(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】潤滑剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 3/20 20060101AFI20240110BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240110BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240110BHJP
B21J 3/00 20060101ALI20240110BHJP
B21K 1/30 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B05C3/20
B05C5/00 102
B05C11/10
B21J3/00
B21K1/30 Z
(21)【出願番号】P 2021123286
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【氏名又は名称】進藤 素子
(74)【代理人】
【識別番号】100196759
【氏名又は名称】工藤 雪
(72)【発明者】
【氏名】弓部 貴一郎
(72)【発明者】
【氏名】増矢 尚吾
(72)【発明者】
【氏名】小島 広嗣
(72)【発明者】
【氏名】浅野 真琴
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-294462(JP,A)
【文献】特開平08-033861(JP,A)
【文献】特開平03-035835(JP,A)
【文献】特開2009-112984(JP,A)
【文献】特開昭62-045445(JP,A)
【文献】実開昭60-176844(JP,U)
【文献】米国特許第5020635(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00- 3/20
5/00- 5/04
7/00-21/00
B21J 1/00-13/14
17/00-19/04
B21K 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤が塗布される被塗布部を有するワークの前記被塗布部に対向する潤滑剤塗布部と、
前記潤滑剤塗布部の上端以上の位置に開口する潤滑剤供給孔と、
を備え、
前記潤滑剤供給孔から供給される前記潤滑剤が前記潤滑剤塗布部を流下することにより、前記被塗布部に前記潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記被塗布部は、水平方向に対して交差する方向に延在する請求項1に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項3】
さらに、前記ワークを支持し、前記潤滑剤塗布部に対する前記被塗布部の位置決めを行う位置決め部材を備える請求項2に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項4】
前記ワークは、筒状部を有し、
前記被塗布部は、前記筒状部の内側面に配置され、
前記潤滑剤塗布部は、前記被塗布部の径方向内側に配置される請求項3に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項5】
さらに、前記潤滑剤塗布部が外側面に配置される潤滑剤供給部を備え、
前記位置決め部材は、前記潤滑剤供給部の径方向外側に配置され前記筒状部が載置される座面と、前記座面に凹設され前記筒状部の径方向内側から径方向外側に前記潤滑剤を流出させる溝部と、を有する台座部である請求項4に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項6】
さらに、
前記台座部の径方向外側に配置され、上向きに開口し、前記溝部に直接または間接的に連通する排出凹部と、
前記排出凹部に直接または間接的に連通し、前記潤滑剤を外部に排出する潤滑剤排出孔と、
を有する潤滑剤排出部を備える請求項5に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項7】
上側から見て、前記潤滑剤供給部の上面は円形であって、
前記潤滑剤供給孔は、前記上面の径方向中心に開口する請求項5または請求項6に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項8】
前記被塗布部は、前記潤滑剤が塗布された後に、冷間鍛造によりスプラインが成形されるスプライン予定部の少なくとも一部である請求項4ないし請求項7のいずれかに記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項9】
前記ワークは、筒状部を有し、
前記被塗布部は、前記筒状部の外側面に配置され、
前記潤滑剤塗布部は、前記被塗布部の径方向外側に配置される請求項3に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項10】
さらに、前記潤滑剤塗布部が内側面に配置される潤滑剤供給部を備え、
前記位置決め部材は、前記潤滑剤供給部から上向きに突出する高さ調整ピンである請求項9に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項11】
前記潤滑剤供給部は、上面に凹設される供給凹部を有し、
前記潤滑剤供給孔および前記潤滑剤塗布部は前記供給凹部の底面に開口する請求項10に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項12】
さらに、前記潤滑剤塗布部に直接または間接的に連通し、前記潤滑剤を外部に排出する潤滑剤排出孔を有する潤滑剤排出部を備える請求項10または請求項11に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項13】
前記被塗布部は、前記潤滑剤が塗布された後に、冷間鍛造によりギヤが成形されるギヤ予定部の少なくとも一部である請求項9ないし請求項12のいずれかに記載の潤滑剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CVTプライマリシャフト用のワークの内周面には、冷間鍛造により、スプラインが成形される。鍛造時の焼き付きを抑制するために、ワークの内周面には、鍛造前に潤滑油が塗布される。特許文献1には、潤滑剤塗布槽を備える潤滑処理装置が開示されている。潤滑剤塗布槽には、水溶性潤滑剤が貯留されている。ワークの下端部の内周面には、冷間鍛造によりヘリカルスプラインが成形される。同文献の潤滑処理装置によると、ワークの下端部を潤滑剤塗布槽に浸漬することにより、ワークの内周面に水溶性潤滑剤を塗布している。特許文献2には、複数の噴霧ノズルを備える鍛造成形装置が開示されている。同文献の鍛造成形装置によると、噴霧ノズルで潤滑剤を噴霧することにより、ワークに潤滑剤を塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-224163号公報
