を用いるものとする。拡大写真に写る磁性薄帯2の任意の個所の厚さを測定する。この作業を5か所行い平均した値を磁性薄帯2の厚さとする。また、拡大写真は倍率2000倍のものを用いるものとする。
【0044】
なお、磁性薄帯の厚さ(板厚)は、
図5に示す平均板厚Tvで表現する。
図5のように磁性薄帯は表面に凹凸が存在する。このため、仮に薄帯どうしが重なっても空気層が存在し、100%の占積率にはならない。
【0045】
また、前記Fe系磁性薄帯の表面の少なくとも一方には、磁性薄帯の板厚の5%以上20%以下の範囲内の厚さを有する絶縁層を具備することが好ましい。磁性薄帯2の表面には絶縁層3を設けることが好ましい。絶縁層3を設けることにより、層間絶縁をとることができる。
【0046】
絶縁層3の厚さは、磁性薄帯2の板厚の5%以上25%以下の範囲内ことが好ましい。例えば、磁性薄帯2の厚さが20μmの場合、絶縁層3の厚さは1μm以上5μm以下となる。また、絶縁層3の厚さが5%未満であると、絶縁層3が薄すぎて層間絶縁が不足する箇所が形成される可能性がある。また、絶縁層3の厚さが25%を超えると、それ以上の絶縁効果が得られないだけでなく、占積率の調整が難しくなる。このため、絶縁層3の厚さは磁性薄帯2の板厚の5%以上25%以下が好ましく、さらには8%以上20%以下がより好ましい。
【0047】
また、絶縁層3の厚さについてもコア1の断面の拡大写真を用いるものとする。拡大写真に写る絶縁層3の任意の個所の厚さを測定する。この作業を5か所行い平均した値を絶縁層3の厚さとする。また、前述と同様に拡大写真は倍率2000倍のものを用いるものとする。
【0048】
また、絶縁層3の材質は、絶縁性微粒子、絶縁性樹脂などが挙げられる。絶縁層3は、平均粒径0.001μm以上(1nm以上)の絶縁性微粒子を堆積することにより形成される絶縁膜であることが好ましい。絶縁性微粒子の堆積により、絶縁層3の厚さの制御を行い易くなる。
【0049】
絶縁性微粒子としては、酸化物が好ましく、絶縁性微粒子の例は、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物、樹脂粉末を含む。酸化珪素(SiO2)を用いることが特に好ましい。酸化物は乾燥の際に収縮を伴わないため、応力の発生を抑制することができる。特に、酸化珪素はFe系磁性薄帯2とのなじみがよいので透磁率のばらつきを低減することができる。これは、酸化珪素とFe系磁性薄帯2に、必須の構成元素として珪素を含有しているときに有効である。また、絶縁性微粒子の平均粒径は0.001μm以上0.1μm以下であることが好ましい。この範囲内とすることにより、絶縁層3の厚さの制御を行い易い。
【0050】
また、前記トロイダル状コアは、内径から外径にかけて隙間部を有する箇所があることが好ましい。隙間部4は、巻回している磁性薄帯2同士の間に形成される空間のことである。磁性薄帯2同士の間が絶縁層3で埋まっている場合は隙間部4ではない。また、磁性薄帯2の片面に絶縁層3を設けた場合、隙間部4は磁性薄帯2と絶縁層3の間に形成される。また、磁性薄帯2の両面に絶縁層3を設けた場合、隙間部4は絶縁層3同士の間に形成される。また、隙間部4はコアの幅T方向に連続して存在していても良いし、部分的に接触していてもよい。隙間部4が存在することにより、コア1を熱処理した際に磁性薄帯2が収縮したとしても波型部5が形成されるのを抑制することができる。また、隙間部4の有無は光学顕微鏡により確認することができる。光学顕微鏡にて10μm以上の隙間が確認できたものを隙間部4があると判定するものとする。なお、コア1が大きすぎて光学顕微鏡で観察できないときは、マイクロスコープまたはデジタルカメラ等で撮影したものを拡大して隙間部4を観察してもよいものとする。また、後述する波型部5が形成されているときは、波型部5付近を観察する方法が効率が良い。また、隙間部4の存在有無は計算で求めてもよい。式100%-(占積率+絶縁層体積)が正の値になれば、隙間部4が存在することを示している。
【0051】