【文献】特開2005-152951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の潤滑処理装置によると、ワークの下端部の全体が潤滑剤塗布槽に浸漬される(いわゆる「ドブ漬け」される)。このため、ワークの下端部の内周面のみならず、下端部の全面(外周面など)に水溶性潤滑剤が塗布されてしまう。また、特許文献2の鍛造成形装置は、噴霧ノズルを用いている。このため、潤滑剤の液滴が広範囲に拡散しやすい。したがって、ワークの所望の部分以外の部分にまで、潤滑剤が塗布されやすい。このように、特許文献1の潤滑処理装置、特許文献2の鍛造成形装置によると、潤滑剤の使用量が多くなってしまう。そこで、本発明は、潤滑剤の使用量を削減可能な潤滑剤塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の潤滑剤塗布装置は、潤滑剤が塗布される被塗布部を有するワークの前記被塗布部に対向する潤滑剤塗布部と、前記潤滑剤塗布部の上端以上の位置に開口する潤滑剤供給孔と、を備え、前記潤滑剤供給孔から供給される前記潤滑剤が前記潤滑剤塗布部を流下することにより、前記被塗布部に前記潤滑剤を塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、潤滑剤を自重で流下させることにより、ワークの被塗布部に潤滑剤を塗布することができる。すなわち、重力を利用して、被塗布部に潤滑剤を案内することができる。したがって、潤滑剤の使用量を削減することができる。また、潤滑剤の塗布に要する作業時間を短縮化することができる。また、潤滑剤塗布装置周囲の設備や工場の床面などに潤滑剤が付着するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第一実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、同潤滑剤塗布装置の分解斜視図である。
【
図3】
図3は、同潤滑剤塗布装置の上下方向断面図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図である。
【
図6】
図6は、同潤滑剤塗布装置の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、第三実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図である。
【
図12】
図12は、同潤滑剤塗布装置の潤滑剤塗布部付近の横断面図である。
【
図13】
図13は、第四実施形態の潤滑剤塗布装置の潤滑剤塗布部付近の横断面図である。
【
図14】
図14は、第五実施形態の潤滑剤塗布装置の上下方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の潤滑剤塗布装置の実施の形態について説明する。
【0009】
<第一実施形態>
[潤滑剤塗布装置の構成]
まず、本実施形態の潤滑剤塗布装置の構成について説明する。
図1に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図を示す。
図2に、同潤滑剤塗布装置の分解斜視図を示す。
図3に、同潤滑剤塗布装置の上下方向(軸方向)断面図を示す。
図4に、
図3の枠IV内の拡大図を示す。なお、
図1においてはワーク9を透過して示す。
【0010】
図1~
図4に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1は、潤滑剤排出部2と、台座部3と、潤滑剤供給部4と、を備えている。潤滑剤塗布装置1は、冷間鍛造(プレス成形)前の鍛造用のワーク9に、潤滑油Bを塗布するために用いられる。潤滑油Bは、本発明の「潤滑剤」の概念に含まれる。
【0011】
(潤滑剤排出部2)
潤滑剤排出部2は、第一部材20と第二部材21とを備えている。第一部材20は、第一凹部200と、潤滑剤導入孔201と、潤滑剤排出孔202と、を備えている。第一凹部200は、第一部材20の上面に凹設されている。第一凹部200は、リング状を呈している。潤滑剤導入孔201は、第一部材20を上下方向に貫通している。潤滑剤導入孔201の下端は、配管を介して、ポンプ80に連通している。潤滑剤排出孔202の上端は、第一凹部200の底面に開口している。潤滑剤排出孔202の下端は、第一部材20の下面に開口している。潤滑剤排出孔202の下端は、配管を介して、タンク81に連通している。
【0012】
第二部材21は、第一部材20の上側に配置されている。第二部材21は、台座部収容部210と、第二凹部211と、リブ212と、4つの凹部連通孔213と、供給部配置孔214と、を備えている。第二凹部211は、本発明の「排出凹部」の概念に含まれる。台座部収容部210は、第二部材21の上面に凹設されている。第二凹部211は、第二部材21の上面に凹設されている。第二凹部211は、台座部収容部210の径方向外側に配置されている。第二凹部211は、台座部収容部210を中心とするリング状を呈している。リブ212は、台座部収容部210と第二凹部211とを仕切っている。リブ212の上面は、第二凹部211の上端よりも、低い位置に設定されている。4つの凹部連通孔213は、上下方向に延在する中心軸(潤滑剤排出部2、台座部3、潤滑剤供給部4の中心軸)Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。凹部連通孔213の下端は、第二部材21の下面に開口している。凹部連通孔213の下端は、第一凹部200に連通している。凹部連通孔213の上端は、第二凹部211の底面に開口している。供給部配置孔214は、中心軸A上に配置されている。供給部配置孔214の下端は、第二部材21の下面に開口している。供給部配置孔214の上端は、台座部収容部210の底面に開口している。
【0013】
(台座部3)
台座部3は、円板状を呈している。台座部3は、台座凹部30と、4つの台座溝部31と、座面32と、供給部挿通孔33と、を備えている。台座溝部31は、本発明の「溝部」の概念に含まれる。台座凹部30は、台座部3の上面に凹設されている。4つの台座溝部31は、台座凹部30の径方向外側に配置されている。4つの台座溝部31は、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。台座溝部31は、台座部3の上面に凹設されている。台座溝部31は、径方向に延在している。台座溝部31の径方向内端は、台座凹部30に連通している。台座溝部31の径方向外端は、台座部3の外周面に開口している。座面32は、台座部3の上面のうち、台座凹部30、台座溝部31が配置されていない部分に設定されている。座面32は、台座凹部30の径方向外側に配置されている。座面32は、全体として、中心軸Aを中心とするリング状を呈している。座面32は、4つの台座溝部31により、4つの弧状面に分断されている。供給部挿通孔33は、中心軸A上に配置されている。供給部挿通孔33の下端は、台座部3の下面に開口している。供給部挿通孔33の下端は、供給部配置孔214の上端に連通している。供給部挿通孔33の上端は、台座凹部30の底面に開口している。
【0014】
(潤滑剤供給部4)
潤滑剤供給部4は、上下方向に延在する円柱状を呈している。すなわち、潤滑剤供給部4の横断面形状(水平方向断面形状)は、円形を呈している。潤滑剤供給部4は、第一部材20の上面に突設されている。潤滑剤供給部4は、下側から上側に向かって、第二部材21の供給部配置孔214、台座部3の供給部挿通孔33に挿通されている。潤滑剤供給部4の上側部分は、台座部3の座面32から上側に突出している。
【0015】
潤滑剤供給部4は、潤滑剤塗布部40と潤滑剤供給孔41とを備えている。潤滑剤塗布部40は、潤滑剤供給部4の外周面(外側面)に配置されている。潤滑剤供給孔41は、潤滑剤供給部4の径方向中心(中心軸A上)を、上下方向に貫通している。潤滑剤供給孔41の下端は、第一部材20の潤滑剤導入孔201の上端に連通している。潤滑剤供給孔41の上端は、潤滑剤供給部4の上面に開口している。潤滑剤供給部4の上面は、円形を呈している。当該上面において、潤滑剤供給孔41の上端から外周面までの距離は、全周的に一定である。