図3に波型部の一例を示した。図中、2は磁性薄帯、5は波型部、である。波型部5はきれいなトロイダル形状を有さずに波型のシワ形状となった個所である。波型部5が存在すると応力劣化が生じていた。微細結晶構造を有するFe系磁性薄帯は脆い材料である。このため、Fe系アモルファス薄帯をトロイダル状コアに巻回した後、熱処理して微細結晶を析出させることが好ましい。微細結晶を析出させる際に、磁性薄帯2が収縮する。隙間部4を設けることにより、収縮に伴う波型部5の形成を抑制できる。また、波型部5の有無は目視により確認することができる。
【0052】
また、絶縁層3を形成したコア1の隙間部4は占積率5%以上40%以下が好ましい。隙間部4の占積率は、上述のように、計算で求めてもよい。つまり、上述の式100%-(占積率+絶縁層体積)で隙間部4の占積率を算出することができる。
【0053】
または、隙間部4の占積率は磁性薄帯2の占積率の測定と同様に断面写真を用いて測定する。隙間部4の占積率は5%以上40%以下が好ましく、さらには10%以上30%以下がより好ましい。この範囲内の隙間部4を有することにより、波型部5が形成されたとしても5mm以下(0を含む)にすることができる。また、波型部5のサイズの測定は、トロイダル形状からのズレを測定するものとする。波型部5が存在すると磁性薄帯2がゆがんだ部分が形成される。ゆがんだ部分のコア1の半径方向の長さを波型部5のサイズとする。波型部5が形成されないものは、ゆがんだ部分がなく、きれいなトロイダル形状を有している。また、波型部5は半径方向の内側に凸状または半径方向の外側に凸状のどちらもある。また、凹凸を繰り返す構造もある。
【0054】
波型部5が5mm以下であれば、応力劣化を抑制できる。なお、5mm以下の波型部5は1つのコア1の中で5個以下が好ましい。5mm以下の波型部5であっても、たくさんあれば応力劣化の原因となる。また、波型部5のサイズは5mm以下、さらには3mm以下と小さい方がよいものである。なお、最も好ましいのは波型部5が形成されていない状態である。
【0055】
また、前記トロイダル状コアの外径D1は280mm以上であることが好ましい。高周波加速空胴において、加速性能を向上させるには複数のコアを並べて加速距離をとる必要がある。複数のコアの加速間隙電圧を高電圧化させるには、コア1の大型化が有効である。磁性薄帯2の占積率を調整することにより、コア1の外径D1が280mm以上と大型化したとしても、波型部5の形成を抑制することができる。なお、コア1の外径D1の上限は特に限定されるものではないが、1000mm以下が好ましい。1000mmを超えて大きいとコア重量により磁性薄帯の占積率や隙間部の占積率の制御が難しくなる可能性がある。
【0056】
また、実施形態に係るコア1は、例えば外径D1と内径D2の差が50mm以上の場合において、その作用効果がより顕著に顕れる。D1-D2≧50mmであるということは、磁性薄帯2の巻数が多いということであり、波型のシワが生じやすくなるからである。実施形態に係るコア1を適用することで、磁性薄帯2の巻数を多くし、例えばD1-D2≧50mmのコアを実現することができる。このように、実施形態に係るコア1は外径D1と内径D2の差を50mm以上としたとしても、占積率を制御することにより性能を維持し、または、向上させることができる。
【0057】
また、波型部5が形成されると応力劣化に伴い、透磁率が低下する。透磁率の低下を防ぐには、コア1に磁場中熱処理を施すことが有効である。しかしながら、コアサイズが大きくなると、それに伴い熱処理設備も大型化が必要である。前述のように磁性薄帯2の占積率を制御することにより、波型部5の形成を抑制することは、磁場中熱処理設備が不要となる。このため、コストダウンの効果も大きい。
【0058】
磁場中熱処理の有無は、磁区構造を観察することで判断ができる。幅方向に磁場処理をした場合、磁区が幅方向に均一な層構造を描く。さらには、直流磁気特性(印可磁界Hm=800A/m)における角形比が、3%以下になることで判断が可能である。磁場中熱処理を行うことにより、磁気特性は向上する。一方で、外径D1が280mm以上の大型コアを磁場中熱処理するには、大型の設備が必要である。
【0059】
従来のコアは大きな波型部が形成されていることから、磁場中熱処理を施すことにより磁気特性を向上させていた。実施形態にかかるコアは、波型部を抑制しているため磁場中熱処理を施さなくても同等の磁気特性を有している。言い換えれば、実施形態にかかるコアに磁場中熱処理を施すことにより、さらに磁気特性が向上するのである。