【0016】
(油路D)
図3に示すように、潤滑剤塗布装置1には、油路(具体的には、タンク81→ポンプ80→潤滑剤導入孔201→潤滑剤供給孔41→潤滑剤塗布部40→台座凹部30→台座溝部31→第二凹部211→凹部連通孔213→第一凹部200→潤滑剤排出孔202→再びタンク81という経路を辿る油路(潤滑剤経路))Dが設定されている。タンク81の潤滑油Bは、ポンプ80に圧送され、油路Dを循環している。
【0017】
[ワークの構成]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置により潤滑油が塗布されるワークの構成について説明する。ワーク9は、CVTプライマリシャフトの粗形材である。
図3、
図4に示すように、ワーク9の下端部には、筒状部9aが配置されている。筒状部9aは、下向きに開口する有底筒状を呈している。筒状部9aは、被成形孔90とスプライン予定部91とを備えている。被成形孔90は、ワーク9の下面に凹設されている。被成形孔90は、上下方向に延在している。被成形孔90の横断面形状は、円形を呈している。スプライン予定部91は、筒状部9aつまり被成形孔90の内周面(内側面)に配置されている。スプライン予定部91は、上下方向に延在している。スプライン予定部91は、被成形孔90の下端開口から上方向に所定区間だけ設定されている。スプライン予定部91は、潤滑油Bが塗布される被塗布部である。スプライン予定部91には、潤滑油Bの塗布後に、冷間鍛造によりスプラインが成形される。
【0018】
[潤滑剤塗布方法]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置による潤滑剤塗布方法について説明する。作業者は、ワーク9を、パレット(図略)から取り出し、台座部3の座面32に載置する。すなわち、筒状部9aは、座面32に載置される。ワーク9の筒状部9aは、潤滑剤供給部4に上側から環装される。相対的には、潤滑剤供給部4は、筒状部9aの被成形孔90に下側から挿入される。
図4に示すように、ワーク9の載置後において、潤滑剤供給部4の潤滑剤塗布部40は、ワーク9のスプライン予定部91の、径方向内側に配置されている。すなわち、潤滑剤塗布部40とスプライン予定部91とは径方向に対向している。潤滑剤塗布部40とスプライン予定部91との間には、全周的に隙間Cが区画されている。隙間Cの径方向幅は、全周に亘って一定である。隙間Cには、流動的な潤滑膜(潤滑油Bによる油膜)bが形成されている。当該潤滑膜bにより、スプライン予定部91に、全周に亘って均一に、潤滑油Bが塗布される。所定時間だけワーク9を座面32に載置した後、作業者は、座面32からワーク9を取り外し、鍛造金型(図略)にセットする。
【0019】
[作用効果]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の作用効果について説明する。
図4に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、潤滑油Bを自重で流下させることにより、スプライン予定部91に潤滑油Bを塗布することができる。すなわち、重力を利用して、スプライン予定部91に潤滑油Bを案内することができる。したがって、ワーク9の筒状部9aの全面(内周面、下端面、外周面)に潤滑油Bを塗布する場合と比較して、潤滑油Bの使用量を削減することができる。また、潤滑油Bの塗布に要する作業時間を短縮化することができる。また、潤滑剤塗布装置1周囲の設備(例えば鍛造金型など)や工場の床面などに潤滑油Bが付着するのを抑制することができる。また、潤滑油Bの使用量を削減できるので、潤滑油B塗布後のワーク9に、油切りをする必要がない。このため、潤滑油B塗布後のワーク9を載置する油切り台が不要である。
【0020】
また、噴霧ノズルを用いてワーク9に潤滑油Bを噴霧する場合と比較して、ワーク9の不必要な部分への潤滑油Bの付着を抑制し、所望の部分に集中的に潤滑油Bを塗布することができる。また、噴霧によるミストの発生がないため、作業環境を向上させることができる。
【0021】
図4に示すように、スプライン予定部91、潤滑剤塗布部40は、上下方向(水平方向に対して交差する方向)に延在している。このため、スプライン予定部91、潤滑剤塗布部40が水平方向に延在している場合と比較して、より簡単に、潤滑油Bの流下(自重)を利用して、スプライン予定部91に潤滑油Bを塗布することができる。
【0022】
図4に示すように、台座部3の座面32には、台座凹部30、台座溝部31が凹設されている。このため、隙間Cから流下した潤滑油Bを、座面32下(つまりワーク9下)の台座凹部30、台座溝部31を介して、筒状部9aつまり被成形孔90の径方向内側から筒状部9aの径方向外側に、流出させることができる。
【0023】
図4に示すように、潤滑剤供給孔41の上端(出口)は、潤滑剤供給部4の上面に開口している。すなわち、潤滑剤供給孔41の出口は、潤滑剤塗布部40およびスプライン予定部91の上端以上の位置(上端と同じ位置または上端よりも高い位置)に開口している。このため、スプライン予定部91の上下方向全長に亘って、潤滑油Bを塗布することができる。また、潤滑剤供給部4の円形の上面において、潤滑剤供給孔41の出口から外周面までの距離は、全周的に一定である。このため、潤滑剤供給部4の外周面に対して、全周的に均一に潤滑油Bを供給することができる。したがって、潤滑剤塗布部40に、全周的に均一な潤滑膜bを形成することができる。また、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、潤滑剤として潤滑油Bを用いている。潤滑油Bは、水溶性潤滑剤と比較して、粘性が高い。この点においても、潤滑剤塗布部40に、全周的に均一な潤滑膜bを形成することができる。
【0024】
図3に示すように、潤滑剤塗布方法においては、ワーク9の載置前から、潤滑油Bは油路Dを循環している。このため、
図4に示すように、潤滑剤供給部4の外周面には、ワーク9の載置前から、全周的に潤滑膜bが形成されている。潤滑膜bにより、ワーク9を、潤滑剤供給部4との接触から保護しながら、潤滑剤供給部4に環装することができる。このため、ワーク9に、潤滑剤供給部4との接触に起因する不良(打痕、キズなど)が発生しにくい。また、潤滑膜bにより、ワーク9を、中心軸Aに調心しながら、潤滑剤供給部4に環装することができる。このため、スプライン予定部91に対する潤滑油Bの塗りムラが発生しにくい。
【0025】
ここで、仮に、
図3に示す台座部3の座面32に、同時に複数のワーク9を載置可能な場合を想定する(この場合も本発明の潤滑剤塗布装置の権利範囲に含まれる)。例えば、座面32に、潤滑油B塗布済みの第一ワーク9と、潤滑油B塗布前の第二ワーク9と、が載置されている場合を想定する。この場合、作業者が、二つのワーク9を取り違え、潤滑油B塗布前の第二ワーク9を次工程に搬出してしまう可能性がある。つまり、工程飛ばし(塗り忘れ)が発生するおそれがある。この点、
図3に示すように、潤滑剤塗布装置1の台座部3の座面32には、一つのワーク9だけを載置可能である。このため、複数のワーク9に順番に潤滑油Bを塗布する場合であっても、工程飛ばし(塗り忘れ)が発生しにくい。
【0026】
また、仮に、座面32にワーク9が載置されたことをセンサが検知することにより、潤滑油Bがワーク9に噴霧される場合を想定する。この場合、センサの検知不良等により、潤滑油Bがワーク9の所望の部分に噴霧されない、つまり潤滑油Bがワーク9の所望の部分に塗布されないケースが起こりうる。この点、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、座面32にワーク9を載置するだけで、潤滑油Bを所望の部分に良好に塗布することができる。このため、塗り忘れが発生しにくい。