【0060】
また、実施形態に係るコア1は波型部5による応力劣化を抑制しているため、透磁率が大きい。このため、実施形態に係るコアは、波型部5を有するコアと比べて同じ磁気特性であれば小型化できる。また、同じコアサイズであれば磁気特性が優れたものを提供することができる。
【0061】
また、トロイダル状に巻回する際に、必要に応じ、ボビンを用いてよいものとする。また、トロイダル状コアを、必要に応じ、収納ケースに入れてもよいものとする。また、コア1にギャップは設けなくてよい。ギャップを設けると隙間部4の占積率を調整し難くなる。
【0062】
以上のような高周波加速空胴用コアは高周波加速空胴に好適である。また、実施形態にかかる高周波加速空胴用コアを複数個具備したことが好ましい。また、個々の高周波加速空胴用コアに高周波電力を供給する装置を具備することが好ましい。
【0063】
図4に高周波加速空胴の概念図を示した。図中、10は高周波加速空胴、1-1は第1の高周波加速空胴用コア、1-2は第2の高周波加速空胴用コア、1-3は第3の高周波加速空胴用コア、11は電源、である。
図4では高周波加速空胴用コアを3個用いた例を示したが、実施形態に係る高周波加速空胴は、必要に応じ、高周波加速空胴用コアの数を増やすことができるものとする。また、高周波加速空胴はコアを10個以上用いるものもある。また、電源11は図示しない配線で個々のコアと接続されているものとする。また、コア1は、必要に応じ、図示しない実装基板や放熱板に固定してもよいものとする。また、実装基板や放熱板への固定には接着剤、ねじ止めなどを用いてもよいものとする。また、必要に応じ、コアをケースに入れてもよいものとする。この際、複数個ずつケースに入れてもよいものとする。複数個を1セットにすることにより、組立性を向上させることができる。
【0064】
高周波加速空胴は、高周波電場を使い荷電粒子を効率よく加速する装置である。個々の高周波加速空胴用コア1に電源11を接続することにより、個々の高周波加速空胴用コア1に印加する周波数を調整することもできる。言い換えると、個々に周波数を調整しなくてよい場合は、電源11をそれぞれ接続しなくてもよい。
【0065】
実施形態に係る高周波加速空胴用コアは、Fe系磁性薄帯を用いたトロイダル状コアの占積率を制御している。このため、発熱量を抑制した上で、応力劣化を防いでいる。従って、100kHz~10MHzの広い周波数域において、高周波電源と高周波加速空胴用コアのインピーダンスマッチングを行うことができる。これにより、安定的に高周波電力が供給でき、加速間隙電圧の高電圧化が可能となる。特に、100kHz~1000kHzの低周波域での高電圧化が可能となる。また、個々の高周波加速空胴用コア1に印加する周波数を変えたとしても、加速間隙電圧の高電圧化が可能となる。
【0066】
また、高周波加速空胴には、サイクロトロン型、導波管型、シンクロトロン型などがある。幅広い周波数域で使用できることから、様々なタイプの高周波加速空胴に適用できる。
【0067】
次に、実施形態に係る高周波加速空胴用コアの製造方法について説明する。実施形態に係る高周波加速空胴用コアは上記構成を有していればその製造方法は特に限定されるものではないが歩留まり良く得るための方法として次のものが挙げられる。
【0068】
まず、Fe系アモルファス薄帯を製造する。Fe系アモルファス薄帯の製造は、急冷ロール法を用いて長尺の薄帯を製造する。急冷ロール法は、単ロール法、双ロール法など様々な方法が適用できる。また、Fe系アモルファス薄帯の原料は、前記一般式を満たす割合で混合した原料溶湯を用いることが好ましい。また、Fe系アモルファス薄帯の厚さは10μm以上30μm以下の範囲内とすることが好ましい。また、長尺のFe系アモルファス薄帯の幅が目的とするコアの幅Tより大きい場合はスリット加工を施すものとする。
【0069】
次に、必要に応じ、絶縁層を設ける工程を行うものとする。絶縁層は、例えば平均粒径0.001μm以上0.1μm以下の絶縁性微粒子を用いて形成することが好ましい。絶縁性微粒子を含有する溶液中にFe系アモルファス薄帯を浸漬する方法が好ましい。絶縁性微粒子の平均粒径、絶縁性微粒子を含有する溶液の濃度、浸漬時間、浸漬回数によって絶縁層の厚さを調整することができる。また、長尺のFe系アモルファス薄帯を浸漬することにより、量産性を向上させることができる。
【0070】
また、絶縁層3の材質は、絶縁性微粒子、絶縁性樹脂などが挙げられる。絶縁性微粒子としては、酸化物が好ましく、絶縁性微粒子の例は、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の酸化物、樹脂粉末を含む。酸化珪素(SiO2)を用いることが特に好ましい。酸化物は乾燥の際に収縮を伴わないため、応力の発生を抑制することができる。特に、酸化珪素はFe系磁性薄帯2とのなじみがよいので透磁率のばらつきを低減することができる。これは、酸化珪素とFe系磁性薄帯2に、必須の構成元素として珪素を含有しているときに有効である。
【0071】
次に、トロイダル状に巻回する工程を行うものとする。巻回工程は、必要に応じ、ボビンを用いることが好ましい。特に、コア1の外径D1が280mm以上の大型化する場合はボビンを用いて巻回することが好ましい。ボビンとはリング状の巻き芯のことである。また、ボビンは非磁性材料からなるものであることが好ましい。非磁性材料としては、ステンレス鋼(SUS304など)が挙げられる。
【0072】
また、巻回工程、Fe系アモルファス薄帯の占積率が40%以上59%以下の範囲内になるように巻回するものとする。また、長尺のFe系アモルファス薄帯を巻回する際の張力(テンション)を調整することにより、隙間部4を形成することもできる。張力の調整は、巻回数が多くなってきたら、張力を緩める方法が有効である。巻回の張力はモータの電圧で制御される。例えば、巻回工程の初期段階の電圧を100としたとき、5~20ずつ電圧を下げていく方法が挙げられる。また、巻回工程の初期段階の電圧を徐々に下げていく方法もある。巻回後、Fe系アモルファス薄帯の最外層を固定する。この工程により、Fe系アモルファス薄帯を巻回したトロイダル状コアが製造される。
【0073】
その後さらに、微細結晶構造を付与するための熱処理工程を行ってもよい。以下の熱処理工程を行った場合でも、熱処理工程前のトロイダル状コアの占積率が略同等のまま維持される。
【0074】
熱処理温度は結晶化温度近傍の温度またはそれよりも高い温度であることが好ましい。結晶化温度の-20℃よりも高い温度が好ましい。前述の一般式を満たすFe系磁性薄帯2であれば、結晶化温度は500℃以上515℃以下である。このため、熱処理温度は480℃以上600℃以下であることが好ましい。さらに510℃以上560℃以下であることがより好ましい。
【0075】
熱処理時間は50時間以下であることが好ましい。熱処理時間とは、磁心の温度が480℃以上600℃以下であるときの時間である。50時間を超えると微細結晶粒の平均粒径が1μmを超える場合がある。熱処理時間は20分以上30時間以下であることがより好ましい。この範囲であれば平均結晶粒径を0.1μm以下に制御しやすい。
【0076】
以上の工程により、高周波加速空胴用コアを製造することができる。
【実施例】
【0077】
(実施例1~8、比較例1~3、参考例1)
長尺のFe系アモルファス薄帯として、Fe-Nb-Cu-Si-B薄帯を用意した。Fe-Nb-Cu-Si-B薄帯は、組成式Fe73Nb4Cu1Si15B7、板厚20μm、幅T30mmとした。
【0078】
SUS304製のボビンを用意した。ボビンのサイズは、外径310mm、内径280mm、幅30mmとした。また、絶縁層を形成するための絶縁性微粒子として、酸化珪素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)を用意した。絶縁性微粒子の平均粒径は0.01μmとした。絶縁層を設ける場合は、絶縁性微粒子を含有した溶液中に長尺のFe系アモルファス薄帯を浸漬、乾燥工程を行ったものである。
【0079】
ボビンに長尺のFe系アモルファス薄帯を巻回し、外径D1が440mm、内径D2が310mmのトロイダル状コアを作製した。実施例および比較例に係るトロイダル状コアは、熱処理前は波型部が形成されていないものであった。また、比較例3は絶縁層として厚さ12μmの樹脂フィルムを用いたものである。また、実施例に係るトロイダル状コアは巻回工程の張力を調製しながら巻回した。