【0027】
ワーク9に接触する可能性の高い部材(第二部材21、台座部3、潤滑剤供給部4)は、各々、耐摩耗性を有する樹脂製(例えばウレタン樹脂製)である。このため、これらの部材にワーク9が接触しても、ワーク9に不良(打痕、キズなど)が発生しにくい。また、これらの部材の耐久性が高い。
【0028】
<第二実施形態>
本実施形態の潤滑剤塗布装置と第一実施形態の潤滑剤塗布装置との相違点は、主に、被塗布部を有するギヤ予定部がワークの筒状部の外側面(外周面)に配置されている点である。ここでは、主に、相違点について説明する。
【0029】
[潤滑剤塗布装置の構成]
まず、本実施形態の潤滑剤塗布装置の構成について説明する。
図5に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図を示す。
図6に、同潤滑剤塗布装置の分解斜視図を示す。
図7に、同潤滑剤塗布装置の上面図を示す。
図8に、
図7のVIII-VIII方向断面図を示す。
図9に、
図8の枠IX内の拡大図を示す。
【0030】
なお、
図1~
図4と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図6においては、潤滑剤排出部2の上面に、一点鎖線で下流側凹部44の開口縁を示す。また、
図7においては、潤滑剤供給部4の上面に、一点鎖線でワーク9の外縁を示す。また、
図8においては、潤滑剤塗布装置1の左側部分にのみ油路Dを示すが、油路Dは潤滑剤塗布装置1に全周的に配置されている。
【0031】
図5~
図9に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1は、潤滑剤排出部2と、潤滑剤供給部4と、4つの高さ調整ピン5と、を備えている。潤滑剤塗布装置1は、冷間鍛造(プレス成形)前の鍛造用のワーク9に、潤滑油Bを塗布するために用いられる。潤滑油Bは、本発明の「潤滑剤」の概念に含まれる。
【0032】
(潤滑剤排出部2)
潤滑剤排出部2は、円板状を呈している。潤滑剤排出部2は、4つの潤滑剤導入孔22と、4つのピン保持孔23と、大径潤滑剤排出孔24と、4つの小径潤滑剤排出孔25と、を備えている。大径潤滑剤排出孔24、小径潤滑剤排出孔25は、本発明の「潤滑剤排出孔」の概念に含まれる。
【0033】
4つの潤滑剤導入孔22は、中心軸(潤滑剤排出部2、潤滑剤供給部4の中心軸)Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。潤滑剤導入孔22は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。4つのピン保持孔23は、中心軸Aの軸周りに、周方向に並んで配置されている。ピン保持孔23は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。大径潤滑剤排出孔24は、潤滑剤排出部2の径方向中心に配置されている。大径潤滑剤排出孔24は、中心軸Aを中心とする円孔状を呈している。大径潤滑剤排出孔24は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。4つの小径潤滑剤排出孔25は、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。小径潤滑剤排出孔25は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。
【0034】
(潤滑剤供給部4)
潤滑剤供給部4は、潤滑剤排出部2の上側に配置されている。潤滑剤供給部4は、円板状を呈している。潤滑剤供給部4は、上流側凹部42と、排出部収容凹部43と、下流側凹部44と、潤滑剤塗布孔45と、潤滑剤塗布部46と、4つの潤滑剤供給孔47と、4つのピン保持孔48と、を備えている。上流側凹部42は、本発明の「供給凹部」の概念に含まれる。
【0035】
上流側凹部42は、潤滑剤供給部4の上面に凹設されている。上流側凹部42は、潤滑剤供給部4の上面の径方向中心に配置されている。排出部収容凹部43は、潤滑剤供給部4の下面に凹設されている。排出部収容凹部43には、潤滑剤排出部2の上側部分が収容されている。下流側凹部44は、排出部収容凹部43の底面(上底面)に凹設されている。下流側凹部44は、排出部収容凹部43よりも小径である。下流側凹部44には、大径潤滑剤排出孔24の上端、小径潤滑剤排出孔25の上端(径方向内側部分)が開口している。下流側凹部44の底面(上底面)と、潤滑剤排出部2の上面と、の間には、排出空間Eが確保されている。
【0036】
潤滑剤塗布孔45は、潤滑剤供給部4の径方向中心に配置されている。上側(軸方向)から見て、潤滑剤塗布孔45は、全体として、円形を呈している。潤滑剤塗布孔45は、上下方向に延在している。潤滑剤塗布孔45は、上流側凹部42の底面と、下流側凹部44の底面(上底面)と、を連通している。
【0037】
潤滑剤塗布部46は、潤滑剤塗布孔45の内周面に配置されている。潤滑剤塗布部46は、径方向外側に凹む凹部460と、径方向内側に突出する凸部461と、を備えている。凹部460と凸部461とは、周方向に交互に配置されている。
【0038】
4つの潤滑剤供給孔47は、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。潤滑剤供給孔47は、上下方向に延在している。潤滑剤供給孔47は、上流側凹部42の底面と、排出部収容凹部43の底面と、を連通している。潤滑剤供給孔47は、潤滑剤導入孔22の上側に連なっている。
【0039】
4つのピン保持孔48は、中心軸Aの軸周りに、周方向に並んで配置されている。ピン保持孔48は、上下方向に延在している。ピン保持孔48は、上流側凹部42の底面と、排出部収容凹部43および下流側凹部44の底面(詳しくは、
図6に示すように、排出部収容凹部43の底面と、下流側凹部44の底面と、の境界)と、を連通している。ピン保持孔48は、ピン保持孔23の上側に連なっている。
【0040】
(高さ調整ピン5)
4つの高さ調整ピン5は、中心軸Aの軸周りに、周方向に並んで配置されている。高さ調整ピン5は、潤滑剤供給部4の上流側凹部42の底面から、上向きに突設されている。高さ調整ピン5の下側部分は、ピン保持孔48、23に挿入されている。高さ調整ピン5は、後述するワーク9を下側から支持している。
【0041】
(油路D)
図8に示すように、潤滑剤塗布装置1には、油路(具体的には、タンク81→ポンプ80→潤滑剤導入孔22→潤滑剤供給孔47→上流側凹部42→潤滑剤塗布孔45(潤滑剤塗布部46)→下流側凹部44(排出空間E)→(外側流路Daまたは内側流路Db)→再びタンク81という経路を辿る油路(潤滑剤経路))Dが設定されている。外側流路Daは、4つの小径潤滑剤排出孔25を経由している。内側流路Dbは、大径潤滑剤排出孔24を経由している。タンク81の潤滑油Bは、ポンプ80に圧送され、油路Dを循環している。
【0042】
[ワークの構成]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置により潤滑油が塗布されるワークの構成について説明する。ワーク9は、パーキングギヤの粗形材である。ワーク9は、小径筒部92と、フランジ部93と、大径筒部94と、を備えている。大径筒部94は、本発明の「筒状部」の概念に含まれる。
【0043】