【0080】
次に、トロイダル状コアにアルゴン雰囲気中、550℃×2時間の熱処理工程を施した。なお、Fe系磁性トロイダルコアの占積率、隙間部の有無、絶縁層の厚さ、波型部のサイズは表1に示した通りである。また、占積率や厚さはコアの断面を拡大写真(SEM写真)にて観察し、材料密度から算出したものである。また、隙間部の有無は、マイクロスコープにより確認した。10μm以上の隙間が確認できたものを「あり」と表記した。
【0081】
また、波型部のサイズの測定は、トロイダル形状からのズレを測定した。トロイダル状のきれいな円に対し、半径方向に観察した時の凹凸サイズを測定したものである。また、実施例8は実施例2に磁場中熱処理を施したものであり、以下の表1における各種特性は実施例2と同等である。
【0082】
【0083】
表に示したように、比較例1および比較例2は微細結晶を析出させる熱処理を施すと波型部が形成された。また、実施例に係るコアは波型部が形成されなかった。また、実施例および比較例は、平均結晶粒径0.1μm以下の微細結晶構造を有することが確認された。
【0084】
次に、各コアのμQf値を測定した。μQf値の測定は、インピーダンス測定器を用いて測定した。インピーダンス測定器はヒューレットパッカード製4285Aとした。1MHz、0.5V、1turn時のインピーダンス実測値Rs値、Xs値を測定して、μQf値を算出した。算出方法は前述の通りである。また、測定周波数を0.5MHz、5MHz、10MHzについても同様の方法で測定した。
【0085】
また、比較例2のコアに磁場中熱処理を施したものを参考例1とした。参考例1についても同様の測定を行った。
【0086】
また、各コアの角形比の測定を行った。角形比の測定は、印可磁界Hmを800A/mにして行った。その結果を表2、表3に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
以上のように実施例に係るコアは1MHzにおけるμQf値が3×109Hz以上であった。また、0.5MHzにおけるμQf値が2.5×109Hz以上であった。また、5MHzにおけるμQf値が3.3×109Hz以上であった。また、10MHzにおけるμQf値が2.8×109Hz以上であった。このように、実施例に係るコアは100kHz~10MHzの広い周波数域においてμQf値が高いことが確認された。
【0090】
それに対し、比較例1~3はμQf値がいずれも低い値であった。また、実施例8と参考例1のように磁場中熱処理を施すと実施例以上のμQf値が得られた。また、実施例1~7のコアでも高周波加速空胴として使用できる。そのため、実施例にかかるコアは磁場中熱処理を行わなくてもよいものである。
【0091】
また、磁場中熱処理を行ったものは角形比が3%以下であった。このため、角形比を調べることにより磁場中熱処理の有無は判別可能である。
【0092】
(実施例9~11)
長尺のFe系アモルファス薄帯として、Fe-Nb-Cu-Si-B薄帯を用意した。Fe-Nb-Cu-Si-B薄帯は、組成式Fe73Nb4Cu1Si15B7、板厚18μm、幅T20mmのものとした。外径D1と内径D2を変えたものを作製した。出来上がったコアは表4、表5に示したものである。
【0093】
【0094】
【0095】
各実施例に係るコアに対して、実施例1と同様の方法で磁気特性を測定した。その結果を表6、表7に示した。
【0096】
【0097】
【0098】
表から分かる通り、実施例に係るコアは、外径、内径のサイズを変えても磁気特性が向上した。また、外径D1と内径D2の差が50mm以上あったとしても、磁気特性が向上した。これは占積率等を制御したためである。
【0099】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0100】
1…高周波加速空胴用コア
1-1…第1の高周波加速空胴用コア
1-2…第2の高周波加速空胴用コア
1-3…第3の高周波加速空胴用コア
2…Fe系磁性薄帯
3…絶縁層
4…隙間部
5…波型部
10…高周波加速空胴
11…電源
D1…コアの外径
D2…コアの内径
T…コアの幅