小径筒部92は、上下方向に延在する円筒状を呈している。フランジ部93は、小径筒部92の外周面から径方向外側に突出している。フランジ部93は、リング状を呈している。大径筒部94は、フランジ部93の下面から下側に突出している。大径筒部94は、上下方向に延在する円筒状を呈している。大径筒部94は、小径筒部92よりも、大径かつ短軸である。大径筒部94は、小径筒部92の径方向外側に配置されている。大径筒部94の根本(後述する凹部950とフランジ部93との継ぎ目)には、凹部940が凹設されている。
【0044】
大径筒部94の外周面(外側面)には、ギヤ予定部95が配置されている。ギヤ予定部95は、全体として、上下方向に延在している。ギヤ予定部95は、径方向内側に凹む凹部950と、径方向外側に突出する凸部951と、を備えている。凹部950と凸部951とは周方向に交互に配置されている。ギヤ予定部95の下端部95aは、上側から下側に向かって縮径する、テーパ筒状を呈している。下端部95aは、潤滑油Bが塗布される被塗布部である。ギヤ予定部95には、潤滑油Bの塗布後に、冷間鍛造によりギヤが成形される。
【0045】
[潤滑剤塗布方法]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置による潤滑剤塗布方法について説明する。作業者は、ワーク9を、パレット(図略)から取り出し、4つの高さ調整ピン5に載置する。具体的には、フランジ部93が、4つの高さ調整ピン5に載置される。ワーク9の小径筒部92の下側部分は、潤滑剤塗布孔45、大径潤滑剤排出孔24に上側から挿入される。ワーク9の大径筒部94の下端部は、潤滑剤塗布孔45に上側から挿入される。
図9に示すように、ワーク9の載置後において、潤滑剤塗布部46は、ワーク9のギヤ予定部95の下端部95aの、径方向外側に配置されている。すなわち、潤滑剤塗布部46と下端部95aとは径方向に対向している。具体的には、潤滑剤塗布部46の凸部461とワーク9の凹部950とは径方向に対向している。潤滑剤塗布部46の凹部460とワーク9の凸部951とは径方向に対向している。潤滑剤塗布部46と下端部95aとの間には、全周的に隙間C1、C2が区画されている。隙間C2は、隙間C1の下側に連なっている。隙間C1、C2の径方向幅は、各々、全周に亘って一定である。隙間C1、C2には、流動的な潤滑膜bが形成されている。当該潤滑膜bにより、下端部95aに、全周に亘って均一に、潤滑油Bが塗布される。所定時間だけワーク9を4つの高さ調整ピン5に載置した後、作業者は、4つの高さ調整ピン5からワーク9を取り外し、鍛造金型(図略)にセットする。
【0046】
[作用効果]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の作用効果について説明する。本実施形態の潤滑剤塗布装置は、構成が共通する部分については、第一実施形態の潤滑剤塗布装置と同様の作用効果を有している。
【0047】
図9に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、潤滑油Bを自重で流下させることにより、ギヤ予定部95の下端部95aに潤滑油Bを塗布することができる。すなわち、重力を利用して、下端部95aに潤滑油Bを案内することができる。したがって、ワーク9の大径筒部94の全面(内周面、下端面、外周面)、あるいは大径筒部94の下端部の全面に潤滑油Bを塗布する場合と比較して、潤滑油Bの使用量を削減することができる。また、潤滑油Bの塗布に要する作業時間を短縮化することができる。また、潤滑剤塗布装置1周囲の設備(例えば鍛造金型など)や工場の床面などに潤滑油Bが付着するのを抑制することができる。また、凹部940に潤滑油Bが溜まるのを、抑制することができる。また、潤滑油Bの使用量を削減できるので、潤滑油B塗布後のワーク9に、油切りをする必要がない。このため、潤滑油B塗布後のワーク9を載置する油切り台が不要である。
【0048】
また、噴霧ノズルを用いてワーク9に潤滑油Bを噴霧する場合と比較して、ワーク9の不必要な部分への潤滑油Bの付着を抑制し、所望の部分に集中的に潤滑油Bを塗布することができる。また、噴霧によるミストの発生がないため、作業環境を向上させることができる。
【0049】
図9に示すように、ギヤ予定部95の下端部95aの上側部分、潤滑剤塗布部46の上側部分は、斜め方向(上下方向および水平方向に対して交差する方向。詳しくは、水平方向を0°、上下方向(垂直方向)を90°として、45°以上の方向)に延在している。また、下端部95aの下側部分、潤滑剤塗布部46の下側部分は、上下方向(水平方向に対して交差する方向)に延在している。このため、下端部95a、潤滑剤塗布部46が水平方向に延在している場合と比較して、より簡単に、潤滑油Bの流下(自重)を利用して、下端部95aに潤滑油Bを塗布することができる。
【0050】
図8、
図9に示すように、潤滑剤供給部4の下流側凹部44の底面(上底面)と、潤滑剤排出部2の上面と、の間には、排出空間Eが確保されている。このため、隙間C1、C2から流下した潤滑油Bを、排出空間Eを介して、4つの小径潤滑剤排出孔25(外側流路Da)、大径潤滑剤排出孔24(内側流路Db)に分流させることができる。
【0051】
図8に示すように、潤滑剤供給孔47の上端(出口)は、上流側凹部42の底面に開口している。すなわち、潤滑剤供給孔47の出口は、潤滑剤塗布部46およびギヤ予定部95の下端部95aの上端以上の位置(上端と同じ位置または上端よりも高い位置)に開口している。このため、下端部95aの上下方向全長に亘って、潤滑油Bを塗布することができる。
【0052】
図9に示すように、潤滑剤塗布方法においては、ワーク9の載置前から、潤滑油Bは油路Dを循環している。このため、
図9に示すように、潤滑剤塗布部46には、ワーク9の載置前から、全周的に潤滑膜bが形成されている。潤滑膜bにより、ワーク9を、潤滑剤供給部4との接触から保護しながら、潤滑剤供給部4に環装することができる。このため、ワーク9に、潤滑剤供給部4との接触に起因する不良(打痕、キズなど)が発生しにくい。
【0053】
ここで、仮に、
図5に示す4つの高さ調整ピン5に、同時に複数のワーク9を載置可能な場合を想定する(この場合も本発明の潤滑剤塗布装置の権利範囲に含まれる)。例えば、4つの高さ調整ピン5に、潤滑油B塗布済みの第一ワーク9と、潤滑油B塗布前の第二ワーク9と、が載置されている場合を想定する。この場合、作業者が、二つのワーク9を取り違え、潤滑油B塗布前の第二ワーク9を次工程に搬出してしまう可能性がある。つまり、工程飛ばし(塗り忘れ)が発生するおそれがある。この点、
図5に示すように、潤滑剤塗布装置1の4つの高さ調整ピン5には、一つのワーク9だけを載置可能である。このため、複数のワーク9に順番に潤滑油Bを塗布する場合であっても、工程飛ばし(塗り忘れ)が発生しにくい。
【0054】
また、仮に、4つの高さ調整ピン5にワーク9が載置されたことをセンサが検知することにより、潤滑油Bがワーク9に噴霧される場合を想定する。この場合、センサの検知不良等により、潤滑油Bがワーク9の所望の部分に噴霧されない、つまり潤滑油Bがワーク9の所望の部分に塗布されないケースが起こりうる。この点、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、4つの高さ調整ピン5にワーク9を載置するだけで、潤滑油Bを所望の部分に良好に塗布することができる。このため、塗り忘れが発生しにくい。
【0055】
ここで、仮に、
図8に示す潤滑剤排出部2に大径潤滑剤排出孔24が開設されていない場合を想定する(この場合も本発明の潤滑剤塗布装置の権利範囲に含まれる)。この場合、ワーク9の小径筒部92が潤滑剤排出部2の上面に載置されることになる。このため、下端部95aの上下方向位置が高くなってしまう。したがって、潤滑剤塗布部46の上下方向位置も高くなってしまう。よって、潤滑剤塗布装置1の上下方向幅が大きくなってしまう。これに対して、
図8に示すように、潤滑剤排出部2には、大径潤滑剤排出孔24が開設されている。このため、内側流路Dbを確保できると共に、小径筒部92の下側部分を収容することができる。したがって、潤滑剤塗布装置1の上下方向幅を小さくすることができる。
【0056】
図8に示すように、油路Dは、外側流路Daと内側流路Dbとを備えている。このため、塵埃等により一方の流路(例えば外側流路Da)において潤滑油Bが流れにくくなった場合であっても、他方の流路(例えば内側流路Db)により潤滑油Bの流動性を確保することができる。また、外側流路Daは4つ(複数)配置されている。このため、一部の外側流路Daにおいて潤滑油Bが流れにくくなった場合であっても、残部の外側流路Daにより潤滑油Bの流動性を確保することができる。
【0057】
潤滑剤排出部2、潤滑剤供給部4は、金属製(例えばS45C(炭素鋼)製)である。このため、これらの部材にワーク9が接触しても、これらの部材が変形しにくい。また、耐久性が高い。
【0058】
<第三実施形態>
本実施形態の潤滑剤塗布装置と第二実施形態の潤滑剤塗布装置との相違点は、主に、被塗布部がワークの柱状部の外側面に配置されている点である。ここでは、主に、相違点について説明する。
【0059】
[潤滑剤塗布装置の構成]
まず、本実施形態の潤滑剤塗布装置の構成について説明する。
図10に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の斜視図を示す。
図11に、同潤滑剤塗布装置の分解斜視図を示す。
図12に、同潤滑剤塗布装置の潤滑剤塗布部付近の横断面図(水平方向断面図)を示す。なお、
図5~
図9と対応する部位については、同じ符号で示す。また、
図10においては、被塗布部98に点線ハッチングを施す。
図10~
図12に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1は、潤滑剤排出部2と、潤滑剤供給部4と、4つの高さ調整ピン5と、を備えている。
【0060】
(潤滑剤排出部2)
潤滑剤排出部2は、4つの潤滑剤導入孔22と、4つのピン保持孔23と、4つの潤滑剤排出孔26と、を備えている。4つの潤滑剤排出孔26は、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。潤滑剤排出孔26は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。
【0061】
(潤滑剤供給部4)
潤滑剤供給部4は、上流側凹部42と、排出部収容凹部43と、下流側凹部44と、潤滑剤塗布孔45と、潤滑剤塗布部46と、4つの潤滑剤供給孔47と、4つのピン保持孔48と、を備えている。下流側凹部44には、潤滑剤排出孔26の上端(径方向内側部分)が開口している。上側(軸方向)から見て、潤滑剤塗布孔45は、四角形状を呈している。潤滑剤塗布部46は、潤滑剤塗布孔45の内側面に配置されている。
【0062】
(潤滑剤経路)
潤滑剤塗布装置1には、
図8に示す油路D(ただし、外側流路Daあり。内側流路Dbなし)と同様に、潤滑剤経路が設定されている。
図8、
図11に示すように、当該潤滑剤経路は、タンク81→ポンプ80→潤滑剤導入孔22→潤滑剤供給孔47→上流側凹部42→潤滑剤塗布孔45(潤滑剤塗布部46)→下流側凹部44(排出空間E)→潤滑剤排出孔26→再びタンク81という経路を辿っている。
【0063】
[ワークの構成]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置により潤滑剤が塗布されるワークの構成について説明する。ワーク9は、基部96と、柱状部97と、を備えている。基部96は、四角形板状を呈している。柱状部97は、基部96の下面から下側に突出している。柱状部97は、上下方向に延在する角柱状を呈している。柱状部97の外側面の下端部には、潤滑剤(水溶性潤滑剤)が塗布される被塗布部98が配置されている。
【0064】
[潤滑剤塗布方法]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置による潤滑剤塗布方法について説明する。作業者は、ワーク9を、4つの高さ調整ピン5に載置する。具体的には、基部96が、4つの高さ調整ピン5に載置される。ワーク9の柱状部97の下端部は、潤滑剤塗布孔45に上側から挿入される。
図12に示すように、ワーク9の載置後において、潤滑剤塗布部46は、ワーク9の被塗布部98の径方向外側に配置されている。すなわち、潤滑剤塗布部46と被塗布部98とは水平方向(中心軸Aに対して直交する方向)に対向している。潤滑剤塗布部46と被塗布部98との間には、全周的に隙間Cが区画されている。隙間Cの水平方向幅は、全周に亘って一定である。隙間Cには、流動的な潤滑膜bが形成されている。当該潤滑膜bにより、被塗布部98に、全周に亘って均一に、潤滑剤が塗布される。所定時間だけワーク9を4つの高さ調整ピン5に載置した後、作業者は、4つの高さ調整ピン5からワーク9を取り外す。
【0065】
[作用効果]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の作用効果について説明する。本実施形態の潤滑剤塗布装置は、構成が共通する部分については、第二実施形態の潤滑剤塗布装置と同様の作用効果を有している。
【0066】
本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、潤滑剤を自重で流下させることにより、被塗布部98に潤滑剤を塗布することができる。すなわち、重力を利用して、被塗布部98に潤滑剤を案内することができる。したがって、ワーク9の柱状部97の全面(下端面、外周面)、あるいは柱状部97の下端部の全面に潤滑剤を塗布する場合と比較して、潤滑剤の使用量を削減することができる。また、潤滑剤の塗布に要する作業時間を短縮化することができる。また、本実施形態の潤滑剤塗布装置1の潤滑剤排出部2には、
図8に示す大径潤滑剤排出孔24が開設されていない。このため、潤滑剤排出部2の構成が簡単である。
【0067】
<第四実施形態>
本実施形態の潤滑剤塗布装置と第三実施形態の潤滑剤塗布装置との相違点は、被塗布部がワークの柱状部の外側面に部分的に配置されている点である。ここでは、主に、相違点について説明する。
図13に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の潤滑剤塗布部付近の横断面図(水平方向断面図)を示す。なお、
図12と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0068】
図13に示すように、柱状部97の外側面の下端部の前後両縁には、前後一対の被塗布部98が配置されている。同様に、潤滑剤塗布孔45の内周面の前後両縁には、前後一対の潤滑剤塗布部46が配置されている。被塗布部98と潤滑剤塗布孔45との間には、隙間Cが確保されている。隙間Cには潤滑膜bが形成されている。
【0069】
本実施形態の潤滑剤塗布装置は、構成が共通する部分については、第三実施形態の潤滑剤塗布装置と同様の作用効果を有している。本実施形態の潤滑剤塗布装置1のように、潤滑剤塗布孔45の内周面に、全周的でなく、部分的に潤滑剤塗布部46が設定されていてもよい。
【0070】
<第五実施形態>
本実施形態の潤滑剤塗布装置と第二実施形態の潤滑剤塗布装置との相違点は、主に、被塗布部がワークの筒状部の外周面(外側面)および内周面(内側面)に配置されている点である。ここでは、主に、相違点について説明する。
【0071】
[潤滑剤塗布装置の構成]
まず、本実施形態の潤滑剤塗布装置の構成について説明する。
図14に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の上下方向(軸方向)断面図を示す。なお、
図14の断面は、
図8の断面に対応している。また、
図3、
図5~
図9と対応する部位については、同じ符号で示す。
図14に示すように、本実施形態の潤滑剤塗布装置1は、潤滑剤排出部2と、潤滑剤供給部4と、4つの高さ調整ピン5と、を備えている。
【0072】
(潤滑剤排出部2)
潤滑剤排出部2は、4つの外側導入孔22aと、4つのピン保持孔23と、4つの潤滑剤排出孔26と、1つの内側導入孔22bと、を備えている。このうち、外側導入孔22aは、
図8に示す潤滑剤導入孔22に対応している。4つの外側導入孔22aは、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。内側導入孔22bは、潤滑剤排出部2の径方向中心に配置されている。内側導入孔22bは、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。4つの潤滑剤排出孔26は、中心軸Aを中心として、90°ずつ離間して配置されている。潤滑剤排出孔26は、潤滑剤排出部2を上下方向に貫通している。潤滑剤排出孔26の上端は、後述する外側供給部4aの潤滑剤塗布孔45の内周面と、内側供給部4bの外周面と、の隙間E1に開口している。隙間E1は、リング状を呈している。
【0073】
(潤滑剤供給部4)
潤滑剤供給部4は、外側供給部4aと、内側供給部4bと、を備えている。このうち、外側供給部4aの構成は、
図8に示す潤滑剤供給部4の構成と、概ね同様である。すなわち、外側供給部4aは、上流側凹部42と、排出部収容凹部43と、潤滑剤塗布孔45と、外側塗布部46aと、4つの外側供給孔47aと、4つのピン保持孔48と、を備えている。このうち、外側塗布部46aは、
図8に示す潤滑剤塗布部46に対応している。外側塗布部46aは、本発明の「潤滑剤塗布部」の概念に含まれる。外側塗布部46aは、潤滑剤塗布孔45の内周面の上端部に配置されている。外側塗布部46aは、上下方向に延在している。外側供給孔47aは、
図8に示す潤滑剤供給孔47に対応している。外側供給孔47aは、本発明の「潤滑剤供給孔」の概念に含まれる。
【0074】
内側供給部4bは、潤滑剤排出部2の上面に配置されている。内側供給部4bは、上下方向に延在する円柱状を呈している。内側供給部4bは、隙間E1を介して、潤滑剤塗布孔45の径方向内側に配置されている。内側供給部4bは、内側塗布部46bと、内側供給孔47bと、を備えている。内側塗布部46bは、本発明の「潤滑剤塗布部」の概念に含まれる。内側供給孔47bは、本発明の「潤滑剤供給孔」の概念に含まれる。内側供給孔47bは、内側供給部4bの径方向中心に配置されている。内側供給孔47bは、内側供給部4bを上下方向に貫通している。内側供給孔47bは、内側導入孔22bの上端に連通している。内側塗布部46bは、内側供給部4bの外周面の上端部に配置されている。内側塗布部46bは、上下方向に延在している。
【0075】
(潤滑剤経路D1)
潤滑剤塗布装置1には、潤滑剤経路D1が設定されている。潤滑剤経路D1は、タンク81→ポンプ80→(外側流路D1aまたは内側流路D1b)→隙間E1→潤滑剤排出孔26→再びタンク81という経路を辿っている。外側流路D1aは、外側導入孔22a→外側供給孔47a→上流側凹部42→潤滑剤塗布孔45(外側塗布部46a)という経路を辿っている。内側流路D1bは、内側導入孔22b→内側供給孔47b→内側塗布部46bという経路を辿っている。
【0076】
[ワークの構成]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置により潤滑剤が塗布されるワークの構成について説明する。ワーク9は、基部990と、筒状部991と、を備えている。基部990は、四角形板状を呈している。筒状部991は、基部990の下面から下側に突出している。筒状部991は、下側に開口する有底円筒状を呈している。筒状部991は、上下方向に延在している。筒状部991の外周面(外側面)の下端部には、潤滑剤が塗布される外側被塗布部991aが配置されている。外側被塗布部991aは、本発明の「被塗布部」の概念に含まれる。筒状部991の内周面(内側面)の下端部には、潤滑剤が塗布される内側被塗布部991bが配置されている。内側被塗布部991bは、本発明の「被塗布部」の概念に含まれる。
【0077】
[潤滑剤塗布方法]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置による潤滑剤塗布方法について説明する。作業者は、ワーク9を、4つの高さ調整ピン5に載置する。具体的には、基部990が、4つの高さ調整ピン5に載置される。ワーク9の筒状部991の下端部は、隙間E1に上側から挿入される。ワーク9の載置後において、外側塗布部46aは、ワーク9の外側被塗布部991aの径方向外側に配置されている。すなわち、外側塗布部46aと外側被塗布部991aとは水平方向(中心軸Aに対して直交する方向)に対向している。外側塗布部46aと外側被塗布部991aとの間には、全周的に隙間が区画されている。隙間の水平方向幅は、全周に亘って一定である。隙間には、流動的な潤滑膜bが形成されている。当該潤滑膜bにより、外側被塗布部991aに、全周に亘って均一に、潤滑剤が塗布される。
【0078】
同様に、ワーク9の載置後において、内側塗布部46bは、ワーク9の内側被塗布部991bの径方向内側に配置されている。すなわち、内側塗布部46bと内側被塗布部991bとは水平方向に対向している。内側塗布部46bと内側被塗布部991bとの間には、全周的に隙間が区画されている。隙間の水平方向幅は、全周に亘って一定である。隙間には、流動的な潤滑膜bが形成されている。当該潤滑膜bにより、内側被塗布部991bに、全周に亘って均一に、潤滑剤が塗布される。所定時間だけワーク9を4つの高さ調整ピン5に載置した後、作業者は、4つの高さ調整ピン5からワーク9を取り外す。
【0079】
[作用効果]
次に、本実施形態の潤滑剤塗布装置の作用効果について説明する。本実施形態の潤滑剤塗布装置は、構成が共通する部分については、第二実施形態の潤滑剤塗布装置と同様の作用効果を有している。
【0080】
本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、潤滑剤を自重で流下させることにより、外側被塗布部991a、内側被塗布部991bに、潤滑剤を塗布することができる。すなわち、重力を利用して、外側被塗布部991a、内側被塗布部991bに潤滑剤を案内することができる。したがって、ワーク9の筒状部991の全面(下端面、外周面、内周面)、あるいは筒状部991の下端部の全面に潤滑剤を塗布する場合と比較して、潤滑剤の使用量を削減することができる。また、潤滑剤の塗布に要する作業時間を短縮化することができる。
【0081】
また、本実施形態の潤滑剤塗布装置1によると、外側被塗布部991a、内側被塗布部991bに、共通の工程で、同時並行的に潤滑剤を塗布することができる。この点においても、潤滑剤の塗布に要する作業時間を短縮化することができる。また、本実施形態の潤滑剤塗布装置1の潤滑剤排出部2には、
図8に示す大径潤滑剤排出孔24、下流側凹部44が開設されていない。このため、潤滑剤排出部2の構成が簡単である。
【0082】
<その他>
以上、本発明の潤滑剤塗布装置の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0083】
ワーク9における潤滑剤(潤滑油B)が塗布される範囲は特に限定しない。被塗布部(
図4に示すスプライン予定部91、
図9に示す下端部95a、
図12、
図13に示す被塗布部98、
図14に示す外側被塗布部991a、内側被塗布部991b)以外の部分に、潤滑油Bが塗布されてもよい。例えば、
図4に示すワーク9の筒状部9aの下端面に潤滑油Bが塗布されてもよい。この場合であっても、ワーク9の筒状部9aの全面(内周面、下端面、外周面)に潤滑油Bを塗布する場合と比較して、潤滑油Bの使用量を削減することができる。
【0084】
被塗布部設定部(
図4に示す筒状部9a、
図8に示す大径筒部94、
図12、
図13に示す柱状部97、
図14に示す筒状部991)に対する、被塗布部の上下方向位置は特に限定しない。例えば、被塗布部の下端が、被塗布部設定部の下端よりも、上側に設定されていてもよい。この場合、被塗布部のみならず、被塗布部より下側の部分にも、潤滑剤が塗布されることになる。しかしながら、この場合であっても、被塗布部設定部の全面に潤滑剤を塗布する場合と比較して、潤滑剤の使用量を削減することができる。
【0085】
スプライン予定部91の形状は特に限定しない。スプライン予定部91に、粗形状のスプラインが形成されていても、形成されていなくてもよい。同様に、ギヤ予定部95の形状は特に限定しない。ギヤ予定部95に、粗形状のギヤが形成されていても、形成されていなくてもよい。スプライン予定部91、ギヤ予定部95に占める被塗布部の割合は特に限定しない。
図4に示すように、スプライン予定部91の全部が被塗布部であってもよい。
図8に示すように、ギヤ予定部95の一部(下端部95a)が被塗布部であってもよい。勿論、スプライン予定部91の一部が被塗布部であってもよい。また、ギヤ予定部95の全部が被塗布部であってもよい。このように、被塗布部は、スプライン予定部91、ギヤ予定部95の少なくとも一部であればよい。例えば、他の部位と比較して、成形時に摩擦が大きい部位を被塗布部としてもよい。
【0086】
潤滑剤供給部4における潤滑剤供給孔(
図4に示す潤滑剤供給孔41、
図8に示す潤滑剤供給孔47、
図14に示す外側供給孔47a、内側供給孔47b)の出口の位置は特に限定しない。潤滑剤供給孔の出口は、潤滑剤塗布部(
図4に示す潤滑剤塗布部40、
図9、
図12、
図13に示す潤滑剤塗布部46、
図14に示す外側塗布部46a、内側塗布部46b)および被塗布部の上端以上の位置に開口していればよい。潤滑剤供給部4に複数の潤滑剤供給孔の出口を開設してもよい。この場合、複数の出口のうち少なくとも一つの出口が、潤滑剤塗布部および被塗布部の上端以上の位置に開口していればよい。
【0087】
図1に示す台座溝部31の配置数、延在方向は特に限定しない。
図4に示すように、台座溝部31を介して、潤滑油Bを、筒状部9aの径方向内側から径方向外側に排出できればよい。潤滑剤供給部4の座面32からの突出量を、ワーク9の種類(例えばスプライン予定部91の上端の位置)に応じて、調整可能にしてもよい。また、座面32からの突出量が異なる複数の潤滑剤供給部4を、ワーク9の種類に応じて、適宜、使い分けてもよい。同様に、
図6に示す高さ調整ピン5の上流側凹部42からの突出量を、ワーク9の種類(つまり下端部95aの上端の位置)に応じて、調整可能にしてもよい。また、上流側凹部42からの突出量が異なる複数の高さ調整ピン5を、ワーク9の種類に応じて、適宜、使い分けてもよい。
【0088】
高さ調整ピン5、潤滑剤供給孔、潤滑剤排出孔(
図3に示す潤滑剤排出孔202、
図8に示す大径潤滑剤排出孔24、小径潤滑剤排出孔25、
図11、
図14に示す潤滑剤排出孔26)、潤滑剤塗布部、被塗布部の配置数、配置場所、形状は特に限定しない。潤滑剤塗布部は、曲面状、平面状、曲面と平面との合成面状などであってもよい。潤滑剤塗布部の延在方向は、特に限定しない。好ましくは、水平方向に対して交差する方向に延在していればよい。こうすると、潤滑剤の流下(自重)を利用して、被塗布部に潤滑剤を塗布することができる。被塗布部の形状、延在方向についても、上述の潤滑剤塗布部と同様である。
【0089】
潤滑剤塗布装置1に対するワーク9の搬送(搬入、搬出)方法は特に限定しない。作業者が手作業でワーク9を搬送してもよい。また、搬送ロボットにより、自動的にワーク9を搬送してもよい。こうすると、作業者が手作業でワーク9を搬送する場合と比較して、ワーク9が周辺部材(潤滑剤排出部2、潤滑剤供給部4など)に接触しにくい。このため、ワーク9に不良が発生するのを抑制することができる。また、工程飛ばしが発生するのを、抑制することができる。
【0090】
潤滑剤塗布装置1の各部材の材質は特に限定しない。樹脂や金属であってもよい。樹脂と金属とを併用してもよい。例えば、金属製の潤滑剤供給部4のうち、ワーク9の被塗布部が接触しやすい潤滑剤塗布部だけを、局所的に樹脂製としてもよい。単一の潤滑剤塗布装置1に、複数の潤滑剤供給部4を配置してもよい。こうすると、複数のワーク9に対して、並行して潤滑油Bを塗布することができる。潤滑剤塗布装置1の各部材(例えば、潤滑剤供給部4と潤滑剤排出部2など)の接合方法は特に限定しない。例えば、ボルトなどの締結部材を用いて、各部材を接合してもよい。
【0091】
潤滑剤の種類は特に限定しない。潤滑油Bや水溶性潤滑剤であってもよい。また、潤滑剤は、冷間鍛造用、温間鍛造用、熱間鍛造用のいずれであってもよい。また、潤滑剤は、鍛造以外の用途に用いられるものであってもよい。例えば、摩擦抑制、防錆、防湿などに用いられるものであってもよい。
【0092】
ワーク9のバリエーションは特に限定しない。例えば、ワーク9の形状、材質、被塗装部の位置などは特に限定しない。加工の段階に応じて、ワーク9の形状が変化してもよい。ワーク9は、中間品(粗形材)でなくてもよい。ワーク9は完成品であってもよい。ワーク9の被塗布部は、スプライン予定部91、ギヤ予定部95の下端部95aに限定しない。潤滑剤塗布部については、ワーク9や鍛造金型の形状、材質などに応じて、適宜、潤滑剤塗布部を設定すればよい。
【符号の説明】
【0093】
1:潤滑剤塗布装置、2:潤滑剤排出部、20:第一部材、200:第一凹部、201:潤滑剤導入孔、202:潤滑剤排出孔、21:第二部材、210:台座部収容部、211:第二凹部(排出凹部)、212:リブ、213:凹部連通孔、214:供給部配置孔、22:潤滑剤導入孔、22a:外側導入孔、22b:内側導入孔、23:ピン保持孔、24:大径潤滑剤排出孔(潤滑剤排出孔)、25:小径潤滑剤排出孔(潤滑剤排出孔)、26:潤滑剤排出孔、3:台座部、30:台座凹部、31:台座溝部(溝部)、32:座面、33:供給部挿通孔、4:潤滑剤供給部、4a:外側供給部、4b:内側供給部、40:潤滑剤塗布部、41:潤滑剤供給孔、42:上流側凹部(供給凹部)、43:排出部収容凹部、44:下流側凹部、45:潤滑剤塗布孔、46:潤滑剤塗布部、46a:外側塗布部(潤滑剤塗布部)、46b:内側塗布部(潤滑剤塗布部)、460:凹部、461:凸部、47:潤滑剤供給孔、47a:外側供給孔(潤滑剤供給孔)、47b:内側供給孔(潤滑剤供給孔)、48:ピン保持孔、5:高さ調整ピン、80:ポンプ、81:タンク、9:ワーク、9a:筒状部、90:被成形孔、91:スプライン予定部、92:小径筒部、93:フランジ部、94:大径筒部(筒状部)、940:凹部、95:ギヤ予定部、95a:下端部、950:凹部、951:凸部、96:基部、97:柱状部、98:被塗布部、990:基部、991:筒状部、991a:外側被塗布部(被塗布部)、991b:内側被塗布部(被塗布部)、A:中心軸、B:潤滑油(潤滑剤)、C:隙間、C1:隙間、D:油路、Da:外側流路、Db:内側流路、D1:潤滑剤経路、D1a:外側流路、D1b:内側流路、E:排出空間、E1:隙間、b:潤滑膜